2007年1月 Archive

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ある8月の暑苦しい日のこと。背が高くて痩せっぽちで、みすぼらしい髭を生やした魔法使い・プロスペロは、漠然とした不安感を感じていました。何かがやって来るのは分かるのですが、それが何なのか分からないのです。その日の夜、プロスペロの家を訪れたのは、親友の魔法使い・ロジャー・ベーコン。翌日、家が見知らぬ男たちに包囲されているのに気づいた2人は、隠し扉から脱出することに。

プロスペロという名前は、シェイクスピアの「あらし」に登場する魔法使いの名前と一緒。わざわざ別人だという断ってありますけどね。でもロジャー・ベーコンは、13世紀のイギリスの哲学者でありカトリック司祭でもあるロジャー・ベーコンみたいです。
この作品で何が一番楽しいかといえば、昔ながらの童話に出てくる魔法使いらしい家が描かれていること。プロスペロの二階建ての大きな家は、「骨董屋の悪夢にでてきそうな」滑稽な安ぴか物でいっぱい。こういう部分は、作者も楽しんで書いてるんでしょうねー。私が一番気に入ったのは、プロスペロが旅先で使う、普段は小さな銀の嗅ぎタバコ入れの中に入っているヒマワリの形の灯りでした。
でもそういう部分は楽しいんだけど、基本的に話の展開にはあまり関係ないし、しかもその展開自体、私にはどうも掴みにくかったです。あんまり物語に入り込めないまま終わってしまいました...。これは本当はとても面白い作品で、実は私に分からなかっただけなのかしら?なんて思いつつ読み終えるのって、イヤですねえ。あ、でもこの作品、作者はアメリカ人なんですが、アメリカというよりもイギリス的なユーモアのある作品なんですよね。もしかしたらそれが合わなかったのかもしれません。イギリスの作品は基本的に好きなんですが、イギリス人のユーモアって、あまりピンと来ないことが多いような気が...。(嗚呼)(ハヤカワ文庫FT)

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ダークエンジェルは、若く美しい乙女をさらって花嫁にしては、その魂と血を抜き取るという吸血鬼。その13番目の花嫁となったのは、エイリエルの美貌の主人・エオドゥインでした。エイリエルと一緒に、従姉妹の結婚式のための花を山の上に摘みに行った時、ダークエンジェルに攫われたのです。一旦山を降りるものの、エイリエルはエオドゥインの復讐をするため、もう一度山を登ることに。そして13人の魂を抜かれた花嫁の侍女としてダークエンジェルに攫われることになるのですが...。

まー、なんて可愛らしいお話なんでしょー。本の感想にはあまり書かないようにしてるんですが、まさに「少女漫画みたい」という言葉がぴったりの作品でした... ものすごーく絵にしやすそう。しかもちょっと昔の少女漫画に実際にありそうな雰囲気。でもライオンが出てきたり湖の白い魔女と戦ったりという部分はナルニア的だし、ヴァンパイアが羽を持って空を飛ぶことからイカロスと呼ばれていたり、湖の魔女がローレライと呼ばれてるところは、なんだかタチの悪いパロディみたい...
なんて思いながら読み進めてたんですが、途中でこの世界の成立ちや神々について書かれている部分があって、そこを読んだ途端、印象が変わりました。オケアヌスと呼ばれる星(多分地球... でもって、この世界の舞台は月)から炎の車に乗ってやって来たラヴェンナと呼ばれる古き神々が地上に空気や水、そして生命をもたらしたこと、このラヴェンナが星馬や太陽のライオンなど世界の守護者を創り出したこと、しかしオケアヌスでは大いなる戦いと疫病が起こり、そのため炎の車は来なくなったこと、そのためこの世界の環境は次第に変わり始めたこと、ラヴェンナはドームの街に入り、そこは封じられて外の世界との接触が絶たれたこと... なかなか興味深かったです。これは未来の地球の物語でもあるのでしょうか。これこそが、メレディス・アン・ピアスとしてのオリジナルな部分なんでしょうね。(メインの部分はユングの患者の幻覚からインスピレーションを受けてるそうだし、あまりオリジナリティがないと言ってもよさそう) この辺りをもっと前面に出してくれればいいのにな。
アメリカではこの作品が好評で、早速3部作として続編も書かれたのだそう。続編では一皮剥けているのかな? 一歩踏み出すだけで、ものすごく魅力的な世界を見せてくれそうな気配が感じられるので、もしそうなら読んでみたいものです。どうやら日本語には訳されてないようですが...。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のメレディス・アン・ピアス作品の感想+
「ダークエンジェル」メレディス・アン・ピアス
「炎をもたらすもの」「闇の月」「夏星の子」メレディス・アン・ピアス

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見慣れない黒ずんだ建築物のある都市を暗黒の生き物が襲い、深夜の街を慌てふためきながら逃げまどう人々。それはジルのみている夢でした。しかもジルは、自分が夢を見ているということをよく分かっていたのです。しかしその夢はとてもリアル。同じような夢を何度も見るうちに、それが単なる夢ではないことにジルは気づき始めます。そしてある晩ジルがふと目覚めると、アパートの台所のテーブルには夢の中で出会った魔法使いが座っていたのです。

ダールワス・サーガ3部作。ダールワスという、中世ヨーロッパ的な異世界の王国を舞台にしたファンタジーです。異世界に巻き込まれるのは、大学院で中世史を専攻しているジルと、偶然現れた自動車整備工・ルーディの2人。
作者のバーバラ・ハンブリー自身が中世史を専攻していたそうで、ダールワスの描写にもそれがよく表れていました。石造りの建物の重厚で陰鬱な雰囲気も、宗教と政治の対立具合も、とても中世っぽい雰囲気。となると雰囲気はとても好きなはずなんですが... どうも今ひとつ入り込めませんでした。研究者肌のジルには実は戦いの才能があって衛兵にスカウトされたとか、自動車整備工のルーディには魔法の力があって、魔法使いの弟子になったとか、ちょっと普通とは違う役割分担のところも面白いし、さらにこの2人の最終的な決着の辺りも普通のファンタジーとは違っていて個性的だなと思ったんですけど... 中世の世界に現代人がタイムスリップして現代の知識を生かすというのも嫌いじゃないはずなんですけどねえ。どこかSFっぽさが感じられてしまうのが、違和感だったのかしら。

結局、ジルとルーディをこの世界に連れてきた魔法使いインゴールドの言葉が一番興味深かったです。

魔法使いは良い人々ではない。親切な心が魔法使いの一番の特徴になることはめったにない。魔法使いの大半は悪魔のように高慢だ。特に数ヶ月しか訓練を受けておらぬ者は。だからこそ会議があるのだ。宇宙の道を変えられると知ったうぬぼれをへこますものがなくてはならぬ。

これにはちょっと説得力がありました。なるほどね。(ハヤカワ文庫FT)

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つい先日、nineさんに「千野帽子さんと四季さんってもしかして似たタイプ?」と言われて気になっていた本です。どこが似てるって、「本に対する愛のそそぎかたとか」だとか。似てますか? いや、実はよく分からなかったんですが...(^^ゞ
そういえば、千野帽子さんって奥泉光さんの「モーダルな事象」の解説を書いてらっしゃる方でしたねー。あの解説はインパクトが強かったなあ。...なんてことを思いながら、書店で本を探していた私。本当はパラパラと見るだけのつもりだったのに、本のデザインがとーっても可愛かったので思わず買ってしまいましたよ! カバーの紙の質感もデザインにぴったりだし、本の天の部分のざくざくしたとこも、なんだか懐かしい雰囲気で素敵なんです。とは言っても、装幀だけで買ったのではないのですが。(笑)

批評家でもなんでもない、ただの本好きにすぎない私でも、もちろん知っています。ひとりでいる時間を大切にする、聡明で誇り高いお嬢さんは、いつも本を二冊以上--読みかけの本と、出先でそれを読み終わってしまったときのための本と--鞄に入れて持ち歩いてるんだってことを。
ベストセラーは、ふだん本を読まない人たちが買うからベストセラーになる。本好きのあなたのための本は、そんなところにはありません。一冊一冊のスヰートな書物が、喫茶店や地下鉄のなかでの、よいお友だちである以上、本との出会いは叮嚀なものでありたいと、あなたは思っているのですから。

だって「はじめに」のこの辺りが...! いや、私が「志は高く心は狭い文科系小娘」なのかどうかはともかくとして。(笑)

普通のブックガイド以上に未読本が多くて焦ったんですが、面白そうな本が並んでいて、ぜひ読んでみたくなりました。特に2章「だれもあの子を止められない」、それと11章「『トモダチ以上』な彼女とわたし。」(!) 今はあまり日本物の気分ではないので、実際にこの本に紹介されている本を手に取るのは少し先のことになりそうなんですけどね。
思わず手元に置いておきたくなるような、チャーミングなブックガイドでした♪(河出書房新社)


+既読の千野帽子作品の感想+
「文藝ガーリッシュ」千野帽子
「世界小娘文學全集 文藝ガーリッシュ舶来編」千野帽子

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ベルガラスに続けて語られたのは、ポルガラの物語。
ポルガラの言う通り、「そもそも、"本当に起きたこと"がひとりの人間によって説明されうると考えるほうが、ばかげている」わけで、同じ歴史が今度はポルガラの立場から語られることによって、細部まで明らかになっていきます。ポルガラが赤ん坊の頃からベルガラスに反抗的だった理由も、ポルガラと双子の妹・ベルダランとの絆も、ポルガラの飲み込みの良さも、ベルガラスに対するポルガラの態度の変化も、ベルガラスの話を聞いているだけでは分からなかった部分。今はもうない美しい都、ボー・ワキューンでのことについても、ポルガラでないと語れない部分。やっぱりこの2つの物語は合わせ鏡のように存在しているのですねー。
物事をその全体像から捉えているベルガラスの話が枠組みとすれば、濃やかに細部を捉えているポルガラの話はその肉付け。おのずと語る物語も変わってくるというもの。「世界」や「運命」との向き合い方が全然違う! そしてベルガラスは人間の寿命を運命だと割り切って考えて、予め慎重に距離を置いているように見えるんですが、ポルガラはリヴァの後継者たちを育てるという仕事の関係もあって、そうは簡単にいかないんですよね。それぞれの時代の人々との結び付きはポルガラの方が遥かに強くて、愛される喜びも深い代わりに失った時の悲しみも深い... 特に印象に残ったのは、初代ブランドとなったカミオン、ボー・ワキューンで知り合った大工のキレーン、そして名誉の騎士・オントローズ。
「魔術師ベルガラス」も「女魔術師ポルガラ」もファンサービス的な作品で、本編に比べるとやや落ちると思うんですけど、やっぱりファンにとっては一読の価値がありますね。面白かったです。(ハヤカワ文庫FT)


+シリーズ既刊の感想+
留守中に読んだ本(18冊) (「ベルガリアード物語」全5巻の感想)
「マロリオン物語」全5巻 デイヴィッド・エディングス
「魔術師ベルガラス」全3巻 デイヴィッド&リー・エディングス
「女魔術師ポルガラ」全3巻 デヴィッド&リー・エディングス

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魔術師ベルガラスが語る、「ベルガリアード物語」の前史。まだ神々が地上を歩いて人々と暮らしていた頃。ガラスという少年が、生まれ育った村を出て放浪の旅をしているうちに「谷」にたどり着いてアルダー神の弟子となり、神々の争いと「珠」に関わるようになっていった過程を語ります。ベルガラスの7千年にも及ぶ人生、そしてこの世界の歴史の物語です。

一昨年ハヤカワ文庫FTで「ベルガリアード物語」が復刊されて、続けてこれと「女魔術師ポルガラ」が刊行されたんですよね。本当はその時に読もうとしてたんですが、森山樹さんに「マロリオン物語」のネタばれがあるから、「マロリオン」を読んだ後にした方がいいと言われて、やっぱり読むのをやめたという経緯が。その時は「前史なのになんでネタばれが?」なんて思ってたんですが、読んでみて納得。確かに前史は前史なんですけど、語り始めるのが「マロリオン物語」が終わって間もない頃という設定なので、ほんと随所にネタばれがありました! 森山さん、その節は読むのを止めて下さってありがとうございました。あそこでこれを読んじゃってたら、「マロリオン」の面白さが半減するところでしたよ...。ハヤカワは、一体なんでこんな順番で刊行したのかしら?

物語はベルガラスの語り口で書かれていくので、今までに比べるとちょっと軽いです。私としてはもう少し落ち着いてる方が好みだし、慣れるのにちょっと時間がかかりましたが、一旦慣れてしまえばこれはこれで軽妙洒脱。今まで、旅の中で断片的に語られてきたことがここで1つの大きな流れとして分かるのが嬉しいですねえ。このまま「ベルガリアード」を再読したくなっちゃいます。既に定められている行動をなぞらなくちゃいけないところには、「ベルガリアード」や「マロリオン」の時同様、ちょっと解せないものを感じてしまったんですけど、いくつもの予言書が書かれていく過程なんかを見てると、なるほどなあって思いますし♪
そしてこの3冊でベルガラスの話が終わると、次はポルガラの話? もしかして、ベルガラスの話と合わせ鏡のような物語になるのでしょうか。ベルガラスの話ではポルガラの気持ちが今ひとつ掴めないところが多かったので、それが分かるのが楽しみ。それにポルガラの視点から見ると、同じことでも全然違った話になりそうで興味津々。ということで、続けて「女魔術師ポルガラ」に行きまーす。(ハヤカワ文庫FT)


+シリーズ既刊の感想+
留守中に読んだ本(18冊) (「ベルガリアード物語」全5巻の感想)
「マロリオン物語」全5巻 デイヴィッド・エディングス
「魔術師ベルガラス」全3巻 デイヴィッド&リー・エディングス
「女魔術師ポルガラ」全3巻 デヴィッド&リー・エディングス

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tarahon30.jpgたらいまわしももう30回目なんですね! 私が参加したのは、ちょろいもさんが主催してらした第4回「秋の夜長は長編小説!」から。それからは多分皆勤賞なのではないかと思います。いやあ、こんなに楽しい企画に誘って頂けて、今更ながらとっても感謝。たらいまわしに参加できただけでも、サイトの日記をわざわざブログに移行した甲斐があったというもの。ちょろいもさん、ありがとう~。新参者を快く受け入れて下さった皆さんにも、本当にありがとうございます~。
そして今回のたらいまわしの主催は、AZ::Blog はんなり、あずき色。のoverQさん。30回目で、本家本元の主催者さんに戻ってきました。今回のお題は「フシギとあやし」。

この企画に興味をもたれた方は、右上の「たら本」アイコンをクリック! 初めての方も大歓迎。どうぞお気軽に参加なさって下さいね。

長らく「語るべき=読むべき言葉」の座にあった近代文学は古紙回収にまわされ、読書子は新たなコトバを探しています。 一方で世界的なファンタジー復興もあって、あらゆるジャンルや境界を越えて、「フシギとあやし」が息づいている。 古典や「近代」作品も、読まれなくなったというより、以前とは別な聞き耳を立てて、「語るべき=読むべき言葉」が再編成されはじめているかのよう。 さらには現実に起こる事件でさえ、「フシギとあやし」の影が見え隠れする昨今。

フシギな話、幻想怪異譚、オバケ妖怪、奇妙な出来事など...古今東西老若南北を問わず、「フシギとあやし」にまつわる本をご紹介くださいませ。なお、味噌じゃなくてもかまいません(;・∀・)
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