Catégories:“2005年”

Catégories: / /

 [amazon]
昨日の「西行花伝」に引き続きの西行。でもこちらは物語ではなく評伝ということで、またちょっと違う西行の姿が見えてきました。「西行花伝」の西行は、少年時代から利発で、源重実の語る雅(みやび)な心について真面目に考え込むような少年。若いころから、人間的にかなり出来てるんですけど、白洲さんを通して見る西行はそれほど人間が出来てなくて、結構荒々しい面も持ってたみたい。若いころは好き嫌いがひどくて癇癪持ちで、世話になっている人でも、一旦見切ってしまうと簡単に縁を切ってしまったとか。出家の時に実の娘を縁から蹴落としてる、鎌倉中期に描かれた絵なんかも載ってて、かなりびっくりです。それもそのはず、西行の先祖には平将門を討った荒くれ者の俵藤太がいたから、なんだそうですが... そういうものなんですかね?(笑) あと、出家した後も待賢門院のところの女房たちとか、通りすがりの遊女相手に粋な歌のやりとりをしてみたりという艶やかさもあったり。もちろん「西行花伝」の西行が絶対とは思ってなかったんですけど、やっぱりかなり違うものなんですね。面白いなあ。
白洲正子さんご自身が、西行縁の地を辿って色々な旅をしてらっしゃるので、そういう紀行文的楽しみもあるし、能や歌舞伎、その他様々な資料に残る逸話を引き合いに出しての説明も興味深かったです。白洲正子さんの潔さのある文章もいいですね。(新潮文庫)

ということで、西行はこれで一旦オシマイ。次は坂口安吾氏の「桜の森の満開の下」を読もうかと思ったんですけど、あいにくとまだ満開じゃないんですよね。てか、まだほとんど蕾だし! なので、咲き揃うまでもうちょっと待つことにします。(^^ゞ


+既読の白洲正子作品の感想+
「日本のたくみ」白洲正子
「西行」白洲正子
「遊鬼」白洲正子

| | commentaire(4) | trackback(0)
Catégories: / /

 [amazon]
「願はくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ」という歌からも、桜のイメージの強い西行。ここ数年、桜の季節に合わせて白洲正子さんの「西行」を読もうと思いつつ、果たせずに積みっ放しだったのですが、今年こそ!
ということで、まずは辻邦生さんの「西行花伝」を読んでみました。(えっ、白洲さんじゃないの?) 西行の死後、弟子の藤原秋実という人物が、生前の西行に関わりあいのあった人物を訪ね歩いて、西行に関する話を聞き出していくという形態。秋実自身はもちろん、乳母や従兄、友人知人、そして他ならぬ西行自身の言葉によって、徐々に西行という人間が浮かび上がってきます。西行に関する知識など皆無に等しい私にとっては、人間関係を掴むまでがちょっと大変だったのですが、でも文章がなんて美しい...! 柔らかな語り口なんですけど、芯の強さがあるんでしょうね。読んでいてすごく心地良かったです。森羅万象を愛しむ西行の懐の深さと相まって、なんだか大きな温かいものに包まれているような気分になりました。和歌の説明が特についていなくても、読んでいるうちに自然と分かってくるような気がしたし。そして西行といえば、もっと世を儚んで出家したのかと思っていたのですが、この作品によるとそうではないのですね。歌に生きるため、この世の全ての物を愛するがため、この世を美しく豊かに生きるための出家。現世(うつせみ)が好きだからこそ、現世を棄てる。現世から一歩離れてこそ、その良さが見えてくるし、より深く現世に関わるための出家。700ページという大作で、結構時間をかけて読んだのですが、でももっとゆっくり読みたかったな。序+21帖に分かれてるから、1日に1帖ずつ読むというのもいいかも。今度ぜひとも再読して、またじっくりと味わいたいものです。

これは実は5回目のたらいまわし企画で、おかぼれもん。のpicoさんが「感銘を受けた本」として挙げてらした本。たらいまわしって、漫然とした私の読書意識にいつもほんとガツーンとショック与えてくれて凄いです。私なんて参加するたびに全然読んでない本ばかりで、自分の底の浅さにショック受けちゃうんですけど、でもおかげで少しは幅が広がりそう。
ということで、次こそは白洲正子さんの「西行」。本当は瀬戸内寂聴さんの「白道」も読んでみたいんですけど、こちらは未入手。これは来年かもしれないなあ。(新潮文庫)


+既読の辻邦生作品の感想+
「西行花伝」辻邦生
「手紙、栞を添えて」辻邦生・水村美苗

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: /

 [amazon]
第15回ファンタジーノベル大賞受賞作。ずーっと読みたいと思ってて、でも図書館解禁まで我慢我慢... と思っていたら、なんと友達が持ってました。ラッキー♪ ...って、確かに図書館自粛は破ってないけど、友達から借りてたら一緒...?(笑)
あ、でも来月辺りそろそろ図書館解禁にしようと思ってます。積読本はまだ70冊ちょっとあるんですけど、それでも自粛してる間に100冊以上消化しましたしねー。とは言っても、その間も本は買ってるので、あんまり効率が良くない減り方なんですが...(^^;。まあ、図書館行きを解禁しても、その70冊を消化するために、当分は週1~2冊借りる程度に抑えようと思ってます。(って、一体誰に向かって説明してるんだ...? 笑)
そしてこの「太陽の塔」なんですが、主人公は休学中の京大5年生。この彼が、1年前のクリスマスに自分を振った「水尾さん」を、「研究対象」とか言って付け回してたりするあぶなーい人だったりするんですが、でもこれがストーカー小説かといえば全然違います。主人公もその周囲の男友達も、自分たちのことを素晴らしい人間だと信じきっていて、自分たちがモテないのを棚上げして、ひたすら強がってる人たち。時には鼻持ちならない勘違い振りなんですが、でもその勘違いの方向がまるでズレてるから、逆に微笑ましくなっちゃうのね。東大生では、この雰囲気は出せないかも。京大生ならではかもしれないなあ。でもって、照れ隠しでわざとちょっと硬めにしてみました... という風情の文章がまた、まるで昔の帝大時代の文学少年といった雰囲気なのです。...これのどこがファンタジーノベル大賞なんだ? なんですが(笑)、でもこの妄想ぶりはまさにファンタジーかも。爆笑できるというよりは、何度もニヤリとさせられちゃう青春小説。特に、土地勘がある人には、かなり楽しめるのではないでしょうか。(笑)(新潮社)


+既読の森見登美彦作品の感想+
「太陽の塔」森見登美彦
「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦

| | commentaire(2) | trackback(1)
Catégories: /

 [amazon]
東京郊外の新興住宅地、通称緋沼サテライトで不吉な事件が次々に起こっていました。動物や人間が襲われ、殺されたり行方不明になっていたのです。目撃した子供の口から出てくるのは「トレチアがやった」という言葉のみ。事件現場では白シャツに制帽姿の少年が目撃され、「キジツダ」という言葉が...。

前回の「ペニス」(感想)に引き続き、幻想小説テイスト。あちらほどの難解さはないと思うんですけど、こちらも結構な難物デシタ。前半部分は、人工的な新興団地の闇に浮かぶ都市伝説。まだ大人ではなく、かと言って善悪の区別のつかない子供でもなく... といった年代の子供たちの中途半端さと、容赦ない極端さが怖い! そして後半になると、その都市伝説が崩壊して怒涛の広がりを見せることになります。その辺りが津原さんの津原さんたる所以のような気がするんですが... 自分が果たしてどの程度理解できているのかと考えると、妙に不安になってしまったり...(^^;。(集英社文庫)


+既読の津原泰水作品の感想+
「ペニス」津原泰水
「少年トレチア」津原泰水
「綺譚集」津原泰水
「妖都」津原泰水
「蘆屋家の崩壊」津原泰水
「赤い竪琴」津原泰水
「ルピナス探偵団の当惑」津原泰水

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: /

 [amazon]
アイルランドの和平実現を目前に控えた1997年7月。スライゴーのB&B・レイクサイド・ハウスで、IRAと並ぶ北アイルランドの武装勢力・NCFの副議長が何者かに殺害されます。政治的な理由で警察を呼ぶことが出来ないまま、同行していたNCF参謀長のトムは、偶然居合わせた日本人科学者・フジらと共に事件を調べ始めることに。

ということで、石持浅海さんのデビュー作。アイルランドを舞台にしたミステリというのも珍しいし、しかも北アイルランド問題が絡んでくるところなんて、なかなか面白かったです。(IRAはもちろん実在ですけど、NCFって架空の団体ですよね...?) テロ組織っていったら、もっと血の気が多い人たちを想像しちゃうんだけど、案外みんな理性的なのは、やっぱり和平交渉が進んでる最中だからでしょうか。(笑)
でもそっちは良かったんだけど、肝心のミステリ部分に関しては、ちょっと物足りなかったかも。殺し屋に関しても真相に関しても動機に関しても他のことに関しても、予想してた所に直球ストレートなんですもん。私の予想が当たることなんて珍しいから尚更なんですけど、でも今回は、これまた私にしては珍しく、「これしかない」と思ってたんですよね。普段は断然物語重視で、たとえトリックが多少破綻してても気にしない私なんですが、これほど驚けないとなるとやっぱりちょっと考えちゃいます。だって唯一びっくりした箇所が、「~を」が「w」になってる誤植だけだったんですもん(^^;。 とはいえ、これがデビュー作なんですものね。こんな素材をミステリに絡めて書ける作家さんが出てきてるというのは、やっぱりすごいな。他の作品はどんな感じなのか楽しみです。(光文社文庫)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: /

[amazon]
スペインの没落貴族の息子・ラモン・アロンソは父親の言いつけで、魔法使いの弟子となって錬金術について学ぶことに。家にはお金がなく、もうじき15歳になる妹の持参金にも困る状態なのです。しかしその魔法使いの家でアロンソが出会ったのは、「不死」の代償で自分の影を魔法使いにやってしまい、今はひどく後悔している老いぼれた掃除女。彼女はアロンソに、影だけは決してあげてはいけないと忠告するのですが、...。

「ぺガーナの神々」に続くダンセイニ作品。題名通りのファンタジー作品なんですけど、ダンセイニの雰囲気ってやっぱり独特。普通の起承転結を持つファンタジー作品、たとえば「指輪物語」とかナルニアとはまた全然違ってるし、昔ながらのおとぎ話の雰囲気ともまた違うし... なんだか吟遊詩人の語りを聞いてるような気がしてきます。相変わらずサクサクとは読めないんですけど、でもこの世界はとても綺麗。で、この作品は、「影の谷年代記」という作品と繋がっているのだそう。そちらも読んでみたいです。ケルトのイメージが強いダンセイニがスペインを舞台に、というのはなんだかびっくりだったんですけどね。(ちくま文庫)


+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ
「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ
「牧神の祝福」ロード・ダンセイニ

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / / /


ぺガーナの神々
 [amazon]
ダンセイニの創り出した神話の世界。
マアナ=ユウド=スウシャイという神と、その神が創り出した「ちいさき神がみ」の物語です。この「ちいさな神がみ」というのは、丁度ギリシャ神話や北欧神話といった多神教の神話の神々みたいな感じ。(マアナ=ユウド=スウシャイに比べると小さいんですけど、実際には全然小さくありません・笑) でもそういった血の気の多い人間的な神々とはまるで違っていて、このぺガーナの神々は全然人間味を全く感じさせないんですよね。ひたすら冷たく突き放してます。自分たちが世界の全てを創り出したのに(マアナ=ユウド=スウシャイが創ったのはこの「ちいさな神がみ」だけで、その後はすっかりお休み中)、全然愛情なんてないみたい。でも、その「ちいさな神がみ」ですら、マアナ=ユウド=スウシャイがひとたび手を振れば、忽ち消えてしまうような存在なんですよねえ。(ヤヤコシイ)
でも、だからこのマアナ=ユウド=スウシャイが、この世で唯一絶対の存在かといえば、そういうわけでもないんです。実はマアナ=ユウド=スウシャイが<ちいさな神がみ>を生むきっかけになったのは、<宿命>と<偶然>の賭け。勝った方がマアナに、「さあ、わしのために神がみをつくってもらおう」と言ったから。マアナに命令することができる「宿命」と「偶然」って、一体何者? そもそも勝負に勝ったのはどっち...?! そして最後にもこの「宿命」と「偶然」がちらりと登場するんですが、これがまた「フェッセンデンの宇宙」のような...。
私にとっての初ダンセイニ作品。全然サクサクと読めず、薄い本なのにすっかり時間がかかっちゃったんですが、この独特の世界はなかなか心地良かったです。ダンセイニは何冊か積んでるので、そっちも読んでみなくっちゃ。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ
「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ
「牧神の祝福」ロード・ダンセイニ

| | commentaire(0) | trackback(0)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.