Catégories:“2005年”

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舞台は平安時代。自分のせいで異母妹の比右子を死なせてしまい、悶々とする12歳の小野篁が主人公。最後に一緒に遊んでいた荒れ寺へと向かった篁は、ふとした拍子に、比右子が転落した古井戸に吸い込まれてしまいます。気がつくと、そこは石ころだらけの河原。そこには大きな河と立派な橋があり、行くあてもない篁はその橋を渡り始めるのですが... ふと気付くと篁を食べようと狙っている鬼がいたのです。

以前、たまきさんに薦めて頂いた本。児童書です。
昼は朝廷に仕え、夜になると冥府に通って閻魔大王のもとで役人として働いていたなんて伝説のある小野篁の少年時代の物語。妹と恋仲だった、なんて話もありますね。大人になった後の篁は有能な官僚として有名なんですが、ここに描かれた少年時代の篁には、その片鱗はまだ全然ありません。異母妹の死をいつまでもくよくよと悩んで、生きていく気力も半分失っているような状態。鬼に襲われたところを坂上田村麻呂に危機一髪助けてもらうのに、またしても古井戸の中に舞い戻ってしまう始末。
これは、そんな篁が立ち直っていく成長物語なんですが、私がいいなあと思ったのは、3年前に死んでいるはずの坂上田村麻呂。橋の向こう側に渡ってしまいたいのに、帝から「死後も都を守れ」なんて、武装した姿で立ったまま葬られたせいで、どうしても向こう側に行けないんです。立派な武人だから、帝の言葉通りに京の都をしっかり守ってはいるんだけど、でも本当は向こう側に行きたいんですよね。友人知人もどんどん橋を渡ってしまうのに、なぜ自分だけが... と思いつつ、でも自分にできる精一杯のことをしている田村麻呂の姿がなんとも哀しくて。
そんな田村麻呂の姿もそうだし、田村麻呂に角を1本取られたせいで鬼でもなく人間でもない状態になってしまった非天丸の姿もと篁と重なって、なんとも切なかったです。それだけに、異母妹の死を乗り越えた篁の姿が一層感慨深く... うーん、いい話だわー。(福音館書店)

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「ひいひいじいさん」がジプシーから豚を盗んだせいで、子々孫々にいたるまで呪いをかけられてしまったイェルナッツ家。皆揃って運に恵まれず、「まずい時にまずいところに居合わせてしまう」というタチ。それでもお父さんは発明家として芽が出ない程度で済んでるのですが、スタンリーはなんと人気プロ野球プレイヤーのスニーカーを盗んだ容疑で逮捕され、罪を犯した少年たちを集めたグリーン・レイク・キャンプに送り込まれてしまうのです。そして毎日毎日、湖どころか一滴の水もないグリーン・レイクで、直径1.5m深さ1.5mの円筒形の穴を掘ることに。

以前映画が意外と面白くてびっくりしたんですけど、今度は原作を借りてみました。やっぱりこれも面白いー。出版された途端、全米図書賞、ニューベリー賞、クリストファー賞、ホーンブック・ファンファーレなど、価値ある児童文学賞を軒並み攫ったという作品だそうです。
現在のグリーン・レイクを掘る現在の子供たちの情景に、スタンリーの「ひいひいじいさん」のエピソードや、かつて湖があった頃のグリーン・レイクの切ない恋物語などが織り込まれて話が進んでいくんですけど、この過去のエピソードが実は全て伏線。もうほんと全然無駄がないんです。まるでパズルみたい... というか、今どきここまでピタッとハマる快感、ミステリでもなかなか味わえないのでは、なんて思っちゃうほど。映画を観て一通りの話は知ってるのに、またしてもワクワクしてしまいました。
原作もいいし、映画もすごく出来がいいと思うし(クライマックスに関しては映画の方が上かも)、どちらもオススメ。「穴」だなんて変な題名ですけど、騙されたと思って手に取ってみて下さいねー!(講談社)


+シリーズ既刊の感想+
「穴」ルイス・サッカー
「道」ルイス・サッカー
「歩く」ルイス・サッカー

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土曜日の夕方の閉店間際に、大きなスーツケースを持ってスコットレーズ・デパートに来たママとオリビア、アンジェリーンの3人。これまで一度も買い物なんてしたことない高級デパートに、新しいベッドを買いに来たなんて本当? そして閉店5分前にママが言ったのは、「"ベッドの下に隠れろ"ゲームをしましょう」という言葉。その言葉を聞いた途端、リビーは自分たちがここに来た理由が分かります。なんとママは、この週末はスコットレーズに住んでしまおうと考えていたのです。

読み始めて真っ先に思い浮かんだのは、E.L.カニグズバーグの「クローディアの秘密」。そちらはデパートではなくてメトロポリタン美術館なんですけど、こっそり住んでしまおうというワクワク感は一緒ですね。でもこちらは高級デパート! 日用品から食料品からおもちゃから電化製品まで何でも揃っている場所なんです。子供たちにとっては夢の国かも。
...とは言え、能天気なママと無邪気なアンジェリーンに挟まれて、1人しっかりしてしまっているリビーは、能天気なママの言動にヤキモキし通し。うわー、分かる。こういうママがいたら、しっかり常識派に育っちゃいますよね。必要に迫られて、年齢よりも大人になっちゃうはず。しかもハプニング続出で、こんな生活を続けたらほんと神経が参っちゃいそう... とこちらまでドキドキしてしまいます。最初の場面で、リビーが警察官やソーシャルワーカーと話しているのが分かっているだけに、余計に☆

可愛いらしい作品でしたが、「魔法があるなら」というタイトルだけは全然似合わないですね。魔法が出てくるようなお話かと思ってたので、そういう意味ではちょっとがっかり。原題通り「世界で一番素敵な場所」でも良かったと思うのになあ。(PHP研究所)

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8歳の時に会って一目惚れした許婚が数ヵ月後に死亡。そして9年後、17歳になった芳娥は許婚の死は殺人だったことを知ることになり、犯人を探し始めます。許婚は当時の宋の宰相・王安石の長男で、当世きっての秀才と名高かった人物。王安石の推進する「新法」にも大きく貢献していました。犯人は「新法」瓦解をたくらむ、旧法派の大物・司馬公と思われるのですが...。

森福都さんの新作。森福さんお得意の中国を舞台にしたミステリです。(嬉)
王安石や司馬公は実在の人物だし、新法派・旧法派の争いも本当にあったんですね。宋代の神宗~哲宗皇帝の時代が舞台。
中国冒険活劇... ってほどではないんですが、剣戟場面もありますし、芳娥自身がかなり長身の男装の麗人なので、司馬公に近づくために大人気女優・月英の助けを借りて偽劇団を作ってみたり、その後の逃亡劇や幻の漆黒泉探し、そこに隣国・西夏の存在や幻の武器開発も絡んできて、なかなか盛りだくさんな華やかさとなってます。芳娥の許婚を殺した真犯人は本当に司馬公なのか、それとも... と、みんなが疑心暗鬼になってくるのも楽しかったし。これで許婚の若い頃にそっくりという少游がもうちょっと活躍してくれれば、もっと良かったんですけどねえ。
でも実は犯人が誰かとか黒幕が誰かとかそういうのよりも、漆黒泉の正体にびっくりでした、私。そ、そういうことだったのか...!
いえ、これは別に秘密でもなんでもなくて、物語の前半で分かっちゃうんですけどね。なるほどねえ...。(文藝春秋)


+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
「肉屏風の密室」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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朱川さんの作品を読むのは1年半ぶり。これは昭和30年代~40年代の東京の下町を舞台にした、ノスタルジックな連作短編集。連作短編集とは言っても主人公は変わるし、時系列的にも少しずつずれているので、アカシア商店街という場所を舞台にした7つの情景って感じですけどね。それぞれの短編に少しずつ繋がりがあって、徐々に町全体の姿が見えてくるんです。
それぞれの短編の中で不思議な出来事も起きて、ファンタジーというよりもホラー寄りなんですが、でも怖さとか妖しさはほとんどなくて、むしろしみじみと切なかったり、やるせなかったり。この中では、胸きゅんの「栞の恋」や、お互いを思いやる兄と弟のやるせない「夏の落とし文」が良かったな。そして最後の「枯葉の天使」で、色んなことが綺麗に繋がっていくというのが好み。やっぱり連作短編集はこうでなくちゃ。
そして「かたみ歌」というタイトル通り、それぞれの短編の背景では、それぞれの時代を代表するようなヒット曲(多分)が流れてます。やっぱりこれは若い読者よりも40~50代の読者、この時代を直に知っている人の方が楽しめるんでしょうね。という私は、知ってたり知らなかったり... ザ・タイガースのサリーってどんな人だろうと検索してみたら、なんと岸部一徳さんのことだったんですね! 若い頃どんな感じだったのか、写真が見たくて色々検索しちゃったわ。(笑) (新潮社)


+既読の朱川湊人作品の感想+
「かたみ歌」朱川湊人
「さよならの空」朱川湊人
「花まんま」朱川湊人
Livreに「都市伝説セピア」「白い部屋で月の歌を」の感想があります)

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去年「ぼくとアナン」を読んだ時、本のことどもの聖月さんにこちらもぜひとオススメされてたんですけど、読もう読もうと思いつつ、こんなに遅くなってしまいました... というか、「ぼくとアナン」が良すぎて、すぐには手に取ることができなかったというのが正直なところなんですけどね。いやあ、こちらも良かったです。本当に。しみじみと。でも多くは語れない... もう、何も聞かずに読め!って言いたくなっちゃうような作品です。
ストーリーとしては、新宿でホームレスをしていた「流」が、初雪が降ったら死のうと決めていて、でも初雪が降ったその日、なんとゴミ捨て場で赤ちゃんを拾ってしまい、死ぬに死ねなくなってしまい... というもの。アナンというのがその赤ちゃんにつけられた名前。

この「アナン」は、飯田譲治さんと梓河人さんによる合作なんですが、「ぼくとアナン」は、梓河人さんが「アナン」を児童書として書き直したという作品。この題名の「ぼく」はバケツという名前の猫のことで、猫視点で描かれているんです。大きな流れとしては一緒なんですが、でも細かい部分はかなり違うんですよね。でもって、これがどっちも良いんですよ~。大人用の方を読んだから児童書はいいや、なんて思ってる方、もしくは逆の方、ぜひどちらも読んで下さい。どちらもすっごくいいです! という私は、どちらかといえば「ぼくとアナン」の方が感動したんですけど... 普通はどっちが評判いいのかしら。先に手に取った方に思い入れがある、というのもあるのかな。
そして今回、本当は「アナン」だけ読むつもりだったのに、読み終わった後、思わず「ぼくとアナン」も再読してしまいました。...ううう、またしても涙。
この本は3冊とも揃えたいんですが、文庫になる予定はあるのでしょうか。ぜひなって欲しいです!(角川書店)


+既読の梓河人作品の感想+
「アナン」上下 飯田譲治・梓河人
Livreに「ぼくとアナン」の感想があります)

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失恋に苦しむ佐野原多美と、作家になりたい西城麦穂という2人の女性の物語、そしてその2つの物語を繋ぐ、幼い少年のエピソード。
生きていれば、一度や二度死にたくなったことがあるって人も多いでしょうし、他人のことを妬んで、その人間が死ねばいいと思ったことがある人もいるんでしょうね。でもいくら願ったとしても、それを実現する人となるとまた話は別。頭の中でどんなひどいことを思い描いていたとしても、それはそのうち時と共に忘れてしまうはずだし、ここに登場する多美や麦穂もそうだったはずなんです。でも目の前に死神と名乗る男が登場したせいで、ただの妄想だったはずの願望、自分の本心と否応なく向き合わされちゃうことに... そのままそうっとしておいてくれたら良かったのに、というかもっとやりようってものがあるでしょうに、全くデリカシーのない死神ときたら! という話。
これは、死神を通して逆に「生」を考えさせられる作品なんですね。あとがきにもある通り、死神がまるでカウンセラーのようでした。窓際族として登場する死神の島野の姿がなんか可笑しい♪ でもね、死神といえば今は伊坂さんの「死神の精度」。どうしても比べてしまうんですよね。この作品も悪くはないんですけど、どこか突き抜けたものが足りなかったような...(双葉社)


+既読の柴田よしき作品の感想+
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき
「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき
「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき
「夜夢」柴田よしき
「激流」柴田よしき
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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