Catégories:“2005年”

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金髪の鶏冠頭の不良少年・竜二が、元担任教師に引きずられるようにして、大酒飲みで借金まみれの落語家・笑酔亭梅寿に入門することになって... という物語。連作短編集です。

随分前からヤマボウシさんにオススメされていた作品。ようやく読めました。
あの田中啓文さんが、こんな普通の (一般的に読みやすいという意味です・笑) 作品も書いてらしたとは! と、まずびっくり。いつもの破天荒な作風はどこにいっちゃったの? 読む前に、先入観入りまくりだったんですけど...!(笑)
いえ、ネットでの評判は上々のようだし、きっとかなり読みやすい作品になってるんだろうなとは思ってたんですけどね。それにしても違いすぎですよぅ。...と偉そうに言えるほど田中啓文作品を読んでるわけじゃないんですが... でもほんとびっくりしちゃいました。ええと、良い方に意外だったし、でもちょっぴり拍子抜けでもあり。
どこが拍子抜けだったかといえば、これが全くそつがない、綺麗にまとまった作品だったってところですね。(やっぱり先入観は大きいぞ・笑) 主人公の竜二が、絵に描いたような不良少年だった割に、特に反抗することもなくこの世界に馴染んでしまうというのもそうだし、特に「派手な外見とは裏腹に、実は良い子で、才能もあった」ってところなんて、「いかにも」ですよね。さりげなく師匠を立てながら、謎解きをしちゃうところも。でもこの師匠、味があってなかなかいいんですよねえ。兄弟子姉弟子も、それぞれに人間らしくて面白かったし。ミステリとしては小粒だけど、きちんと落語のネタにリンクしてるし、落語初心者にも優しい作りだし、話のテンポも良いし、実際にそれぞれの落語を聞いてみたくなる1冊でした。
...でもやっぱり、なんか騙されたような気がするのは拭えない... 妙な先入観がなければ、もっと楽しめたのに! 何かが起きるのを期待しちゃったじゃないかーっ。(笑)
あ、落語といえば、「タイガー&ドラゴン」のDVDはもう出たんですよね。今度借りて来なくっちゃ。(集英社)

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18世紀前半。ヴェネツィアで6年間の大学生活を終えて家族のもとに戻ってきたユダヤ人青年・エリヤーフーが目にしたのは、思っていた以上に閉鎖的なユダヤ人社会と、ユダヤ人に対する激しい差別。そして、貴族の青年と決闘する羽目になり、決闘には勝つものの酷い拷問を受けることになったエリヤーフーを助けたのは、後にマリア・テレジアと結婚することになるフランツ。フランツの元でエリヤーフーはユダヤ人であることを捨て、エドゥアルトという新しい人間として生き直すことに。

「ラインの虜囚」に引き続き、西洋の冒険活劇。「スカラムーシュ」(感想)に続いて信兵衛の読書手帖の信兵衛さんに教えて頂いた本。今回はハプスブルク家のオーストリアを背景に、ユダヤ人からオーストリア人になろうとした青年を描いた歴史物語です。
読んでまずびっくりしたのは、ユダヤ人に対する差別の凄まじさ。ユダヤ人がキリスト教徒に忌み嫌われる理由は分かってるつもりだし、長い歴史の間差別され続けてきたこともナチスドイツがしたことも、知識として知ってはいたんですけど、思っていた以上でした。留学先のイタリアではそれほど差別意識がなかったようだし、地域的にかなり差はあったようなんですが、やはりドイツやオーストリアでは酷かったんですねえ...。でも差別されているユダヤ人は、決して卑屈になってないし、ユダヤ人に生まれたことを悔やんでもいないんですよね。それどころか、あくまでも誇り高く生きていて、その姿はアーリア人に対する逆差別に見えるほど。それはユダヤ人を捨てたエドゥアルトに対するユダヤ人たちの態度からも良く分かります。でもここでポイントとなるのは、エドゥアルトが人生をかけたハプスブルク家が、ユダヤ人を決して認めるわけにはいかない家だということ。
主人公のエドゥアルト自身はもちろん、彼の人生に深く関わっていくフランツやマリア・テレジア、フリードリヒ2世といった実在する人物たちもそれぞれ魅力的に描かれていたし、畳み掛けるようなテンポの良さもあってすごく面白かったです。マリア・テレジアに関しては、マリー・アントワネットの母親でオーストリアの女帝だということぐらいしか知らなかったし、フランツに関しても「マリア・テレジアの夫」という認識しかなかったので、そういう意味でも色々と面白かったなあ。エドゥアルトという人間は架空の人物だと思うんですけど、見事に歴史的事実の中に溶け込んでますね。

藤本ひとみさんの本は初めてだったんですけど、いいですねえ。すぐには読めそうにないんですが、柊舎のむつぞーさんに教えて頂いた「ブルボンの封印」もいずれ読みたいと思ってます。やっぱり冒険活劇は大好き。デュマの「ダルタニャン物語」も読みたいな。(文春文庫)

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19世紀初頭のパリ。父の訃報を持ってカナダからフランスに渡ったコリンヌは、祖父であるギイ・ド・ブリクール伯爵に会いに行くのですが、勝手にカナダに出奔して原住民と結婚した息子のことを、伯爵は既に息子とは認めていませんでした。伯爵はコリンヌに、パリの東北東、ライン河岸に立っている古い塔に幽閉されている人物の正体を調べれば、コリンヌを孫娘として認めると言い出します。実は9年前にセント・ヘレナ島で亡くなったというナポレオンが実はまだ生きていて、その塔に幽閉されているという噂があったのです。

「小学校最後の夏休みの冒険譚」みたいなのばかりで、ちょっと飽きがきてたミステリーランドなんですが(失礼)、これはまるで違う西洋史物。しかも冒険活劇。ふわふらのともっぺさんから、「三銃士」や「紅はこべ」が好きならきっと気に入ると教えて頂いたんですが、確かにこれはいい! 楽しかったです。目次からして、第一章「コリンヌは奇妙な命令を受けパリで勇敢な仲間をあつめる」、第二章「コリンヌは東へと馬を走らせ昼も夜も危険な旅をつづける」なんて説明口調。どことなく懐かしくて楽しいし、子供のためのレーベルであるミステリーランドに相応しい良質な作品だと思います。あとがきには、なぜ田中芳樹さんがこういう物語を書こうと思ったのかも書かれていて、その気持ちにもとっても納得。
ナポレオンが生きているという噂は本当か? という大きな謎はもちろん、爵位にも財産にも興味のないコリンヌが、なぜ伯爵の言う通りにするのか、そしてなぜ伯爵がそのようなことをコリンヌにやらせるのかなどちょっとした謎もいくつかあって、それらが全てきちんと解決されるのが気持ち良かったです。そしてコリンヌがパリで見つける3人の仲間も、アレクサンドル・デュマやカリブの海賊、ジャン・ラフィットといった実在の人物なんです。そういう風にきちんとした歴史の中に架空の人物を放り込んで活躍させるような話って大好き。子供には勿論、大人が読んでも十分楽しめる作品です。(講談社ミステリーランド)

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高校2年生の冬、夜中に煙草が吸いたくて堪らなくなった和樹は、雪が降る中をひっそりと外に出て自動販売機へ。しかしその帰り道、通りがかった公園の奥に何かの気配を感じたのです。そこにいたのは真っ白いダッフルコートを着てフードをかぶった1人の女の子。なぜそんな雪の日のそんな時間に女の子が1人で公園にいるのかと不審に思う和樹ですが、「貴方、私が見えるのね?」と言って破顔した少女のペースに巻き込まれて、一緒の時間を過ごすことに。

四日間の奇蹟」を読んでから、ずっと読みたかった浅倉さんの作品。まず雪の情景がものすごく綺麗! きっと浅倉さんの出身地の札幌が舞台なんでしょうね。雪を良く知っている人ならでは、という感じ。そしてその雪の中に現れる少女の存在がとても幻想的~。
そしてそんな幻想的雪景色と対になってるのが、和樹が大学時代や卒業後を過ごすことになる東京。こちらに話が移ってからの展開は、とても現実的。和樹が、自分の適性や世の中の要求を冷静に判断して選択する商業デザインの話もとても面白かったし、めきめきと実力を発揮していく仕事振りとか、自分の仕事に没頭していて他にまるで気が回っていない危うさとか、そんな和樹を巡る会社の人間関係とか、すごくリアル。あくまでも現実的で、何よりも雪の白一色だった故郷と対照的に色彩的に鮮やか。白に始まり、様々な色を経て、そして再び白に戻る物語なんですね。
少女と和樹の会話が、後半になるとちょっと理論的になりすぎて、作品のファンタジックな良さをを少し殺してしまっているかなーとか、鹿嶋美加とのことは、もう少しドラマティックに描かれると思っていたのに!とか、写真家もあれだけ?とか、小さく気になるところはあったんですけど、でも良かったです。「四日間の奇蹟」に比べると、ぐっとくる部分は少なかったんですけどね。雪が降り積もってるのに、とっても暖かい物語でした。(中央公論新社)

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近未来。深刻化していたオゾンホールの問題に対してテレサ・クライトン教授が発明したのは、ウェアジゾンという、大気中のフロン分子と結合してオゾンを破壊する力をなくす化学物質。このウェアジゾンを全世界に散布する計画が、国連によって推進されます。しかしこの物質には、思わぬ副産物がありました。夕焼けや朝焼けといった、空を赤くする光の波長まで散乱させてしまうのです。ウェアジゾンの効果は150年。ウェアジゾンを散布すると、地球から150年もの間、夕焼けや朝焼けが消えることになると分かり、混乱が巻き起こります。

今までのようなノスタルジックでちょっぴり怖い作品群とはがらりと変わったSF作品。環境問題が背景となっていますが、夕焼けというどこかノスタルジックなモチーフが絡んでいるのは朱川さんらしいですね。
国連の計画のために日本にやって来たテレサが知り合うことになる人々とのドラマの積み重ねはさすがに濃やかに描かれているし、オゾン層破壊という問題を取り上げたのはいいと思うんですけど、夕焼けを失うことに対してマスコミを始めとする人々が感情的になっているだけで、それ以上の掘り下げがなかったのがとても残念。最後の結末も、あらら、そう来ちゃいますか...!という感じ。肝心のイエスタデーという人物に関しても、イマイチ良く分からないままだったんですよねえ。うーん。でも読んだ後に改めて夕焼けを見ると、もしこれが見れなくなってしまったら... と、しみじみ考えちゃいました。(角川書店)


+既読の朱川湊人作品の感想+
「かたみ歌」朱川湊人
「さよならの空」朱川湊人
「花まんま」朱川湊人
Livreに「都市伝説セピア」「白い部屋で月の歌を」の感想があります)

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冴えない中学教師の久保が祖父の遺品の中から見つけたのは、明治時代に日本を訪れた著名な女流探険家「I・B」との思い出を綴った、とある青年の手記。久保は、その手記を書いたのは明治時代に通訳ガイドとして活躍した伊藤亀吉ではないかと考え、自分が顧問を務める郷土部の唯一の実働部員・赤堀と共に、この文書を読み解いてみようと考えます。しかしその手記は、途中で終わっていたのです。耕平は伊藤亀吉の孫娘と思われる人物に、協力を求める手紙を出すことに。

CROSS-ROADの瑛里さんにオススメされた本。ここに登場する「I・B」とは、「日本奥地紀行」を書いたイザベル・バードで、手記を書いているとされているのは、実在した明治時代の通詞・伊藤鶴吉(作中では亀吉)がモデルのようです。
いやあ、良かったです。何がいいって、まずこの作品に登場する亀吉の手記が! 久保がカタカナ交じりの古い文を現代文に訳したという設定だし、言ってしまえば下手な翻訳文のような感じなんですけど、明治時代の横浜の雰囲気がすっごく伝わってくるんです。そして伝わってくるといえば、「I・B」と旅をするうちに亀吉の中に芽生えてくる感情も。「I・B」は、20歳の亀吉の倍ほどの年だし、最初は西洋人の女性なんて自分と同じ人間とも思ってなかったようだし、自分の気持ちにもずっと気づかないままなんですが、何とかして「I・B」を笑わせようと頑張ってたりする亀吉青年の姿が、微笑ましくも切なくなっちゃうんです。最後の船のシーンもいいんですよねえ。
そして、その亀吉の手記を研究する久保と郷土部の赤堀真、亀吉の孫娘の田中シゲルという、どこかピントのすれた3人の組み合わせも楽しかったです。この3人のやりとりは何ともほのぼのとしていて、亀吉の手記部分とは好対照。そして最後まで読むと、物語の最初と最後に配置された「彼女」の思いもしみじみと伝わってきて。何層にもなった人々の思いが熱く感じられました。(講談社)

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ポール・ギャリコ2冊。まずは河合隼雄さんの「ファンタジーを読む」(感想)にも挙げられていた「七つの人形の恋物語」。(この表紙がやけに怖いんですが、私が読んだのはこれじゃなくて金子國義さんの挿画による角川文庫版) いやあ、すごく良かったです。ポール・ギャリコの作品はこれで14冊目で、これまでもそれぞれに良かったんですが、最初に読んだ「ジェニィ」と「トマシーナ」がダントツだったんですよね。この「七つの人形の恋物語」はそれ以来のヒットかと。どこがどう良かったのか、言葉にするのがとても難しいんですが...

その物語は、芝居で身を立てようとパリに出てきたものの上手くいかず、今にもセーヌ河に身投げをしようとしていた少女・ムーシュに声をかけたのは、人形芝居一座の赤毛の人形。ムーシュは次々に登場する7つの人形たちと意気投合、その会話は通りすがりの客たちにも受けて、ムーシュはそのまま一座に加わることに。でもその人形たちの操り手であるミシェルは冷酷そのものの男で... というもの。

皮肉や意地悪も言うけど、本質的にはとても優しい人形たち。この人形たちとムーシュとのやり取りが生き生きとしてて楽しいんです。自殺しようとするほど思いつめていたムーシュが、気づけばすっかり癒されてしまっていたほど。最初は、この人形たちが実は生きていたというファンタジーかと思ったんですけど、そうじゃないんですよね。となると、その操り手であるミシェルにも本質的にそういう部分があるんだろうと思うのですが、これが全然。優しさや憐れみなどまるで知らずに育ったミシェルは、ムーシュの純粋さが許せず、何かといえばムーシュに辛く当たります。それどころか、部屋が1つで済めば安上がりだなんて理由でムーシュを陵辱してしまうほど。そこには愛情などまるでなくて、自分が持ってないものを持ってるムーシュを壊してしまいたいという思いだけ。でも、夜、ミシェルがムーシュに冷酷になればなるほど、昼の人形たちはムーシュに優しくなって...
ミシェルの冷酷さが人形たちの優しさを際立たせてるし、逆に人形たちの優しさはミシェルの冷酷さを際立たせていて、でもムーシュには絶えずその両極端の現実に苛まれることになるんです。そして最後の収束。いや、もう、上手く説明できないんですが、「でも、僕らって誰なんだ」という言葉が何とも言えません。

「スノーグース」の方もとても良かったです。ここに収められているのは、「スノーグース」「小さな奇蹟」「ルドミーラ」の3編。どれも決して派手とは言えないんですが、凛とした美しさと静かな強さがありました。大きな愛情を感じる物語。
「七つの人形の恋物語」も「スノーグース」もごくごく薄い文庫本なのに、読むのにものすごく時間がかかっちゃいました。というのは決して悪い意味ではなくて、じっくりと読んだという意味で。矢川澄子さんの訳も良かったんでしょうね。さて、「ファンタジーを読む」の「七つの人形の恋物語」の部分を読み返そうっと。(角川文庫・新潮文庫)


+既読のポール・ギャリコ作品の感想+
「トマシーナ」ポール・ギャリコ
「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ
「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ
「われらが英雄スクラッフィ」ポール・ギャリコ
「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ
「猫語の教科書」ポール・ギャリコ
「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」他2冊 ポール・ギャリコ
「七つの人形の恋物語」「スノーグース」ポール・ギャリコ
「トンデモネズミ大活躍」「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ
「ザ・ロンリー」ポール・ギャリコ
「「きよしこの夜」が生まれた日」ポール・ギャリコ
Livreに「ジェニィ」の感想があります)

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Note


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