Catégories:“2006年”

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はやみねかおるさんのYA向けシリーズ「都会(まち)のトム&ソーヤ」の4作目。クラスメートが応募する、地元のタウン誌の自主制作映画コンテストの締め切りに間に合わせるために、内人と創也がマラソン大会を抜け出す「大脱走 THE GREAT ESCAPE」、「番外編 栗井栄太は夢をみる。」、究極のゲームを作るための資金作りに、内人と創也がテレビのオバケ屋敷探検番組に出演する「深窓の令嬢の真相」、そして「おまけ 保育士への道 THE WAY OF THE "HOIKUSHI"」。今回も前回同様、ショートショートを挟んで中編2編です。

相変わらずのテンポの良さが楽しいシリーズ。「深窓の令嬢の真相」も、いかにもこのシリーズらしい作品なんですが、今回は「大脱走」が面白かったな。ごく普通の中学校生活に、いかにもあり得そうな感じで馴染んでたので、その辺りが個人的にポイント高かったです。でも、前作はショートショートを挟んだ中編同士が繋がって1つの長編になっていたように思うんですけど、今回はそれぞれに独立した短編となっていたのがちょっと残念。そろそろ読み応えのある長編作品を読みたいなあ。
それにしても、「トム」と「内人」の関係にはびっくり。そして卓也の上司の黒川さんについてもびっくり! はやみねさんご自身が気付いてらっしゃらなかったというのは本当でしょうか!?(講談社YA! ENTERTAINMENT)


+シリーズ既刊の感想+
「都会のトム&ソーヤ1」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「都会のトム&ソーヤ 乱!RUN!ラン!」2 はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ いつになったら作戦(ミッション)終了?」3 はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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ダンセイニの初期の作品を集めた短編集。その四大幻想短編集のうち、「世界の涯の物語」には、「驚異の書」「驚異の物語」が、「夢見る人の物語」には「ウェレランの剣」「夢見る人の物語」完全収録されています。短編ばかり全61編。オリジナル短編集と同じく、シドニー・H・シームの挿絵も全て収録。

J.R.R.トールキンやH.P.ラヴクラフト、アーサー・C・クラークを始めとするファンタジー、ホラー、SF作家たちに、日本でも稲垣足穂氏に多大な影響を与えたというダンセイニ。19世紀から20世紀にかけて生きていたという作家さんらしく、現代のファンタジーのようなサービス精神はなくて、むしろそっけないほどなんですけど、じっくりと読めば雰囲気はたっぷり。文章を少し読むだけでダンセイニによって書かれたというのが分かりそうなほどです。
ダンセイニといえば、「ぺガーナの神々」(感想)のような創作神話、「魔法使いの弟子」(感想)のような幻想的な作品、「魔法の国の旅人」(感想)のようなユーモアたっぷりの作品と色々あるんですが、この短編集もバラエティ豊か。幻想的な異世界を感じる作品もあれば、異世界と現代のロンドンを繋ぐような作品もあり、盗賊や海賊が活躍する冒険物あり、幻の都を目の前にしているような作品もあり、酒を片手に聞き出したホラ話のような作品もあり。その結末も、ハッピーエンディングと言えるものもあれば、思わぬ冷たさに突き放されるものもあり、意地悪なほど現実的なものもあり。でも驚いたのは、まるで違う雰囲気の短編が隣同士に来ていてもまるで違和感がなくて、それどころか、異全てがどこかで繋がり合った1つの世界のように感じられたこと。どれもダンセイニにとっては同じ世界なんでしょうねー。幻の都も世界の涯も、全ての道はロンドンに通じる?(笑)
「世界の涯の物語」では、ほとんど神話の匂いを感じなかったのでちょっと意外だったんですけど、「夢見る人の物語」はもっとダンセイニらしい神話の世界を感じる作品集でした。とは言っても、「ぺガーナの神々」ほどではなくて、そのエッセンスという感じですけどね。それと、稲垣足穂の「黄漠奇聞」に登場するバブルクンドの都は、やっぱりこちらが元ネタだったんですね。あの作品の最後に「ダンセーニ大尉」が登場しますものねー。(河出文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ

+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ
「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ
「牧神の祝福」ロード・ダンセイニ

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ペギー・スーシリーズの4作目「魔法にかけられた動物園」と5作目「黒い城の恐ろしい謎」。またしても本を頂いてしまいました。ありがとうございます~。

3巻で「見えざる者」との戦いも決着し、ペギー・スーの冒険もこれで終わりかと思いきや、本国フランスでセルジュ・ブリュソロの元に熱心なファンレターが山のように届き、結局ペギー・スーの冒険もまだまだ続けられることになったのだそう。(このブリュソロは、フランスのスティーブン・キングと呼ばれているという人気作家さんなのだそうです) 最初の目的も果たしてしまったし、これからどんな展開になるのかちょっと心配だったんですけど、むしろ最初の3冊よりも面白かった!
というのも、元々畳み掛けるような展開で一気に読めるシリーズなんですが、時々驚くほどブラックな部分があったりするんですよね。ブラックというよりも、むしろ残酷。なので、本国でそれほど人気というのがちょっぴり不思議だったんですが... でも今回読んだ4巻5巻は、そういう部分が少し薄まっていて、私としてはありがたかったり。
それに、考えてみると1巻の頃とは魔法の扱いもかなり変わってるんですよね。最初はこの世の中でただ1人ペギー・スーだけが妙な能力を持ってる感じだったんですが、3巻でケイティーおばあちゃんが登場してからは、魔法が当然のように存在するようになったし。そうなると、今までちょっと無理してたような部分がなくなって、物語にすごく入りやすくなったような気がします。完全に普通の日常生活の中にちょこっと不思議なことが出てくるような物語も好きですけど、このシリーズは、ちょっとパラレルワールド的に常に不思議なことが存在してる方が似合う! 4巻の冒頭でも、ペギー・スーが泊まっていたホテルでは、宛名を書いて待つだけで、完璧に同じ筆跡で続きの文章が浮かび出てくるという「観光客を面白がらせるためだけの素朴な魔法」が使われてるのが、なんか可愛いんです。
4巻も5巻も地球外生物なんかが登場して、スケールの大きな作品となってます。どちらも一気に読めるんですが、特に4巻の設定がすごくよく出来てて、最後の最後まで面白かったです。5巻の方は、最後の決着がちょっと「あれ?」だったんですけど、それまでは面白かったし。本が客に襲い掛かろうとする呪われた本屋の場面が特に面白かったです。ハリー・ポッターの2作目に出た猛獣の本(?)みたいなのばかりが置いてある店なので、アイディアを頂いちゃったのかな? とも思いましたが。(笑)(角川文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ペギー・スーi  魔法の瞳をもつ少女」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーii  蜃気楼の国へ飛ぶ」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーiii 幸福を運ぶ魔法の蝶」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーiv 魔法にかけられた動物園」「ペギー・スーv 黒い城の恐ろしい謎」セルジュ・ブリュソロ

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気がつけば、絶賛叙事詩祭りになってます。(笑)
ちくま文庫の中世文学集IIとIII。ちなみにIは「アーサー王の死」。それ以外に何があるんだろう... と思ったらこの3冊だけで、ちょっと残念。それぞれ2作ずつ入っていて、まさに題名の通りです。

まず「ローランの歌」は、フランク王シャルルマーニュのイスパンヤ(スペイン)侵攻中の物語。カルヴィーノの「不在の騎士」(感想)を読んだ時から、また読もうと思って用意してたんですが、ようやく読めました。11世紀頃に成立したと言われているフランス最古の叙事詩です。778年のロンスヴォーの戦いをという史実を元にしているようなんですが、架空の人物も多数登場、実際はバスク人と戦ってたのに、サラセン人に変えられてます。スペインがサラセン人...? ということはイスラム教徒?! とか細かい部分を気にしたらダメ~。(笑) この時代って十字軍の時代ですしね。敵がイスラム教徒の方が何かと都合が良かったんでしょう。...でも、敵側からの視点の場面でも、「馨しの国フランス」なんて言っちゃったり(本来はフランスが自国のことを讃える言葉です)、自分たちのことを「異教徒」と呼んでしまうのが、お茶目で可笑しい♪ そして、「ローランは剛(つよ)くオリヴィエは智(さと)し。」という言葉が、やっぱりイイ!

「狐物語」は、性悪の狐・ルナールが、鶏や狼、熊といった連中を次々に騙していく物語。私はイソップみたいな動物寓話が苦手なんですよね... しかもみんな思いっきり騙されてるし... これはちょっと騙されすぎだってば(^^;。でも昔の人にはこういう物語が娯楽だったんでしょうねえ。登場するのは動物でも、簡単に人間に置き換えて想像できるので、そういう意味では、当時の宮廷の様子や商人や農民たちといった庶民の暮らしぶりが良く分かる作品。

「エッダ」は、北欧神話です。神々と英雄の物語。17世紀半ばにアイスランドの修道院で「王の写本」が発見されて以来、各地に散在している写本が徐々に見つかり始め、現在は似たような性格の作品が40編ほど集められているのだそう。でもここに収められているのは14編だけ。やっぱり谷口幸男さんの「エッダ-古代北欧歌謡集」を読むべきかしら。あと、初心者向けらしいんですが、図版や解説が充実してるらしいK・クロスリイ・ホランドの「北欧神話物語」も気になります。
そしてこの14編の前半はオーディンやトール、ロキといった神々の物語なんですが、後半は「ニーベルンゲンの歌」の元となった、シグルド(ジークフリート)伝説。私としては、本当は神々の登場する前半の方が好みです。やっぱり英雄譚よりも神話が好きだな。でもこういうのを読むと、「ニーベルンゲンの歌」も再読したくなっちゃいますねー。

そして最後に「グレティルのサガ」は、12~13c頃に成立したという作品。これだけは元々散文で書かれたみたいです。幼い頃から大力の乱暴者で、父親からも疎まれてるグレティル。とうとう人を殺して追放されてしまいます。でも旅に出た先で、海賊や妖怪をやっつけて大活躍することに... とは言っても、かなり運勢が悪いらしくて、いいことをしても裏目に出たりするのが可哀想。正直、あんまり夢中になれるほどじゃなかったんですが、このグレティルが実在の人物だと知ってびっくりでした。そしてこちらを読んだら、「ベーオウルフ」が読みたくなりました。(笑)(ちくま文庫)

ということで、絶賛叙事詩祭りはまだ続きます... が、そういうのって画像が出ない本ばかりなので詰まらない~。次はちょっと違うのに行きます。(って、そんな理由で読む本を選ぶのかっ)

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またまた大好きになっちゃう作品を見つけてしまいましたー!
井辻さんは、叙事詩とか神話がお好きに違いないです。同類の匂いがぷんぷんします。(私なんかに同類とは言われたくないかもしれないけど・笑) もう、とにかくこういう世界は大好き。...と思ったら、あとがきにも、子供の頃から「ロビン・フッドの冒険」「アーサー王」「ローランの歌」のような古い伝承がお好きだったとありました。「もちろんトールキンやC・S・ルイスやマクドナルドも好きですけれど、それは彼らをオリジナルとして好きというよりも、わたしの好きな世界を再現してくれた、ひとつのヴァリエーションとして好きなような気がします」とも。
ああー、分かる...。
あまりきちんと考えたことはなかったですけど、私が「ナルニア」や「指輪物語」をあれだけ愛読したのも、古い叙事詩や伝承に通じる匂いがあるからなんですよね。...ただ、私の場合は、「アーサー王」や「ロビン・フッド」、その他諸々の神話や伝承も大好きだし、「ナルニア」や「指輪物語」も同じぐらいのレベルで好きなので(オリジナルだからこその良さもあれば、小説だからこその良さもある!)、一概にオリジナルが上とも言い切れないのですが。

そして、そういった叙事詩とか神話がお好きだという匂いがぷんぷんするのは、「エルガーノの歌」の方です。こちらは13編が収められた短編集。ごくごく短い短編が12編と、中編と言ってもいいような長さの表題作が収められています。舞台は極北の地だったり、南の砂漠だったり色々なんですが、それぞれにほんと好きな雰囲気で、しかもその世界が、タニス・リーや神月摩由璃さんの描き出す世界のよう。もうほんと困ってしまうぐらい好き♪

そして「パルメランの夢」は、自動人形のパルメランや遍歴の帽子屋・ロフローニョの物語。こちらはどちらかといえば、「エルガーノの歌」よりも、「風街物語」(感想)の雰囲気に近いですね。乾いた風の中に漂う夢の断片のような物語。自動人形のパルメランの中に、チェスの名人の小男や、虹の化石を探している中国人の博士が住み着いていて、そういう設定もいいんですけど、それより帽子屋のロフローニョの作る帽子が素敵なんです。探し物がすぐに見つかる繻子の帽子、黒いタフタに紫のスミレと紗のヴェールがあしらわれた頭痛を取る帽子、ラシャの布のふちのない丸い帽子に星座が銀糸とビーズでかがってある、心の火照りを沈める帽子... 池に投げ込まれて寒天のようにふやけた恋文から帽子を作ってしまったこともありました。形を作り上げた後は凍らせて出来上がり。(笑)

「パルメランの夢」みたいなのも好きなんだけど、「エルガーノの歌」と一緒に読んでしまったので、ちょっと勿体なかったかな。...でもこの方の文章は、なぜか読むのに時間がかかります。オリジナルも翻訳も。きちんと書かれた文章だと思うし、じーっと眺めてみても、一文一文は読みにくいような文章とは思えないのに、何がどう違うのかは、よく分かりませんが...。(ハヤカワ文庫JA)


+既読の井辻朱美作品の感想+
「風街物語 完全版」井辻朱美
「エルガーノの歌」「パルメランの夢」井辻朱美
「幽霊屋敷のコトン」「トヴィウスの森の物語」井辻朱美
「ヘルメ・ハイネの水晶の塔」井辻朱美
「遙かよりくる飛行船」井辻朱美
「ファンタジーの森から」「ファンタジーの魔法空間」井辻朱美
「夢の仕掛け 私のファンタジーめぐり」井辻朱美
「魔法のほうき」井辻朱美
「ファンタジー万華鏡」井辻朱美

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原初に混沌(カオス)が生じ、続いて大地(ガイア)、奈落(タルタロス)、エロスが生じ、続いて幽冥(エレボス)と夜(ニュクス)、澄明(アイテル)と昼日(ヘメレ)が生じて... という、宇宙の始まりから、様々な神々の誕生、そしてゼウスがオリュンポスで神々を統べるようになり、絶対的な権力を得るまでの物語。
ホメロスと並ぶ最古の叙事詩人、ヘシオドスによるギリシア神話です。あくまでも詩の形態を取りながらも、どんどん生まれて来る神々を系統立てて説明し、宇宙観まで解き明かしてしまうというのがすごい!

でも、一読してまず思ったのは、やっぱりこういうのは詩の形で読んでこそだなあ、ということでした。「イリアス」を散文で読んだ直後というのもあるでしょうね。元の文章は六脚律(ヘクサメトロス)と呼ばれる形で書かれていて、それは日本語には表しようのないものなんですけど、やっぱり詩はあくまでも詩の形で読まなくては! その方がイメージもふくらみますしね。大学の時に授業で古代ギリシャ語の朗読を聞かせてもらったことがあるんですが、古代ギリシャ語って、ほんと歌ってるような、とても綺麗な言葉なんですよー。そういうので歌ってもらったら、さぞ素敵なんだろうなあ。なんてことを思ったりもするわけです。(古代ギリシャ語自体は、文法が難しすぎて、結局私には太刀打ちできませんでしたが...)
それに詩人がその詩を歌っているのは、あくまでも神々からの言葉だという、そういうギリシャの古い叙事詩ならではの部分もとても好き。この「神統記」だと、オリュンポスの9人の詩歌女神(ムウサ)によって神の言葉を吹き込まれたヘシオドスが歌っているという形。だから詩はまずその詩歌女神(ムウサ)たちへの賛歌から始まるわけです。(私は様式美に弱いタイプだったのか)
この辺りは、積読山脈造山中さんの記事が分かりやすいので(特に六脚律について)どうぞ。→コチラ

それに、例えば昨日読んだ「イリアス」では、「アイギスもつゼウス」と出てるだけで注釈もなく、「アイギスって何よ?」状態なんですが、こちらでは「神盾(アイギス)もつゼウス」のように書かれているのが分かりやすくて良かったです。あ、こういう枕詞も好きなんですよね。ゼウスの場合は「神盾(アイギス)もつ」や「雲を集める」、ポセイドンは「大地を震わす」、アテナは「輝く眼の」... 他にも色々とあります。でも、「ポイボス・アポロン」は、そのまま... これは例えば「輝ける」でも良かったんじゃないかと思うけど、ダメだったのかしら。

ただ、神々の名前が次から次へと、どんどん出てきてしまうんです。ちょっとちょっと子供産みすぎだってば!と言いたくなるぐらい。
海(ポントス)の長子・ネレウスなんて、大洋(オケアノス)の娘ドリスとの間に、娘ばっかり50人もいて、その名前がずらずら~っと並んでるんですよーっ。(ちゃんと50人の名前があるかどうか数えてしまったわ) それでも「足迅(はや)いスペイオ」「愛らしいタリア」「薔薇色の腕(かいな)もつエウニケ」みたいな言葉が付いてるならまだいいんですが(でも「薔薇色の腕」は1人だけじゃないんですよね...)、名前しか出てない場合は、もう右から左へと抜けていっちゃいます。...とは言っても、巻末には神々の系譜図もあるし、神々や人間の名前の索引もついているので、途中で混乱しても大丈夫なんですけどね。親切な作りです。(岩波文庫)


+既読のヘシオドス作品の感想+
「神統記」ヘシオドス
「仕事と日」ヘーシオドス

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トロイア戦争が始まって10年経った頃。アカイア軍の総帥・アガメムノンがお気に入り妾・クリュセイスの解放を拒んだため、怒ったアポロンがアカイア軍の陣中に疫病を発生させます。アキレウスらがアガメムノンを説得、ようやくクリュセイスは父親であるアポロン祭司の元に戻るものの、それでは収まらないアガメムノンは意趣返しとして、アキレウスの愛妾・ブリセイスを強奪。アキレウスを怒らせることに。

トロイア戦争をモチーフにした作品のうちでは、これが一番有名な作品でしょう。でもここに描かれているのは、10年にも及ぶトロイア戦争のうち、ごく末期の部分だけなんですよね。それも1ヶ月ほどの短い期間。不和の女神・エリスと黄金の林檎、3人の女神たちとパリスの審判、アプロディーテーにヘレネを約束されたパリスが彼女をトロイアに連れて帰ったこと、戦争の勃発、そしてトロイア陥落の直接の原因となった、オデュッセウス発案のトロイアの木馬などの有名なエピソードについては、全く何も書かれていないんです。中心人物であるヘレネーすら、ほとんど登場しないぐらいですから。(ほとんど話題にもなってないですね) もちろん、実際にこの「イリアス」が歌い語られた時代は、観客も当然トロイア戦争に関する知識を豊富に持っていたわけで、戦争の原因やそれに至る出来事に触れられていなくても全く差し障りはなかったんでしょうけど... それでも、いきなりアキレウスとアガメムノンの反目から物語を始めるなんて、大胆だなあと改めて感心してしまいます。
とは言っても、実際に読んでみると、ホメロスがこの部分を取り上げたのにも納得なんですよね。戦いとしては、やっぱりここが一番の盛り上がりかも。特にアキレウスの親友のパトロクロスが死んだ後が面白い~。極端な話、パトロクロスが出陣する辺りから始めても良かったんじゃないかと思うぐらい。アカイアー軍とトロイア軍の戦いは、そのままオリュンポスの神々同士の争いや駆け引きの場にもなってて、そういう部分も楽しいですしね。というか、まるでRPGに熱中してる子供のようだわ、この神々ってば。

雰囲気は十分出ているとはいえ、散文調に訳されてるのがちょっと残念なんですが、大半の読者は詩なんて読みたくないでしょうし、それもいたし方ないのかな...。以前読んだ時は、詩の形だったような覚えがあるのだけど。そして巻末には、ヘロドトスによる「ホメロス伝」も収録されています。「イリアス」や「オデュッセイア」に、さりげなくホメロスが日ごろ世話になった人の名前を組み込んでるなんて知らなかった。神々が、ある特定の人の姿を取って人間に話しかけたりしてる裏には、そういうこともあったんですね。面白いなあ。(岩波文庫)


+既読のホメロス名義作品の感想+
「イリアス」上下 ホメロス
「四つのギリシャ神話 『ホメーロス讃歌』より」
「オデュッセイア」上下 ホメロス
「ホメーロスの諸神讃歌」ホメーロス

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