2008年8月 Archive

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口能登の旧家の屋敷を借りて個展を開いていた関屋次郎。関屋は椿をモチーフにした絵を専門に描いている画家。しかし「椿なら関屋次郎」という評判で人気が高く、熱狂的な蒐集者がいるにも関わらず、関屋は苛立っていました...という「八百比丘尼」他、全4編の連作短編集。

風待屋のsa-ki さんに教えてもらったんですけど、いやあ、これが面白かった。服部真澄さんといえば国際謀略小説専門の方かと思ってたんですけど、こんな作品も書いてらしたんですねー。雰囲気の違いにびっくり。
物語の中心となっているのは、一流のアーティストや料理人、茶人たちに頼りにされる「平成の魯山人」佛々堂先生。普段はくたくたのシャツに作業用のズボンのような服装で、古いワンボックス・カーに様々な荷物をところ狭しと積み込んで日本各地を移動してるんですけど、2~3分もあればそんな小汚い服装から小粋に着物を着こなした旦那に化けちゃう。それにどんなに多忙でも携帯電話やファックスといったものは使わず、佛々堂先生からの連絡は墨でさらさらと書きつけた巻紙。
この佛々堂先生がほんと洒脱なんですよね。魯山人といえば、私にとってはどうも漫画「美味しんぼ」の海原雄山のイメージで...^^; いかにも偉そう~な上から目線の人間をイメージしてしまうんですけど、この佛々堂先生は人懐こくて、たとえ我侭を言っても憎めない存在なんです。本人もとっても世話好きですしね。伸び悩んでいる作家がいれば助けの手を差し伸べるし... しかも本人にはそうと悟らせないその差し伸べ方の粋なこと。一流の骨董や書画を扱う小説といえば、北森鴻さんの冬狐堂シリーズが真っ先に思い浮かぶんですけど、こちらはもっと肩の力が抜けた感じ。冬狐堂シリーズも面白いんですけどね。むしろ「孔雀狂想曲」の方が近いかも? あんな風にミステリ的な事件が起こることはありませんが。それに金儲けが絡んでギラギラ、人間関係がドロドロ、っていうのがないのがいいんですよねえ。それでいて、さらっと深いものを教えてくれる面もあったりして。
春の椿、夏の蛤、秋の七草、松茸と季節折々の風物も織り交ぜて、とても風流で味わい深い作品となっていました。このシリーズいいなあ。謀略小説よりずっと好みかも♪(講談社文庫)


+既読の服部真澄作品の感想+
「鷲の驕り」服部真澄
「清談 佛々堂先生」服部真澄
Livreに「龍の契り」の感想があります)

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東京創元社で復刊中のラング童話集の5冊目。今回はシチリアやカタルーニャ、そしてデンマークの昔話が多かったですね。25編中10編が、シチリアかカタルーニャのどちらか。そして7編がデンマークの昔話。つい先日イタリア民話集(感想)やスペイン民話集(感想)を読んだところなので、そちらで読んだ覚えのある話が結構ありました。でもデンマークの昔話にも、最近どこかで読んだ覚えがある作品が多かったんだけど、これはどこで読んだのかしら? 似たような趣向の本を続けて読むとダメですねえ。きちんとメモしておかなかったせいで、どれがどうだったのかすっかり分からなくなってます。(汗)
巻末には原書の目次も載ってるので、こちらには掲載されなかったお話が何か分かるようになってるんですけど、今回落とされたのはアンデルセンの童話が多かったようです。このシリーズは元々、日本で既に有名なお話よりも、それほど一般的でないものを優先的に収めるという趣旨だし、私もそれが正解だと思ってるので全然構わないんですが(関係ないけど、アンデルセンはあまり好きじゃないし)、日本のお話もいくつか落とされてました。「Urashimataro and the Turtle」は「浦島太郎」、「The Sparrow with the Slit Tongue」は「舌切り雀」でいいんだけど、「The Slaying of Tanuki」って何だろう? 「Slaying」は「殺害」だから、「文福茶釜」ではないはず... ほかに狸が出てくるような話って何かあったっけ。...あっ、「かちかち山」? ほかにも色々ありそうだけど、全然思い出せないやー。
それにしても「Tanuki」だなんて、ヨーロッパには狸はいないんでしょうか。元々は日本の動物だということなのかな。調べてみたら、狸は英語で「Raccoon dog」と言うようなんですけどね。...あ、Wikipediaによると、基本的な分布は「韓国、北朝鮮、中国、日本、ロシア東部」だそうです。日本だけというわけではないんですね。そして日本の「たぬき寝入り」という言葉は、猟師の銃声に驚いた狸が、弾が当たってもいないのに気絶する習性から来てますが、欧米では同じことを「Fox Sleep」と言うそうです。狐も同じ習性だったのか。面白いなあ。(東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+(東京創元社版)
「あおいろの童話集」「あかいろの童話集」アンドルー・ラング編
「みどりいろの童話集」アンドルー・ラング編
「きいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ももいろの童話集」アンドルー・ラング編
「はいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「むらさきいろの童話集」アンドルー・ラング編
「べにいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ちゃいろの童話集」アンドルー・ラング編
「だいだいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「くさいろの童話集」アンドルー・ラング編

+シリーズ既刊の感想+(偕成社文庫版)
「みどりいろの童話集」「ばらいろの童話集」アンドルー・ラング

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かつて早川書房の異色作家短篇集に大きく影響され、今も尚影響を受け続けているという恩田さん。異色作家短篇集のような無国籍で不思議な短編集を作りたいと考えて「奇想短編シリーズ」と銘打って雑誌に連載していたという作品15編を集めた短編集です。

最近こういった国内作家さんの本を読む機会がめっきり減ってしまって、恩田さんの新作にも以前のようには手が出ない私。新刊が出たら「すぐ読みたい!」と思う作家さん、減りましたねえ。一時に比べると本当にわずかになってしまいました。多分、読みすぎて飽和状態になってしまったんでしょう。恩田さんの作品も今のところは細々と追ってるけど、いつまで続くか... そういう時に短編集を読むのってキケンなんですけどね、本当は。短編集は基本的に苦手なので、下手するとそれっきりになってしまいそうで。

さてこの「いのちのパレード」。一旦読み始めると、ほんと読みやすくてびっくりしてしまうんですが、こういう国内作家さんの読みやすさがまたクセモノなんだよな、なんて最近は思うようになりました。ひねくれてるな。(笑)
ええと、この中で私が一番好きだったのは「夕飯は七時」。こういうのは好き~。そんなアホなと思いつつ、思わず想像してニヤニヤしちゃう。これはやっぱり例の一族の話に繋がってるのでしょうか。あと「かたつむり注意報」も良かった。こういった雰囲気は好きですねえ。「SUGOROKU」なんかも結構好きなタイプ。でもその他は... うーん、まずまず楽しめたのもあったんだけど、面白さがよく分からないのも結構あったりして... それにやっぱり短編集のせいか、途中で息切れしてしまって困ります。一旦息切れしちゃうと、どうやっても進まなくなるんですもん。そういうのって短編がどうこういう私の嗜好だけでなく、きっと途中で集中力を途切れさせてしまうような作品があるせいなんだろうなと思うんですが。
いくつかの作品で、あれ、これってもしかして...? なんて思ったりしたので、どの作品も何らかの作品へのオマージュなのかもしれないですね。そういうのが分かると、また楽しさが違ってくるのかも。(実業之日本社)


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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舌切り雀や花坂爺さん、猿蟹合戦のような話もあれば、中国らしい仙人の出てくる物語もある1冊。結構楽しかったんですが、ちょっとびっくりしたのが、七夕の織姫・彦星の話。私がこれまで知ってたのは、愛し合う夫婦が年に一度しか会えなくなってしまって悲しい~という話だったんですが、ここに載ってるのは違うんです。夫が隠していた自分の衣を取り戻した織姫は、空に舞い上がって逃げるし! 夫と子供が追いつきそうになると、次々に大きな川を作って渡れないようにするし! この話の2人は愛し合ってたんじゃないんですね? で、織姫は夫となんか二度と会いたくないのに、天帝の命令で7月7日の夜だけは会うことになってしまいます。それからというもの、夫は毎日食事で使ったどんぶりを1つずつ残しておいて、7月7日の夜、織姫は一晩中そのどんぶりを洗い続けているのだとか... すっごいですねえ。そんな2人なのに、それでも〆の言葉が「毎年、七月七日には、雨が降らなければいいのだが、雨が降れば、それは牛飼いと織姫の流す涙だといわれている。」... 何なんですか、一体。(笑)

あと、日本の鶏は「コケコッコー」と鳴きますが、アメリカでは「クックドゥードゥルドゥー」ですよね。フランスでは「ココリコ」。ここに登場した中国の鶏は「ロンコーコ、チアオホアンオー」と鳴いていました。そしてホトトギスは「コアンクントオチュ」。(もちろんそれぞれに意味があります)こういうのも面白かったな。(岩波文庫)

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先日吉岡幸雄さんの「日本の色辞典」(感想)を読んだ時に、改めて読みたいと思っていた「源氏物語」。古典中の古典だけあって、本当にいろんな方が書いてらっしゃるんですよね。私も漫画を含めていくつか手にしたことはあるんですが、最後まで読んだものがあるかどうか...。改めて調べてみると色んなのがあって、どの版にするか迷ってしまいましたよー。今回読みたいなと思ったのは、翻案作品ではなくなるべく原典に近いもの。となると与謝野晶子訳か谷崎潤一郎訳か... はたまた円地文子訳というのも気になるし、玉上琢彌訳というのはどうなんだろう? 一番みやびな日本語になってるのは谷崎潤一郎訳かもしれないな... でも歌人の与謝野晶子の訳というのも捨てがたいし... 円地文子も評判いいみたいだし... などなど激しく迷いつつ、結局与謝野晶子訳を選んでみました。

結果的に、与謝野晶子訳はとても読みやすかったです。昭和13年の現代語訳だから適度に風情もありますしね。和歌の解釈がないんですけど、これも雰囲気で読めちゃう。でも源氏が生きている間の話は面白く読んだんですが、「宇治十帖」に入ってからは集中力が途切れてしまって... ちょっと斜め読みになっちゃいました。(^^ゞ
そして「まろ、ん?」は「大掴源氏物語」という副題の通りの本。源氏物語のそれぞれの1帖を長いものも短いものも見開き2ページの8コマ漫画にしてしまっていて、これ1冊で源氏物語の概要が分かってしまうというスゴイ本です。(笑) これは以前にも読んでいるので再読。
源氏系は栗顔(まろ→まろん→栗)、頭中将系は豆顔になってるので人間関係も掴みやすいし、登場人物系図や主な官位表もその都度登場するので、ほんと分かりやすいんです。それに小泉吉宏さん、概略を書くのが上手いし~。与謝野晶子訳を読みながら自分がちゃんと理解できてるか、こちらの本で復習しつつ読んだのでした。

「まろ、ん?」で一番「おおっ」と思うのはこの部分。

秘め事が知れたら恋人や妻を苦しめるというのに それを告白することが誠実なことだと思っている人がいる。だがそれは自分の罪悪感から解放されたいと思っているだけだ。つまり甘えているだけである。

こういうところを読むと、そうだ「ブッタとシッタカブッタ」やなんかを書いてる人だったんだわーって改めて思い出します。(笑)

今度は谷崎源氏を読んでみたいな。(角川ソフィア文庫、幻冬舎)


+既読の「源氏物語」の感想+
「源氏物語」+「まろ、ん?」小泉吉宏(与謝野晶子訳)
「源氏物語」1・2 円地文子訳
「窯変 源氏物語」1~3 橋本治
「窯変 源氏物語」4~6 橋本治
「窯変 源氏物語」7・8 橋本治
「窯変 源氏物語」9・10 橋本治
「窯変 源氏物語」11・12 橋本治
「窯変 源氏物語」13・14 橋本治

+既読の「源氏物語」関連作品の感想+
「東方綺譚」マルグリット・ユルスナール(雲隠)
「源氏供養」上下 橋本治
「輝く日の宮」丸谷才一
「千年の黙(しじま) 異本源氏物語」森谷明子
「紫式部日記 ビギナーズ・クラシックス日本の古典」紫式部・山本淳子編

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既に毎夏の恒例行事となってるんですが、夏になるとどうしてもPCの調子が悪くなってきて困ります。先日とうとう再インストールしてしまいましたよー。それもあって、どうも本の感想を書くのが追いつきません... いや、連日のこの暑さで読書もそれほど進んでいないのですが。

この二階堂善弘氏、中国物関係のサイトを持ってらっしゃるとあったので、てっきり中国物好きの素人さんかと思っていたんです。文章も読みやすく分かりやすくまとまってたし、2冊とも「西遊記」と「封神演義」が中心になっていますしね... ってそれは偏見?(笑) そしたらなんと、関西大学の教授先生だったんですねー。道理でふとしたところで知識の深みを匂わせていたわけだ! でもそんな風に知識の深さを感じさせつつもマニアックに走ったりせず、むしろ全体像を概観できるように表層がきれいにまとめられているという感じの本でした。この2冊では「中国の神さま」の方が、民間信仰系、道教系、仏教系と、数多い神さまが系統立って要領良く紹介されていて良かったかな。中国物を読みながら、ふと調べてみるのに丁度いいかも。対する「中国妖怪伝」は、それほど「要領良く」という感じではないですね。知名度も高く、ある程度確立した存在の「神さま」に対して、妖怪は特定のお話の中にしか登場しない存在のことが多いので、仕方ないんだけど。
ただ私、「西遊記」は何度も読んでるので神さまも妖怪もお馴染みだし、登場してると嬉しいんですが、「封神演義」は読んだことがないんですよね... 以前読もうとしたことはあったんですが、丁度宮城谷昌光さんの「王家の風日」を読んだところだったので、同じ登場人物が共通してるだけに雰囲気の違いについていけなくて。(あまり覚えてないんですが、文章もダメだったのかも) 中国・台湾での知名度と人気ぶり、影響度を考えると、一度読んでみなくっちゃとは思ってるんですが...。(平凡社新書)

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「中国昔話大集」のIとIIです。この話梅子さんという方は、中学の頃に「聊斎志異」や「紅楼夢」にハマって以来あれやこれやの中国物を読んだ挙句、原書にまで手を出すようになり、そうやって読んだ話を翻案・翻訳してメールマガジンで流してらして、そういった話が本になったのだそう。ちなみに「話梅子」の読み方は「フアメイズ」。「話梅」という梅を乾して砂糖をまぶした中国のお茶請けにちなんだ名前なのだそうです。私もそういった中国物は子供の頃から大好きだし、平凡社の中国古典文学全集は宝物。原書に手を出そうなんて考えたことはなかったですけどね。(笑)
で、早速読んでみたら、知らない話が色々と... やっぱり原書が読めるというのは強いですねえ。それぞれに章ごとにテーマが決められて、似たような話がまとめられています。「游仙枕」の方は幽鬼や情愛、妖怪、動物、奇妙、神仙や幻術。「大器晩成」の方は、出世、試験、賄賂、名声、処世術、習性、犯罪、異界。科挙にまつわる話や大岡裁きみたいな現実的な話も面白かったんですが、私が好きなのは、やっぱり不思議系。そういう意味では「游仙枕」の方が好みですね。結局私も「聊斎志異」が好きなんだなあー。
宋や明、清の時代の話が多かったですが、宋と明の間の元の時代の話はなかったような...? あったのかもしれないですが、ものすごく少なかったはず。やっぱりモンゴル民族の時代は少し毛色が違うんでしょうね。「杜十娘」の冒頭に「明の萬暦二十年(千五百九十二年)に日本の関白平秀吉が朝鮮を侵略した。朝鮮が助けを求めてきたので...」という文章で始まる話があってびっくりでした。日本が出てきたのは、そのぐらいかな。(アルファポリス文庫)


+既読の話梅子作品の感想+
「游仙枕」「大器晩成」話梅子編・訳
「中国百物語 中国昔話大集III」話梅子編・訳

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