2005年7月 Archive

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「白い女神」であるジェンナを中心とした、ケルトの神話を思わせるようなファンタジー。
この作品でまず驚かされたのは、物語が「神話」「伝説」「物語」「歴史」の章に分かれていて、その合間に「歌」や「バラッド」、「寓話」などが挿入されていたこと。そういう風に細かく分かれていると、どうしても流れが分断されやすいと思うんですけど、それがそうでもないんですねえ。分断する以上に、世界をより深く重層的にしていてびっくり。
物語に厚みを持たせるために、その世界の神話が物語中に挿入されるのはそれほど珍しくないと思うんですけど、でもここに書かれた物語が神話となってしまうほど、遥か未来の視点からも書かれてるんです。これが珍しい...。ここでの「物語」が「神話」として高められ、あるいは民間の中の「伝説」として伝わり、その過程で歌やバラッドが出来るんですけど、さらに長い年月が経った未来の歴史家などがこの物語のことを様々な資料で研究してるのが「歴史」の章。
って、言葉で説明するとすごくヤヤコシイですね...(^^;。でもこれによって1つの物語がとても立体的に見えて来ます。真実がどんな風に変化して神話や伝説になっていくのかというのも面白いし、遥か彼方の未来の人々が、見当違いのことを論じてるのも可笑しい♪

私好みの骨太なファンタジーで、すっごく面白かったです。ジェイン・ヨーレンって、叙情的な描写ばかりが前面に出てるのかと思ったけど、それだけじゃないんだなあ。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のジェイン・ヨーレン作品の感想+
「夢織り女」ジェイン・ヨーレン
「水晶の涙」ジェイン・ヨーレン
「三つの魔法」ジェイン・ヨーレン
「光と闇の姉妹」「白い女神」ジェイン・ヨーレン
「月夜のみみずく」ジェイン・ヨーレン ショーエンヘール

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高校3年生の時に予備校の教師・サイトウさんと付き合い、そして別れ、自暴自棄になった「わたし」は気軽な男の子たちと適当に付き合った挙句、妊娠。そして中絶。そんな「わたし」が徐々に自分を取り戻していく物語。

これが、綿矢りささんと金原ひとみさんが芥川賞を取った時に、一緒に候補になってた作品なんですねー。
あとがきには、「厳密には、この物語は恋愛小説とは言えないかもしれない」とあったんですけど、これのどこが恋愛小説じゃないんだろう、って考えてしまうほど、私にとっては恋愛小説でした。主人公の「わたし」が、いくら恋を失ったからといって、そんな手軽な男の子たちと適当に寝てしまうような子には見えなかったのが難点なんだけど... でもそんな風に見えない彼女が実はそういう行動に出て、高校の夏休みにキャバクラでバイトをしてしまうような同級生のキクちゃんが、「けど、やっぱり好きじゃない人と寝ちゃだめだな」なんて言ってるところが、やっぱり今らしさなのかもしれないですね。...でも堕胎を扱っているというのに、この扱いの軽さは何なんだろう...。
そんな時に知り合った男性との緩やかな付き合いを通して、深くて暗い森の中から、徐々に周囲が明るくなっていくようなところが良かったです。希望が感じられて。誰かに見守ってくれる人がいればそれだけでいいって時は、確かにありますよね。

島本さんの作品が3冊続きましたが、最新作「一千一秒の日々」は手元にないので、とりあえずここまでです。この本の表紙の絵はミヒャエル・ゾーヴァ! 本の裏までこの絵が続いていて、そういう使い方が素敵です。ここに出てくる画像に帯がついてなくて嬉しいわあ。(講談社)


+既読の島本理生作品の感想+
「ナラタージュ」島本理生
「シルエット」島本理生
「リトル・バイ・リトル」島本理生
「生まれる森」島本理生
「一千一秒の日々」島木理生

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あとがきによると、「明るい小説にしようと、最初から最後までそれだけを考えていた」という作品なのだそう。確かに不思議な明るさがある作品と言えそうです。主人公の橘ふみの家は母子家庭で母親は2度も離婚していますし、物語の冒頭で母親が勤める整骨院の院長が夜逃げしてしまって失業、酔っ払って帰って来る始末。ふみ自身、高校は卒業したものの、大学に行く学費なんてどこを押しても出てこない状態。しかも妹のユウちゃんは、小学校2年生の異父妹。...お世辞にも明るいとは言いがたい状況なんですが、それでもふみの家族も、ふみの習字の先生も、そんな時に出会った周やその姉も、ふわりと明るい空気をまとっているような印象なんですよね。まるで力んだりしてなくて、ごく自然体。しかも伸びやかで。
読み始めた時は、また母子家庭か!と思ったんですけど、単なる枠組みに過ぎないような気もしてきました。(でもそろそろ母子家庭はやめて欲しいな... ←次は父子家庭だったりして・笑) (講談社)


+既読の島本理生作品の感想+
「ナラタージュ」島本理生
「シルエット」島本理生
「リトル・バイ・リトル」島本理生
「生まれる森」島本理生
「一千一秒の日々」島木理生

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「シルエット」「植物たちの呼吸」「ヨル」の3編が収められていて、表題作「シルエット」は、島本さんが17歳の時に群像新人文学賞最優秀作を受賞したとのこと。ということは、「ヨル」は... 15歳の時に雑誌に掲載されたってこと? すご...っ。
どれも作者の若さを映し出すように若さが溢れているんですが、やっぱりこの中では表題作が良かったです。今は大学生の「せっちゃん」と付き合っているけれど、どこか冠くんのことが忘れられないでいる「わたし」の物語。主人公の揺れ動く心とか、この年代の繊細で尖った部分とか、そういうのが、まさに同年代の手によって書かれてるんだなあという感じ。でもいくら女子高生の時に書いたと作品だと言っても、やっぱりここまで等身大の女子高生を描けるのって凄いんじゃないかと思います。...確かに忘れられない人っていますよね。だからといって無理に忘れられるものではないし、忘れられない人は忘れられないままでいいと思うのですが... でもやっぱりそこに若さが出るんだろうな。
ただ、ちょっと気になってしまうのは、3編の主人公3人+α が母子家庭なこと。そりゃ最近では全然珍しくない存在だと思うのですが、でも3編連続でっていうのはどうなんだろう... まあ、コレに関しては他の作品も読めば、おのずと答が出ると思いますが。

そうそう、この文庫はクラフト・エヴィング商會の装幀です♪(講談社文庫)


+既読の島本理生作品の感想+
「ナラタージュ」島本理生
「シルエット」島本理生
「リトル・バイ・リトル」島本理生
「生まれる森」島本理生
「一千一秒の日々」島木理生

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またしても酒見賢一さん。こちらはデビュー作の「後宮小説」に続く短編集です。これも全然中国の気配すらなくて、現代日本のミステリの形式を借りて小説という虚構を皮肉っていたり、古代ギリシャ哲学者や数学者の話であったり、徐々に現実と幻想の境目がなくなっていくホラー(ファンタジー?)であったりと、作風は様々。解説を読んでいたら、この本が出た時の酒見さんの「中国小説の作家だと勘違いされてるようだったので、いかんなあと思ってああいうのを書いたんですけどね。あれを読んで得体の知れない作家だなと思われたらうれしいですね。何でもありという作家になりたいんですよ」という言葉が引用されてたんですけど、まさにその通りになってるじゃあないですか!(笑)
この中で気に入ったのは「籤引き」という短編。泥棒とか殺人が起きた時に、真犯人を探し出して裁判にかけるのではなくて、籤引きで当たった人間こそが真犯人、という考えをしている未開の村の描写がとても面白いんです。一見非常識に見えるこのやり方も、読んでいるうちに徐々にそれが正しいように思えてきてしまうんですよねえ。(笑)(講談社文庫)

私が読んだのは古い講談社文庫版なんですが、画像とリンクは集英社文庫版です。(どちらにしても今は入手できないんだけど)


+既読の酒見賢一作品の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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「語り手の事情」に引き続きの酒見賢一さん。こちらは純粋なSF作品。「地下街」「ハルマゲドン・サマー」「聖母の部隊」「追跡した猫と家族の写真」の4編が収められています。
真面目なハードボイルドかと思いきや、まるでRPGみたいで可笑しかったり、ちょっと新井素子さんの「ひとめあなたに...」を思い出すような作品だったり、津原泰水さんの「綺譚集」に入っている「アルバトロス」のような雰囲気だったり(そうでもないかしら(^^;)、ほのぼのとしてたりと色々。私はSFにはあまり詳しくないし、読む前は「えっ、SF...?」なんて思ってたんですけど、なかなかバリエーションが豊かで、しかもレベルが高い短編集と言えそうです。

続けざまに中国物ではない酒見さんの作品を読んでみて感じたのは、もしかしたらこれまで酒見さんをすごく誤解してたのかもしれないということ。私の中では、だんだん正体不明の作家さんになってきちゃいました。(笑) 実は物凄く引き出しが多い方だったんですね。そして中国物の作品の中に、中国物だけに収まりきらない部分が色々とあるのには、それだけのルーツだあったんですね。...と、妙に納得。そして酒見さんの何が凄いって、どんな作品を書いても、どれもしっかり酒見さんだということ。確立されてるんですねえ。これは早いとこ、「ピュタゴラスの旅」も読んでみなくちゃいけないなあ。(この作品も、どう考えても中国物じゃないし)
ちなみに解説は恩田陸さん。そして「語り手の事情」は佐藤亜紀さんでした。豪華メンバーですねっ。酒見さんご自身のあとがきも凄いです。語ってます。(「語り手の事情」も・笑)(ハルキ文庫)


+既読の酒見賢一作品の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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性倫理に厳格で、いかがわしさを連想させるものは机の脚ですら布で包み隠されたというヴィクトリア王朝の英国が舞台。そこには、性に対する様々な妄想を抱いた紳士が招かれる屋敷がありました。その屋敷に住むのは、屋敷の主人と3人のメイド、そして「語り手」。

というあらすじでは全然説明できてないんですが(笑)、いや、すごい話でした... 酒見さんが色んな作品を書いてらっしゃるというのは知識としては知ってたんですけど、でも「後宮小説」「墨攻」「陋巷に在り」「童貞」「周公旦」... と、中国物しか読んだことなかったんです、私。そこにいきなりヴィクトリアンなイギリス。しかも... えええ、もしかしてエロエロですか?! うわーん、びっくり。

でも読んでみると、確かにエロエロ(笑)だし、童貞喪失から性倒錯、性奴隷にSMとすごいラインナップなんですけど(笑)、酒見さんにかかると全然隠微じゃないんですよねえ。むしろ上品な軽快さがあるような... いや、面白かったです。人前ではちょっと読みたくないし、読めないですが。電車で隣り合わせたおじさんに本を覗き込まれた日には、切腹ものですが...! でも酒見さんって、こういうヘンな話を書くのが上手いですねー。本当はまともな中国物の方が好きですけど、でも実は本領発揮って気がします。
しかしこの作品が「文學界」に載っていたとは... 驚き。いや、実は意外と相応しいのか?(笑)
読み始めた時は「表紙のミュシャに騙された!」と思ったんですが、でも読み終わってみると、やっぱりミュシャが良く似合っていたのかもしれません。(って、本当かなあ? 笑)(文春文庫)


+既読の酒見賢一作品の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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