Catégories:“2005年”

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画像は、より入手しやすそうな平凡社ライブラリーのものを使ってますが、私が読んだのは東洋文庫版です。
明治11年、47歳の時に日本を訪れ、日本人通訳である18歳の伊藤と共に約3ヶ月に渡って北関東から東北、北陸、そして北海道を馬と徒歩で旅したイギリス人女性・イサベラ・バードの本です。旅先から彼女の妹や親しい友人たちに宛てた手紙を主体にまとめたもの。中島京子さんの「イトウの恋」はこの本を基に書かれていて、LINさんに面白かったと教えて頂いたんですよね。普段、紀行文にはあまり興味がないのですが、でもこれは確かに面白かった!

それにしても、通訳がついていたとはいえ、食事はもちろん生活習慣がまるで違う国で、西欧の女性がこんな1人旅をしてしまったというのが驚き。しかもこのイサベラ・バードは、どこまでいってもイギリス式を押し通そうとする、ありがちなイギリス人じゃないんですよね。携帯式のベッドや自分の蚊帳は持ち歩くけれど、それは日本の宿屋につきものの蚤の大群から逃れるためだし、食事や臭いに関してはかなりぶつぶつ言ってますけど、それでも基本的に「郷に入れば郷に従え」。もちろんキリスト教至上主義の西欧人らしい部分もあるんですが、色々なものを素直な目でとても良く観察してるし。イサベラ・バードが感じた景色の美しさや人々の不衛生ぶり、礼儀正しさと相反する物見高さ、そして子供たちの親に対する従順ぶりなどが、冷静な文章で書かれていきます。一体ここに書かれている「日本」のどれだけが、今の日本に残ってるんでしょうね。
そして逆に、明治維新直後の日本についての自分の無知ぶりには、我ながらびっくりです。幕末~明治維新直後の小説からでも、ある程度知ってるんじゃないかと思い込んでいたんですが、これが大間違いでした... 私ったら本当に何も知らなかったのね。西欧文化の影響を受ける直前の日本らしい日本の姿、そしてアイヌの姿がとても興味深かったです。

「イトウの恋」とは、細かい部分が色々と違っていると思うんですが、意外なほど同じ部分もあって、思っていた以上に重なります。となると2冊を読み比べてみたくなっちゃう。今、「イトウの恋」が手元にないのがとても残念です。今度、確かめてみようっと。そして宮本常一さんの「イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む」も読んでみたいな。(東洋文庫)

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ハードボイルド作家・原りょう氏のエッセイ集。10年前に単行本で刊行されていた「ミステリオーソ」に、その後書かれたエッセイや対談、短編が加えられ、「ミステリオーソ」「ハードボイルド」という2冊の本になって再登場しました。「ミステリオーソ」に書かれているのは、原氏の自伝的なことと、ジャズ、そして映画の話。こちらにも本の話も入ってるんですが、本については主に「ハードボイルド」に収められてます。こちらは、読者として作家として、好きな作品や自分の作品について。

読む前は、本の話がメインの「ハードボイルド」の方が楽しめるかなと思っていたんですが、両方読み終えてみれば、ジャズ話が予想外に面白くて「ミステリオーソ」の方が好みでした。「ハードボイルド」もいいんですけど、ここで言及されてる作品って、ほとんどが翻訳物のハードボイルド&ミステリなんですよね。私の場合、ハードボイルドには元々それほど強くないし(レイモンド・チャンドラーもダシール・ハメットも「一応」読んだ程度)、最近はミステリから気持ちが離れ気味なので、本の紹介を読んでいても、「これ、読んでみたい!」にならなくて... いや、それは積読本が増えなくて幸いだったと言うべきかしら。でも沢崎シリーズのバックグラウンドが垣間見えて、楽しかったです。決して万人向けという感じのエッセイではないのですが、沢崎シリーズのファンならきっと楽しめるだろうなという作品ですね。(ハヤカワ文庫JA)


+既読の原尞作品の感想+
「愚か者死すべし」原りょう
「ミステリオーソ」「ハードボイルド」原りょう
Livreに「そして夜は甦る」「私が殺した少女」「天使たちの探偵」「さらば長き眠り」の感想があります)

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10の作品が入った短編集。どの作品にも食欲とか性欲とかがたっぷりと詰まってて、ものすごく「女」を感じます。でもそんな風にたっぷり「欲」が詰まってる割に、どこか印象が薄いんですよねえ。起承転結があるというより、場面場面のスケッチといった方が相応しい作品群。しかもどの作品もそれぞれに似てるんです。同じような人物が次から次へと登場して、同じような会話を交わして、同じようなことをしているだけ。読んだ端から忘れていってしまいそう...。
こうやって短編集で読むんじゃなくて、アンソロジーや雑誌の掲載で1つずつ読めば、それぞれの作品の印象がもっと強く残ったかもしれないのに、ちょっと勿体なかったかも。山本周五郎賞を受賞してる表題作も、それほど印象に残らなくて残念でした。なんとなく習慣で買ってしまったんだけど、江國さんの本はもういいやって感じ。悪い本じゃあないのですが...。(集英社文庫)


+既読の江國香織作品の感想+
「泣く大人」江國香織
「ウエハースの椅子」江國香織
「泳ぐのに安全でも適切でもありません」江國香織
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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昨日に引き続き、パトリシア・A・マキリップ。これまで読んでいた幻想的な作品とはうって代わってSF。...と聞いてたんですけど、始まりはまるでアフリカの奥地のような場所で、びっくりでした。森の中に流れる<河>が中心となり、<屏風岩>に始まり<十四の滝>で終わる世界が舞台。その世界に住むカイレオールという14歳の少女が、世界はどんな形をしているのか、その世界の外には何があるのかなどの好奇心を押さえきれずに、幼馴染の少年タージェと共に<十四の滝>へ向かうのですが... という話が「ムーンフラッシュ」。そして「ムーンドリーム」はその4年後の話。

私はてっきり、アフリカの奥地に欧米の探検家が入り込んだ話なのかと思い込んでたのですが、全然違ってました。(笑)
カイレオールのお父さんは薬師で、薬師は部族の中心になって様々な儀式を執り行うんですが、夢を判断するのも役割のうち。この河の世界では、夢には必ず何らかの意味が隠されてるんです。そういうのも、こういう純粋な世界ならではという感じ。例えばアルタミラやラスコーの壁画みたいな絵は、テレビとか印刷物とか何もない純粋な世界に生まれ育っているからからこそ描けるもので、情報過多の現代人にはあんな力強い絵は到底描けない、みたいなことを聞いたことがあるんですが、丁度そんな感じでしょうか。カイレオールとタージェが、外の知識と引き換えにその純粋な力強さを少しずつ失っていくみたいなところが淋しかったんですが、最後には、ごくごく狭い世界のはずだった河の世界の意外な包容力の大きさが感じられて良かったし、原始的で素朴な世界の描写がマキリップらしくて美しかったです。

これでマキリップは制覇。うわーん、早く新作が読みたいです!(ハヤカワ文庫FT)


+既読のパトリシア・A・マキリップ作品の感想+
留守中に読んだ本(18冊)(「妖女サイベルの呼び声」「影のオンブリア」の感想)
「星を帯びし者」「海と炎の娘」「風の竪琴弾き」パトリシア.A.マキリップ
「ムーンフラッシュ」「ムーンドリーム」パトリシア・A・マキリップ
「オドの魔法学校」パトリシア・A・マキリップ
「ホアズブレスの龍追い人」パトリシア・A・マキリップ
「チェンジリング・シー」パトリシア・A・マキリップ
「茨文字の魔法」パトリシア・A・マキリップ

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パトリシア・マキリップによる異世界ファンタジー、イルスの竪琴全3巻です。いやあ、面白かった!
一読して「指輪物語」の影響を感じたし、実際共通する部分が多いんですよね。辺境の小さな平和な村に住む平凡な主人公が、何らかの使命のために旅に出るところとか、実は平和だと思っていたのは主人公たちだけで、戦いの影がすぐそばまで迫ってきていたこととか。でも、この世界ならではのユニークな設定も色々とありました。王国内のそれぞれの領国支配者は、その領国と見えない絆で密接に結びついていて、その領国内でのことは草木の1本1本に至るまで全て感じとることができるし、その人が死ぬと領国支配権は自動的に世継に移るとか... だから君主が死んだ時、世継はそれを真っ先に身体で知ることになるんです。あと、この世界では「謎解き」がとても重要で、大学も謎解きとその教訓を教える場所だし、謎解きのためには命を賭けることも珍しくないとか。主人公も、最初は躊躇ってるんですが、最終的には謎に対する好奇心を抑えきれずに冒険に飛び込んでしまうことになるし... そして謎解きが盛んなだけあって、作品の中では謎がさらに大きな謎を呼んで、もう謎だらけ。って、あらすじもちゃんと書いてないので、何のことやら、ですが。
3冊のほとんどが旅の途上というのも「指輪物語」っぽいところ。でもその旅で訪れる各地の情景の描写がすごく綺麗なんですよねえ。もう、草原を吹き渡る風を肌に感じられるような気がするほど。戦いの場面ですら幻想的で美しいというのが凄いです。

登場人物も地名もすごく色々あって最初は混乱したし、設定を掴むまでが大変だったんですけど、一度掴んでしまえば、あとは夢中で一気読み。巻末に登場人物名と地名の一覧表が載ってるのも助かりました。ええと、現在は1冊目の「星を帯びた者」だけが入手可能のようですね。これ1冊だけだと、「えっ、こんなところで終わらせないでよ!」ってところで終わっちゃうので、どうかと思うんですけど、剣と魔法の異世界ファンタジーが好きな方にはオススメの作品かと~。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のパトリシア・A・マキリップ作品の感想+
留守中に読んだ本(18冊)(「妖女サイベルの呼び声」「影のオンブリア」の感想)
「星を帯びし者」「海と炎の娘」「風の竪琴弾き」パトリシア.A.マキリップ
「ムーンフラッシュ」「ムーンドリーム」パトリシア・A・マキリップ
「オドの魔法学校」パトリシア・A・マキリップ
「ホアズブレスの龍追い人」パトリシア・A・マキリップ
「チェンジリング・シー」パトリシア・A・マキリップ
「茨文字の魔法」パトリシア・A・マキリップ

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森福都さんの新作。おなじみの中国唐代を舞台にした短編集です。今回も森福都さんらしい雰囲気で面白かったです。則天武后や玄宗皇帝など実在の人物も登場しながら、どことなくミステリアスな雰囲気。それでもって粒揃い。でも、改めて感想を書こうとしてはたと手が止まってしまいました。読み終わって、「ああ、面白かった。」しか残ってないんですが、こういう場合は一体どうすれば...(^^;。
(多分、ここんとこちょっと調子が悪くて、集中力が散漫なせいかと)
連作じゃなくて、普通の短編集だったのだけがちょっと残念だったかな。登場人物に感情移入しても、すぐに頭を切り替えなくちゃいけないんですもん。あ、もしかしたら、私が短編集に苦手意識があるのは、そういう切り替えが下手だからかもしれないなあ。(実業之日本社)


+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
「肉屏風の密室」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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以前、たらいまわし企画・第10回「映画になったら見てみたい」で挙げたこともある本なんですけど(記事はコチラ)、実は読んでる作品と読んでない作品があって、この1冊を通読するのは今回が初めてだったりします...。(ダメダメ) 表題作は、何度も読んでるんですけどね。たむらしげるさんの絵本でも読んでますし。(感想はコチラ

amazonの紹介によると、「少年愛、数学、天体、ヒコーキ、妖怪...近代日本文学の陰湿な体質を拒否し、星の硬質な煌きに似たニヒリスティックな幻想イメージによって、新しい文学空間を構築する"二十一世紀のダンディ"イナガキ・タルホのコスモロジー」

なんだかものすごい紹介なんですが(笑)、私が好きなのは、若い頃書かれたという幻想的な作品群。表題作のほかに、「黄漠奇聞」「チョコレット」「天体嗜好症」「星を売る店」「弥勒」「彼等」「美のはかなさ」「A感覚とV感覚」の全9編が収録されていて、大体年代順に並んでいるんですけど、ずばり前半の「星を売る店」までですね。特に表題作と「黄漠奇聞」が大好き。大正時代に書かれている作品なんですけど、今読んでも違和感が全くないのが凄いです。レトロな雰囲気を持ちつつ、「モダン」という言葉がぴったり。幻想的で、美しい情景が広がります。特に「黄漠奇聞」の異国情緒溢れる雰囲気が溜まりません~。(これ、最後に「ダンセーニ大尉」という人物が登場するんですけど、もしかしてロード・ダンセイニのことなのでしょうか)
でもこの後、足穂はアルコール中毒などで一時断筆したようなんですよね。前半の作品から「弥勒」が書かれるまで15年ぐらいあいていて、「弥勒」や「彼等」にもまだまだ足穂らしいモチーフはあるものの、自伝的でどこか重い雰囲気。極貧生活を送っていた足穂自身の姿も垣間見えるし、同性愛的傾向も濃くなるし。それはそれで悪くはないんだけど... でもやっぱり前半部分のおとぎ話的な雰囲気が好きです。若い頃の作品をもっと読んでみたいなあ。(新潮文庫)


+既読の稲垣足穂作品の感想+
「一千一秒物語」稲垣足穂・たむらしげる
「一千一秒物語」稲垣足穂

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