2005年10月 Archive

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19世紀初頭のパリ。父の訃報を持ってカナダからフランスに渡ったコリンヌは、祖父であるギイ・ド・ブリクール伯爵に会いに行くのですが、勝手にカナダに出奔して原住民と結婚した息子のことを、伯爵は既に息子とは認めていませんでした。伯爵はコリンヌに、パリの東北東、ライン河岸に立っている古い塔に幽閉されている人物の正体を調べれば、コリンヌを孫娘として認めると言い出します。実は9年前にセント・ヘレナ島で亡くなったというナポレオンが実はまだ生きていて、その塔に幽閉されているという噂があったのです。

「小学校最後の夏休みの冒険譚」みたいなのばかりで、ちょっと飽きがきてたミステリーランドなんですが(失礼)、これはまるで違う西洋史物。しかも冒険活劇。ふわふらのともっぺさんから、「三銃士」や「紅はこべ」が好きならきっと気に入ると教えて頂いたんですが、確かにこれはいい! 楽しかったです。目次からして、第一章「コリンヌは奇妙な命令を受けパリで勇敢な仲間をあつめる」、第二章「コリンヌは東へと馬を走らせ昼も夜も危険な旅をつづける」なんて説明口調。どことなく懐かしくて楽しいし、子供のためのレーベルであるミステリーランドに相応しい良質な作品だと思います。あとがきには、なぜ田中芳樹さんがこういう物語を書こうと思ったのかも書かれていて、その気持ちにもとっても納得。
ナポレオンが生きているという噂は本当か? という大きな謎はもちろん、爵位にも財産にも興味のないコリンヌが、なぜ伯爵の言う通りにするのか、そしてなぜ伯爵がそのようなことをコリンヌにやらせるのかなどちょっとした謎もいくつかあって、それらが全てきちんと解決されるのが気持ち良かったです。そしてコリンヌがパリで見つける3人の仲間も、アレクサンドル・デュマやカリブの海賊、ジャン・ラフィットといった実在の人物なんです。そういう風にきちんとした歴史の中に架空の人物を放り込んで活躍させるような話って大好き。子供には勿論、大人が読んでも十分楽しめる作品です。(講談社ミステリーランド)

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高校2年生の冬、夜中に煙草が吸いたくて堪らなくなった和樹は、雪が降る中をひっそりと外に出て自動販売機へ。しかしその帰り道、通りがかった公園の奥に何かの気配を感じたのです。そこにいたのは真っ白いダッフルコートを着てフードをかぶった1人の女の子。なぜそんな雪の日のそんな時間に女の子が1人で公園にいるのかと不審に思う和樹ですが、「貴方、私が見えるのね?」と言って破顔した少女のペースに巻き込まれて、一緒の時間を過ごすことに。

四日間の奇蹟」を読んでから、ずっと読みたかった浅倉さんの作品。まず雪の情景がものすごく綺麗! きっと浅倉さんの出身地の札幌が舞台なんでしょうね。雪を良く知っている人ならでは、という感じ。そしてその雪の中に現れる少女の存在がとても幻想的~。
そしてそんな幻想的雪景色と対になってるのが、和樹が大学時代や卒業後を過ごすことになる東京。こちらに話が移ってからの展開は、とても現実的。和樹が、自分の適性や世の中の要求を冷静に判断して選択する商業デザインの話もとても面白かったし、めきめきと実力を発揮していく仕事振りとか、自分の仕事に没頭していて他にまるで気が回っていない危うさとか、そんな和樹を巡る会社の人間関係とか、すごくリアル。あくまでも現実的で、何よりも雪の白一色だった故郷と対照的に色彩的に鮮やか。白に始まり、様々な色を経て、そして再び白に戻る物語なんですね。
少女と和樹の会話が、後半になるとちょっと理論的になりすぎて、作品のファンタジックな良さをを少し殺してしまっているかなーとか、鹿嶋美加とのことは、もう少しドラマティックに描かれると思っていたのに!とか、写真家もあれだけ?とか、小さく気になるところはあったんですけど、でも良かったです。「四日間の奇蹟」に比べると、ぐっとくる部分は少なかったんですけどね。雪が降り積もってるのに、とっても暖かい物語でした。(中央公論新社)

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近未来。深刻化していたオゾンホールの問題に対してテレサ・クライトン教授が発明したのは、ウェアジゾンという、大気中のフロン分子と結合してオゾンを破壊する力をなくす化学物質。このウェアジゾンを全世界に散布する計画が、国連によって推進されます。しかしこの物質には、思わぬ副産物がありました。夕焼けや朝焼けといった、空を赤くする光の波長まで散乱させてしまうのです。ウェアジゾンの効果は150年。ウェアジゾンを散布すると、地球から150年もの間、夕焼けや朝焼けが消えることになると分かり、混乱が巻き起こります。

今までのようなノスタルジックでちょっぴり怖い作品群とはがらりと変わったSF作品。環境問題が背景となっていますが、夕焼けというどこかノスタルジックなモチーフが絡んでいるのは朱川さんらしいですね。
国連の計画のために日本にやって来たテレサが知り合うことになる人々とのドラマの積み重ねはさすがに濃やかに描かれているし、オゾン層破壊という問題を取り上げたのはいいと思うんですけど、夕焼けを失うことに対してマスコミを始めとする人々が感情的になっているだけで、それ以上の掘り下げがなかったのがとても残念。最後の結末も、あらら、そう来ちゃいますか...!という感じ。肝心のイエスタデーという人物に関しても、イマイチ良く分からないままだったんですよねえ。うーん。でも読んだ後に改めて夕焼けを見ると、もしこれが見れなくなってしまったら... と、しみじみ考えちゃいました。(角川書店)


+既読の朱川湊人作品の感想+
「かたみ歌」朱川湊人
「さよならの空」朱川湊人
「花まんま」朱川湊人
Livreに「都市伝説セピア」「白い部屋で月の歌を」の感想があります)

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冴えない中学教師の久保が祖父の遺品の中から見つけたのは、明治時代に日本を訪れた著名な女流探険家「I・B」との思い出を綴った、とある青年の手記。久保は、その手記を書いたのは明治時代に通訳ガイドとして活躍した伊藤亀吉ではないかと考え、自分が顧問を務める郷土部の唯一の実働部員・赤堀と共に、この文書を読み解いてみようと考えます。しかしその手記は、途中で終わっていたのです。耕平は伊藤亀吉の孫娘と思われる人物に、協力を求める手紙を出すことに。

CROSS-ROADの瑛里さんにオススメされた本。ここに登場する「I・B」とは、「日本奥地紀行」を書いたイザベル・バードで、手記を書いているとされているのは、実在した明治時代の通詞・伊藤鶴吉(作中では亀吉)がモデルのようです。
いやあ、良かったです。何がいいって、まずこの作品に登場する亀吉の手記が! 久保がカタカナ交じりの古い文を現代文に訳したという設定だし、言ってしまえば下手な翻訳文のような感じなんですけど、明治時代の横浜の雰囲気がすっごく伝わってくるんです。そして伝わってくるといえば、「I・B」と旅をするうちに亀吉の中に芽生えてくる感情も。「I・B」は、20歳の亀吉の倍ほどの年だし、最初は西洋人の女性なんて自分と同じ人間とも思ってなかったようだし、自分の気持ちにもずっと気づかないままなんですが、何とかして「I・B」を笑わせようと頑張ってたりする亀吉青年の姿が、微笑ましくも切なくなっちゃうんです。最後の船のシーンもいいんですよねえ。
そして、その亀吉の手記を研究する久保と郷土部の赤堀真、亀吉の孫娘の田中シゲルという、どこかピントのすれた3人の組み合わせも楽しかったです。この3人のやりとりは何ともほのぼのとしていて、亀吉の手記部分とは好対照。そして最後まで読むと、物語の最初と最後に配置された「彼女」の思いもしみじみと伝わってきて。何層にもなった人々の思いが熱く感じられました。(講談社)

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ポール・ギャリコ2冊。まずは河合隼雄さんの「ファンタジーを読む」(感想)にも挙げられていた「七つの人形の恋物語」。(この表紙がやけに怖いんですが、私が読んだのはこれじゃなくて金子國義さんの挿画による角川文庫版) いやあ、すごく良かったです。ポール・ギャリコの作品はこれで14冊目で、これまでもそれぞれに良かったんですが、最初に読んだ「ジェニィ」と「トマシーナ」がダントツだったんですよね。この「七つの人形の恋物語」はそれ以来のヒットかと。どこがどう良かったのか、言葉にするのがとても難しいんですが...

その物語は、芝居で身を立てようとパリに出てきたものの上手くいかず、今にもセーヌ河に身投げをしようとしていた少女・ムーシュに声をかけたのは、人形芝居一座の赤毛の人形。ムーシュは次々に登場する7つの人形たちと意気投合、その会話は通りすがりの客たちにも受けて、ムーシュはそのまま一座に加わることに。でもその人形たちの操り手であるミシェルは冷酷そのものの男で... というもの。

皮肉や意地悪も言うけど、本質的にはとても優しい人形たち。この人形たちとムーシュとのやり取りが生き生きとしてて楽しいんです。自殺しようとするほど思いつめていたムーシュが、気づけばすっかり癒されてしまっていたほど。最初は、この人形たちが実は生きていたというファンタジーかと思ったんですけど、そうじゃないんですよね。となると、その操り手であるミシェルにも本質的にそういう部分があるんだろうと思うのですが、これが全然。優しさや憐れみなどまるで知らずに育ったミシェルは、ムーシュの純粋さが許せず、何かといえばムーシュに辛く当たります。それどころか、部屋が1つで済めば安上がりだなんて理由でムーシュを陵辱してしまうほど。そこには愛情などまるでなくて、自分が持ってないものを持ってるムーシュを壊してしまいたいという思いだけ。でも、夜、ミシェルがムーシュに冷酷になればなるほど、昼の人形たちはムーシュに優しくなって...
ミシェルの冷酷さが人形たちの優しさを際立たせてるし、逆に人形たちの優しさはミシェルの冷酷さを際立たせていて、でもムーシュには絶えずその両極端の現実に苛まれることになるんです。そして最後の収束。いや、もう、上手く説明できないんですが、「でも、僕らって誰なんだ」という言葉が何とも言えません。

「スノーグース」の方もとても良かったです。ここに収められているのは、「スノーグース」「小さな奇蹟」「ルドミーラ」の3編。どれも決して派手とは言えないんですが、凛とした美しさと静かな強さがありました。大きな愛情を感じる物語。
「七つの人形の恋物語」も「スノーグース」もごくごく薄い文庫本なのに、読むのにものすごく時間がかかっちゃいました。というのは決して悪い意味ではなくて、じっくりと読んだという意味で。矢川澄子さんの訳も良かったんでしょうね。さて、「ファンタジーを読む」の「七つの人形の恋物語」の部分を読み返そうっと。(角川文庫・新潮文庫)


+既読のポール・ギャリコ作品の感想+
「トマシーナ」ポール・ギャリコ
「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ
「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ
「われらが英雄スクラッフィ」ポール・ギャリコ
「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ
「猫語の教科書」ポール・ギャリコ
「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」他2冊 ポール・ギャリコ
「七つの人形の恋物語」「スノーグース」ポール・ギャリコ
「トンデモネズミ大活躍」「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ
「ザ・ロンリー」ポール・ギャリコ
「「きよしこの夜」が生まれた日」ポール・ギャリコ
Livreに「ジェニィ」の感想があります)

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去年「精霊の守り人」「闇の守り人」「夢の守り人」と読み進めていた守り人シリーズ。その後、積読本減らしのために図書館自粛期間に入ってしまって途切れていたのですが、ようやく続きが読めましたー。やっぱりこのシリーズはいいですねえ。決して派手じゃないんだけど、すごく好きです。ハードカバーだし、字が大きいから図書館で借りてるけど、文庫本になってくれたら絶対揃えるのに! そしてバルサとチャグム皇子の出会いから始まったこのシリーズ、どうやらバルサを主人公にした「守り人」シリーズと、チャグム皇子を主人公とした「旅人」シリーズに枝分かれしたようですね。今回4冊積み上げてて気づいたんですが、「守り人」は二木真希子さん、「旅人」は佐竹美保さんがイラストを描くことになったのかしら?
今までは一応1冊ずつで完結してたんですが(「神の守り人」は2冊組ですが)、「蒼路の旅人」は、これだけでは完結していません。というか、ここからまた新たな物語が始まったみたいな感じ。(表紙の色合いがこれだけ違うのも、それを意識してるのでしょうか) この行方がどうなるのか早く読みたい! バルサやタンダも好きなんですけど、チャグム皇子も好きなんですよねえ。
そして守り人&旅人スペシャルサイトなんてものも見つけました。次は守り人の物語が出るそうなんですが、既に「炎路の旅人」という作品も書かれているようで... これに関しては、「読みたいという読者の声がありましたら、いずれ出版する機会もあるかなぁと思っております」とのこと。勿論読みたいに決まっていますとも! ぜひぜひ出版をお願いしたいものです。
2つに枝分かれしたシリーズも、最終的にはまた1つに戻るのでしょうね。これからどのような物語になっていくのか本当に楽しみです。(偕成社)


+シリーズ既刊の感想+
「精霊の守り人」「闇の守り人」「夢の守り人」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「虚空の旅人」「神の守り人 来訪編」「神の守り人 帰還編」「蒼路の旅人」上橋菜穂子
「天と地の守り人」1~3 上橋菜穂子
「流れ行く者 守り人短編集」上橋菜穂子
「バルサの食卓」上橋菜穂子・チーム北海道

+既読の上橋菜穂子作品の感想+
「獣の奏者」1・2 上橋菜穂子
Livreに「狐笛のかなた」の感想があります

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東中島で強盗事件が起こります。被害者は一緒に暮らしている姉妹。妹が刃物で傷つけられていたものの、強奪されたのは現金2万円のみ。しかし姉妹が可愛がっていたチワワも盗まれていたのです。

「狼の寓話」に続く、南方署強行犯シリーズ第2弾。
近藤史恵さんのブログ「むくいぬ屋仮宅」で「犬猫好きの人には、鬱になる内容かも」と書かれてるとは聞いていたのですが、確かにそうでした...。前作もすごーく痛い内容だったんですけど、今回もかなりキツかったです。あんな病気があるなんて、知らなかったよー。あ、知らないといえば、長年動物を飼ってる割に「虹の橋」の話も知らなかったんですけど、検索してみるとものすごい数がヒットしてびっくり。へええ、そうだったんですか。もしかしてものすごーく良く知られてる話だったのでしょうか! でもそういうのを逆手に取る人もいるものなんですね。(怒)
内容的にも、動物の話が人間の話に絶妙にリンクしてる辺りが凄く良かったんですけど、あとがきに、動物絡みの事件というのは、動物が嫌いな人間よりもむしろ動物好きの人間のせいで起きると書かれていたのが痛かった。そうなんですよねえ、動物嫌いの人って、ものすごい迷惑でも掛けられない限り、自分から動物には関わろうとはしないですものね。一般の飼い主以外にも、動物愛護団体のボランティアをしてる人間とか、ブリーダーとか、他にも色んな立場の人が出てきて、もうほんと色々考えさせられちゃいます。動物が好きで、しかも最初は善意から始まってることだけにやり切れない...。(徳間ノベルス)


+シリーズ既刊の感想+
「南方署強行犯係 狼の寓話」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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