Catégories:“2006年”

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ウラル地方の民話をバジョーフがまとめたもの。表題作「石の花」はプロコフィエフの作曲でバレエにもなっていて有名ですね。私が知ったのも、バレエの方が先でした。でもバレエでは、「山の女王の愛を拒んだため石像に変えられた細工師ダニーロが、許婚カテリーナの深い愛情によって救い出される」という話で、山の女王が悪者になってたと思うんですが、元の話はちょっと違います。石の細工に取り付かれてたダニーロが、山の女王に諭されても聞く耳を持たず、頼み込んで石の花を見せてもらうんですもん。見たら許婚の元に帰れなくなるって知ってたのに。

全部で8編入ってて、どれもおじいさんが昔話を語るという形式。基本的にロシアの銅山での労働者たちの話です。銅や石を掘ったり、石に細工をしたり。彼らの生活はとても苦しいのだけど、山の情景がとても幻想的で素敵だし、作っている細工物は本当に見てみたくなってしまいます。ここで登場する「石」とは、基本的に孔雀石(マラカイト)。不透明の緑色で、縞模様が孔雀の羽を思わせることから、日本では孔雀石と呼ばれる石。古くから岩絵の具や化粧品の原料に使われてきていて、クレオパトラもこのアイシャドーを使ってたという話もあったりします。私自身は、孔雀石ってあまり好きじゃないんですけどね... でも、そのあまり好きじゃないはずの孔雀石が、この作品ではもう本当に素敵なんです。逆に、この本で孔雀石に興味を持った人が、実物を見て「イメージと違ーう!」と思うケースは多いかも...(^^;。

8編中最初の5編には一貫して山の女王が登場するし、人間側も徐々に世代交代して連作短編集みたい。後の3編は少し雰囲気が違うこともあって、私は最初の5編が好きです。山の女王がまたいい人なんですよ。「石の花」のダニーロに対しても、許婚がいるのに石の花なんて見たがってはダメだと言い聞かせてるし、気に入った人間にはその子・孫の代まで色々と世話をやいてあげてますしね。(悪戯好きな部分はなきにしもあらずですが...) ただ、山の女王の世界を人間が一度垣間見てしまうと、人間の世界には存在し得ない美しさにみんな取り付かれてしまうんですね。(岩波少年文庫)

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生まれた時から声が大きかったジェルソミーノは、産声は工場のサイレンと間違えられ、小学校に行くようになってからも、教室で答える声で黒板や窓ガラスを壊してしまう始末。そして、声で梨の木から実を落として村中が大騒動になってしまった時、ジェルソミーノは村を出ることを決意します。ジェルソミーノが国境を越えてやって来たのは、パン屋のことを「文房具屋」、文房具屋のことを「パン屋」と呼び、猫はわんわんと吠え、犬はにゃおんと鳴く「うそつき国」でした。

書かれた年代としては、「チポリーノの冒険」(感想)より後の作品なのだそうで、こちらには政治色はそれほど感じられないですね。もちろん風刺はたっぷりあるんですけど、まるで楽しいほら話みたい。というか、まるでケストナーの作品を読んでいるような感じ。
物を壊してしまうほどの声というのは、それほど目新しく感じないのですが、ジェルソミーノが「うそつき国」で猫のゾッピーノや画家のバナニートと仲良くなって繰り広げる冒険は、文句なしに楽しい♪ 悪役・ジャコモーネの末路もなかなか良かったです。
でもワクワクするよう展開の中で、立ちんぼベンベヌートのエピソードだけは切ないんですよね...。イタリア語で「ベンベヌート」といえば、英語の「Welcome」と同じ意味じゃありませんでしたっけ? 人の命を延ばすごとに自分の命を失ってしまう彼に、この名前を持ってきてる意味を考えてしまいます。もしかしたら、綴りが全然違うかもしれないのですが...。(筑摩書房)


+既読のジャンニ・ロダーリ作品の感想+
「猫とともに去りぬ」ロダーリ
「チポリーノの冒険」ジャンニ・ロダーリ
「うそつき国のジェルソミーノ」ジャンニ・ロダーリ
「パパの電話を待ちながら」ジャンニ・ロダーリ

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えへへー、指輪物語を再読してしまいました。
先日「ホビットの冒険」を読んだ後、他の本読みつつ、ちまちまと読み進めてたんです。ええと、前回読んだのが2002年なので、4年ぶりということになりますね。(サイトに記録があると、こういう時にほんと便利) 小学生の時に初めて読んで以来、これで何度目の再読になるのかは分からないぐらい読んでるんですが、この本は何度読んでも、いつも幸せな気分になります。もうほんと大好き。好きすぎて、感想を書きたくないぐらい。とは言っても、結局普通に読むだけで、マニアにはなれないんですが。(笑)
あ、箱のセットは「全9巻」になってますけど、10冊目の追補編も必読です。ここまで読んで「指輪物語」は完結。てか、私が最初に買った旧版の文庫は全6冊で、追補編まで全部入ってたので、どうしても抜かしたくないんですよね。...新版は全10冊、旧版は全6冊。差がありすぎるようにも思えますが、訳がどうこういう以前に、字の大きさや紙の厚みが全然違うので。それはもう笑ってしまうほど。
近いうちに、ロード・オブ・ザ・リングのDVDをまた見ようっと。そして「終わらざりし物語」を読もうっと。でも「終わらざりし物語」はハードカバーだから、持ち歩きできないのがツラいなあ。(評論社)


+既読のJ.R.R.トールキン作品の感想+
「農夫ジャイルズの冒険 トールキン小品集」J.R.R.トールキン
「妖精物語の国へ」「妖精物語について」J.R.R.トールキン
「シルマリルの物語」上下 J.R.R.トールキン
「ビルボの別れの歌」「指輪物語『中つ国』のうた」J.R.R.トールキン
「ブリスさん」「サンタ・クロースからの手紙」J.R.R.トールキン
「仔犬のローヴァーの冒険」J.R.R.トールキン
「ホビットの冒険」上下 J.R.R.トールキン
「指輪物語」J.R.R.トールキン
「サー・ガウェインと緑の騎士」J.R.R.トールキン
「終わらざりし物語」上下 J.R.R.トールキン

+既読の指輪物語関連作品の感想+
「トールキン神話の世界」赤井敏夫
「トールキンによる『指輪物語』の図像世界」W.G.ハモンド/C.スカル
「トールキン指輪物語事典」デヴィッド・デイ
「図説 トールキンの指輪物語世界 神話からファンタジーへ」デイヴィッド・デイ

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非常に力の強い魔術師である父・アブホーセンの意向で、5歳の時に古王国を離れ、「壁」の向こうにある私立学校・ワイヴァリー学院の寄宿学校に入ったサブリエルももう18歳。卒業後の進路を話し合うため、毎月恒例の新月の夜に父親が影を送ってくるのを待っていました。しかしその夜、アブホーセンはなかなか現れず、その代わりに現れたのは、父の使いの真っ黒な生き物。父のいつも持っていた剣と7つの小さな銀のハンドベルを受け取ったサブリエルは、アブホーセンに何があったのか調べるために、早速古王国へと向かうことに。

最近の読書はファンタジー系が多いんですが、今時のファンタジー作品を読むのは、とても久しぶり。というか、実はあまりよく知らないんですよね、最近のファンタジー作品って。この作品も気になってはいたものの、最近よくある「怒涛のように展開してページをめくる手を止められない」タイプの作品かも、とちょっと警戒してたし(今そういう気分ではないので)、それ以前に、読むとしても3部作が全部文庫で出揃ってからにしようと思ってたはずなんですが...(笑) 書店で見かけた時に、つい買っちゃいました。でも正解。面白かった。

ということで、古王国記シリーズの第1作です。でもこの作品、設定がややこしいんですよね。
まず普通の世界の中に、古王国という魔力が非常に強く、現代的な機械が機能しない一帯があって、普通の世界からは「壁」で隔離されています。ここには「チャーター魔術」と「フリー・マジック」といった2つの魔法があるんですけど、これ以外にもあるのかな...? とにかくサブリエルの父は強力なチャーター魔術師で、剣とハンドベルによって、蘇った死霊を冥界に眠らせるのが仕事。
サブリエル自身分かってないことが多いし、説明が懇切丁寧というわけでもないし、古王国の存在自体がそもそも謎~。でも一旦読み始めたら、すっかり引き込まれてしまいました。マークを思い描いたり、定められた手順で指を動かすことによってかけるチャーター魔術も面白いし、結界を作って冥界と行き来する場面も素敵。そして何といっても、それぞれに大きさも音色も役割も違う7つの銀のハンドベルの存在がいい! ベルは単体で使うこともできますし、力のある魔術師なら組み合わせることも可能。でも簡単に使えるものばかりではなく、使い方を一歩間違えると魔術師も滅ぼしてしまう危険性をはらんでるんですよね。危険といえば、口は悪いながらも、普段は忠実にアブホーセンに仕えている白猫のモゲットも、実は危険な存在。やっぱり闇が濃いほど、光が際立ちますね。でも、全体的に重苦しい雰囲気が漂って、ダークファンタジーというのはこういう作品のことを言うのかなあ、なんて思いながら読んでたんですけど、実はそれほど暗いわけでもなかったようです。少なくとも読後感は、全然悪くも暗くもないです。
いくつか難もあると思うのだけど、それでもこの世界観はなかなか魅力的。この世界、そして7つの門を持つ冥界についてももっと知りたくなります。続編の「ライラエル」「アブホーセン」も楽しみ。早く文庫にならないかな。(主婦の友社)


+シリーズ既刊の感想+
「サブリエル 冥界の扉 古王国記I」上下 ガース・ニクス
「ライラエル 氷の迷宮 古王国II」上下 ガース・ニクス
「アブホーセン 聖賢の絆 古王国記III」上下 ガース・ニクス

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美しい湖水と深い森に囲まれた場所に住む、年を取った人の好い漁師夫婦の家を1人の若い騎士・フントブラントが訪れます。彼は森の向こうの天領の町から、1人で不思議な生物や妖怪が現れると噂の森の様子を探りに来たのです。フントブラントは漁師夫婦の養女・ウンディーネと恋に落ち結婚。しかしウンディーネは魂を持たない水妖でした。フントブラントを愛し愛されることによって魂を得たウンディーネは、フントブラントに自分が水妖であることを打ち明けます。

フーケーは18世紀から19世紀にかけてのドイツのロマン主義作家。この作品は、ドイツではゲーテの「若きウェルテルの悩み」と共に愛読されているという作品なのだそうです。民間伝承に題材をとったという、美しく幻想的で、そしてとても悲しい物語。
読んでいて一番目を引いたのは、魂を持っていなかったウンディーネの、魂を得てからの変わりよう。まるで別人。魂がない頃のウンディーネって、楽しいことにしか興味を持たない、軽くて気まぐれでとてもお行儀の悪い子だったんですよね。でも、魂が近づいてくるにつれて「居ても立ってもいられないような心配や悲しみが影のように覆いかぶさって来る」と感じ、「魂」を得た後はすっかりお淑やかな娘になってしまいます。もしフントブラントに一生みじめな思いをさせられたとしても、魂を得させてもらえたことを有難く思うだろうと言っているほど。ここに登場する「魂」って、日本人にとっての「魂」とはまた別物のような気がして、ちょっと違和感があるのだけど...。「魂」というより、むしろ「愛」ではないのかなあ。(キリスト教だから、「信仰」もかも) そういえばロード・ダンセイニの「妖精族のむすめ」も、魂を得て人間になる妖精の話なんですが、何かを欲しいと願うこと自体、何かを感じること自体、魂を持ってるからこその心の動きのような気がするんですよねえ... うーん、魂って何なんだろう? 
ウンディーネの叔父の水の精・キューレボルンは魂を持っていないので、愛の幸せのために涙を流すウンディーネを理解することができないし、ウンディーネの言う「愛の喜びと愛の悲しみは、たがいによく似た優しい姿の、親しい姉妹の仲であって...」という言葉は理解の外。

この作品は、その後フランスの作家・ジャン・ジロドゥーによって「オンディーヌ」という三幕の戯曲にもなってます。どうやら、そちらの方が過程に説得力がありそうなので、そちらも読んでみたいです。でもこの「水妖記」も、確かに解説にもある通り、もっと切ない物語にすることもできたんでしょうけど、これはこれで完成されていると思いますね。あと、アーサー・ラッカムが挿絵を描いた単行本もあるみたいなので、見てみたいなあ。現在品切れのようですが、コチラ。(岩波文庫)


+関連作品の感想+
「水妖記(ウンディーネ)」フーケー
「シンデレラ」「不思議の国のアリス」「ウンディーネ」「リップ・ヴァン・ウィンクル」「ピーター・パン」アーサー・ラッカム
「オンディーヌ」ジロドゥ

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善政ではあっても新しい変化のない世の中に倦んだアールの郷の人々は、国主に「魔を行う国主さまに治めていただきたい」と申し出ます。国主は了承。早速長男・アルヴェリックを呼び、エルフランドに行くことを命じます。魔の家系の王女、エルフランドの王の娘と結婚しろというのです。

ほお~~っ、美しいです。重厚な美しさを描き出すダンセイニの作品の中でも、特に美しい作品ですね。幽玄な美しさというか何というか、もううっとりしてしまうー。特に印象に残ったのは、魔女が落雷を掘り出して剣を作る場面、アルヴェリックが黄昏の国境いからエルフランドへと踏み出す場面、そして何といっても、「時」がなく永遠の静謐の中にまどろんでいるエルフランドの描写。このエルフランドの描写がすごいんです。今まで色々な「妖精の国」の物語を読んできましたけど、これほどまでに静かな存在感がある場所は、初めてだったかも。エルフランドの場面、エルフランドの王女が登場する場面は特に、読んでいる間中ずっと歌が聞こえてくるような気がしていました。それだけに、エルフランド王の怒り、その静かな恐ろしさが際立つような気がします。終盤はとても物悲しいんですけどね。読んでるうちに、なんだかエルフランドにのみこまれてしまったみたいです。 圧倒的な作品でした。(沖積舎)


+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ
「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ
「牧神の祝福」ロード・ダンセイニ

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「きえてしまった王女」は、小さい時から甘やかされて育ったため、我侭で自分勝手な子になってしまったロザモンド王女と、両親が甘やかし続けたおかげで、これまた自分勝手でうぬぼれの強い子に育ってしまった羊飼いの少女・アグネス、そしてその2人を立ち直らせようとする賢女の物語。「かげの国」は、病気で寝たきりにも関わらず、妖精の国の王様にさせられてしまったリンケルマンじいさんが、かげに連れられて、かげの国へと行く話。

「きえてしまった王女」に登場する2人の少女たちは様々な試練を受けているうちに、徐々に自分の醜さを理解していきます。でも頭では分かっていても、思うように行動できないというのはよくあること。自分でも気付かないうちに、自分の悪い部分を正当化しようとしたり、良くなりかけていても、あっという間に元の嫌な子供に戻ってしまったり。賢女のおばあさんの助けを借りても、どうも一進一退といったところ。このなかなか上手くいかないところが、また人間らしいと言えそうです。こういうのって心がけが立派なだけじゃダメなんですよね。この物語を読んでいると、賢女のおばあさんの言葉に、まるで直接話しかけられているような気がしました。いやー、気をつけよう...。
「かげの国」は、あとがきによれば、ジョージ・マクドナルドの初めての童話とも考えられている作品のようです。「北風のうしろの国」を準備するためのスケッチだとも。確かに「北風のうしろの国」ととてもよく似た雰囲気があるんですが、こちらの方が教訓が直接的なんですよね。もう少しぼかして欲しかった気もするのだけど... それが初めての童話作品と考えられる所以なのかな。

どちらの物語にしても、他のマクドナルド作品にしても、教訓色が強いし、物語としてきちんと閉じていなくて、どこか収まりが悪かったりもするんですが、それでもやっぱり豊かに広がる幻想的なイメージが美しいです。これでトールキンやルイスみたいな、きちんとした起承転結を持つ作品を書く作家さんたちに大きな影響を与えてるというのが面白いなあ。
マクドナルド作品は邦題が色々なので分かりにくいんですが、どうやらこれでコンプリートらしいです。特に好きだったのは、「金の鍵」と「昼の少年と夜の少女」(「フォトジェン」という邦題も)。今度、随分前に読んだきりの「リリス」を再読しようっと。今ひとつ理解できなくて悔しかった「ファンタステス」(感想)も。元々一読しただけでは、全て掴みきれないというイメージの強い作家さんですしね。次回に期待なのです。(「リリス」の方は、既に2~3度読んでますが)(太平出版社)


+既読のジョージ・マクドナルド作品の感想+
「お姫さまとゴブリンの物語」「カーディとお姫さまの物語」マクドナルド
「北風のうしろの国」ジョージ・マクドナルド
「かるいお姫さま」マクドナルド
「ファンタステス」ジョージ・マクドナルド
「金の鍵」「黄金の鍵」ジョージ・マクドナルド
「きえてしまった王女」「かげの国」ジョージ・マクドナルド

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Note


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