Catégories:“2006年”

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「ピーターとペーターの狭間で」(感想)、「翻訳家という楽天家たち」(感想)と同じように、本の雑誌社に掲載された翻訳にまつわるエッセイを1冊の本にまとめたものです。
「ピーターとペーターの狭間で」では純粋に翻訳秘話みたいな部分が面白かったし、「翻訳家という楽天家たち」では、もう少し範囲を広げた翻訳や読書周辺のあれこれが面白かったんですが、今回はまた一段と範囲が広がってたかな? 読みたい本が色々出てきちゃいました。100文字でのねあ。さんが、たらいまわし企画第23回「笑う門には福来たる! "笑"の文学」(記事)で出してらして気になってた「新明解国語辞典」がここでも登場していて、あんまり可笑しいので、ついついポチッとしちゃったし、この本の後に文藝春秋から訳が出たという「ジ・オフィシャル・ポリティカリー・コレクト・ディクショナリー・アンド・ハンドブック」とか... これは邦題が分からないんだけど、 「当世アメリカ・タブー語事典―多文化アメリカと付き合うための英語ユーモア・ブック。」かな?(違うかも)  あと、青山南さんが同じ翻訳家としてヒロインに共感させられてしまったという、多和田葉子さんの「アルファベットの傷口」! これが読みたい。(でもamazonで酷評されててびっくり) それから「頭の中の涼しい風」の章で、本の荷造りで書架があいてくるのを見て青山さんが思い出したという、「ジッドの日記」。その中で、ジッドも本の荷造りをしていて、だんだん書架があいてくるのを「頭の中を涼しい風が通る」ようだと表現してるんですって。これが気になります。(でも全5巻で31,500円なんて本なのね。凄そう...)
あと面白かったのは、本の裏表紙のバーコードとの闘いを続ける絵本作家・レイン・スミスのエピソード。バーコードの存在が許せないレイン・スミスが、バーコードを逆手にとって色々工夫しちゃうのが楽しい~。あとはやっぱり青山さんの文章ですね。ふとした拍子に素顔が出てくるって感じですごく好きです。(本の雑誌社)


+既読の青山南作品の感想+
「翻訳家という楽天家たち」青山南
「ピーターとペーターの狭間で」青山南
「眺めたり触ったり」青山南
「外人のTOKYO暮らし」青山南
「英語になったニッポン小説」青山南
「気になる言葉、気が散る日々」青山南
「小説はゴシップが楽しい」青山南
「大事なことは、ぜーんぶ娘たちに教わった」青山南

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光原百合さんご自身が「声なき楽人(バルド)」シリーズと呼ばれているという、ケルト神話に題材を取ったシリーズ。「祓いの楽人」オシアンと、その相棒・ブランの連作短編集です。ケルト神話は大好きなので、この新刊は本当に楽しみにしてました~。

「祓いの楽人」とは、竪琴を奏でて歌を聞かせる一般的な楽人とは違い、竪琴の調べによって楽の音の神秘を操る人間のこと。自然や人間があるべき様から外れている時に、竪琴の音を聞かせて、あるべき姿に戻すという技を持つ楽人です。なりたいと思ってなれるようなものではなく、なれるのはそれ相応の天分を持った人間だけ。そしてオシアンはとても強力な「祓いの楽人」。諸国を旅しながら、時には死んだ後も頑なな人々の心を開き、彼らに道を示していきます。そして、楽師なのに声を出せないオシアンの代わりに村の人々と話すのは、小生意気で饒舌な相棒・ブランの役目。

「祓い」を必要とするような物語だから仕方ないとはいえ、どの物語もなんて切ない... ただ好きだっただけなのに、大切に思っていただけなのに、なぜか相手を傷つけることになってしまう登場人物たち。本心とは裏腹の言葉を口にしてしまい、心にもない行動をとってしまう、あるいは本当の思いが伝えられないまま終わってしまう。そしてそんな自分の行動を後悔し、死んだ後も留まり続けてしまう...。でも、彼らはただ、自分の深い想いを伝える術を知らなかっただけなんですよね。
未練や後悔の念が中心なのですが、ブランの存在が作品全体の雰囲気を明るくしてくれるようですし、オシアンの美しい透明感のある竪琴の音色が、その明るさを光に昇華させているよう。この世界は、本当にとても素敵でした。ケルト的な雰囲気は、5作目の「三つの星」で一番強く感じたかな。元になっているモチーフや登場人物の名前はもちろんなんですけど、他の4作に比べてダントツでケルトの雰囲気を感じたのは何だったんでしょうね...。「祭礼の島」に、どこかアヴァロンの雰囲気を感じてたからかしら。
でも、あとがきに「ケルト民話に触発されて生まれた一つの異世界の物語」とある通り、とてもケルト的でありながら、光原さんならではの世界です。あんまり自然に存在してるので、こちらもするんとその世界に入っちゃいましたけど、「祓いの楽人」というのも光原さんのオリジナルですよね? まだまだオシアンやブラン自身について分かっていない部分が多いので、彼ら自身の物語も読みたいです。そちらも、相当切ないものになりそうですが...。

そして今回も装幀がとても綺麗です~。最初見た時、「星月夜の夢がたり」とお揃いかと思いました。タイトルのフォントも似てますし。でも、出版社はもちろん、装幀した方も違いました。「星月夜の夢がたり」の暖色系の色合いとは対照的に、こちらは月明かりのような寒色系の色合い。これがまた、オシアンのイメージ、そして作品全体のイメージにぴったりですね。(角川春樹事務所)

そして「親切な海賊」は、幻冬舎のPR誌・星星峡に載っている不定期連載作品。こちらは「潮ノ道の日常」シリーズというシリーズ名なのだそうです。星星峡はジュンク堂に置かれてるんですけど、このジュンク堂に行く時間がなかなか取れなくて...! 最初に行った時は「明日来ると思います」、次に行った時は「もう全て配布してしまいました」... ガックリ。(でも、その後無事読めました!)
「銀の犬」ですっかり切ない気分になってたんですが、こちらを読んだら、暖かくてぽかぽか~。最初はただの困った頑固親父かと思った花嫁の父(結婚式はまだだけど)なんですけど、いいじゃないですか~。吼え合ってるアレクサンダーとジロー(犬です)を挟んで芹菜と話している場面で、すっかり気に入っちゃいました。婚約者の耕介も、最初予想したよりもずっと可愛い気があったし(失礼かな...)、この2人きっと上手くいきますよ! 表面上はお互いブツクサ言いそうだけど、根っこのところで信頼できる関係になりそうです。気がついたら、美弥そっちのけで意気投合して、酒を酌み交わしてるかも。(笑)
芹菜と零司も相変わらずのいいコンビだし(零司、頑張ってますね)、颯月さんも相変わらず、眠そうな割に力強くて素敵。本当は「あたりを打ち払うほどの美人」ぶりをもっと長時間拝めれば言うことないんですけど... 珈琲のカフェインもあんまり効き目なさそうだし、なかなか難しそうですね。(笑)


+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「花散る夜に」「ピアニシモより小さな祈り」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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ブライトンに来て数時間のうちに殺されてしまったヘイル。検死結果は自然死だったのですが、殺される直前にヘイルに会っていたアイダは、本当に自然死なのか疑問を持ち、色々と調べ始めます。ヘイルを殺したのは、17歳の少年・ピンキーとその仲間たち。ピンキーたちのやり口は万全のはずだったのですが、彼らは1人だけ、自分たちの行動を証言できる人間がいることに気付きます。ピンキーは早速その1人、16歳の田舎娘・ローズに近づき、今後彼女が証言したりすることのないよう、結婚してしまおうとするのですが...。

ブライトン・ロックと言ったら、私はQueenの曲しか思い浮かばないんですけど(笑)、ブライトンで売られている棒キャンディーのことなんだそうです。棒のどこで折っても「ブライトン」という字が現れる... って、要するに観光地名産の金太郎飴のことなんですね。(笑)
これは初期の傑作とされている作品。これまで読んだグレアム・グリーンの作品の中では、これが一番面白かったです。キリスト教色に関してはいいんですけど、やっぱり戦争色は薄い方がいいなあ... と言いつつ、「権力と栄光」は、実は気に入ってたりするんですが。(読んでから時間が経つにつれ、だんだん印象が鮮明になってきました)
この作品のピンキーは、何をしでかすか分からない不良少年。はっきり言って悪党です。周囲から見れば、どう考えてもローズがピンキーに騙されているとしか見えないでしょうし、アイダもそう考えてるんですが、実際のところはちょっと違うんですよね。ローズは世間知らずだけど、愛する男と結婚できるというだけで有頂天になってしまうような娘ではないんですもん。それでも、アイダは一度会っただけのヘイルのために、そして彼女自身が「正しいことをするのが好き」なために、ローズにつきまといます。...世間一般的には、アイダの方が圧倒的に正しいはずなんですが、この作品の中で魅力的なのは、何と言ってもピンキー。この2人がカトリック信者だということが、後のグリーンの作品の方向性を予感させるようです。(ハヤカワepi文庫)


ということで、これでハヤカワepi文庫の現在刊行されている35冊は全て読了です。
ボリス・ヴィアンの「日々の泡」だけは、先に新潮で読んでたんですが、今年の3月22日にアゴタ・クリストフの「悪童日記」を読んで以来、全部読み終えるのに3ヶ月ちょっと。最後にかたまってしまったグレアム・グリーンは、私にとってはちょっと難物だったんですが、だんだん良さが分かりそうな気もしてきたし、その他に大好きな作品がいっぱい。アゴタ・クリストフ「悪童日記」も、カズオ・イシグロ「日の名残り」も、リチャード・ブローティガン「愛のゆくえ」も、アンジェラ・カーター「ワイズ・チルドレン」も、アニータ・ディアマント「赤い天幕」も、ニコロ・アンマニーティ「ぼくは怖くない」も... と書くとキリがないのでやめますが(笑)、素敵な作家さんとの出会いが多くて、面白い作品も色々とあって、この3ヶ月すごく楽しかったです。早く次の本も刊行されないかな。次にどんな作品が読めるか、今からとっても楽しみです。


+既読のグレアム・グリーン作品の感想+
「第三の男」グレアム・グリーン
「おとなしいアメリカ人」グレアム・グリーン
「負けた者がみな貰う」グレアム・グリーン
「権力と栄光」グレアム・グリーン
「事件の核心」「二十一の短篇」グレアム・グリーン
「ブライトン・ロック」グレアム・グリーン
「ヒューマン・ファクター」グレアム・グリーン

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貞観7年、広州から船で天竺へと旅立った高丘親王。天竺は高丘親王にとって、幼い頃に父・平城帝の寵姫だった藤原薬子に話を聞いて以来の憧れの地、船に乗り込んだ高丘親王は、この時67歳。同行するのは、常に親王の傍で仕えていた安展と円覚という2人の僧、そして出航間際に船に駆け込んできた少年「秋丸」の3人。

澁澤龍彦氏の遺作だという作品。ずいぶん前に、森山さんにオススメ頂いた時から読みたいと思ってたんですけど、その時は本が手に入らなかったんですよね。先日LINさんが読んでらした時(記事)にふとamazonを覗いてみると、なんと「24時間以内に発送」になってるじゃないですか! たらいまわし企画でも何度か登場してたのに、その時は最初から諦めちゃってたんです。いやー、もっと早く気付くべきでした。私のばかばか。
高丘親王という人は実在の人物なんですが、天竺へ向かうこの旅自体は澁澤氏の創作の世界。山海経に登場するような生き物がごく自然に存在している、幻想味の強い物語です。現実世界と幻想世界の境目はもうほとんど感じられなくて、自由気儘に行き来している感覚。これって、一見現実に見えても、実は現実とは言い切れない場面もあるのね... と思っていたら、高橋克彦氏の解説に「一読した限りではなかなか気付かないだろうが、いかにも幻想的な航海記のようでいて、実際はその過半数の物語が親王の夢なのだ」とありました。「親王が現実世界を旅している時は、薬子はたいてい記憶として登場し、親王が夢の中を彷徨っている時は、薬子もまた別の夢となって現れる」とも。そうだったんだ! たとえば最初の大蟻食いの場面とか、これはきっと本当は夢の中の出来事なんだろうなと思っていたんですけど、やっぱりそれで合っていたようです。(よかった) でも読み落としてる部分もありそうなので、もう一度読み返してみなければ~。そしてこの幻想世界と現実世界は、お互いの世界を鏡のように映し合っているかのよう。夢や記憶でしか登場しないはずの薬子の存在感がとても大きくて、まるで薬子を通して様々なものが映し出されてるような感覚も...。
これまで読んだ澁澤氏の作品とは雰囲気がまた少し違っていて、まるで別次元へと昇華してしまったような感じ。おそろしいほどの透明感。途中、高丘親王が欲望を覚えるような場面もあるんですけど、生々しさはまったくなくて、むしろ枯れた味わいです。親王を通して感じられるのは、生への慈しみ。やはりこれは確かに遺作だったんだな... と納得してしまいます。やっぱり高丘親王は、澁澤氏自身ですよね。澁澤氏も、あの真珠を投げたのかしら。今頃、森の中で月の光にあたためられているのでしょうか。澁澤氏が亡くなって19年ですか... 薬子は50年と言ってるし、まだもう少し時間がかかりそうですね。(文春文庫)


+既読の澁澤龍彦作品の感想+
「私のプリニウス」澁澤龍彦
「異端の肖像」澁澤龍彦
「夢のある部屋」澁澤龍彦
「澁澤龍彦初期小説集」澁澤龍彦
「夢のかたち」「オブジェを求めて」「天使から怪物まで」澁澤龍彦
「高丘親王航海記」澁澤龍彦
「東西不思議物語」澁澤龍彦
Livreに「世界悪女物語」「幻想博物誌」「夢の宇宙誌」「フローラ逍遥」の感想があります)

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副題は「クレオパトラから樋口一葉まで」。1回に1人ずつ古今東西の有名人をお招きして、その方のためだけにお料理を作るというもの。NHKの「今日の料理」のテキストに連載されていた記事が1冊の本にまとめられたものです。
ここのレストランに招かれているのは、クレオパトラ7世、サンタクロース、聖徳太子、玄奘三蔵、シンドバッド、源義経、チンギス・ハーン、ドラキュラ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、山内一豊の妻・千代、シェイクスピア、ヨハン・セバスチアン・バッハ、コロンブス、ナポレオン1世、河童の河太郎、アンデルセン、チャールズ・ダーウィン、ファーブル、トルストイ、ジェロニモ、近藤勇、アントニ・ガウディ、シュバイツァー、樋口一葉、南方熊楠という総勢25人。

これはsa-ki さんに教えて頂いた本。たらいまわし企画・第24回「五感で感じる文学」です。レシピは、実際にあったものを採用している場合もあるけれど、ほとんどがシェフである河合真理さんの考案だとのこと。できるだけそれぞれの人物の時代や土地にあったと思われる食材や調理器具を使い、お料理を作り上げていったのだそうです。まず、その回お招きする方についての紹介があり、次にシェフによるメニュー説明、お料理の写真、そして実際のレシピ、という構成。普段は、直接料理の写真を見てしまうよりも、文字からの情報として入ってきた方が、「美味しそう~」となる私なんですが、この本はとっても美味しそうでした! それぞれの人物に合わせて作ったお料理そのものももちろんなんですが、写真のためのコーディネートがまた凝ってるんですよね。鮮やかでとっても綺麗。それぞれのお客さまにぴったり~。
美味しそうな料理がいっぱいある中で一番気になったのは、シンドバッドのためのメニューのデザートで出される「ココナッツとフルーツの宝石見立て」。ココナッツを大粒の真珠に、果物をルビーなどの宝石に見立てて、輝くデザートを作ったというもの。これは作りが単純なせいかレシピが載ってなかったんですが、このキラキラの部分は一体何なのかしら! とっても綺麗。そしてびっくりしたのが、トルストイのためのメニューでメインディッシュとして出される「イラクサのシチュー」。グリム童話や何かでしょっちゅう登場して主人公を泣かせてるイラクサは、なんと食べられる植物だったんですか! 今はもうすっかり採る人が減ってしまったそうですが、以前は日本でも山菜として新芽を食べていたのだそうです。ますますびっくり。そして採る人が減ったのは、やはりその棘のせいなのだそう。「刺さるといつまでもチクチクと痛み、細くて抜きにくい」だなんて、やっぱり痛そう... 童話でイラクサを紡いでる場面、結構ありますよね。さぞかし手が腫れ上がったに違いない... このイラクサのシチューは、実際にトルストイの若い頃の食事の記述の中に登場するのだそうです。
実際に自分で作ってみようとは思わないけど(ダメダメ)、誰かが作ってくれるならぜひ食べてみたい... って、それはあまりに虫が良すぎますね。でも自分もぜひ招いて欲しくなってしまう、そんな素敵なレストランでした。(NHK出版)

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「小説すばる」に連載されていたエッセイ「slight sight-seeing」の24編のうち14編と、旅日記「屋久島ジュウソウ」が同時収録されたもの。本来おまけだったはずの「屋久島ジュウソウ」が40~50枚の予定から150枚に増えたため、こちらがメインとなったのだそうです。屋久島旅行のお供は、森さんの本の装幀も担当されている池田進吾さん、そして3人の編集者さんたち。

森さんを始めとする5人の楽しそうな様子や、九州最高峰だという宮之浦岳を登る大変さは十分伝わってくるんですが、読んでいても、屋久島の魅力があんまり伝わって来ないような...(ウィルソン株の中には入ってみたくなりましたが)、武田百合子さんの「富士日記」に倣って各自の食べた物が詳細に書かれているという部分も、それほど面白く感じられなかったです。(魚肉ソーセージのせいかしら...) 恩田さんの「黒と茶の幻想」も大好きだし、いつかは屋久島に行ってみたいと思ってる私なんですが、むしろ後半の短い旅エッセイの方が好きでした。ホリー・ゴライトリーに憧れた時代の名残りの黒い鞄の話、トラベル読書術、サハラ砂漠の入り口に位置する町・エルフードで出会ったハッサンのエピソードなど海外での様々なエピソードが楽しかったです。

ちなみに「屋久島ジュウソウ」の「ジュウソウ」とは、「縦走」のこと。「重曹」「銃創」、重装備の「重装」など、ジュウソウにも色々ありますが、ここで「十三」を思い浮かべたアナタは立派な大阪人!(←私のことだ) 大阪以外の方に説明すると、十三というのは、映画「ブラックレイン」のロケ地にもなった、大阪の繁華街です。(集英社)


+既読の森絵都作品の感想+
「いつかパラソルの下で」森絵都
「にんきもののひけつ」「にんきもののねがい」「にんきものをめざせ!」「にんきもののはつこい」森絵都
「あいうえおちゃん」「流れ星におねがい」森絵都
「ぼくだけのこと」森絵都
「いちばんめの願いごと」森絵都
「屋久島ジュウソウ」森絵都
「風に舞いあがるビニールシート」森絵都
「アーモンド入りチョコレートのワルツ」森絵都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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「事件の核心」は長編。西アフリカの植民地が舞台です。警察の副署長をしているスコービーとその妻のルイーズが中心となる物語。かつて1人娘を失ったという経緯もあり、しっくいりいっていない2人。この土地にも我慢できないルイーズは、1人で南アフリカに行くことを望み、スコービーは地元の悪党に金を借りてまで旅費をつくることに。そしてルイーズがいなくなったスコービーの前に現れたのは、夫を失ったヘレンという若い女性。しかしそこにルイーズから帰ってくるという電報が入って... という話。
これはグレアム・グリーンの最高傑作と言われる作品なのだそうで、確かにこれまで読んだグリーンの作品の中では楽しめたような気がします。(「権力と栄光」の方が良かったようにも思うけど) でも物語としては、やっぱり今ひとつ掴みきれず...。そもそも題名の「事件の核心」の事件って何?!と思ったら、この作品を訳した小田島氏ですら、何が正解なのか掴みかねているのだそう。そして、本国ではカトリック系新聞雑誌でスコービーは救われるのか地獄に堕ちるのかという論争が盛んに行われていたというほど、カトリック色の強い作品です。カトリックの教義から言えば、本来スコービーが救われることはないだろうと思うんですけどねえ。

「二十一の短篇」は、その名の通りの短編集。これまでにも全集などで出ていた作品が新訳で再登場なのだそう。8人の訳者さんたちが、それぞれにご自分の訳した短篇に簡単な解説をつけていて、これが実は本文よりも面白かった! でももしかしたら、グリーンは短篇の方が私にはすんなりと読めるのかもしれません。全体的にキレが良くて、全部ではないんですけど、結構楽しめました。

ということで、これでハヤカワepi文庫全34冊読了...! と思っていたら、欠番だった32番が4~5日前に刊行されてました。グレアム・グリーンの初期の傑作だという「ブライトン・ロック」。私には今ひとつその良さが分からないグリーンなんですが、あらすじを見る限り、今度は戦争絡みとかカトリック絡みではなさそう。今度こそその良さが分かるといいなあ。(ハヤカワepi文庫)


+既読のグレアム・グリーン作品の感想+
「第三の男」グレアム・グリーン
「おとなしいアメリカ人」グレアム・グリーン
「負けた者がみな貰う」グレアム・グリーン
「権力と栄光」グレアム・グリーン
「事件の核心」「二十一の短篇」グレアム・グリーン
「ブライトン・ロック」グレアム・グリーン
「ヒューマン・ファクター」グレアム・グリーン

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