Catégories:“2005年”

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いよいよ年末も押し迫って参りました。私もいつまでも本の感想ばかり書いてるわけにもいかないので(笑)、2005年度のエントリ、そして読了本はこれでもう打ち止めにしてしまおうと思います。ということで、今年最後のエントリは、2005年度のマイベスト本! 先日たらいまわし企画でも出したんですが、それ以降、1位に変更はありませんでした。2005年のマイベスト1は、水村美苗さんの「本格小説」です!

 
これを読んだ時のブログの感想はコチラ。いやー、やっぱり強かった。これは10月に読んだ本です。1月に読んだ本がいくら良くても、やっぱり1年の後半に読んだ作品の方がどうしても印象が強くなっちゃうので、結局順位なんてあってないようなものなんですけど、それでもやっぱり「本格小説」は良かったです。

そして2位から5位は、下記の通りです。
2位 「アナン」(梓河人・飯田譲治)
3位 「自転車少年記」(竹内真)
4位 「レヴォリューションNo.3」(金城一紀)
5位 「最後の願い」(光原百合)


それではみなさま、今年1年本当にお世話になりましてありがとうございました。サイトやブログにお邪魔しても足跡をあまり残してないのは前からなんですが...(ダメダメ)、今年の後半はネット時間にしわ寄せが来て、特に愛想がなくてごめんなさい。来年は祖母の家に通う回数が減る予定なので、もう少し落ち着けるかも? というか、もう少し落ち着いた生活がしたいです。
来年もまたどうぞよろしくお願いいたします。良いお年をお迎え下さいませ。(新年は1月3日か4日から更新の予定です)

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たらいまわし企画第12回「爽やかな春に読みたい青春小説」の時に、主催者様となったあいらぶっくすのみらくるさんが出してらした本。(記事はこちら) 椎名さんの本は以前「インドでわしも考えた」を読んで、すごく面白かったので他のも読みたいなーと思ってたんですけど、作品数が多いから何から手に取ればいいのやら... だったんですよね。青春小説は大好きだし、これはいい機会~ ということで。
アパート「克美荘」での男4人の同居生活を中心に、はちゃめちゃだった高校時代のことや、月刊誌の編集長をしていた時のこと、そしてその会社を辞めてしまって執筆に専念しているはずの「現在」のことなどがランダムに描かれていきます。

克美荘に住んでいるのは、脚本学校に通いながら小さな雑誌社でアルバイトをしている椎名さん本人と、レンアイをしては失恋することを繰り返している大学生の「沢野ひとし」、弁護士を目指して司法試験の勉強をしている「木村晋介」、サラリーマンで唯一定収入がある「イサオ」の4人。男4人というだけでも、かなりむさくるしそうなのに、その場所が、昼間でも陽が全く差し込まないというじめじめとしたアパートの6畳間。布団なんて、「ここに引っ越してきてからほとんどまともに陽に当てたことがなかったので、あきらかに水っぽくベタベタとしており、夜更けにに布団にもぐりこむと、寝入ろうとする者の体をおぞましいかんじで冷たく冷やすのである」ですって! でも干そうにも、この日当たりの悪いアパートじゃ到底無理。ということで、ある良い天気の日に、4人は各自布団を担いで近くの河原へと行くのです。実際には布団だけじゃなくて、きっと色々とものすごい状態になってるんでしょうけど、でもなんだか楽しそう。それに食事の風景もやけに美味しそうなんですよね。ざくっと作って、ご飯もおかずも人数分できっちり分けて、自分の割り当て分はがっつり食べる... 男同士の同居って豪快ですね。この面々は克美荘を卒業して何年経ってもいい関係のようで、それもなんだか羨ましくなっちゃいます。(新潮文庫)

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"花のラファエロ"と呼ばれたルドゥーテの『バラ図譜』から高木春山の『本草図説』まで、古今東西のボタニカル・アートの粋をあつめた豪華な博物図譜。植物画の歴史、文学に現れたる花の数々、手彩画の美しさが満載。200点ものカラー図版による"白い花譜"と"黒い花譜"の饗宴... という本。(すみません、今回はamazonの紹介をコピペしてます)
荒俣さんがボタニカルアートを蒐集するきっかけになったのは、なんと澁澤龍彦氏の「フローラ逍遥」なのだそうです。「フローラ逍遥」を執筆しようとしていた澁澤大魔王(笑)に、何かそういった図版を持っていないかと訊ねられたのがきっかけだとか。しかし、いつか大魔王が第2の花の本を作る時に役に立てば... と蒐め始めたそのコレクションを、大魔王は見ることもなく他界。そして荒俣氏ご本人が大魔王に捧げるべくこの本を書かれたのだそうです。15年にも及ぶコレクション、さぞかしすごいんでしょうねえ。この本を書かれた後も増え続けているのでしょうか。実物を見てみたいなあ。
面白い薀蓄が色々とあったんですが、その中で一番びっくりしたのは妖精画。妖精がというのは、なんと闇の猥褻画で、特に某植物と一緒に描かれている絵を、貴婦人たちはポッと顔を赤らめながらご覧になったのだとか... 全然知らなかったです。もうびっくり~。(平凡社ライブラリー)


+既読の荒俣宏作品の感想+
「花空庭園」荒俣宏
「別世界通信」荒俣宏
Livreに「帝都物語」の感想があります)

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姫野さんの幻のデビュー文庫本「チゴイネルワイゼン」を改題したという作品。洋子と高志という双子の姉弟を中心に、「桜の章」「ライラックの章」「柘榴の章」「羊歯の章」という4つの章に分けて、平成・大正・戦後・未来という4つの時代を背景に綴った恋愛小説。
4つの章で常に中心となるのは洋子と高志で、この双子の姉弟の禁断の愛の物語。エロティックです。しかも常に姉が強いから、尚更妖しい感じが~。そしてこの2人以外の登場人物、洋子の婚約者や高志の相手、友人、仲人なども名前が共通してるし、それぞれの基本的な容貌や性格、嗜好も類似してるみたい。平成の洋子が画材店に勤めていれば、大正や戦後の洋子は絵を描くのを習っているといった具合。でも少しずつずれているので、だんだん「書かれている部分」よりも「書かれていない部分」が気になってくるんですよね。その辺りが面白かったです。1章で話の中に出てくる仲人も池井という人なのかしら... とか。そして全て読み終えてみると、最初の「桜の章」だけがちょっぴり異例な設定だったことに気づきました。「桜の章」のその後が気になるなあ。でも「羊歯の章」はなくても良かったかな。最初の3章だけで良かったのに。(角川文庫)


+既読の姫野カオルコ作品の感想+
「桃」姫野カオルコ
「受難」姫野カオルコ
「変奏曲」姫野カオルコ
Livreに「ツ、イ、ラ、ク」の感想があります)

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しゅがーはーと・ぶろぐのとしやさんが読んでらして興味を持った本。表紙も可愛らしいんですけど(画像がでなくて残念)、それに似合ったなかなか可愛らしいミステリでした。主人公がミステリ専門店をしてることもあって、会話やら思考やら小道具に海外ミステリ作品がいっぱい登場。いかにもミステリマニアが書いたミステリといった感じで、そういうのが楽しかったです。もしもっと翻訳ミステリに詳しかったら、きっともっと楽しかったのに! 日本に翻訳されてない作品もあるようなので、ある程度は仕方ないんですけどね。巻末に、作中に登場した作品のミニミステリガイドがあるのが、また嬉しいところでした。
でも邦訳としてはこの作品が第1弾だったそうなんですが、本国ではシリーズ3作目とのこと。こういうシリーズ物を、なんで途中から出すのかしら? 1作目2作目は訳さないのかしら。一番売れそうな作品をまず出してみて様子を伺うという姿勢も分からないではないけれど、一度出すと決めたんなら、もっと堂々と自信を持って出版して欲しいなあ。しかもこの作品は今も入手できるけど、8作か9作かあるシリーズの他の作品は軒並み入手不能状態みたいです。やれやれ。(ハヤカワミステリアスプレス)

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臨床心理学者であり、心理療法家でもあった河合隼雄さんの児童書解説本。以前、「ファンタジーを読む」を読んだ時から(感想) 読みたかった本です。でも「ファンタジーを読む」で紹介されてる作品は結構読んでたから良かったんですけど、こちらは読んでない本も沢山。河合隼雄さんの考察は素晴らしいと思うんだけど、あらすじを最初から最後までとても丁寧に紹介される方なので、それだけですっかり読んだ気になってしまうのだけが難点なんですよね。それにやっぱり自分が知ってる本について読む方が面白いし、中に紹介されてる作品を先に読んでからにしようかな、なんて思ってたんですが。
とりあえず「飛ぶ教室」なら読んでるから、ちょっと読んでみよう... なんて思ったら! 止まらなくなっちゃいました。ケストナーの「飛ぶ教室」は私も子供の頃から大好きで、何度も何度も読んでる作品なんですけど、河合隼雄さんの文章や引用文を読んでるだけで、もう泣きそうになっちゃって(^^;。
それにリンドグレーンのピッピシリーズの章も良かったし~。でも「長くつしたのピッピ」が、「あしながおじさん」に触発されて出来た作品とは知らなかったです。リンドグレーンの母国語のスウェーデン語だと、「長くつしたのピッピ」は「Pippi Langstrump」で、「あしながおじさん」は「Pappa Langben」なんですって。そっくり! 英語の「Pippi Longstocking」と「Daddy-Long-Legs」ならピンとくるのかもしれないけど(私はこなかった)、日本語じゃあちょっと分からないですよね。そうなんだー、面白ーい。
紹介されている作品は、「飛ぶ教室」(ケストナー)、「まぼろしの小さい犬」(ピアス)、「思い出のマーニー」(ロビンソン)、「ぼんぼん」「兄貴」「おれたちのおふくろ」(今江祥智)、「ヒルベルという子がいた」(ヘルトリング)、「長くつ下のピッピ」「ピッピ船にのる」「ピッピ南の島へ」(リンドグレーン)、「ねずみ女房」(ゴッデン)、「ふたりのひみつ」(ボーゲル)、「つみつみニャー」(長新太)、「首のないキューピッド」(スナイダー)、「砦」(ハンター)、「わたしが妹だったとき」(佐野洋子)。私が読んでいたのは、恥ずかしながら「飛ぶ教室」と「ピッピ」だけ。「まぼろしの小さい犬」や「ねずみ女房」も読んでみたいな。(講談社+α文庫)


+既読の河合隼雄作品の感想+
「猫だましい」「ファンタジーを読む」河合隼雄
「子どもの本を読む」河合隼雄

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リナ・ラザラスとピーター・デッカーのシリーズ、4作目~6作目。話自体ももちろん面白いんですけど、日頃なかなか知ることのできないユダヤ教やユダヤ人、その生活習慣について詳しく書かれていて、そういう意味でもとても興味深いシリーズ。今回読んでみても、やっぱり良かったです~。特に「贖いの日」のラストシーンが最高。1巻からの人間関係が、色々な出来事を経て徐々に発展していくのも楽しみなんですよね。
でもこのシリーズを読むのはほぼ3年ぶり。以前3作目まですごく面白く読んでいたのに、なんで3年も中断してたか、前読んだ時の自分の感想を読んで思い出しました。最初は敬虔なユダヤ教徒のリナと、ユダヤ人でありながら敬虔なバプテストの家庭で育ったデッカーの宗教的葛藤がすごく面白かったのに、3作目で2人の関係がちょっと落ち着くと、ユダヤ教関係の記述がすごく減ったんですよね。このまま2人が上手くいっちゃうと、さらに減るんだろうなあ、と勝手に思い込んでたのが原因。どうやら私はミステリとしてよりも、ユダヤ教関係の話が読みたくてこのシリーズを読んでるみたいです。(^^ゞ
新作「逃れの町」も今年9月に出てます。来年になったら買って読もう。(創元推理文庫)

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子供の頃にポプラ社から出ていた南洋一郎氏訳の全集を読んで以来のルパンシリーズ。ホームズよりも断然ルパン派だったんで、母親に嫌がられながら(母は表紙が嫌いだったらしい)全集を1冊ずつ揃えてましたよー。いやあ、久しぶりでしたけど、結構覚えてるものですね。懐かしかったです。「怪盗紳士ルパン」は一番最初に出版された短編集。ルパンといえば泥棒なのに、実は謎解き物が多かったという覚えがあるんですが、この短編集の頃はかなり純粋に泥棒をしてて、そういう意味でも楽しい1冊。そして「カリオストロ伯爵夫人」は、後期に書かれた作品ながらも、20歳の頃のルパンの最初の大仕事の物語。「怪盗紳士ルパン」の頃の設定とは食い違う部分もあったりして、そういうのを見つけるのもちょっと楽しかったり...。(滅多にそういうのを見つけられないので) このままハヤカワからシリーズが刊行されていくといいなあ。特に好きだったのは、「奇厳城」「8・1・3の謎」「青い目の少女」(あれー、「緑の目の~」だと思ってたんですけどー)かな。またぜひ読みたいです。
そして映画化もされてましたけど、どうだったんでしょう。本の帯を見る限りでは、ルパン役の俳優さんはあんまりイメージじゃないんですが...。(公式サイト)(ハヤカワ文庫HM)


それにしても今日は寒かった! 祖母の家の辺りは雪なんて滅多に降らないのに、今朝は起きたら吹雪いていたのでびっくりでした。今日は交代して自宅に戻る日だったので、その雪の中を電車で帰らなくちゃいけなかったんですが(交代要員は昨日の晩のうちに到着してたのでセーフ)、途中でJRが止まっちゃうし、もうえらい目に遭いました。代行輸送でなんとか帰り着いたんですけど、最寄り駅からの帰り道の雪の多さには、またしてもびっくり~。朝積もってたとしても、もう午後だからすっかり溶けてるだろうと思ったのに、全然なんですもん。裏がつるつるの靴で、すっかり踏み固められた雪の上を歩くのは怖かったです。雪は大阪の方が断然凄かったのね。(祖母の家の辺りは吹雪いてたけど積もってなかった) この間の日曜日の朝に、この冬初めての雪がちらちら舞ってはいたんですが、いきなりこんなドカ雪が降るとは。疲れたー。
今日は祖母の家の工事のために大阪から業者さんが来ることになってたんですけど、雪が凄すぎて高速道路まで辿り着けないって電話があって延期になったんです。どんな状態だか、身をもって納得しました。大阪で雪かきをしてる光景なんて初めて見たわ。(笑)


+シリーズ既刊の感想+
「怪盗紳士ルパン」「カリオストロ伯爵夫人モーリス・ルブラン
「奇岩城」モーリス・ルブラン
「水晶の栓」モーリス・ルブラン

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新製品企画会議の席で直属の上司相手にトラブルを起こして、総務部のお客様相談室へと左遷された涼平。そこはなんとリストラ要員の強制収容所と呼ばれる場所で、誰もが1ヶ月、長くもっても2ヶ月で辞める場所だというのですが...。

序盤は正直あまり好みじゃないんですが、涼平がお客様相談室に回されてからが面白いです。クレームをつける客たちもすごいんですけど、ここの社員たちも一筋縄ではいかない面々なんですよねえ。最初は苦情の客に謝ることすらできなかった涼平が、ここで揉まれるうちに一皮も二皮も剥けていくところが良かったです。やっぱりクレーム処理は、苦情のお客さんにまず言いたいことを全部吐き出させて、それから謝るのが基本ですね。言うだけ言ったらすっきりする人もいるんだし。なーんてことをちょっと懐かしく思い出したりして。私も、お客様相談室じゃないけど、クレーム処理は結構しましたよー。悪質クレーマーの実態や、そういうのを撃退していくのも痛快でした。やっぱり荻原さんは元々会社勤めをしてた人だし、会社の中の描写はリアルですね。
でも、最近読んだ荻原作品の中では面白い方だったと思うんだけど、やっぱりデビュー当初のインパクトはなくなっちゃってるような気も。「オロロ畑」とか「なかよし小鳩組」とか、もっと夢中になって楽しめたと思ったんだけどな。それとも私の求めるものが変わってきたってだけなのかな?(光文社文庫)


+既読の荻原浩作品の感想+
「誘拐ラプソディー」荻原浩
「母恋旅烏」荻原浩
「神様からのひと言」荻原浩
Livreに「オロロ畑でつかまえて」「なかよし小鳩組」「ハードボイルド・エッグ」の感想があります)

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「海神別荘」は、表題作のほかに「山吹」「多神教」が入っていて、どれも戯曲。泉鏡花の戯曲はやっぱり読みやすいですね。特に「海神別荘」が良かったです~。これは浦島太郎の女性バージョン(?)。海の中の公子(乙姫様の弟!)に幸せな暮らしを約束された美女が、どうしても今の幸せを父親に伝えたいと言うんですけど、そこには玉手箱こそないものの、ふかーいふかーい落とし穴が... 結構シビアな結末になってます。(笑) でもやっぱり描写が美しい...。これだけでも酔えそうです、ほんとに。
そして「春昼・春昼後刻」は、 眠気を誘うような、うららか~な春の昼下がりの情景にのほほんと読み進めていると... ぎょぎょぎょ。これは実はホラーだったんでしょうか。最後まで読んでからまた最初に戻ると、のどかな春の情景だと思っていたものがやけに濃密に感じられてきて、びっくりでした。
以前に「夜叉ヶ池・天守物語」「高野聖・眉かくしの霊」(感想)を読んだ時、overQさんに、「鏡花の文章は波長が合うと案外読みやすいです。でも。そのときに一気に読まないと、他の本を読んでから戻ってくると、読めなくなってたりします(;・∀・)」と言われたので、ちょっと戦々恐々としててたんですが、前回も入りやすかった戯曲から入ったせいか、今回は大丈夫でした。でももう手元には戯曲がない... しかも「草迷宮」と「外科室・海城発電 他5篇」を続けて読もうと思ったのに、そっちは自宅に忘れてきてることが判明。うわー、残念。また改めて読むことにします。で、でも大丈夫かしら...。「外科室」は以前読んだことがあるんですが...。(どきどき) (岩波文庫)


+既読の泉鏡花作品の感想+
「夜叉ヶ池・天守物語」「高野聖・眉かくしの霊」泉鏡花
「泉鏡花短篇集」川村二郎編
「海神別荘」「春昼・春昼後刻」泉鏡花
「鏡花百物語集 文豪怪談傑作選・特別篇」東雅夫編

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浅暮三文さん2冊。「石の中の蜘蛛」は日本推理作家協会賞を受賞してる作品らしいんですけど(同時受賞は有栖川有栖さんの「マレー鉄道の謎」)、それよりも「実験小説 ぬ」の方がずっと面白かった! こちらは「実験短編集」「異色掌握集」という2章に分かれていて、全部で26編の短編が収められてます。実験小説というタイトルに相応しく、面白いアイディアがたっぷり。最初の「帽子の男」からして、面白すぎる~。これは普段何気なく見ている交通標識から、「彼」とその家族の人間模様が浮かび上がってくるという物語。時にはページを上下に分割して、その上下でそれぞれの文章が同時進行させてみたり、様々な図を使ってみたり、あるいはまるでゲームブックのようであったりと、見た目にも新鮮。しかも単なる実験的な作品というだけじゃなくて、それぞれ短編として読み応えがあるのがスゴイんです。浅暮さんのアイディアや想像力、表現力は素晴らしい~。さすが「ダブ(エ)ストン街道」を書いた人だけありますね。こういう作品は、好みがはっきり分かれそうな気がしますが、私は大好き♪ (光文社文庫・集英社文庫)


+既読の浅暮三文作品の感想+
「ラストホープ」浅暮三文
「嘘猫」浅暮三文
「実験小説 ぬ」「石の中の蜘蛛」浅暮三文
「夜聖の少年」浅暮三文
Livreに「ダブ(エ)ストン街道」の感想があります)

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60年代の大阪の下町を舞台にした短編集。表題作「はなまんま」は133回直木賞受賞作。
一読して、「ああ、朱川さんらしいなあ」というノスタルジックな雰囲気。それがまた大阪の下町の雰囲気に本当によく似合うんですよね。私自身が今大阪に住んでいるせいか、いつも以上に登場人物が身近に感じられました。特に大阪らしかったのが、「摩訶不思議」のツトムおっちゃん。人生をタコヤキに例えてしまうところとか、葬式での出来事のオチ、そして話全体のオチが、いかにも大阪人らしくって。(笑)
今回も不思議な存在が登場したり、不思議な出来事も起こるんですが、ホラーの雰囲気はなくて、ひたすらノスタルジック。でもこの作品も良かったんですけど、朱川さんの作品を全部読んだ今考えてみると、最初の「都市伝説セピア」が一番好きだったかなあという感じ。そういえば、これも直木賞の候補になってたんですよね。デビュー作が賞を受賞することは相当難しいと思うんですが、やっぱりあの時取っていたら良かったのにって思っちゃいます。という私自身は正直、直木賞にそれほど興味ないんですが...(^^ゞ (文藝春秋)


+既読の朱川湊人作品の感想+
「かたみ歌」朱川湊人
「さよならの空」朱川湊人
「花まんま」朱川湊人
Livreに「都市伝説セピア」「白い部屋で月の歌を」の感想があります)

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ものすごーく久しぶりの京極作品。「巷説百物語」の続編です。今回も連作短編。小股潜りの又市、山猫廻しのおぎん、事触れの治平、考物の百介という4人も健在。でも、前作も必殺シリーズみたいで楽しかったんですが、今回はまた一味違いました。まず、今回のそれぞれの短編は、「巷説百物語」のそれぞれの短編と入れ子になって進んでいくんですね。そして今回、最初の4つの短編はそれぞれに話が完結してたので、普通の連作短編集かと思ってたんですが、それぞれの短編、それまでの伏線が絡み合って、この本の中で一番長い「死神」へと雪崩れ込んでいってびっくり。いやあ、前作とは物語の深みが全然違うんですね。素晴らしいー。
「憑き物」を落として人を正気に戻す京極堂シリーズに対して、「憑き物」を利用して人を正気に戻すこのシリーズ。この続編の「後巷説百物語」が直木賞を受賞してるんですけど、ここまで綺麗にまとまってしまって、このあとどんな続編が出たのかしら? ちょっと気にはなるけど... でも敢えて読まずに、ここで終わらせておきたい気もします。(角川文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「巷説百物語」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「続巷説百物語」京極夏彦
「後巷説百物語」京極夏彦

+既読の京極夏彦作品の感想+
「百器徒然袋-風」京極夏彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります

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またしても久々になってしまった岩波少年文庫シリーズ。昨日に引き続きのジョージ・マクドナルドです。ここに収められているのは「かるいお姫さま」と「昼の少年、夜の少女」の2編。
「かるいお姫さま」は、招待されなかったことを怨んだ意地悪な魔女が王女に呪いをかけるという、昔話の王道の物語。でも呪いはこっそりとかけられるので、最初は誰の仕業とは分からないし、良い妖精がその呪いを打ち消すような祝福を与えることもできないんですよね。呪いを解く方法も分からないし。そして、ここでかけられる「重さをなくしてしまう」という呪いが面白いんです。ちょっと手を離すと、王女はふわふわとその辺りを漂っちゃう。マクドナルドの時代には宇宙飛行士なんていなかったはずなのに、まるで無重力空間みたい~。魔女には重力の操り方が分ってたんですって。しかも重さをなくしてしまうのは身体だけじゃなくて、頭の中身もなんですよ! これが可笑しいんですよねえ。で、普段は笑い転げてばかりいて、全然真面目になれないお姫さまなんですが、水の中にいる時だけは普段よりも落ち着いてお姫さまらしくなるというのが、なんか好きです。
そして「昼の少年と夜の少女」は、魔女によって、昼しか知らずに育てられた少年と、夜しか知らずに育てられた少女の物語。どうやら宮廷の貴婦人に信用されてたらしい魔女の存在も謎だし、昼だけ、夜だけ、と手がこんだことをする割に、その目的が謎なんですよねえ。でも、16年間ランプが1つしかない部屋に閉じ込められていた少女が、初めて見た外の世界に感動する描写がとても良かったです。大きな藍色の空に浮かぶ月の輝き、夏の夜風、漂う花々の香り、足に優しいしっとりと濡れた草むら。美しいです~。(岩波少年文庫)


+既読のジョージ・マクドナルド作品の感想+
「お姫さまとゴブリンの物語」「カーディとお姫さまの物語」マクドナルド
「北風のうしろの国」ジョージ・マクドナルド
「かるいお姫さま」マクドナルド
「ファンタステス」ジョージ・マクドナルド
「金の鍵」「黄金の鍵」ジョージ・マクドナルド
「きえてしまった王女」「かげの国」ジョージ・マクドナルド

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ジョージ・マクドナルドは、C.S.ルイスやJ.R.R.トールキンに大きな影響を与えたという作家。数多くのファンタジーを書いてるんですが、この「北風のうしろの国」は、マクドナルド作品にしては珍しく、当時の現実が大きく取り入れられた作品です。物語は大きく3つの部分に分かれていて、1部は貧しい家に生まれたダイヤモンド少年と、美しい女性の姿をした北風の交流。2部は、産業革命直後のロンドンの現実的な場面。ここではダイヤモンド少年のお父さんが失業したり、なかなかシビアな状況で、ダイヤモンド少年の視線を通して、ロンドンを行きかう人々の様々な階級、特にスラムに住む下層階級の人々の貧しい暮らしなどが見えてきます。でも北風は一体どこに...? と思ったら3部で再登場。

物語の中では、序盤のダイヤモンド少年と北風が夜空を飛んでゆく場面が綺麗なんですが、でもマクドナルドが一番書きたかったのは、ロンドンでの現実的な話なのかな? 貧しくても健気な少年少女といえば、「小公女」のセーラやら何やら色々といますが、私はモーリス・ドリュオンの「みどりのゆび」のチトー少年を思い出しながら読んでました。物質的な恵まれ方には相当差がある2人なんですけどね...。北風とは何なのか、北風のうしろの国とは何なのかは、読んでみてのお楽しみ。
この作品は子供の頃に一度読んでるので再読なんですけど、その時は何か違うタイプの話を期待してたので、ちょっとがっかりしたんですよね。そのせいかすっかり内容を忘れちゃってて、ほとんど初読感覚でした。(^^ゞ(ハヤカワ文庫FT)


+既読のジョージ・マクドナルド作品の感想+
「お姫さまとゴブリンの物語」「カーディとお姫さまの物語」マクドナルド
「北風のうしろの国」ジョージ・マクドナルド
「かるいお姫さま」マクドナルド
「ファンタステス」ジョージ・マクドナルド
「金の鍵」「黄金の鍵」ジョージ・マクドナルド
「きえてしまった王女」「かげの国」ジョージ・マクドナルド

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「影との戦い」「こわれた腕環」「さいはての島へ」「帰還」「アースシーの風」「ゲド戦記外伝」の6冊。以前4巻まで読んでいて、その「帰還」に「ゲド戦記最後の書」という副題がついてるんですよね。まさかその後5巻と外伝が出るとは! 先日6巻セットを貸してもらったので、いい機会だし最初から全部読み直してみました。

主人公はゲドという魔法使い。1巻の「影との戦い」で登場するゲドはまだ少年です。強い魔法の力を持っているのを見出され、魔法使いたちの学院で正式に魔法について学ぶことになるんですが、自分の力を慢心して、若気の至りでとんでもない事態を引き起こしてしまう... という物語が、この「影との戦い」。そして1巻進むごとに何年も経過していて、最終的に「アースシーの風」の頃のゲドは、なんと70歳ぐらいのおじいさん。(笑)

このゲド戦記、最初は全3巻の作品だったんですよね。最初の3冊は、色々なメッセージを内包してはいるものの、純粋に異世界ファンタジー。でも3巻から16年経って刊行されたという4巻は、どうもフェミニズム論が前面に出すぎていて、初読の時はあまり好きになれなかったんです。ゲドも初老の域に達してるし、3巻の時に力を使い果たしてしまって既に大魔法使いでもなくなってしまってるし、ファンタジーというジャンルを離れてしまったような気がして。4巻であれだったら、5巻では一体どうなるんだろうと思ってあまり期待してなかったんですが... いやー、良かったです。この5巻があって初めて、物語全体が綺麗に閉じたという気がします。それまで当たり前のように受け止めていたこの世界の前提があっさり覆されて、初めて正しい姿がくっきりと見えてきたという感じ。
ゲドが「影との戦い」での失敗のせいですっかり内省的になっちゃうんで、全体的にあまり明るい雰囲気ではないんですが(笑)、でもやっぱりいいです、ゲド戦記。世界の奥行きも抜群。やっぱり今回最初から読んで良かった! 名作ですね。


そして次のジブリは、この「ゲド戦記」なのだそうです。びっくり~。一体どんな感じになるんでしょうね。っていうか、一体どんな風にまとめるつもりなんでしょうね? と思ってたら、ココの記事にありました。3巻を中心にまとめるんですって。ゲド、なんだか脇役になっちゃいそうだなあ。(笑)(岩波書店)


+既読のアーシュラ・K・ル=グウィン作品の感想+
「闇の左手」アーシュラ・K・ル・グイン
「ゲド戦記」アーシュラ・K・ル=グイン
「夜の言葉」アーシュラ・K・ル=グウィン

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1969年にヒューゴー賞とネビュラ賞を受賞したという作品。これはハイニッシュ・ユニバースと呼ばれるシリーズの4作目だったんですね。1冊ごとに独立した話ではあるようなんですが、元々SFはあまり得意ではないところに、良く分からない用語が沢山登場するし、説明もほとんどなくて、かなり苦戦しました... というか、挫折しなかったのが不思議なほど。読了後も解けない疑問がいっぱい! 巻末に「ゲセンの暦と時間」が載っていたのに気づいたのも読了後だし、地図とか用語辞典が欲しかったです。

舞台となるゲセンは常に雪と氷に覆われている惑星。ここに住むゲセン人は、外見的には人類と同じなんですが、両性具有で、26日周期でめぐってくるケメルと呼ばれる発情期にパートナーと性交して子供をもうけるのが特徴。主人公はそんな世界を訪れて、地球を含む、宇宙に存在する3000もの国家の同盟体の使節として、同盟を申し込むことになるんですが... でも相手は宇宙船はおろか、空を飛ぶ鳥すら見たことのない人々。しかも主人公は両性具有ではなくて男性。特に発情期が決まっているわけでもなく。外見こそ一緒ですが、両性具有の彼らから見たら薄気味悪い存在にしか見えないわけです。

ものすごーく苦戦したんですが、終盤の氷原の逃避行は良かったです。曲がりなりにも友情として確立しようとしていたものが、ケメルによって違うものに変貌しようとする一瞬なんてドキドキ。途中で挿入されたゲセンの民話や説話も面白かったし、SFが好きな人は大絶賛の作品なんだろうなあ。という私もせめてシリーズ1作目から読んでいれば... うーん、でもやっぱりSFはしばらくやめておいた方が無難かも...(^^:。(ハヤカワ文庫SF)


+既読のアーシュラ・K・ル=グウィン作品の感想+
「闇の左手」アーシュラ・K・ル・グイン
「ゲド戦記」アーシュラ・K・ル=グイン
「夜の言葉」アーシュラ・K・ル=グウィン

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友人に連れられて行ったそのクラブは、敷地もあまり大きくなく、部屋数もたかが知れており、ビリヤード台もなく、特別美味しいワインがあるわけでもない、冴えないクラブ。しかし折よくジョーキンズという古株が来ていて、彼に好物のウイスキーのソーダ割を振舞えば、必ず面白い物語を聞かせてくれるというのです。

ビリヤードクラブで語られるホラ話の数々。それは世界中を旅してきた、一度は人魚と結婚までしたたというジョーキンズ氏が語る物語。ダンセイニといえば、これまでは「ぺガーナの神々」や「魔法使いの弟子」のような中世的なファンタジーのイメージだったんですが、これはまるで違うんですね。こんな作品も書いていたとはびっくり。こちらにも妖精や魔女、人魚などは登場しますし、蜃気楼が幻想的な情景を作るんですが、もっと日常に近い物語。しかも「電気王」という作品では火星旅行について、「ビリヤード・クラブの戦略討議」ではなんと原爆戦争について書かれてるんです。この「ビリヤード・クラブの戦略討議」が発表されたのは、広島の原爆投下から3年後なんですよね。最初はちょっと引いたんですが、でも最後のオチは好きでした。...でも、魔女の住む森や丘の上に現れる蜃気楼の情景は美しいけど... ダンセイニなら、もっと重厚なファンタジーが読みたいかな。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ
「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ
「牧神の祝福」ロード・ダンセイニ

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新潮クレストブックスから出ていた、ドイツ人作家・ベルンハルト・シュリンクの2冊。「朗読者」が長編で、「逃げてゆく愛」が短編。
いいですねえ。読み始めた途端に、なんだかしみじみと染み込んでくる感じでした。
予想もしてなかったのでびっくりだったんですが、「朗読者」にもナチの問題が登場するし、「逃げてゆく愛」でもドイツ人とユダヤ人、あるいはドイツが内包する政治的問題などを絡めて描いた作品が目につきます。戦争を体験した親世代、戦争を直接知らない子供世代。ごく個人的な存在でありながら、社会情勢の変化の影響を受けずにはいられない愛。ドイツ人とユダヤ人の恋愛の難しさなんかも考えさせられちゃいました。(直接的な戦争物は苦手な私なんですが、こういう作品なら読めるんですよね)
どちらが良かったかといえば、長編の「朗読者」なんですが、「逃げてゆく愛」に収められている「もう一人の男」も良かったです。これはナチは全然関係なくて、奥さんが亡くなった後に、奥さん宛てに知らない男から親しそうな手紙が来て... という話。残された2人が何を考えようと、奥さんの本当の気持ちはどうだったのか、もう誰にも分からないんですよねー。

今気がついたんですけど、この2冊、並べると表紙の雰囲気が似ててすごく綺麗ですね。やっぱりクレストブックスは装幀も素敵です♪ (「朗読者」は文庫の表紙を出してますが、若干フォントが違うだけで、バックの絵は一緒です)(新潮文庫・新潮クレストブックス)


+既読のベルンハルト・シュリンク作品の感想+
「朗読者」「逃げてゆく愛」ベルンハルト・シュリンク
「帰郷者」ベルンハルト・シュリンク

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まだまだ駆け出しの28歳のフリーライター・寺坂真以が主に仕事場としているのは、近所のファミリーレストラン。ノートパソコンや手帳、携帯電話などをリュックに詰めて出かけていきます。そしてそこで出会った謎を、幸田ハルというおばあさんの助けを借りて解いていくという連作短編集。

いわゆる日常の謎物。ここに登場する幸田ハルというおばあさんは、このファミリーレストランが建つ前に、この辺り一帯の敷地の持ち主だった女性で、20年前に既に亡くなっています。つまり幽霊ということ。この設定が松尾さんらしいところですねー。彼女は生前の暮らしを懐かしんで、時々ファミリーレストランに現れるんですが、みんなに見えるというわけじゃなくて、見える人と見えない人がいるという設定。
で、このおばあちゃんが何とも愛嬌があって可愛いんです。特に冒頭の「ケーキと指輪の問題」で、せっかく解いた謎が仕事の役には立たなかったと分かった時のおばあちゃんの反応といったら...。あまりに可愛らしくて、一気にファンになってしまいました。松尾さんらしさはそれほど強烈ではないので、松尾ファンの私にとってはちょっぴり物足りなさも残るんですが、逆にこういう作品がファン層を広げるかも? ぜひ続編も書いていただきたい作品です~。(光文社)


+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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ある日突然、近くにいる人間に思った通りの言葉を口にさせられる「腹話術」の能力が自分にあると気づいた安藤。そしてその頃、政界でまさに台頭しようとしていた弱小の未来党党主、39歳の犬養。この安藤と犬養の物語を描いた「魔王」と、その5年後の「呼吸」。

今までの伊坂さんの作品とはまた違う雰囲気の作品で驚きましたが、面白かったです! あとがきに「ファシズムや憲法などが出てきますが、それらはテーマでありません。かと言って、小道具や飾りでもありません。」と書かれているのですが、全編ファシストやムッソリーニ、ヒットラー、憲法第9条の法改正案など、普通の小説で扱うには重いモチーフが満載。そして、それに対して伊坂さんなりの回答が示されているというわけではないんですが、主人公の安藤が何か起きた時に自分に向かって言い聞かせる「考えろ考えろ」という言葉、そして政治家・犬養の「私を信用するな。よく、考えろ。そして、選択しろ。」という言葉がポイントなんでしょうね。アメリカに言われる通りの行動を取り続ける日本人政治家、そんな政治家に対して苦々しく思ってはいても、結局のところ「無関心」から抜けきらない人々への警鐘。
安藤と犬養は、本当は対立するような関係ではないはずなのに、犬養のパワーが強すぎて、みんなが簡単に飲み込まれていってしまうのが問題なんですよね。1人1人がきちんと自分で考えればファシズムになんてならないはずなのに、結局流れとしてファシズムが出来上がってしまうのが、当然の成り行きとはいえすごい皮肉。犬養は、本当は安藤のような人間こそ欲しかったんじゃないかと思うんだけど... そして一旦流れが出来上がってしまったら、一個人でそれに逆うなんていうのはなかなか難しいわけで。
作品の薄ら寒くなるようなところに、シューベルトの「魔王」の歌詞が効いてますねー。(講談社)


+既読の伊坂幸太郎作品の感想+
「死神の精度」伊坂幸太郎
「魔王」伊坂幸太郎
「砂漠」伊坂幸太郎
「終末のフール」伊坂幸太郎
「陽気なギャングが地球を回す」「陽気なギャングの日常と襲撃」伊坂幸太郎
「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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画像は、より入手しやすそうな平凡社ライブラリーのものを使ってますが、私が読んだのは東洋文庫版です。
明治11年、47歳の時に日本を訪れ、日本人通訳である18歳の伊藤と共に約3ヶ月に渡って北関東から東北、北陸、そして北海道を馬と徒歩で旅したイギリス人女性・イサベラ・バードの本です。旅先から彼女の妹や親しい友人たちに宛てた手紙を主体にまとめたもの。中島京子さんの「イトウの恋」はこの本を基に書かれていて、LINさんに面白かったと教えて頂いたんですよね。普段、紀行文にはあまり興味がないのですが、でもこれは確かに面白かった!

それにしても、通訳がついていたとはいえ、食事はもちろん生活習慣がまるで違う国で、西欧の女性がこんな1人旅をしてしまったというのが驚き。しかもこのイサベラ・バードは、どこまでいってもイギリス式を押し通そうとする、ありがちなイギリス人じゃないんですよね。携帯式のベッドや自分の蚊帳は持ち歩くけれど、それは日本の宿屋につきものの蚤の大群から逃れるためだし、食事や臭いに関してはかなりぶつぶつ言ってますけど、それでも基本的に「郷に入れば郷に従え」。もちろんキリスト教至上主義の西欧人らしい部分もあるんですが、色々なものを素直な目でとても良く観察してるし。イサベラ・バードが感じた景色の美しさや人々の不衛生ぶり、礼儀正しさと相反する物見高さ、そして子供たちの親に対する従順ぶりなどが、冷静な文章で書かれていきます。一体ここに書かれている「日本」のどれだけが、今の日本に残ってるんでしょうね。
そして逆に、明治維新直後の日本についての自分の無知ぶりには、我ながらびっくりです。幕末~明治維新直後の小説からでも、ある程度知ってるんじゃないかと思い込んでいたんですが、これが大間違いでした... 私ったら本当に何も知らなかったのね。西欧文化の影響を受ける直前の日本らしい日本の姿、そしてアイヌの姿がとても興味深かったです。

「イトウの恋」とは、細かい部分が色々と違っていると思うんですが、意外なほど同じ部分もあって、思っていた以上に重なります。となると2冊を読み比べてみたくなっちゃう。今、「イトウの恋」が手元にないのがとても残念です。今度、確かめてみようっと。そして宮本常一さんの「イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む」も読んでみたいな。(東洋文庫)

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ハードボイルド作家・原りょう氏のエッセイ集。10年前に単行本で刊行されていた「ミステリオーソ」に、その後書かれたエッセイや対談、短編が加えられ、「ミステリオーソ」「ハードボイルド」という2冊の本になって再登場しました。「ミステリオーソ」に書かれているのは、原氏の自伝的なことと、ジャズ、そして映画の話。こちらにも本の話も入ってるんですが、本については主に「ハードボイルド」に収められてます。こちらは、読者として作家として、好きな作品や自分の作品について。

読む前は、本の話がメインの「ハードボイルド」の方が楽しめるかなと思っていたんですが、両方読み終えてみれば、ジャズ話が予想外に面白くて「ミステリオーソ」の方が好みでした。「ハードボイルド」もいいんですけど、ここで言及されてる作品って、ほとんどが翻訳物のハードボイルド&ミステリなんですよね。私の場合、ハードボイルドには元々それほど強くないし(レイモンド・チャンドラーもダシール・ハメットも「一応」読んだ程度)、最近はミステリから気持ちが離れ気味なので、本の紹介を読んでいても、「これ、読んでみたい!」にならなくて... いや、それは積読本が増えなくて幸いだったと言うべきかしら。でも沢崎シリーズのバックグラウンドが垣間見えて、楽しかったです。決して万人向けという感じのエッセイではないのですが、沢崎シリーズのファンならきっと楽しめるだろうなという作品ですね。(ハヤカワ文庫JA)


+既読の原尞作品の感想+
「愚か者死すべし」原りょう
「ミステリオーソ」「ハードボイルド」原りょう
Livreに「そして夜は甦る」「私が殺した少女」「天使たちの探偵」「さらば長き眠り」の感想があります)

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10の作品が入った短編集。どの作品にも食欲とか性欲とかがたっぷりと詰まってて、ものすごく「女」を感じます。でもそんな風にたっぷり「欲」が詰まってる割に、どこか印象が薄いんですよねえ。起承転結があるというより、場面場面のスケッチといった方が相応しい作品群。しかもどの作品もそれぞれに似てるんです。同じような人物が次から次へと登場して、同じような会話を交わして、同じようなことをしているだけ。読んだ端から忘れていってしまいそう...。
こうやって短編集で読むんじゃなくて、アンソロジーや雑誌の掲載で1つずつ読めば、それぞれの作品の印象がもっと強く残ったかもしれないのに、ちょっと勿体なかったかも。山本周五郎賞を受賞してる表題作も、それほど印象に残らなくて残念でした。なんとなく習慣で買ってしまったんだけど、江國さんの本はもういいやって感じ。悪い本じゃあないのですが...。(集英社文庫)


+既読の江國香織作品の感想+
「泣く大人」江國香織
「ウエハースの椅子」江國香織
「泳ぐのに安全でも適切でもありません」江國香織
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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4150201013.jpg 4150201153.jpg [amazon] [amazon]
昨日に引き続き、パトリシア・A・マキリップ。これまで読んでいた幻想的な作品とはうって代わってSF。...と聞いてたんですけど、始まりはまるでアフリカの奥地のような場所で、びっくりでした。森の中に流れる<河>が中心となり、<屏風岩>に始まり<十四の滝>で終わる世界が舞台。その世界に住むカイレオールという14歳の少女が、世界はどんな形をしているのか、その世界の外には何があるのかなどの好奇心を押さえきれずに、幼馴染の少年タージェと共に<十四の滝>へ向かうのですが... という話が「ムーンフラッシュ」。そして「ムーンドリーム」はその4年後の話。

私はてっきり、アフリカの奥地に欧米の探検家が入り込んだ話なのかと思い込んでたのですが、全然違ってました。(笑)
カイレオールのお父さんは薬師で、薬師は部族の中心になって様々な儀式を執り行うんですが、夢を判断するのも役割のうち。この河の世界では、夢には必ず何らかの意味が隠されてるんです。そういうのも、こういう純粋な世界ならではという感じ。例えばアルタミラやラスコーの壁画みたいな絵は、テレビとか印刷物とか何もない純粋な世界に生まれ育っているからからこそ描けるもので、情報過多の現代人にはあんな力強い絵は到底描けない、みたいなことを聞いたことがあるんですが、丁度そんな感じでしょうか。カイレオールとタージェが、外の知識と引き換えにその純粋な力強さを少しずつ失っていくみたいなところが淋しかったんですが、最後には、ごくごく狭い世界のはずだった河の世界の意外な包容力の大きさが感じられて良かったし、原始的で素朴な世界の描写がマキリップらしくて美しかったです。

これでマキリップは制覇。うわーん、早く新作が読みたいです!(ハヤカワ文庫FT)


+既読のパトリシア・A・マキリップ作品の感想+
留守中に読んだ本(18冊)(「妖女サイベルの呼び声」「影のオンブリア」の感想)
「星を帯びし者」「海と炎の娘」「風の竪琴弾き」パトリシア.A.マキリップ
「ムーンフラッシュ」「ムーンドリーム」パトリシア・A・マキリップ
「オドの魔法学校」パトリシア・A・マキリップ
「ホアズブレスの龍追い人」パトリシア・A・マキリップ
「チェンジリング・シー」パトリシア・A・マキリップ
「茨文字の魔法」パトリシア・A・マキリップ

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 4150200211.jpg 4150200343.jpg [amazon] [amazon] [amazon]
パトリシア・マキリップによる異世界ファンタジー、イルスの竪琴全3巻です。いやあ、面白かった!
一読して「指輪物語」の影響を感じたし、実際共通する部分が多いんですよね。辺境の小さな平和な村に住む平凡な主人公が、何らかの使命のために旅に出るところとか、実は平和だと思っていたのは主人公たちだけで、戦いの影がすぐそばまで迫ってきていたこととか。でも、この世界ならではのユニークな設定も色々とありました。王国内のそれぞれの領国支配者は、その領国と見えない絆で密接に結びついていて、その領国内でのことは草木の1本1本に至るまで全て感じとることができるし、その人が死ぬと領国支配権は自動的に世継に移るとか... だから君主が死んだ時、世継はそれを真っ先に身体で知ることになるんです。あと、この世界では「謎解き」がとても重要で、大学も謎解きとその教訓を教える場所だし、謎解きのためには命を賭けることも珍しくないとか。主人公も、最初は躊躇ってるんですが、最終的には謎に対する好奇心を抑えきれずに冒険に飛び込んでしまうことになるし... そして謎解きが盛んなだけあって、作品の中では謎がさらに大きな謎を呼んで、もう謎だらけ。って、あらすじもちゃんと書いてないので、何のことやら、ですが。
3冊のほとんどが旅の途上というのも「指輪物語」っぽいところ。でもその旅で訪れる各地の情景の描写がすごく綺麗なんですよねえ。もう、草原を吹き渡る風を肌に感じられるような気がするほど。戦いの場面ですら幻想的で美しいというのが凄いです。

登場人物も地名もすごく色々あって最初は混乱したし、設定を掴むまでが大変だったんですけど、一度掴んでしまえば、あとは夢中で一気読み。巻末に登場人物名と地名の一覧表が載ってるのも助かりました。ええと、現在は1冊目の「星を帯びた者」だけが入手可能のようですね。これ1冊だけだと、「えっ、こんなところで終わらせないでよ!」ってところで終わっちゃうので、どうかと思うんですけど、剣と魔法の異世界ファンタジーが好きな方にはオススメの作品かと~。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のパトリシア・A・マキリップ作品の感想+
留守中に読んだ本(18冊)(「妖女サイベルの呼び声」「影のオンブリア」の感想)
「星を帯びし者」「海と炎の娘」「風の竪琴弾き」パトリシア.A.マキリップ
「ムーンフラッシュ」「ムーンドリーム」パトリシア・A・マキリップ
「オドの魔法学校」パトリシア・A・マキリップ
「ホアズブレスの龍追い人」パトリシア・A・マキリップ
「チェンジリング・シー」パトリシア・A・マキリップ
「茨文字の魔法」パトリシア・A・マキリップ

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森福都さんの新作。おなじみの中国唐代を舞台にした短編集です。今回も森福都さんらしい雰囲気で面白かったです。則天武后や玄宗皇帝など実在の人物も登場しながら、どことなくミステリアスな雰囲気。それでもって粒揃い。でも、改めて感想を書こうとしてはたと手が止まってしまいました。読み終わって、「ああ、面白かった。」しか残ってないんですが、こういう場合は一体どうすれば...(^^;。
(多分、ここんとこちょっと調子が悪くて、集中力が散漫なせいかと)
連作じゃなくて、普通の短編集だったのだけがちょっと残念だったかな。登場人物に感情移入しても、すぐに頭を切り替えなくちゃいけないんですもん。あ、もしかしたら、私が短編集に苦手意識があるのは、そういう切り替えが下手だからかもしれないなあ。(実業之日本社)


+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
「肉屏風の密室」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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以前、たらいまわし企画・第10回「映画になったら見てみたい」で挙げたこともある本なんですけど(記事はコチラ)、実は読んでる作品と読んでない作品があって、この1冊を通読するのは今回が初めてだったりします...。(ダメダメ) 表題作は、何度も読んでるんですけどね。たむらしげるさんの絵本でも読んでますし。(感想はコチラ

amazonの紹介によると、「少年愛、数学、天体、ヒコーキ、妖怪...近代日本文学の陰湿な体質を拒否し、星の硬質な煌きに似たニヒリスティックな幻想イメージによって、新しい文学空間を構築する"二十一世紀のダンディ"イナガキ・タルホのコスモロジー」

なんだかものすごい紹介なんですが(笑)、私が好きなのは、若い頃書かれたという幻想的な作品群。表題作のほかに、「黄漠奇聞」「チョコレット」「天体嗜好症」「星を売る店」「弥勒」「彼等」「美のはかなさ」「A感覚とV感覚」の全9編が収録されていて、大体年代順に並んでいるんですけど、ずばり前半の「星を売る店」までですね。特に表題作と「黄漠奇聞」が大好き。大正時代に書かれている作品なんですけど、今読んでも違和感が全くないのが凄いです。レトロな雰囲気を持ちつつ、「モダン」という言葉がぴったり。幻想的で、美しい情景が広がります。特に「黄漠奇聞」の異国情緒溢れる雰囲気が溜まりません~。(これ、最後に「ダンセーニ大尉」という人物が登場するんですけど、もしかしてロード・ダンセイニのことなのでしょうか)
でもこの後、足穂はアルコール中毒などで一時断筆したようなんですよね。前半の作品から「弥勒」が書かれるまで15年ぐらいあいていて、「弥勒」や「彼等」にもまだまだ足穂らしいモチーフはあるものの、自伝的でどこか重い雰囲気。極貧生活を送っていた足穂自身の姿も垣間見えるし、同性愛的傾向も濃くなるし。それはそれで悪くはないんだけど... でもやっぱり前半部分のおとぎ話的な雰囲気が好きです。若い頃の作品をもっと読んでみたいなあ。(新潮文庫)


+既読の稲垣足穂作品の感想+
「一千一秒物語」稲垣足穂・たむらしげる
「一千一秒物語」稲垣足穂

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退行性の病気で痴呆が進み、あっという間に死んでしまったモリーという女性と、かつてその恋人だった3人の男たちの物語。知的で洗練された雰囲気で、大人のための小説といった印象なんですが、男たちの自滅ぶりは実に皮肉な視線で描かれています。かつての恋人たちは、それぞれに高名な作曲家、新聞の編集長、そして外務大臣。そんな世間的に高い地位を築き上げた男性たちでも、一旦歯車が狂い始めてしまったら、崩壊するのは一瞬なんですよね。そこに、このシンプルな文章が効果的。
でも、音楽家が交響楽を作曲するシーンは面白かったし、端正な文章も良かったんですけど、男たちの自滅ぶりがあまりにありきたりに感じられてしまって、あまり楽しめなかったかも...。なんだかタチの悪い冗談みたいで。これが面白かったら、同じマキューアンの「愛の続き」も読もうと思ったんだけど、やっぱりしばらくやめておこう。(新潮文庫)


+既読のイアン・マキューアン作品の感想+
「アムステルダム」イアン・マキューアン
「愛の続き」イアン・マキューアン

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青森県の十和田を舞台にした爽やかな青春小説。雑食レビューのおおきさんにオススメされたんですけど、これは本当に良かったです! 竹内真さんの「自転車少年記」の話題から、青春小説といえば... といった感じでこの本の題名が出てきたんです。確かに「自転車少年記」と同質の青春小説。でも作品の雰囲気は、むしろ芦原すなおさんの「青春デンデケデケデケ」に近いかな? 時代も同じぐらいだし。「青春デンデケデケデケ」が大好きな人は必読でしょう。(逆もまた真なり)
スポーツ、友情、異性への興味、恋、親や教師への反感、出会いと別れといった、青春小説には王道のモチーフが、もう読んでいて気恥ずかしいほどの王道の展開で描かれていくんですけど、これが逆にストレートに響いてきて、もうキラキラ。登場人物も良かったし、印象的なシーンも色々あったし、読んでてうるうるしちゃいました。

実は「雨鱒の川」を読んだ時に、方言がほんと全然分からなくてかなり苦労したので、他の作品もそんな感じなんじゃ... とちょっと警戒してたんですけど、これはほぼ標準語でした。本当は方言で書かれていた方が雰囲気が出たんでしょうし、標準語を話す登場人物との対比も鮮やかになったんでしょうけど... 私にとっては、標準語で書かれていてとてもありがたかったです。(^^ゞ (集英社文庫)


+既読の川上健一作品の感想+
留守中に読んだ本(18冊)(「雨鱒の川」の感想)
「翼はいつまでも」川上健一

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完全な美の持ち主であるクルミと、そのクルミの美に取り付かれた人々の物語。今までにも西澤作品には、時々「フェチ」や「ジェンダー」といった要素がありましたけど、ここでとうとう1つの作品にまとまったという感じですね。「意匠」「異物」「献身」「聖餐」「殉教」という各章に分かれて、脚(タイツ)フェチや手フェチ、女装趣味など、怪しげな「フェチ」ぶりを見せる人々が登場します。
でも、もちろん知り合いの男性が女装趣味だと突然知らされたら、さすがの私もびっくりすると思うんですけど(笑)、そこまでいかなくても、人それぞれに何らかの嗜好ってあるものですよね。隠した方が無難なものも、隠す必要が全然ないものも。嗜好自体がどうこういうよりも、そういった嗜好がクルミという存在を通して、表面に露呈されてくるのが面白かったです。それまで影の存在でしか有り得なかったそれぞれの嗜好が、クルミによって解放されたというか。だからなのか、たとえそんな特殊な嗜好を持つ人間が殺されても、私にはあまり不幸には見えなかったんですが... そういう読み方って間違ってるかしら(^^;。
殺人はたびたび起きるんですが、ミステリというよりもむしろサイコホラー。クルミの「触れれば死ぬ」という特異体質についてもっと知りたかったんですけど、それに関してはあまりすっきりしないまま終わってしまったのがちょっと残念でした。あんまり突き詰めて考えないで、無条件に受け入れるべき部分だったんですね、きっと。(集英社)


+既読の西澤保彦作品の感想+
「方舟は冬の国へ」西澤保彦
「生贄を抱く夜」西澤保彦
「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」西澤保彦
「フェティッシュ」西澤保彦
「キス」西澤保彦
「春の魔法のおすそわけ」西澤保彦
「ソフトタッチ・オペレーション」西澤保彦
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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「ケルトの薄明」だけ、画像が出ないですが...。

アイルランド生まれの詩人・イエイツが、既存のアイルランドの民間伝承物語や妖精譚の中から話を抜粋し、分類・体系化した本が「FAIRY AND FOLK TALES OF THE IRISH PEASANTRY」と「IRISH FAIRY TALES」。そこから妖精譚だけを抜粋してまとめたのが「ケルト妖精物語」で、妖精譚以外を収めたのが「ケルト幻想物語」。そして他人が集めた物語を編集するのに物足りなくなったのか、イエイツ自身が自分の足でアイルランドを歩き回って話を集めたのが「ケルトの薄明」。
イギリスの妖精について書かれていた「妖精 Who's Who」と同じように、気まぐれで我儘で意地悪な妖精の話が多いです。そして、「ケルト妖精物語」や「ケルト幻想物語」も素朴な物語が多いんですが、「ケルトの薄明」はそれ以上に素朴な印象。物語になり切れないスケッチ的なものも多くて、炉辺などで語る人々の言葉がそのまま伝わってくるようでした。イエイツが、口の堅いおじいさんからなんとか話を引き出そうと苦労してるらしいところも、なんか可笑しくて。でも話によって、読みやすいのと読みにくいのと、ちょっと差が激しかったかなあ。これを読むと、グリム童話やペロー童話って洗練されてるんだなあって実感しちゃいます。

アイルランドにキリスト教を伝えた聖パトリックは、土着のドルイド教を良く理解していたので、そういった信仰を無闇に排除するようなことはなく、むしろそういった宗教を吸収するようにして、キリスト教を広めていったんですよね。それまでの土着の神々は、妖精として残っていったのだそう。そのせいか妖精譚もキリスト教の影響を受けながらも、ちょっと異教的な雰囲気を残してて、そういうところが結構好きです。(ちくま文庫)

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風待屋の sa-ki さんに教えて頂いた、イギリスの妖精をイラスト付きで紹介している本。本当はたらいまわしの第8回「あなたが贈られたい(贈りたい)本はなんですか?」で出してらしたピエール・デュボアの「妖精図鑑」も合わせて見たかったんですけど、そちらはまたいずれ...。

ブラウニーやドワーフ、エルフなんかの有名な妖精は知ってますけど、もう全然名前を聞いたことがない妖精もいっぱい。イギリスには、これほど沢山の妖精がいるんですか! しかも同じくブリッグズの、富山房から刊行された「妖精事典」には約400種類の妖精が紹介されていて、これはその中から101を選んで紹介したのだそう。まだまだこの4倍もいるんですね。
日本で妖精といえば、基本的に可愛らしくて良いイメージなんじゃないかと思うんですが、ここに登場する妖精は気まぐれだったり意地悪だったり、時には残酷だったり。人さらいの話も多いし、人間の日々の仕事を手伝ってくれてても、ある日突然ふいっと出て行ってしまったりするし、昨日までは機嫌が良くても今日はまた分からないし。実際、妖精を信じていた昔の農家の人々は、相手が良い妖精であっても決して怒らせないように気をつけていたようです。妖精とつきあうのは、相当しんどそう...。なんだか妖精というより、単なる駄々っ子の相手をしてるような感じもするなあ。というよりも、むしろ日本の妖怪のイメージ? まあ、妙な現象が起きたらそれを全部妖精のせいにしていたからこそ、こういった妖精が沢山生まれることになったんでしょうけどね。(きっと人為的な「妙な現象」も多かったんでしょうね)
ファンタジー作品を読んでいて聞き慣れない妖精が出てきた時などに、役立ちそうな1冊です。(ちくま文庫)


+既読のキャサリン・ブリッグズ作品の感想+
「妖精 Who's Who」キャサリン・ブリッグズ
「魔女とふたりのケイト」K.M.ブリッグズ

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江戸時代。浪人の家に生まれながらも幼い頃に両親に死に別れ、中山小十郎という長唄の唄うたいと、志賀山おしゅんという踊りの師匠という夫婦に引き取られた仲蔵。義母に踊りの手ほどきを受けた仲蔵は、一旦は15歳の時に日本橋本町の大きな呉服商に引き取られて堅気になるものの、19歳の時に再び芝居の世界に舞い戻ることになります。

実在の歌舞伎役者、初代中村仲蔵の物語。歌舞伎はもちろん演劇関係にとっても詳しい自称☆芝居道楽委員会の菊花さんに教えて頂いた本。既に新刊書店では手に入らない本なんですけど、ちょっと前に中古書店で見つけました。
歌舞伎役者の家に生まれなかった役者の苦労は話に聞きますけど、やっぱり相当なものですね。今とこの時代では、かなり状況が違うとは思うんですが、相当えげつない...。(特に男の嫉妬ってヒドイ) でも声質の悪さで出世は無理と言われた仲蔵も、義母譲りの踊りで足がかりをつかんで、一歩ずつ這い上がっていきます。苦労して苦労して、でも名のある役者に育った後も仲蔵が相変わらず「甘い」ままだったってところが良かったな。タイトルに「狂乱」とあるので、いつ狂ってしまうんだろうって心配してしまったけど...(^^;。
あと、さりげなく江戸時代の有名人物も絡んでくるところが面白かった!(これにはびっくり)
同じ歌舞伎物だと皆川博子さんの「花闇」の方が引き込まれたんですが(これも菊花さんに教えて頂いた本だ)、これもなかなか良かったです。歌舞伎とか落語とか、こういう日本らしい文化には一度きちんと触れてみたいな。と思いつつ、実際にはなかなかなんだけど...。(講談社文庫)

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ごく普通の12歳の男の子・ジェイミーは、ある日<あいつら>を見てしまったことから、無理矢理ゲームの中に放り込まれ、<故郷に向かう者(バウンダーズ)>となることに...。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズらしい多重世界の物語なんですが、ここで移動手段となるのは、いつものような魔法ではなくて、ゲーム。ゲームをしている<あいつら>という存在、そしてその駒となったジェイミーたち。ジェイミーたちは<あいつら>によって、次々に違う世界へと移動させられ、その世界の言葉を覚え、生活に慣れた頃に再び移動することになります。
もしこの世界を神の視点を持つ誰かが操っていたら... という話は時々ありますが、駒とされてる人間が神の視点に気づくことって、それほどないと思うんですよね。でもこの話の中では、そういう存在が普通の人間の世界のある場所に入り込んでいるから、駒となる人間にも分かっちゃう。だからこそ、そのゲームのルールを逆手に取ってやろうという戦いが生まれるわけなんですが。
D.W.J.らしい明るい雰囲気はなくて、どこか重苦しい雰囲気。どうも雰囲気が掴みにくくて2回読んだんですけど、やっぱりイマイチ良く分からなかったかも... というか今ひとつ納得できなかったような... 描写が足りなかったのか、主人公以外の登場人物のイメージをしにくかったのもどうもなあ、でした。(PHP研究所)


+既読のダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品の感想+
「魔法使いハウルと火の悪魔」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「アブダラの空飛ぶ絨毯」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「デイルマーク王国史」1~4 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「わたしが幽霊だった時」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法使いはだれだ」「クリストファーの魔法の旅」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔女と暮らせば」「トニーノの歌う魔法」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法がいっぱい」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
留守中に読んだ本(18冊)(「マライアおばさん」「七人の魔法使い」「時の町の伝説」の感想)
「呪われた首環の物語」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「花の魔法、白のドラゴン」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「いたずらロバート」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジーランド観光ガイド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バウンダーズ」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「星空から来た犬」「魔空の森ヘックスウッド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バビロンまでは何マイル」上下 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ウィルキンズの歯と呪いの魔法」「海駆ける騎士の伝説」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「うちの一階には鬼がいる!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法!魔法!魔法!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ぼくとルークの一週間と一日」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「牢の中の貴婦人」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法の館にやとわれて」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「キャットと魔法の卵」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
Livreに「ダークホルムの闇の君」「グリフィンの年」「九年目の魔法」の感想があります)

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中山可穂さんの本は、これで6冊。常に女性同士の恋愛を核に描いてる方なので、これだけ読むと、いくら設定が違っていても徐々に同じ部分が見えてきちゃいますね。芝居をする女性が出てくると、「猫背の王子」「天使の骨」を思い出してしまうし、しかもこの2冊は、どちらもフリーの女性と主婦との恋愛の物語なんです。恋愛部分の描写では、どちらの作品にも「旦那と寝なかった?」と問い詰める場面があって、家庭を捨てたい主婦が子供をどうするかという悩む場面があって。そこから出てくる結果はまた違うんですけど、ああー、いくら枝葉が違っていても、やっぱり核心部分では一緒になっちゃうんだなあという印象。この「感情教育」と「深爪」は、半年を置いて続けて出版された作品だし、中山可穂さんご自身が、その頃そういう恋愛をしてらしたんでしょうね。もちろん、それぞれに読めば、「感情教育」では2人の女性のそれぞれの生い立ちの話の部分がすごく良かったし、「深爪」では、恋人同士になってしまう女性2人と旦那という3人の視点から描かれているのが面白かったし、特に「深爪」に登場する普通とはちょっと違う感覚を持つ旦那像を、私はかなり気に入ってたのですが。

中山可穂さんの作品は、あんまり沢山読まない方が、1つの作品の印象が強く残りそうな気がしてきました。6冊読んでも、最初に読んだ「サグラダ・ファミリア-聖家族」の印象が一番強烈だったし。...あ、でも続けて読んだのが間違いだっただけなのかもしれないですね。次に読む時は、まとめ読みしないで1冊ずつ読むことにします。(講談社文庫・新潮文庫)


+既読の中山可穂作品の感想+
「白い薔薇の淵まで」中山可穂
「猫背の王子」「天使の骨」中山可穂
「感情教育」「深爪」中山可穂
Livreに「サグラダ・ファミリア-聖家族」の感想があります)

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ダイアナ・ウィン・ジョーンズによる、ファンタジー用語ガイドブック。ダイアナ・ウィン・ジョーンズ流の皮肉混じりの解釈が面白いのですが、その中でも特に可笑しかったのが「行方不明の世継」について。

驚くべき頻度で出現する。どんなときでも、ファンタジーランドの国々の半分は、自国の世継の王子/王女を見失っている。もっとも、<規定>によれば、行方不明の世継は、ひとつのツアーにつきひとりしか参加できないことになっている。(中略) そして、その人物に自分の王国を取り戻させることが、あなたの探索の一部なのである。これは迷惑以外の何物でもない。行方不明の世継は皆、輝くばかりに純真で(まぶしさにめまいがしそうな相手もいる)、大部分は分別というものをほとんど持っていない。それはつまり、自分の本当の身分についてのヒントを出されても、まったく気づかないということである。そういうわけで、代わりにあなたが気づいてやらなければならない。(以下略)

そして「指輪」。「剣と同じぐらい魔術的に危険な品」だそうで、まず色んな石がはめられている場合の説明があるんですが、最後に

内側にルーン文字の刻まれた、なんの飾り気もない指輪。このたぐいの指輪は、疫病のごとく避けること。<規定>によれば、飾り気がなければないほど、指輪の魔法の力も呪われている度合いも増すのである。

これって、指輪物語のあの指輪のことですか?(笑)

物語ではないし、母(D.W.J.ファン)からまわってきたんじゃなければ読まなかっただろうって本なんですが、思ったより楽しめました。まあ、やっぱりファン向けの本だとは思うんですけどね。という私は、本当は特にファンというわけじゃないのに(失礼)、あと3冊でコンプリートしてしまいそうです。でもこの人の本って、当たり外れが激しいからなあ。あと3冊、面白ければいいんだけど... (東洋書林)


+既読のダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品の感想+
「魔法使いハウルと火の悪魔」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「アブダラの空飛ぶ絨毯」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「デイルマーク王国史」1~4 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「わたしが幽霊だった時」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法使いはだれだ」「クリストファーの魔法の旅」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔女と暮らせば」「トニーノの歌う魔法」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法がいっぱい」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
留守中に読んだ本(18冊)(「マライアおばさん」「七人の魔法使い」「時の町の伝説」の感想)
「呪われた首環の物語」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「花の魔法、白のドラゴン」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「いたずらロバート」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジーランド観光ガイド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バウンダーズ」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「星空から来た犬」「魔空の森ヘックスウッド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バビロンまでは何マイル」上下 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ウィルキンズの歯と呪いの魔法」「海駆ける騎士の伝説」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「うちの一階には鬼がいる!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法!魔法!魔法!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ぼくとルークの一週間と一日」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「牢の中の貴婦人」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法の館にやとわれて」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「キャットと魔法の卵」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
Livreに「ダークホルムの闇の君」「グリフィンの年」「九年目の魔法」の感想があります)

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福岡に働くイソ弁を主人公にした連作短編集。ええと、イソ弁というのは、「居候中の弁護士」の略でしたっけ? 弁護士事務所に勤めている弁護士のことですね。そのイソ弁として働いている新人弁護士「剣持鷹士」が関わった件を、高校時代からの親友・コーキが鮮やかに解いてしまうというパターン。

いやあ、これはまさに推理パズルですね。特に表題作「あきらめのよい相談者」の解決は、まるでハリイ・ケメルマンの「九マイルは遠すぎる」みたい! いくつか提示されていた事実が思いがけない状態で見事に繋がってびっくり~。いや、本当は多少強引なのかもしれないんですけど、こういう作品に弱いんですよね、私。(^^ゞ
作者の剣持鷹士さんご自身が弁護士だそうで、法律的な薀蓄や、裁判にまつわるエピソードも楽しいです。「裁判ってのは、こちらの主張が正しいと裁判所に思わせること、あるいは相手の主張が正しくないと思わせることなんやから、実際に起こったことは何かって考えてもしょうがなかよ」という言葉で、ああやっぱり弁護士にとっては、真相よりも依頼人を守ることが大切なんだなあと実感。あまり正義感の強い人には向かない仕事なんでしょうね。なんだか苦労が多そうです。

さて、この剣持鷹士さんというのは、「五十円玉二十枚の謎」の一般公募で最優秀賞だった高橋謙一氏。このまま書き続けていればきっと人気作家さんになれたでしょうに、この1冊しか本になってないんですよね。なんだか勿体ないなあ。本業の方がお忙しいのかしら?(創元推理文庫)

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そのお人好しぶりのせいで、いつも事件に巻き込まれてしまう白戸修の連作短編集。1作目の「ツール&ストール」は、第20回小説推理新人賞受賞のデビュー作品。

ミステリ作品、特にシリーズ物は主人公がどうやって事件に絡んでいくかというのが大きなポイントだと思うし、わざとらしくならないようにするのって結構難しいと思うんですけど、この作品の巻き込まれっぷりは、ほんとお見事。しかも白戸修が必ずしも探偵役というわけでもなくて、巻き込まれているうちに何となく解決してしまうという感じなんですよね。もちろん彼自身が何かに気づいてそれが解決に繋がることもあるんですけど、周囲の助けも大きくて。脇役もいい味出してます。
それぞれの短編では、スリとかストーカーとか万引きとか、そういう犯罪がクローズアップされるんですけど、例えばそういうスリの実態とか、ストーカーに対する対処法とか、それぞれの犯罪に関する薀蓄も楽しいんですよね。ちょっぴりピカレスクっぽい雰囲気。で、そういうのに感心しながら読んでたら、突然真相が現れて意表を突かれたり。事件が起きて探偵役が推理するっていう、普通のミステリとはちょっと角度が違うのも楽しいところ。主人公の抜け具合に愛嬌があるせいか、どの作品も後味が良くほのぼのとしています。これはぜひ続編も書いて頂きたいな。(双葉文庫)

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菊地秀行さんといえば、まず新宿を舞台とした例のシリーズのイメージだったので、これは意外でした! こういった時代小説も書いてらしたのですねー。そっちの作品に比べたら、官能的な描写なんてないも同然の硬派な時代小説。時代小説と言うより、怪談と言う方が相応しいかも。全部で9編入っていて、それぞれに幽霊が出てきたり、不思議な出来事が起きたり。

この中で一番好きだったのは、最初に入っていた「影女房」。辻斬りに殺された小夜という町娘の幽霊が、何も関係ないはずの久馬の家に乗り込んで仇討ちを頼むんですけど、久馬が諦めろと言うと、その前に断った侍を半病人にしたことを告げて、「あなたには、もっと酷い運命を与えて差し上げます」と脅すし、久馬の母親が女の噂を聞きつけて家に乗り込んでくると、誤魔化そうとする久馬を尻目に、「だって口惜しいじゃありませんか」と自ら名乗り出るし、挙句の果てに「私、負けません」なんて宣言しちゃう気の強さ。気の強い幽霊というのも結構いると思いますが、ここまで来ると逆に気持ちいいです。(笑)

それとこの短編集で面白かったのが、それぞれの短編によって幽霊の有り様が違うこと。例えば「影女房」の小夜は、幽霊なのに身体は暖かくて足もきちんとあるし、人間のできることは普通にこなすんです。辻斬りに斬られた傷口からは未だに血が溢れて出るんですけど、それが畳などに付くことはありません。でも他の作品に登場する幽霊は、また違うんですよね。手が氷のように冷たくて、血の跡を残していたり。例えば「足がないから幽霊」とかそんな風に決め付けられないんです。血を流してるから人間だ、という発言にも、「死人が、霊が血を流さぬと、誰が決めまして?」 確かにそうかもしれないですねー。日本の幽霊に足がないのが普通になったのも、そもそも丸山応挙がそういう絵を描いたせいですもんね。(笑) (角川文庫)


+既読の菊地秀行作品の感想+
「幽剣抄」菊池秀行
お正月休みの間に読んだ本(7冊)

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ペギー・スーのパパの新しい仕事は、砂漠のはずれにある、使われていない飛行場を警備すること。しかしその砂漠に着いた途端、青い犬は、目に見えない子供たちがそこら中にいて泣き声を立てていると言い、地元に住む老人は、この砂漠にできる蜃気楼は非常に危険で、今までにも多くの人々がその蜃気楼に足を踏み入れ、そのまま帰ってこなくなったと言います。そしてペギー・スーの両親や姉も、その蜃気楼の中に攫われてしまうのです。

「ペギー・スー i 魔法の瞳をもつ少女」(感想)に続く、ペギー・スーシリーズの2作目。
1巻を読了した時に予想した通り、2巻の方がずっと面白かったです。1巻ではペギー・スーは完全に孤立していたし、相当ブラック風味だったんですけど、今回は仲間が出来たせいか、そのブラックさがかなり緩和されてました。1巻で出会った青い犬はペギー・スーを守ってくれようとする頼もしい存在だし、今回は蜃気楼の国から逃げてきたセバスチャンという少年も仲間入り。

恐ろしい恐ろしいと散々脅かされた蜃気楼の国は、一見子供の楽園。通りに立ち並ぶケーキ屋ではケーキやキャンディが無料で配られているし、魔法の丸薬を飲めば何でも希望通りの姿に変身できるし、雲の上でスキーもできるし... 何でも希望が叶えられる場所。でもそれらは全て落とし穴なんですね。
両親と姉を救い出すためには、まずその蜃気楼を作り出している悪魔の目を覚まさせなければならないと聞き、青い犬やセバスチャンと一緒に悪魔の庭園に乗り込むペギー・スー。でも野菜や果物に変身してしまいそうになったり、果物が我慢できないぐらい美味しそうなお菓子の香りを漂わせて誘惑してきたり、さらにはお菓子に変身してしまった仲間を食べたくて仕方がなくなったり...!(これ、結構凄いです) 負けそうになりながらも、仲間と一緒に頑張るペギー・スーの姿がなかなか良かったです。畳み掛けるような展開に引き込まれて、一気に読み終えてしまいました。フランスで人気があるというのも、ようやく納得。(角川文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ペギー・スーi  魔法の瞳をもつ少女」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーii  蜃気楼の国へ飛ぶ」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーiii 幸福を運ぶ魔法の蝶」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーiv 魔法にかけられた動物園」「ペギー・スーv 黒い城の恐ろしい謎」セルジュ・ブリュソロ

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Boiled Eggs Onlineで連載中だという三浦しをんさんのエッセイ集。三浦しをんさんの本を読むのは初めてです。以前から時々名前を見かけて気になっていたところ、かなめさんが、すごい勢いで読み進めてる! と思ったら、先日のたらいまわし企画「心やすらぐ本」でも、LINさんが「しをんのしおり」を出してらっしゃるし、ざれこさんのところにも「桃色トワイライト」が! そして「しをんのしおり」を早速読まれたというBryumさんからの強力プッシュが...! なんだかすっごく面白そう。ということで、即入手、早速読ませていただきました。(笑)

いやあ、面白かった。読んでいると、なんだか最初、ネットのお友達Hちゃんの文章(大好き!)みたいな雰囲気で、思わずしをんさんのプロフィールをチェックしてしまいましたが...。(^^ゞ 
中でも一番可笑しかったのが、「人生劇場 あんちゃんと俺」の章。友人の「あんちゃん(仮名)」と青山に出かけたしをんさん、表参道のフランス料理店の厨房で働く4人の男を見て、妄想話を繰り広げるんですが、最初は普通に男の職場的なリアルさを出していた会話は、気づけばカ○ネタへと...。それ自体も面白いのに、さらに「あらら、AとDが実はデキてるんだ」「そういうことになりましたね。もう一緒に住んでるみたいだ」という部分に、うぷぷぷぷっ。しかもなぜかそれが「妄想抑止ヘッドギア」の話まで発展してしまうんです。いやーん、可笑しすぎる! あと、「超戦隊ボンサイダー」の章の、京都でいきなりボンザイダーの設定を考えるところも面白かったなあ。これも気づけばカ○ネタへといっちゃうんですよね(^^;。
漫画ネタは、半分ぐらいしか分からなかったのが少し残念だったんですが(こういうのって、元ネタが分からないとちょっとツライですね)、でも面白かったので、ぜひ他の本も読んでみようと思います。次は古本屋の話という「月魚」かな。あ、でも年内は積読本消化に勤しむ予定なので、来年にでも。(新潮文庫)


+既読の三浦しをん作品の感想+
「しをんのしおり」三浦しをん
「月魚」三浦しをん

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修道士カドフェルシリーズの17巻と18巻。現在発刊中なんですが、最終的に全21巻となることは既に決まっているので、これを読んでしまうと、あと3冊だけになっちゃうんですよねえ。なんか淋しいなあ。

さて、「陶工の畑」とは、聖書の「マタイによる福音」に登場する言葉。キリストを売って銀貨30枚を得たユダは、その後自分のしたことを後悔して首をつって死ぬのですが、その時にユダが神殿に投げ込んだ銀貨の扱いに困った祭司長たちは、「陶器職人の畑」を買って外国人の墓地にするんですよね。なのでキリスト教徒にとっては、どことなく不吉なイメージのある言葉。(陶工って、職人の中でも一番低く見られることがあるそうなんですが、きっとこの辺りが関係しているんでしょうね) そしてそんな題名が象徴するような事件が起こります。「陶工の畑」と呼ばれる土地に埋められていた女性の白骨死体は、一体誰の死体? 物語自体は、カドフェルシリーズらしいオーソドックスさなのに、謎の出し方がいつもとちょっと違っていて目新しい感じ。それぞれに愛する者たちを庇おうとするために、真実に辿り着くまでにかなり遠回りしてしまうことになります。
そして「デーン人の夏」は、「カドフェルまたしてもウェールズに行く」編。題名のデーン人というのは、平たく言えばデンマークから来たバイキングのこと。この頃にはアイルランドやスコットランド、ウェールズにも侵攻して、一大勢力となっていたようです。この作品では、3巻「修道士の頭巾」に登場した見習い修道士のマーク、9巻「死者の身代金」に登場したオエイン・グウィネズが再登場して嬉しい限り。終生住む場所はシュルーズベリの修道院と心を決めているカドフェルも、時々旅をしたくて堪らなくてうずうずするようで、ウェールズ旅行がもう楽しくて仕方ないみたい。今回は背景事情も人間関係も複雑で、冒頭で思わぬ苦戦をしてしまったんですが(3回も読み直す羽目に...)、途中からは面白くて止まりませんでしたー。そういえば「死者の身代金」もすごく面白かったし、エリス・ピーターズ自身、ウェールズとなると執筆にかなり力が入るのかも。(笑) (光文社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「聖女の遺骨求む」「死体が多すぎる」「修道士の頭巾」...ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「聖ペテロ祭殺人事件」エリス・ピーターズ
「死を呼ぶ婚礼」エリス・ピーターズ
「氷のなかの処女」エリス・ピーターズ
「聖域の雀」「悪魔の見習い修道士」エリス・ピーターズ
「死者の身代金」「憎しみの巡礼」エリス・ピーターズ
「秘跡」「門前通りのカラス」エリス・ピーターズ
「代価はバラ一輪」エリス・ピーターズ
「アイトン・フォレストの隠者」エリス・ピーターズ
「ハルイン修道士の告白」エリス・ピーターズ
「異端の徒弟」エリス・ピーターズ
「陶工の畑」「デーン人の夏」エリス・ピーターズ
「聖なる泥棒」「背教者カドフェル」エリス・ピータース
「修道士カドフェルの出現」エリス・ピーターズ

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「弟と暮らすのが夢だったの」と言う「姉」に拾われて、弟の「良」となった僕は、家から近いガソリンスタンドでの面接のために履歴書を書いていました。「適当はいいけど嘘はダメ。好きなことを好きなように、正直かつ大胆に書こう」という姉の言葉に、何も考えずに生年月日を書き、それに合わせて学歴を作り上げていきます。年齢は19歳。家族は姉だけ。性別は男。免許・資格はなし。趣味・特技は読書。書き終わった履歴書を愉快な気持ちで眺めた僕は、少しだけ物足りなく感じて、今度は「リレキショ」を書き始めます。

以前掲示板で教えて頂いていた中村航さんのデビュー作。文庫になっていたので、これは読んでみないと、と読み始めたのですが...
冒頭で、主人公はある日突然見知らぬ女性に拾われて同居することになったということが分かるんですけど、特に説明もないまま物語は進行。一体何があったんだ? どんな状況だったんだ? というのが気になって読み進めたんですが、その理由はほとんど説明されないままなんですよね。終盤、ちらりと良の過去を匂わせる部分が登場するんですけど、結局のところはそれだけ。うーん、これは一体どういうことだったんでしょう。記憶喪失になったのか、自分の意思だったのかも分からないんです。(文章から読み取れるのかもしれないけど、私には良く分からなかった) これって、要するに一種の現実逃避ですよね。それ自体はとても現代らしいテーマのような気がするのだけど... こんな風に全てが曖昧なままというのも、どうなのかしら?
登場人物はすごく少なくて、主に登場するのは主人公とその姉、姉の親友、良が働くガソリンスタンドの先輩、そしてウルシバラという少女だけ。姉と姉の親友と3人で飲んでる場面なんかとっても楽しそうだし、淡々とした雰囲気も良かったんですけど、それだけで終わってしまったような気がします...。(河出文庫)

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以前、「トリエステの坂道」を読んだ時に(感想)、OMBRE ET LUMIERE の37kwさんにお勧めということで教えて頂いたのが、この「ヴェネツィアの宿」。そして合わせて「コルシア書店の仲間たち」「ミラノ 霧の風景」「ユルスナールの靴」。すっかり遅くなってしまったんですけど、そのうちの2冊を読んでみました。

まず「ヴェネツィアの宿」は、日本にいた頃の生活や、須賀さんご自身の日本での家族での思い出を中心に、留学先のフランスやイタリアでのことを書き綴ったエッセイ。心に思い浮かぶまま自由に書きとめられたという感じで、時系列順に並んでいるわけではないのですが、全体としては大きなまとまりを感じさせる1冊。やっぱり須賀さんは、いいですねえ。良いことも悪いことも、真っ直ぐな視線で受け止めて、落ち着いた静かな文章で描き出していくという感じ。特に印象に残るのは、彼女の父親のこと。贅沢が好きで、仕事に身が入らず、家族を置いて1年間ヨーロッパとアメリカに行ってしまったという父親。後に家を出て愛人の元へと行ってしまった彼の姿は、最初は短気で身勝手なイメージばかりだったのですが、やはり父と娘の繋がりは濃かったのですね。最後の「オリエント・エクスプレス」の章でそのイメージが覆されるシーンが堪らなかったです。あと、時代はかなり違うんですが、私も須賀さんと同じ風景を見ていたことがあるので、その部分が特にものすごく懐かしかったし興味深かったです。

そして「コルシア書店の仲間たち」は、ローマに留学していた須賀さんが、コルシア・デイ・セルヴィ書店の一員として加わった頃のことを書いたエッセイ。コルシア・デイ・セルヴィ書店は、書店でありながらただの書店ではなく、左翼系のカトリックの活動の場なんですね。この書店に、階級も職業も人種も年齢も様々な人間が出入りしるんですが、この人々こそが、須賀さんがイタリアで得た初めての仲間。そしてこの書店こそが、イタリアで初めて得た自分自身の居場所。後に須賀さんが結婚するペッピーノ氏も、ここの一員です。このエッセイに登場する人々は、文章を読んでいるだけでも、それぞれに鮮やかに浮かび上がってくるんですが、その中でも一番印象が強かったのは創始者のダヴィデ・マリア・トゥロルド神父。爆撃で瓦礫の山となったミラノの都心を親友のカミッロと一緒にが颯爽と歩いている場面なんて、ほんと目の前に情景が浮かんでくるようでした。でも出会いもあれば別れもあり、須賀さんは最愛の夫を失い。書店の理念も徐々に形を変えて... コルシア・デイ・セルヴィ書店と共に、1つの時代終焉を見たような思いがして切なかったです。

次は「ミラノ 霧の風景」「ユルスナールの靴」を探してみよう。(文春文庫)


+既読の須賀敦子作品の感想+
「トリエステの坂道」須賀敦子
「本に読まれて」須賀敦子
「ヴェネツィアの宿」「コルシア書店の仲間たち」須賀敦子
「こうちゃん」須賀敦子・酒井駒子
「須賀敦子全集1」須賀敦子
「須賀敦子全集2」須賀敦子
「須賀敦子全集3」須賀敦子
「須賀敦子全集4」須賀敦子
「須賀敦子全集5」須賀敦子
「須賀敦子全集6」須賀敦子
「須賀敦子全集7」須賀敦子
「須賀敦子全集8」須賀敦子

+既読の須賀敦子翻訳作品の感想+
「インド夜想曲」アントニオ・タブッキ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「ある家族の会話」ナタリア・ギンズブルグ

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幼い頃から戒律厳しい修道院で育ち、出た後も清く正しい生活を送る彼女の渾名は「フランチェス子」。そのフランチェス子に、突然できものができます。最初は痣のようだったできものは徐々に盛り上がって人の顔のようになり、人面瘡へと変化。そして、ある日その人面瘡が話し始めたのです。どうやっても追い払えない人面瘡は、なんとフランチェス子の股間に移動。最初は取り乱すフランチェス子でしたが、いつしかうちとけてきて、その人面瘡を「古賀さん」と呼ぶように。

信兵衛の読書手帖の信兵衛さんに以前教えて頂いた本。最近、本を読む女。改訂版のざれこさんにも再プッシュされてたんですが...
うひゃひゃひゃひゃーっ、これは何なんですか! もう「フランチェス子」という名前からして笑わせてくれるですけど、その友達がアン子、ノン子、ウィズ美、モア代、オリ江、マルとクスの兄弟、朝志、読夫ですよ! しかも身体のどこかに人面瘡が出来るという話は時々ありますけど、なぜ股間に(^^;。フランチェス子はミロのビーナスを思い浮かべさせるような美女で、モデル経験もあるんですが、男性のその気を萎えさせてしまうという特殊体質。これまでもこれからも男性とつきあいそうにないので、どこに人面瘡が住み着いていても別段困るわけではないんですが... 純粋培養な育ちのはずなのに、なぜこんなに放送禁止用語に詳しいんですか! なぜそれを完璧に使いこなしてるんですか!(笑)
でもそれだけすごい表現が氾濫してる割には、全然いやらしくないんですよねえ... 不思議。
「古賀さん」は何かといえばフランチェス子のことをダメ女だって罵倒するし、フランチェス子は何を言われても素直に納得して反省しちゃう。何もそこまで素直に認めなくても... なんですが、「古賀さん」の言葉には確かに説得力があるんですよね。放送禁止用語や上辺の面白さにかまけて読んでいると、ふと深い言葉が飛び込んできて驚かされます。最初はフランチェス子も古賀さんもあまり好きじゃなかったのに、読んでるうちにだんだん可愛く見えてきて楽しかったです。
最後の展開には、結構度肝を抜かれます。この展開は私としてはあまり好みではなかったので、ちょっと残念だったんですが、でもこれだけの話を収拾させようとしたら、これで一番良かったのかもしれないですね。「ツ、イ、ラ、ク」と「桃」は万人にお薦めできるけど、この「受難」は恐る恐るお薦めする感じ... と、ざれこさんが仰ってたのも納得の作品です。(笑) (角川文庫)


+既読の姫野カオルコ作品の感想+
「桃」姫野カオルコ
「受難」姫野カオルコ
「変奏曲」姫野カオルコ
Livreに「ツ、イ、ラ、ク」の感想があります)

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ネコ6、ヒト2、イヌ1という家族構成の、米原万里さんの飼い犬、飼い猫エッセイ。
米原万里さんの本を読むのは初めてです。そもそもエッセイってあまり読まないですしね。エッセイも嫌いじゃないし、一時軽くハマってたこともあるんですけど、最近ではオススメされたり貸してもらったりしない限り、積極的には手に取らなくなっちゃいました。(これは!という作家さんのエッセイなら読みますが) というこの本は、母から回ってきた本。多分私が猫溺愛中だから貸してくれたんだろうと思うんですけど、母自身は動物と一線引くタイプ。なんでこんな動物大好き本を読んだのか不思議?。というのはともかく。
いやあ、面白かったです。この原稿を書いてる時の米原さんはロシア語会議通訳だったというのに、まるで本職のエッセイストみたい。嬉しくなったりワクワクしたり、ほろりとしてしまったり... 読みながら何度か吹き出しちゃいましたよ。読みながら思わず拳を握りしめてしまうオオバカ嫁の話(怒)のように胸が痛くなるような話もあるんですけど、最初に猫を拾った時の話や、そこに犬を連れ帰った時のこと、さらにモスクワ出張で一目惚れして連れ帰った猫のことなど、ほんといいんです。それにしても、モスクワの空港のあの愛想のカケラもないようなおねーさんたちが、別人のように愛想がよくなるなんて!(驚)
特に犬のゲンにまつわるエピソードもすごく良くて、もうゲンが大好きになっちゃいました。最初は誰が来ても吠えなかったゲンも、ある日を境に吠えるようになるんですよね。獣医さんの言うその理由がまたなかせるんです。
やっぱり動物はいいですね。という私も、今この文章を打ってる時点で猫が膝の上で寝ていて、しかも左手を枕にしてしまっているので、右手だけでタイピング中。普段よりも3倍ほど時間がかかります。でもいくら不便でも、追い払う気にはなれないんですよね。この温かさは何ものにも替えがたいです♪(文春文庫)


+既読の米原万里作品の感想+
「ヒトのオスは飼わないの?」米原万里
「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」米原万里

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昨日に引き続きの泉鏡花。今度はSukuSukuPu-sanのmort_a_creditさんが、先日のたわいまわし企画「心やすらぐ本」で挙げてらした「二、三羽──十二、三羽」が入ってる本です。本当はこちらを先に読もうと思ってたんですけど、泉鏡花の本にしては少し厚いので(今時の本と比べたら全然ですが!)、先に薄い本から入ったという軟弱者の私です。(^^ゞ
まず読んだのは、その「二、三羽──十二、三羽」。これはエッセイ風の作品。ふと庭に遊びに来た雀が可愛らしいくて、奥さんと一緒になって飯粒をやったりするようになるんですが、その雀たちの様子がとてもいいんです。ことに、庭で雀が初めて見る花に驚いてご飯を食べに来るのを躊躇っちゃうところなんて、微笑ましくてほのぼの?。「心やすらぐ本」というお題にぴったり。でもそんな風に読み進めていると、ふと気がつけば鏡花版「雀のお宿」に招かれていてびっくり。やっぱり鏡花なんですね。

この本には9編が収められているのですが、私が一番好きだったのは「竜潭譚」と「薬草取」。これは2編とも神隠し譚で、満開の花の描写がすごいんです。「竜潭譚」は躑躅。「行(ゆ)く方(かた)も躑躅(つつじ)なり。来(こ)し方(かた)も躑躅(つつじ)なり」 あんまり咲いてるんで、土も赤く見えてくるほど。でもあんまり満開すぎると、逆にちょっと恐怖感もあるんですね。(満開の桜もそうですよね)
そして「薬草取」では、四季折々の花が一斉に咲き乱れています。躑躅に山吹、牡丹に芍薬、菊も桔梗も女郎花も朝顔も... 薬草を取りに行った山での話なので、全部野生のはず。どんな風に咲いてるのか見てみたい...。あ、でもこちらは怖くないです。やっぱり1種類ではないせいでしょうか。むしろ幻想的でした。
そして華麗な描写となると、「雛がたり」という作品。お雛様にまつわるエッセイといった感じの作品なんですけど、冒頭から過剰なほどの艶やかな色彩が乱舞しています。そして後半の、現実と幻想の一瞬の交錯... いやあ、すごいです。(お雛さまって、やっぱり人間がいない時はお互いにおしゃべりしてるんですかねえ? お雛様に限らず、人形ってそんなイメージがありますよね)

その他は紀行文など、比較的現実的な作品が多かったので、その分少し物足りなさもあったんですが、ふとした瞬間に見える幻想的な情景や、相変わらずの華麗な描写がやはり美しかったです。(岩波文庫)


+既読の泉鏡花作品の感想+
「夜叉ヶ池・天守物語」「高野聖・眉かくしの霊」泉鏡花
「泉鏡花短篇集」川村二郎編
「海神別荘」「春昼・春昼後刻」泉鏡花
「鏡花百物語集 文豪怪談傑作選・特別篇」東雅夫編

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泉鏡花、学生時代に少し読んだ覚えがあるんですが、それきり全然。ここのところずっと読みたいなあと思っていたんですが、ようやく読めました。「夜叉ヶ池」「天守物語」「高野聖」「眉かくしの霊」の4編の中では、「高野聖」だけが既読。

きっと相当時間がかかるんだろうな... と覚悟してたんですけど、これが全然。もう夢中になって読んでしまいましたー。特に良かったのが「夜叉ヶ池」。そして「天守物語」も。この2編は戯曲です。実際、映画やお芝居にもなってますね。(玉三郎のが観てみたいー) 戯曲を読むなんて、本当に久しぶり。子供の頃は、マルシャークの「森は生きている」とか大好きだったんですが、大人になってからはどうも読みづらくなってしまって敬遠してたんです。それがこんなにさらさらと読めるとは、びっくり。もしかしたら、泉鏡花に関しては、戯曲の方が普通の小説よりも入りやすいのでしょうか? 頭の中で台詞を音読するように読んでいると、泉鏡花ならではの艶やかな世界がぱあっと広がってすごく素敵でした。
「夜叉ヶ池」も「天守物語」も、人間だった時は痛ましい亡くなり方をした女性たちが、物の怪になってから幸せを掴むというのがポイント。それに物の怪の方が、人間よりも約束を律儀に守っているんですよね。夜叉ヶ池の主も、本当は剣ヶ峰千蛇ヶ池にいる恋する若君のところに行きたいのに、そんなことしたら大水になってしまうし、人間との昔からの約束もあるから「ええ、怨めしい...」と我慢しているのに、人間の方が浅はかな考えから約束を簡単に破ろうとしてます。醜い俗世と物の怪の美しい世界の対比?(雨乞いをする人間たちが妙なものを池に投げ込んで困る... と、渋い顔をしてる物の怪の姿が可笑しいです♪)
「高野聖」は、山で何度も遭遇する大蛇や、森の中で上から降ってくる蛭の場面がものすごくリアルで気色悪っ。その後のなまめかしい美女の場面が、余計に妖しく感じられました。川で水浴びをしている時、「うとうとする様子で、疵の痛みがなくなって気が遠くなって、ひたと附ついている婦人の身体で、私は花びらの中へ包まれたような工合」だなんて、イメージとしては恋人よりも母親のようだったけど...(笑)

泉鏡花の本は岩波文庫版が何冊か手元にあるので、ぼちぼちと読んでいくつもりです。(岩波文庫)


+既読の泉鏡花作品の感想+
「夜叉ヶ池・天守物語」「高野聖・眉かくしの霊」泉鏡花
「泉鏡花短篇集」川村二郎編
「海神別荘」「春昼・春昼後刻」泉鏡花
「鏡花百物語集 文豪怪談傑作選・特別篇」東雅夫編

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新潮文庫版にはどちらも安野光雅さんの絵が表紙に使われていて、さすが雰囲気を合わせてるんだなーと思ったんですが、どちらも画像が出てこなくて残念。

「明暗」は、新聞連載の途中で漱石が亡くなり未完のまま終わってしまった作品。ごくごく簡単にいってしまえば、津田という30男と、結婚して半年になる妻のお延、そして津田と結婚寸前までいきながら、津田を捨てて他の男のもとに走った清子という3人の物語。漱石にしては珍しく3人称で、登場する色々な人々の内面が描かれてます。大きな展開はなくて、むしろ細かい描写の積み重ねで読ませるという感じ。会話がすごいんです。夫婦間で、親子間で、はたまた友達(知り合い)同士での腹の探り合い。表面上は終始にこやかに応対していながらも、水面下では丁々発止の対決。こんな会話、毎日してたら絶対身が持たないよ... と思うんですが、そこからそれぞれの人物像や感情が克明に浮かび上がってくるのがすごいところ。その「明暗」のラストは、勤め先の社長夫人の口車に乗せられた津田が清子に会いに行って、再会するところまで。

そして水村さんが書かれたのはその後。一読して、「明暗」を相当読み込んでることが良く分かります。文体はそのまま。見た目にはまるで同じ。読んでいるとどこか印象が違うんですが、続けて読まなければ気づかなかった程度。どこに違いがあるんだろうと思っていたら、「あとがき」に、現代の読者に合わせて段落を増やしたとあったので、きっとその辺りなんでしょうね。確実に読みやすくなってます。そして「明暗」の煩雑な心理描写を減らして、筋の展開を劇的にしようとしたのだそう。確かに私にとっては、こちらの方がページをめくる手が止まらなかったです。
「明暗」では、津田の内面のずるさや弱さが、「好男子」という外面の良さに隠れていたようなところがあったんですが、こちらではその弱点が露呈されていて、それこそがこれまでの出来事の原因だった... というのがなかなかの説得力。そしてこれが今後のことにも大きく影響してくるわけですね。結局もう既に終わってることを、かき回しただけだった津田。お延の気持ちなんてまるで考えようともせず、ひたすら保身に走る津田の姿が情けない...。(こういう描写は女性作家さんらしいところかなと思ったんですけど、どうなんでしょう)

漱石が用意していた結末は、この続編とはまた違うのかもしれませんが、でも1つの結末としてすごく良かったと思います。「明暗」の伏線も見事に生かされていたし、「明暗」という作品の形を借りながらも、見事に水村さんの作品になっていたし。こうなってみると、他の方が書いた結末というのも読んでみたくなっちゃいます。他にはないのかな。「我こそは!」という作家さんはいらっしゃらなかったのかしら? でも水村さんの書かれたこの続編ほどの完成度を見せるのは、相当難しいことなんでしょうね、きっと...。(新潮文庫)


+既読の夏目漱石作品の感想+
「夢十夜」「冥途」「猫町」
「明暗」夏目漱石・「続明暗」水村美苗
「対訳 テニスン詩集」「倫敦塔・幻影の盾」夏目漱石

+既読の水村美苗作品の感想+
「本格小説」上下 水村美苗
「私小説 from left to right」水村美苗
「手紙、栞を添えて」辻邦生・水村美苗
「明暗」夏目漱石・「続明暗」水村美苗
「日本語が亡びるとき」水村美苗

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朝日新聞の読書欄に連載されていた、辻邦生さん・水村美苗さんの文学をめぐる往復書簡。水村さんの「できれば辻さんには一面識もないままに書いてみたい。新聞紙面でいただくお手紙から想像されるだけの辻さんに宛てて書いてみたい。また、新聞紙面でしか通じ合えないという状況のもとで書き、二人の手紙をより必然的なものにしたい」という言葉から、事前の顔合わせもなく進められたのだそうです。

まず、お2人の文学的素養の深さが素晴らしい! ここで話題に上る作品に対する考察や文学に対する思いなどを読んでいると、自分の読み方がいかに浅いか反省させられちゃいます。同じようにベッドに寝転がってお煎餅を齧りながら読んでいても(比喩です)、なんという違い! しかもお2人の語る文学は、自由自在に古今東西を駆け巡るのですね。水村さんの才気溢れる考察を、辻邦生さんが深い懐で受け止め、さらに発展させていくという感じ。自分が投げかけた話題を相手がどのように受け止めてくれるのか、そしてどのように発展させてくれるのか待ち構える緊張感があって、しかも想像以上の発展を見せてくれた相手に対する素直な感嘆があって、1つの仕事である以上に、楽しんでわくわくしているのが伝わってきます。しかも深く濃い「文学論」でありながら、書簡ということもあって読みやすく分かりやすいんです。その文章の美しいこと。ああ、こういう文章が書けるようになりたい...。
この中で一番印象に残ったのは、トルストイの「イワンのばか」についてでした。「イワンの国の価値は文学を通してしか解せないのに、その国には文学を解する人は入れないのです」という水村さんの言葉。うわあ、確かにその通りですね。これがそんな風に読める物語だったとは... 深いなあ。

本当は水村さんの「続明暗」を読むべく、漱石の「明暗」を読んでいたのですが、ふとこちらを開いてみると止まらなくなってしまって、ついつい先に読んでしまいました。ここに紹介されている本のうち既読は3分の1ほどしかなかったんですが、少しずつでも読んでいきます! 「文学を面白く読めるというのは、『幸福』を知るということと同じ」という水村さんの言葉が素敵です♪(朝日文庫)


+既読の辻邦生作品の感想+
「西行花伝」辻邦生
「手紙、栞を添えて」辻邦生・水村美苗

+既読の水村美苗作品の感想+
「本格小説」上下 水村美苗
「私小説 from left to right」水村美苗
「手紙、栞を添えて」辻邦生・水村美苗
「明暗」夏目漱石・「続明暗」水村美苗
「日本語が亡びるとき」水村美苗

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「ヒガン」の1ヶ月には、死者が戻ってくるというアナザー・ヒル。関係者以外なかなか立ち入ることのできないこの地に、ジュンは今年初めて、親戚のハナやマリコと共に参加することに。しかし今年は連続殺人犯の存在もあり、いつもの年とは違うヒガンが始まるのです。

今回の本の装幀も素敵ですねー。川を渡るとそこはアナザーワールド! 恩田さんらしい異世界が広がってます。
1ヶ月間の「ヒガン」の物語。でも「彼岸」と言うより、むしろお盆に近いかと。お盆では先祖の魂がこの世に戻って来ますが、この「ヒガン」では、主にこの1年に亡くなった人が戻ってくるんです。しかも霊魂だけではなくて、実体付き。生きていた時の姿のまま。だからうっかりしてると、死者とは気づかないこともあり得るんですね。そしてこの死者は「お客さん」と呼ばれていて、なぜか嘘をつけないのが特徴。だからお客さんの言葉は公式の記録として扱われる可能性があり、お客さんと遭遇した人は皆、ブラックダイヤリーと呼ばれる黒い手帳にその会話の記録を残すことになってるんです。殺人事件の被害者がお客さんとしてやって来たら、その犯人が分かっちゃうんですねー。(後ろからいきなりとか、本人も良く分かってない状態だと無理なんですが)

「死というものが残酷なのは、突然訪れ、別れを言う機会もなく全てが断ち切られてしまうからだ。せめて最後にひとこと言葉を交わせたら。きちんと挨拶できたら。そう思っている遺族がどれほどこの世にいることか。」
恩田さんがこの物語を書こうと思ったのは、ここが始まりだったのかもしれないですね。(朝日新聞社)

と、設定自体はとても魅力的だと思ったんですが、以下、あまり好意的じゃないことを書いてるので、折り畳み~。


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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様々な媒体に発表されてきたホラー短編が、前後の会話を挟むことによって、数人のホームレスらしき人間の集まりで語られている物語として成立している作品。1つ話が終わるたびに、その語り手たちのことが少しずつ分っていくところが面白かったです。最初は「わたし」と「トヨさん」と「彼女」の3人。そこに「ヒゲ三」が加わって、「わたし」が「センセイ」であることが分かり、そして「サトーさん」が加わり... と、それほど大掛かりな仕掛けではありませんが、短編が苦手な私にはちょっと嬉しい趣向かも。
それぞれの作品はホラーと言うほど怖いわけではなく、あとがきで柴田よしきさんが書いてらっしゃるるように「夜」のイメージ。ごく普通の日常生活を送る「昼」に対して、それが歪み変化した「夜」。ほとんど怖くないんですけど、幻想的。何かの瞬間に歪んで変化してしまう女性の想いが様々な形で描かれているのが、柴田よしきさんらしかったです。...今、本の画像を見ていて気づいたんですけど、黒いのは女性の髪の毛だったんですね... 怖っ。(祥伝社)

で、本の感想とは関係ないんですけど、今朝、階段から落ちました... 上から下まで、ずどどどどーっと。
痛いやら情けないやらで、もう泣きそう。じっとしてる分には大丈夫なんですけど、身体を動かすと痛くって、結局今日は1日中寝てました。そしたら寝れること寝れること。ほんと信じられないぐらい1日中ぐっすりでしたよ。気がつかないうちに、ちょっと疲れが溜まってたのかもしれないですね。逆にいい休みになりましたー。
で、晩になって少し復活したんですが... 頭にできたたんこぶがやっぱり痛いです(^^;。


+既読の柴田よしき作品の感想+
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき
「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき
「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき
「夜夢」柴田よしき
「激流」柴田よしき
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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前の晩、一世一代の決心で3軒先に住む大学生・亨に誕生日カードを書いて出してしまったことを激しく後悔していた「つばめ」は、その日の午後、いつものように書道教室の後にビルの屋上へ。そして目に入ったのは、見慣れないキックボード。そして派手で意地悪そうな「星ばあ」。つばめは星ばあにキックボードを教える代わりに、亨へのカードを取り戻してもらうことに。

宙の本棚の小葉さんに教えて頂いた本です。
とっても可愛い作品でしたー。まず主人公の中学生のつばめの気持ちが1つずつすごくリアルに伝わってくるんですよね。外から見ると安定してるつばめも、その内心はそれほど安定しているわけではなくて、3 歳の時に自分を捨てた本当の母が書家だったことから書道を始めてみたり、自分の恋心を意識した途端に「亨くん」と話せなくなってしまったり(あるある)、実際には大したことを書いていないカードでも、出したことを1日中後悔してみたり。さらには隣の「いずみちゃん」が家を出た話で、「ママ」に苛ついたり。そんな1つ1つの気持ちがすごく伝わってくるんです。でもそれだけだと普通の話なんですが、この物語を引き締めているのが、意地悪な魔女のような星ばあの存在。言葉遣いが悪くて下品、ずけずけと意地悪なことばかり言うのに、どこか憎めないんですよねえ。空を飛べるなどという突飛な言葉も、このおばあさんなら本当に出来そう... なんて思っちゃう。つばめがついつい色々なことを話してしまうのも分かるんですよねえ。気づけば、2人の会話に引き込まれちゃってました。
星ばあの屋根に関する薀蓄も面白かったし、くらげのように夜空を飛んでいる夢のシーンが印象的。そして人のことには威勢が良くても、自分のことになると途端に意気地がなくなる星ばあが可愛く見えてくるラスト。優しさと暖かさが広がります。(ポプラ社)

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ポール・ギャリコ2冊。どちらも児童書。「ほんものの魔法使」の方は、ちくま文庫からも出ましたが、私が読んだのは単行本です。
「トンデモネズミ大活躍」は、ある陶器職人が作ったネズミが命を得て大冒険を繰り広げるという物語。モナコの故グレース・ケリー王妃が陶芸を始めた時に最初に作ったネズミの人形が、物語の生まれるきっかけになったのだそうです。ここに登場するトンデモネズミは、全身青色。小さな丸っこい体はフクロネズミみたいだし、後ろ足はカンガルー、前足はサルのよう。耳はウサギの耳そっくりで、内側は毒々しいオレンジ色。しかも尻尾もほとんどなく、という状態なんですけど... グレース・ケリー王妃が作ったネズミもそんな姿だったのでしょうか?(笑)
「ほんものの魔法使」は、魔法都市マジェイアを訪れた青年魔術師アダムの物語。最初は本物の魔法使いが沢山登場するファンタジーかと思ってたんですけど、実はこの魔術都市にいる魔法使いは本物の魔法使いじゃなくて、手品師とか奇術師なんですよね。最初はどこかにネタがあるはず... と、アダムの魔法を見ていた面々が、もしかしたらこれは本物?と思い始めたところから、だんだん中世の魔女裁判のような感じになってくるのが不気味。

「トンデモネズミ大活躍」の方は、あまりに子供用であんまり好みじゃなかったかも... 「ほんものの魔法使」の方が面白かったです。でもポール・ギャリコの作品の中では、まあまあってとこですね。(←なんかエラそう(^^;) (岩波書店・大和書房)


+既読のポール・ギャリコ作品の感想+
「トマシーナ」ポール・ギャリコ
「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ
「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ
「われらが英雄スクラッフィ」ポール・ギャリコ
「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ
「猫語の教科書」ポール・ギャリコ
「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」他2冊 ポール・ギャリコ
「七つの人形の恋物語」「スノーグース」ポール・ギャリコ
「トンデモネズミ大活躍」「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ
「ザ・ロンリー」ポール・ギャリコ
「「きよしこの夜」が生まれた日」ポール・ギャリコ
Livreに「ジェニィ」の感想があります)

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本格小説」(感想)がものすごーく良かった水村美苗さんの作品。これは筋らしい筋はほとんどなくて、ほとんどが2歳年上の姉との電話の会話です。両親に連れられて渡米して20年、それからあった様々な出来事が、電話での会話の合間に語られていくという形式。タイトルの"from left to right"というのは、日本語文学に特有の「縦書き」に対する「横書き」のことですね。日本語と英語、時にはフランス語も登場する「本邦初の横書きbilingual長編小説」。

日本語と英語が入り混じった会話、とは言っても所詮は日本語の本なので、英語の量は少ないんですけど、大学のゼミを思い出して懐かしかったです... 私の入ってたゼミ、先生は日本人だったんですが、当然のように英語を話してて(専門の授業自体、9割9分が英語で行われていたので)、生徒にも、母国語が日本語なのか英語なのか分からないような人たちが揃ってたんですよね。雑談は、その時に応じて日本語だったり英語だったり。彼らの会話が英語から日本語、日本語から英語と切り替わるのは、自分の言いたいことがその言葉では上手く伝えられなくなった時。英語と日本語でそれぞれ補完してるんです。
それ自体は全然構わないんですけど... 一見立派なバイリンガルな彼らの姿が、どうしようもなく中途半端に感じられてたんです。日本人の顔立ちで日本語を話していても、その日本語はちょっと怪しいし、日本人なら誰でも当たり前のように知ってること、子供の頃から当たり前のように体験してること、例えば「桃太郎」を聞いて育つ、みたいなことが、その根底に存在してるのかどうかも疑問だったし、だからといって西欧人として育っているのかといえば、それも疑問。この人たちの立ってる位置は、一体どこなんだろう、どちらにいても違和感を覚えるなんてことはないのかしら、なんてことを思ってて。子供を日本と海外2つの環境で育てるのって、親が余程しっかりしてないと難しいですよね。
そして読んでると、そんな彼らの姿が、水村美苗・奈苗という姉妹の姿にものすごく重なってきました。水村美苗さんは、中学から高校時代に何かに憑かれたように明治の文豪の文学作品を読み耽ったようですが、あの時の彼らにも、そういう拘りはあったのかしら。

この本から感じたのは、圧倒的な孤独感。どれだけアメリカにいて英語が上達しても、所詮は「アメリカにいるアジア人」に過ぎない2人。「帰国子女」として日本でもてはやされるには長くアメリカに居過ぎ、恋人のいない独身女性にとっては30代前半という不安定な年頃。既に帰るべき「HOME」はないのに、そこそこ良い家のお嬢さんとして生まれ育ってしまったプライドだけが今も彼らの根底にあって...
物語としての筋は特にないのに、これだけ読ませてしまうっていうのは、やっぱり凄いです。

水村美苗さんの作品は、次はデビュー作の「続明暗」を読む予定。なので先に本家の夏目漱石「明暗」を読もうと思ってます。「明暗」、読んだことあったかしら? それとも初めて? 読んだとしたら中学の頃だと思うんですけど、いわゆるその手の文豪の作品って、読んでるのか読んでないのか分からなくなっちゃったのが結構多いんですよね。水村さんの作品を読んでると、そろそろ初心に戻ってその辺りもぼつぼつと読み返していきたいなあって、そんな気になってきます。(新潮文庫)


+既読の水村美苗作品の感想+
「本格小説」上下 水村美苗
「私小説 from left to right」水村美苗
「手紙、栞を添えて」辻邦生・水村美苗
「明暗」夏目漱石・「続明暗」水村美苗
「日本語が亡びるとき」水村美苗

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金髪の鶏冠頭の不良少年・竜二が、元担任教師に引きずられるようにして、大酒飲みで借金まみれの落語家・笑酔亭梅寿に入門することになって... という物語。連作短編集です。

随分前からヤマボウシさんにオススメされていた作品。ようやく読めました。
あの田中啓文さんが、こんな普通の (一般的に読みやすいという意味です・笑) 作品も書いてらしたとは! と、まずびっくり。いつもの破天荒な作風はどこにいっちゃったの? 読む前に、先入観入りまくりだったんですけど...!(笑)
いえ、ネットでの評判は上々のようだし、きっとかなり読みやすい作品になってるんだろうなとは思ってたんですけどね。それにしても違いすぎですよぅ。...と偉そうに言えるほど田中啓文作品を読んでるわけじゃないんですが... でもほんとびっくりしちゃいました。ええと、良い方に意外だったし、でもちょっぴり拍子抜けでもあり。
どこが拍子抜けだったかといえば、これが全くそつがない、綺麗にまとまった作品だったってところですね。(やっぱり先入観は大きいぞ・笑) 主人公の竜二が、絵に描いたような不良少年だった割に、特に反抗することもなくこの世界に馴染んでしまうというのもそうだし、特に「派手な外見とは裏腹に、実は良い子で、才能もあった」ってところなんて、「いかにも」ですよね。さりげなく師匠を立てながら、謎解きをしちゃうところも。でもこの師匠、味があってなかなかいいんですよねえ。兄弟子姉弟子も、それぞれに人間らしくて面白かったし。ミステリとしては小粒だけど、きちんと落語のネタにリンクしてるし、落語初心者にも優しい作りだし、話のテンポも良いし、実際にそれぞれの落語を聞いてみたくなる1冊でした。
...でもやっぱり、なんか騙されたような気がするのは拭えない... 妙な先入観がなければ、もっと楽しめたのに! 何かが起きるのを期待しちゃったじゃないかーっ。(笑)
あ、落語といえば、「タイガー&ドラゴン」のDVDはもう出たんですよね。今度借りて来なくっちゃ。(集英社)

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18世紀前半。ヴェネツィアで6年間の大学生活を終えて家族のもとに戻ってきたユダヤ人青年・エリヤーフーが目にしたのは、思っていた以上に閉鎖的なユダヤ人社会と、ユダヤ人に対する激しい差別。そして、貴族の青年と決闘する羽目になり、決闘には勝つものの酷い拷問を受けることになったエリヤーフーを助けたのは、後にマリア・テレジアと結婚することになるフランツ。フランツの元でエリヤーフーはユダヤ人であることを捨て、エドゥアルトという新しい人間として生き直すことに。

「ラインの虜囚」に引き続き、西洋の冒険活劇。「スカラムーシュ」(感想)に続いて信兵衛の読書手帖の信兵衛さんに教えて頂いた本。今回はハプスブルク家のオーストリアを背景に、ユダヤ人からオーストリア人になろうとした青年を描いた歴史物語です。
読んでまずびっくりしたのは、ユダヤ人に対する差別の凄まじさ。ユダヤ人がキリスト教徒に忌み嫌われる理由は分かってるつもりだし、長い歴史の間差別され続けてきたこともナチスドイツがしたことも、知識として知ってはいたんですけど、思っていた以上でした。留学先のイタリアではそれほど差別意識がなかったようだし、地域的にかなり差はあったようなんですが、やはりドイツやオーストリアでは酷かったんですねえ...。でも差別されているユダヤ人は、決して卑屈になってないし、ユダヤ人に生まれたことを悔やんでもいないんですよね。それどころか、あくまでも誇り高く生きていて、その姿はアーリア人に対する逆差別に見えるほど。それはユダヤ人を捨てたエドゥアルトに対するユダヤ人たちの態度からも良く分かります。でもここでポイントとなるのは、エドゥアルトが人生をかけたハプスブルク家が、ユダヤ人を決して認めるわけにはいかない家だということ。
主人公のエドゥアルト自身はもちろん、彼の人生に深く関わっていくフランツやマリア・テレジア、フリードリヒ2世といった実在する人物たちもそれぞれ魅力的に描かれていたし、畳み掛けるようなテンポの良さもあってすごく面白かったです。マリア・テレジアに関しては、マリー・アントワネットの母親でオーストリアの女帝だということぐらいしか知らなかったし、フランツに関しても「マリア・テレジアの夫」という認識しかなかったので、そういう意味でも色々と面白かったなあ。エドゥアルトという人間は架空の人物だと思うんですけど、見事に歴史的事実の中に溶け込んでますね。

藤本ひとみさんの本は初めてだったんですけど、いいですねえ。すぐには読めそうにないんですが、柊舎のむつぞーさんに教えて頂いた「ブルボンの封印」もいずれ読みたいと思ってます。やっぱり冒険活劇は大好き。デュマの「ダルタニャン物語」も読みたいな。(文春文庫)

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19世紀初頭のパリ。父の訃報を持ってカナダからフランスに渡ったコリンヌは、祖父であるギイ・ド・ブリクール伯爵に会いに行くのですが、勝手にカナダに出奔して原住民と結婚した息子のことを、伯爵は既に息子とは認めていませんでした。伯爵はコリンヌに、パリの東北東、ライン河岸に立っている古い塔に幽閉されている人物の正体を調べれば、コリンヌを孫娘として認めると言い出します。実は9年前にセント・ヘレナ島で亡くなったというナポレオンが実はまだ生きていて、その塔に幽閉されているという噂があったのです。

「小学校最後の夏休みの冒険譚」みたいなのばかりで、ちょっと飽きがきてたミステリーランドなんですが(失礼)、これはまるで違う西洋史物。しかも冒険活劇。ふわふらのともっぺさんから、「三銃士」や「紅はこべ」が好きならきっと気に入ると教えて頂いたんですが、確かにこれはいい! 楽しかったです。目次からして、第一章「コリンヌは奇妙な命令を受けパリで勇敢な仲間をあつめる」、第二章「コリンヌは東へと馬を走らせ昼も夜も危険な旅をつづける」なんて説明口調。どことなく懐かしくて楽しいし、子供のためのレーベルであるミステリーランドに相応しい良質な作品だと思います。あとがきには、なぜ田中芳樹さんがこういう物語を書こうと思ったのかも書かれていて、その気持ちにもとっても納得。
ナポレオンが生きているという噂は本当か? という大きな謎はもちろん、爵位にも財産にも興味のないコリンヌが、なぜ伯爵の言う通りにするのか、そしてなぜ伯爵がそのようなことをコリンヌにやらせるのかなどちょっとした謎もいくつかあって、それらが全てきちんと解決されるのが気持ち良かったです。そしてコリンヌがパリで見つける3人の仲間も、アレクサンドル・デュマやカリブの海賊、ジャン・ラフィットといった実在の人物なんです。そういう風にきちんとした歴史の中に架空の人物を放り込んで活躍させるような話って大好き。子供には勿論、大人が読んでも十分楽しめる作品です。(講談社ミステリーランド)

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高校2年生の冬、夜中に煙草が吸いたくて堪らなくなった和樹は、雪が降る中をひっそりと外に出て自動販売機へ。しかしその帰り道、通りがかった公園の奥に何かの気配を感じたのです。そこにいたのは真っ白いダッフルコートを着てフードをかぶった1人の女の子。なぜそんな雪の日のそんな時間に女の子が1人で公園にいるのかと不審に思う和樹ですが、「貴方、私が見えるのね?」と言って破顔した少女のペースに巻き込まれて、一緒の時間を過ごすことに。

四日間の奇蹟」を読んでから、ずっと読みたかった浅倉さんの作品。まず雪の情景がものすごく綺麗! きっと浅倉さんの出身地の札幌が舞台なんでしょうね。雪を良く知っている人ならでは、という感じ。そしてその雪の中に現れる少女の存在がとても幻想的~。
そしてそんな幻想的雪景色と対になってるのが、和樹が大学時代や卒業後を過ごすことになる東京。こちらに話が移ってからの展開は、とても現実的。和樹が、自分の適性や世の中の要求を冷静に判断して選択する商業デザインの話もとても面白かったし、めきめきと実力を発揮していく仕事振りとか、自分の仕事に没頭していて他にまるで気が回っていない危うさとか、そんな和樹を巡る会社の人間関係とか、すごくリアル。あくまでも現実的で、何よりも雪の白一色だった故郷と対照的に色彩的に鮮やか。白に始まり、様々な色を経て、そして再び白に戻る物語なんですね。
少女と和樹の会話が、後半になるとちょっと理論的になりすぎて、作品のファンタジックな良さをを少し殺してしまっているかなーとか、鹿嶋美加とのことは、もう少しドラマティックに描かれると思っていたのに!とか、写真家もあれだけ?とか、小さく気になるところはあったんですけど、でも良かったです。「四日間の奇蹟」に比べると、ぐっとくる部分は少なかったんですけどね。雪が降り積もってるのに、とっても暖かい物語でした。(中央公論新社)

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近未来。深刻化していたオゾンホールの問題に対してテレサ・クライトン教授が発明したのは、ウェアジゾンという、大気中のフロン分子と結合してオゾンを破壊する力をなくす化学物質。このウェアジゾンを全世界に散布する計画が、国連によって推進されます。しかしこの物質には、思わぬ副産物がありました。夕焼けや朝焼けといった、空を赤くする光の波長まで散乱させてしまうのです。ウェアジゾンの効果は150年。ウェアジゾンを散布すると、地球から150年もの間、夕焼けや朝焼けが消えることになると分かり、混乱が巻き起こります。

今までのようなノスタルジックでちょっぴり怖い作品群とはがらりと変わったSF作品。環境問題が背景となっていますが、夕焼けというどこかノスタルジックなモチーフが絡んでいるのは朱川さんらしいですね。
国連の計画のために日本にやって来たテレサが知り合うことになる人々とのドラマの積み重ねはさすがに濃やかに描かれているし、オゾン層破壊という問題を取り上げたのはいいと思うんですけど、夕焼けを失うことに対してマスコミを始めとする人々が感情的になっているだけで、それ以上の掘り下げがなかったのがとても残念。最後の結末も、あらら、そう来ちゃいますか...!という感じ。肝心のイエスタデーという人物に関しても、イマイチ良く分からないままだったんですよねえ。うーん。でも読んだ後に改めて夕焼けを見ると、もしこれが見れなくなってしまったら... と、しみじみ考えちゃいました。(角川書店)


+既読の朱川湊人作品の感想+
「かたみ歌」朱川湊人
「さよならの空」朱川湊人
「花まんま」朱川湊人
Livreに「都市伝説セピア」「白い部屋で月の歌を」の感想があります)

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冴えない中学教師の久保が祖父の遺品の中から見つけたのは、明治時代に日本を訪れた著名な女流探険家「I・B」との思い出を綴った、とある青年の手記。久保は、その手記を書いたのは明治時代に通訳ガイドとして活躍した伊藤亀吉ではないかと考え、自分が顧問を務める郷土部の唯一の実働部員・赤堀と共に、この文書を読み解いてみようと考えます。しかしその手記は、途中で終わっていたのです。耕平は伊藤亀吉の孫娘と思われる人物に、協力を求める手紙を出すことに。

CROSS-ROADの瑛里さんにオススメされた本。ここに登場する「I・B」とは、「日本奥地紀行」を書いたイザベル・バードで、手記を書いているとされているのは、実在した明治時代の通詞・伊藤鶴吉(作中では亀吉)がモデルのようです。
いやあ、良かったです。何がいいって、まずこの作品に登場する亀吉の手記が! 久保がカタカナ交じりの古い文を現代文に訳したという設定だし、言ってしまえば下手な翻訳文のような感じなんですけど、明治時代の横浜の雰囲気がすっごく伝わってくるんです。そして伝わってくるといえば、「I・B」と旅をするうちに亀吉の中に芽生えてくる感情も。「I・B」は、20歳の亀吉の倍ほどの年だし、最初は西洋人の女性なんて自分と同じ人間とも思ってなかったようだし、自分の気持ちにもずっと気づかないままなんですが、何とかして「I・B」を笑わせようと頑張ってたりする亀吉青年の姿が、微笑ましくも切なくなっちゃうんです。最後の船のシーンもいいんですよねえ。
そして、その亀吉の手記を研究する久保と郷土部の赤堀真、亀吉の孫娘の田中シゲルという、どこかピントのすれた3人の組み合わせも楽しかったです。この3人のやりとりは何ともほのぼのとしていて、亀吉の手記部分とは好対照。そして最後まで読むと、物語の最初と最後に配置された「彼女」の思いもしみじみと伝わってきて。何層にもなった人々の思いが熱く感じられました。(講談社)

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ポール・ギャリコ2冊。まずは河合隼雄さんの「ファンタジーを読む」(感想)にも挙げられていた「七つの人形の恋物語」。(この表紙がやけに怖いんですが、私が読んだのはこれじゃなくて金子國義さんの挿画による角川文庫版) いやあ、すごく良かったです。ポール・ギャリコの作品はこれで14冊目で、これまでもそれぞれに良かったんですが、最初に読んだ「ジェニィ」と「トマシーナ」がダントツだったんですよね。この「七つの人形の恋物語」はそれ以来のヒットかと。どこがどう良かったのか、言葉にするのがとても難しいんですが...

その物語は、芝居で身を立てようとパリに出てきたものの上手くいかず、今にもセーヌ河に身投げをしようとしていた少女・ムーシュに声をかけたのは、人形芝居一座の赤毛の人形。ムーシュは次々に登場する7つの人形たちと意気投合、その会話は通りすがりの客たちにも受けて、ムーシュはそのまま一座に加わることに。でもその人形たちの操り手であるミシェルは冷酷そのものの男で... というもの。

皮肉や意地悪も言うけど、本質的にはとても優しい人形たち。この人形たちとムーシュとのやり取りが生き生きとしてて楽しいんです。自殺しようとするほど思いつめていたムーシュが、気づけばすっかり癒されてしまっていたほど。最初は、この人形たちが実は生きていたというファンタジーかと思ったんですけど、そうじゃないんですよね。となると、その操り手であるミシェルにも本質的にそういう部分があるんだろうと思うのですが、これが全然。優しさや憐れみなどまるで知らずに育ったミシェルは、ムーシュの純粋さが許せず、何かといえばムーシュに辛く当たります。それどころか、部屋が1つで済めば安上がりだなんて理由でムーシュを陵辱してしまうほど。そこには愛情などまるでなくて、自分が持ってないものを持ってるムーシュを壊してしまいたいという思いだけ。でも、夜、ミシェルがムーシュに冷酷になればなるほど、昼の人形たちはムーシュに優しくなって...
ミシェルの冷酷さが人形たちの優しさを際立たせてるし、逆に人形たちの優しさはミシェルの冷酷さを際立たせていて、でもムーシュには絶えずその両極端の現実に苛まれることになるんです。そして最後の収束。いや、もう、上手く説明できないんですが、「でも、僕らって誰なんだ」という言葉が何とも言えません。

「スノーグース」の方もとても良かったです。ここに収められているのは、「スノーグース」「小さな奇蹟」「ルドミーラ」の3編。どれも決して派手とは言えないんですが、凛とした美しさと静かな強さがありました。大きな愛情を感じる物語。
「七つの人形の恋物語」も「スノーグース」もごくごく薄い文庫本なのに、読むのにものすごく時間がかかっちゃいました。というのは決して悪い意味ではなくて、じっくりと読んだという意味で。矢川澄子さんの訳も良かったんでしょうね。さて、「ファンタジーを読む」の「七つの人形の恋物語」の部分を読み返そうっと。(角川文庫・新潮文庫)


+既読のポール・ギャリコ作品の感想+
「トマシーナ」ポール・ギャリコ
「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ
「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ
「われらが英雄スクラッフィ」ポール・ギャリコ
「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ
「猫語の教科書」ポール・ギャリコ
「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」他2冊 ポール・ギャリコ
「七つの人形の恋物語」「スノーグース」ポール・ギャリコ
「トンデモネズミ大活躍」「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ
「ザ・ロンリー」ポール・ギャリコ
「「きよしこの夜」が生まれた日」ポール・ギャリコ
Livreに「ジェニィ」の感想があります)

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去年「精霊の守り人」「闇の守り人」「夢の守り人」と読み進めていた守り人シリーズ。その後、積読本減らしのために図書館自粛期間に入ってしまって途切れていたのですが、ようやく続きが読めましたー。やっぱりこのシリーズはいいですねえ。決して派手じゃないんだけど、すごく好きです。ハードカバーだし、字が大きいから図書館で借りてるけど、文庫本になってくれたら絶対揃えるのに! そしてバルサとチャグム皇子の出会いから始まったこのシリーズ、どうやらバルサを主人公にした「守り人」シリーズと、チャグム皇子を主人公とした「旅人」シリーズに枝分かれしたようですね。今回4冊積み上げてて気づいたんですが、「守り人」は二木真希子さん、「旅人」は佐竹美保さんがイラストを描くことになったのかしら?
今までは一応1冊ずつで完結してたんですが(「神の守り人」は2冊組ですが)、「蒼路の旅人」は、これだけでは完結していません。というか、ここからまた新たな物語が始まったみたいな感じ。(表紙の色合いがこれだけ違うのも、それを意識してるのでしょうか) この行方がどうなるのか早く読みたい! バルサやタンダも好きなんですけど、チャグム皇子も好きなんですよねえ。
そして守り人&旅人スペシャルサイトなんてものも見つけました。次は守り人の物語が出るそうなんですが、既に「炎路の旅人」という作品も書かれているようで... これに関しては、「読みたいという読者の声がありましたら、いずれ出版する機会もあるかなぁと思っております」とのこと。勿論読みたいに決まっていますとも! ぜひぜひ出版をお願いしたいものです。
2つに枝分かれしたシリーズも、最終的にはまた1つに戻るのでしょうね。これからどのような物語になっていくのか本当に楽しみです。(偕成社)


+シリーズ既刊の感想+
「精霊の守り人」「闇の守り人」「夢の守り人」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「虚空の旅人」「神の守り人 来訪編」「神の守り人 帰還編」「蒼路の旅人」上橋菜穂子
「天と地の守り人」1~3 上橋菜穂子
「流れ行く者 守り人短編集」上橋菜穂子
「バルサの食卓」上橋菜穂子・チーム北海道

+既読の上橋菜穂子作品の感想+
「獣の奏者」1・2 上橋菜穂子
Livreに「狐笛のかなた」の感想があります

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東中島で強盗事件が起こります。被害者は一緒に暮らしている姉妹。妹が刃物で傷つけられていたものの、強奪されたのは現金2万円のみ。しかし姉妹が可愛がっていたチワワも盗まれていたのです。

「狼の寓話」に続く、南方署強行犯シリーズ第2弾。
近藤史恵さんのブログ「むくいぬ屋仮宅」で「犬猫好きの人には、鬱になる内容かも」と書かれてるとは聞いていたのですが、確かにそうでした...。前作もすごーく痛い内容だったんですけど、今回もかなりキツかったです。あんな病気があるなんて、知らなかったよー。あ、知らないといえば、長年動物を飼ってる割に「虹の橋」の話も知らなかったんですけど、検索してみるとものすごい数がヒットしてびっくり。へええ、そうだったんですか。もしかしてものすごーく良く知られてる話だったのでしょうか! でもそういうのを逆手に取る人もいるものなんですね。(怒)
内容的にも、動物の話が人間の話に絶妙にリンクしてる辺りが凄く良かったんですけど、あとがきに、動物絡みの事件というのは、動物が嫌いな人間よりもむしろ動物好きの人間のせいで起きると書かれていたのが痛かった。そうなんですよねえ、動物嫌いの人って、ものすごい迷惑でも掛けられない限り、自分から動物には関わろうとはしないですものね。一般の飼い主以外にも、動物愛護団体のボランティアをしてる人間とか、ブリーダーとか、他にも色んな立場の人が出てきて、もうほんと色々考えさせられちゃいます。動物が好きで、しかも最初は善意から始まってることだけにやり切れない...。(徳間ノベルス)


+シリーズ既刊の感想+
「南方署強行犯係 狼の寓話」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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1954年、1955年に中央公論社から出版された「犬」「猫」を底本として、新たにクラフトエヴィング商會の創作・デザインを加えて再編集したという本。素敵な装幀に、古い文体のエッセイや小説が良く似合います。

作品自体もいいんですけど、それよりもここに収められているエッセイや小説を通して、今と当時のペット事情の違いが分かるのが面白かったです。猫に関しては、人間の生活の変化に伴って多少影響を受けてる程度だと思うんですが、犬に対する考え方が今と当時では全然違う! まず一番驚いたのは、当時、純潔種志向がとても強かったということ。作家さんたちの飼い犬は、テリアだのコリーだのグレーハウンドだのポインターだのセッターだの、血統のはっきりしてる犬ばかり。雑種を歓迎してるのなんて、自ら「名犬嫌い」と称する徳田夢聲ぐらい。でもその徳田夢聲にしても、「雑種=駄犬」って言い切ってるんですよね。どのエッセイや小説を見ても、当たり前のように「雑種=駄犬」とされてるのがなんかイヤ...。川端康成に至っては、「純血種を飼ふことは、愛犬家心得の一つである」とまで言い切ってるし。「純血種=純潔」という考え方って、一体どうなんでしょ。猫に関しては、そんなこと全然言われてないのになあ。まだ純血種があんまり入って来てなかっただけなのかなあ。(谷崎潤一郎がペルシャ猫を飼ってるぐらいなのだ)
しかも犬の扱いが粗悪すぎ。悪いことをすると棒でしたたか殴られてたり、食事もひどかったり... あと、当たり前のように放し飼いしている家が多いんですよね。そして今は野良犬の姿を見かけることの方が珍しいですけど、この頃は野良犬を狩る「犬取り」がいて、可愛がってる犬を連れて行かれそうになる場面も... なんか色々とびっくりでした

「犬」の巻末には「ゆっくり犬」、「猫」の巻末にはThinkもちらりと登場してます♪ (中央公論新社)


+既読のクラフト・エヴィング商會の感想+
「アナ・トレントの鞄」クラフト・エヴィング商會
「犬」「猫」クラフト・エヴィング商會プレゼンツ
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

+既読の吉田篤弘作品の感想+
「百鼠」吉田篤弘
「78」「十字路のあるところ」吉田篤弘
「という、はなし」吉田篤弘
「空ばかり見ていた」吉田篤弘
「それからはスープのことばかり考えて暮らした」吉田篤弘
「小さな男*静かな声」吉田篤弘
Livreに「フィンガーボウルの話のつづき」「つむじ風食堂の夜」「針がとぶ」の感想があります)

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広告やポスター、ポストカードの仕事から、本の挿画を手掛けるようになり、オペラ「魔笛」の美術監修、映画「アメリ」にも参加と世界を広げたミヒャエル・ゾーヴァが、自作や自分自身について語った本。というか、文章は多いのですが、やっぱり画集ですね。未発表のものを含めて45点の作品が収められています。本当は私自身、ゾーヴァ本人のことはそれほど興味はなかったのだけど、でもやっぱり人となりや仕事のことなど色々分って興味深いですね。(文字の大きさや行の間隔の具合が、どうも読みにくくて堪らなかったんだけど)
「アメリ」は私も観ましたが、アメリの寝室の絵だけでなく、部屋に置かれたランプや、少女時代のシーンに登場する「病気のワニ」もゾーヴァが作ったものだったとは知らなかったですー。

ゾーヴァの絵には動物が多いのが1つの特徴だと思うんですが、それは「風景に付け足しで描いてみたら思いがけずドラマが生まれて面白かった」のがきっかけなんだそうです。人間を描くと、どうしても物語が気になってしまうのだけれど、人間を描くところをあえて動物に置き換えてみると、人間を描く場合よりもシリアスになりすぎなかったとか。擬人化もないわけじゃないんでしょうけど、でもそれほどはっきり擬人化してるわけじゃなかったようですね。や、動物でも、十分に物語を感じさせる絵だと思うんですけど...。(笑)
巻末には、「ちいさなちいさな王様」を始めとして色々な作品で組んでいるアクセル・ハッケの「ゾーヴァのついて」も。ハッケによると、ゾーヴァは「上塗り家」。「税金の申告書」を理由になかなか仕事を引き受けようとせず、引き受けた後も、庭の木を植えなくちゃとか鉢植えを買いに行かなくちゃとか家の用事を理由に言い訳したり、絵を描いては気に入らずに10回ほど上塗りしてしまって、挙句の果てにその本とはまるで関係ない絵が出来上がってしまったり... ゾーヴァと一緒に仕事をするというのは、なかなか大変なことのようです。(笑) (講談社)


+既読のミヒャエル・ゾーヴァ作品の感想+
「キリンと暮らす クジラと眠る」アクセル・ハッケ ミヒャエル・ゾーヴァ
「ミヒャエル・ゾーヴァの世界」ミヒャエル・ゾーヴァ

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退屈姫君の新作が...!ということで、早速読もうと思ったのですが、そういえば風見藩絡みの「おんみつ蜜姫」もまだ読んでなかったのを思い出して、せっかくなので合わせて読んでみました。
「おんみつ蜜姫」の時代は8代将軍吉宗の治世。蜜姫は九州豊後の小藩のお姫さまで、退屈姫君の時代からすると、風見藩の先々代藩主に当たる時羽光晴と結婚することになるので、およそ70年ほど遡ることになります。(退屈姫君は、10代将軍家治の頃)
父が刺客に狙われ、それが将軍吉宗の放った刺客だと思い込んだ蜜姫が、藩を出奔して大活躍。幕府転覆の陰謀あり、忍びの暗躍あり、海賊騒ぎあり、諏訪湖に眠る武田の軍用金ありと盛りだくさんのストーリーで、相変わらずの軽妙な語り口と、味のある登場人物たちの会話が楽しい作品です。特に吉宗と大岡越前の会話が、まるで「大岡越前」か「暴れん坊将軍」でも見てるようで可笑しいんですよね。しかも、時羽光晴がなんであんな変な決まり事を作ったのかずっと不思議に思ってたんですが、ようやく謎が解けました♪

そして「退屈姫君恋に燃える」は、前作「退屈姫君海を渡る」(感想)の続編。確か「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」「面影小町伝」で3部作になってたと思うんですけど、いつの間にか「退屈姫君シリーズ」になってたんですね! やっぱりめだか姫、可愛いですものねっ。まだまだ続編が期待できそうで嬉しいな。
今回のタイトル「恋に燃える」で、「えっ、めだか姫が恋...?!」とびっくりしたんですが、恋は恋でも、めだか姫自身の恋ではありませんでした。(ほっ) 大名のお姫さまと風見藩の冷飯の青年の恋です。めだか姫が絡んできたことから、田沼意次に睨まれることになって... やっぱりこのシリーズは田沼意次との対決も欠かせないですね! で、またしても無理難題をふっかけられて、さあ大変。
田沼意次に関しては「退屈姫君伝」の時の方が生彩があったように思うし、無理難題の解決もその時の方が鮮やかだったと思うんですが、でも今回はめだか姫の姉の猪鹿蝶三姉妹が、頑張ってくれてます。ものすごい姉さんたちでした。

今回のこの2冊も、ほんと楽しかったです。楽しい時代物といえば、これと畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズが双璧ですね。やっぱり米村圭伍さんの時代物は大好き。未読の作品も全部読もうっと。(新潮社・新潮文庫)


+既読の米村圭伍作品の感想+
「退屈姫君 海を渡る」米村圭伍
「おんみつ蜜姫」「退屈姫君恋に燃える」米村圭伍
「紀文大尽舞」米村圭伍
Livreに「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」「面影小町伝」の感想があります)

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叔母の死によって久美が引き取ることになったのは、家宝だというぬか床。これは元々は長女だった久美の母が世話していたもので、久美の両親が亡くなった時に叔母が引き取っていたのです。叔母のマンションに引っ越し、ぬか床の世話を始めた久美ですが、1週間ほどするとぬか床の中に卵のようなものができ、そのうちにそこから不思議な少年が生まれて...。

前作「ぐるりのこと」に書かれていた「境界線」に関する話を、物語にするとこうなるのだなというのが良く分かる作品。ぬか床みたいな所帯じみたモチーフからでも、こんな風にファンタジックな話が出来るんだというのがびっくりでした。しかもそこからどんどん発展して、話はすっかり壮大なスケールへと。...読み心地は良かったし、最後まで引き込まれて読んだんですけど、私としては、最初の路線のままでいって欲しかったなあというのが正直な感想。梨木さんとしては、ラストのあの展開こそが、描きたかった物語なんでしょうけれど。
あと、「かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話」というのが3回間に挟まれてるんですが、これはどう読めば良かったのでしょう。これはまるで異世界ファンタジー。久美の一族のルーツに深く関わっているのだろうということは分かるんですけど、一読しただけでは、今一つ明確に掴みきれなかったです。(新潮社)


+既読の梨木香歩作品の感想+
留守中に読んだ本(18冊)(「ぐるりのこと」の感想)
「沼地のある森を抜けて」梨木香歩
「水辺にて」梨木香歩
「ミケルの庭」「この庭に 黒いミンクの話」梨木香歩
Livreに、これ以前の全作品の感想があります。

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おかぼれもんのpicoさんが、たらいまわし企画・第16回「美味しそうな食べ物が出てくる本は?」で挙げてらした「御馳走帖」と(その時の記事はコチラ)、その時に「猫飼いには必須項目」だと教えて頂いた「ノラや」です。
「御馳走帖」は、食べ物に関する話ばかりぎっしり詰まったエッセイ。食べたい物ばかり78品目も並べ挙げた「餓鬼道肴蔬目録」が圧巻だと伺っていたんですけど、確かに!  「じゆん、じゆん、じゆんと焼け」た油揚げに、すぐにお醤油をかけると「ばりばりと跳ねる」様子もほんと美味しそうだったし、あと、百閒先生の郷里では沢庵のことを「かうこ」と言うんだそうです。「おかうこ、かりかり、お茶漬けさぶさぶ」、美味しそう!
そして特に面白かったのが「百鬼園日暦」。晩酌にも、百閒先生ならではの姿拘りがあるんですね。これが、美味しいお酒なら何でも、っていうわけでもなく... 飲むのは決まって、月桂冠の壜詰か恵比寿麦酒。麒麟麦酒は味がするからダメ。毎日一定の味がすることが大切なので、「特にうまい酒はうまいという云う点で私の嗜好に合はなくなる」んですって。銘酒の生詰を貰った時も、「利き酒としての話なら褒め上げるに吝かではないが、私の食膳には常用の味と違ふと云う点でその銘酒は失格」、そして即料理酒へと... うわー、勿体ない... いや、百閒先生、これだけ食への情熱がありながら、普通の美食家とはまた少し違うところがいいです。いかにも偏屈そうなのに、何ともいえない愛嬌が感じられる文章も素敵。

そして「ノラや」の方は、猫エッセイ。ひょんなことから、ご飯をあげるようになった野良猫の子に「ノラ」と名づけた百閒先生。でも1歳半ぐらいの頃、出かけたきり帰って来なくなっちゃうんですよね。それからが大変。新聞に猫探しの広告を出したり、近所の販売店に折り込み広告を入れてもらったり、外人用に英文のも作ったり... それぞれにかなりの反響があるものの、ノラはなかなか帰って来なくて。
猫は特に好きじゃなかったはずの百閒先生ですが、毎日泣き暮らしてます。これが比喩ではなく、本当に嗚咽してるんです。ちょっと尋常じゃない嘆きぶり。でも気持ちはすごーく分かります...。うちの猫は基本的に家猫だから滅多に外には出さないんですけど、それでも祖母の家にいる時なんかは、どんなところから外に出られるか分からないんで、時々探し回ることになるんですよね。大抵は、名前を呼んでるうちに欠伸まじりに出てくるんですけど、なかなか出てこないとほんと不安になるし、これで外に行ったっきりになっちゃったら、ほんとどうしたらいいか分からないかも... 子供のみたいに泣き続けてる百閒先生の姿が、なんだかとっても身近な人のように感じられました。(中公文庫)


+既読の内田百閒作品の感想+
「夢十夜」「冥途」「猫町」
「ノラや」「御馳走帖」内田百閒

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インドで生まれ育ったメアリは、いつも不機嫌そうな表情をした可愛くない少女。両親にまるで構ってもらえず、インド人の乳母に任されっ放しとなった結果、すっかり我儘娘に育っていました。しかし突然のコレラの流行によって両親は亡くなり、メアリはイギリスのヨークシャーに住む叔父に引き取られることに。叔父は最愛の妻を失って以来、何事にも無関心。広大な屋敷の部屋も、ほとんどが閉め切られ、かつて叔父の妻が丹精していた美しい庭も、10年間締め切られたままだったのです。

岩波少年文庫再読計画第12弾は、以前から再読したいなあと思っていた「秘密の花園」。この作品を書いたバーネット夫人は「小公子」「小公女」の方が有名で、「秘密の花園」は読んでないという方も多いようなんですが、でもこれもすっごくいい作品。この3作の中では、私はこの「秘密の花園」が一番好きかも。「小公子」も捨てがたいんだけど...(「小公女」だけは、私の中で少し落ちます(^^;)

主人公のメアリは、「小公子」のセドリックや「小公女」のセーラと違って、ものすごーくイヤな子。人に奉仕してもらうのが当然だと思い込んでるし、気に入らないことがあったらすぐ癇癪を起こすし... でもそれって、彼女の両親がまるで彼女に構ってあげなかったからなんですよね。父親は仕事が忙しく病気がちで、母親はパーティにしか興味がない人間。そんな人たちが子供なんて作るなッ...!と言いたくなっちゃいます。(大人になった今だからこその感想かしら) でもそんなメアリでも、ヨークシャーに来てからだんだんと変わり始めて、その成長物語が本当に清々しいんです。それにメアリが変わるにつれて、その影響が周囲にも出て、最終的には大人や屋敷全体も変えちゃう。実はとても大きな「生きる力」を描いた物語だったんですね。
子供の頃読んだ時は、広い屋敷の探検に憧れたし、ムーアや秘密の花園の情景にドキドキしたんですが、今回はむしろ人間の方に目がいきました。特に印象的だったのがディコン。ディコンのお姉さんでメイドのマーサの率直さも気持ちがいいし、マーサやディコンのお母さんの包み込むような愛情の暖かいこと... それほど出番は多くないのに、すっかり場を攫ってくれました。そして子供の頃に読んだ時ほどメアリが嫌な子に感じられなかったです。彼女なりにすごく必死なのが伝わってきて、読んでいて応援したくなっちゃいました。(岩波少年文庫)

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5年前に離婚した夫にしつこくつきまとわれ、思わず殺してしまった花岡靖子。その時靖子に声をかけたのは、アパートの隣室に住む高校の数学教師・石神でした。石神は自分に任せておけば全てが上手く行くというのですが...。

「探偵ガリレオ」「予知夢」に引き続き、湯川学と草薙刑事の登場する作品。でもこれって単純にシリーズ物と言ってしまっていいのでしょうか! これまでの2作品は湯川の物理の知識を生かした、いわば理科の実験を見てるような楽しさのある連作短編集だったんですけど、この作品は雰囲気がまた全然違うんです。本格ミステリでありながら、純愛小説。
アリバイは完璧なのに、靖子を疑い続ける警察。そして警察の先手を打って着実にコトを進める石神。実はこの石神、かつては50年か100年に1人の逸材とも言われた数学の天才で、湯川学とは、帝都大学の同期だったんですねー。まず、この2人の頭脳対決が見もの。コトの真相には、びっくり。でもそういうミステリ的部分よりも、石神の純愛の方が印象的でした。客観的に見て、靖子は石神がそこまで惚れこむほどの女性とは思えなかったんですが、でも石神にとって、そんなことはどうでも良かったんでしょうね。彼のダルマのような体つきと無表情な顔の奥に隠された深い感情... 最後の慟哭は切なかったです。(文藝春秋)


+シリーズ既刊の感想+
「探偵ガリレオ」「予知夢」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「容疑者Xの献身」東野圭吾

+既読の東野圭吾作品の感想+
「ちゃれんじ?」東野圭吾
「さまよう刃」東野圭吾
「黒笑小説」東野圭吾
「さいえんす?」東野圭吾
「夢はトリノをかけめぐる」東野圭吾
「赤い指」東野圭吾
「たぶん最後の御挨拶」東野圭吾
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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今回の「セ・シーマ」の「名探偵夢水清志郎の謎解き紀行」は、なんとオリエント急行が舞台。トルコのイスタンブールからフランスのパリまで列車の旅をするというのです。早速イスタンブールへと飛ぶ夢水清志郎。そして同じ列車に乗ることになったのは、怪盗クイーン、探偵卿、海賊、トルコの犯罪組織・黒猫の双子の兄妹... 残念ながら、今回岩崎三姉妹は留守番です。

今回は名探偵夢水清志郎(教授)と怪盗クイーンが共演なんですが、なんと挿絵も共演です。村田四郎さん描かれる教授と、K2商会さん描かれる怪盗クイーンが表紙に! ...なのですが、あまりの違和感のなさに、最初全然気付かなかった私... 私の目って変?!
可笑しかったのは、教授とクイーンが季節の贈り物をする間柄だったってこと。クイーンのカリブ海クルージングのお土産のお返しに教授が送ったのは、コタツやみかん、綿入れ半纏などが入った「日本の冬気分セット」ですって。半纏を着てコタツに入ったクイーン、機嫌よく手作りおでんなんかも用意しちゃいます。ま、それがまたジョーカーを怒らせることになるのですが...。
結果としては引き分けなんですけど、どうも印象としては教授の方がいいとこが多かったような気がします。クイーンはジョーカーにこっぴどく叱られるし、1人トルバドゥール号出て行っても誰にも心配してもらえないどころか... だし、変装をあっさり見抜かれてしまったりもするし... 逆に、いつもは暇さえあれば意地汚く食べている印象の教授(今回もかなり食べてますが!)、なかなかかっこ良かったです。でも岩崎三姉妹がお留守番で、出番がほとんどなかったのが残念。次回はぜひみんな一緒で! (講談社青い鳥文庫)


+シリーズ既刊の感想+
ブログにはこれ以前のシリーズ作品の感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「都会のトム&ソーヤ2 乱!RUN!ラン!」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦(ミッション)終了?」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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昨日に引き続き、ファンタジー系のブックガイドとなるような本です。今回は、臨床心理学者だった河合隼雄さんの著書。

「猫だましい」は、「トマシーナ」(感想)の解説が河合隼雄さんだったことから知った本。猫だましいとは、猫「たましい」と「だまし」を掛けたタイトルとのこと。本当はこの「猫だましい」の方が本命で、「長靴をはいた猫」、「空飛び猫」、「100万回生きたねこ」、「こねこのぴっち」、「トマシーナ」、「猫と庄造と二人のおんな」、その他モロモロ昔話に登場する猫の話から「綿の国星」まで、古今東西の猫の話が登場して、きっとすごく楽しめるだろうと思ってたんですけど... うーん、「ファンタジーを読む」を先に読んだせいか、少し霞んでしまいました。「ファンタジーを読む」の方が、1つ1つの作品に対する掘り下げが丁寧で、「そうだったのか!」が色々とあって面白かったです。

その「ファンタジーを読む」は、お馴染みのファンタジーの名作13冊に、心理療法家としての観点から新たな解釈が加えられたもの。13冊中、私の既読は9冊。あらすじが丁寧に紹介されているので、未読でも全く困らないんですが... やや丁寧すぎるきらいもあるので、やっぱり実際に自分で読んでからの方がいいかも。未読の4冊には、近々読もうと思っていた「七つの人形の恋物語」(ギャリコ)も入っていて、それを読んでからにすれば良かった... とちょっぴり後悔しました。
でも知ってる作品については、「そうか、そうだったのか」がいっぱい。特に「マリアンヌの夢」と「人形の家」、「ゲド戦記」には、納得できる部分が色々とあって良かったです。そして「北風のうしろの国」(マクドナルド)のところで出てきた、「ファンタジーが深くなる、あるいは、無意識界への下降が深くなると、それはきわめて死と近接したものとなる」という言葉にも、なるほど!でした。
でもリンドグレーンの「はるかな国の兄弟」については、もう少し書いて欲しかったかな...。これは私も子供の頃読んで、挿絵は綺麗だし物語は幻想的だし、大好きな作品だったんですが、子供心に色々な「不思議」が残ってしまっていたんですよね。この本では、その「不思議」は解消されず仕舞いのまま。(いつかこの「不思議」が解消される日は来るのかしら?)

そしてこの「ファンタジーを読む」と対になるような、「子どもの本を読む」という本もあったんですね。知らなかった。こちらもぜひ読んでみたいです。(新潮文庫・講談社プラスアルファ文庫)


+既読の河合隼雄作品の感想+
「猫だましい」「ファンタジーを読む」河合隼雄
「子どもの本を読む」河合隼雄

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ファンタGメン'05編集の「次の一冊が決まらない人のためのファンタジーブックガイド」と、石堂藍さんの「ファンタジー・ブックガイド」。次の1冊が決まらないなんてことないし、むしろなるべく次の1冊を増やさないようにしてるんですが(笑)、こういう本って好きなんですよね... で、「次の1冊」がどどんと増えました(^^;。

「次の一冊が決まらない人のための~」の方は、「ハリー・ポッター」でファンタジーにハマってはみたものの、作品数が多すぎてどれを次に読んだらいいのか分からない、という人のためのブックガイド。全部で40作品が紹介されてるんですけど、比較的最近の作品ばかりですね。古典的な名作っていうのは全然なくて、私が既読なのは5冊ぐらい。読んでても今ひとつそそられなかったです...。選ばれてる作品自体は悪くないんでしょうけど、どこか作為的に感じられてしまって。選考委員の人は50冊ぐらい渡されて、その中から40冊選んだんじゃないかしら、なんて思っちゃう。本当にファンタジーが好きで好きで、という姿勢があまり感じられなかったのも残念。でも、確かに「ハリー・ポッター」でファンタジーに出会って次の1冊、と思ってる人にはすごく役に立つ本なのではないかと思います。そういう意味では題名通りの本かと。(「次の一冊が決まらない人のためのファンタジーブックガイド」ファンタGメン'05編集・ブックマン社)

対する石堂藍さんの「ファンタジー・ブックガイド」の方は凄いです。こちらは読みたい本が後から後から出てきて、もう大変。実際、私が好きな作品も沢山紹介されてるし、読んでみたいと思ってる作品も多いし、とにかく沢山読んでらっしゃって詳しいんです。しかも「あまり好きではない」と書いてらっしゃる部分にも同感できたり... グ○ンサ○ガも、同じぐらいで挫折してらっしゃるし。(笑) やっぱり好みが合うって大切ですよね。ブックガイドでも書評サイトでも。それにブックガイドを作るなら、このぐらい造詣の深い人であって欲しいです~。
「遥かな異世界と神話的世界」「とびらの向こうは別世界」「日常の中の不思議」...などジャンルに分けられてるので、好みの作品が探しやすいですし、「異世界」「剣と魔法」「神話」「アーサー王」など、色んなファンタジー的キーワードで書かれたコラムでもかなり紹介されているのが嬉しいです。紹介されている本は、全部で400タイトルにも上るようですね。一体どうやったら、こんなに沢山読めるのかしら!
あまりに沢山紹介されているので、初心者向けではないかもしれないんですが(どれを選ぶか迷っちゃいそう)、ファンタジーのブックガイドとしてはすごくオススメ。本の装幀も素敵だし、この充実度で1800円なら安いです。(「ファンタジー・ブックガイド」石堂藍・国書刊行会)

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通いの女中をしている生粋のロンドンっ子、ハリスおばさんが主人公のシリーズ。長いこと絶版になっていて、つい最近復刊されました。表紙のイラストが可愛いです~。
最初の「ハリスおばさんパリへ行く」は、庶民中の庶民というおばさんが、お得意先のレディ・ダントの家で見たディオールのオートクチュールを見て、自分も最高級のドレスを手に入れたくなっちゃうというお話。今まで衣料品に5ポンド以上使ったこともないというおばさんが、なんと350ポンドとか450ポンドとかするドレスを買おうっていうんですから、もう大変。懸賞でちょっとお金を当てたんだけど、まだ全然足りなくて、2年間の爪に火をともす節約生活の末、無事パリへ! でもコクニー訛りで、見た目もまるっきり庶民のおばさんのこと、ディオールの店に辿り着いても門前払いされそうになるし、ようやくサロンに入れてもらっても、隣の席の夫人が騒ぎ出す始末。でも暖かい人柄と、明るく前向きな姿勢が魅力のハリスおばさん、知らず知らずのうちに、悩んでる人たちを笑顔にしてくれるし、ハリスおばさんと友達になった人たちには、それぞれに幸せが訪れるんですねー。そして、めでたしめでたし。
なあんて、まるでおとぎ話みたいなシリーズなんですが、毎回ほろ苦い出来事も織り交ぜられて、おとぎ話でも現実は結構厳しいのよ!と言われてるみたい。ギャリコの作品って、その辺りのバランスがやっぱり絶妙なんじゃないかなと思います。時にはくじけたりもするけれど、それでも可愛いハリスおばさんのシリーズ。楽しかったです。(fukkan.com)


+既読のポール・ギャリコ作品の感想+
「トマシーナ」ポール・ギャリコ
「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ
「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ
「われらが英雄スクラッフィ」ポール・ギャリコ
「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ
「猫語の教科書」ポール・ギャリコ
「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」他2冊 ポール・ギャリコ
「七つの人形の恋物語」「スノーグース」ポール・ギャリコ
「トンデモネズミ大活躍」「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ
「ザ・ロンリー」ポール・ギャリコ
「「きよしこの夜」が生まれた日」ポール・ギャリコ
Livreに「ジェニィ」の感想があります)

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加納朋子さんのデビュー作「ななつのこ」の作中作が、とうとう本物の絵本になりました~。挿画は、「ななつのこ」の文庫など、加納朋子さんの作品でお馴染みの菊池健さん。(そういえば「ななつのこ」のハードカバーの表紙って見たことがないんですが... こちらも菊池健さんなのでしょうか?)
「ななつのこ」を読んだ時に私が一番惹かれたのは、何といっても「あやめさん」だったので、この絵本が読めてほんと嬉しい! 読むにつれて、「ななつのこ」のそれぞれの物語が思い出されて懐かしかったです。あ、でも、おかあさんが小さな息子に語る物語という形式は、正直意外でした。びっくりびっくり。そして最後まで読んでみて... これってもしかして... いや、もしかしなくても... ネタバレ反転(このお母さんは未来の駒子)ってことでしょうか?!
挿画もほんわりと優しくて、物語の雰囲気にぴったり。それぞれの場面は「昭和」の懐かしい雰囲気を思い起こさせてくれますし、話を聞いている「はやて」の子供部屋も居心地が良さそう~。これは、この絵とこの物語、どちらが欠けても成り立たない絵本でしょうね。(東京創元社)


+既読の加納朋子作品の感想+
「てるてるあした」加納朋子
「ななつのこものがたり」加納朋子
「モノレールねこ」加納朋子
「ぐるぐる猿と歌う鳥」加納朋子
Livreに、これ以前の全作品の感想があります。

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これだけ表紙を並べると、圧迫感がありますね...(^^;。
1巻2巻は、摂関藤原家に繋がる武門の出ながらも、父の代から奥六郡にほど近い亘理に退けられていた藤原経清が主人公。3巻4巻はその忘れ形見・清丸(藤原清衡)の、そして5巻は清衡の曾孫に当たる藤原秀衡の物語。私は見てないのですが、以前NHKの大河ドラマになってるので、ご存知の方も多いかもしれませんね。同じく高橋克彦氏の「火怨」(感想)「天を衝く」(感想)と並んで陸奥三部作と呼ばれる作品。どうやらこの「炎立つ」が一番最初に書かれたようです。
陸奥三部作の1つとして、これも面白かったです。でも、ちょっと長かったかな...。

この中で一番魅力的だったのは、1~2巻で主人公だった藤原経清。すごくかっこ良かったです。しかも彼と源義家の関係が、ちょっぴり「火怨」の阿弖流為と坂上田村麻呂みたいでもあるんですよ。(あそこまでではないですが) なので、経清の代の終わり頃は辛かった... 続く3巻4巻は、不遇の環境にあった清衡を義家が助けて家を再興させる話なので、これも普通に面白いです。でも、ここで話はすっかり終わったような気がしてしまうんですよね。
5巻では源義経や弁慶が活躍するのですごく楽しいんですが(頼朝はやっぱりヤなヤツだ!)、こんな風に繋げて書く必要はあったのでしょうかー。平泉の藤原三代の栄華の祖が藤原経清であったと、言いたいのは分かるんですけど、これは独立させても良かったような。 ...と思いながら読んでたんですが、最後まで読み終えてみると、これで良かったのかもしれないなあ、なんて思ったり...(^^ゞ

「天を衝く」の九戸政実みたいに、何をやらせても超人的にずば抜けてるということもなく... あれはあれで爽快で好きなんだけど...(笑) 強さも弱さもある蝦夷たちの存在がとても人間的でした。途中何度かダレたし、↑上にもなんか混乱したことを書いてますが(^^;、やっぱりこれも良かったです。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」1~3 高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「闇から招く声」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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ある朝、とある編集者の家に届けられていたのは、"£YE SUK@NT MUWOQ"などという文字と記号が入り混じった文章の不思議な原稿。タイプされた分厚い原稿の束が、玄関の外に置かれていたのです。まるで読めない原稿に困った彼は、戦争中暗号解読をしていたこともある友人のポール・ギャリコのところに、その原稿を持っていくことに。

猫による猫のためのマニュアル本。「人間の家をのっとる方法」に始まり、人間について詳しく解説し、その家での居心地を良くするためには、どうやって人間を躾ければいいのか、人間を篭絡するために必要な行動や、魅力的な表情の作り方など、その猫が実際に家をのっとった時の経験を踏まえて細かく書かれています。
この猫の口調が冷静で、しかもすごく的確なんですよ。説得力たっぷり。私はまだ猫の飼い主初心者ですけど、それでも「うわー、分かる分かる」という部分が多くて可笑しかったです。これは長年猫を飼ってる方は、きっともっとそう感じるんでしょうね。
うちも「猫を飼ってる」という意識でいたんですけど、実は猫に躾けられているのかも...?(笑)

そしてこれほどの原稿を猫がどうやって書いたかといえば、軽く触れるだけで文字が打てるタイプライターによるものでは? とギャリコは考えてます。カメラマン夫婦に飼われているツィツァという猫が書いたのではないかというところまで推理。で、この本の表紙は、実際にツィツァがタイプライターを触ってる写真なんですよ。こんなのを見せられたら、本当にそうかも~って思ってしまいますよね。(笑)
巻末には、大島弓子さんのあとがき代わりの書き下ろし漫画もあります(^^)。(ちくま書房)


+既読のポール・ギャリコ作品の感想+
「トマシーナ」ポール・ギャリコ
「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ
「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ
「われらが英雄スクラッフィ」ポール・ギャリコ
「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ
「猫語の教科書」ポール・ギャリコ
「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」他2冊 ポール・ギャリコ
「七つの人形の恋物語」「スノーグース」ポール・ギャリコ
「トンデモネズミ大活躍」「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ
「ザ・ロンリー」ポール・ギャリコ
「「きよしこの夜」が生まれた日」ポール・ギャリコ
Livreに「ジェニィ」の感想があります)

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バレエで有名な「くるみ割り人形」の原作。子供の頃にも読んだことがあるはずなんですが、改めて読んでみるとバレエとはかなり雰囲気が違っていてびっくり。バレエでは、クリスマスプレゼントに貰ったくるみ割り人形がネズミを戦っているのを見たクララが、思わず加勢に入ってくるみ割り人形側が大勝利。人形の国に連れて行ってもらえる... というストーリーですよね。で、全てが終わってみると、クリスマスの夢だった... って感じだったかと。
原作も確かに大筋ではそうなんですが... でも終始「夢の世界~」なバレエとは違って、もっと生々しく現実が迫ってくる感じなんです。最初にネズミとくるみ割り人形が戦う場面なんて、マリー(原作ではクララじゃなくてマリー。クララはマリーの持ってる人形の名前)も実際に怪我をして血を流して倒れてたりするし、親はマリーの再三の話を聞いて、そのたびに「夢をみたのね」と言うんだけど、実は夢オチではなく... なんだか思ってた以上に不気味な話でした。えっ、こんな終わりでいいの?! 状態。
あ、でも人形の国の描写はとっても素敵です。氷砂糖の牧場、アーモンド・干しぶどうの門、麦芽糖の回廊、大理石のように見えるクッキーの敷き詰められた道、オレンジ川にレモネード川、ハチミツクッキーの村、キャンデーの町、コンポートの里、お菓子の都... もう読んでいるだけでも、いい香りが漂ってきそう。美味しそうです~。(岩波少年文庫)


+既読のホフマン作品の感想+
「クルミわりとネズミの王さま」ホフマン
「悪魔の霊酒」上下 ホフマン
「黄金の壷」「スキュデリー嬢」 ホフマン
「ホフマン短篇集」ホフマン
「黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ」ホフマン

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去年の復活祭の日、ホーゲルマン家に突然現れたのは、50cmぐらいの、きゅうりのようなかぼちゃのようなものに顔や手足がついて、金の冠をかぶっている王さま、トレッペリーデ2世。これまでずっと家の地下室に住んでいたのですが、反乱がおきて家来たちに見捨てられたため、台所に避難してきたというのです...

岩波少年文庫再読計画第10弾。現代ドイツのファンタジーです。
ドイツ児童文学賞を受賞したという作品なんですけど、肝心のきゅうりの王さまがあまりに可愛げがなくてどうにも...(^^;。
でもきゅうりの王さまなんて奇妙奇天烈な存在が登場するんで、一見ファンタジーっぽいんですけど、これはものすごーくリアリティのある話でした。いかにも家長っぽく、家族のことは全て仕切りたがる父親だけが、きゅうりの王さまの世話を甲斐甲斐しく焼くんですけど、他の面々はそういう父親をすごく冷めた目で見てて、むしろ追い出そうと頑張ってるんですよね。きゅうりの王さまというのが、父権を象徴しているんでしょう。なんだか、お父さんの姿が哀れでもあり可笑しくもあり... でした。
こういう作品は子供の頃に読んだ方がいいんだろうな。(岩波少年文庫)

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彩雲国物語8冊目。いやー、今回も色々ありました。前巻同様、読み終わった途端、また最初から読み直してしまったわ。
このシリーズは順番に読まないと意味がないし、ここであらすじを書いても仕方ないので割愛しますが... 「華娜」って、やっぱり「華佗」から来てるのね~(ニヤリ)とか、いつの間にかあんな交渉術を身につけちゃって秀麗すごいじゃんとか、王様も辛いところよね~とか、そういうのもあったんですが、今回の私的ポイントは以下3点。

 ・世界の中心で愛を叫びながらも、なかなか伝わらない紅黎深、やっぱりイイ!(笑)
 ・80歳を超えて未だ現役官吏として敏腕をふるい続けている黒州州牧・櫂瑜さま、素敵~。(はぁと)
 ・やっぱり影月には、なんとしてでも幸せになってもらいたい~。(切実)

さて、影月編は次で完結とのこと。...ということは、影月編以外は完結じゃないってことですか?でも表紙の「トリ」ってあるんですけど... 少なくとも、紅、黄、紫、茶、黒、白、藍ときて、次で8色が全て揃っちゃうんですよね。でもあと1冊じゃあ、到底全ての収拾をつけることは不可能かと思われ... とりあえず1部完ってとこでしょうか。(ドキドキ) 
何はともあれ、次巻も楽しみ! ああ、ほんとに大好きです、このシリーズ。(角川ビーンズ文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「彩雲国物語 はじまりの風は紅く」「彩雲国物語 黄金の約束」雪野紗衣
「彩雲国物語 花は紫宮に咲く」雪乃紗衣
「彩雲国物語 想いは遙かなる茶都へ」雪乃紗衣
「彩雲国物語 漆黒の月の宴」雪乃紗衣
「彩雲国物語 朱にまじわれば紅」雪乃紗衣
「彩雲国物語 欠けゆく白銀の砂時計」雪乃紗衣
「彩雲国物語 心は藍よりも深く」雪乃彩衣
「彩雲国物語 光降る碧の大地」雪乃紗衣
「彩雲国物語 藍より出でて青」雪乃紗衣
「彩雲国物語 紅梅は夜に香る」雪乃紗衣

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「氷菓」「愚者のエンドロール」に続く、古典部シリーズ3作目。とうとう文化祭が始まり、古典部も文集「氷菓」を販売することに。しかし30部の予定だった発行部数は、何かの手違いで200部に...?!

今回は古典部の4人のメンバーの視点から順番に描かれていて、それぞれの個性が感じられて楽しいです。このシリーズは、毎回趣向が凝らされていて楽しいなあ。そして今回、200部もの文集を捌かなくちゃいけなくなった面々が大変なんですけど、そこにいい感じで文化祭が絡んでくるんですよね。わらしべプロトコル、最高! 千反田えるの意外な手際とそのオチ(笑)も楽しいです~。そして今回、自らデータベースと称する福部里志の「データベースは結論を出せないんだ」発言や、伊原摩耶花と漫研の河内先輩のやりとりが痛かったです...。「ピンポン」(映画)で、「なにしろ才能というものは、望んでいる人間にのみ与えられるものではないからな」という台詞があるんですよね。それを思い出しちゃいました。
「クドリャフカの犬」というタイトルがもっと中身に密接に繋がってくるのかと思ってたのに、期待したほどではなかったのがちょっぴり残念でしたが、今回も楽しかったです。(角川書店)


+シリーズ既刊の感想+
「氷菓」「愚者のエンドロール」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「クドリャフカの順番 『十文字』事件」米澤穂信
「遠まわりする雛」米澤穂信

+既読の米澤穂信作品の感想+
「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信
「犬はどこだ」米澤穂信
「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信
「ボトルネック」米澤穂信
「インシテミル」米澤穂信
Livreに「さよなら妖精」の感想があります)

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幼い頃に母を亡くし、11歳で父も亡くしたポリアンナは、それまで全然付き合いのなかったポリーおばさんの家に引き取られることに。でもポリーおばさんがポリアンナを引き取ったのは、可愛い姪だからではなく、「義務をわきまえた人間でありたい」から。本当は今の静かで穏やかな生活を子供に壊されたくないのです。しかしポリアンナは、そんなポリーおばさんの頑なな心を徐々に溶かしていくことに。

先日のたらいまわし企画・第17回「子どもと本」で、くるくる日記のkyokyomさんが挙げてらした本。(その時の記事はコチラ) 以前は「少女パレアナ」という題名で出ていた作品です。(追記: 角川文庫では今でも「少女パレアナ」というタイトルで出ているとのこと)
読み始めてまず思ったのは、「赤毛のアン」みたい!ということ。ポリアンナもおしゃべりなんですよね。放っておくと、1人でずーっとしゃべり続けちゃう。空想という点ではアンの方が上かもしれないんですが、でもポリアンナも相当のもの。しかもポリアンナの「何でも嬉しがる」ゲームというのは、いかにもアンが好きそうだし。...このゲームは、どんなに嫌なことにも、その楽しい面を見つけて嬉しがるというゲーム。例えばポリーおばさんがポリアンナにと用意したのは、普通の綺麗な部屋ではなくて屋根裏部屋。他にも沢山部屋が余っているはずなのに、わざわざみすぼらしい部屋を与えられちゃうんです。でもポリアンナは、殺風景な屋根裏部屋を悲しむのではなく、鏡がないからそばかすを気にしなくてもいいと言い、窓から見える綺麗な景色を絵のようだと喜ぶんです。
でも、やっぱりポリアンナはアンとは違うんですよね。読むにつれて、そういう部分がどんどん見えてきました。何でも嬉しがるゲームも、アンがしたらわざとらしくなったんじゃないかと思うんですけど(アンも大好きですが!)、ポリアンナがするとすごく自然。というかポリアンナっていう女の子がどこまでも天然なんですよね。ポリアンナがあまりに純粋なので、周囲の人々も巻き込まれずにはいられないし... 一歩間違えると、逆に心を閉ざされてしまいそうだし、下手すると読者にも作為を感じさせてしまいそうなところなんですが、それが全然。その辺りがほんと絶妙です。それがポリアンナのいい所であり、この作品の命なんでしょうね。素直に「良かったな~」と思える作品でした。

途中で止まっていた岩波少年文庫再読計画ですが、これでようやく再開です。...とは言っても、この本は2冊とも初読ですが! やっぱり岩波少年文庫は素敵です♪ (岩波少年文庫)

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無実の罪でグリーン・レイク・キャンプに送り込まれてしまったスタンリー・イェルナッツが、そこで過ごした日々を描いた物語が「穴」。この「道」は、そのグリーン・レイク・キャンプを無事に出た後に、スタンリーが書いたエッセイという形式の本です。

「穴」がとても面白かったので、こちらも読んでみました。(七生子さん、教えて下さってありがとうございます♪)「穴」を読んでいる時よりは「原始人」+「ゼロ」+「その他Dテントの面々」という感覚で、なんでいかにも強そうな「脇の下」じゃなくて、「X線」がリーダー的存在なのかが良く分からなかったりしたんですが、でもこれを読んで納得。これまで「その他の面々」だった「イカ」、「ジグザグ」、「磁石」といった面々についても個性が見えてきました。
そしてグリーン・レイク・キャンプで生き延びる術について、さらりと教えてくれるんですけど、これがまたグリーン・レイク・キャンプでしか通用しないようなことじゃなくて、人生における大切なこととって感じ。たとえば人と人との距離感についてとか、今すぐにでも応用できそう。でもって、それが全然説教じみていなところがいいんですよね。そしてユーモアたっぷりのサバイバル・テストなんていうのもあります。
でもやっぱりこれは「穴」を読んでこその本ですね。あくまでも補遺版といった位置付けかと。(講談社)


+シリーズ既刊の感想+
「穴」ルイス・サッカー
「道」ルイス・サッカー
「歩く」ルイス・サッカー

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ナショナル・トラストが管理するメイン館に住んでいるヘザーは、観光客のせいで一番のお気に入りの場所に行けずイライラ。仕方なく、敷地内にある妙な築山へと向かいます。これは友達によると、昔魔法を使って処刑された<いたずらロバート>の墓だという場所。そしてなんとヘザーは、本当にロバートを呼び出してしまったのです...。

長編揃いのダイアナ・ウィン・ジョーンズですが、これはかなり短くて、しかも対象年齢がかなり低そうな作品。
幽霊といえば夜なんですけど、いたずらロバートが出てきたのは昼間。明るい昼間の光を浴びても大丈夫だし、きちんと実体があってヘザーと腕を組むこともできるし、服装がやや古いのを除けば、ごく普通の素敵な青年。でもそのロバートの中身が子供っぽい! 自分がかつて住んでいた館で騒ぎまわっていた高校生や感じの悪い庭師、アイスキャンデーの包み紙をその辺りに投げ捨ててしまう小学生に次から次へと魔法をかけていっちゃいます。日頃から観光客や庭師を苦々しく思ってたヘザーもびっくりの魔法のかけっぷり。...なんだかダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品に登場する魔法使い(男)って、ハウルといいクレストマンシーといい、みんななんだか子供っぽっくて可笑しい。(笑)
その後、なんでロバートがそんなに子供っぽいのかも分って、最後はすっきり。でもその後どうするつもりなのかしら?? と気になるエンディングでした。(ブッキング)


+既読のダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品の感想+
「魔法使いハウルと火の悪魔」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「アブダラの空飛ぶ絨毯」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「デイルマーク王国史」1~4 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「わたしが幽霊だった時」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法使いはだれだ」「クリストファーの魔法の旅」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔女と暮らせば」「トニーノの歌う魔法」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法がいっぱい」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
留守中に読んだ本(18冊)(「マライアおばさん」「七人の魔法使い」「時の町の伝説」の感想)
「呪われた首環の物語」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「花の魔法、白のドラゴン」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「いたずらロバート」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジーランド観光ガイド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バウンダーズ」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「星空から来た犬」「魔空の森ヘックスウッド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バビロンまでは何マイル」上下 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ウィルキンズの歯と呪いの魔法」「海駆ける騎士の伝説」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「うちの一階には鬼がいる!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法!魔法!魔法!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ぼくとルークの一週間と一日」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「牢の中の貴婦人」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法の館にやとわれて」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「キャットと魔法の卵」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
Livreに「ダークホルムの闇の君」「グリフィンの年」「九年目の魔法」の感想があります)

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19世紀末のインド。アイルランド人の父とインド人の母の間に生まれ、幼い頃に両親を亡くしたキムは、白人ながらも土地の者と同じぐらい黒く焼け、土地の言葉を使いこなし、ラホールの町を知り尽くして奔放な生活を送っている13歳の少年。そんなキムがある日出会ったのは、チベットから聖なる河を探してやって来たラマ。キム自身、自分を助けてくれるはずの「緑野の赤牛」を探しに行きたいと思っていたこともあり、ラマの弟子となって一緒に旅に出ることに。

先日たらいまわし企画でAZ BLOG::はんなり、あずき色のウェブログのoverQさんが挙げてらした本。(その時の記事はコチラ) 英国人初のノーベル賞文学賞受賞作家となったラドヤード・キプリングの最高傑作と言われる作品なのだそうです。私は未読だけど、「ジャングル・ブック」も書いた人なんですね。キプリング自身、インドで生まれた人だそうで、猥雑でおおらかなインドの雰囲気がたっぷり。インドってほんと独特のパワーがありますよね。
この作品の主人公キムは、そんなインドに溶け込んで育ってきた白人の少年。ラマと旅しているところをイギリス人に見つかり、きちんとした教育を受けて、なんとスパイとして活躍することになっちゃうんです。ということで、スパイ小説としても楽しかったんですが、私が好きなのはむしろ、キムとラマのやりとりとか旅そのもの。この2人がいいんですよー。よくインドまで来られたな、って感じのお師匠さまを、すばしこくて抜け目がないキムがすかさずフォローして... でもキムはいざってところではやっぱりお師匠さまを頼りにしていて、この2人ってなんかすごく好き。お師匠さんは偉いラマなんですけど、でも人間的なんですよね、すごく。overQさんが「孫悟空と三蔵法師を彷彿とさせるものがあります。」と書いてらしたのも、読んでみて納得。ほんとにそんな感じです。
でもって、他のスパイたちも結構好き。特に変な口調で相手を煙に巻くハリー・バーブーがいいなあ。最後にフランス人やロシア人の面倒をみなくてはならなくなったバーブーの姿が、気の毒ながらも可笑しかったです。(晶文社)


+既読のラドヤード・キプリング作品の感想+
「少年キム」ラドヤード・キプリング
「プークが丘の妖精パック」キプリング 「夏の夜の夢・あらし」シェイクスピア
「キプリング短篇集」キプリング

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イギリスの由緒正しい貴族の館・パラダイン館は、現在は一部がカントリークラブとして解放されていました。しかしこのパラダイン家には代々伝わる呪いがあったのです。突如として、居もしない尼僧が館の中をうろつき、外から鍵がかけられた人気のない音楽室ではハープが曲を奏で、さらにはポルターガイスト現象が... そしてロンドンで心霊探偵をしているアレグザンダー・ヒーローが呼ばれることに。

ポール・ギャリコ唯一の長編本格ミステリという作品。意外としっかりとした本格ミステリなので驚きました。とは言っても殺人など物騒なことは起きなくて、もっぱら心霊現象の解明なんですが。(笑)
館に住んでる人間は6人、そして泊り客は12人。とにかく登場人物が多くて、最初は混乱しちゃいました。この辺りがもうちょっと分かりやすいと良かったんですが... でも分ってみれば、皆それぞれに個性的。そして探偵役のアレグザンダー・ヒーローが、本当は心霊現象を見てみたいと思ってるのに、心ならずも科学的に解明することになっちゃうっていうのがいいんですよね。心霊現象には冴えてる彼も、思わぬところに弱点があったり。(笑) このアレグザンダーと義理の妹のメグがいいコンビなんですよ。シリーズ物にならなかったのが、とっても残念。
そしてこの彼がロンドンの家で使ってる家政婦さんが、ハリスおばさん! ハリスおばさんのシリーズは最近復刊したばかりで、ぜひ読んでみたいと思ってたのです。なんか嬉しい♪ ギャリコは、コンプリート目指します!(創元推理文庫)


+既読のポール・ギャリコ作品の感想+
「トマシーナ」ポール・ギャリコ
「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ
「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ
「われらが英雄スクラッフィ」ポール・ギャリコ
「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ
「猫語の教科書」ポール・ギャリコ
「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」他2冊 ポール・ギャリコ
「七つの人形の恋物語」「スノーグース」ポール・ギャリコ
「トンデモネズミ大活躍」「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ
「ザ・ロンリー」ポール・ギャリコ
「「きよしこの夜」が生まれた日」ポール・ギャリコ
Livreに「ジェニィ」の感想があります)

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英国領ジブラルタルには、この地からサルがいなくなった時、英国人もいなくなるという言い伝えがありました。そのせいか、乱暴者のサルたちを管理するのは代々英国砲兵隊の役目となっていました。しかしサルの中でも一番大きくて乱暴者のスクラッフィの悪ふざけせいで、担当のベイリー大尉はこっぴどく叱られ、任を解かれてしまいます。そしてその言い伝えを知った敵国ドイツが、逆にそれを利用しようとして...。

ジブラルタルからサルが消えた時、という言い伝えは本当にあったんだそうです。しかもそのサルを決して死に絶えさせちゃ行けないって、当時の首相・ウィンストン・チャーチルが本当に通信したらしい...。でも逆に言うと、それ以外はポールギャリコの創作。ジブラルタル海峡に近づいたこともないんですって。その2つの事実からこんな話を作り上げちゃうなんて、やっぱりギャリコは凄いかも。
ということで、第一次世界大戦を背景にしたサルを巡るドタバタ劇。戦争絡みだなんて信じられないぐらい楽しい作品になってます。登場人物たちは相変わらず楽しいし、そこに騒動を巻き起こすサルもスゴイ。でもいくら大切にされてもサルはサル。サル同士は心を通わせるんですけど、人間が何を考えているかとかどんな都合があるかなんて、サルには知ったこっちゃないんですよね。特にスクラッフィの傍若無人さは突き抜けています。いくら餌をくれたとしても、人間は所詮人間。そんなスクラッフィの姿が爽快でした。(創元推理文庫)


+既読のポール・ギャリコ作品の感想+
「トマシーナ」ポール・ギャリコ
「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ
「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ
「われらが英雄スクラッフィ」ポール・ギャリコ
「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ
「猫語の教科書」ポール・ギャリコ
「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」他2冊 ポール・ギャリコ
「七つの人形の恋物語」「スノーグース」ポール・ギャリコ
「トンデモネズミ大活躍」「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ
「ザ・ロンリー」ポール・ギャリコ
「「きよしこの夜」が生まれた日」ポール・ギャリコ
Livreに「ジェニィ」の感想があります)

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売れない芸能エージェント・ビミーを訪ねてきたのは、ボクシングの元ライト級チャンピオン、ビリー・ベイカー。彼はカンガルーのマチルダと組んでサーカスで見世物をやっていたのですが、そのサーカスが潰れてしまったのです。ビミーは早速、マチルダたちを売り込みます。そして迎えた最初の興行。マチルダはなんと匿名で参加したミドル級チャンピオンをノックアウト! その試合を新聞の有名コラムニストが見ていたことから、マチルダは一躍有名カンガルーとなることに。しかしそのノックアウトされたミドル級チャンピオンが、マフィアの影のボスのお抱えだったことから、事態はややこしくなって...。

「ボクシング・カンガルーの冒険」という副題通り、ボクシングをするカンガルーの物語。元々カンガルーは自分の好きな雌を勝ち取るために、雄同士でボクシングのように殴り合いをして闘う習性があるんだそうです。知らなかったー。
マチルダは純粋にボクシングを楽しんでいるだけなのに、周囲の人間のせいで話はどんどん大きくなって、しかもそういった人間たちが自分の思惑のために右往左往しているのが、何とも皮肉で可笑しいです。色んな人の思惑で、事態はあっちにフラフラ、こっちにフラフラ。でも周囲の喧騒なんて知らぬが仏のマチルダ、対戦相手に愛情たっぷりのキス攻勢をしてみたり、ハーシーのチョコレートバーを無邪気に喜んでたり。んんー、可愛い♪ そんなマチルダがあくまでもカンガルーとして描かれてるのがいいし、人間の登場人物たちも、それぞれにユーモアたっぷりに描かれてるのが楽しいんですよねー。しかも最後はあっと驚く結末。まさかまさか、こうくるとは! 夢があって、しかも何とも爽快な作品でした。面白かったなー。(創元推理文庫)


+既読のポール・ギャリコ作品の感想+
「トマシーナ」ポール・ギャリコ
「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ
「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ
「われらが英雄スクラッフィ」ポール・ギャリコ
「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ
「猫語の教科書」ポール・ギャリコ
「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」他2冊 ポール・ギャリコ
「七つの人形の恋物語」「スノーグース」ポール・ギャリコ
「トンデモネズミ大活躍」「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ
「ザ・ロンリー」ポール・ギャリコ
「「きよしこの夜」が生まれた日」ポール・ギャリコ
Livreに「ジェニィ」の感想があります)

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多元世界が舞台のファンタジー。同じく多元世界が舞台のクレストマンシーシリーズも面白かったし、ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品は、こういうのが一番好きかも♪ イギリスそっくりの異世界の<ブレスト>での魔法使いマーリンを巻き込んだ陰謀を、ブレストのロディという女の子と、地球のニックという青年が2人が暴いていくという物語です。
やっぱりアーサー王伝説やケルト伝説は、こういったファンタジーの作品に良く似合いますね。一見突拍子がなく感じられるダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジー世界に、落ち着きと奥行きを出すのに一役買っているような気がします。そしてお話の方は、ダイアナ・ウィン・ジョーンズらしく、物事や人々が複雑に絡み合ってて、なかなか先が見えてこない展開です。でも、「花の魔法、白いドラゴン」という題名はとても綺麗なんだけど、「花の魔法」も「白いドラゴン」も本筋とはちょっと違うから違和感... 特に「白いドラゴン」は、題名で期待させる割に、最後にほんの少し出てくる程度なのでちょっと残念。

この作品の主役の片割れのニックは、未訳の「Deep Secret」という作品に登場したキャラクターなのだそう。そちらは大人向けの作品で、特にシリーズ物ではなく、独立して楽しめるように描かれている... と訳者あとがきに書かれてたんですけど、もう訳されないのかな? 関連作品があって、しかもそちらが先と聞くと、やっぱり順番通りに読みたかったなあって思っちゃいます。いくらそれぞれ独立して楽しめる作品とはいっても、やっぱりそっちの作品の言動をかなり踏まえてるのが読んでいて分かりますもん。きっと「魔法使いハウルと火の悪魔」(感想)と「アブダラと空飛ぶ絨毯」(感想)みたいな関係なんでしょうね。大人向けだなんて言わずに、ぜひとも翻訳して欲しいものです。(徳間書店)


+シリーズ既刊の感想+
「花の魔法、白のドラゴン」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バビロンまでは何マイル」上下 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

+既読のダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品の感想+
「魔法使いハウルと火の悪魔」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「アブダラの空飛ぶ絨毯」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「デイルマーク王国史」1~4 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「わたしが幽霊だった時」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法使いはだれだ」「クリストファーの魔法の旅」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔女と暮らせば」「トニーノの歌う魔法」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法がいっぱい」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
留守中に読んだ本(18冊)(「マライアおばさん」「七人の魔法使い」「時の町の伝説」の感想)
「呪われた首環の物語」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「いたずらロバート」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジーランド観光ガイド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バウンダーズ」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「星空から来た犬」「魔空の森ヘックスウッド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ウィルキンズの歯と呪いの魔法」「海駆ける騎士の伝説」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「うちの一階には鬼がいる!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法!魔法!魔法!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ぼくとルークの一週間と一日」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「牢の中の貴婦人」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法の館にやとわれて」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「キャットと魔法の卵」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
Livreに「ダークホルムの闇の君」「グリフィンの年」「九年目の魔法」の感想があります)

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<湿地>を舞台にした人間とドリグ、そして巨人の物語。いつもの畳み掛けるような勢いのあるダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品とは、また全然違う雰囲気でびっくり。
水の中に住み、変身が得意なドリグ、嵐のような音を立てる巨人、そして人間。いざ話してみると、話す言葉はお互いに共通しているのに、お互いに相手のことを良く知らないまま、昔からそうだからというだけで対立してるんですよね。なんだか現代の人種差別みたい。でもドリグの呪われた首環が人間の手に渡り、色んな状況がどんどん悪くなっていったのがきっかけで、3つの種族がお互いをきちんと認識して、呪いを解くために協力し合うことになります。<太陽>、<月>、<大地>の力とは? 呪いを解くために必要な<古き力>、<今の力>、<新しき力>とは? そんなところもワクワクしちゃうし、主人公の男の子の成長物語としても面白いです。
冒頭の雰囲気が好きだったので、途中で実態が分かった時は(ある程度予想していただけに)がっかりしたんですけど、でも最後まで読むとやっぱり良かった。ここに登場する首環は、ケルトのトルクにそっくり。ケルト独特の神秘的な雰囲気もあって素敵でした。(徳間書店)


+既読のダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品の感想+
「魔法使いハウルと火の悪魔」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「アブダラの空飛ぶ絨毯」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「デイルマーク王国史」1~4 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「わたしが幽霊だった時」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法使いはだれだ」「クリストファーの魔法の旅」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔女と暮らせば」「トニーノの歌う魔法」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法がいっぱい」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
留守中に読んだ本(18冊)(「マライアおばさん」「七人の魔法使い」「時の町の伝説」の感想)
「呪われた首環の物語」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「花の魔法、白のドラゴン」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「いたずらロバート」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジーランド観光ガイド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バウンダーズ」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「星空から来た犬」「魔空の森ヘックスウッド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バビロンまでは何マイル」上下 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ウィルキンズの歯と呪いの魔法」「海駆ける騎士の伝説」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「うちの一階には鬼がいる!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法!魔法!魔法!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ぼくとルークの一週間と一日」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「牢の中の貴婦人」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法の館にやとわれて」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「キャットと魔法の卵」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
Livreに「ダークホルムの闇の君」「グリフィンの年」「九年目の魔法」の感想があります)

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南フランスに住む8歳の女の子・セシルと、てんじくねずみのジャン=ピエールの4つの物語。
セシルとジャン=ピエールはまるで恋人同士のよう。一目合ったその日から、ってヤツですね。もうこの2人の心が通じ合ってる場面は、傍で見ててもドキドキしちゃうぐらい。でもそんな風に心が通じ合っている場面があるのは、1話目だけなんですよね。この1話目はとっても素敵なファンタジーなんですが、それ以降は、比較的普通の話になっちゃうんですよ。それがちょっと残念。まあ、普通とは言っても、世界中を旅することになってしまったり、サーカスに入ってしまったりとワクワクの冒険話なんですが。
そしてジャン=ピエールの視点が減った代わりに、ぐんと増えるのは大人たちの存在。セシルの両親やジャン=ピエールを巡って知り合う人々。セシルの両親を始めとして、ほんと良い人たちばっかりなんですが、4話目で登場するフィリポだけはかなり異色でびっくり。すごい大人の身勝手さを前面に出してきてます。「セシル、ちょっといい子すぎるよ...!」と、読んでいてちょっと辛かったんですが、それでも最後の展開には「ほっ」。あのままいくはずはないと思ったけど、心配しちゃったわ。...1話目が書かれてから4話目まで7年かけて執筆されてるそうなんですが、これはポール・ギャリコの意識の変化ではなく、セシルの年齢に作風を合わせてるってことなんでしょうね。きっと。
ちなみにてんじくねずみは英語で「guinea-pig」。原題で「Kidnapped(誘拐)」という単語が「Pignapped」と変えられているのも楽しいです。(福音館書店)


+既読のポール・ギャリコ作品の感想+
「トマシーナ」ポール・ギャリコ
「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ
「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ
「われらが英雄スクラッフィ」ポール・ギャリコ
「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ
「猫語の教科書」ポール・ギャリコ
「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」他2冊 ポール・ギャリコ
「七つの人形の恋物語」「スノーグース」ポール・ギャリコ
「トンデモネズミ大活躍」「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ
「ザ・ロンリー」ポール・ギャリコ
「「きよしこの夜」が生まれた日」ポール・ギャリコ
Livreに「ジェニィ」の感想があります)

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実は丁度1年前の第4回たらいまわし「秋の夜長は長編小説!」 の時に、主催者だったちょろいもさんが挙げてらした本。(その時の記事はコチラ) それ以来ずっと気になってたんですが、ようやく読めましたー。や、父が買うっていうから楽しみに待ってたのに、かーなり待たされちゃって... って人のせいにしちゃいけませんね(^^;。
これは作者の水村美苗さんが天啓を受けて書き始めた小説、という体裁。なので、前置きがすごく長いんですけど、でもその前置きすら面白くて、本題に入ってからはさらに面白くて、本当に夢中になって一気読み。読みながら、「そうそう、こういう作品を読みたかったのよー!!」って感じでした。読みながらこんな風に嬉しくて堪らなくなった作品って久しぶりかも。
肝心の作品の中身といえば、「嵐が丘」を下敷きにしたという大河小説という言葉がぴったりの作品です。そしてこの本が読みたいと思ったのは、この「嵐が丘」によるところが大きいのです。最初は「いつになったら嵐が丘になるんだ?」だったんですが、でも読み終えてみると、確かに「嵐が丘」でした。日本を舞台にして、ここまで描ききってしまうなんて凄いです。戦前から戦後にかけての富裕な名家の3姉妹を中心にした華やかな生活やその斜陽ぶりもとてもリアルに描かれていて、まるで目の前にその情景を見ているようだったし、「嵐が丘」のヒースクリフに当たる彼の受ける差別や、彼自身の捨身で一途な恋心もとても切なくて... 少し古めかしい作風がまたとても良く合ってるんですね。しかも、1つの物語が終わってみると、そこにまた突然違った様相が...。
いやあ、ほんと最後までドキドキでした。こういう作品が読めるとほんと幸せになっちゃいます♪ (新潮社)


+既読の水村美苗作品の感想+
「本格小説」上下 水村美苗
「私小説 from left to right」水村美苗
「手紙、栞を添えて」辻邦生・水村美苗
「明暗」夏目漱石・「続明暗」水村美苗
「日本語が亡びるとき」水村美苗

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文芸ポストに連載されていたという竹内真さんのお笑い論。爆笑問題やルミネtheよしもと、テツandトモや高山アナ、伊東四朗や三谷幸喜といった面々の「笑い」について切り込んでいきます。

私は普段ほとんどテレビを見てないので、相当の売れっ子の芸人さんも良く知らなかったりするんですけど、テレビでそういう番組を見てる時って、面白いか面白くないかが全てで、面白ければ反射的に笑うだけですよね。しかもその場だけで、すぐ流れちゃう。でもその「笑い」をきちんと分析すると、こういう姿が見えてくるのかーというのがすごく新鮮でした。例えば爆笑問題とツービートを対比させて。同じ「毒舌」でも、その根底にあるものは全然違っていて、はっきりと社会批判をしているツービートに対して、爆笑問題の笑いは、竹内さんいわく、風刺ではなく「物語」への笑い。偶然同じように2001年のえひめ丸沈没事件を扱ってるのがあるんですが、比べてみると実はものすごーく違うのが分かって面白いです。(ここでは具体的な違いについては書けないけど...)
ただ漫然とテレビを見て笑ってるだけでは、なかなか気付かない部分なんじゃないかと思いますが、読んでるともう本当に納得。いやー、目からウロコが落ちました。(小学館)


+既読の竹内真作品の感想+
「図書館の水脈」竹内真
「真夏の島の夢」竹内真
「じーさん武勇伝」竹内真
「自転車少年記」竹内真
「笑うカドには お笑い巡礼マルコポーロ」竹内真
「オアシス」竹内真
「ワンダー・ドッグ」竹内真
「ビールボーイズ」竹内真
「シチュエーションパズルの攻防」竹内真
Livreに「粗忽拳銃」「カレーライフ」「風に桜の舞う道で」の感想があります)

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シャンソン歌手の石井好子さんが、昭和38年に出されたという料理エッセイ「巴里の下オムレツのにおいは流れる」と、去年出たそのレシピ版。画像はレシピ版の方なんですけど、この表紙を見てるだけでもそそられませんか~?(でもちょっと色が暗いですね... 本物の方がずっと素敵です) エッセイ本の方は、Amazonでもbk-1でも画像がなくて残念。こちらもとっても可愛いのです。
白系ロシア人のマダムのアパートに住んでた頃に食べたというオムレツや、アメリカで食べたスパニッシュ・オムレツ、ロシアふうの卵「エフ・ア・ラ・リュス」、パリのヴェベールという店で食べた「ヴェベールの卵」、女優トルーデ・フォン・モロの家で食べた半熟卵と油で揚げた食パンのミミ... 卵料理だけをとっても次から次へと登場。どれもそれほど凝ったものじゃなくて、むしろ日常生活の中で簡単に作れるような気軽なお料理がほとんどなのに、そこにほんの一手間かけるだけで、おもてなし料理としても通用するようになるんですね。私の場合、いつもなら直接写真を見るよりも、美味しそうな文章を読んでいる方が想像がどんどん膨らんで好きなんですが、でも今回2冊合わせて見るのもすごく楽しかったです。レシピ版の写真に写ってるお料理の小物なんかもすごく素敵だし。そしてお料理と共に語られる、石井さんのパリにいた頃の思い出話も楽しいんですよー。60年代の巴里の街角の雰囲気が感じられます。「巴里の屋根の下」の歌が聞こえてきそう。(あれは1930年の映画ですが)
今度スタッフ・ド・トマトとレタススープを作ってみようかな♪

これは、先日のたらいまわし企画第16回「美味しそうな食べ物が出てくる本は?」で、Cross-Roadの瑛里さんが出してらした本。(瑛里さんのその時の記事はコチラ) いやー、ほんと美味しそうな本でした!(暮らしの手帖社・扶桑社)

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クラフト・エヴィング商會の吉田篤弘さんによる、ちょっと不思議な3つの物語。「フィンガーボウルの話のつづき」や「つむじ風食堂の夜」も良かったけど、この「百鼠」が一番好きかも!
「一角獣」「百鼠」「到来」という3編の中で一番印象に残ったのは、表題作の「百鼠」でした。
これは天上界に住んでいる<朗読鼠>たちの物語。朗読鼠たちはそれぞれに下界の作家を担当していて、その作家が執筆する時に側で物語を朗読していくのがお仕事。作家は実は天上の力を借りて小説を書いてるんだというお話です。でも確かに、何事においても創作にはどこか別次元の神がかり的な部分が必要なんじゃないかなと思うし、こりゃ本当にありえるぞ... なーんて、読んでると思えてきちゃう。となると、ライターズハイと呼ばれる状態は、やはり鼠の朗読が乗ってきたという証拠なのでしょうか?(笑)
こういう話を吉田篤弘さんが書かれるというのが面白いなあ。
ちなみに「百鼠」とは、動物の鼠ではなくて鼠色のことです。銀鼠や桜鼠、鉄鼠、鳩羽鼠など、江戸時代の粋人たちが作り出した様々な色合いの鼠色のこと。朗読鼠たちは、チョコレートとミルクでこの鼠色を身体の中に作り出すんですけど、その<鼠>を作り出す過程も楽しいし、この物語の中で使われている色んな言葉も、視覚から想像力が膨らんでいくような言葉でとっても素敵。
この3編は、一見バラバラのように見えて、でも確かに繋がってるんですね。「一角獣」の主人公は元々校正者だし、「到来」の主人公は、その母親の書く小説にいつも分身が登場しているし、みんな物語に繋がりがあるんだなあ。でもって、「百鼠」があるからこそ、「到来」の最後の一節が意味深長で、それがまたいいんですよねえ♪ (筑摩書房)


+既読の吉田篤弘作品の感想+
「百鼠」吉田篤弘
「78」「十字路のあるところ」吉田篤弘
「という、はなし」吉田篤弘
「空ばかり見ていた」吉田篤弘
「それからはスープのことばかり考えて暮らした」吉田篤弘
「小さな男*静かな声」吉田篤弘
Livreに「フィンガーボウルの話のつづき」「つむじ風食堂の夜」「針がとぶ」の感想があります)

+既読のクラフト・エヴィング商會の感想+
「アナ・トレントの鞄」クラフト・エヴィング商會
「犬」「猫」クラフト・エヴィング商會プレゼンツ
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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「結構元気に病人をやっている」(笑)若だんなのシリーズ第4弾。やっぱり畠中さんはこのシリーズが一番好き! そりゃ4作目ですから「しゃばけ」や「ぬしさまへ」の頃の新鮮味は薄れてしまってるし、若だんなのお兄さんの話がすっかり落ち着いて以来、特に大きな波風も立たないんですけど、でもマンネリ化を恐れずにこの路線を追求していって欲しいなあ。
今回は屏風のぞきや鳴家といった、今まで脇でいい味を出していた妖(あやかし)が中心となった話があったり、5歳の頃の若だんなのエピソードなんかもあったりして、相変わらずのほのぼのぶり。でも突然、「吉原の禿を足抜けさせて一緒に逃げることにしたよ」などと爆弾発言をしてくれたりします。若だんなが駆け落ち? しかも吉原の... ええっ?!
そんな中で、今回一番気になってしまったのは、初登場の妖(あやかし)「狐者異(こわい)」。他の妖とは違って、人間はもちろんのこと、妖ともまじわらない狐者異は、仏すらも厭い恐れたという妖なんですよね。それがなぜなのか誰も教えてくれないし、生れ落ちた瞬間から、他の者たちのつまはじきとなる運命。受け止めきれた者がいないというこの狐者異に、若だんなが手を差し伸べるのですが...
一応今回の話はこれで終わりなんだけど、この狐者異、また登場しそうな気がします。そしてその話こそが、このシリーズ全体の山場となりそうな予感...。(新潮社)


+シリーズ既読の感想+
「しゃばけ」「ぬしさまへ」「ねこのばば」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「おまけのこ」
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「いっちばん」畠中恵

+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
Livreに「百万の手」の感想があります)

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舞台は平安時代。自分のせいで異母妹の比右子を死なせてしまい、悶々とする12歳の小野篁が主人公。最後に一緒に遊んでいた荒れ寺へと向かった篁は、ふとした拍子に、比右子が転落した古井戸に吸い込まれてしまいます。気がつくと、そこは石ころだらけの河原。そこには大きな河と立派な橋があり、行くあてもない篁はその橋を渡り始めるのですが... ふと気付くと篁を食べようと狙っている鬼がいたのです。

以前、たまきさんに薦めて頂いた本。児童書です。
昼は朝廷に仕え、夜になると冥府に通って閻魔大王のもとで役人として働いていたなんて伝説のある小野篁の少年時代の物語。妹と恋仲だった、なんて話もありますね。大人になった後の篁は有能な官僚として有名なんですが、ここに描かれた少年時代の篁には、その片鱗はまだ全然ありません。異母妹の死をいつまでもくよくよと悩んで、生きていく気力も半分失っているような状態。鬼に襲われたところを坂上田村麻呂に危機一髪助けてもらうのに、またしても古井戸の中に舞い戻ってしまう始末。
これは、そんな篁が立ち直っていく成長物語なんですが、私がいいなあと思ったのは、3年前に死んでいるはずの坂上田村麻呂。橋の向こう側に渡ってしまいたいのに、帝から「死後も都を守れ」なんて、武装した姿で立ったまま葬られたせいで、どうしても向こう側に行けないんです。立派な武人だから、帝の言葉通りに京の都をしっかり守ってはいるんだけど、でも本当は向こう側に行きたいんですよね。友人知人もどんどん橋を渡ってしまうのに、なぜ自分だけが... と思いつつ、でも自分にできる精一杯のことをしている田村麻呂の姿がなんとも哀しくて。
そんな田村麻呂の姿もそうだし、田村麻呂に角を1本取られたせいで鬼でもなく人間でもない状態になってしまった非天丸の姿もと篁と重なって、なんとも切なかったです。それだけに、異母妹の死を乗り越えた篁の姿が一層感慨深く... うーん、いい話だわー。(福音館書店)

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「ひいひいじいさん」がジプシーから豚を盗んだせいで、子々孫々にいたるまで呪いをかけられてしまったイェルナッツ家。皆揃って運に恵まれず、「まずい時にまずいところに居合わせてしまう」というタチ。それでもお父さんは発明家として芽が出ない程度で済んでるのですが、スタンリーはなんと人気プロ野球プレイヤーのスニーカーを盗んだ容疑で逮捕され、罪を犯した少年たちを集めたグリーン・レイク・キャンプに送り込まれてしまうのです。そして毎日毎日、湖どころか一滴の水もないグリーン・レイクで、直径1.5m深さ1.5mの円筒形の穴を掘ることに。

以前映画が意外と面白くてびっくりしたんですけど、今度は原作を借りてみました。やっぱりこれも面白いー。出版された途端、全米図書賞、ニューベリー賞、クリストファー賞、ホーンブック・ファンファーレなど、価値ある児童文学賞を軒並み攫ったという作品だそうです。
現在のグリーン・レイクを掘る現在の子供たちの情景に、スタンリーの「ひいひいじいさん」のエピソードや、かつて湖があった頃のグリーン・レイクの切ない恋物語などが織り込まれて話が進んでいくんですけど、この過去のエピソードが実は全て伏線。もうほんと全然無駄がないんです。まるでパズルみたい... というか、今どきここまでピタッとハマる快感、ミステリでもなかなか味わえないのでは、なんて思っちゃうほど。映画を観て一通りの話は知ってるのに、またしてもワクワクしてしまいました。
原作もいいし、映画もすごく出来がいいと思うし(クライマックスに関しては映画の方が上かも)、どちらもオススメ。「穴」だなんて変な題名ですけど、騙されたと思って手に取ってみて下さいねー!(講談社)


+シリーズ既刊の感想+
「穴」ルイス・サッカー
「道」ルイス・サッカー
「歩く」ルイス・サッカー

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土曜日の夕方の閉店間際に、大きなスーツケースを持ってスコットレーズ・デパートに来たママとオリビア、アンジェリーンの3人。これまで一度も買い物なんてしたことない高級デパートに、新しいベッドを買いに来たなんて本当? そして閉店5分前にママが言ったのは、「"ベッドの下に隠れろ"ゲームをしましょう」という言葉。その言葉を聞いた途端、リビーは自分たちがここに来た理由が分かります。なんとママは、この週末はスコットレーズに住んでしまおうと考えていたのです。

読み始めて真っ先に思い浮かんだのは、E.L.カニグズバーグの「クローディアの秘密」。そちらはデパートではなくてメトロポリタン美術館なんですけど、こっそり住んでしまおうというワクワク感は一緒ですね。でもこちらは高級デパート! 日用品から食料品からおもちゃから電化製品まで何でも揃っている場所なんです。子供たちにとっては夢の国かも。
...とは言え、能天気なママと無邪気なアンジェリーンに挟まれて、1人しっかりしてしまっているリビーは、能天気なママの言動にヤキモキし通し。うわー、分かる。こういうママがいたら、しっかり常識派に育っちゃいますよね。必要に迫られて、年齢よりも大人になっちゃうはず。しかもハプニング続出で、こんな生活を続けたらほんと神経が参っちゃいそう... とこちらまでドキドキしてしまいます。最初の場面で、リビーが警察官やソーシャルワーカーと話しているのが分かっているだけに、余計に☆

可愛いらしい作品でしたが、「魔法があるなら」というタイトルだけは全然似合わないですね。魔法が出てくるようなお話かと思ってたので、そういう意味ではちょっとがっかり。原題通り「世界で一番素敵な場所」でも良かったと思うのになあ。(PHP研究所)

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8歳の時に会って一目惚れした許婚が数ヵ月後に死亡。そして9年後、17歳になった芳娥は許婚の死は殺人だったことを知ることになり、犯人を探し始めます。許婚は当時の宋の宰相・王安石の長男で、当世きっての秀才と名高かった人物。王安石の推進する「新法」にも大きく貢献していました。犯人は「新法」瓦解をたくらむ、旧法派の大物・司馬公と思われるのですが...。

森福都さんの新作。森福さんお得意の中国を舞台にしたミステリです。(嬉)
王安石や司馬公は実在の人物だし、新法派・旧法派の争いも本当にあったんですね。宋代の神宗~哲宗皇帝の時代が舞台。
中国冒険活劇... ってほどではないんですが、剣戟場面もありますし、芳娥自身がかなり長身の男装の麗人なので、司馬公に近づくために大人気女優・月英の助けを借りて偽劇団を作ってみたり、その後の逃亡劇や幻の漆黒泉探し、そこに隣国・西夏の存在や幻の武器開発も絡んできて、なかなか盛りだくさんな華やかさとなってます。芳娥の許婚を殺した真犯人は本当に司馬公なのか、それとも... と、みんなが疑心暗鬼になってくるのも楽しかったし。これで許婚の若い頃にそっくりという少游がもうちょっと活躍してくれれば、もっと良かったんですけどねえ。
でも実は犯人が誰かとか黒幕が誰かとかそういうのよりも、漆黒泉の正体にびっくりでした、私。そ、そういうことだったのか...!
いえ、これは別に秘密でもなんでもなくて、物語の前半で分かっちゃうんですけどね。なるほどねえ...。(文藝春秋)


+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
「肉屏風の密室」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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朱川さんの作品を読むのは1年半ぶり。これは昭和30年代~40年代の東京の下町を舞台にした、ノスタルジックな連作短編集。連作短編集とは言っても主人公は変わるし、時系列的にも少しずつずれているので、アカシア商店街という場所を舞台にした7つの情景って感じですけどね。それぞれの短編に少しずつ繋がりがあって、徐々に町全体の姿が見えてくるんです。
それぞれの短編の中で不思議な出来事も起きて、ファンタジーというよりもホラー寄りなんですが、でも怖さとか妖しさはほとんどなくて、むしろしみじみと切なかったり、やるせなかったり。この中では、胸きゅんの「栞の恋」や、お互いを思いやる兄と弟のやるせない「夏の落とし文」が良かったな。そして最後の「枯葉の天使」で、色んなことが綺麗に繋がっていくというのが好み。やっぱり連作短編集はこうでなくちゃ。
そして「かたみ歌」というタイトル通り、それぞれの短編の背景では、それぞれの時代を代表するようなヒット曲(多分)が流れてます。やっぱりこれは若い読者よりも40~50代の読者、この時代を直に知っている人の方が楽しめるんでしょうね。という私は、知ってたり知らなかったり... ザ・タイガースのサリーってどんな人だろうと検索してみたら、なんと岸部一徳さんのことだったんですね! 若い頃どんな感じだったのか、写真が見たくて色々検索しちゃったわ。(笑) (新潮社)


+既読の朱川湊人作品の感想+
「かたみ歌」朱川湊人
「さよならの空」朱川湊人
「花まんま」朱川湊人
Livreに「都市伝説セピア」「白い部屋で月の歌を」の感想があります)

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去年「ぼくとアナン」を読んだ時、本のことどもの聖月さんにこちらもぜひとオススメされてたんですけど、読もう読もうと思いつつ、こんなに遅くなってしまいました... というか、「ぼくとアナン」が良すぎて、すぐには手に取ることができなかったというのが正直なところなんですけどね。いやあ、こちらも良かったです。本当に。しみじみと。でも多くは語れない... もう、何も聞かずに読め!って言いたくなっちゃうような作品です。
ストーリーとしては、新宿でホームレスをしていた「流」が、初雪が降ったら死のうと決めていて、でも初雪が降ったその日、なんとゴミ捨て場で赤ちゃんを拾ってしまい、死ぬに死ねなくなってしまい... というもの。アナンというのがその赤ちゃんにつけられた名前。

この「アナン」は、飯田譲治さんと梓河人さんによる合作なんですが、「ぼくとアナン」は、梓河人さんが「アナン」を児童書として書き直したという作品。この題名の「ぼく」はバケツという名前の猫のことで、猫視点で描かれているんです。大きな流れとしては一緒なんですが、でも細かい部分はかなり違うんですよね。でもって、これがどっちも良いんですよ~。大人用の方を読んだから児童書はいいや、なんて思ってる方、もしくは逆の方、ぜひどちらも読んで下さい。どちらもすっごくいいです! という私は、どちらかといえば「ぼくとアナン」の方が感動したんですけど... 普通はどっちが評判いいのかしら。先に手に取った方に思い入れがある、というのもあるのかな。
そして今回、本当は「アナン」だけ読むつもりだったのに、読み終わった後、思わず「ぼくとアナン」も再読してしまいました。...ううう、またしても涙。
この本は3冊とも揃えたいんですが、文庫になる予定はあるのでしょうか。ぜひなって欲しいです!(角川書店)


+既読の梓河人作品の感想+
「アナン」上下 飯田譲治・梓河人
Livreに「ぼくとアナン」の感想があります)

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失恋に苦しむ佐野原多美と、作家になりたい西城麦穂という2人の女性の物語、そしてその2つの物語を繋ぐ、幼い少年のエピソード。
生きていれば、一度や二度死にたくなったことがあるって人も多いでしょうし、他人のことを妬んで、その人間が死ねばいいと思ったことがある人もいるんでしょうね。でもいくら願ったとしても、それを実現する人となるとまた話は別。頭の中でどんなひどいことを思い描いていたとしても、それはそのうち時と共に忘れてしまうはずだし、ここに登場する多美や麦穂もそうだったはずなんです。でも目の前に死神と名乗る男が登場したせいで、ただの妄想だったはずの願望、自分の本心と否応なく向き合わされちゃうことに... そのままそうっとしておいてくれたら良かったのに、というかもっとやりようってものがあるでしょうに、全くデリカシーのない死神ときたら! という話。
これは、死神を通して逆に「生」を考えさせられる作品なんですね。あとがきにもある通り、死神がまるでカウンセラーのようでした。窓際族として登場する死神の島野の姿がなんか可笑しい♪ でもね、死神といえば今は伊坂さんの「死神の精度」。どうしても比べてしまうんですよね。この作品も悪くはないんですけど、どこか突き抜けたものが足りなかったような...(双葉社)


+既読の柴田よしき作品の感想+
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき
「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき
「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき
「夜夢」柴田よしき
「激流」柴田よしき
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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高橋克彦さんの陸奥三部作の3作目。ちなみに三部作の1作目は、奈良時代に朝廷に反旗を翻した蝦夷の英雄・アテルイを描いた「火怨」(感想)、2作目は奥州藤原氏を描いた「炎立つ」で、こちらは手元にはあるんですが未読。大河ドラマにもなりましたよね。あと北方謙三さんの南北朝の動乱期の陸奥を制した北畠顕家「破軍の星」(感想)も、陸奥が舞台でした。時代はそれぞれ異なるものの、陸奥の歴史がだんだん繋がってきて楽しい! やっぱり歴史物は読めば読むほど、繋がってきて楽しくなりますね。同じ時代のものを様々な角度から読むというのも大好きなんだけど、こうやって陸奥に拘ってみるのも楽しいなあ。

ということで、これは戦国時代の陸奥が舞台。戦国時代は昔から結構好きで読んでるので、今回はすんなりと入れました。(「破軍の星」はちょっと苦労したので...) 今回の主人公は九戸政実。名前は全然聞いたことがなかったんですが、南部一族で「北の鬼」と恐れられていた男なんだそうです。この人がかっこいいんですよー。武人としても一流でありながら、策士としても凄くって、敵の行動の裏の裏まで読んで大胆な策を打ち出していくんです。時には水面下でこっそり他の人間にその策を授けていたりして... まるでスーパーマンのような活躍ぶり。(笑) でもって、それがぴたりぴたりとハマっていくところが、読んでいて本当に痛快なんです。
物語前半は、南部一族の棟梁の座を巡っての内紛、後半は副題通り、「天」である秀吉に喧嘩をふっかけることになります。わずか5千の兵で立つという潔さもいいし、その少ない兵で10万の兵を自在に追い散らしてしまうとこもカッコいい。途中で政実が秀吉のことを、武者というよりもむしろ商人だと言うところがあったんですけど、本当にそうかもしれないですね。秀吉の戦巧者ぶりは有名だけど、わずか5千の兵に10万という力技を繰り出してくる辺り、札束で頬を叩いているようなものですものね。

ただ、棟梁争いをする三戸信直がもう少し大きく成長してくれたら良かったんですけど、その辺りだけはちょっぴり残念でした。最初は政実や弟の実親が信直の頭の良さを警戒してたし、かなりの曲者と言ってたはずなのに、気がついたら北信愛べったり。自分で考えることもしなくなっちゃう。途中、1人立ちしかけて、大きく成長したと言われてるのに、それも結局それっきり。私としては信愛失脚で、政実と信直との本気の対決を希望してたんですが。(^^ゞ

今度は「炎立つ」を読まなくちゃー。でも全5巻と長いので、ちょっと気合を入れ直してから取り掛かる予定です。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」1~3 高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「闇から招く声」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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以前13回目のたらいまわし「夜の文学」で、AZ BLOG::はんなり、あずき色のウェブログのoverQさんが出してらした本。(エントリーはコチラ) 「屍鬼」といえば、まず小野不由美さんが出てくる方が多いと思いますが、これはインドの物語。インド版「千夜一夜物語」です。

あらすじとしては...
トリヴィクラマセーナという名の勇気のある王様が、1人の修行僧に頼まれて夜中に宮殿を抜け出し、樹に懸かっている男の死体を取りに行くことになります。しかしその死体には、屍鬼が取り憑いてるんですね。王が死体を担いで歩き出すと、背中の屍鬼が王に1つの物語を聞かせる。その物語の最後には謎掛けが待っていて、王がそれに答えると死体は元いた樹に戻ってしまい、王様は再び取りに行くことに... というもの。
この王様、お話ごとに行ったり来たりを繰り返すんですよ! どの話もそれほど長くないんですが、全く出来た王様です...(^^;。

そしてこの屍鬼が語る話が、どれも結構凄いんです。例えば第2話の「娘一人に婿三人」。
非常に美しい娘に3人のバラモンの青年たちが求婚するのですが、その中から1人選ぶ前に、肝心の娘が熱病で死んでしまうんですね。3人の青年は嘆き悲しみます。彼女を荼毘に付した後、1人の青年は乞食となって彼女の灰を寝床にして寝るようになり、1人の青年は骨をガンジス川に投げに行き、1人の青年は修行僧となって、諸国を放浪することに。で、3人目の青年が死人を蘇らせる呪文を覚えて戻ってきて、娘を生き返らせることになるのですが... 屍鬼の問いは、この3人のうち誰がその娘の夫として認められるかというもの。で、その王様、平然とその問いに答えてしまうんです。しかも理論整然と。(笑)
すごい、すごいよ、王様!

なんて思ってると、屍鬼は元いた樹のところに戻ってしまって、また最初からやり直し、なんですが...(^^;。
絶世の美男美女がいっぱい登場して、みんなすぐ恋に落ちちゃうし、時には王様のために簡単に自分や自分の家族を犠牲にしたりもするんですけど、でも日頃の行いが良いと神様に生き返らせてもらえたり。そんな荒唐無稽な楽しい話がいっぱい。しかもオチも素晴らしい。いやあ、インドっていいですねえ。でもって、どうやらこの屍鬼、あんまり悪い存在じゃないみたいですね。「屍鬼」なんて聞くとどうも単なる悪霊のように感じてしまうんですが、実は古代インドでは信仰の対象で、その土着信仰が仏教やシヴァ教に取り入れられたとか。
永遠にでも続きそうなこの話が、25話でどうやって打ち止めになるのかというのもお楽しみです。(平凡社東洋文庫)

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大旱魃の後のモンスーンの到来と共に生まれ、「幸運」という意味のサンパトという名がつけられたサンパト・チャウラーは、しかし20年後、すっかり無気力な人間となっていました。父親が探してくれた郵便局の仕事にもうんざり。局長の娘の結婚式でお尻を出して踊り、とうとう首になってしまいます。しかしサンパトは突然啓示を受け、家を抜け出してグアヴァの木に登ってしまうのです。家族が懇願しても、一向に降りて来ようとしないサンパト。しかし父親のミスター・チャウラは、息子を聖人として売り出すことを思いつきます。

インドを舞台にしたユーモア小説。インドの映画を小説に置き換えたらこんな感じになるのかな~ってそんな作品でした。(インドの映画、実際には観たことないんですが...) インドの庶民の生活ぶりや街中の喧騒がフルカラーで迫ってくるみたい。訳者あとがきによると、インドではそれほど荒唐無稽な話とはされてないらしいんですけど、それでもやっぱり不思議~な雰囲気があります。
この中では、聖者とされてしまったサンパトが語る教訓的な言葉が面白かったです。一見意味がないくだらない言葉のように見えながら、考えようによっては深~い意味がありそうに感じられてくる言葉。そしてグアヴァの樹の下で日々繰り広げられる人間の欲望絵図とは対照的な、サンパト自身の静かで平和な樹上世界も。それだけに物語中盤が一番面白かったですね。猿の群れが登場した後のドタバタ部分は、うーん、あまり...。(新潮クレストブックス)


+既読のキラン・デサイ作品の感想+
「グアヴァ園は大騒ぎ」キラン・デサイ
「喪失の響き」キラン・デサイ

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単なる犬捜しのつもりが本格的な探偵業をすることになってしまった紺屋長一郎と、探偵に憧れて押しかけてきたハンペーこと半田平吉の2人の視点から展開していく、ハードボイルド系作品。登場人物の平均年齢もぐっと上がるし、これまでの作品、特にホータローの古典部シリーズや「春期限定いちごタルト事件」とはまるで違う雰囲気なんですねー。
本当は人間捜しの探偵業なんてしたくないのに、失踪した孫娘の行方を捜して欲しいという依頼を受けてしまう長一郎。彼の視点は、意外なほど本格的なハードボイルド。対するハンペーの視点は、「トレンチコート」「サングラス」「マティーニ」と、本当は形から入りたがる彼らしいユーモラスなハードボイルド。こちらの仕事は、地元の神社に伝わる古文書調べ。途中「オロロ畑」が出てきた時はびっくりしましたけど、そう言われてみれば、丁度萩原浩さんの「ハードボイルド・エッグ」みたいな雰囲気ですね。(笑) 登場した時は、単なる勉強嫌いのオチコボレキャラかと思ってたのに、意外や意外! なかなかいいですねえ、彼。

ただ、「失踪人捜し」と「古文書調べ」という2つの依頼が、どんな感じで繋がっていくかっていう肝心な部分に関しては、面白いというよりも正直じれったく...。普通、もう少し途中経過を報告しないですか? あ、でもこのラストはかなり好き。これが読めたんだから、まあいっか、とも思ってしまいました。(^^ゞ
ハンペーもまだこれからなんでしょうけど、長一郎に関してはまだまだ明かされてない部分が多いし、本領発揮もしてない感じ。長一郎のチャット相手のGENの正体もそのうち明かされるのかな? 続編もありそうなので、楽しみです。(東京創元社)


+既読の米澤穂信作品の感想+
「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信
「犬はどこだ」米澤穂信
「クドリャフカの順番 『十文字』事件」米澤穂信
「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信
「ボトルネック」米澤穂信
「遠まわりする雛」米澤穂信
「インシテミル」米澤穂信
Livreに「氷菓」「愚者のエンドロール」「さよなら妖精」の感想があります)

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「フォー・ディア・ライフ」「フォー・ユア・プレジャー」に続く花咲慎一郎シリーズ第3弾。
このシリーズは大好きなので、出た時から読みたくて仕方なかった作品。でも、ちょっと物足りなかったかな... 今回、山内練の隠し子疑惑なんてものがあるので(笑)、全編を通して山内練が登場してくれて嬉しいんですけど、でもなんだか今回の山内練は、いつもと違うんですよね。
このシリーズって、ハナちゃんこと花咲慎一郎が色んな事件に振り回されてるうちに、事件同士に思わぬ繋がりが出てきて、限られた時間の中でパタパタとそれらが綺麗に片付いていくのが一番の魅力だと思ってるんですが、今回の作品にはそういうのがないんです。しかもいつもなら、そこには冷酷非道な山内練のおかげでたっぷりと緊迫感があるのですが、今回の山内練は妙にハナちゃんに優しいというか甘いというか...(^^;。...もっとも、今回は1つの長編というよりも3編の連作短編という感じなので、事件の関連については仕方ないのかもしれないんですけどね。(だからといって、別々に楽しめるほど、独立した短編とも思えないんですが)
まあ、そんな風になんだかんだと思いつつも、やっぱりこのシリーズは大好き。探偵業はしているけれど、本職はあくまでも保育園の園長先生のハナちゃん。いつも古本ばかりで可哀想だからと、ようやく入った現金収入で新品の絵本を買いに行ったり、ヨレヨレに疲れてるのに、子供たちのためにインスタントラーメンの匂いが部屋に籠もらないよう、屋上に出るハナちゃんが大好きです。(実業之日本社)


+シリーズ既刊の感想+
「フォー・ディア・ライフ」「フォー・ユア・プレジャー」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき

+既読の柴田よしき作品の感想+
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき
「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき
「夜夢」柴田よしき
「激流」柴田よしき
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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現在37歳独身、大手総合音楽企業企画室の係長・墨田翔子が主人公。恋人もなく、部下の人望もなく、1人でランチはお手の物。しかし仕事一筋の生活にふと疲れを感じた時、彼女は思い立って有給をとりオーストラリアのケアンズへ...。

ということで、働く女性たちのお話。社会に出て働く以上、仕事面でも人間関係面でもストレスとは無縁ではいられないし、仕事が出来れば出来たで同僚に妬まれたり中傷されたり、出来なかったら出来なかったで上司に叱責されるし、しかも時にはセクハラの危険もあるし、男尊女卑のオヤジどもとも戦わなくちゃいけなかったりして、そりゃもう大変。(もちろんそんなマイナス面ばかりではないけれど)
そんな中で頑張ってる女性たちの描写がすごく素敵です。特に主人公の墨田翔子、こんな女性だったら上司にしたいなあって思っちゃう。人に対する好き嫌いは当然あるけど、それとは別にいい仕事をする人間は認めているし、ミスは容赦なく指摘する。相談事をした時は意外と親身になってきちんと考えてくれ、それだけでなく行動に移す。
1人ぼっちの自分の姿に、時には自嘲気味になる彼女なんですが、きっと自分で思ってるほど嫌われてるわけじゃないんでしょうね。そりゃあこれだけ仕事ができる女性が上司だったら、意識もするし、とっつきにくく感じても不思議じゃないです。まあ、あんな風に人前で計算ミスの指摘をされたくはないですが...(^^;。 相談事をした女性たちも、その懐の意外な深さに驚かされたはず。そこらの男どもより、ずっと男前。最後の対決もかっこよかったな。(新潮社)


+既読の柴田よしき作品の感想+
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき
「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき
「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき
「夜夢」柴田よしき
「激流」柴田よしき
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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7編の連作短編集。最初の話の脇役が次の話では主役にまわり、その話の脇役がその次の話の主役になり... という形式。こういうのはかなり好き。でもって、7編中3編は男性視点。島本さんの作品で男性視点というのは、もしかしてこれが初めてじゃないですか? なかなかいいですねえ。作品を読んでて一番気に入ったのが体重100キロを越すバーテンダーの針谷くんなんです。高校時代、可愛い女の子に告白して付き合い始めながらも、「ずっと彼女はなにか勘違いしているのだと僕は疑っていた」というほど、自分の外見にコンプレックスがある男の子。幼馴染の女の子に告白されそうになると、「男なのに胸があるんだよ」と触らせてかわしてしまったり。でもいざという時に頼りになる素敵な男の子。
あとがきにも書かれているように、「生真面目だったり融通がきかないほど頑固だったりするのに、その反面どこかウカツで変に不器用」な登場人物たち。これまでの作品、特に「ナラタージュ」のような熱さは感じなかったですし、幸せな場面ばかりではないですが、それでも読んでいて心地良い穏やかさがありました。(マガジンハウス)

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2001年9月11日に起きた同時多発テロの後のニューヨークを描いたノン・シリーズ作品。とは言っても、それはあくまでも背景であって、そのこと自体にはそれほど触れてませんが...。
主人公は特にいなくて、敢えていえばテロを体験したニューヨーカー全員、もしくはニューヨークという街自体、でしょうか。書いてるのがブロックなので、どの人物もそれぞれに存在感たっぷり。ニューヨークという街もリアル。でもねー、長いんですよ。いつかは全作品を読みたいと思ってるほど好きなブロックだけど、これはどうなんだろう...? この半分の量でぴりっと引き締めて欲しかったー。読んでいて、ちょっとつらかったです。本筋とは直接関係ないエピソードも多かったですしね。しかも性的倒錯場面の多いこと。確かに訳者あとがきで田口俊樹さんが書いてらっしゃるように、9.11テロが「死」だとしたら、ここに描かれている性は「生の謳歌」だというのは納得がいくんですが...。きっと自分が生きている証のようなものを求めて、ひたすらそちらに突き進んでしまってるんでしょうけれど。
途中私立探偵が登場して、その男が警察に20年勤めた後に私立探偵となった飲んだくれ、とあったので「もしや...?」期待したんですが、マット・スカダーではなかったようでちょっと残念。まあ、ローレンス・ブロックはそういうことをするタイプじゃないですね(^^;。(二見文庫)


+既読のローレンス・ブロック作品の感想+
「死者の長い列」ローレンス・ブロック
「殺しのリスト」ローレンス・ブロック
「処刑宣告」ローレンス・ブロック
「砕かれた街」上下 ローレンス・ブロック
Livreにマット・スカダーシリーズ、「泥棒は野球カードを集める」「殺し屋」の感想があります)

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リンダ・ハワード作品を読むのは初めてです。全然知らなかったんですが(この本もいきなり貸してもらったので)、「ロマンス小説の女王」と呼ばれる方らしいですね。
これは、CIAの契約エージェントという女性が、親友夫婦(2人とも引退したCIAの契約エージェント)とその養女を殺された恨みから、常に厳戒警備のマフィアのボスを殺し、引退していたはずの親友夫婦が、なぜまた危ない仕事を始めたのかを探っていくという話。マフィアの一家は当然血眼になって彼女を探すし、勝手な行動をしたことからCIAからも追われることになるし、CIAから派遣された男とは恋仲になるしで、サスペンスとミステリとラブロマンスの三本立て。
彼女がマフィアのボスを暗殺するシーンはかなりの緊迫感だし、その後その一家の手下に追われながらも鮮やかに撒いてしまうところなんて結構面白いんだけど... 全体的に見ると、なんだか無難にまとまり過ぎてたような気も。最初の方で「なんでそんな行動をする?」と思ったのが尾を引いたのか... それとも肝心のラブロマンス部分がいかにもアメリカ的でイマイチだったのか...(多分どっちも) 相手の男性は面白いキャラなんですけどね。でもすんなり上手く行き過ぎというか... ハリウッド映画的というか... ああ、映画にするといいかもしれないですね。そんな感じの作品でした。(二見文庫)

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掲示板で「紅はこべ」(大好き!)の話が出てた時に、信兵衛の読書手帖の信兵衛さんに教えて頂いた本。
時代はフランス革命直前。親友を貴族に殺されたアンドレ・ルイが、その貴族を訴えようとするんだけど、大衆を扇動して逆に官憲に追われる身になり、身を潜めたり旅の役者一座に加わってみたり、剣の教室の助手になったりしながら、その貴族に復讐を誓うという話。恋愛あり復讐ありの、波乱万丈な冒険活劇。いやー、面白かったです。結構長い話なんですけど、読み始めたら一気に読んでしまいました。こういうの好き~。主人公のアンドレ・ルイが、何をやらせても上手くこなしちゃうようなところはちょっと出来すぎなんですけど(笑)、でもだからこそテンポがいいし、読んでて気持ちがいいんですよね。それに特に何もできなかった青年が、持ち前の熱意で努力していくうちに、だんだんと仇の貴族に対抗できるまでに成長していくという成長物語でもあったし。決して美男ではないけど、でもかっこいいんです。(表紙のアレは違いますよー)
スカラムーシュとは、「イタリア古典喜劇の中の人物で、根は臆病のくせに、つねに大ぼらをふき、大言壮語していて、何か事件が起こると、たちまち逃げ腰になるという道化役」とのこと。アンドレ・ルイが旅の一座に加わった後、大当たりをするのがこのスカラムーシュの役なんです。でもそれだけじゃないんですよね。アンドレ・ルイは全然臆病でもないし、大ぼらもふいてないんだけど、でも頭の回転がすごく速いし、皮肉たっぷりだし... 大衆を扇動した最初の大演説以来、常に何かを演じ続けているようなところも、スカラムーシュという題名にぴったりでした。(創元推理文庫)

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中国歴史小説の情報がたっぷり詰まったサイト小芙蓉城の冰児さんが、「風の王国」シリーズの地図を作ってらっしゃいました!(コチラ
「風の王国」は、唐の時代に李世民(太宗皇帝)の娘として吐蕃(チベット)へと嫁ぐことになった文成公主を描いた作品。(私の感想はココココ) コバルト文庫なんですが、しっかりと史実を捉えつつ、毛利志生き子さんなりの解釈で作り上げられた物語はなかなか読み応えがありますし、チベットといえばバター茶とヤクとダライ・ラマ... ぐらいの知識しかない私にとっては、風俗描写もとても興味深いんですよね。でも、大好きな中国物ですら大体の場所しか把握してないのに、チベットなんて...! 挿絵入りの人物紹介なんていらないから、地図が載ってたらいいのになあって思ってたんです。
当然、7~8世紀当時の資料なんていうのもなかなか残ってないわけで、作者の毛利さんはもちろんのこと、地図を作られた冰児さんも大変だったと思うのですが、ほんと嬉しい! 今後このシリーズを読む時は、この冰児さんの地図を参考にさせてもらおうと思ってます。今までも、特に最初の文成公主お輿入れの旅、吐谷渾の辺りがイマイチ掴みづらかったんですよー。地図があると、ほんと助かります。嬉しいなあ。


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国5 月神の爪」毛利志生子
「風の王国6 河辺情話」毛利志生子
「風の王国7 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国8 目容の毒」毛利志生子
「風の王国9 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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本が好き!お気軽読書日記のもろりんさんに教えて頂いた本。本当はもっと早く読むつもりだったのですが、最初に読もうとした時はあまり話に乗れなかったので、一旦やめてそのまま熟成させてたんですよね。で、15回目のたらいまわし「私の夏の1冊!!」で、sein の nyu さんが同じくシュティフターの「晩夏」を挙げてらして(記事はコチラ)、そろそろまた読んでみようと思ったのでした... ってそれから既に1ヶ月は経ってるんですが(^^;。
なんとなく、身辺を綺麗に片付けてから、手を洗って正座をして取り掛かりたくなるようなイメージ... と思っていたら、nyuさんも「気分的精神的に落ち着いたときでないと入り込めません」と仰ってて、ああやっぱりそういう本なんだと納得。今回はちゃんと1人静かに読める環境を整えて臨んでみました。(笑) まあ、元々本を読むなら静かなところがいいんですけどね。以前は音楽をかけながら本読むこともあったはずなんですが、今はそういうのは全然ダメ。音がしても、例えば電車の中なら全部いっしょくたの「ざわめき」になっちゃうので大丈夫なんですが、今度は集中しすぎて乗り過ごしてしまったり... というのはともかく。

ここには「水晶」「みかげ石」「石灰石」「石乳」の4編が収められているんですが、どれも田舎の小さな村の人々のごく日常的な話を丁寧に掬い取って物語にしたという感じの物語。シュティフターは19世紀の作家なんですが、元々は画家なのだそうで、自然の描写が本当に美しくて驚きました。特に表題作の水晶。

しかしほら穴の内側は、一面に青かった。この世のどこにもないほどに。それは青空よりもはるかにふかく、はるかに美しい青さであった。いわば紺青の空色に染めたガラスを透してそとの光がさしこんでくるような青さであった。

これは幼い兄妹が雪山で道に迷って入り込んだ洞窟の描写。2人は結局、あまりの青さに恐ろしくなって逃げ出してしまうのですが、これこそが「水晶」なんですね。あと、岩屋の中から見上げる夜空も綺麗だったなあ。「石灰石」の、雨上がりの石灰の微妙な色合いもとても綺麗だったし... とは言え、もちろん綺麗なだけじゃなくて、芯の強さのようなものも感じられました。恐ろしい疫病も激しい嵐も厳しい雪山も自然の一部で、人間はそんな自然と共存しているんですね。シュティフター、他の作品もぜひ読んでみたくなりました。「晩夏」にも惹かれるんだけど、「これを読み通した者にはポーランドの王冠を与えよう」とも言われた作品だとか... (それだけ盛り上がりに欠けるという意味みたいです) nyuさんは、全く単調に感じなかったと仰ってますが。まずは「森の小道・二人の姉妹」にしてみようかな。(岩波文庫)


+既読のシュティフター作品の感想+
「水晶 他三篇 石さまざま」シュティフター
「森の小道・二人の姉妹」シュティフター
「晩夏」上下 シュティフター
「ナレンブルク 運命に弄ばれた人々の城」A.シュティフター
「石さまざま」上下 アーダルベルト・シュティフター
「森ゆく人」アーダルベルト・シュティフター
「書き込みのある樅の木」アーダルベルト・シュティフター

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「トマシーナ」で、あんまりひどい獣医が出てきたもので、ほのぼのする獣医さんの話が読みたくなりました。ドクター・ヘリオットはヨークシャーの小さな町で50年間も獣医をしてきた人なんですけど、グラスゴー出身なんだそうなんです。「トマシーナ」のマクデューイもグラスゴーにいたという設定。なんか似通ってる?! これは続けて読めという意味?!(笑)

「ドクター・ヘリオットの犬物語」は、文字通り犬のエピソードばかり集めた本。前に「ドクター・ヘリオットの猫物語」(感想)を読んだんですが、丁度それの犬版ですね。読んでると一昨年死んだうちの犬のことを思い出しちゃって途中ちょっと辛くなったんですが... でもこちらも良かったです。美食家のでぶ犬だったのに、すっかりスポーツマンとなってしまったトリッキー・ウーのエピソードが良かったなあ。でも、こっちも良かったんだけど、それ以上に良かったのが「Dr.ヘリオットのおかしな体験」。これは第二次世界大戦中に英国空軍に入隊したドクター・ヘリオットが、厳しい訓練の合間に今まで診てきた動物たちのことや、出産を控えている妻のヘレンのことなどを思い出すという形式。背景に戦争があるのに、ドクター・ヘリオットのほのぼのとした味わいは変わらなくて、妻に会いたくて何度か抜け出した話なんかが面白おかしく綴られていきます。「犬物語」「猫物語」と違って、牛や馬、豚の話が多いんですけど、犬や猫みたいな小動物だけじゃなくて、家畜たちもしっかり飼い主たちの家族の仲間入りをしてるんですね。飼い主たちの一喜一憂が伝わってきて、なんだか読んでいるだけでもドキドキ...
「Dr.ヘリオットのおかしな体験」は、結構分厚い本なのにするすると読めちゃいます。もちろん1つずつのエピソードが短くて読みやすいというのもあると思うんですけど、池澤夏樹さんの訳文の読みやすさも大きいかと。(集英社文庫)


+既読のジェイムズ・ヘリオット作品の感想+
「ドクター・ヘリオットの猫物語」ジェイムズ・ヘリオット
「ドクター・ヘリオットの犬物語」「Dr.ヘリオットのおかしな体験」ジェイムズ・ヘリオット

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以前「ジェニィ」を読んで以来、読もう読もうと思っていて、鴻唯さんにもいいと言われていた「トマシーナ」、ようやく読めました。
この物語に登場するのは、獣医のマクデューイと、その娘のメアリ・ルー、そして猫のトマシーナ。本当は人間の医者になりたかったのに、父親に無理矢理獣医にさせられてしまったマクデューイは、腕はいいけど動物にはまるで愛情がないんですよね。もう先が長くはないと見れば、すぐに安楽死を勧めるような医者。飼い主の「1日でも長く一緒にいたい」なんて気持ちはまるで理解できないんです。だからトマシーナの具合が悪くなった時も、あっさりと安楽死させちゃう。で、娘との間に深い亀裂が入ってしまいます。

いや、ほんと良かったです。外側は「トマシーナ可愛い~」って読めるようなお話なんですが、その奥にはすごく厳しい現実があるんですね。色んなことが、この1冊の中にぎゅっと濃縮されてるような感じ。娘を溺愛してるようで、結局自分のことしか考えてなかったマクデューイも、そんな父親に気付いてしまうメアリ・ルーも、もうほんと痛々しくて見てられないほどだし、そんな2人を助けることになる赤毛の魔女・ローリやペディ牧師、ストロージ老医師という人々もそれぞれに良くって、特にメアリ・ルーとペディ牧師が話す場面が凄いんです。お葬式やジプシーの場面などもそれぞれにとても印象的。しかもトマシーナの語りは可愛らしいし、古代エジプトに君臨していた猫の女神、バスト・ラーの語りも面白かったし... もう硬くも柔らかくも自由自在って感じ。正直、ここまで読み応えのある作品とは思いませんでした。ポール・ギャリコ、凄い!
ジェニィはトマシーナの大叔母さんなんですって。血縁関係だけで、物語同士に直接の繋がりはないようですね。(笑) (創元推理文庫)


+既読のポール・ギャリコ作品の感想+
「トマシーナ」ポール・ギャリコ
「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ
「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ
「われらが英雄スクラッフィ」ポール・ギャリコ
「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ
「猫語の教科書」ポール・ギャリコ
「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」他2冊 ポール・ギャリコ
「七つの人形の恋物語」「スノーグース」ポール・ギャリコ
「トンデモネズミ大活躍」「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ
「ザ・ロンリー」ポール・ギャリコ
「「きよしこの夜」が生まれた日」ポール・ギャリコ
Livreに「ジェニィ」の感想があります)

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マット・スカダーシリーズ13作目。このシリーズにもIT化の波が来ていて、マット・スカダーもTJという助手にしきりとパソコン導入を勧められてます。
今読むと、「まだパソコン使ってないの?」「やっぱりマット・スカダーも新しい物は苦手なのねー」って感じだったんですけど、でもよく考えてみると、この文庫が出たのは今年なんですけど、単行本で出たのって1996年なんですよね。1996年でパソコンがまだでも、それって全然遅くないんじゃ... てか、3作前の「獣たちの墓」で、ハッカー少年たちが大活躍するんですけど、この作品が日本に発表されたのが1993年。まだWindows3.1の時代じゃん!(日本語版でも、それほどタイムラグがないはず) それ以前の作品でも、警察のコンピューターで情報を調べてたような気がするし、実は結構時代を先取りしてる作品だったんですねー。今まではどちらかと言えばアナログなイメージを持ってたシリーズだけにびっくりです。だって、マット・スカダーは「足で稼ぐ」タイプの探偵なんですもん...。この作品でも、マット・スカダーがTJをポケベルで呼び出してるのが違和感だったんですが、1996年頃だとそっちの方が普通ですものね... ほんとびっくり。

でもこういう最先端技術を本に取り入れるのって難しいですね。いくら新しいこと書いても、出た時すぐに読まなかったらどんどん古くなっちゃうんですもん。最先端技術だけでなく、時事的な問題も。例えば、服部真澄さんの作品は、「龍の契り」と「鷲の驕り」しか読んでませんが、どちらもとても読み応えがあったし、出てすぐ読めばものすごーく旬な作品だったはずなのに、3~4年遅れて読んだ私にとってはちょっぴりツラかったんですよね。(「龍の契り」は、香港返還の直前に読みたかった!) でも井上夢人さんの、コンピューターウィルスを扱った「パワー・オフ」は、1996年に出た作品で読んだのが2002年。まだフロッピーディスクしかないような時代の話なのに、全然古く感じなかったんです。川端裕人さんの、クラッカー集団のサイバーテロの話「The S.O.U.P.」も夢中になって読んだし、他にも全然古く感じなかった作品は思い出せば色々とあるはず。
一体どこにその差があるのかしら?

...と思いつつ。
別にこの作品が古臭く感じられたという話じゃないんですけどね。この作品の中では、そういう電子機器はあくまでもメインじゃないし。でもそろそろポケベルの代わりに携帯電話が登場して、パソコンが活躍する頃かもしれないなー。(二見文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「過去からの弔鐘」「冬を怖れた女」「一ドル銀貨の遺言」「暗闇にひと突き」「八百万の死にざま」「聖なる酒場の挽歌」「慈悲深い死」「墓場への切符」「倒錯の舞踏」「獣たちの墓」「死者との誓い」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「死者の長い列」ローレンス・ブロック
「処刑宣告」ローレンス・ブロック

+既読のローレンス・ブロック作品の感想+
「殺しのリスト」ローレンス・ブロック
「砕かれた街」上下 ローレンス・ブロック
Livreに「泥棒は野球カードを集める」「殺し屋」の感想があります)

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久々の猫の事件簿シリーズ。
「猫が消える町」の方は、ナンシー・ピカードの表題作が一番面白かったです。このシリーズでナンシー・ピカードの作品は2作目。やっぱり短編もなかなかいい感じ。短いのに、町の情景やそこに住む人々の明るい雰囲気が伝わってきました。他の作品は、まずまずってとこかな... 本としては「in ハリウッド」の方がずっと面白かったです。こちらはハリウッドが舞台となっているだけあって華やか。懐かしい有名スターの名前も登場するし、映画や舞台を巡る人々の人間ドラマみたいなのも面白かったし。(そういえば、メガンという名の女性がやけに登場するんですけど、女優や歌手に向いてる名前なんでしょうか...?)
でも「猫が消える町」には9編なんですが、「in ハリウッド」には17編も入ってるんです。合計26編。これだけ短編が続くとちょっとツライものが...。短編集を読んでるといつも、無性にずっしりした長編が読みたくなってくるんですよね、私(^^;。(二見文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「猫の事件簿」ピーター・ラヴゼイ他
「貴婦人のペルシャ猫」エドワード・D・ホック他
「魔女のオレンジ猫」シャーロット・マクラウド他
「宝石商の猫」ウィリアム・L・デアンドリア他
「猫が消える町」「inハリウッド 猫の事件簿」ナンシー・ピカード他

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コバルト文庫から出ていた「かぜ江」シリーズの続編が、角川ビーンズ文庫から出てました。これは三国志を、孫策と周瑜の友情を中心に描いたシリーズ。コバルト文庫で三国志っていうのもすごいと思うんですが、これが意外としっかりとした作品なんですよね。しかも私の好きな周瑜が主役級で出てくるとあれば、やっぱりこれは読むしかないでしょう♪
ということで、2年半ぶりぐらいに読んだんですが... んんー、ちょっとパワーダウンかしら。話としては、コバルトの「約束の時」の直後から「旋風は江を駆ける」の直前辺りまで。あとがきを読むと、出版社を移して完全な続編を書くということで、かなり苦労されたみたいですね。確かにシリーズ物とはいえ、やっぱり角川ビーンズから出るのは初めてだから(しかもコバルトの方は絶版)、登場人物の紹介も最初からやりなおさなくちゃいけないし、シリーズのファンにもそれなりに読ませなくちゃいけないし、色々と大変なんでしょうね。でも、そういう迷いが作品に出てきてしまっているような...。直情型の孫策と冷静沈着な周瑜は相変わらずなんだけど、以前の熱さが感じられなかったのがちょっと残念。まだ本調子じゃないだけで、これからガンガン書いて下さるといいのですが!

この朝香さんの三国志は正史ベース。私が好きな北方三国志も正史ベース。「三国志演義」は実はそれほど好きじゃないし、やっぱりこれは、いつかはちゃんと正史を読んでみなくちゃいけないなあ。でも、正史はちくま学芸文庫から出てるんですけど、文庫なのに1冊1500円ぐらいするんですよね。しかも全8巻... うーん...(^^;。(角川ビーンズ文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「運命の輪が廻るとき」朝香祥
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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10歳の時に母を失った瓔国公主・香月は、16歳の時に閃王・巴翔鳳に嫁ぐことになります。しかしそれは香月にとって、母の命を奪った巴翔鳳を暗殺するためだったのです...。

「雄飛の花嫁」(感想)で登場した新興国・閃もこの物語の頃には建国50周年。初代閃王・巴飛鷹も代替わりして今は2代目の巴翔凰の治世。2代目とは言っても、息子ではなく孫なんですが。
あらすじを読んだ時は、てっきり「雄飛の花嫁」と同様に、敵同士の2人が徐々に惹かれあうパターンかと思ったんですが、また違う展開でした。痛くて切ない系のお話。でも意外性を突こうとしてるのはいいんですけど、これは奇をてらいすぎたという気も... これなら、ありきたりでも王道の物語を気持ち良く読ませてもらった方が良かったような...(しかも特に驚かなかったし) 覇気のない王がかっこよく見えたのは最後の一瞬だけ。ヒロインには、最後まで感情移入できず... うーん。しかも彼の出奔の話はどうなったんでしょ。その辺りもきっちりと説明して欲しかったなあ。それがまた別の物語になるのなら、いいんですけど。
なんだか3作で徐々にパワーダウンしていってるような気も... 雰囲気作りはすごくいいのに勿体ないわー。(講談社X文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「雄飛の花嫁」「天の階」森崎朝香
「翔佯の花嫁 片月放浪」森崎朝香
「鳳挙の花嫁」森崎朝香

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「にぎやかな眠り」に続く、シャンディ教授シリーズの2作目。今回は強盗とか殺人事件とか、バラクラヴァ農業大学畜産学部の大切な大切な豚のベリンダが誘拐されたりとか(表紙の彼女です←天野喜孝さんのイラスト、可愛い!)、年に1度の馬の競技会に対する邪魔工作があったりと盛りだくさん。
やっぱりこのシリーズ、登場人物がすっごくいいです。特に今回はイデューナという女性がいいんですよー。この女性に対するシャンディ教授の第一印象は、「グッドイヤーの気球そっくりの体形」の「人間ツェッペリン」。このグッドイヤーの気球というのが分からなかったので検索してみたらこんなのが出てきました。ひ、ひどい...(^^;。 歩き方も、「七月四日の独立記念日のパレードで子供が持っているピンクの風船のように、元気よくはずむ感じでただよって」いるですって。すごい言われようですね。でも、彼女がにっこりすると、誰もが笑顔を返さずにはいられないし、男性陣はみんな彼女が気になって仕方ないのです。そして豚のベリンダの世話をしている畜産学部長のダニエル・ストット教授もかなりいい恰幅なんですが、「ストット教授が豚に生まれていたら、きっとこのうえなくすばらしい豚になっていたことだろう」という表現をされてて、なんか可笑しい。農業大学を中心とした町なので、普通の都会的なスレンダーな美女やハンサムさんには用がないみたいです。(笑)
盛りだくさんな出来事が綺麗にパタパタと解決していくのも気持ちいいし、しかも思わぬところに伏線が潜んでいてびっくり。同僚のエイムズ教授の家に、おっそろしい家政婦さんが来てしまったので(ものすごい掃除魔で、家の前を通るだけで漂白剤の匂いがする始末...)、シャンディ教授はイデューナをエイムズ教授の奥さんにして、その恐ろしい家政婦を追い出そうなんて言ってたりするんですけど、その辺りの展開も楽しいところ。殺人は起きるんですが、それでもやっぱりほのぼのした魅力が失われなくて素敵。続きも読みたいんだけど、次の「ヴァイキング、ヴァイキング」は未入手。積読本がもう少し減ったら買って来ようっと。(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「にぎやかな眠り」シャーロット・マクラウド
「蹄鉄ころんだ」シャーロット・マクラウド
「ヴァイキング、ヴァイキング」「猫が死体を連れてきた」シャーロット・マクラウド

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クリスマスのイルミネーションの時期だけ、見物人で賑わうバラクラヴァ。その中でただ1人協力せず、毎年グランド・イルミネーション委員会にせっつかれていたシャンディ教授、今年は悪戯心を出してしまいます。専門業者に悪趣味な飾りつけと大音響のクリスマスソングを頼み、ちょっとやそっとじゃスイッチを切れないようにして、そのまま船旅に出かけてしまったのです。しかし船のエンジン・トラブルで、すぐに自宅に戻ることになった教授を待っていたのは、暗くひっそりと静まり返った家。そしてイルミネーション委員会のジェマイマの死体でした。

ずっと気になってたシャンディ教授シリーズの第1作。ようやく読めました。
大学教授が探偵役で、その専門知識を生かして推理というミステリは結構ありますし、比較的最近読んだ中では、アーロン・エルキンズのスケルトン探偵・ギデオン・オリヴァー博士のシリーズが印象に残ってるんですが(「古い骨」「暗い森」の感想)、こちらのシャンディ教授は、応用土壌学が専門。また変わったものを持ってきてますねー。(笑) 応用土壌学と言われても正直ピンと来ないんですけど、どうやら土というよりも、植物の品種改良がメインみたいです。巨大なカブを作り出していて、その特許料が毎年結構入ってきてるみたいだし、毒性を持つ植物なんかにも詳しいみたいだし。とは言っても、この1作目ではその知識がそれほど生かされていないようだったのが、少し残念だったのですが。これからのシリーズで、もっとそういう部分が前面に出てくるといいな。
殺人は起きるんだけど、基本的にほのぼのとしたミステリ。同僚のエイムズ教授やその親戚のヘレン・マーシュ、そして大学の学長夫妻など、周囲の登場人物がすごく個性的で楽しかったし、これは続きも読んでみたいな。これから先の展開も楽しみです。(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「にぎやかな眠り」シャーロット・マクラウド
「蹄鉄ころんだ」シャーロット・マクラウド
「ヴァイキング、ヴァイキング」「猫が死体を連れてきた」シャーロット・マクラウド

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アナ・トレントというのは、スペインの女優さん。アナ・トレントの鞄とは、彼女がヴィクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき」という映画に出演した時に手にしていた鞄のこと。これがクラフト・エヴィング商會は気になって仕方なくて、仕入れの旅に出ることになります。そして途中で様々な一品物の商品を手に入れることに...。

せっかく「ミツバチのささやき」を引き合いに出しているからには、もっとあの映画の雰囲気を思い出させてくれるような商品を揃えて欲しかった気もするのですが... 映画に繋がりが感じられるのって、せいぜい最初に登場する携帯用のシガレット・ムービーや、「ひとりになりたいミツバチのための家」ぐらいなんですよね。それが少し残念。でも「どこかにいってしまったものたち」のような系統の、とてもクラフト・エヴィング商會らしい本です。(装幀の色も良く似てますねー)
私が惹かれたのは、携帯用のシガレット・ムービー、稲妻の先のところ、古代エジプト人が魂の重さを量るときに使った羽・Maat にちなんだ、羽のような有るか無きかのはかないお菓子・マアト。あと、分かる人には分かると思いますが(笑)、どうしても気になってしまうのが「F」の小包み... この「F」ってどこから出てきたのかしら! それがすっごく気になります。しかも他の商品を見てると、もしやこれはあの本がヒントになって...? というのがちらほらあったりして、商品そのものよりも、クラフト・エヴィング商會さんの読書傾向がものすごーく気になってしまう私なのでした。(^^ゞ (新潮社)


+既読のクラフト・エヴィング商會の感想+
「アナ・トレントの鞄」クラフト・エヴィング商會
「犬」「猫」クラフト・エヴィング商會プレゼンツ
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

+既読の吉田篤弘作品の感想+
「百鼠」吉田篤弘
「78」「十字路のあるところ」吉田篤弘
「という、はなし」吉田篤弘
「空ばかり見ていた」吉田篤弘
「それからはスープのことばかり考えて暮らした」吉田篤弘
「小さな男*静かな声」吉田篤弘
Livreに「フィンガーボウルの話のつづき」「つむじ風食堂の夜」「針がとぶ」の感想があります)

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15歳だったアルネが亡くなって1ヶ月。ハンスは、アルネの遺品を手に取りながら、色々なことを思い出します。アルネは一家心中で1人だけ生き残った少年。ハンスの家に引き取られ、それ以来ハンスはアルネと部屋を共有していたのです。アルネはなぜ死んだのか...

先日読んだ「遺失物管理所」(感想)と同じジークフリート・レンツの作品。あちらも、読み終わってみるとなんだか物悲しく感じられたんですが、こちらは作風がまた少し違っていて、最初から最後まで透明な哀しさの中に沈みこんでいるようなイメージでした。もちろん、アルネという少年が死んでしまっていることが最初から分かっているせいもあるんですけど...
このアルネという少年がものすごく純粋で... でも純粋すぎて、脆く壊れてしまった硝子細工という感じなんですよね。ハンスやハンスの両親みたいな頼れる人間もいたし、誰にも心を開かなかった男にも心を開かせちゃったし、学校の教師はアルネの才能を認めてるんだけど... でも同年代の仲間にしか埋められない孤独というのがあって。切ないなあ。
でも、いい話だったんだけど... 私は「遺失物管理所」の方が好きかな。(新潮クレストブックス)


+既読のジークフリート・レンツ作品の感想+
「遺失物管理所」ジークフリート・レンツ
「アルネの遺品」ジークフリート・レンツ

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「フランケンシュタインの方程式」「美亜へ贈る真珠」「清太郎出初式」「時空連続下半身」「詩帆が去る夏」「さびしい奇術師」「地球はプレイン・ヨーグルト」の7編が収められた短編集。14回目のたらいまわし「時の文学!」の時に、どこまで行ったらお茶の時間の七生子さんが「美亜へ贈る真珠」を挙げてらして(コチラ)、読みたいなーと思ってたんですが、今回の「美味しそうな食べ物が出てくる本は?」では、AZ::Blog はんなりと、あずき色のウェブログのoverQさんが「地球はプレインヨーグルト」を挙げてらして(コチラ)、ますます読みたくなっちゃったんですよね。で、図書館に行ってみると、どちらも入っているこの本が! 早速借りてきちゃいました。

私が梶尾真治さんの名前を知ったのは、多分「黄泉がえり」の映画化の時だと思うんですが(つまりかなり最近)、随分前から書いてらっしゃる方だったんですね。この本も1979年発行だし。しかもホラーの人なのかと勝手に思い込んでたら、ものすごいSF。(笑)
いやー、面白かったです。ドタバタな「フランケンシュタインの方程式」「地球はプレイン・ヨーグルト」も面白いし、リリカルな「美亜へ贈る真珠」「詩帆が去る夏」も素敵。短いけど、「さびしい奇術師」みたいな作品も好き。いや、でも、「地球はプレイン・ヨーグルト」にはほんとびっくりです。overQさんのエントリで、味覚で会話する宇宙人とのコンタクトの話とは聞いていたんですが... overQさんが書かれてエントリを直接読まれた方が遥かに伝わってくると思うので細かいことは省略しますが... 読む前からすごく期待がふくらんでてどうしようと思ったんですけど、実際読んでみたら期待以上! わはははは。
「美亜へ贈る真珠」は、梶尾真治さんのデビュー作とのこと。航時機というタイムカプセルのような機械に入ってしまった恋人を見に来る美亜。でもその機械の中の時間は機外の85000分の1で進むので、美亜の1日は恋人にとっては1秒ほど。あっという間に美亜は恋人よりも年を重ねてしまうんですよね。うにゃーん、なんて切ないラブストーリーなんでしょう...。すごく静かな雰囲気が素敵だし、しかもラストシーンの美しいことったら。  
他の作品もそれぞれに楽しくてバラエティに富んでいて、いや、ほんと発想が凄いです。

私の読んだこの本は既に絶版となっているようですが、それぞれの作品は右の3冊で読むことができます。「美亜へ贈る真珠 梶尾真治短篇傑作選 ロマンチック篇」で読めるのは、「美亜へ贈る真珠」「詩帆が去る夏」、「もう一人のチャーリイ・ゴードン 梶尾真治短篇傑作選 ノスタルジー篇」で読めるのは「清太郎出初式」、「フランケンシュタインの方程式 梶尾真治短篇傑作選 ドタバタ篇」で読めるのは「フランケンシュタインの方程式」「地球はプレイン・ヨーグルト」。(ハヤカワ文庫JA)

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列車の車掌の仕事から遺失物管理所へと異動になったヘンリー。遺失物管理所は出世も望めない、列車の待機線のような場所。しかしヘンリーに出世するつもりはまるでなく... ただ気持ちよく仕事ができれば十分なのです。

駅という場所は、これから旅立つ人や帰ってきた人、単に通り過ぎていくだけの人々が集まる、それだけでもドラマを感じさせる場所。帯にも「ここでは、今日もさまざまな人間ドラマが幕を開ける」とあるし、様々な遺失物から色んな人生が見えてくるんだろうなあ、なんて思ってたんですけど、そういう話ではなかったようで...(笑)
むしろこの遺失物管理所にいるヘンリーを中心とした人間ドラマでした。24歳になっても、まだまだ少年のようなヘンリーは、イイとこの坊ちゃんらしくて、第一印象はただの困ったくん。出世欲がないのはいいとしても、お金に無頓着でお姉さんに借りまくってるみたいだし、人妻には無邪気に言い寄ってるし。あと、落し物の受取人に、その遺失物が自分の物だと証明してもらわなければならないんですけど、ナイフ投げの芸人が落とした商売道具を取りに来た時は、そのナイフの特徴を言わせるだけじゃ足りなくて、自分を的にナイフを投げさせちゃおうとするんですよ! 上司に見つかって、当然叱られることになるんですけど(笑)、大体においてそんな感じ。台本を落とした女優と、お芝居の一場面を演じてみたり。でもそんなとこがとても面白いし、そんな風に楽しそうに仕事をしてるのってヘンリーぐらいなんですよね。
作品自体はあまり明るくないんですが、ヘンリーの明るさのおかげで、それがいい具合に緩和されてるような... この空気感が何とも好きです。読み終わった後は、妙に物悲しくなっちゃったんですけどね。ヘンリーの曇りのない純粋さこそが、人々が失ってしまい、遺失物管理所に探しに来るものなのではないかとそんな気さえしてきます。(新潮クレストブックス)


+既読のジークフリート・レンツ作品の感想+
「遺失物管理所」ジークフリート・レンツ
「アルネの遺品」ジークフリート・レンツ

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フランス贔屓のイギリス人・ウィノットは短い休暇を取り、心の我が家である南仏へ。その道すがら、様々な料理の話が、家族や乳母の思い出、現在滞在しているホテルや行ってみたレストランの話を交えながら語られていきます。

1人称で書かれていることもあって、まるで料理エッセイみたいな作品。でもこれはタークィン・ウィノットという人物の自伝的作品という体裁なんですね。「序、謝辞、および本書の構成について」から既に物語は始まっていました。とにかく料理、料理、料理、料理... 物凄く沢山の料理が次々に登場して、そのレシピや薀蓄がイヤってほど語られていきます。で、その博覧強記ぶりに幻惑されていると、あらら... という仕掛け。かなりのブラック・ジョーク。
でもねー、とにかく読みづらいんです。何が読みづらいって、文章が。こんなに大変だったのも久しぶり... これは翻訳にも関係あるんでしょうけど、むしろ原文のせいなんでしょうね。1つ1つの文章の中に情報が目一杯詰め込まれてて、ちょっと気を抜くと目が文字の上を素通りしてしまいそう。しかも一体何が話の核となってるのか、全然見えてこないんです。自分勝手な語りだけが延々と。例えば、ヴォルガ産のキャビアについて。

ヴォルガ産キャビアがほどよい塩加減で処理される過程については、よく知られているといえるほど知られているわけではありません。ベテランの鑑定人--毛糸の帽子などをかぶり眼光鋭く長靴には短剣を差した見た眼はおそらく荒削りな男--が卵を一粒口に入れ舌の上で転がす。すると経験と勘が不思議かつ精妙な合体を遂げて眼前のチョウザメの卵にはどのていど塩をすべきか、瞬時にしてわかってしまう。量を誤れば美食学的にも経済的にも大損害、大打撃を引き起こしかねない(これが長靴に短剣の理由)。芸術家が--別に自分のことだけをいっているのではありませんよ--作品の価値をすばやく見抜くことができるのとこれは相通じるところがあって、眼にするのと判断するのがほぼ同時というか、いや、ごくわずかだが眼にする前にその価値がわかってしまうというか、量子物理学的パラドックスさながらというか、あるいは夢と同じで展開する物語は非常に複雑、大胆に時空を越え人や事物を断片的に次から次へと取り込んでいくうちに--死んだ親戚がテューバとなり飛行機でアルゼンチンへ飛ぶのが初めての性体験と重なってリボルバーが暴発すると実はそれが鬘で--いよいよ恐るべきクライマックスにさしかかる前にロンドン中に響きわたるけたたましいサイレン、じき核戦争が勃発するぞという場面が気がつくとなんのことはない、ありきたりながらどこまでも安心感漂う家のなかでの出来事で、これにて一件落着というかのように目覚まし時計が威勢よく鳴るか玄関でお気に入りの郵便配達人がポストに入りきらない大きな小包を抱えて立っている、そんな瞬間と似ていなくもないのであります。(P.23-24)

ひえー、疲れた...
...でもこういう文章はわざとだったんですね。必要以上に饒舌な文章が煙幕となって、主人公という人間をカモフラージュしていたのでしょう... 実は想像以上に奥が深い作品で、すっかり作者にしてやられてしまったのかもしれません。でも文章が読みにくいっていうのは、やっぱりつらいぞっ。(新潮クレストブックス)

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「優しい音楽」「タイムラグ」「がらくた効果」という3編が収められた、瀬尾まいこさんの最新作。(とは言っても、出たのは4月だけど)
3編とも、恋人関係の中に第三者が入り込んできて、恋人同士の基盤が揺らぎそうになりながらも、しっかりと持ちこたえて新しい関係を生み出す、そんな話。(で、いいのかしら...(^^;) それぞれに柔らかい優しさがあって、登場人物たちの人の良さがとても印象的。
でもね、「幸福な食卓」のことを考えると、どこか違う気がしてならないんです。別に「幸福の食卓」のような展開を望んでいるわけじゃないし、むしろあんなことは二度とゴメンなんですけど... でもここでこんな風に終わらせてもいいのなら、なぜ瀬尾さんはあの時あんなことをしたの? という疑問が再燃。
うーん、やっぱり納得できてなかったのね、私。きっととってもいい話なのに、なんだか素直に読めなくて淋しいわー。(双葉社)


これで、現時点で出ている瀬尾さんの作品は完読。とりあえずMy Best Books! の順位(コチラ)は変更なしで良さそうです。


+既読の瀬尾まいこ作品の感想+
「幸福な食卓」瀬尾まいこ
「優しい音楽」瀬尾まいこ
「温室デイズ」瀬尾まいこ
Livreに「卵の緒」「図書館の神様」「天国はまだ遠く」の感想があります)

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「怪笑小説」や「毒笑小説」に次ぐ、ブラックユーモア短編集。13編が収められています。
この中で目を引くのは、やっぱり4編の文壇物でしょうね。表紙の写真にも東野さんご自身が登場してるし、某文学賞に5度目のノミネートという作家・寒川は、どう考えても東野さんご自身がモデル。とは言っても、別に自虐的なギャグじゃなくて、周囲の「きっと東野は悔しがっているだろうな」という期待に応えてみたんだと私は思ってるんですが... どうなんでしょう。(笑) 作中に登場する唐傘ザンゲ氏の「虚無僧探偵ゾフィー」が読んでみたいな。勝手な想像としては、舞○王○郎作品がモデルなのかな、なんて思ってるんですが...?(笑)
そういう文壇物は独立させて1冊にして欲しかったような気はするんですけど、下ネタ物その他がミックスされて、「黒笑」が程よく緩和されているのかも。私が特に楽しんだのは「インポグラ」と「モテモテ・スプレー」なんですが、「シンデレラ白夜行」も面白かったな。突然の童話調に驚いたんですけど、このシンデレラこそが彼女なのですね~。(集英社)


これで東野作品は再びコンプリートのはずだったんですが、一昨日「容疑者Xの献身」が出ちゃいました。いやーん、なかなか追いつかない... じゃなくて、好きな作家さんの新作が次々に読めるなんて幸せ! 今度は早めに読めるよう頑張ろうっと。


+既読の東野圭吾作品の感想+
「ちゃれんじ?」東野圭吾
「さまよう刃」東野圭吾
「黒笑小説」東野圭吾
「容疑者Xの献身」東野圭吾
「さいえんす?」東野圭吾
「夢はトリノをかけめぐる」東野圭吾
「赤い指」東野圭吾
「たぶん最後の御挨拶」東野圭吾
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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1人娘を殺された長峰。娘が2人の少年にレイプされているビデオを見た時、彼は...。

久々の東野圭吾作品。分厚い2段組だし、相当重いテーマのようだったので、もしかしたらこれは相当ツラいかも... と思ったんですが、読み始めたら一気でした。いや、でも、もう何を書いたらよいのやら... 自分の子供、特に女の子を持つ親ならば、長峰に同情せずにはいられないでしょうね。こんなひどいことをしても、3年もすれば仮出所できるなんて! 「少年法は子供を裁くためのものではなく、間違った道に進んでしまった子供たちを助けて、正しい道に導くために存在する」なんていう言葉が、ほんと白々しく感じられちゃうほどのどうしようもない少年たち。長峰は、司法に任せておいても犯罪者に制裁など加えてくれないだろうと、自分で犯人を1人殺し、もう1人を追いかけることになるんですが、警察はそんな長峰に同情しながらも、長峰の次の犯罪を未然に防ぎ、しかも長峰を逮捕しなければならないわけで... 正義って一体ナニ? 
でも果てしなく広がってしまいそうな、少年法に対する問題提起を、これだけの作品にまとめた東野さんはやっぱりすごいです。(ここでは切り落としてる部分まで含めたら、ほんと何冊も書けそう) はああー、ずっしり。(朝日新聞社)


+既読の東野圭吾作品の感想+
「ちゃれんじ?」東野圭吾
「さまよう刃」東野圭吾
「黒笑小説」東野圭吾
「容疑者Xの献身」東野圭吾
「さいえんす?」東野圭吾
「夢はトリノをかけめぐる」東野圭吾
「赤い指」東野圭吾
「たぶん最後の御挨拶」東野圭吾
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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短編3編が収められています。他の金城作品と比べるととても静かな印象を受ける1冊。他の作品の特徴だった躍動感はすっかり影を潜めていて、物語は淡々と進んでいきます。ここに収められた3編のモチーフは「死」や「別れ」。しかもここで「死」の対象となるのは、まだまだ若い人間たち。自分の死を悟った彼らは、そのことに関して「対話」をすることになるのですが... これほど周囲に人間が沢山いても、何かがあった時にそれを聞いてくれる人間とか、言って欲しい言葉を言ってくれる人間はほとんどいないんだなあ...。
3編の中で私が特に気に入ったのは3作目の「花」。切なくて温かくて爽やか。そして1作目の「恋愛小説」の「彼女」の、たとえ生きていても会わなければ、それは死んでいるのと同じだという言葉はインパクトが強かった! でもほんとその通りなんでしょうね。
3編の舞台となる時代はそれぞれ違うんですが、共通する人物が登場。「SPEED」にも繋がっています。

金城一紀さんの作品も、これで全部読んじゃった。早く新作が出ないかな。(この間出たばかりですってば) でもこれも良かったんだけど、最後に読んだのがこれって、なんだか寂しい気分になっちゃう。普段の元気な作品が無性に再読したくなっちゃいました。(講談社)


+既読の金城一紀作品の感想+
「GO」金城一紀
「レヴォリューションNo.3」「フライ、ダディ、フライ」金城一紀
「SPEED」金城一紀
「対話篇」金城一紀
「映画篇」金城一紀

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宗の 素晴らしきかな、人生の宗さんに教えて頂いた本。1月から12月までの章に分かれていて、日常の家事を中心に四季折々の暮らしのこと、海外での思い出が綴られていきます。初版は昭和51年なんですが、それから30年ほどでどれだけ日本の主婦の「家事」が変わってしまったのかと考えるとびっくりです。確実に便利になってはいるけれど、日本古来の伝統とか優雅さは確実に失われているような... 昔ながらの生活の、なんと贅沢なことか。...物質的な贅沢じゃなくて、心の豊かさなんですよね。こんな風に日々の生活に気を配って過ごせたらいいなあ。
特に印象的だったのは、その月の月給袋の中身がだんだん軽くなってくると作るというオニオンスープ。材料はたまねぎだけでも、こっくりした美しい色や味を出すために飴色になるまで中火で気長に炒めて、熱々のスープのためにスープ皿はもちろん温めておいて、手間暇は十分かかってるんですよね。時にはこくをつけるために、炒める時に小麦粉を入れたり、水の代わりに牛乳を入れたり。でもそんな余分の買い置きもない時は、せめて仕上げにチーズをたっぷりとすりおろしてかけて。こんな贅沢なスープが「月末スープ」だなんて素敵~。

そういえば、今年のお盆は祖母の家にいたので、色々と手伝うことになったんですけど... というか私が最初から最後まで1人で全部しなくちゃいけなくなったのって初めてだったんですけど、祖母が「もう面倒だから○○はしなくてもいい」「略式にしてしまいましょう」と言うたびに、なんだかちょっぴり悲しかったんですよね。やるやらないはともかくとして、せっかくの機会だしと一通りのことは教わっておきたいなと思ったし、まあ実際には出来なかった部分もあるんですけど、私としてはとても良い経験になりました。これまで祖母や母がやってるのを手伝ってはいても、自分で全部やるとなるとまた別ですしね。(でも以前は形式ばったことがすごく嫌いで、そういうのに反発してたのに、私も変わったものだわー 笑)

そして読んでいると、突然彫金のページが出てきたのでびっくり。ここ数年はやってないんですけど、私もずっとやっていたのでなんか嬉しーい。(彫金と言うと分かりづらいですが、要は普通のジュエリー作りです) この方、木彫りも物凄くお上手なようなのに(木じゃくしに付けられた彫りが素敵)、彫金もされるとは。写真にうつっている道具類を見てると、なんか懐かしい...。 

少し時代がかった優しい語り口といい、毎日の暮らしをとても大切にしているようすから、暮しの手帖社から出ている「すてきなあなたに」を思い出しました。こちらも大好きなんです。あと、和の暮らしを教えてくれる本といえば、やっぱり「しばわんこ」シリーズでしょう。こちらもオススメです~。(文化出版局)

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生まれて初めて自転車に乗った4歳の時に、坂道を勢い良く降りて坂の下の家の庭に突っ込んだ昇平。その家にいたのは、昇平と同じ年の草太と、1つ年上の女の子・奏(かなで)。その時から友達となった昇平と草太の25年の物語。

大好きな竹内真さんの作品。ずーっと読みたかったんですが、ようやく読めました! 12回目のたらいまわしの「爽やかな春に読みたい青春小説」の時も、宙の本棚の小葉さんと(コチラ空猫の読書の空猫さんが挙げてらして(コチラ)、その時も読みたくてたまらなかったんですよね。実際読んでみると、ほんとそのお題にぴったりの、何とも爽やかな青春小説でした♪
小学校1年生の時の秘密の特訓に始まり、自転車で海を目指したり、友達が出来たり、自転車部を作ったりと、25年間の物語の主軸は自転車。かなり競技的な、専門的な方向まで突っ込んでます。でもそれが取っ付きにくくなったりしてなくて、すごく自然なんです。自転車が好きで好きで堪らないというのがすごく伝わってきます。きっと竹内さんご自身がお好きなんでしょうねー。しかもその自転車が登場人物たち自身の人生にも重なっていて... 途中で道が分かれることもあり、上り坂になったり下り坂になったりすることもあり、時には立ち止まることもあるんですけど、でもみんな自転車を通して繋がっています。見てるとすごく応援したくなっちゃう。こういう作品を読めると、ほんと幸せ! やっぱり竹内真さんの作品は大好きです~。(でもって、あの犬を連れた老人は... ですよね!?) (新潮社)


+既読の竹内真作品の感想+
「図書館の水脈」竹内真
「真夏の島の夢」竹内真
「じーさん武勇伝」竹内真
「自転車少年記」竹内真
「笑うカドには お笑い巡礼マルコポーロ」竹内真
「オアシス」竹内真
「ワンダー・ドッグ」竹内真
「ビールボーイズ」竹内真
「シチュエーションパズルの攻防」竹内真
Livreに「粗忽拳銃」「カレーライフ」「風に桜の舞う道で」の感想があります)

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「市民サーヴィス課臨時出張所」の貼り紙と折り畳み式らしい机と共に、市内のそこここに現れる「腕貫探偵」の連作短編集。
「日頃のご意見、ご要望、なんでもお聞かせください。個人的なお悩みもお気軽にどうぞ」なんて貼り紙と一緒に座ってる「腕貫探偵」を見た人たちは、ついふらふら~と寄って行って、話すつもりがなかったことまでどんどん話しちゃう。で、それを聞いた腕貫探偵が一言二言アドバイスして、あっという間に解決しちゃうという、そんな話です。どことなく、同じく西澤さんの「完全無欠の名探偵」みたい。腕貫探偵のアドバイスは確かに的確だけど、最後の部分は結局相談者が自分で推理してたりしますしね。もしやあの「みはる」が、神通力(?)が弱まって、ここの市役所に就職したのか...? なんて思っちゃいました。(笑)(腕貫探偵は、一応市役所の市民サーヴィス課一般苦情係... 本当なのかな?)
ものすごーくテンションが低い探偵なんで(笑)、緊迫感はほとんどないし、謎も小粒。でも登場人物がいいのです。本の後味を爽やかにしてくれた蘇甲純也と筑摩地葉子も良かったし(相変わらず素直に読めない名前...)、7編の中で特に気に入ったのは、「スクランブル・カンパニィ」で、玄葉淳子と秋賀エミリという2人の存在がとても強烈! 事件の内容や解決そのものよりも、 4課には他にどんな面々がいるんだろう、なんてそんなことが気になっちゃいました。その辺りの話も今度読んでみたいなあ。(実業之日本社)


+既読の西澤保彦作品の感想+
「方舟は冬の国へ」西澤保彦
「生贄を抱く夜」西澤保彦
「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」西澤保彦
「フェティッシュ」西澤保彦
「キス」西澤保彦
「春の魔法のおすそわけ」西澤保彦
「ソフトタッチ・オペレーション」西澤保彦
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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酒見賢一さんによる三国志。とは言っても決して真面目な「酒見三国志」ではなくて、私見入りまくり砕けまくりの読本と言った方が相応しいかも。でも酒見さん、「正史三国志」も「三国志演義」も漢字が難しくて読めなくて、適当に和訳された「三国志」をつらつらと眺めただけなんだそうですが... 本当に? その言葉が信じられないほど詳しいし、斬新な解釈や絶妙な突っ込みが満載です。
例えば、劉備の息子の劉禅が生まれる時に、母親の甘夫人が北斗を呑み込む夢をみたとか、白鶴が役所に来て40数回鳴いたとか、産屋に妙なる香りが満ちたとか結構な神秘現象が起きてるそうなんですけど、「凄まじい神秘現象のもとに生まれても駄目なヤツは駄目だという歴史的教訓を示すために書かれているのだとしか思われない」とか...(笑) もっと面白い部分もいっぱいあって、真面目な部分は真面目なんだけど、やっぱり可笑しい。後ろの方で紹介される英語版「三国志」なんて、もう! 全編通して三国志の舞台裏を覗いているような気分でした。考えてみれば、「陋巷に在り」でも、時々挟まれる薀蓄部分が凄く面白かったんですよね。
その酒見さんが「三国志」を初めて読んだのは、デビュー作の「後宮小説」が「シンデレラ+三国志+金瓶梅+ラスト・エンペラーの面白さ」と評されてたからなんですって。なんなんだ、その評価は。(笑)

でもこの1冊でまだあんまり進んでません。この本は500ページ弱なんですが、最後100ページぐらいでようやく三顧の礼が始まるし... しかも劉備ってば嫌々やってるもんだから、違う人をナンパ(?)したり、妙なのど自慢に参加(!)してしまったりとまあ... 別冊文藝春秋での連載が再開してるようなので、きっといずれは五丈原までいくんでしょうけど、「陋巷に在り」と同じように完結まで何年もかかっちゃうのかもしれないですね。分かりやすいから三国志入門編にも良さそうなんですが、でもやっぱりある程度知ってる方が面白いでしょうね。ただ、別に作中の孔明は「泣き虫弱虫」ではなかったです。子供の頃はともかく、大人になってからはむしろ宇宙的に変なヤツでした... 何でこんな題名にしたんだろう?
これで酒見作品はコンプリート。酒見作品はこれからも追いかけていきます~。(文藝春秋)


本当はものすごく海外物の気分なんですけど、先日図書館でいーっぱい予約を入れちゃったので、しばらく国内物が続きます。(せっかくの海外物の気分なのに勿体ない、もっと海外物中心に借りれば良かった) 図書館、行きたかったんですよー。もうほんと、すっかり禁断症状が出てました。(^^ゞ


+既読の酒見賢一作品の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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ローマにやって来た売れないミステリ作家の「わたし」は、ブルネッティという名の市立探偵が活躍する物語を書くために、ある料理店(トラットリア)にかけあって、その店を舞台にする代わりに無料で食事をさせてもらう約束を取り付けます。極上のイタリア料理を堪能しながら、「わたし」の執筆は順調に進むのですが...。

これは本のことどもの聖月さんのオススメ。(聖月さんの感想はコチラ
売れないミステリ作家の「わたし」が小説として書いているブルネッティの物語と、「わたし」が実際にローマで過ごしている物語の2つの流れがあって、その2つの流れが交錯していくという展開。どちらにも同じ名前の人物が登場してちょっぴりヤヤコシイし、そもそも2つの流れの境目が2~3行の改行だけなので分かりづらいのが難点なんですよね。(伊坂幸太郎さんの作品みたいに、間に小さいマークが入ってたらいいのに) でも2つの流れの双方で毒殺事件が起きる辺りからぐんぐんと面白くなります。ブルネッティを主人公にした小説部分には、最初は出来の悪い小説を読んでいるような感じだったのに、それもいつの間にか作品全体にしっくりと馴染んでるし、人は良いけれどかなり抜けているブルネッティに、どちらかといえば抜け目のない「わたし」がだんだん引っ張られてくようなところも面白かったです。
それに料理店が舞台だけあって、美味しそうな料理が満載! いいなあ、美味しいイタリア料理食べたいなあ。(という私はペンネアラビアータが一番好きなんだけど、これは登場しなくて残念(^^;) しかも、家に居ながらにしてローマの市内観光まで出来ちゃいます。(北イタリアには行ったことがあるんだけど、ローマには行ったことないのよね。行ってみたいー。)
ちなみに作中に登場する「わたし」の作品は、本当にベルンハルト・ヤウマン自身の作品だったのでびっくり。それが分かって読んでたら、一層面白かっただろうな。それ以前の4作品が全然日本語に訳されてないようなのが残念です。(扶桑文庫)

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スター紙の記者ウェルズに情報屋が持ち込んだネタは、上院議員選に立候補中の下院議員が女優の卵相手にSM行為をしている写真。ウェルズは、スター紙はファミリーペーパーであり、議員の私生活は議員自身のものだと、そのネタを断ります。しかし翌日情報屋の死体が見つかり、ウェルズが見た写真のことがマスコミに漏れたことから、ウェルズの新聞記者生命は危うくなることに。

新聞記者・ジョン・ウェルズのシリーズ3作目。1作目の「幻の終わり」の時は、正直あまり面白いと思わなかったんですけど、「暗闇の終わり」そしてこの「夏の稲妻」とどんどん面白くなってるような... シンプルで渋いハードボイルドです。(伊坂幸太郎さんがお好きだそうな)
これが日本での話なら、どんな新聞や雑誌でも議員のSMネタなんて放っておかないんじゃないかとも思うんですが、アメリカでは違うんでしょうか。もちろん1人の人間である以上、プライバシーは絶対に必要だし、自分が記者だったとしてもそんな記事でスクープをものにしたいと思わないだろうと思うんだけど... どうなんだろう? ウェルズみたいに、そういう時でも自分の価値基準を忘れずに突っ張れるのってカッコいい。逆に頑固すぎて、自分で自分の首を絞めるような真似もしちゃうわけですが...。(創元推理文庫)

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「停電の夜に」は下でも書いた通り読了済だったんですけど、続けて「その名にちなんで」も読んだので一緒に。
「停電の夜に」は、ピュリッツァー賞、O・ヘンリー賞、PEN/ヘミングウェイ賞、ニューヨーカー新人賞、The Best American Short Storiesなどなど、アメリカでものすごーく高い評価を受けている、ジュンパ・ラヒリのデビュー短編集。「その名にちなんで」は、それに続く2作目で長編。どちらにも共通してるモチーフはインド。ジュンパ・ラヒリ自身はロンドン生まれのニューヨーク在住ですが、両親はカルカッタ出身のベンガル人なのだそうです。すっごい美人!
文章はそっけないほど無駄がなくて、ほんと淡々としてるんですけど、でも実はすごく鮮やかだし、余韻が残るんですよね。それがとても不思議。面白くない人には全く面白くないでしょうし、そういう人も結構いるんじゃないかと思います。でも逆にクセになってしまう人も多そうな感じ。基本的に短編集は苦手な私なんですが、「停電の夜に」はとても良かったし、長編の「その名にちなんで」も言わずもがな。でも色々と思ったことはあるのに、言葉にするのが難しい...。とにかく他の作品もぜひ読みたい作家さんです。早く3作目も訳されないかな。(「停電の夜に」は文庫でも出てるんですけど、クレストブックスの表紙が好きなのでこちらで~) (新潮クレストブックス)


+既読のジュンパ・ラヒリ作品の感想+
「停電の夜に」「その名にちなんで」ジュンパ・ラヒリ
「見知らぬ場所」ジュンパ・ラヒリ

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車で気ままな田舎旅行に出かけたヘレンとジェーク。しかし釣りの許可を取ろうとジャクソンの郡役場を訪れた2人は、建物の中で嵐が過ぎるのを待っている間に殺人事件に巻き込まれてしまいます。アリバイはあるものの、彼ら2人はここではあくまでも「よそ者」。保安官はヘレンとジェークの2人が重要参考人だと言い張り、ヘレンは急いでマローンに電報を打つことに。

マローンとヘレンとジェークのシリーズ。これは「大当たり殺人事件」の後に執筆された作品なのだそう。ずっとポケミスでしか出てなかったんですが、ようやく文庫になってくれました。(未だにポケミス未体験者なのだ)
今回はシカゴではなく、ウィスコンシン州の田舎町が舞台。ヘレンは相変わらずの美しさ可愛らしさなんだけど、今回はあまりその活躍が前面には出てなくて残念。心配させられるばっかりで、あざやかなブルーのコンヴァーティブルを疾走させるチャンスもほとんどなし。これが寂しーい。暴走しちゃったヘレンが大好きな私にはちょっと物足りなかったな。3人ともシカゴにいる時ほど飲んだくれてないし、ジェークも冴えないし。(今までは「ジェーク」じゃなくて「ジェイク」だったと思うんだけど...?)
でも今回も印象的な人物が登場してました。それは、莫大な金を失ったショックで1929年で時間が止まってしまい、相変わらず禁酒時代を生きているヘンリー。頭はいいし、会社経営も上手くいってるのに、彼の中の時間だけがストップしちゃってるのです。これがユーモラスなんだけど、人生の悲哀なんだなあ。(ハヤカワ文庫HM)


+既読のクレイグ・ライス作品の感想+
「暴徒裁判」クレイグ・ライス
「セントラル・パーク事件」クレイグ・ライス
Livreに「マローン御難」「マローン殺し」の感想があります)

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世界中でただ1人、お化けの姿が見えるペギー・スー。体を守る強い魔法がかけられているものの、お化けたちはぞっとするほど意地悪。ペギー・スーがやりたくもないことを次々とやらせ、そのせいでペギー・スーは常に「変人」として孤立、学校も次々に退学になってしまう始末。でも、そんなペギー・スーの一家が新たに落ち着くことになった小さな町には、お化けたちはいなかった? 生まれて初めて親友が出来て喜ぶペギー・スー。しかしある朝、空には青い奇妙な太陽が現れます。その光の中で日光浴をしていた親友のソニアは、あっと驚く天才になるのですが...。

作者のセルジュ・ブリュソロは「フランスのスティーブン・キング」とも言われるほどの人気作家で、この作品はそのブリュソロの初めての子供向けファンタジーなのだそうです。ペギー・スーは、「ハリー・ポッターの妹」とも言われてるとか。...と書きつつ、そういう予備知識は全然持たずに読み始めたのですが... さすがスティーブン・キングと称されるだけあって怖い... ひえぇ、ブラック。
ペギー・スーに対するお化けの仕打ちが、ほんと容赦ないんですよね。ここまでする? しかも結構あっさり人が死んじゃうし... てか、こんな死に方って! ...海外の児童書って日本のに比べて容赦がないな、と思うことは多々ありますけど、そういうのとはまた違うような。逆境でも頑張るペギー・スーは、確かに女版ハリー・ポッターかもしれないんですけど...。
でもこれは単行本では既に6冊目まで出てるシリーズ物。この1巻ではほとんど孤立無援なペギー・スーなんですが、1巻の最後に強力な味方になってくれそうな存在が登場するんです。これは2巻目以降の方が、ブラックなな中にも救いができて、いい感じに展開してくれそうです。(角川文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ペギー・スーi  魔法の瞳をもつ少女」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーii  蜃気楼の国へ飛ぶ」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーiii 幸福を運ぶ魔法の蝶」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーiv 魔法にかけられた動物園」「ペギー・スーv 黒い城の恐ろしい謎」セルジュ・ブリュソロ

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月の記憶の嫦娥さんのオススメ。「言葉、写真、作庭」が丸山健二氏。実は全然読んだことがなかったんですけど、この方、かなり沢山の作品を書いてらっしゃる作家さんだったんですね。この本は小説とかではなく、お庭の花の写真が中心。文章も載ってるんだけど、詩みたいな雰囲気。
表紙の赤い薔薇も鮮やかな咲きっぷりなんですが、私が反応してしまうのは、やっぱりまず白い花。本当に根っから白い花が好きなのね... しかも正面を向いてない花の方が好みだし。(笑)
こういう本は、疲れてる時にぼーっと眺めてるのにぴったりですね。(しかもタイミングばっちりだし)

でも1ヶ月半ぶりに見たうちの庭は、一応水遣りはしてもらってたんですけど、なんだかボロボロのヨレヨレ。薔薇の葉っぱもすごいことになってるし、伸び放題に伸びていたり、逆に枯れていたり。一体どこから手をつけたらいいのやら... って感じです。外は目眩がしそうな日差しだし、当分見たくない気分... お願いです、誰か何とかして下さい(^^;。


+既読の丸山健二作品の感想+
「荒野の庭」丸山健二
「水の家族」丸山健二

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突然、体がセルフ・ロデオマシーンのように暴れだし、救急車で病院に運ばれた川波みのり。原因として考えられるのは、以前つきあっていた男性が結婚を決めたこと、そしてその話を聞きながら牡蠣を食べたこと。それ以来、胃の調子が悪かったところに、近所の病院でもらった胃薬を飲んだ途端、全身が震えだしたのです。しかし救急車で運ばれた救急外来の医者も、その後で行った3つの病院でも特に異常なしという診断。そこで思い出したのが、高校時代に喘息で通っていた漢方医。そこの若い医者は、みのりのドキドキする場所をあっさりと探り当て、しかも「腎」の働きが弱っているのだと言います。みのりはそれ以来、その漢方医に通い始めることに。

西洋医学と東洋医学の違い、陰陽五行説に関しては何となくの知識はあったんですが、目盛りのある西洋医学に対し、東洋医学はシーソーでバランスを取ってる感じだとか、体は常に変化し、病気も自分が生み出す変化として捉える考え方など、とても興味深かったです。坂口医師の言葉を聞いていると、あさっての方を向いている精神状態でも全然構わないんだなーって、そんな気になっちゃう。だからといって漢方医が漢方至上主義ではなくて、「病気によっては西洋医薬でバーンと治しちゃった方がいいものもありますけどね」なんて言ってるんですけどね。
みのりの症状はかなり深刻そうなのに、ユーモラスでほのぼのとした語り口。特に大きな変動もなく、あっさりとした展開。でも、読んでいるだけで安心できるような気がしてしまいます。まるでこの本自体が坂口医師の処方する漢方薬みたい。こういうの好きだなあ。(集英社)

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ザ・ゾンビーズシリーズの第3弾。今回も楽しかった! 今回は主人公が聖和女学院の1年生・岡本佳奈子で、丁度「フライ、ダディ、フライ」の女版といった感じです。同じといえば、まるで同じようなパターンなんだけど、でもやっぱり楽しい。今回は、ゾンビーズの面々とこんな風に仲間になれるなんて、佳奈子が羨ましーい! 佳奈子に「あんたたち、やっぱりおかしいわよ」と言われて、いっせいに不敵な笑みを浮かべる南方たち、素敵...。(笑)
それにしても、男の南方が「抱かれてもいいかも」と思い(「Revolution No.3」)、今回佳奈子が頬に触られただけで失神しそうになるって... 一体アギーのフェロモンってどんなんなんでしょ。ほんと凄そう。そして今回初登場のアギーのママも、とっても素敵でした。この母にしてこの子あり、なのね。(笑)
でもね、このゾンビーズの中心メンバーの中で、どうしても個性が掴めないのが萱野なんです。アギーや瞬臣、南方、山下辺りは分かりやすいんだけど... ヒロシもいいんだけど... この萱野って人は一体どんな人なんだろう? 何のためにいるんだろう...? と毎回思ってしまう私なのでした(^^;。(角川書店)


+シリーズ既刊の感想+
「レヴォリューションNo.3」「フライ、ダディ、フライ」金城一紀
「SPEED」金城一紀

+既読の金城一紀作品の感想+
「GO」金城一紀
「対話篇」金城一紀
「映画篇」金城一紀

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作家としての再起を図っているホーギーの元に届いたのは、差出人の名前がない手紙。それは小説家志望者からの自作小説の第1章でした。小説はただの白いタイプ用紙にタイプされていて、添えられた手紙の最後にあるアンサーマンという名前があるだけ。そしてその小説の内容は、アンサーマンという男が街で知り合った女性を殺すまでの顛末。一読したホーギーは、その才能に驚きます。しかし翌朝、ホーギーはその小説の内容と同じ殺人事件が起きていたことを知ることに...。

ホーギーシリーズの第8弾。小説のストーリーの通りに殺人事件が起きていくというストーリー展開自体はそれほど目新しくないんですが、今回はホーギーの学生時代のエピソードが登場するのが嬉しいです。そういえば、これまで学生時代の話って出てきてなかったんですねー。仲が良かった3人組も今は昔、「青春時代の栄光」と「人生の悲哀」って感じになっちゃって、下手すると暗くなりそうな展開なんですが、でも相変わらずのお洒落な語り口で、さらっとほろ苦い青春物語となっています。シリーズ前半の勢いこそなくなってるけど、やっぱり高め安定。でも本国ではこの作品を最後に続編が出てなくて、新シリーズが始まってるとのこと。もしやこれでおしまい...? 曲りなりにも、作家として再起できたから?! 1歳半のトレーシーも可愛い盛りだし、意外なカップルのその後の生活ぶりも気になるし、まだまだ彼らの会話を楽しみたいのになあ。もっと書いてくれないかなあ。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「真夜中のミュージシャン」「フィッツジェラルドをめざした男」「笑いながら死んだ男」「猫と針金」「女優志願」「自分を消した男」「傷心」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「殺人小説家」デイヴィッド・ハンドラー

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鎌倉幕府が倒れ、後醍醐天皇による建武の新政が始まって間もない頃。都で不世出の麒麟児と言われた北畠顕家は、わずか16歳の若さで陸奥守に任じられ奥州へと下向。多賀国府に入った顕家は、北条家の残党との戦を繰り返しながらも、山の民である安家一族の協力も得て、わずか2年間で見事に奥州を制定します。しかしその後、後醍醐帝と足利尊氏の争いが表面化して...。

久々の日本史物。もしかし火怨(感想)以来かも。なかなか日本史物の気分にならなかったんですよね。
いやー、久しぶりなのでペースを掴むのにちょっと時間がかかっちゃいましたが、面白かったです。北方さんだから男の人たちがみんなカッコいいんですよ。(笑) わずか16歳で、北畠顕家のこの落ち着きぶりってナニモノ?!なんて思ったりもしたんですが(笑)、でも武家と公家の間で揺れ動く顕家の心情(顕家は公家)がしっかり描かれていたし... 味方はもちろんのこと、敵方の尊氏・直義兄弟、斯波家長といった武将も魅力的で、あと奥州藤原氏の末裔という設定の山の民や、忍びの如月という存在が物語に奥行きを出してました。そして特に良かったのが合戦のシーン。奥州から京都までひた走りに走って尊氏を敗走させてしまうシーンが最高! 最後の戦と、「七ヶ条の諌奏」をしたためるシーンも良かったなあ。
でもね、この南北朝時代って、私のピンポイントな日本史の知識からはすっぽりと落ちている部分なんです... だって「イイクニツクロウ鎌倉幕府」の次は「足利尊氏の室町幕府」、程度の知識しか残ってないんですもん... これで事前の知識があればもっと面白かっただろうにと思うと勿体ない... もっと勉強しないとダメですね。(涙)(集英社文庫)


+既読の北方謙三作品の感想+
「破軍の星」北方謙三
「楊家将」上下 北方謙三
「水滸伝」1~3 北方謙三
「水滸伝」4~6 北方謙三
「水滸伝」7~9 北方謙三
「水滸伝」10~12 北方謙三
「水滸伝」13~15 北方謙三
「水滸伝」16~18 北方謙三
「水滸伝」19 北方謙三
Livreにブラディ・ドールシリーズと「三国志」の感想があります)

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「風の王国」シリーズ5冊目。唐の国から吐蕃(チベット)の王に嫁いだ公主が主人公の、史実に基づいた歴史物。(1~4巻の感想はコチラ
今回、とうとう翠蘭がソンツェン・ガムポ大王に会って、自分が世民の娘ではなく姪だと告白することになります。でもそこがクライマックスになるのかと思ったら違ったのでほっ... このシリーズを読み始めた時から、世民の実の娘じゃないっていうのがそんなに大問題なのか?とずっと思い続けてたんですよね。「偽公主」だなんて言うほどの問題じゃないでしょ。だってある意味、世民の実の娘っていうより凄いのに!(謎)
初登場のソンツェン・ガムポは、かなりの狸親父。でも決めるところは決めてくれました。なかなかいいですねえ。さすが大王の風格。この父親と一緒にいると、リジムが妙に子供っぽく見えてくるのが可笑しい♪ でもそれに引き換え、リジムの幼馴染の底の浅いこと... 仮にも王様の親友扱いなんだから、もうちょっと何とかしてもらえないですかねえ。なんでこんなヤツと仲が良かったんだ? 人を見る目がないとしか思えないぞ...っ。とはいえ、今回がシリーズで一番緊迫感があって面白かったです。
しかしこれで偽公主問題は一応解決してしまいました。これからどうするんでしょ。史実の通り突き進む? 単純に史実通りにはして欲しくないなあ。さて、どんな風に料理してくれるのやら楽しみです。(コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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「猫背の王子」は中山可穂さんのデビュー作。5年前に自分の劇団を立ち上げ、座長として脚本家として演出家として、そして役者としてやってきた王寺ミチルが、自分の劇団、そして大切な人々を失う物語。そして「天使の骨」はその続編。劇団を失って失意のどん底にいたミチルが、海外へと旅立つ物語。いわば喪失と再生への序曲、でしょうか。
「猫背の王子」で、自分の命を削るように輝いていたミチルは良かったんだけど、でも破滅に向かって突き進んでいく様子が痛々しくて見てられなかったんですよね。「天使の骨」では、既にどん底にまで落ちてしまってるわけだから、もちろんそれはそれで大変なんですけど、でもこっちの方が好き。何よりずっと読みやすかったし、ぼろぼろの天使というのがいいんですよねえ。そしてすっかり輝きを失っていたミチルが、その光を再び取り戻していこうとするのも。
でもまだ決着がついてないんです。あともう1作、続編希望。恋人同士の愛情を超えた、もっと大きな愛が見たいところです。

それにしても、恋愛小説は苦手なはずだったのに、最近増えてきてるような...。しかも結構ディープだったり。(笑)
でも、中山可穂さんの作品は女性同士ということに注目が集まりがちなんでしょうけど、きっとそれは瑣末なことなんですよね。同性でも異性でも、人を好きになったり大切に思う気持ちは一緒ですものね。(集英社文庫)


+既読の中山可穂作品の感想+
「白い薔薇の淵まで」中山可穂
「猫背の王子」「天使の骨」中山可穂
「感情教育」「深爪」中山可穂
Livreに「サグラダ・ファミリア-聖家族」の感想があります)

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「影に歌えば」は、タニス・リー版「ロミオとジュリエット」。ヴェローナがヴェレンサ、ロミオがロミュラーン、モンテギューがモンターゴー、マーキュシオがマーキューリオと多少変えてある程度なので、誰が誰なのかすぐ分かります。ハッピーエンド好きの私にしては珍しく、シェイクスピアは悲劇の方が断然好きなんですが、それでも「ロミオとジュリエット」は、私の苦手なすれ違い物。あまり好きじゃないんですよね... でもタニス・リーの手にかかると一味違いました。相変わらずの華麗な描写だし、ところどころで異教の神々の名前が登場して、本家とはまた違う艶やかさ。脇役までしっかり描かれていて、人物造形は本家よりも遥かに深みがあるんじゃないかと。ラストもこっちの方が好き! これを読んでしまったら、もう本家の方は読めなくなっちゃうなあ。...歴史小説を読んでる時なんかによく思うんですが、同じ過程を辿って同じ結末に至るにしても(変えるにしても)、どう話を膨らませるか、どう読ませてくれるかという部分が、作家さんの腕が問われるところですよね。もちろん本歌取りも。
そしてもう一方の「死霊の都」の方は、ええと、あんまり印象に残らなかったです...。タニス・リーらしく夜の闇の世界が舞台の作品なんですが、なんだか書き込み不足で勿体無い感じでした。(ハヤカワ文庫FT)


そしてこの2冊で、タニス・リー単独作品はコンプリート! 絶版本も全部手元に揃えられました。わーい! いやー、長い道のりでしたー。もちろん、全部が全部大好きというわけにはいかないんですけど、でも全部読めてほんと嬉しい。
ちなみに私的タニス・リー作品ベスト3は、1位「闇の公子」、2位「惑乱の公子」、3位「銀色の恋人」。あ、でも「幻魔の虜囚」も捨てがたい...。タニス・リー版「王子と乞食」の「月と太陽の魔道師」とか、おちょくられてるような「白馬の王子」も結構好きだし。って初期の作品ばっかりだ!

タニス・リーの作品で装幀が好きなのはこの2つ。どちらも加藤俊章さんのイラスト。この方、タニス・リーの本ではかなり挿絵も描いてらっしゃいます。クリムトを思わせる絢爛豪華なカラー絵も素敵だし、ビアズリーを思わせる白黒の絵が、またとてもいいのです。
 


+既読のタニス・リー作品の感想+
「闇の公子」タニス・リー
「死の王」タニス・リー
「タマスターラー」タニス・リー
「ドラゴン探索号の冒険」タニス・リー
「白馬の王子」タニス・リー
「惑乱の公子」タニス・リー
「熱夢の女王」上下 タニス・リー
「ゴルゴン 幻獣夜話」タニス・リー
「血のごとく赤く」タニス・リー
「バイティング・ザ・サン」タニス・リー
「鏡の森」タニス・リー
「黄金の魔獣」タニス・リー
「幻魔の虜囚」タニス・リー
「幻獣の書」「堕ちたる者の書」タニス・リー
「月と太陽の魔道師」タニス・リー
「冬物語」「闇の城」タニス・リー
「銀色の恋人」タニス・リー
「妖魔の戯れ」タニス・リー
留守中に読んだ本(18冊)(「ウルフタワー」の感想)
「影に歌えば」「死霊の都」タニス・リー
「パイレーティカ 女海賊アートの冒険」タニス・リー
「銀色の愛ふたたび」タニス・リー
「水底の仮面」「炎の聖少女」タニス・リー
「土の褥に眠る者」「復活のヴェヌス」タニス・リー
「悪魔の薔薇」タニス・リー

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鬱病のペンギン・ミーシャと一緒に暮らしている、売れない作家の物語。
ソ連の崩壊後に独立したウクライナの首都・キエフが舞台で、まだかなりきな臭い状態なんですけど、そんな状況の中に、このペンギンがすごく効いてるんですねー。もうほんと、とにかく可愛い。主人公が座っているとその膝に身体を押し付けてみたり、バスタブに冷たい水を入れてる音を聞きつけてペタペタとやって来て、水がたまるのを待ちきれずにバスタブに飛び込んだり。主人公をじーっと見つめてみたり、どことなく嬉しそうだったり。勿論何もしゃべらないんですが、なんだかとっても雄弁なんです。やっぱりペンギンと聞くと、あのペタペタ歩くユーモラスな姿が浮かんでくるのがポイントなんでしょうね。他の動物じゃあ、ちょっと出せない味だ~。
でもそのペンギンは憂鬱症。訳者あとがきにあるクルコフのインタビューによると、ペンギンは集団で行動する動物なので、1羽だけにされると途方に暮れてしまうんだそうです。そしてその姿は、ソ連時代を生きてきた人間にそっくりとのこと。ミーシャは動物園から解放され、人々はソ連から解放されても、最早「自由」に順応できなくなっているんですね。そしてそれは作中でペンギン学者の老人が言う、「一番いい時はもう経験してしまった」という言葉に繋がります。動物園での生活、ソ連にとらわれていた時が「一番いい時」というのが何ともいえない...。
主人公も孤独でペンギンも孤独、一緒にいるからって孤独じゃなくなるわけじゃなくて、孤独が寄り添っているという辺り、分かるなあ。

読みながら、どこか村上春樹作品の雰囲気があるなあと思ってたら、訳者あとがきにクルコフは「羊をめぐる冒険」が好きだと書かれててびっくり! 文章だけの問題じゃないのは分かってますが、それでも日本語をロシア語に変換して(「羊をめぐる冒険」)、ロシア語を日本語に変換しても(「ペンギンの憂鬱」)、やっぱり雰囲気が似てるってなんだかとっても不思議です。(笑)

これは新潮クレストブックスの1冊。やっぱりこのシリーズ、もっともっと読みたいな。(新潮社)

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新宿に古くからある「酒場」は、クセモノ揃いの常連客たちが集まってくる場所。そこに店長の義理の娘・のり子が100円ショップで売っていた缶詰を持ち込んだことから物語は始まります。

「百万の手」に続く現代物。「百万の手」みたいに不満がいっぱい残ることはないし、まあまあ可愛らしい連作短編集なんですけど... でもやっぱりなんだか物足りない...。「いつでも帰れる場所」としての「酒場」の存在は魅力的だったんですが、いくら美味しそうな食べ物が出ても、北森鴻さんの香菜里屋みたいな存在にはならないし、それより何より、100円ショップの缶詰という小道具がちょっとチープ過ぎじゃないですかね? 13歳ののり子にはともかく、いい年した常連さんたちにはちょっと合わないですよー。
やっぱりファンタジックな畠中さんの作風には、現代という舞台はあまり合わないんでしょうかねえ。同じような物語でも時代物なら、もっとすんなりとその世界に入り込めたのかも。...それでも詰めの甘さは変わらないか... 「しゃばけ」のシリーズは大好きだし、もっと面白い作品が書ける人だと思うのに残念だなあ。(双葉社)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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1ヶ月前に全焼したアパートの跡地を訪れ、被害者の1人だった少女に向けた言葉を呟く男。そしてその男に反応した2人の少年。北畠藍子に一体何があったのか...?

うわー、感想を書くのが難しいです...。
「バッテリー」での少年たちの葛藤は、言わばスポーツマンならではの真っ直ぐで、比較的単純なものだったと思うんですけど、こっちの少年の葛藤は、頭が良い少年たちならではの複雑で繊細で尖ったもの。自分がどこか周囲に馴染めていない、周囲から浮き上がっているような気がするという違和感。そんな少年たちの「揺れ」が繊細に描かれていくのですが... うーん、あと一歩踏み込みが足りなかったような...。途中、少年たちの思いや言動にほとんど説明がないので、最後まで核となる部分がぼやけていたような気がするんですよね。ラストも不完全燃焼だし...。(でもここで終わりたいっていうのは分かる気がする)
帯によると「本当に書きたかった作品です」とのこと。一体、あさのさんが本当に書きたかったのって、どんな作品だったんだろう? って読み終わった後で改めて考えてしまいました。「No.6」の2巻のあとがきで、安易に希望を語るのはもうヤメだ、みたいなことが書かれているのを読んだ時は、ああー、この人はもう「バッテリー」を書くのが嫌になってしまったんだろうなって思ってしまったんだけど...。
amazonの書評を見ると、3人中2人が5つ星で、残り1人が4つ星なんですよね。高評価。どうやら私、何か肝心なものを掴み損ねてしまったみたいです(^^;。(角川書店)


+既読のあさのあつこ作品の感想+
「バッテリー6」あさのあつこ
「福音の少年」あさのあつこ
Livreに「バッテリー」1~5、「No.6」1・2の感想があります)

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生物教師・ドクター・モローの「君たち、世界を変えてみたくはないか?」という言葉に、立ち上がったオチコボレ男子高校生たちの物語。いやー、とにかくスピーディでパワフル。どんどん読んでしまいましたよ。面白かった! 「レヴォリューションNo.3」は、コウカイニッシ。のあさこさんが第12回のたらいまわし企画「爽やかな春に読みたい青春小説」に挙げてらしたんですよね。それも納得の青春小説でした。あ、この間の第15回「夏の一冊!!」にもいいかも。元は学園祭に潜入する話だから秋のはずなんですけど、どっちの本も暑い熱い夏のイメージが残ります♪
重いテーマが見え隠れしてるところは「GO」と一緒なんですけど、このスピード感と登場人物の連帯感は石田衣良さんのIWGPみたいな感じでもありますね。IWGPはIWGPで凄く面白かったんだけど、でもこっちも好き~。しかも間に「ギョウザ大好き!」とか「グラサン、外せやぁ!」みたいな台詞には、もう大笑い。あっという間に読めちゃうんだけど、読んだ後もパラパラめくってずっと楽しんでました。 

そして「レヴォリューションNo.3」は、講談社から出ていた版の表紙のインパクトが凄いんですが(笑)、今流通してるのは角川書店の方だけみたいですね。これは映画化の影響? ああー、映画も観たくなっちゃった! 岡田准一くんの朴舜臣って、どんな感じなんだろう! 「レヴォリューションNo.3」を読んでる時は、もっと骨太タイプのように思ってたんだけど、「フライ、ダディ、フライ」を読んでみると、繊細な少年らしさも結構感じられたので、案外似合ってるのかも。元々目に力がある人だし。ということで、映画の公式サイトはコチラ。新刊「SPEED」も近々読めると思います。楽しみ♪(角川書店)


+シリーズ既刊の感想+
「レヴォリューションNo.3」「フライ、ダディ、フライ」金城一紀
「SPEED」金城一紀

+既読の金城一紀作品の感想+
「GO」金城一紀
「対話篇」金城一紀
「映画篇」金城一紀

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17世紀半ばの群雄割拠時代のドイツが舞台。ブランデンブルクの若き選定侯フリードリヒ精鋭部隊がハルバーシュタット公国に攻め込みます。落城寸前の城から、公爵の嫡男・ヨハンと令嬢ソニアを逃がしたのは、宰相の14歳の娘・マリア。彼女はソニアの身代わりとして、城に残ってフリードリヒを待ち受けるのですが...。

千・年・庭・園の凛未明さんのオススメ。西洋史を背景にしたジェットコースター・ロマンスと聞いてたんですが、まさにその通りでした! いやあ、展開が速い速い。(笑) それでも14歳のマリアがなぜか気になって仕方がないフリードリヒの不器用な愛情や、父の敵のはずのフリードリヒに父親的な包容力を見出していくマリアの様子はなかなか繊細に描かれていて良かったです。途中でマリアもフリードリヒもやけに気弱になってしまって、気が強かったはずのマリアが守られるだけの女の子になってしまった時はどうしようかと思いましたが、最後にようやく自分の道を自分で決めることができて、ほっ。
ちなみにこの作品、元々は講談社X文庫から出てたのだそうです。第3回ホワイトハート大賞佳作受賞作品ですって。その時の表紙が右の画像。F文庫がどういう性格のものなのかは、まだ今イチ掴めてないんですけど(大人の女性のための恋愛物?)、やっぱりかなり雰囲気が変わりますね。(笑)(講談社F文庫)

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夢枕獏氏のこの作品に対する思いを語ったエッセイや、映画「陰陽師II」の第一稿と第四稿、映画で安倍晴明役を演じた野村萬斉氏、山口博氏、志村有弘氏らとの対談、登場人物・作品詳解など、人気シリーズ「陰陽師」にまつわることを集めた1冊。

実は野村萬斉氏との対談目当てだったんですが(笑 ←もちろん「陰陽師」シリーズは大好きですが!)、その対談も面白かったし(映画の裏話とか、演技中のトリップや呪の話など)、あと夢枕獏さんの安倍晴明・源博雅の誕生秘話、特に源博雅に関する辺りも良かったです。博雅が実在の人物だというのは知ってたんですけど(とは言っても、以前あとがきか何かで読んだ程度ですが...)、実際に色々な逸話が残っている人物だったんですねー。博雅が無自覚の天才という辺り、なるほどなあという感じ。博雅自身は自分の能力に気付いていないけれど、晴明だけはは知っているから「博雅、おまえはすごい」という言葉が頻繁に出てくるんですね。なるほどー。
以前読んだ「七人の安部晴明」というアンソロジーは、いかにも晴明人気に便乗した感じがあったんですが、こちらは晴明の生きていた時代がぐっと身近に感じられる1冊でした。登場人物・作品詳解で、晴明と博雅の会話を読んでたら、またシリーズを読み返したくなっちゃった。(文春文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「陰陽師-付喪神ノ巻」「陰陽師-生成姫」「陰陽師-鳳凰の巻」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「陰陽師 龍笛の巻」夢枕獏
「陰陽師 鳳凰ノ巻」夢枕獏
「『陰陽師』読本 平安の闇に、ようこそ」夢枕獏

+既読の夢枕獏作品の感想+
「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」夢枕獏
「シナン」上下 夢枕獏
(Livreに「猫弾きのオルオラネ」「羊の宇宙」「大帝の剣」の感想があります)

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九月姫とウグイス以前読んだ「いろの手がかり編」「ごちそうの手がかり編」「どうぐの手がかり編」(感想)と、「この本読んだ? おぼえてる?」(感想)に引き続きのあかぎかんこさんの本の探偵シリーズ。今回は動物なんですけど、考えてみたら動物の本ってそれほど沢山読んでなかったみたいです... 今までで一番知ってる本が少なかったわ! それでもドリトル先生シリーズ(ヒュー・ロフティング)とか、「九月姫とウグイス」(サマセット・モーム)、「チベットのものいう鳥」(田海燕)、「たのしい川べ」(ケネス・グレーアム)辺りは、今も祖母の家に置いてるので、なんだか懐かしくなってパラパラと見ちゃいましたけど。
もちろん未読の本の中にも、表紙が素敵だったり話が面白そうだったり、今からでも読んでみたい本が色々です。(それでも私が探してる本はまだ出てこないのでした~ 嗚呼、あのおばけちゃんはいずこに~)(フェリシモ出版)


+既読のあかぎかんこ作品の感想+
「本の探偵事典」あかぎかんこ
「この本読んだ? おぼえてる?」あかぎかんこ
「本の探偵事典 どうぶつの手がかり編」あかぎかんこ

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彩雲国シリーズ7冊目。いやー、やっぱり王都組が出てくると楽しいです! 久しぶりの王都が嬉しくて、最後まで読んだらまた速攻で最初から読み返しちゃった。今回、以前から気になっていた藍龍蓮がクローズアップ。彼、やっぱりいいわーっ。前の巻でちょびっとしか登場しなくて残念だったんですけど、でもすごい存在感だったんですよね。今回は更にすごいです。しかも豪華挿絵付き。あの秋の装い(!)があんな風にすっきりした絵になってしまうというのがびっくりですが...(でも良く見るとちゃんと秋の装いになってるし・笑) 

今回は大事件こそ起きないものの(お酒は飲むけど...)、水面下で様々な人々の思惑が交錯。(悩める二匹目の子羊ちゃんが不憫だわー) ラストに向かって、そろそろスパートをかける頃合なんですね。ええと、私が一番好きなのは超絶美貌のあの方なんですけど(しかし無駄美貌って・笑)、でもだからといって彼の幸せを望んでいるというわけでもなく...(アレ?) 一番幸せになって欲しいのは、実はあの彼だったりするんですけど(ダレよ)、でもやっぱり最後はこっちの彼とぜひ...(なんなんだそれは) と、読むたびに複雑な心境なんです。その複雑さが一層こんがらがってしまいそうな今回の展開。でもそんな風に複雑になるのも、やっぱりいい男が満載だからこそなんですよね。これまでいい男満載といえば、まず茅田砂胡さんの「デルフィニア戦記」だったんですが、こうなってみるとどっちが上かしら...(笑)
とにかく、「彩雲国」がこれからどうなるのか、ますます目が離せません!(角川ビーンズ文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「彩雲国物語 はじまりの風は紅く」「彩雲国物語 黄金の約束」雪野紗衣
「彩雲国物語 花は紫宮に咲く」雪乃紗衣
「彩雲国物語 想いは遙かなる茶都へ」雪乃紗衣
「彩雲国物語 漆黒の月の宴」雪乃紗衣
「彩雲国物語 朱にまじわれば紅」雪乃紗衣
「彩雲国物語 欠けゆく白銀の砂時計」雪乃紗衣
「彩雲国物語 心は藍よりも深く」雪乃彩衣
「彩雲国物語 光降る碧の大地」雪乃紗衣
「彩雲国物語 藍より出でて青」雪乃紗衣
「彩雲国物語 紅梅は夜に香る」雪乃紗衣

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イギリスの北部ヨークシャーの田園地帯に住む、獣医歴50年のドクター・ヘリオット。牛や馬などの大型の家畜が中心ではあるものの、その長い獣医人生の中で出会った猫たちは数知れず。仕事を通して、あるいはプライベートで出会った猫たちの10のエピソードをまとめた作品集です。

この本は、本が好き!お気軽読書日記のもろりんさんのオススメ。いやー、良かったです。このドクター・ヘリオットという人が本当に誠実なお医者さま。具合が悪そうな患者を診ては心を痛め、飼い主のことを力づけながら、命を救うために一生懸命になってくれる人。獣医である以前に、1人の大の動物好き人間なんですよね。
でもそんなドクター・ヘリオットにも、家の裏に住み着いた2匹の山猫だけには、何ともできないんです。置いた餌は食べるし、薪小屋に作った寝床は利用するものの、家には決して入ろうとしない2匹。去勢手術をするために無理矢理捕まえたドクター・ヘリオットのことをいつまでも怖がっていて、ドクターの奥さんのヘレンはそのうち撫でさせてもらえるようになるのに、ドクター・ヘリオットだけは相変わらず毛嫌いされてるんです。猫好きにとって、猫に毛嫌いされることほど堪えることってないですよね... 多少なりとも猫の扱いに自信があるとくれば尚更。...こんなに好きなのに! というもどかしい思いが伝わってきます。そして... というのは読んでのお楽しみ。
もちろん動物相手のことなので、時には死も訪れることになるんですが、それでも優しくて暖かいドクター・ヘリオットの語り口にはほのぼのとしてしまいます。レズリー・ホームズ氏による挿絵もとても可愛いです♪

この「猫物語」の他にも、「ドクター・ヘリオットの犬物語」を始めとして、色々な本が出ているようです。そちらもぜひ読んでみたいな。(集英社文庫)


+既読のジェイムズ・ヘリオット作品の感想+
「ドクター・ヘリオットの猫物語」ジェイムズ・ヘリオット
「ドクター・ヘリオットの犬物語」「Dr.ヘリオットのおかしな体験」ジェイムズ・ヘリオット

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4150201552.jpg 4150201579.jpg [amazon] [amazon]
「白い女神」であるジェンナを中心とした、ケルトの神話を思わせるようなファンタジー。
この作品でまず驚かされたのは、物語が「神話」「伝説」「物語」「歴史」の章に分かれていて、その合間に「歌」や「バラッド」、「寓話」などが挿入されていたこと。そういう風に細かく分かれていると、どうしても流れが分断されやすいと思うんですけど、それがそうでもないんですねえ。分断する以上に、世界をより深く重層的にしていてびっくり。
物語に厚みを持たせるために、その世界の神話が物語中に挿入されるのはそれほど珍しくないと思うんですけど、でもここに書かれた物語が神話となってしまうほど、遥か未来の視点からも書かれてるんです。これが珍しい...。ここでの「物語」が「神話」として高められ、あるいは民間の中の「伝説」として伝わり、その過程で歌やバラッドが出来るんですけど、さらに長い年月が経った未来の歴史家などがこの物語のことを様々な資料で研究してるのが「歴史」の章。
って、言葉で説明するとすごくヤヤコシイですね...(^^;。でもこれによって1つの物語がとても立体的に見えて来ます。真実がどんな風に変化して神話や伝説になっていくのかというのも面白いし、遥か彼方の未来の人々が、見当違いのことを論じてるのも可笑しい♪

私好みの骨太なファンタジーで、すっごく面白かったです。ジェイン・ヨーレンって、叙情的な描写ばかりが前面に出てるのかと思ったけど、それだけじゃないんだなあ。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のジェイン・ヨーレン作品の感想+
「夢織り女」ジェイン・ヨーレン
「水晶の涙」ジェイン・ヨーレン
「三つの魔法」ジェイン・ヨーレン
「光と闇の姉妹」「白い女神」ジェイン・ヨーレン
「月夜のみみずく」ジェイン・ヨーレン ショーエンヘール

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高校3年生の時に予備校の教師・サイトウさんと付き合い、そして別れ、自暴自棄になった「わたし」は気軽な男の子たちと適当に付き合った挙句、妊娠。そして中絶。そんな「わたし」が徐々に自分を取り戻していく物語。

これが、綿矢りささんと金原ひとみさんが芥川賞を取った時に、一緒に候補になってた作品なんですねー。
あとがきには、「厳密には、この物語は恋愛小説とは言えないかもしれない」とあったんですけど、これのどこが恋愛小説じゃないんだろう、って考えてしまうほど、私にとっては恋愛小説でした。主人公の「わたし」が、いくら恋を失ったからといって、そんな手軽な男の子たちと適当に寝てしまうような子には見えなかったのが難点なんだけど... でもそんな風に見えない彼女が実はそういう行動に出て、高校の夏休みにキャバクラでバイトをしてしまうような同級生のキクちゃんが、「けど、やっぱり好きじゃない人と寝ちゃだめだな」なんて言ってるところが、やっぱり今らしさなのかもしれないですね。...でも堕胎を扱っているというのに、この扱いの軽さは何なんだろう...。
そんな時に知り合った男性との緩やかな付き合いを通して、深くて暗い森の中から、徐々に周囲が明るくなっていくようなところが良かったです。希望が感じられて。誰かに見守ってくれる人がいればそれだけでいいって時は、確かにありますよね。

島本さんの作品が3冊続きましたが、最新作「一千一秒の日々」は手元にないので、とりあえずここまでです。この本の表紙の絵はミヒャエル・ゾーヴァ! 本の裏までこの絵が続いていて、そういう使い方が素敵です。ここに出てくる画像に帯がついてなくて嬉しいわあ。(講談社)


+既読の島本理生作品の感想+
「ナラタージュ」島本理生
「シルエット」島本理生
「リトル・バイ・リトル」島本理生
「生まれる森」島本理生
「一千一秒の日々」島木理生

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あとがきによると、「明るい小説にしようと、最初から最後までそれだけを考えていた」という作品なのだそう。確かに不思議な明るさがある作品と言えそうです。主人公の橘ふみの家は母子家庭で母親は2度も離婚していますし、物語の冒頭で母親が勤める整骨院の院長が夜逃げしてしまって失業、酔っ払って帰って来る始末。ふみ自身、高校は卒業したものの、大学に行く学費なんてどこを押しても出てこない状態。しかも妹のユウちゃんは、小学校2年生の異父妹。...お世辞にも明るいとは言いがたい状況なんですが、それでもふみの家族も、ふみの習字の先生も、そんな時に出会った周やその姉も、ふわりと明るい空気をまとっているような印象なんですよね。まるで力んだりしてなくて、ごく自然体。しかも伸びやかで。
読み始めた時は、また母子家庭か!と思ったんですけど、単なる枠組みに過ぎないような気もしてきました。(でもそろそろ母子家庭はやめて欲しいな... ←次は父子家庭だったりして・笑) (講談社)


+既読の島本理生作品の感想+
「ナラタージュ」島本理生
「シルエット」島本理生
「リトル・バイ・リトル」島本理生
「生まれる森」島本理生
「一千一秒の日々」島木理生

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「シルエット」「植物たちの呼吸」「ヨル」の3編が収められていて、表題作「シルエット」は、島本さんが17歳の時に群像新人文学賞最優秀作を受賞したとのこと。ということは、「ヨル」は... 15歳の時に雑誌に掲載されたってこと? すご...っ。
どれも作者の若さを映し出すように若さが溢れているんですが、やっぱりこの中では表題作が良かったです。今は大学生の「せっちゃん」と付き合っているけれど、どこか冠くんのことが忘れられないでいる「わたし」の物語。主人公の揺れ動く心とか、この年代の繊細で尖った部分とか、そういうのが、まさに同年代の手によって書かれてるんだなあという感じ。でもいくら女子高生の時に書いたと作品だと言っても、やっぱりここまで等身大の女子高生を描けるのって凄いんじゃないかと思います。...確かに忘れられない人っていますよね。だからといって無理に忘れられるものではないし、忘れられない人は忘れられないままでいいと思うのですが... でもやっぱりそこに若さが出るんだろうな。
ただ、ちょっと気になってしまうのは、3編の主人公3人+α が母子家庭なこと。そりゃ最近では全然珍しくない存在だと思うのですが、でも3編連続でっていうのはどうなんだろう... まあ、コレに関しては他の作品も読めば、おのずと答が出ると思いますが。

そうそう、この文庫はクラフト・エヴィング商會の装幀です♪(講談社文庫)


+既読の島本理生作品の感想+
「ナラタージュ」島本理生
「シルエット」島本理生
「リトル・バイ・リトル」島本理生
「生まれる森」島本理生
「一千一秒の日々」島木理生

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またしても酒見賢一さん。こちらはデビュー作の「後宮小説」に続く短編集です。これも全然中国の気配すらなくて、現代日本のミステリの形式を借りて小説という虚構を皮肉っていたり、古代ギリシャ哲学者や数学者の話であったり、徐々に現実と幻想の境目がなくなっていくホラー(ファンタジー?)であったりと、作風は様々。解説を読んでいたら、この本が出た時の酒見さんの「中国小説の作家だと勘違いされてるようだったので、いかんなあと思ってああいうのを書いたんですけどね。あれを読んで得体の知れない作家だなと思われたらうれしいですね。何でもありという作家になりたいんですよ」という言葉が引用されてたんですけど、まさにその通りになってるじゃあないですか!(笑)
この中で気に入ったのは「籤引き」という短編。泥棒とか殺人が起きた時に、真犯人を探し出して裁判にかけるのではなくて、籤引きで当たった人間こそが真犯人、という考えをしている未開の村の描写がとても面白いんです。一見非常識に見えるこのやり方も、読んでいるうちに徐々にそれが正しいように思えてきてしまうんですよねえ。(笑)(講談社文庫)

私が読んだのは古い講談社文庫版なんですが、画像とリンクは集英社文庫版です。(どちらにしても今は入手できないんだけど)


+既読の酒見賢一作品の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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「語り手の事情」に引き続きの酒見賢一さん。こちらは純粋なSF作品。「地下街」「ハルマゲドン・サマー」「聖母の部隊」「追跡した猫と家族の写真」の4編が収められています。
真面目なハードボイルドかと思いきや、まるでRPGみたいで可笑しかったり、ちょっと新井素子さんの「ひとめあなたに...」を思い出すような作品だったり、津原泰水さんの「綺譚集」に入っている「アルバトロス」のような雰囲気だったり(そうでもないかしら(^^;)、ほのぼのとしてたりと色々。私はSFにはあまり詳しくないし、読む前は「えっ、SF...?」なんて思ってたんですけど、なかなかバリエーションが豊かで、しかもレベルが高い短編集と言えそうです。

続けざまに中国物ではない酒見さんの作品を読んでみて感じたのは、もしかしたらこれまで酒見さんをすごく誤解してたのかもしれないということ。私の中では、だんだん正体不明の作家さんになってきちゃいました。(笑) 実は物凄く引き出しが多い方だったんですね。そして中国物の作品の中に、中国物だけに収まりきらない部分が色々とあるのには、それだけのルーツだあったんですね。...と、妙に納得。そして酒見さんの何が凄いって、どんな作品を書いても、どれもしっかり酒見さんだということ。確立されてるんですねえ。これは早いとこ、「ピュタゴラスの旅」も読んでみなくちゃいけないなあ。(この作品も、どう考えても中国物じゃないし)
ちなみに解説は恩田陸さん。そして「語り手の事情」は佐藤亜紀さんでした。豪華メンバーですねっ。酒見さんご自身のあとがきも凄いです。語ってます。(「語り手の事情」も・笑)(ハルキ文庫)


+既読の酒見賢一作品の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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性倫理に厳格で、いかがわしさを連想させるものは机の脚ですら布で包み隠されたというヴィクトリア王朝の英国が舞台。そこには、性に対する様々な妄想を抱いた紳士が招かれる屋敷がありました。その屋敷に住むのは、屋敷の主人と3人のメイド、そして「語り手」。

というあらすじでは全然説明できてないんですが(笑)、いや、すごい話でした... 酒見さんが色んな作品を書いてらっしゃるというのは知識としては知ってたんですけど、でも「後宮小説」「墨攻」「陋巷に在り」「童貞」「周公旦」... と、中国物しか読んだことなかったんです、私。そこにいきなりヴィクトリアンなイギリス。しかも... えええ、もしかしてエロエロですか?! うわーん、びっくり。

でも読んでみると、確かにエロエロ(笑)だし、童貞喪失から性倒錯、性奴隷にSMとすごいラインナップなんですけど(笑)、酒見さんにかかると全然隠微じゃないんですよねえ。むしろ上品な軽快さがあるような... いや、面白かったです。人前ではちょっと読みたくないし、読めないですが。電車で隣り合わせたおじさんに本を覗き込まれた日には、切腹ものですが...! でも酒見さんって、こういうヘンな話を書くのが上手いですねー。本当はまともな中国物の方が好きですけど、でも実は本領発揮って気がします。
しかしこの作品が「文學界」に載っていたとは... 驚き。いや、実は意外と相応しいのか?(笑)
読み始めた時は「表紙のミュシャに騙された!」と思ったんですが、でも読み終わってみると、やっぱりミュシャが良く似合っていたのかもしれません。(って、本当かなあ? 笑)(文春文庫)


+既読の酒見賢一作品の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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老人ホーム「海の上のカムデン」シリーズ第4作目。相変わらずのアンジェラとキャレドニアのおばあちゃんパワーが炸裂。可愛いです~。そしてそんなおばあちゃんたちに愛情と敬老の精神たっぷりで接しているマーティネス警部補も、相変わらずの男前。ああ、私もこんな風に「公的には勤務中です。が、実際のところ、大好きなご婦人がたとコーヒーを飲んでも差し障りはありません」なんて言われてみたいものだわ!(おばあちゃんになった時にね) こんな風に歳を取れるなら、それも悪くないかもしれないなー、なんて思いながら読んでいたら、解説でも光原百合さんがそんなことを書いてらっしゃいました。(笑)
そして今回は、意外と冒険心旺盛だったトム・ブライトン翁も素敵でした。このシリーズって、中心となっているのが老い先の短い人たちなので、ふとした時に人生の年輪や重みが感じられるのもいいんですよね。老人ホームでは人間の死が決して珍しくないからこそ、普通のミステリ作品とは一線を画しているような。コリン・ホルト・ソーヤー自身が老人ホームに入っているだけあって、その辺りはとてもリアルです。本当は日常の謎が似合いそうな環境とキャラクターなんですけど、でもやっぱり殺人事件だかなこそ、感じられるものがあるんだと思ってます。まあ、シリーズが進んでいくにつれ、その辺りは少しずつ薄れてはいるのですが。それに殺人事件でないとマーティネス警部補は来ないしですしねー。(それは大変!)

マーティネス警部補の顔立ちは、アンジェラによるとメキシコ系の俳優・ギルバート・ローランド似。そのギルバート・ローランドの写真は、以前つきんさん@TSUKIN-BOOKS に教えて頂きましたので、よろしければどうぞ。コチラです。同じ写真ですが、こんなのこんなのも迫力があります。(笑)(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「老人たちの生活と推理」コリン・ホルト・ソーヤー
「氷の女王が死んだ」「フクロウは夜ふかしをする」コリン・ホルト・ソーヤー
「ピーナッツバター殺人事件」コリン・ホルト・ソーヤー

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修道士カドフェルシリーズの16冊目。もう16冊も読んだのかー... と、なんだか感慨深いです。読んでいてとても心地良いシリーズなので、あと5冊しか残されてないのがちょっと寂しいのですが。
今回は中心となるのは、まず異端問題。この時代ならではですね。イレーヴ青年の持った「生まれたばかりの赤ん坊が、洗礼を受けていないという理由だけで地獄に落とされるというのか?」という疑問や、「人は、神の恩寵を受けるために日々努力するべきであり、ただ単に救いを待つべきものではない」という言葉は決して間違っていないはずだし、当然だとも思うのに、キリスト教の教義に対して疑問を持つこと自体が異端であり、断罪されかねないこの時代では、神を冒?する言葉としてしか受け止められないんですよね。そもそも「父と子と聖霊の御名によりてアーメン」という三位一体の言葉自体、突き詰めて考えるとすっごく難しい問題のはずなのに、それが上手く理解できないというだけで異端とされちゃうなんて。(私だって、何度唱えたか分からないけど、まだ理解しきれてないぞ!) その辺りのややこしい問題がエリス・ピーターズによってとても入りやすくまとめられているのが興味深かったし、ラドルファス院長やカドフェルの懐の深さが改めて感じられて、とても良かったです。
あと今回はヴェラム皮で作られた祈祷書が登場。これが見てみたい! 本文中の描写を読んでるだけでもとても美しいのです。かなり具体的な描写なので、きっとモデルがあるのだろうと検索してみたんですけど、作り手や持ち主の名前では何も出て来なくて残念。やっぱり、ずばりそのものがあるわけではないのね。... でもどんな本なのかぜひ見てみたいなー。(光文社文庫)


やっぱり本は私にとって一番の精神安定剤だな。と、ふと。
精神的にキツくなってくると読了数が増えるという、不健全な本読みですが(^^;。


+シリーズ既刊の感想+
「聖女の遺骨求む」「死体が多すぎる」「修道士の頭巾」...ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「聖ペテロ祭殺人事件」エリス・ピーターズ
「死を呼ぶ婚礼」エリス・ピーターズ
「氷のなかの処女」エリス・ピーターズ
「聖域の雀」「悪魔の見習い修道士」エリス・ピーターズ
「死者の身代金」「憎しみの巡礼」エリス・ピーターズ
「秘跡」「門前通りのカラス」エリス・ピーターズ
「代価はバラ一輪」エリス・ピーターズ
「アイトン・フォレストの隠者」エリス・ピーターズ
「ハルイン修道士の告白」エリス・ピーターズ
「異端の徒弟」エリス・ピーターズ
「陶工の畑」「デーン人の夏」エリス・ピーターズ
「聖なる泥棒」「背教者カドフェル」エリス・ピータース
「修道士カドフェルの出現」エリス・ピーターズ

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かつて天に2つの双生の月があった頃。炎月王と青月王という2人の王によって治められていた2つの月は、ある時些細なことから敵対することになり、炎月王は青月王に敗れて冥界へと墜とされてしまいます。そして200年後。炎月王に仕えていた月の吟遊族の生き残りの1人が立ち上がり...。

七生子さん@どこまで行ったらお茶の時間のオススメ。タニス・リーの影響を受けていると聞いて以来、すっごく気になっていた作品です。気になりながらも早数ヶ月... ようやく読めました!(私ってそんなのばっかりだわ)
夜の情景がとても美しくて、でもタニス・リーの闇の妖しさとはまた違って、こちらは冷たく冴え渡る月の光がとても美しいのですねー。月の場面も砂漠の場面も冥界の場面も、どれも素敵。今にも月琴の音が聞こえてきそう。そして作中で一番印象的だったのが天狼という人物なんですけど、この天狼がアズュラーン(タニス・リーの平たい地球シリーズに登場する妖魔の王)を彷彿とさせるんです! 夜の描写自体よりも、むしろこちらにその影響が感じられるように思いました。んんー、いいなあ。
そして月の光を感じる物語となると、思い出すのが神月摩由璃さんの「幾千の夜を超えて」(感想)。こちらもタニス・リーを彷彿させながら、月光の清冽さを感じさせるような作品だったんですよね。ああ、読み比べてみたくなっちゃう。今手元にないのがとっても残念。

小沢淳さんの作品は、4年ほど前にchicacoさん@CHICACOの部屋に薦められてムーン・ファイヤー・ストーンシリーズやムーン・ライト・ホーンシリーズを読んで以来。こちらもとても楽しんだのですが、その当時はもっとミステリ系のサイトだったので(笑)、ミステリ作品にしか感想を書いてなかったんですよねえ... 何も残ってなくて残念。やっぱり、簡単にでも何か書いておかなくちゃダメですねえ。(福武書店)

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ピンクのぶたのぬいぐるみ「山崎ぶたぶた」のシリーズ最新作。前回はエッセイ教室が舞台となっていましたが、今回のキーワードは、料理や食べ物。そしてそこには家族の絆という裏キーワードも隠されているようです。「食事」が生きていく上での基本であり、人が生まれ育つ上で、かなりの回数の食事を家族(もしくは家族代わりの人)と取ることになる以上、当然の帰結かもしれませんね。今回はぶたぶたの家族関係に関してもかなり判明します♪
この1冊に4つの短編が収められているのですが、今回特に気に入ったのは、「十三年目の再会」と「最後の夏休み」。記憶というものは、匂いでもかなり喚起されますが、味覚もそうですよね。ぶたぶたがきっかけで、懐かしい味に出会ってしまう登場人物たちの姿が嬉しくも切ないです。...でもね、毎回のように仕事を変えているぶたぶた、普段はそんなものかと読んでるんですけど、今回に限っては「嘘の効用」から「ここにいてくれる人」までの間に一体何があったのかしら? なんて気になっちゃいました。
ぶたぶたによって人々が癒されるのは、やはりぶたぶたが「痛み」を良く知っているからなのではないでしょうか。深く傷ついた経験がある人ほど、他人に優しくなれるものだし... って違うかな(^^;。(光文社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ぶたぶた」「刑事ぶたぶた」「ぶたぶたの休日」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「ぶたぶた日記」矢崎存美
「ぶたぶたの食卓」矢崎存美

+既読の矢崎存美作品の感想+
Livreに「幽霊は行方不明」「幽霊は身元不明」の感想があります)

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極度の飛行機恐怖から、それまで海外旅行処女だった恩田さん。しかし取材旅行のために、とうとうイギリスとアイルランドへと行くことに... というエッセイ。というか旅行記。飛行機を怖がる人は結構いますけど、恩田さんほど怖がる人は珍しいのでは? なんせ、何度乗っても慣れるどころか、相変わらずの顔面蒼白、空港に着いた辺りから記憶が曖昧になっちゃうほどなんですもん。「あんな鉄の塊が空に浮くなんて信じられない」と言う人はよくいるし、その気持ちは良く分かるんですけど... でも、ここまでって。(笑)
そんな「怖い」がひたすら前面に出てるんですが、その合間には小説や映画の話がいっぱい。そして新作にも繋がりそうなアイディアがいっぱい。今回は、そのアイディアの部分が特に面白かったです。

「歴史上の人物で誰が好きか」という話から、歴史上の人物が探偵役となるミステリの話になり、「比較的最近の有名人で探偵を押し付けられそうなのは誰?」という話に。そして実際に、マザー・テレサやガンジーが探偵をやってみた時のさわりが書かれてるんです。それがすっごく面白そう。読んでみたいー。そしてさらに、アイルランドのタラを訪れた時に、恩田さんが頭の中で見た情景... こちらはきっと本当に新作に繋がるのでしょうね。「小説以外」を読んだ時も感じたんですけど、恩田さんにとって作家という職業は本当に天職なんだなあと、またしても実感させられちゃいました。

あ、恩田さんはそれほどひどい食事には当たらなかったようですね。いいなあ。私がイギリスに行ってた時は大変でした...。特に寮の食事は最悪だったので、ひたすらパブで食事してました。(パブは結構美味しい)
今回のイギリス取材で、理瀬のイギリス留学時代の話もいよいよ具体化? ますます恩田さんの作品に注目なのでした。(講談社)

これで恩田さんの作品は再びコンプリートです♪


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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4年前に宝くじで3億円が当たったものの、特にやりたいことがなく、東京の勤めをやめて敦賀に移り住んだ河野勝男。釣りをしたり、釣った魚を料理したり、洗車したりという毎日を送っていた河野の目の前に現れたのは、白いローブを着た、金髪に灰色の目をした40がらみの男「ファンタジー」でした。その日からファンタジーは河野の家の居候となります。

初めての絲山秋子さんの作品。今読むなら、直木賞候補になった「逃亡くそたわけ」でしょ!と言われそうな気がするのですが(笑)、これも一昨年の芥川賞の候補作品だったそうですねー。それってもしかして、綿矢りささんと金原ひとみさんが受賞した時ですか? いやー、直木賞も芥川賞もちゃんとチェックしてないので良く分からなくて... というか、選ばれた時点で読む気をなくしてることが多いので...(^^;。あ、もちろん面白そうなら拘らずに読みますけどね。ちなみにこれは貸していただいた本です。
で、読んでみて。んんー、何だったんでしょう。自分のことを神だと言うファンタジーのことは、河野も含めて大半の人間がなぜか知っていて、会った瞬間名前が分かるんですよね。この中でファンタジーのことが分からないのは、河野のかつての同期の女性の片桐だけ。でも私には、その片桐だけが、この作品の中でリアルに感じられました。他の人たちは皆砂の色なのに、彼女と彼女にまつわるものだけが鮮やかに色づいていたような印象というか。片桐のアルファロメオは鮮やかな赤なのに、河野のオレンジ色のピックアップも、河野の恋人となるかりんのカーキ色のジープも、全部砂の色の濃淡の中に沈んじゃう。海も空もいっぱいあるのに、目に入ってくるのは片桐だけ。そして作中には結構重いテーマが投げ込まれてたりするんですけど、でもそれも砂色の濃淡に染まって、さらりと流れていってしまったんですよねえ。むむむ。
理屈ではなく、感覚で捉えるべき作品なんでしょうけど... 脇役の片桐にしか色彩を感じなかった私には、結局うまく捉えきれない作品だったのでした。うーむ、何をどう感じていいのかも良く分からない...。(新潮社)

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高校ボート部に女子部を作ろうと、先生に働きかけ、部員集めに走り回る悦子の3年間の物語。以前映画にもなっていますし、今も確かドラマ化されているんですよね? 宙の本棚の小葉さんが、たらいまわし企画の第12回「爽やかな春に読みたい青春小説」で挙げてらした作品でもあります。なんと作者の敷村良子さんは、小葉さんの高校時代のクラスメイトなんですって! 作品自体はフィクションでも、本の中にはその当時の雰囲気が詰まっているだなんて、いいですねえ。なんだか羨ましくなっちゃいます。
お世辞にも要領が良いとは言いがたい悦子たちなので、その活動を軌道に乗せるまでが大変なんですが、でも彼女たちの諦めの悪さのようなものが、読んでいる側にも達成感を与えてくれます。作中で家庭科教師が、「器用な人が楽々こなすより、不器用な人が苦労してなしとげるほうが、何倍も尊いのよ」と言ってますが、本当にその通りなのでしょうね。
ちなみに「がんばっていきまっしょい」は、松山東高校に伝わる気合を入れる時の掛け声とのこと。「がんばっていきまっしょい」「ショイ!」という掛け声の部分は、読んでるだけでも雰囲気が伝わってきて、読んでいると熱くなってしまいます。でも... 青春ってほんと恥ずかしいですね。悦子も「出来事を消せる消しゴムがあれば、あれもこれもごしごし消し去りたい恥ずかしい思い出ばかりだ」と言ってますが、私もほんとそうです。あの頃のことって、思い出すだけで身が竦みそうになります。(笑)(幻冬舎文庫)

そうそう、この作品も方言がいい味を出してる作品でした! 同じ四国でも、香川県が舞台の芦原すなお氏の「青春デンデケデケデケ」と、愛媛県が舞台のこの作品では言葉がまた全然違っているのですが、でも雰囲気はどこか似通っていて... いい感じです(^^)。

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舞台は福島県南部、阿武隈川沿いに広がる平野にある集落。語り手となる峰子は、その集落の名称にもなっている名家・槇村家の末娘・聡子の話し相手としてお屋敷に上がることになります。聡子は生まれつき心臓が弱くて学校にも行けずに家の中だけで暮らしているのです。そんなある夏のこと、屋敷に不思議な一家がやって来て...。

ようやく読みました、「蒲公英草紙」! いやあ、素敵でしたー。まるで語り部の語り継いでゆく物語のようです。峰子が語り手となり、柔らかで穏やかに物語は紡がれてゆきます。静かに淡々と進むんですけど、でもその中の情景は思いがけないほど鮮やかに浮かび上がってくるんですよね。そして淡々と静かに流れる幸せな日々の奥に潜む厳しさを、ふと感じさせられたり。私には、洋行帰りの西洋画家と、仏が見えなくなってしまった仏師の、絵を巡るエピソードが特に印象的で、はっとさせられました。そして最後はもう...(涙)血は異ならず 果しなき旅路

「蒲公英草紙」の余韻で、思わず「光の帝国」も再読。今日からまた祖母の家に行くんですけど(今度は8月12日まで)、自宅にいる間に「蒲公英草紙」を読んでおいて良かったです。でないともう一度「光の帝国」を買いに本屋に走りかねませんでしたもん。(笑)
ちなみに右の画像は、「光の帝国」に影響を与えたというゼナ・ヘンダースンの「果しなき旅路」と「血は異ならず」。どちらが好きかといえば、やはり恩田さんの作品の方なんですが、こちらも素晴らしいです。失ってしまった故郷への郷愁がとても切なく哀しい物語。(集英社)


+シリーズ既刊の感想+
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸

+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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「死神」は情報部に指示された人間に近づき、7日間のうちにその人間が死んでもいいかどうかを判断、「可」なら8日目にその死を見届けるのが役目。仕事がくるたびに、対象となる人間に近づきやすい年齢や外見となって近づき、淡々と仕事をこなします。特に問題がない限り「可」を出すことになっているため、ろくな調査をせずに「可」としても構わないのですが、「ミュージック」をこよなく愛する死神たちはギリギリまで判断を保留し、CDショップに入り浸るのです...。

ということで、先月出た伊坂幸太郎さんの新作。死神の「千葉」を主人公にした連作短編集です。そのうちの1作「恋愛と死神」は、以前雑誌で読んでるんですが、やっぱりこうしてまとめて読むとずっと面白い! 死神だなんていう突拍子もないはずの設定なのに、すんなりと作品の世界に入れちゃうし、しかも6つの短編はそれぞれに恋愛物だったり雪の山荘を舞台にしたミステリだったり、ハードボイルドだったりとバラエティ豊かで、それもとても面白いんです。特に雪の山荘なんて、死神ならではの真相が!(笑) そして最後の「老婆対死神」がまたいいんですよー。読んでいるとどの人間も死なせたくないって思っちゃうし、それでも千葉は感傷に流されることなく「可」の判定を下してしまったりするのだけど、でも最後まで読むと「それで良かったのね」という気になりました。飄々としていてちょっぴりズレた発言をする千葉の造形もすごく楽しいし、雨男の千葉なので雨の情景ばかりなのに、読後感はとっても爽やかです。
淡々とそつなくまとまっているようでいて、そこにはしっかり伊坂さん流の笑いの感覚が潜んでいるんですねー。大満足。これは続編もぜひとも書いて頂きたいのだけど、ここまで綺麗にまとまっちゃったら無理かしら?(文藝春秋)


+既読の伊坂幸太郎作品の感想+
「死神の精度」伊坂幸太郎
「魔王」伊坂幸太郎
「砂漠」伊坂幸太郎
「終末のフール」伊坂幸太郎
「陽気なギャングが地球を回す」「陽気なギャングの日常と襲撃」伊坂幸太郎
「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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横須賀基地の一般開放日・春の桜祭りの日に、巨大ザリガニが基地を襲撃して、...?!という怪獣映画さながらの設定なんですが(笑)、中身はまるで福井晴敏さんのよう。読んだ後で電撃文庫出身の作家さんだと知ってびっくりでした。これは3作目で、2作目の「空の中」もハードカバーなんですってね。確かにこの作風ならハードカバーの方が相応しいでしょうねえ。
外見は怪獣映画でも、そこに潜んでいるはなかなかの人間ドラマ。潜水艦の中と外からの視点で交互に描かれていくんですが、特に潜水艦内部が良かったです。(潜水艦の外は、なんとなく踊る大捜査線のイメージ... というか筧利夫さんのイメージか? 笑) 海上自衛隊員の2人がかっこいいし! 大人社会を反映した子供たちの確執も読みどころでした。面白かったなー。(メディアワークス)


+既読の有川浩作品の感想+
「海の底」有川浩
「図書館戦争」「図書館内乱」有川浩
「阪急電車」有川浩

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痛快無比という表現がぴったりの作品と聞いてたんですけど、ほんとその通り! 面白かったです。かつて学生運動の伝説の闘士だった(?)というとんでもないオヤジが出てきて、子供の側からしたらもうほんと迷惑な存在なんですよね。口先ばっかり達者で、でも実際には何もしないオヤジにはムカつく! 子供の社会もなかなか大変なのに、それをさらにややこしくしてくれちゃって、もう大変。でもそんなオヤジが後半、びっくりするほどかっこよく見えてきちゃうんですよねえ。やっぱりやる時にやってくれる人はいいですね。「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」の伊良部に負けないような濃いキャラでした。
後半は沖縄が舞台なので、夏に読むのにぴったりです。という私も沖縄ではないけど、昨日は炎天下のプールに行ってきたので雰囲気満点... 日焼け跡がヒリヒリ。(角川書店)

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■「雨鱒の川」川上健一 [amazon]
本が好き!お気軽読書日記のもろりんさんのオススメ。美しい自然を舞台にしたなんとも美しい純愛物語。中心となっている2人が10年経ってもまるで変わらないのは、変わりゆく自然との対比? 評判通り、方言がいい味を出していました。東北の言葉ってほとんど馴染みがないし、最初は全然意味が分からなくて、読みづらかったんですけどね。(集英社文庫)


■「時計坂の家」高楼方子 [amazon]
Cross-Roadの瑛里さんが、先日BookBatonで思い入れのある作品として挙げてらしたので興味を持っていたところ、たらいまわし企画でも妖精と黒薔薇の書架のつばきさんが挙げてらっしゃいました。これは児童書ですが、とても奥が深いファンタジー。読み返すたびに新たな発見がありそうな作品です。作中ではC.S.ルイスのナルニアが引き合いに出されていたんですが、この独特の雰囲気は、フィリッパ・ピアスの「トムは真夜中の庭で」に近いような気がします。高楼方子さん、いいですねえ。他の作品も読んでみたいな。(リブリオ出版)


■「ぐるりのこと」梨木香歩 [amazon]
これはエッセイ。境界線とそのこちら側、向こう側の話が多かったです。で、改めて考えてみると梨木さんの書かれる物語もそういう話が多いような。(新潮社)


■「プールに住む河童の謎」緑川聖司 [amazon]
児童書です。「晴れた日は図書館へいこう」が面白かったので、期待していた緑川聖司さんの新作。こちらもなかなか可愛らしい作品でした。森友典子さんのイラストも作品のイメージにぴったり。大人のミステリ読みはすぐにピンと来るでしょうけど、この謎がまた児童書にぴったりだし~。相馬くん、可愛かったなあ。でも宝石店に関する記述には納得できないものがいくつか。こんなことを子供が本当に信じ込んだらイヤだわあ。(小峰書店)


■「ベルガリアード物語」全5巻 デイヴィッド・エディングス [amazon]
Baroque Midnight Gothic Twilightの森山樹さんに教えて頂いたシリーズ。異世界ファンタジー好きには堪らない本格的なエピック・ファンタジー。「指輪物語」の本流を汲む作品だと解説にはあったけど、読み始めはむしろロイド・アリグザンダーのプリデイン物語のシリーズみたいでしたね。面白かったです。かなりボリュームのある作品なのですぐには無理だけど、これは絶対また再読したくなるだろうな。この物語の前日譚(?)「魔術師ベルガラス」全3冊が今月から出始めてるそうなので、そちらも買ってこなくっちゃ。(ハヤカワ文庫FT)


■「マライアおばさん」「七人の魔法使い」「時の町の伝説」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ [amazon]
どれもものすごーくダイアナ・ウィンジョーンズらしい作品で、続けて読むとちょっと胸焼けがしそう... とは言っても、どれも作風は違っていて、DWJの引き出しの多さにびっくりなんですけどね。「マライアおばさん」は、ほんとヤなヤツだらけで、誰が味方なのかも分からないほど。毒気がいっぱい。「七人の魔法使い」の方が明るくて楽しかった。本当にこの終わりでほんとにいいの?って感じでしたが...。「時の町の伝説」はタイムトラベル物。ちょっとややこしかったけど、歴史の捉え方が面白かったです。(徳間書店)


■「妖女サイベルの呼び声」「影のオンブリア」パトリシア・A・マキリップ [amazon] [amazon]
どこまで行ったらお茶の時間の七生子さんのオススメ。どちらも重厚で寡黙な独特のな雰囲気がすごく素敵な作品でした。まるで神話みたい。少しでも飛ばすとすぐ分からなくなってしまいそうで、そういう緊張感も久しぶりでした。マキリップも色々と読んでみたい! 「影のオンブリア」の「オンブリア(Ombria)」は、舞台となる都の名前。それ自体が影を連想させる言葉なので(仏語の「影」はombre、伊語だとombraだし)重箱読みしてるような妙な気分だったんですけど、読んでみるとなんともぴったりな名前でした。KinukoY.Craftさんのイラストの表紙も、ほんとぴったりで素敵。この「影のオンブリア」を原作として、岡野玲子さんが「コーリング」を描かれてるのだそうです。→間違いでした。「妖女サイベルの呼び声」が原作なんですって。maki さん、ありがとうございます!(ハヤカワ文庫FT)


■「ウルフタワー」全4冊 タニス・リー [amazon]
訳のせいもあるんでしょうけど、これじゃあまるでライトノベル。コバルトに入っててもおかしくないぐらい。原文がどうなってるのかは知らないですけど、なにもこんなに軽く訳さなくても...。たまに惹かれる部分はあるものの(主人公の相手役がかっこよかった)、全体にタニス・リーらしさがあまり感じられなくて残念。(産業編集センター)

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今回は再読したわけじゃないんですけど、Livreに載せている感想をこちらにエントリしておきます。読んだのは2004年6月なので、丁度1年前ですね。この作品を読んだ時点では、「妖都」「蘆屋家の崩壊」だけが既読だったはず。そちらの2作との雰囲気の違いにすっごく驚いた覚えがあるんですけど... そんなこと一言も書いてないや(^^;。
以下Livreからの転載です。

ミッション系のルピナス学園の女子高校生・吾魚彩子が級友の桐江泉と京野摩耶、そして憧れの祀島龍彦と一緒に、刑事をしている姉・不二子とその相棒・庚午宗一郎から持ち込まれた事件を推理するという連作短編集。
最初の2編は、10年ほど前に「津原やすみ」名義で講談社X文庫から出版された、「うふふルピナス探偵団」「ようこそ雪の館ヘ」を全面改稿したもの。そしてこれに「大女優の右手」が新たに書かれたのだそうです。X文庫の時とは、おそらく文体がかなり違うのではないかと思いますが、さすがに元は少女小説らしく、テンポが良くてさくさくと読める楽しい作品となっています。そしてやはり少女小説ならではといったところで、キャラクターが魅力的。特に彩子の憧れの祀島くんが何ともいい味を出しています。収められているのは、「冷えたピザはいかが」「ようこそ雪の館へ」「大女優の右手」の3作。

「冷えたピザはいかが」倒叙式のミステリ。犯人がなぜピザを食べなければならなかったのかというのは今ひとつ納得できなかったのですが、エアコンのタイマーの説明には非常に納得。「ようこそ雪の館へ」奇妙奇天烈な推理も披露されるのですが、しかしその着眼点が面白いですね。「大女優の右手」ここで演じられている尾崎翠の「瑠璃玉の耳輪」は、実在する作品。その舞台の艶やかさが伝わってくるような作品です。プラチナの腕輪という小道具の使い方も鮮やかで、しかも切なさを孕んでいていいですね。この作品の中では、右手が切断されたというのも、まるで1つの儀式のように見えてくるのが不思議。遺体の移動トリックが面白く、3作の中ではこれが一番好きです。

彩子と祀島くんの恋の行方も気になりますし、続編もぜひ書いて頂きたい楽しいシリーズです。(原書房)

とのことデシタ!


+既読の津原泰水作品の感想+
「ペニス」津原泰水
「少年トレチア」津原泰水
「綺譚集」津原泰水
「妖都」津原泰水
「蘆屋家の崩壊」津原泰水
「赤い竪琴」津原泰水
「ルピナス探偵団の当惑」津原泰水

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