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修道士カドフェルシリーズ21冊目。これが本当の最後。「ウッドストックへの道」「光の価値」「目撃者」という短編が収められた1冊。

「ウッドストックへの道」には、まだ修道院に入っていない、40代そこそこのカドフェルが登場。かつてイーヴシャムの修道士だったという男とのやり取りや、その後の出来事によって、シュルーズベリの大修道院に行くことになるという作品。まさにこの本の題名である「修道士カドフェルの出現」です。人生のどんな転機に対しても、さすがカドフェルは常に自然体なんだなあと思わされる作品。そして、まだこの頃は女帝モードの父であるヘンリー1世が生きてるんですけど、作中で後継とされていたウィリアム王子が海難事故に遭うんですよね。そういう意味でもシリーズに繋がる重要な作品と言えそうです。カドフェルが修道院に入るには、これ以上の年はなかったかも。

3作の中では、やはり「ウッドストックへの道」の印象が一番強かったんですけど、「光の価値」も、シリーズの中に長編としてあってもおかしくないような作品だったし、「目撃者」で、ドジなオズウィン修道士が登場するのも懐かしかったし、やっぱりこのシリーズがもう新作で読めないなんて寂しいですー。でもエリス・ピーターズ自身が、誰にも続編を書いてはいけないと遺言しているそうなので... それでもピーターズは、最初はカドフェルをシリーズ物にする気なんてなかったんですね。彼女自身による序文を読んでびっくりでした。
巻末には「修道士カドフェルシリーズ:ガイド」があって、物語の歴史的な背景やシュルーズベリについて、カドフェル以外の主な修道士や修道院での1日、シリーズに出てくる食べ物や薬草、各巻のあらすじなどがまとめてある小事典となっています。(光文社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「聖女の遺骨求む」「死体が多すぎる」「修道士の頭巾」...ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「聖ペテロ祭殺人事件」エリス・ピーターズ
「死を呼ぶ婚礼」エリス・ピーターズ
「氷のなかの処女」エリス・ピーターズ
「聖域の雀」「悪魔の見習い修道士」エリス・ピーターズ
「死者の身代金」「憎しみの巡礼」エリス・ピーターズ
「秘跡」「門前通りのカラス」エリス・ピーターズ
「代価はバラ一輪」エリス・ピーターズ
「アイトン・フォレストの隠者」エリス・ピーターズ
「ハルイン修道士の告白」エリス・ピーターズ
「異端の徒弟」エリス・ピーターズ
「陶工の畑」「デーン人の夏」エリス・ピーターズ
「聖なる泥棒」「背教者カドフェル」エリス・ピータース
「修道士カドフェルの出現」エリス・ピーターズ

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今でもイラン人なら誰でもその一節を暗誦することができる、と言われているほどイランの人々に愛されているペルシャ英雄叙事詩。11世紀初めにフェルドウスィーによって作られたものです。本来は「神話」「伝説」「歴史」の3部構成だそうなんですが、この本では「神話の王たちの時代」「伝説英雄の時代」の2部に分かれています。

3部構成の最後の「歴史」の部分(全体の5分の2程度)が丸々省略されてるし、「神話」「伝説」部分も部分部分で省略されているので、本来の形からみると4分の1ほどの量になっているのだとか。訳も散文形式だし、岩波文庫に珍しく注釈もものすごーく少なくて(全体で23だけ!)、読みやすさにこだわった簡易版といった感じですね。今のところ完訳版は出てないようなので仕方ないのですが。
基本はペルシャ初代の王・カユーマルスからの歴代の王の紹介で、随時英雄伝説が挟まっています。解説に「ある意味では、私たちの『古事記』に当たる」と書かれていたんですけど、なるほどそんなものかもしれないですね。ちょうど古事記の、山幸彦の孫(だっけ)が神武天皇になって、歴代の天皇のエピソードが神話交じりに書かれていくような感じ。さだめし、初代の王・カユーマルス王が神武天皇で、英雄ロスタムがヤマトタケルってところでしょうかー。こちらの「王書」には、天地開闢だの天地創造だの神々の誕生だのといった部分はありませんが。
結構面白かったし、注釈が少ないのは読みやすかったんですけど、読んでいると、つい気になってしまう部分いくつか...。ここの説明が読みたい!ってところには注釈がなかったりして、痒いところに手が届かないー。注釈もありすぎると、本文の流れを遮ってしまうから読みにくいんだけど、やっぱりある程度は必要なものですねえ。あと、古代ペルシャで信仰されていたのはゾロアスター教だし、この詩の中でもそうなってるんですが、実際にこの詩が作られたのは、既にイスラム教になっていた頃。その辺りについても、もう少し説明して欲しかったところです。もしかして後から宗教的にいじられたのかな?って部分もあったんですよね。気になりますー。(岩波文庫)

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娘のペルセポネーを突然ハーデースに奪われて嘆くデーメーテールを描いた「デーメーテールへの讃歌」、ヘーラーの嫉妬のために、ゼウスとの間に出来た子供を産む場所を探すのに苦労する女神レートーの「アポローンへの讃歌」、生まれたその日にアポローンの牛を盗み、アポローンに捕まえられてもゼウスの前に出されてもしらばっくれるヘルメースを描いた「ヘルメースへの讃歌」、英雄アンキーセースと出会って愛し合い、後にローマを建国するアイネイアースを産むことになるアプロディーテーの「アプロディーテーへの讃歌」の4編。

「ホメーロス讃歌」とは言っても「イーリアス」「オデュッセイア」の作者であるホメーロスが書いたのではなく、様々な人物がホメーロス的に作り上げた詩を集めたもののようですね。という以前に、本当にホメーロスという人物はいたのか、1人の人間が本当に「イーリアス」「オデュッセイア」を作り出したのか、それとも複数の人物のユニットが「ホメーロス」だったのか... なんて「ホメロス問題」があるようですが。

4つとも、ギリシャ神話が好きな人にはお馴染みの有名なエピソード。もっとも読む本によって、細かい部分が違ってたりしますけどね。そしてこの中で私が一番面白く読めたのは、「ヘルメースへの讃歌」でした。ヘルメースは生まれたその日も揺り籠の中にじっとしていることなく、早速飛び出してしまうのですが、亀を見つければその甲羅で竪琴を作って奏でてみたり、アポローンの牛を50頭も盗んでみるという行動力。しかも、ヘルメースが犯人だと見抜いたアポローンに責められても、ゼウスの前に引き出されても、のら~りくらりと言い逃れるんです。ヘルメースといえば知的でスマートなイメージがあるのですが、むしろ悪知恵が働く赤ん坊だったわけですね。読んでいる間は、解説に書かれているような「喜劇仕立ての滑稽な作品」とはあまり思わなかったんですが、読後少し時間が経つと、やはりあれは喜劇仕立てだったんだなあ~なんて思ってみたり。
この本に収められているのは4編だけですけど、ちくま文庫から出ている「ホメーロスの諸神讃歌」で全33編が読めるようです。この4編以外はどれも小粒で、神話伝説的要素があまりないそうなんですが、これだけだとちょっと物足りなかったので、今度はそちらを見てみるつもり~。(岩波文庫)


+既読のホメロス名義作品の感想+
「イリアス」上下 ホメロス
「四つのギリシャ神話 『ホメーロス讃歌』より」
「オデュッセイア」上下 ホメロス
「ホメーロスの諸神讃歌」ホメーロス

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帯に「図書館長・寺山修司が、珍書・奇書を大公開!」とあって、これは面白そう!と手に取ったんですが、実際面白かったです。ヨーロッパやアメリカに行くたびに古本屋や古本市で見つけて蒐集してきたという、寺山修司の蔵書コレクションを紹介する本。「書物の迷路あそび」という章にも「ヨーロッパへ旅行するたびに探しまわった迷路に関する文献も、かれこれ棚一段分ぐらいになった」という文章があるように、少しずつ集められてきた本たちのようです。

さすがに寺山修司氏、興味の向かう方向が独特ですね。「髭のある女の実話画報」「フェチシズムの宇宙誌」「大男を愛するための図鑑」「変わった殺人のための大百科」「サディズム画集の中の馬男たち」などなど、目次を見ているだけでも一種独特の妖しげな雰囲気が漂うんですが、実際に紹介されている本もユニークなものばかり。「奇書・珍書コレクション」という紹介に相応しい1冊です。実際にその本や雑誌に掲載されていた写真や図版も転載されてるのが、また楽しいんですよー。
「書物の迷路あそび」に紹介された様々な迷路、そしてその用途(ボルヘスの「ふたりの王とふたつの迷宮」が読んでみたくなりました)、「髭のある女の実話画報」で紹介されている髭のある貴婦人・クレメンチーヌ・デュレのエピソード。デュレ夫人の写真は、男装の麗人というよりも、男の人が女装してるようにしか見えないんですが、きちんとした医者が、彼女をれっきとした女性だと太鼓判押してるというんだから驚き。子供も産んでるんですよね。しかも、立派な髭を生やしたデュレ夫人は、県知事によって男装を許されたのだとか...! 当時の女性と男性の社会的な立場の違いを、思わぬところで再確認させられちゃいます。あと、面白かったのは、自殺機械を発明し実演する男たちを紹介した「変わった殺人のための大百科」とか、「だまし絵の美術史」のだまし絵画家同士の対決とか、「フェチシズムの宇宙誌」とか... 中国の男性が、纏足された小さな足に感じる「繊細な甘さ」と「刺激的な趣味」って! そうなんだ!(笑)
ミステリ好きさんにとっては、ミス・マープルそっくりさんコンテストの話題とか(選ばれた老嬢の写真付き)、新聞に掲載されたエルキュール・ポワロの死亡記事が興味を引きそう。1枚の図版を見て推理する「軽食スタンド殺人事件」なんかも面白そうでした。これがもうちょっとちゃんと推理できるようになっていれば、もっと良かったんですけどね。 (角川文庫)


+既読の寺山修司作品の感想+
「不思議図書館」寺山修司
「さかさま世界史 英雄伝」寺山修司

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離婚して実家に戻り、雑貨を作っては梅屋に置いてもらって生計を立てている果那。自宅ではなかなか熟睡できないため、徹夜で作品を作っては梅屋に行き、納品がてら奥の三畳ほどの小部屋に眠らせてもらうのが毎日の習慣。そんなある日、果那を訪ねてきたのは、「カワサキリュウジ」という青年でした。果那の元夫の行方を捜すには、果那の寝言が鍵となっているのではないかと考えた「カワサキリュウジ」。実は果那には幼い頃に誘拐された経験があり、よく寝言で口にしていたのです。

大島真寿美さんの作品を読むのは初めて。実はサイン本を頂いてしまいました。ありがとうございます~。
読みながらずっと考え続けていたのは、「かなしみの場所」がどこなのかということ。どこなんでしょうね。登場する場所といえば、まず梅屋があるんですが、ここはとっても居心地が良さそうな場所なんですよね。ここにいる「みなみちゃん」とは、果那もよく気が合ってるし、自宅でもよく眠れない人間がすとんと眠ってしまえるような場所なんですもん。かといって、離婚する前に住んでいた家でもないでしょうし、その後戻った自宅も、伯母夫婦がマレーシアの息子のところに行ってる間留守番をすることになった伯母宅も、「かなしみ」とはちょっと違うし...。結局のところは、果那が既にぼんやりとしか覚えていない思い出のことなのでしょうかー。現在も決して不幸ではないけれど、そこだけぽっと暖かく色づいているような思い出。
静かな雰囲気の中で淡々と進んで、まるで透明な水のようにさらさら流れていく物語です。柔らかい色彩の装幀も綺麗で、この雰囲気にぴったり。果那とみなみちゃんのやりとりも楽しいです。ただ、時折ひっかかる部分も... その中の1つは、設定が時々妙に細かくなること。そんなに書き込まない方が、全体の雰囲気には合うと思うんですけど、何度も書き直してるうちに、場面によって深さが変わっちゃったのかな? とはいえ、これから人気が出そうな作家さんですね。この作品の透明感に惹かれる人は多そうです。(角川書店)

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しばらく間があいてしまったんですけど、池波正太郎氏の「剣客商売」読了しました!
今回読んだのは、13~16と、番外編の「黒白」上下巻、同じく番外編の「ないしょないしょ」、そして、剣客商売に登場する様々な料理を実際に再現している「包丁ごよみ」。
前の感想を探してみたら、1~4巻はココ、5~8巻はココ、9~12巻はココ、どれも今年の1月だったんですね。その後、一気に読んでしまうのは勿体ないような気がしてきて、でも、そうこうしてるうちに海外物のペースが上がってしまったりして、しばらく中断しちゃったんですよね。本を貸して下さったAさん、ごめんなさいー! でもすっごく面白かったです。

番外編の「黒白」は、13巻を読む前に読みましたよ!>b.k.ノムラさん。確かにその頃読むのが、一番いいみたいですね。これで、小兵衛の昔馴染みの登場人物のことがすごく掴みやすくなって、話にも一層入りやすくなりました。
そして13巻の「夕紅大川橋」、とっても良かったです~。>ワルツさん。色んなところで、結構びっくりさせられつつ、ちょっとしっとりとしたムードも楽しめました。洗い髪というのがまた良くて、鮮やかに情景が浮かんできますね。
あと好きだったのは、「暗殺者」かな。これは「仕掛人・藤枝梅安」を読んでたら、一層面白かったのでしょうか。なんだか繋がりがありそうな感じですね。元々必殺シリーズは好きだったので、かなりワクワクしながら読めました。シリーズ後半は大治郎よりも小兵衛が中心となる話も多かったので、久々に若先生が出てきてくれたようで、それもとても楽しかったのかも。最初は小兵衛が気に入ってたと思うのに、いつの間にか大治郎の方が良くなってたみたいです、私。(笑)(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
お正月休みの間に読んだ本(7冊) (「剣客商売」1~4)
「剣客商売」5~8 池波正太郎
「剣客商売」9~12 池波正太郎
「剣客商売」13~16+α 池波正太郎

+既読の池波正太郎作品の感想+
「殺しの四人」「梅安蟻地獄」池波正太郎
「梅安最合傘」「梅安針供養」池波正太郎
「梅安乱れ雲」「梅安影法師」池波正太郎
「梅安冬時雨」「梅安料理ごよみ」池波正太郎

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突然ネコから20歳前後の青年になってしまった夢吉。同居している作家のおっさん(東野さんご本人)には、なってしまったものは仕方ない、せっかく人間として生きてみろと言われ、なぜか冬期オリンピックの様々な選手たちに話を聞きに行くことに。

前半は、冬季五輪競技の紹介、後半は実際にトリノに行ってのオリンピック観戦記。
冬季五輪は嫌いじゃないんですけど、時差があったりすると、すぐに観るのが億劫になってしまう私。それぞれの競技をきちんと観たら、きっとハマるんでしょうけど、一度タイミングを逃してしまうと、どうでもよくなってしまうんですよねえ。それにオリンピックの場合、メダルの数を数えたがるマスコミが鬱陶しいし。結局、トリノ五輪も全然観ないまま終わってしまいました。そんな状態だったので、この本も、まあ、そこそこ。全作品を読んでる東野さんの本だから読んだけど、そうでなければ読まなかったんじゃないかと...。夢吉の視点で書かれていくのは楽しいんですが、やっぱり私はエッセイよりも小説がいいな。
ということで、この本の中で予告されていた、アルペンスキーヤーが主人公という「フェイク」が楽しみです。今はマイナーでも、実は面白い競技って色々とあると思うんですよね。「鳥人計画」(スキーのジャンプ競技の話)だって面白かったんだし、この本の中では「書いても出してくれる出版社がない」と否定的でしたけど、ぜひ小説の中でそういう競技を取り上げて頂きたいものです。こういうエッセイよりも、小説の方が遥かに効果的なのではないかと思うんですけどねえ。(光文社)


+既読の東野圭吾作品の感想+
「ちゃれんじ?」東野圭吾
「さまよう刃」東野圭吾
「黒笑小説」東野圭吾
「容疑者Xの献身」東野圭吾
「さいえんす?」東野圭吾
「夢はトリノをかけめぐる」東野圭吾
「赤い指」東野圭吾
「たぶん最後の御挨拶」東野圭吾
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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