Catégories:“2005年”

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高橋克彦さんの陸奥三部作の3作目。ちなみに三部作の1作目は、奈良時代に朝廷に反旗を翻した蝦夷の英雄・アテルイを描いた「火怨」(感想)、2作目は奥州藤原氏を描いた「炎立つ」で、こちらは手元にはあるんですが未読。大河ドラマにもなりましたよね。あと北方謙三さんの南北朝の動乱期の陸奥を制した北畠顕家「破軍の星」(感想)も、陸奥が舞台でした。時代はそれぞれ異なるものの、陸奥の歴史がだんだん繋がってきて楽しい! やっぱり歴史物は読めば読むほど、繋がってきて楽しくなりますね。同じ時代のものを様々な角度から読むというのも大好きなんだけど、こうやって陸奥に拘ってみるのも楽しいなあ。

ということで、これは戦国時代の陸奥が舞台。戦国時代は昔から結構好きで読んでるので、今回はすんなりと入れました。(「破軍の星」はちょっと苦労したので...) 今回の主人公は九戸政実。名前は全然聞いたことがなかったんですが、南部一族で「北の鬼」と恐れられていた男なんだそうです。この人がかっこいいんですよー。武人としても一流でありながら、策士としても凄くって、敵の行動の裏の裏まで読んで大胆な策を打ち出していくんです。時には水面下でこっそり他の人間にその策を授けていたりして... まるでスーパーマンのような活躍ぶり。(笑) でもって、それがぴたりぴたりとハマっていくところが、読んでいて本当に痛快なんです。
物語前半は、南部一族の棟梁の座を巡っての内紛、後半は副題通り、「天」である秀吉に喧嘩をふっかけることになります。わずか5千の兵で立つという潔さもいいし、その少ない兵で10万の兵を自在に追い散らしてしまうとこもカッコいい。途中で政実が秀吉のことを、武者というよりもむしろ商人だと言うところがあったんですけど、本当にそうかもしれないですね。秀吉の戦巧者ぶりは有名だけど、わずか5千の兵に10万という力技を繰り出してくる辺り、札束で頬を叩いているようなものですものね。

ただ、棟梁争いをする三戸信直がもう少し大きく成長してくれたら良かったんですけど、その辺りだけはちょっぴり残念でした。最初は政実や弟の実親が信直の頭の良さを警戒してたし、かなりの曲者と言ってたはずなのに、気がついたら北信愛べったり。自分で考えることもしなくなっちゃう。途中、1人立ちしかけて、大きく成長したと言われてるのに、それも結局それっきり。私としては信愛失脚で、政実と信直との本気の対決を希望してたんですが。(^^ゞ

今度は「炎立つ」を読まなくちゃー。でも全5巻と長いので、ちょっと気合を入れ直してから取り掛かる予定です。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」1~3 高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「闇から招く声」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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以前13回目のたらいまわし「夜の文学」で、AZ BLOG::はんなり、あずき色のウェブログのoverQさんが出してらした本。(エントリーはコチラ) 「屍鬼」といえば、まず小野不由美さんが出てくる方が多いと思いますが、これはインドの物語。インド版「千夜一夜物語」です。

あらすじとしては...
トリヴィクラマセーナという名の勇気のある王様が、1人の修行僧に頼まれて夜中に宮殿を抜け出し、樹に懸かっている男の死体を取りに行くことになります。しかしその死体には、屍鬼が取り憑いてるんですね。王が死体を担いで歩き出すと、背中の屍鬼が王に1つの物語を聞かせる。その物語の最後には謎掛けが待っていて、王がそれに答えると死体は元いた樹に戻ってしまい、王様は再び取りに行くことに... というもの。
この王様、お話ごとに行ったり来たりを繰り返すんですよ! どの話もそれほど長くないんですが、全く出来た王様です...(^^;。

そしてこの屍鬼が語る話が、どれも結構凄いんです。例えば第2話の「娘一人に婿三人」。
非常に美しい娘に3人のバラモンの青年たちが求婚するのですが、その中から1人選ぶ前に、肝心の娘が熱病で死んでしまうんですね。3人の青年は嘆き悲しみます。彼女を荼毘に付した後、1人の青年は乞食となって彼女の灰を寝床にして寝るようになり、1人の青年は骨をガンジス川に投げに行き、1人の青年は修行僧となって、諸国を放浪することに。で、3人目の青年が死人を蘇らせる呪文を覚えて戻ってきて、娘を生き返らせることになるのですが... 屍鬼の問いは、この3人のうち誰がその娘の夫として認められるかというもの。で、その王様、平然とその問いに答えてしまうんです。しかも理論整然と。(笑)
すごい、すごいよ、王様!

なんて思ってると、屍鬼は元いた樹のところに戻ってしまって、また最初からやり直し、なんですが...(^^;。
絶世の美男美女がいっぱい登場して、みんなすぐ恋に落ちちゃうし、時には王様のために簡単に自分や自分の家族を犠牲にしたりもするんですけど、でも日頃の行いが良いと神様に生き返らせてもらえたり。そんな荒唐無稽な楽しい話がいっぱい。しかもオチも素晴らしい。いやあ、インドっていいですねえ。でもって、どうやらこの屍鬼、あんまり悪い存在じゃないみたいですね。「屍鬼」なんて聞くとどうも単なる悪霊のように感じてしまうんですが、実は古代インドでは信仰の対象で、その土着信仰が仏教やシヴァ教に取り入れられたとか。
永遠にでも続きそうなこの話が、25話でどうやって打ち止めになるのかというのもお楽しみです。(平凡社東洋文庫)

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大旱魃の後のモンスーンの到来と共に生まれ、「幸運」という意味のサンパトという名がつけられたサンパト・チャウラーは、しかし20年後、すっかり無気力な人間となっていました。父親が探してくれた郵便局の仕事にもうんざり。局長の娘の結婚式でお尻を出して踊り、とうとう首になってしまいます。しかしサンパトは突然啓示を受け、家を抜け出してグアヴァの木に登ってしまうのです。家族が懇願しても、一向に降りて来ようとしないサンパト。しかし父親のミスター・チャウラは、息子を聖人として売り出すことを思いつきます。

インドを舞台にしたユーモア小説。インドの映画を小説に置き換えたらこんな感じになるのかな~ってそんな作品でした。(インドの映画、実際には観たことないんですが...) インドの庶民の生活ぶりや街中の喧騒がフルカラーで迫ってくるみたい。訳者あとがきによると、インドではそれほど荒唐無稽な話とはされてないらしいんですけど、それでもやっぱり不思議~な雰囲気があります。
この中では、聖者とされてしまったサンパトが語る教訓的な言葉が面白かったです。一見意味がないくだらない言葉のように見えながら、考えようによっては深~い意味がありそうに感じられてくる言葉。そしてグアヴァの樹の下で日々繰り広げられる人間の欲望絵図とは対照的な、サンパト自身の静かで平和な樹上世界も。それだけに物語中盤が一番面白かったですね。猿の群れが登場した後のドタバタ部分は、うーん、あまり...。(新潮クレストブックス)


+既読のキラン・デサイ作品の感想+
「グアヴァ園は大騒ぎ」キラン・デサイ
「喪失の響き」キラン・デサイ

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単なる犬捜しのつもりが本格的な探偵業をすることになってしまった紺屋長一郎と、探偵に憧れて押しかけてきたハンペーこと半田平吉の2人の視点から展開していく、ハードボイルド系作品。登場人物の平均年齢もぐっと上がるし、これまでの作品、特にホータローの古典部シリーズや「春期限定いちごタルト事件」とはまるで違う雰囲気なんですねー。
本当は人間捜しの探偵業なんてしたくないのに、失踪した孫娘の行方を捜して欲しいという依頼を受けてしまう長一郎。彼の視点は、意外なほど本格的なハードボイルド。対するハンペーの視点は、「トレンチコート」「サングラス」「マティーニ」と、本当は形から入りたがる彼らしいユーモラスなハードボイルド。こちらの仕事は、地元の神社に伝わる古文書調べ。途中「オロロ畑」が出てきた時はびっくりしましたけど、そう言われてみれば、丁度萩原浩さんの「ハードボイルド・エッグ」みたいな雰囲気ですね。(笑) 登場した時は、単なる勉強嫌いのオチコボレキャラかと思ってたのに、意外や意外! なかなかいいですねえ、彼。

ただ、「失踪人捜し」と「古文書調べ」という2つの依頼が、どんな感じで繋がっていくかっていう肝心な部分に関しては、面白いというよりも正直じれったく...。普通、もう少し途中経過を報告しないですか? あ、でもこのラストはかなり好き。これが読めたんだから、まあいっか、とも思ってしまいました。(^^ゞ
ハンペーもまだこれからなんでしょうけど、長一郎に関してはまだまだ明かされてない部分が多いし、本領発揮もしてない感じ。長一郎のチャット相手のGENの正体もそのうち明かされるのかな? 続編もありそうなので、楽しみです。(東京創元社)


+既読の米澤穂信作品の感想+
「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信
「犬はどこだ」米澤穂信
「クドリャフカの順番 『十文字』事件」米澤穂信
「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信
「ボトルネック」米澤穂信
「遠まわりする雛」米澤穂信
「インシテミル」米澤穂信
Livreに「氷菓」「愚者のエンドロール」「さよなら妖精」の感想があります)

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「フォー・ディア・ライフ」「フォー・ユア・プレジャー」に続く花咲慎一郎シリーズ第3弾。
このシリーズは大好きなので、出た時から読みたくて仕方なかった作品。でも、ちょっと物足りなかったかな... 今回、山内練の隠し子疑惑なんてものがあるので(笑)、全編を通して山内練が登場してくれて嬉しいんですけど、でもなんだか今回の山内練は、いつもと違うんですよね。
このシリーズって、ハナちゃんこと花咲慎一郎が色んな事件に振り回されてるうちに、事件同士に思わぬ繋がりが出てきて、限られた時間の中でパタパタとそれらが綺麗に片付いていくのが一番の魅力だと思ってるんですが、今回の作品にはそういうのがないんです。しかもいつもなら、そこには冷酷非道な山内練のおかげでたっぷりと緊迫感があるのですが、今回の山内練は妙にハナちゃんに優しいというか甘いというか...(^^;。...もっとも、今回は1つの長編というよりも3編の連作短編という感じなので、事件の関連については仕方ないのかもしれないんですけどね。(だからといって、別々に楽しめるほど、独立した短編とも思えないんですが)
まあ、そんな風になんだかんだと思いつつも、やっぱりこのシリーズは大好き。探偵業はしているけれど、本職はあくまでも保育園の園長先生のハナちゃん。いつも古本ばかりで可哀想だからと、ようやく入った現金収入で新品の絵本を買いに行ったり、ヨレヨレに疲れてるのに、子供たちのためにインスタントラーメンの匂いが部屋に籠もらないよう、屋上に出るハナちゃんが大好きです。(実業之日本社)


+シリーズ既刊の感想+
「フォー・ディア・ライフ」「フォー・ユア・プレジャー」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき

+既読の柴田よしき作品の感想+
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき
「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき
「夜夢」柴田よしき
「激流」柴田よしき
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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現在37歳独身、大手総合音楽企業企画室の係長・墨田翔子が主人公。恋人もなく、部下の人望もなく、1人でランチはお手の物。しかし仕事一筋の生活にふと疲れを感じた時、彼女は思い立って有給をとりオーストラリアのケアンズへ...。

ということで、働く女性たちのお話。社会に出て働く以上、仕事面でも人間関係面でもストレスとは無縁ではいられないし、仕事が出来れば出来たで同僚に妬まれたり中傷されたり、出来なかったら出来なかったで上司に叱責されるし、しかも時にはセクハラの危険もあるし、男尊女卑のオヤジどもとも戦わなくちゃいけなかったりして、そりゃもう大変。(もちろんそんなマイナス面ばかりではないけれど)
そんな中で頑張ってる女性たちの描写がすごく素敵です。特に主人公の墨田翔子、こんな女性だったら上司にしたいなあって思っちゃう。人に対する好き嫌いは当然あるけど、それとは別にいい仕事をする人間は認めているし、ミスは容赦なく指摘する。相談事をした時は意外と親身になってきちんと考えてくれ、それだけでなく行動に移す。
1人ぼっちの自分の姿に、時には自嘲気味になる彼女なんですが、きっと自分で思ってるほど嫌われてるわけじゃないんでしょうね。そりゃあこれだけ仕事ができる女性が上司だったら、意識もするし、とっつきにくく感じても不思議じゃないです。まあ、あんな風に人前で計算ミスの指摘をされたくはないですが...(^^;。 相談事をした女性たちも、その懐の意外な深さに驚かされたはず。そこらの男どもより、ずっと男前。最後の対決もかっこよかったな。(新潮社)


+既読の柴田よしき作品の感想+
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき
「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき
「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき
「夜夢」柴田よしき
「激流」柴田よしき
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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7編の連作短編集。最初の話の脇役が次の話では主役にまわり、その話の脇役がその次の話の主役になり... という形式。こういうのはかなり好き。でもって、7編中3編は男性視点。島本さんの作品で男性視点というのは、もしかしてこれが初めてじゃないですか? なかなかいいですねえ。作品を読んでて一番気に入ったのが体重100キロを越すバーテンダーの針谷くんなんです。高校時代、可愛い女の子に告白して付き合い始めながらも、「ずっと彼女はなにか勘違いしているのだと僕は疑っていた」というほど、自分の外見にコンプレックスがある男の子。幼馴染の女の子に告白されそうになると、「男なのに胸があるんだよ」と触らせてかわしてしまったり。でもいざという時に頼りになる素敵な男の子。
あとがきにも書かれているように、「生真面目だったり融通がきかないほど頑固だったりするのに、その反面どこかウカツで変に不器用」な登場人物たち。これまでの作品、特に「ナラタージュ」のような熱さは感じなかったですし、幸せな場面ばかりではないですが、それでも読んでいて心地良い穏やかさがありました。(マガジンハウス)

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