2006年7月 Archive

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古代北欧語で書かれたゲルマン神話および英雄伝説の集成「エッダ」(古エッダ)と、13世紀にアイスランドの詩人・スノリ・ストルルソンによって書かれた「エッダ」(散文エッダ)の中の第一部に当たる神話大観「ギュルヴィたぶらかし」。先日読んだちくま文庫の「エッダ・グレティルのサガ」(感想)には14編しか収められていなかった古エッダなんですが、こちらには37編! これがきっと完訳版なんでしょうね。訳者の谷口氏は、北欧研究の第一人者と言われる方なのだそうです。

相変わらずの注釈の多さで、ちょっと読みにくいんですけど、やっぱり全部載ってると満足感が違いますね。特に、スキーズブラズニルというフレイの船についての記述が(少しだけだけど)増えてて嬉しい! この船こそが、ヒルダ・ルイスの「とぶ船」の船なんですよー。(でも作中でピーターが読んでいた本ほどの記述はまだ見つからない...) それに、ちくま文庫の「エッダ」でも、収録されてる話同士で同じ人物の設定が違ってたり、矛盾するところが多いというのは感じていたんですが、全部載ってると、そういうのをさらに感じます。この「エッダ」でも、例えばブリュンヒルドが「ファーヴニルの歌」とか「シグルドリーヴァの歌」では、ヴァルキューレとしてオーディンに罰を受けてるんですが(オーディンの意図しない戦士を死なせたため)、「シグルズの短い歌」ではアトリ王の妹で、ごく普通の王女として暮らしてるんですよね。ちなみに「ニーベルンゲンの歌」でのブリュンヒルドの設定は、イースラント(アイスランド)の女王だし。そういうのが結構多いです。(そういうのがあまり気にならない時点で、私ってあんまりミステリ向きじゃなかったのかも、と思ったりもします(^^;)

それとスノリのエッダ「ギュルヴィたぶらかし」が、古エッダで難しく語られた世界の成り立ちその他を分かりやすく説明してるので、これがすごく面白いです。こういう風に色んな角度から読むと理解しやすくていいですね。これで一度解説本を読んでからまた戻ってきたら、もっと理解できるんだろうな。と考えると、この本は図書館で借りたんですけど、やっぱり欲しいかも...。文庫になってくれるといいんだけどなあ。それに「スノリのエッダ」の全訳も読みたいなあ。訳してくれる人はいないのかなあ。(新潮社)

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ニーデルラントの王子・ジーフリト(ジークフリート)は、ある日ブルゴントの国に世にも美しい姫がいるという噂を聞き、ぜひその姫を手に入れようと決意を固めます。その姫とは、ブルゴント国王グンテルの妹・クリエムヒルト。ジーフリトは12人の勇士たちを連れて、ブルゴントの国へ向かうことに。

13世紀初め頃に成立された、ドイツの「イーリアス」とも言われる作品。北欧神話の「エッダ」のシグルド伝説が元になってます。
絶賛叙事詩祭り(笑)ということで、叙事詩作品をいくつか読んできましたが、これはやっぱり面白い! クリエムヒルトとブリュンヒルトという2人の女性の口論が思わぬ事態を招いてジーフリトが死に、クリエムヒルトが復讐するという人間ドラマ。基本的に復讐譚は好みじゃないし、その2人の女性の口論の場面も好きじゃないので、今回読むかどうしようか迷ったんですが、読み始めたら面白くて一気に読んでしまいました。現代人にもすごく読みやすい作品だと思います。こういう作品を書いた詩人が無名のままというのが信じられない。

前半はジーフリトの栄華と美しく貞節なクリエムヒルトが中心。ジーフリトの死後、クリエムヒルトは貞節な生活を送りながら復讐を遂げる機会を待つことになるのですが、後半、彼女がフン族のエッツェルの嫁ぎ、実際に復讐への行動をとり始めると、クリエムヒルトがまるで鬼女のように、そしてそれまで卑怯者というイメージの強かったグンテル王の重臣・ハゲネに正義があるかのような描かれ方になって、その変化に驚かされます。前半の宮廷の優雅な華やかさも、後半は壮絶な血みどろの戦いに取って代わられ、これに関してはゲーテも「前編はより多く華麗、後編はより多く強烈」と評しているのだそう。

元となっている「エッダ」とはかなり違うんですよね。クリエムヒルト(「エッダ」ではグドルーン)が復讐を果たすのは一緒なんですが、「エッダ」では、クリエムヒルトよりもむしろブリュンヒルトの方がインパクトが強いんです。「ニーベルング」のブリュンヒルトは美しくても驕慢な女王ですが、「エッダ」では、ただジーフリト(シグルト)のことが好きだっただけというだけで、その純粋さがいいんですよね。
ワーグナーの「ニーベルンゲンの指環」は、話は知ってるものの、本としては未読。こちらも今度読んでみなくっちゃ。(岩波文庫)

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デネ(デンマーク)の王フロースガールは、類まれな館を作らせ、これをヘオロットと命名。しかし日々この館から流れてくる賑やかなざわめきに苛立っていたカインの末裔・グレンデルがある夜、宴の終わった館を襲い、警護の戦士らを虐殺。夜毎に襲来を重ねることに。そしてなす術もなく12年経った頃。イェーアト族の王ヒイェラークの甥・ベーオウルフがグレンデル退治にデネの国へとやって来ます。

8世紀頃に成立したとされている、古英語の英雄叙事詩。英文学史上で一番古い作品とされています。私も大学時代に英語で読みました... とは言っても、古英語は読めないので、現代英語訳だけですが。そういえば日本語で読むのは初めてかも。
各章の冒頭に梗概があるので内容は掴みやすいんですが、物語自体は、すんなりと時系列に沿って進むわけじゃなくて、突然回想シーンが始まったり、将来的な災厄の予感が挿入されていたりするんですよね。中に含まれているエピソードも、ストーリーの展開上必然性があるものばかりではなく... というよりもむしろ関係ない脱線もとても多くて、こういうを読むと、「エルガーノの歌」(感想)のあとがきで井辻さんが叙事詩について書いてらした、「そういう物語は、とほうもなく非合理で、小説のようなちゃんとした結構(多分「構造」の誤植)をもっていなくて、断片的で--うまく言えないのですが--詩のような夢のような、奇形であいまいで、それだから美しいようなところがあります」 という言葉を実感します。私自身は、詩の形式で読めるのが嬉しいんですが、やっぱり初めて読む場合は、物語形式の方がいいかもしれないですね。検索していたらローズマリー・サトクリフの本がかなり評判が良いようで、抄訳とはいえ、そちらも読んでみたくなっちゃいました。
怪物や竜を退治するとなると華やかな英雄譚になりそうなものなんですが、この作品は、宮廷の場面も登場する割にあまり華やかではないです。色彩に乏しいのかも。炎の色とか金色は目につくんですが、基本的に少し暗く沈んだ色調のイメージ。無事に怪物や竜を退治するにも関わらず、どこか哀愁が漂ってます。(岩波文庫)

「指輪物語」のトールキンが、「ベーオウルフ」についての画期的な論文を発表してるらしいんですよね。それが読んでみたいなあ。そしてこの作品、カナダ・アイスランド・イギリスの合作で映画にもなっているらしいですね。かなり評判が良いみたいなので、観てみたい!→Beowulf & Grendel公式サイト

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短編20編と「五十一話集」の入った本。短編20編は、先日読んだ「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」(感想)とほとんど重なってるし、「五十一話集」も、その2冊に続いて出た「最後の夢の物語」に入ってるので、読むのをどうしようかちょっと迷ったんですが、訳者さんは全部変わってるので、こちらも試しに... と読み始めてみると、これがまた全然違う! こちらの「妖精族のむすめ」は荒俣宏編訳で、荒俣さんの訳が半分ほどあるんですが、この荒俣さんの訳で読むダンセイニ、いいですねえ。先に読んだ2冊も含めて、他の方の訳も悪くなかったんですが、個人的には荒俣宏さんの訳が一番好み。なんだかするんと身体の中に入ってくるし、情景ももっと鮮やかに拡がるような気がします。今まで海外作品を読んでいる時に、荒俣さんの訳が特に良かったという印象もなかったので、これにはちょっとびっくり。読んだばかりの話ばかりなのに、ものすごく新鮮な気持ちで読み終えてしまいました。
訳を逐一照らし合わせて読むようなことはしなかったので、細かい違いについては書けないんですが... 「世界の涯の物語」の「女王の涙を求めて」では意味が分からなかった「キャベツ」が、「妖精族のむすめ」では判明したし! あと、「老番人の話」では「秘薬」と訳されてる言葉が、「妖精のむすめ」では「ゲンコツ」になってるのが気になりました。元はどんな言葉なんだろう!
「五十一話集」の方は、それらの短編よりもさらに短く、1~2ページ、多くても3ページほどの掌編。「兎と亀の競走に関する驚くべき真相」ではイソップのウサギとカメの話の知られざるオチがあったり、ちょっと楽しいです。稲垣足穂は、これに触発されて「一千一秒物語」を書いたのかなあ。(ちくま文庫)


+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ
「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ
「牧神の祝福」ロード・ダンセイニ

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はやみねかおるさんのYA向けシリーズ「都会(まち)のトム&ソーヤ」の4作目。クラスメートが応募する、地元のタウン誌の自主制作映画コンテストの締め切りに間に合わせるために、内人と創也がマラソン大会を抜け出す「大脱走 THE GREAT ESCAPE」、「番外編 栗井栄太は夢をみる。」、究極のゲームを作るための資金作りに、内人と創也がテレビのオバケ屋敷探検番組に出演する「深窓の令嬢の真相」、そして「おまけ 保育士への道 THE WAY OF THE "HOIKUSHI"」。今回も前回同様、ショートショートを挟んで中編2編です。

相変わらずのテンポの良さが楽しいシリーズ。「深窓の令嬢の真相」も、いかにもこのシリーズらしい作品なんですが、今回は「大脱走」が面白かったな。ごく普通の中学校生活に、いかにもあり得そうな感じで馴染んでたので、その辺りが個人的にポイント高かったです。でも、前作はショートショートを挟んだ中編同士が繋がって1つの長編になっていたように思うんですけど、今回はそれぞれに独立した短編となっていたのがちょっと残念。そろそろ読み応えのある長編作品を読みたいなあ。
それにしても、「トム」と「内人」の関係にはびっくり。そして卓也の上司の黒川さんについてもびっくり! はやみねさんご自身が気付いてらっしゃらなかったというのは本当でしょうか!?(講談社YA! ENTERTAINMENT)


+シリーズ既刊の感想+
「都会のトム&ソーヤ1」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「都会のトム&ソーヤ 乱!RUN!ラン!」2 はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ いつになったら作戦(ミッション)終了?」3 はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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ダンセイニの初期の作品を集めた短編集。その四大幻想短編集のうち、「世界の涯の物語」には、「驚異の書」「驚異の物語」が、「夢見る人の物語」には「ウェレランの剣」「夢見る人の物語」完全収録されています。短編ばかり全61編。オリジナル短編集と同じく、シドニー・H・シームの挿絵も全て収録。

J.R.R.トールキンやH.P.ラヴクラフト、アーサー・C・クラークを始めとするファンタジー、ホラー、SF作家たちに、日本でも稲垣足穂氏に多大な影響を与えたというダンセイニ。19世紀から20世紀にかけて生きていたという作家さんらしく、現代のファンタジーのようなサービス精神はなくて、むしろそっけないほどなんですけど、じっくりと読めば雰囲気はたっぷり。文章を少し読むだけでダンセイニによって書かれたというのが分かりそうなほどです。
ダンセイニといえば、「ぺガーナの神々」(感想)のような創作神話、「魔法使いの弟子」(感想)のような幻想的な作品、「魔法の国の旅人」(感想)のようなユーモアたっぷりの作品と色々あるんですが、この短編集もバラエティ豊か。幻想的な異世界を感じる作品もあれば、異世界と現代のロンドンを繋ぐような作品もあり、盗賊や海賊が活躍する冒険物あり、幻の都を目の前にしているような作品もあり、酒を片手に聞き出したホラ話のような作品もあり。その結末も、ハッピーエンディングと言えるものもあれば、思わぬ冷たさに突き放されるものもあり、意地悪なほど現実的なものもあり。でも驚いたのは、まるで違う雰囲気の短編が隣同士に来ていてもまるで違和感がなくて、それどころか、異全てがどこかで繋がり合った1つの世界のように感じられたこと。どれもダンセイニにとっては同じ世界なんでしょうねー。幻の都も世界の涯も、全ての道はロンドンに通じる?(笑)
「世界の涯の物語」では、ほとんど神話の匂いを感じなかったのでちょっと意外だったんですけど、「夢見る人の物語」はもっとダンセイニらしい神話の世界を感じる作品集でした。とは言っても、「ぺガーナの神々」ほどではなくて、そのエッセンスという感じですけどね。それと、稲垣足穂の「黄漠奇聞」に登場するバブルクンドの都は、やっぱりこちらが元ネタだったんですね。あの作品の最後に「ダンセーニ大尉」が登場しますものねー。(河出文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ

+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ
「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ
「牧神の祝福」ロード・ダンセイニ

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ペギー・スーシリーズの4作目「魔法にかけられた動物園」と5作目「黒い城の恐ろしい謎」。またしても本を頂いてしまいました。ありがとうございます~。

3巻で「見えざる者」との戦いも決着し、ペギー・スーの冒険もこれで終わりかと思いきや、本国フランスでセルジュ・ブリュソロの元に熱心なファンレターが山のように届き、結局ペギー・スーの冒険もまだまだ続けられることになったのだそう。(このブリュソロは、フランスのスティーブン・キングと呼ばれているという人気作家さんなのだそうです) 最初の目的も果たしてしまったし、これからどんな展開になるのかちょっと心配だったんですけど、むしろ最初の3冊よりも面白かった!
というのも、元々畳み掛けるような展開で一気に読めるシリーズなんですが、時々驚くほどブラックな部分があったりするんですよね。ブラックというよりも、むしろ残酷。なので、本国でそれほど人気というのがちょっぴり不思議だったんですが... でも今回読んだ4巻5巻は、そういう部分が少し薄まっていて、私としてはありがたかったり。
それに、考えてみると1巻の頃とは魔法の扱いもかなり変わってるんですよね。最初はこの世の中でただ1人ペギー・スーだけが妙な能力を持ってる感じだったんですが、3巻でケイティーおばあちゃんが登場してからは、魔法が当然のように存在するようになったし。そうなると、今までちょっと無理してたような部分がなくなって、物語にすごく入りやすくなったような気がします。完全に普通の日常生活の中にちょこっと不思議なことが出てくるような物語も好きですけど、このシリーズは、ちょっとパラレルワールド的に常に不思議なことが存在してる方が似合う! 4巻の冒頭でも、ペギー・スーが泊まっていたホテルでは、宛名を書いて待つだけで、完璧に同じ筆跡で続きの文章が浮かび出てくるという「観光客を面白がらせるためだけの素朴な魔法」が使われてるのが、なんか可愛いんです。
4巻も5巻も地球外生物なんかが登場して、スケールの大きな作品となってます。どちらも一気に読めるんですが、特に4巻の設定がすごくよく出来てて、最後の最後まで面白かったです。5巻の方は、最後の決着がちょっと「あれ?」だったんですけど、それまでは面白かったし。本が客に襲い掛かろうとする呪われた本屋の場面が特に面白かったです。ハリー・ポッターの2作目に出た猛獣の本(?)みたいなのばかりが置いてある店なので、アイディアを頂いちゃったのかな? とも思いましたが。(笑)(角川文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ペギー・スーi  魔法の瞳をもつ少女」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーii  蜃気楼の国へ飛ぶ」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーiii 幸福を運ぶ魔法の蝶」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーiv 魔法にかけられた動物園」「ペギー・スーv 黒い城の恐ろしい謎」セルジュ・ブリュソロ

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