Catégories:“2005年”

Catégories: /

 [amazon]
ジョージ・マクドナルドは、C.S.ルイスやJ.R.R.トールキンに大きな影響を与えたという作家。数多くのファンタジーを書いてるんですが、この「北風のうしろの国」は、マクドナルド作品にしては珍しく、当時の現実が大きく取り入れられた作品です。物語は大きく3つの部分に分かれていて、1部は貧しい家に生まれたダイヤモンド少年と、美しい女性の姿をした北風の交流。2部は、産業革命直後のロンドンの現実的な場面。ここではダイヤモンド少年のお父さんが失業したり、なかなかシビアな状況で、ダイヤモンド少年の視線を通して、ロンドンを行きかう人々の様々な階級、特にスラムに住む下層階級の人々の貧しい暮らしなどが見えてきます。でも北風は一体どこに...? と思ったら3部で再登場。

物語の中では、序盤のダイヤモンド少年と北風が夜空を飛んでゆく場面が綺麗なんですが、でもマクドナルドが一番書きたかったのは、ロンドンでの現実的な話なのかな? 貧しくても健気な少年少女といえば、「小公女」のセーラやら何やら色々といますが、私はモーリス・ドリュオンの「みどりのゆび」のチトー少年を思い出しながら読んでました。物質的な恵まれ方には相当差がある2人なんですけどね...。北風とは何なのか、北風のうしろの国とは何なのかは、読んでみてのお楽しみ。
この作品は子供の頃に一度読んでるので再読なんですけど、その時は何か違うタイプの話を期待してたので、ちょっとがっかりしたんですよね。そのせいかすっかり内容を忘れちゃってて、ほとんど初読感覚でした。(^^ゞ(ハヤカワ文庫FT)


+既読のジョージ・マクドナルド作品の感想+
「お姫さまとゴブリンの物語」「カーディとお姫さまの物語」マクドナルド
「北風のうしろの国」ジョージ・マクドナルド
「かるいお姫さま」マクドナルド
「ファンタステス」ジョージ・マクドナルド
「金の鍵」「黄金の鍵」ジョージ・マクドナルド
「きえてしまった王女」「かげの国」ジョージ・マクドナルド

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / / /

 [amazon]
「影との戦い」「こわれた腕環」「さいはての島へ」「帰還」「アースシーの風」「ゲド戦記外伝」の6冊。以前4巻まで読んでいて、その「帰還」に「ゲド戦記最後の書」という副題がついてるんですよね。まさかその後5巻と外伝が出るとは! 先日6巻セットを貸してもらったので、いい機会だし最初から全部読み直してみました。

主人公はゲドという魔法使い。1巻の「影との戦い」で登場するゲドはまだ少年です。強い魔法の力を持っているのを見出され、魔法使いたちの学院で正式に魔法について学ぶことになるんですが、自分の力を慢心して、若気の至りでとんでもない事態を引き起こしてしまう... という物語が、この「影との戦い」。そして1巻進むごとに何年も経過していて、最終的に「アースシーの風」の頃のゲドは、なんと70歳ぐらいのおじいさん。(笑)

このゲド戦記、最初は全3巻の作品だったんですよね。最初の3冊は、色々なメッセージを内包してはいるものの、純粋に異世界ファンタジー。でも3巻から16年経って刊行されたという4巻は、どうもフェミニズム論が前面に出すぎていて、初読の時はあまり好きになれなかったんです。ゲドも初老の域に達してるし、3巻の時に力を使い果たしてしまって既に大魔法使いでもなくなってしまってるし、ファンタジーというジャンルを離れてしまったような気がして。4巻であれだったら、5巻では一体どうなるんだろうと思ってあまり期待してなかったんですが... いやー、良かったです。この5巻があって初めて、物語全体が綺麗に閉じたという気がします。それまで当たり前のように受け止めていたこの世界の前提があっさり覆されて、初めて正しい姿がくっきりと見えてきたという感じ。
ゲドが「影との戦い」での失敗のせいですっかり内省的になっちゃうんで、全体的にあまり明るい雰囲気ではないんですが(笑)、でもやっぱりいいです、ゲド戦記。世界の奥行きも抜群。やっぱり今回最初から読んで良かった! 名作ですね。


そして次のジブリは、この「ゲド戦記」なのだそうです。びっくり~。一体どんな感じになるんでしょうね。っていうか、一体どんな風にまとめるつもりなんでしょうね? と思ってたら、ココの記事にありました。3巻を中心にまとめるんですって。ゲド、なんだか脇役になっちゃいそうだなあ。(笑)(岩波書店)


+既読のアーシュラ・K・ル=グウィン作品の感想+
「闇の左手」アーシュラ・K・ル・グイン
「ゲド戦記」アーシュラ・K・ル=グイン
「夜の言葉」アーシュラ・K・ル=グウィン

| | commentaire(7) | trackback(1)
Catégories: /

 [amazon]
1969年にヒューゴー賞とネビュラ賞を受賞したという作品。これはハイニッシュ・ユニバースと呼ばれるシリーズの4作目だったんですね。1冊ごとに独立した話ではあるようなんですが、元々SFはあまり得意ではないところに、良く分からない用語が沢山登場するし、説明もほとんどなくて、かなり苦戦しました... というか、挫折しなかったのが不思議なほど。読了後も解けない疑問がいっぱい! 巻末に「ゲセンの暦と時間」が載っていたのに気づいたのも読了後だし、地図とか用語辞典が欲しかったです。

舞台となるゲセンは常に雪と氷に覆われている惑星。ここに住むゲセン人は、外見的には人類と同じなんですが、両性具有で、26日周期でめぐってくるケメルと呼ばれる発情期にパートナーと性交して子供をもうけるのが特徴。主人公はそんな世界を訪れて、地球を含む、宇宙に存在する3000もの国家の同盟体の使節として、同盟を申し込むことになるんですが... でも相手は宇宙船はおろか、空を飛ぶ鳥すら見たことのない人々。しかも主人公は両性具有ではなくて男性。特に発情期が決まっているわけでもなく。外見こそ一緒ですが、両性具有の彼らから見たら薄気味悪い存在にしか見えないわけです。

ものすごーく苦戦したんですが、終盤の氷原の逃避行は良かったです。曲がりなりにも友情として確立しようとしていたものが、ケメルによって違うものに変貌しようとする一瞬なんてドキドキ。途中で挿入されたゲセンの民話や説話も面白かったし、SFが好きな人は大絶賛の作品なんだろうなあ。という私もせめてシリーズ1作目から読んでいれば... うーん、でもやっぱりSFはしばらくやめておいた方が無難かも...(^^:。(ハヤカワ文庫SF)


+既読のアーシュラ・K・ル=グウィン作品の感想+
「闇の左手」アーシュラ・K・ル・グイン
「ゲド戦記」アーシュラ・K・ル=グイン
「夜の言葉」アーシュラ・K・ル=グウィン

| | commentaire(7) | trackback(1)
Catégories: / / /

 [amazon]
友人に連れられて行ったそのクラブは、敷地もあまり大きくなく、部屋数もたかが知れており、ビリヤード台もなく、特別美味しいワインがあるわけでもない、冴えないクラブ。しかし折よくジョーキンズという古株が来ていて、彼に好物のウイスキーのソーダ割を振舞えば、必ず面白い物語を聞かせてくれるというのです。

ビリヤードクラブで語られるホラ話の数々。それは世界中を旅してきた、一度は人魚と結婚までしたたというジョーキンズ氏が語る物語。ダンセイニといえば、これまでは「ぺガーナの神々」や「魔法使いの弟子」のような中世的なファンタジーのイメージだったんですが、これはまるで違うんですね。こんな作品も書いていたとはびっくり。こちらにも妖精や魔女、人魚などは登場しますし、蜃気楼が幻想的な情景を作るんですが、もっと日常に近い物語。しかも「電気王」という作品では火星旅行について、「ビリヤード・クラブの戦略討議」ではなんと原爆戦争について書かれてるんです。この「ビリヤード・クラブの戦略討議」が発表されたのは、広島の原爆投下から3年後なんですよね。最初はちょっと引いたんですが、でも最後のオチは好きでした。...でも、魔女の住む森や丘の上に現れる蜃気楼の情景は美しいけど... ダンセイニなら、もっと重厚なファンタジーが読みたいかな。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ
「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ
「牧神の祝福」ロード・ダンセイニ

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / /

  [amazon] [amazon]
新潮クレストブックスから出ていた、ドイツ人作家・ベルンハルト・シュリンクの2冊。「朗読者」が長編で、「逃げてゆく愛」が短編。
いいですねえ。読み始めた途端に、なんだかしみじみと染み込んでくる感じでした。
予想もしてなかったのでびっくりだったんですが、「朗読者」にもナチの問題が登場するし、「逃げてゆく愛」でもドイツ人とユダヤ人、あるいはドイツが内包する政治的問題などを絡めて描いた作品が目につきます。戦争を体験した親世代、戦争を直接知らない子供世代。ごく個人的な存在でありながら、社会情勢の変化の影響を受けずにはいられない愛。ドイツ人とユダヤ人の恋愛の難しさなんかも考えさせられちゃいました。(直接的な戦争物は苦手な私なんですが、こういう作品なら読めるんですよね)
どちらが良かったかといえば、長編の「朗読者」なんですが、「逃げてゆく愛」に収められている「もう一人の男」も良かったです。これはナチは全然関係なくて、奥さんが亡くなった後に、奥さん宛てに知らない男から親しそうな手紙が来て... という話。残された2人が何を考えようと、奥さんの本当の気持ちはどうだったのか、もう誰にも分からないんですよねー。

今気がついたんですけど、この2冊、並べると表紙の雰囲気が似ててすごく綺麗ですね。やっぱりクレストブックスは装幀も素敵です♪ (「朗読者」は文庫の表紙を出してますが、若干フォントが違うだけで、バックの絵は一緒です)(新潮文庫・新潮クレストブックス)


+既読のベルンハルト・シュリンク作品の感想+
「朗読者」「逃げてゆく愛」ベルンハルト・シュリンク
「帰郷者」ベルンハルト・シュリンク

| | commentaire(8) | trackback(6)
Catégories: / /

 [amazon]
まだまだ駆け出しの28歳のフリーライター・寺坂真以が主に仕事場としているのは、近所のファミリーレストラン。ノートパソコンや手帳、携帯電話などをリュックに詰めて出かけていきます。そしてそこで出会った謎を、幸田ハルというおばあさんの助けを借りて解いていくという連作短編集。

いわゆる日常の謎物。ここに登場する幸田ハルというおばあさんは、このファミリーレストランが建つ前に、この辺り一帯の敷地の持ち主だった女性で、20年前に既に亡くなっています。つまり幽霊ということ。この設定が松尾さんらしいところですねー。彼女は生前の暮らしを懐かしんで、時々ファミリーレストランに現れるんですが、みんなに見えるというわけじゃなくて、見える人と見えない人がいるという設定。
で、このおばあちゃんが何とも愛嬌があって可愛いんです。特に冒頭の「ケーキと指輪の問題」で、せっかく解いた謎が仕事の役には立たなかったと分かった時のおばあちゃんの反応といったら...。あまりに可愛らしくて、一気にファンになってしまいました。松尾さんらしさはそれほど強烈ではないので、松尾ファンの私にとってはちょっぴり物足りなさも残るんですが、逆にこういう作品がファン層を広げるかも? ぜひ続編も書いていただきたい作品です~。(光文社)


+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

| | commentaire(4) | trackback(1)
Catégories: /

 [amazon]
ある日突然、近くにいる人間に思った通りの言葉を口にさせられる「腹話術」の能力が自分にあると気づいた安藤。そしてその頃、政界でまさに台頭しようとしていた弱小の未来党党主、39歳の犬養。この安藤と犬養の物語を描いた「魔王」と、その5年後の「呼吸」。

今までの伊坂さんの作品とはまた違う雰囲気の作品で驚きましたが、面白かったです! あとがきに「ファシズムや憲法などが出てきますが、それらはテーマでありません。かと言って、小道具や飾りでもありません。」と書かれているのですが、全編ファシストやムッソリーニ、ヒットラー、憲法第9条の法改正案など、普通の小説で扱うには重いモチーフが満載。そして、それに対して伊坂さんなりの回答が示されているというわけではないんですが、主人公の安藤が何か起きた時に自分に向かって言い聞かせる「考えろ考えろ」という言葉、そして政治家・犬養の「私を信用するな。よく、考えろ。そして、選択しろ。」という言葉がポイントなんでしょうね。アメリカに言われる通りの行動を取り続ける日本人政治家、そんな政治家に対して苦々しく思ってはいても、結局のところ「無関心」から抜けきらない人々への警鐘。
安藤と犬養は、本当は対立するような関係ではないはずなのに、犬養のパワーが強すぎて、みんなが簡単に飲み込まれていってしまうのが問題なんですよね。1人1人がきちんと自分で考えればファシズムになんてならないはずなのに、結局流れとしてファシズムが出来上がってしまうのが、当然の成り行きとはいえすごい皮肉。犬養は、本当は安藤のような人間こそ欲しかったんじゃないかと思うんだけど... そして一旦流れが出来上がってしまったら、一個人でそれに逆うなんていうのはなかなか難しいわけで。
作品の薄ら寒くなるようなところに、シューベルトの「魔王」の歌詞が効いてますねー。(講談社)


+既読の伊坂幸太郎作品の感想+
「死神の精度」伊坂幸太郎
「魔王」伊坂幸太郎
「砂漠」伊坂幸太郎
「終末のフール」伊坂幸太郎
「陽気なギャングが地球を回す」「陽気なギャングの日常と襲撃」伊坂幸太郎
「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

| | commentaire(8) | trackback(13)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.