Catégories:“2005年”

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15歳だったアルネが亡くなって1ヶ月。ハンスは、アルネの遺品を手に取りながら、色々なことを思い出します。アルネは一家心中で1人だけ生き残った少年。ハンスの家に引き取られ、それ以来ハンスはアルネと部屋を共有していたのです。アルネはなぜ死んだのか...

先日読んだ「遺失物管理所」(感想)と同じジークフリート・レンツの作品。あちらも、読み終わってみるとなんだか物悲しく感じられたんですが、こちらは作風がまた少し違っていて、最初から最後まで透明な哀しさの中に沈みこんでいるようなイメージでした。もちろん、アルネという少年が死んでしまっていることが最初から分かっているせいもあるんですけど...
このアルネという少年がものすごく純粋で... でも純粋すぎて、脆く壊れてしまった硝子細工という感じなんですよね。ハンスやハンスの両親みたいな頼れる人間もいたし、誰にも心を開かなかった男にも心を開かせちゃったし、学校の教師はアルネの才能を認めてるんだけど... でも同年代の仲間にしか埋められない孤独というのがあって。切ないなあ。
でも、いい話だったんだけど... 私は「遺失物管理所」の方が好きかな。(新潮クレストブックス)


+既読のジークフリート・レンツ作品の感想+
「遺失物管理所」ジークフリート・レンツ
「アルネの遺品」ジークフリート・レンツ

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「フランケンシュタインの方程式」「美亜へ贈る真珠」「清太郎出初式」「時空連続下半身」「詩帆が去る夏」「さびしい奇術師」「地球はプレイン・ヨーグルト」の7編が収められた短編集。14回目のたらいまわし「時の文学!」の時に、どこまで行ったらお茶の時間の七生子さんが「美亜へ贈る真珠」を挙げてらして(コチラ)、読みたいなーと思ってたんですが、今回の「美味しそうな食べ物が出てくる本は?」では、AZ::Blog はんなりと、あずき色のウェブログのoverQさんが「地球はプレインヨーグルト」を挙げてらして(コチラ)、ますます読みたくなっちゃったんですよね。で、図書館に行ってみると、どちらも入っているこの本が! 早速借りてきちゃいました。

私が梶尾真治さんの名前を知ったのは、多分「黄泉がえり」の映画化の時だと思うんですが(つまりかなり最近)、随分前から書いてらっしゃる方だったんですね。この本も1979年発行だし。しかもホラーの人なのかと勝手に思い込んでたら、ものすごいSF。(笑)
いやー、面白かったです。ドタバタな「フランケンシュタインの方程式」「地球はプレイン・ヨーグルト」も面白いし、リリカルな「美亜へ贈る真珠」「詩帆が去る夏」も素敵。短いけど、「さびしい奇術師」みたいな作品も好き。いや、でも、「地球はプレイン・ヨーグルト」にはほんとびっくりです。overQさんのエントリで、味覚で会話する宇宙人とのコンタクトの話とは聞いていたんですが... overQさんが書かれてエントリを直接読まれた方が遥かに伝わってくると思うので細かいことは省略しますが... 読む前からすごく期待がふくらんでてどうしようと思ったんですけど、実際読んでみたら期待以上! わはははは。
「美亜へ贈る真珠」は、梶尾真治さんのデビュー作とのこと。航時機というタイムカプセルのような機械に入ってしまった恋人を見に来る美亜。でもその機械の中の時間は機外の85000分の1で進むので、美亜の1日は恋人にとっては1秒ほど。あっという間に美亜は恋人よりも年を重ねてしまうんですよね。うにゃーん、なんて切ないラブストーリーなんでしょう...。すごく静かな雰囲気が素敵だし、しかもラストシーンの美しいことったら。  
他の作品もそれぞれに楽しくてバラエティに富んでいて、いや、ほんと発想が凄いです。

私の読んだこの本は既に絶版となっているようですが、それぞれの作品は右の3冊で読むことができます。「美亜へ贈る真珠 梶尾真治短篇傑作選 ロマンチック篇」で読めるのは、「美亜へ贈る真珠」「詩帆が去る夏」、「もう一人のチャーリイ・ゴードン 梶尾真治短篇傑作選 ノスタルジー篇」で読めるのは「清太郎出初式」、「フランケンシュタインの方程式 梶尾真治短篇傑作選 ドタバタ篇」で読めるのは「フランケンシュタインの方程式」「地球はプレイン・ヨーグルト」。(ハヤカワ文庫JA)

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列車の車掌の仕事から遺失物管理所へと異動になったヘンリー。遺失物管理所は出世も望めない、列車の待機線のような場所。しかしヘンリーに出世するつもりはまるでなく... ただ気持ちよく仕事ができれば十分なのです。

駅という場所は、これから旅立つ人や帰ってきた人、単に通り過ぎていくだけの人々が集まる、それだけでもドラマを感じさせる場所。帯にも「ここでは、今日もさまざまな人間ドラマが幕を開ける」とあるし、様々な遺失物から色んな人生が見えてくるんだろうなあ、なんて思ってたんですけど、そういう話ではなかったようで...(笑)
むしろこの遺失物管理所にいるヘンリーを中心とした人間ドラマでした。24歳になっても、まだまだ少年のようなヘンリーは、イイとこの坊ちゃんらしくて、第一印象はただの困ったくん。出世欲がないのはいいとしても、お金に無頓着でお姉さんに借りまくってるみたいだし、人妻には無邪気に言い寄ってるし。あと、落し物の受取人に、その遺失物が自分の物だと証明してもらわなければならないんですけど、ナイフ投げの芸人が落とした商売道具を取りに来た時は、そのナイフの特徴を言わせるだけじゃ足りなくて、自分を的にナイフを投げさせちゃおうとするんですよ! 上司に見つかって、当然叱られることになるんですけど(笑)、大体においてそんな感じ。台本を落とした女優と、お芝居の一場面を演じてみたり。でもそんなとこがとても面白いし、そんな風に楽しそうに仕事をしてるのってヘンリーぐらいなんですよね。
作品自体はあまり明るくないんですが、ヘンリーの明るさのおかげで、それがいい具合に緩和されてるような... この空気感が何とも好きです。読み終わった後は、妙に物悲しくなっちゃったんですけどね。ヘンリーの曇りのない純粋さこそが、人々が失ってしまい、遺失物管理所に探しに来るものなのではないかとそんな気さえしてきます。(新潮クレストブックス)


+既読のジークフリート・レンツ作品の感想+
「遺失物管理所」ジークフリート・レンツ
「アルネの遺品」ジークフリート・レンツ

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フランス贔屓のイギリス人・ウィノットは短い休暇を取り、心の我が家である南仏へ。その道すがら、様々な料理の話が、家族や乳母の思い出、現在滞在しているホテルや行ってみたレストランの話を交えながら語られていきます。

1人称で書かれていることもあって、まるで料理エッセイみたいな作品。でもこれはタークィン・ウィノットという人物の自伝的作品という体裁なんですね。「序、謝辞、および本書の構成について」から既に物語は始まっていました。とにかく料理、料理、料理、料理... 物凄く沢山の料理が次々に登場して、そのレシピや薀蓄がイヤってほど語られていきます。で、その博覧強記ぶりに幻惑されていると、あらら... という仕掛け。かなりのブラック・ジョーク。
でもねー、とにかく読みづらいんです。何が読みづらいって、文章が。こんなに大変だったのも久しぶり... これは翻訳にも関係あるんでしょうけど、むしろ原文のせいなんでしょうね。1つ1つの文章の中に情報が目一杯詰め込まれてて、ちょっと気を抜くと目が文字の上を素通りしてしまいそう。しかも一体何が話の核となってるのか、全然見えてこないんです。自分勝手な語りだけが延々と。例えば、ヴォルガ産のキャビアについて。

ヴォルガ産キャビアがほどよい塩加減で処理される過程については、よく知られているといえるほど知られているわけではありません。ベテランの鑑定人--毛糸の帽子などをかぶり眼光鋭く長靴には短剣を差した見た眼はおそらく荒削りな男--が卵を一粒口に入れ舌の上で転がす。すると経験と勘が不思議かつ精妙な合体を遂げて眼前のチョウザメの卵にはどのていど塩をすべきか、瞬時にしてわかってしまう。量を誤れば美食学的にも経済的にも大損害、大打撃を引き起こしかねない(これが長靴に短剣の理由)。芸術家が--別に自分のことだけをいっているのではありませんよ--作品の価値をすばやく見抜くことができるのとこれは相通じるところがあって、眼にするのと判断するのがほぼ同時というか、いや、ごくわずかだが眼にする前にその価値がわかってしまうというか、量子物理学的パラドックスさながらというか、あるいは夢と同じで展開する物語は非常に複雑、大胆に時空を越え人や事物を断片的に次から次へと取り込んでいくうちに--死んだ親戚がテューバとなり飛行機でアルゼンチンへ飛ぶのが初めての性体験と重なってリボルバーが暴発すると実はそれが鬘で--いよいよ恐るべきクライマックスにさしかかる前にロンドン中に響きわたるけたたましいサイレン、じき核戦争が勃発するぞという場面が気がつくとなんのことはない、ありきたりながらどこまでも安心感漂う家のなかでの出来事で、これにて一件落着というかのように目覚まし時計が威勢よく鳴るか玄関でお気に入りの郵便配達人がポストに入りきらない大きな小包を抱えて立っている、そんな瞬間と似ていなくもないのであります。(P.23-24)

ひえー、疲れた...
...でもこういう文章はわざとだったんですね。必要以上に饒舌な文章が煙幕となって、主人公という人間をカモフラージュしていたのでしょう... 実は想像以上に奥が深い作品で、すっかり作者にしてやられてしまったのかもしれません。でも文章が読みにくいっていうのは、やっぱりつらいぞっ。(新潮クレストブックス)

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「優しい音楽」「タイムラグ」「がらくた効果」という3編が収められた、瀬尾まいこさんの最新作。(とは言っても、出たのは4月だけど)
3編とも、恋人関係の中に第三者が入り込んできて、恋人同士の基盤が揺らぎそうになりながらも、しっかりと持ちこたえて新しい関係を生み出す、そんな話。(で、いいのかしら...(^^;) それぞれに柔らかい優しさがあって、登場人物たちの人の良さがとても印象的。
でもね、「幸福な食卓」のことを考えると、どこか違う気がしてならないんです。別に「幸福の食卓」のような展開を望んでいるわけじゃないし、むしろあんなことは二度とゴメンなんですけど... でもここでこんな風に終わらせてもいいのなら、なぜ瀬尾さんはあの時あんなことをしたの? という疑問が再燃。
うーん、やっぱり納得できてなかったのね、私。きっととってもいい話なのに、なんだか素直に読めなくて淋しいわー。(双葉社)


これで、現時点で出ている瀬尾さんの作品は完読。とりあえずMy Best Books! の順位(コチラ)は変更なしで良さそうです。


+既読の瀬尾まいこ作品の感想+
「幸福な食卓」瀬尾まいこ
「優しい音楽」瀬尾まいこ
「温室デイズ」瀬尾まいこ
Livreに「卵の緒」「図書館の神様」「天国はまだ遠く」の感想があります)

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「怪笑小説」や「毒笑小説」に次ぐ、ブラックユーモア短編集。13編が収められています。
この中で目を引くのは、やっぱり4編の文壇物でしょうね。表紙の写真にも東野さんご自身が登場してるし、某文学賞に5度目のノミネートという作家・寒川は、どう考えても東野さんご自身がモデル。とは言っても、別に自虐的なギャグじゃなくて、周囲の「きっと東野は悔しがっているだろうな」という期待に応えてみたんだと私は思ってるんですが... どうなんでしょう。(笑) 作中に登場する唐傘ザンゲ氏の「虚無僧探偵ゾフィー」が読んでみたいな。勝手な想像としては、舞○王○郎作品がモデルなのかな、なんて思ってるんですが...?(笑)
そういう文壇物は独立させて1冊にして欲しかったような気はするんですけど、下ネタ物その他がミックスされて、「黒笑」が程よく緩和されているのかも。私が特に楽しんだのは「インポグラ」と「モテモテ・スプレー」なんですが、「シンデレラ白夜行」も面白かったな。突然の童話調に驚いたんですけど、このシンデレラこそが彼女なのですね~。(集英社)


これで東野作品は再びコンプリートのはずだったんですが、一昨日「容疑者Xの献身」が出ちゃいました。いやーん、なかなか追いつかない... じゃなくて、好きな作家さんの新作が次々に読めるなんて幸せ! 今度は早めに読めるよう頑張ろうっと。


+既読の東野圭吾作品の感想+
「ちゃれんじ?」東野圭吾
「さまよう刃」東野圭吾
「黒笑小説」東野圭吾
「容疑者Xの献身」東野圭吾
「さいえんす?」東野圭吾
「夢はトリノをかけめぐる」東野圭吾
「赤い指」東野圭吾
「たぶん最後の御挨拶」東野圭吾
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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1人娘を殺された長峰。娘が2人の少年にレイプされているビデオを見た時、彼は...。

久々の東野圭吾作品。分厚い2段組だし、相当重いテーマのようだったので、もしかしたらこれは相当ツラいかも... と思ったんですが、読み始めたら一気でした。いや、でも、もう何を書いたらよいのやら... 自分の子供、特に女の子を持つ親ならば、長峰に同情せずにはいられないでしょうね。こんなひどいことをしても、3年もすれば仮出所できるなんて! 「少年法は子供を裁くためのものではなく、間違った道に進んでしまった子供たちを助けて、正しい道に導くために存在する」なんていう言葉が、ほんと白々しく感じられちゃうほどのどうしようもない少年たち。長峰は、司法に任せておいても犯罪者に制裁など加えてくれないだろうと、自分で犯人を1人殺し、もう1人を追いかけることになるんですが、警察はそんな長峰に同情しながらも、長峰の次の犯罪を未然に防ぎ、しかも長峰を逮捕しなければならないわけで... 正義って一体ナニ? 
でも果てしなく広がってしまいそうな、少年法に対する問題提起を、これだけの作品にまとめた東野さんはやっぱりすごいです。(ここでは切り落としてる部分まで含めたら、ほんと何冊も書けそう) はああー、ずっしり。(朝日新聞社)


+既読の東野圭吾作品の感想+
「ちゃれんじ?」東野圭吾
「さまよう刃」東野圭吾
「黒笑小説」東野圭吾
「容疑者Xの献身」東野圭吾
「さいえんす?」東野圭吾
「夢はトリノをかけめぐる」東野圭吾
「赤い指」東野圭吾
「たぶん最後の御挨拶」東野圭吾
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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