2008年4月 Archive

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ウンベルト・サバ、ジュゼッペ・ウンガレッティ、エウジェニオ・モンターレ、ディーノ・カンパーナ、サルヴァトーレ・クワジーモドという20世紀を代表する現代イタリアの5人の詩人たちについて書いた「イタリアの詩人たち」、そして須賀敦子さんによる翻訳で、「ウンベルト・サバ詩集」「ミケランジェロの詩と手紙」「歌曲のためのナポリ詩集」。

「須賀敦子全集」のほとんどがエッセイだったんですが、この第5巻は須賀敦子さんによる翻訳が中心。最初の「イタリアの詩人たち」こそ現代詩人たちの紹介と批評になってるんですが、それ以降は全て翻訳です。でも読んでいて、これこそが須賀敦子文学の原点なんだなあという感じでした。やっぱりイタリアの文学、特に詩を愛していたからこそ、エッセイのあの文章が生まれてきたんでしょうね。
そして「イタリアの詩人たち」は、特に須賀敦子さんの核心に迫る部分なのではないでしょうか。5人の詩人たちの作品とその魅力が、それぞれに美しく透明感のある、1人1人の詩人に相応しい言葉で翻訳されていきます。私はあまり詩心がないんですけど、それでもやっぱり須賀敦子さんの言葉は沁みいってくるものがありますねえ。声に出して朗読してみたくなります。そして私が特に気に入ったのは、精神分裂症のために放浪と病院生活を繰り返しながら散文詩を書いていたというディーノ・カンパーナの作品。散文なので分かりやすいという部分もあるんですけど、とにかく美しい! 須賀敦子さんも書いてますが、狂気の中に生きていたからこそ純粋に詩の世界を追求することができたというのは、やはり詩人として幸せなことだったのでしょうね。もっと色んな作品を読んでみたいな。(河出文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「須賀敦子全集1」須賀敦子
「須賀敦子全集2」須賀敦子
「須賀敦子全集3」須賀敦子
「須賀敦子全集4」須賀敦子
「須賀敦子全集5」須賀敦子
「須賀敦子全集6」須賀敦子
「須賀敦子全集7」須賀敦子
「須賀敦子全集8」須賀敦子

+既読の須賀敦子作品の感想+
「トリエステの坂道」須賀敦子
「本に読まれて」須賀敦子
「ヴェネツィアの宿」「コルシア書店の仲間たち」須賀敦子
「こうちゃん」須賀敦子・酒井駒子

+既読の須賀敦子翻訳作品の感想+
「インド夜想曲」アントニオ・タブッキ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「ある家族の会話」ナタリア・ギンズブルグ

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大夜会に出席するためにめかしこんだアデルファン伯爵は数年来の友人・セラフィーニョと共にタンポポ男爵夫人の屋敷へ。しかしタンポポ男爵夫人に無視されてめ怒り始めたセラフィーニョを連れて入り込んだ小部屋の中で、アデルファンはズボンのポケットに入れておいたバルバランが何者かに盗られてしまったのに気づいて... という「アンダンの騒乱」。
21歳の誕生日を迎え、邸宅でどんちゃん騒ぎを開くことにした少佐。段取りは全てアンティオッシュ・タンブルタンブルに一任され、沢山の飲み物や食べ物、そしてレコードが用意されます。そのパーティで少佐はジザニイと出会い、彼のアヴァンチュールが始まることに... という「ヴェルコカンとプランクトン」。

以前からボリス・ヴィアン全集を読もうと思っていて、ようやく読み始めたんですが... うわー、よく分かりませんでした! どちらもとにかく自由に書かれたという印象。特に「アンダンの騒乱」はヴィアンの処女作品なんですが、謎の「バルバラン」が結局何だったのかも分からず仕舞いだったし、何を書きたかったのかもよく分からないまま... 主人公かと思っていた人物も実はそうじゃなかったようですしね。気がついたら全然違う話になっちゃってました。でもそれがイヤな感じというわけじゃなくて、むしろこれがボリス・ヴィアンなんだろうなあ~といった感じ。こんなにのびのびと書いてるっていうのは(少なくとものびのびと書いてるように見えます)、実はやっぱりすごいことなのかも...。それでも「日々の泡」や「心臓抜き」のような、きちんと物語が展開していく作品の方が読んでいて面白いし、読み応えもあるんですけどね。こちらはまだ登場人物を作者が好きなように動かして遊んでいるという感じだし。言葉遊びも沢山あるでしょうし、笑いどころも実は多そう。でも日本語訳からは言葉遊びは分からないし、笑うほどの余裕はありませんでした、私。まだまだ修行不足かも。(笑)
続けざまに読むのはしんどそうなので、全集にはぼちぼちと手をつけていきます。


+既読のボリス・ヴィアン作品の感想+
「日々の泡」ボリス・ヴィアン
「心臓抜き」ボリス・ヴィアン
「アンダンの騒乱」「ヴェルコカンとプランクトン」ボリス・ヴィアン

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伝えられるところによると、その昔、サンダリング・フラッド(引き裂く川)と呼ばれる大河が大地を分断し、その上流の渓谷地方の東側にウエザメルと呼ばれる農場には両親を早くに亡くし、祖父母に育てられた強く頑丈な少年・オズバーンが住んでいました。オズバーンは生まれながらの詩人であり、しかもわずか12歳の時に羊の群れを襲った狼3匹を殺して、少年闘士としてその近隣では有名な存在となります。そんなオズバーンがエルフヒルドという名の同じ年頃の乙女と出会ったのは、彼が13歳になったばかりの頃のこと。しかしエルフヒルドはサンダリング・フラッドの西側の鹿の森の丘に住んでおり、2人は川越しに様々なことを語り合うものの、川は空を飛ぶ鳥以外の生き物に流れを横切ることを決して許しはしなかったのです。

北欧文学に強く影響を受けて書いたといわれる、ウィリアム・モリスの遺作。
確かに北欧文学の影響を受けているだけあって、まるでサガのような雰囲気を持つ作品。物語全体としてはオズバーンのサガで、オズバーン自身の成長物語と、オズバーンを始めとする男たちの勇壮な戦いが中心。そしてその中に、美しいエルフヒルドとの恋物語も描きこまれているという形。このロマンス自体は中世のイギリス文学にも見られるようなものなんですが、キリスト教圏というよりも北欧圏らしく、若い2人の思いがとてもストレートに描かれてます。
でも、とっても素敵な物語になる可能性が高い作品だったと思うんですが... 日本語訳がどうもとても読みにくくて話になかなか入り込めなかったこと、物語そのものにも推敲されきっていない、あまり整理されていない部分が目についてしまうのが残念でした。途中、エルフヒルドが行方不明になって、そこからはオズバーンの戦いばかりがクローズアップされることになるんですけど、この辺りが少々長すぎて冗長に感じられてしまいましたしね...。しかもオズバーンとエルフヒルドのやっとの再会も、盛り上がり不足。失踪していた間のエルフヒルドの物語を老婆が1人で全て語ってしまうというのも、その大きな要因かな。モリス自身が筆を取ったのではなくて、病床で口述筆記をしたそうなので、ある程度は仕方ないと思うんですけどね。
この老婆や2人に贈り物をする小人、そしてスティールヘッドなどの人物についても、最後に明かしてもっと盛り上げて欲しかったところです。モリスにもっと時間があれば良かったのに、残念!(平凡社ライブラリー)


+既読のウィリアム・モリス作品の感想+
「世界のはての泉」上下 ウィリアム・モリス
「理想の書物」ウィリアム・モリス
「輝く平原の物語」ウィリアム・モリス
「ジョン・ボールの夢」ウィリアム・モリス
「ユートピアだより」ウィリアム・モリス
「不思議なみずうみの島々」上下 ウィリアム・モリス
「世界のかなたの森」ウィリアム・モリス
「サンダリング・フラッド」ウィリアム・モリス
「アイスランドへの旅」ウィリアム・モリス

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先日再読したばかりの高橋由佳利さんによるトルコ・コミックエッセイ「トルコで私も考えた」。最新刊が出たので早速~。

今回一番びっくりしたのは、高橋さんのご主人が実は1巻の時から登場していたということ! 思わず1巻をめくって探してしまいましたよー。探してみたら、いましたいました。この頃の絵にはまだ髪の毛があったので、全然気がつかなかった。そうか、2巻を読んだ時には唐突に感じられた国際結婚にも、実は伏線があったのですねー。(違います) 今回初公開の家族写真にはご主人も写っていて、なかなかの男前ぶりを見せてくれます。そしてちょっと悲しかったのが、いつの間にか義理のお父さんが亡くなられていたこと。実はお気に入りの人物だったんだけどなあ。
事前に今回はトルコの楽器を習う話が良かったと聞いていた通り、その辺りもすごく面白かったし... 西洋音楽とはまるで違うらしいトルコ音楽、一度聞いてみたーい。7拍子だの9拍子だのをトルコの太鼓ダルブカで難なく刻んでしまうケナンくん、やめてしまうなんてもったいなーい。(子供の学習能力の高さというよりも、やっぱりトルコ人としてのDNAなのでは?) 最近はどんどん物価も高くなってトルコが変わりつつあるというのも、読んでるだけの身ながらも寂しい話ですね。そして何が一番寂しいって、「トル考」がこの21世紀編で一旦終わりだということ。えーっ、そうだったんですか。逆に引き際が鮮やかということでいいのかもしれないけど、楽しかったのになあ。
高橋さんの絵はこういったギャグ路線のものしか見てないんですが、たまに登場する真面目な絵はとっても綺麗。見てると佐々木倫子さんの絵を思い出すんですけど、本当に似てるのかな~? 真面目なストーリー漫画も一度見てみたくなっちゃいます。(集英社)


+シリーズ既刊の感想+
「トルコで私も考えた」1~4 高橋由佳利
「トルコで私も考えた 21世紀編」高橋由佳利

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学生の多い東京の西の近郊の町にある古道具屋・中野商店。店主は25年ほど前に脱サラして店を始めたという中野さんで、店には昭和を思わせる雑多な生活用品が並んでいます。アルバイトはタケオとヒトミの2人。タケオは引き取り要員で、午後になると中野さんとトラックで依頼のあったお客の荷物を引き取りに行き、ヒトミは午前に引き続き店番をするという役割分担。そして店には中野さんの姉のマサヨさんもよく顔を出すのです。

店主の中野さんの人柄なのか、どこか不思議な雰囲気を漂わせている中野商店での日々を、アルバイトのヒトミの視点から描いた長編。店に深く関わっている4人も、ここにやってくる客も、中野さんの愛人だというサキ子も、みーんなみんなマイペース。平凡な日々の中にもそれなりに波があり、それを淡々と描き出しているような感じの作品です。古い写真を眺めながら、こういうこともあったなあ、と思い出に浸っているという印象でしょうか。ええと、今の私にはあまりインパクトが感じられなくてさらっと読み流してしまったのだけど、こういうのが好きな人には堪らない作品かもしれないですねえ。(新潮文庫)


+既読の川上弘美作品の感想+
「古道具中野商店」川上弘美
「大好きな本 川上弘美書評集」川上弘美
Livreに「神様」「なんとなくな日々」「センセイの鞄」「パレード」の感想があります)

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梁山泊と童貫軍が総力の全てをかけてぶつかる、北方水滸伝完結の19巻。

いやあ、全部読んでしまいました。ふぅー。
19巻は、前巻に引き続きの激しい戦闘の物語となっています... が、こういう結末になるのかあ。童貫軍との激しいぶつかり合いはいいし、「水滸伝」としての話自体はここで終わるんだけど、でもあまりに次の「楊令伝」の存在が見えすぎるラストにちょっとびっくり。これじゃあ、この「水滸伝」が「楊令伝」の前座みたいじゃないですか。いや、その後へ繋がっていくということ自体はいいのだけど... とりあえずここで一つ区切りはつけて欲しかったなあ、というのが正直なところ。
でも梁山泊側だけで108人いるので、途轍もない数の登場人物になるのだけど、北方さんの描く漢たちは、誰もがそれぞれにかっこよかったな。全巻通して特に心に残った人物といえば、林沖と楊志。あとは秦明とか呼延灼、解珍、李逵辺り。思っていた以上に生き残った人間がいたので(とは言っても、全体から考えると僅かなんだけど)、このメンバーが「楊令伝」でも活躍することになるんですね、きっと。
あとは北方水滸伝読本として「替天行道」というのが出てます。こちらは「水滸伝」にまつわる北方さんの手記や対談、登場人物の設定資料、担当編集者が連載中に北方さんに書いた手紙などが収められているのだそう。これも読むかどうかは、現在考え中。(集英社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「水滸伝」1~3 北方謙三
「水滸伝」4~6 北方謙三
「水滸伝」7~9 北方謙三
「水滸伝」10~12 北方謙三
「水滸伝」13~15 北方謙三
「水滸伝」16~18 北方謙三
「水滸伝」19 北方謙三

+既読の北方謙三作品の感想+
「破軍の星」北方謙三
「楊家将」上下 北方謙三
Livreにブラディ・ドールシリーズと「三国志」の感想があります)

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致死軍が青蓮寺に襲い掛かるなど水面下での動きが目立つ16巻、とうとう童貫が出陣する17巻、さらに戦況が厳しくなる18巻。

やっぱり童貫は強かったんですねえ。前から禁軍随一の実力という評判でしたけど、梁山泊側の苦戦が痛々しくなってしまうほど。あれだけのメンバーを揃えていても、やっぱり敵わないのですか! でも、こんなに強い軍を具えている国の内情が腐敗しきっているというのも、やっぱりどこか妙な感じが...。今回はどちらかといえば水面下の戦いが繰り広げられた16巻が面白かったな。燕青の意外な活躍ぶりも良かったし。
それにしても、気に入っていた主要メンバーが次々に死んでしまうのはやっぱり悲しい。特に18巻では、殺しても死にそうになかった人たちばかり散っていきます。そして、それらのメンバーをひっくるめたほど強い楊令の活躍ぶりには、ちょっとびっくり。いや、強いだろうとは思っていましたけど、ここまで...? これじゃあちょっと人間離れしてますよぅ。でもここから今執筆中の「楊令伝」に繋がっていくんですものね。(集英社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「水滸伝」1~3 北方謙三
「水滸伝」4~6 北方謙三
「水滸伝」7~9 北方謙三
「水滸伝」10~12 北方謙三
「水滸伝」13~15 北方謙三
「水滸伝」16~18 北方謙三
「水滸伝」19 北方謙三

+既読の北方謙三作品の感想+
「破軍の星」北方謙三
「楊家将」上下 北方謙三
Livreにブラディ・ドールシリーズと「三国志」の感想があります)

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