2006年5月 Archive

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ニューヨークの有名企業で働くキャリアウーマンのダイアナは、3年以上も前の失恋を未だに引きずっている状態。それでも占星術師で霊能力者のマーガレットおばさんに、これから3年間は人生でも最高の時だと約束されて、楽しみにしていました。しかしそのそんな時、両親と兄の乗った車が酔っ払い運転のトラックと激突。ダイアナはいきなり家族を3人とも失ってしまいます。どん底まで落ち込んだダイアナは仕事を辞め、車でふらふらと旅に出るのですが、しニュージャージーの田舎道で、バイクに乗った老女・ロージーをはねてしまい...。幸いロージーは無事で、ダイアナはロージーと彼女の孫・ルイーザの家に滞在することに。

私にとってアメリカ人、それもニューヨーク在住のキャリアウーマンといえばドライなイメージなので(単純思考)、これほどウェットな人もいるのかと少し驚きましたが、自分でも感情を持て余しているダイアナの気持ちは伝わってきましたし、ダイアナがロージーやルイーザに、なかなか自分の家族の事故のことを言おうとせずにいた気持ちも良く分かります。本当に悲しいことがあった時は、下手に同情の言葉をもらっても困ってしまいますものね。でもそんなダイアナに投げつける、ルイーザの大人気ない言動は傍から見ていても見苦しいほど。いくら美人で魅力的でも、言葉の暴力というのは決して許されるべきことではないはず。...とは言え、この時のダイアナに限って言えば、ルイーザの存在が逆に良かったような気もします。人の振り見て我が振り直せではないですけど、自分よりも困ったお嬢さんであるルイーザの相手をして振り回されているうちに、ダイアナはいつの間にか元の自分を取り戻しつつあったのですし。
水面に浮かんだ何千何百というクランベリーの赤い実の色と水の青、紅葉した木々と長靴の黄色、コバルトブルーの空。でもこの作品の文章からは、今ひとつその情景が思い浮かべられなかったのだけが残念。実際に見てみたくなりました。(ハヤカワepi文庫)

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rosa_banksiae_lutea01.jpg少し前からモッコウバラが咲き始めてます。モッコウバラは中国原産の一季咲きの蔓薔薇で、病気や虫にも丈夫だし、枝がかなり伸びるんですけど、しなやかで棘がないので扱いやすい薔薇。でも黄色と白とあって、うちにはどちらもあるんですが、同じ種類の割に花の形はずいぶん違うんですよね。黄色の方がきちんと整っていて、白い方は、なんだかティッシュをくしゅくしゅとして作ったお花のような... 黄モッコウバラの正式名は「ロサ・バンクシア・ルテア」、白の方は「ロサ・バンクシア・アルバ」なので、厳密には、色違いというわけではないのかもしれません。黄モッコウバラは無香なのに、白モッコウバラは香りがするし... とは言っても、うちのはそれほど香ってくれないのですが。
普段の私なら白い花の方が好きなんですが、モッコウバラに関しては、黄モッコウバラの方が断然好き。でもそれは白モッコウバラには内緒です。(笑)

rosa_banksiae_lutea02.jpg rosa_banksiae_alba01.jpg rosa_banksiae_alba02.jpg

green_ice01.jpgそして右の花は、ミニバラのグリーン・アイス。なぜこれを一緒に出したかといえば、こちらの方が、花の形としては黄モッコウバラに近いかも~ということで。上の白モッコウバラの写真でも、雰囲気は少し分かって頂けるんじゃないかと思うんですが、ほんと花びらがくしゅくしゅなんですよ。花の形では、グリーン・アイスの方が断然整ってます。グリーンアイスの方が花は少し大きいんですけどね。
このグリーンアイスは、咲き始めは白で、だんだんと淡いグリーンになるという薔薇。この写真だと白ばっかりなんですが、グラデーションになってるのも素敵です~。

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暗黒の女王・ドリーニは、双子の妹である光の女王・ロリーニの2つの世界を奪い、今またその魔の手を、現在ロリーニがいる<アトラントン地球>に伸ばそうとしていました。そしてその頃、何かに駆り立てられて天の住まいから旅立ったクマ、山の麓の家で旅支度を始めた小人のブロコ、ブロコに出会って自分も出発の時だと感じたカワウソが出会い、一緒にカリクス・ステイの川を越えて<時に先だつ世界>へ。

光の輪4部作。
とても「指輪物語」を連想させる物語。ロリーニ率いる<光の輪>側が持っていて、暗黒の女王・ドリーニとが狙っている<神聖なる箱>は、まるであの指輪のようだし、登場する魔法使いはガンダルフ、小人とカワウソとクマはホビットたちみたい。でも、基本的には悪くなかったんですけど... どうも全体的に説明不足なんですよね。ここは世界がいくつもあって重層的に並んでるみたいなんですけど、それぞれどういう存在なのかも分からないし、全体像も見えてこない。訳者あとがきによると<光の輪>には魔法使いが7人いて長となってるらしいんですけど、それも今ひとつ掴めなかったし、<神聖なる箱>が持っているらしい<5つの秘密>についても同様。
それに、過去・現在・未来のことが全て書かれている<黄金の書>というのが存在するんです。別にそういう書があっても構わないんですけど、そういう本が登場したら、大抵、どうとでも受け取れるような文章で書かれていて、全てが終わった後に「そういうことだったのか」になるのが普通だと思うんですよ。全てを知ってる人がいても、軽々しく口にしたりしないし。でもこの作品では、「サイベルさまがお戻りになることはわかっております。そう定められておりますから、ご心配には及びません。...(中略)...ご帰還のことは<書物>に記されています。」なんて台詞があったりするのです。もう未来は全て決まっていて、変わる余地はないということなのかしら? そんな風に未来が決まってると知ってたら、やる気を殺がれる人も結構いると思うんですけど、なんでみんな「自分の役割を果たさなくちゃ」って前向きでいられるのかしら。私だったら絶対気が緩んじゃって怠けちゃうだろうなあ。なんてところに、ひっかかっちゃいました。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のニール・ハンコック作品の感想+
「二人の魔法使い」「光の女王ロリーニ」「終わりなき道標」「聖域の死闘」ニール・ハンコック
「竜の冬」ニール・ハンコック

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小市民としての道を追求してやまない小鳩くんと小山内さん。周囲は2人のことを恋人同士だと思っているのですが、実は2人の関係はお互いをかばい合うためだけのもの。そして高校2年生の夏は、甘いものをこよなく愛している小山内さんのたっての希望で、小山内さんの夏の運命を左右するという「小山内スイーツセレクション・夏」を完遂することに。

「春期限定いちごタルト事件」が好評だったため、「夏期限定」も書かれることになったという小市民シリーズの2作目。
謎までもがあまりに小市民的で小粒、謎解きのための謎といった遊びの要素が強いように思えた「春期限定いちごタルト事件」は、どうにも物足りなかったんですけど、こっちは面白かったです! 今回も日常の小さな謎から始まるんですが、思わぬ方向へと発展していってびっくり。小鳩くんと小山内さんの目指す「小市民」についても、前作ではどこか地に足が着いていないような違和感を感じてたんですが、こちらでは十分納得。いやー、いいですねえ。しかもまさかこういうエンディングを迎えるとは...。最後まで読んでまた最初に戻ると、各所にきちんと伏線があったのも分かるし、同じ情景がまた全然違った風に見えてくるのが怖いほど。前作が小粒すぎるほどの日常の謎だったことも、今回の驚きに一役買っているんでしょうね。前作が出た時点では、シリーズ化は決定していなかったはずなのに、まるで全てが計算づくのようじゃないですか! そして、ここで終わり、というのも私としてはアリだと思うんですけど(ブラックだ~)、次は「秋期限定モンブラン事件」が出るようですね。ここから一体どんな展開を見せてくれるのか、どきどき。ここから話をどう持っていくかって、難しそう。
ただ、甘い物があまり得意ではない私には、読んでいるだけで胸焼けしてきそうな作品でした。(あのシャルロットなら、いけそうですが) 次回のモンブランも、私には食べられないのよ~。でも、甘い物好きの人にはきっと堪らないんでしょうね。(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信
「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信

+既読の米澤穂信作品の感想+
「犬はどこだ」米澤穂信
「クドリャフカの順番 『十文字』事件」米澤穂信
「ボトルネック」米澤穂信
「遠まわりする雛」米澤穂信
「インシテミル」米澤穂信
Livreに「氷菓」「愚者のエンドロール」「さよなら妖精」の感想があります)

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たらいまわし企画・第23回「笑う門には福来たる! "笑"の文学」の時に、おかぼれもん。のpicoさんが挙げてらした本。(記事
群ようこさんの、様々な音にまつわるエッセイです。

友達のお姉さんの影響もあって、小学校の時からビートルズやストーンズといったロック系にのめりこんでいたという群ようこさん。私も中学頃からは洋楽ロック一辺倒だったし、「そうなったらもう、歌謡曲なんて屁のようなものだった」というのは、すごくすごくすごーーーく良く分かるのだけど... それなのに、なぜまたいきなり、北島三郎の「函館の女」に「がーん」と来てしまうのかしら! 「好きになるはずがないと思えば思うほど気になって仕方がない」という気持ちは分からなくもないけど、なんでよりによって「函館の女」! しかも次に気になったのが、中条きよしの「うそ」って...!(笑)
私は洋楽が好きになってから、どんどん時代を遡って聴いていったので、古いのも大好きだし、ストーンズやジャニス・ジョプリン、プリンス、トーキング・ヘッズ、マービン・ゲイ、マーク・ボランといった名前を見てるだけでも嬉しくなっちゃうんですが(とは言っても、このメンツって時代がバラバラだな)、群さんご自身も書いてらっしゃるように、洋楽ファンは洋楽一辺倒のことも多いと思うんですよね。それなのに群さんは結構広く聞いてらしたようで... あとは「ええっ、そういうのも...?!」の連続。そこに登場する面々に時代のギャップを感じてしまったこともあり、なんだか終始妙な気分でした...(^^;。

やっぱり一番面白かったのは、愛猫「しい」のテーマソングの話ですね。猫を膝に乗せたり抱っこしている時に、無意識のうちにわけの分からない歌を口づさんでることに気づいていたという群さん。漫画家さんには変わった人が多いとか友達と笑いながらも、実は笑えないことに気づいてしまいます。このテーマソングは即興で口をついてくるものらしいんですけど、歌詞がすごいんですよー。猫に対する愛情がたっぷり。第三者がその場にいたらびっくりするだろうなあ...。そういえば私はまだ歌が口をついてくるほどではないし、赤ちゃん言葉にもならないや、と自分はまだまだ飼い主として甘いということに気づいたのでした。(幻冬舎)

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小学校の頃に父親と行っていた床屋にいたのはホクトさん。高校を出ると理容学校に通い、研修のためにフランスへ。たまたま出会った高名なパントマイミストの舞台に魅せられて弟子入りしてしまうものの、父親が急逝してホクト理容室を継ぐことになったというホクトさん。しかし色んな人の髪を切ってみたいという思いから、じきに床屋を閉じて、放浪の旅に出てしまいます。

流しの床屋・ホクトさんを中心にした12の短編集。店を閉じていなくなってしまった後も、他の物語に、流しの床屋として髪を切っているホクトさんの姿が垣間見えます。でも最初は普通の街の床屋さんとして登場していたホクトさんは、いつの間にか外国の街角にも姿を現すようになり、「ある小さな床屋の冒険」という映画になったり、トナカイの肉と引き換えに見知らぬ男の髪を切った「ノア」になっていたり。繋がっているようで繋がっていないようなこの雰囲気は、吉田篤弘さんならではですねー。
でも確かに床屋さんは、鋏1つあればどこででも商売ができますけど... でも、ずいぶん前に読んだスパイ小説で、床屋には町の噂話が集まりやすいから情報収集に便利、というのがあったのが頭の片隅に残っていたせいか(笑)、流しの床屋というのはとても意外でした。商売道具の鋏の入った鞄を持って旅をするホクトさんの姿はとても想像しやすいんですけどね。でも髪を切ってる場面よりも、鞄を持って去っていく後ろ姿が浮かぶのはなぜかしら。...もしかしたら、この装幀の青い空の色のせいかしら。北斗七星と鋏をあしらったこの装幀がとても美しいです。晴れた空、雨の空、夜の星空など沢山の空が登場しますけど、この物語にはこの色がぴったりですね。(文藝春秋)


+既読の吉田篤弘作品の感想+
「百鼠」吉田篤弘
「78」「十字路のあるところ」吉田篤弘
「という、はなし」吉田篤弘
「空ばかり見ていた」吉田篤弘
「それからはスープのことばかり考えて暮らした」吉田篤弘
「小さな男*静かな声」吉田篤弘
Livreに「フィンガーボウルの話のつづき」「つむじ風食堂の夜」「針がとぶ」の感想があります)

+既読のクラフト・エヴィング商會の感想+
「アナ・トレントの鞄」クラフト・エヴィング商會
「犬」「猫」クラフト・エヴィング商會プレゼンツ
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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双子の兄・エサウからは長子としての権利を、そして目が見えなくなった父イサクの祝福までをも奪ったヤコブは、エサウの憎しみから逃れるため、北のハランの地にいる母の兄・ラバンのもとへ。そこでヤコブは美しいラケルに出会い、ラバンの4人の娘たちを妻とすることになります。4人の妻から元気な子供が13人育ち、ヤコブの家は繁栄するのですが...

旧約聖書の創世記に登場するエサウやヤコブ、そしてその妻や子供たちの物語。聖書でいえば、創世記の29章から最後の50章までですね。物語の語り手となるのは、ヤコブの唯一の娘・ディナ。
創世記のエサウやヤコブの物語や、息子のヨセフとエジプトの王・パロの物語は有名だし、何度も読んだことがあるんですが(読んでるとは言っても、信仰の対象としてではなくて、単に読み物としてですが)、ディナに関してはほとんど何も知らなかったし、印象にも全く残ってなかったんですよね。まあ、改めて聖書を開いてみても、ヤコブからヨセフまでの記述は40ページ弱あるのに、ディナに関する記述といえば、ほんの数行。これは覚えてないのも無理はないかな、とは思うんですが、聖書の記述は元々男性中心なので、これでも女性としては十分書かれてる方かもしれません。そしてその「ほんの数行」を元に書き上げられたのが、この「赤い天幕」。あの数行から、1人の女性の生き様が、これだけ生き生きとした物語として再現されてしまうとは... 娘として、妻として、母として生きたディナの波乱万丈な人生が、この数行からこれほど見事に力強く浮き上がってくるなんて、ほんとびっくりです。読み始めた途端に、すっかり引き込まれてしまいました。面白かったです~。
ちなみに題名の「赤い天幕」というのは、女性たちが出産や月の障りの時を過ごす、「女性」を象徴するような場所。まだ大人になっていない少女が、早く大人になりたいと憧憬を持って眺める場所でもあります。もちろん住んでいる場所や民族、信仰する神によって違うので、そういうしきたりを持たない人々もいるんですが、でもだからこそ、ディナにとって、自分の家族を象徴し、自分のルーツを辿るような、大きな意味合いを持つ場所なんじゃないかと思うんですよね。さらにディナは、産婆をしていた叔母のラケルについて、多くの女性たちの出産の介助をすることになるので、物語の中では、「生」や「死」についても繰り返し描かれることになります。数知れない女たちの出産場面と、生命の誕生の力強さ、そして常に存在する死への不安...。いやー、良かったです。やっぱりハヤカワepi文庫は好きだなー。これで丁度20冊目です。(ハヤカワepi文庫)

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