Catégories:“2006年”

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翻訳家の岸本佐知子さんのエッセイ。第23回たらいまわし企画「笑う門には福来たる! "笑"の文学」で、空猫の図書室の空猫さんと(記事)、コウカイニッシ。のあさこさんが挙げてらした本です。(記事

帯の「抱腹絶倒」の言葉に納得のエッセイ集。岸本さんの思考回路、面白すぎ! 小学校の算数のテストの時、「ある人が、くだもの屋さんで20円のリンゴを7こ買おうとしたら、10円たりませんでした。その人はいくら持っていたでしょうか」という問題を読めば、その"ある人"のことが気の毒になり始めて、どうかすると同情が淡い恋心に変わってしまい、思いを馳せているうちに、テスト終了になってしまっていたという岸本さん。ごく普通だったはずの話が、気づけばすっかりシュールになってます。流行のポジティブ・シンキングをやってみようと、寝る前に布団の中で美しいを思い浮かべるものの、最後には必ず目を覆うばかりの地獄絵図と成り果ててしまったりとか... なぜ一面の菜の花畑に河童が出てくるんですか! しかもその河童一匹のために一面が火の海になってしまうとは...!
という私が一番最初に笑ったのは、本文2ページ目に載ってた、茶碗蒸しのつくり方に関する穴埋め問題。「...このとき、醤油を入れすぎると( )が悪くなってしまいます」 私が笑った回答は、岸本さんご自身の回答ではなかったんですが。 (笑)

ただ、翻訳家さんのエッセイということで、もっと本や仕事にまつわるエピソードを読めるのを期待してたのに、そういった部分はあんまりなくて、それが少し残念でした。全部で4章に分かれてるんですけど、そういった話は最後の章だけなんですもん。もっと今の仕事にまつわる面白い話、読んだ本の話などを読みたかったなー。岸本さんの翻訳された本は読んだことがないんですが、なんだか不思議な雰囲気の作品のようで、そちらもちょっと気になります。(白水uブックス)


+既読の岸本佐知子作品の感想+
「気になる部分」岸本佐知子
「ねにもつタイプ」岸本佐知子

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ナシアスとバルロが出会ったのは、まだ2人とも叙勲前の騎士見習いの時。デルフィニアの騎士団たちの対抗試合で勝者となったナシアスに、まだ10代始めだったバルロが挑んだのです。勝負はあっという間につきます。そして叩き落された剣を拾おうともせずに背を向けたバルロに対して、礼を逸していることを指摘するナシアス。格式高い家柄と影響力から第二の王家とも言われる大貴族・サヴォア公爵家の1人息子であるバルロは、サヴォアの名にも家格にも左右されないナシアスに興味を抱きます。

デルフィニア戦記外伝、ナシアスとバルロの出会いの物語。「デルフィニア戦記」はあれだけ好きだったのに、「暁の天使たち」以降の、オールスター勢ぞろい内輪受け大会的な雰囲気に馴染めなくて、このシリーズはもういいやーと思っていた私。この外伝も、もしやオールスター隠し芸大会になっちゃうんじゃないかと心配で、なかなか読めなかったんですが... これはなかなか良かったです。(ほっ)
中心となるのはナシアスとバルロ。ウォルはほとんど登場しないし、リィに至っては名前だけ。でもかつての「デルフィニア戦記」の空気がたっぷりでした~。ルゥのことは元々そんなに好きじゃなかったんですけど、もしかしたらリィもシェラもどうでも良かったのかしら? だから「暁の天使たち」以降、楽しめなかったのかも? もしかしたら、私はナシアスさえいてくれれば、それでいいのかも? なんて思ったりもしたんですが(笑)、少年時代のナシアスとバルロの出会いとかやり取りが良かったです。2人の出会いがこの年齢、このタイミングでなければ、その後の友情はあり得なかったんでしょうね~。
その後の本編とも重なる時期のエピソードに関しては、個人的にはなくても良かったかなって感じなんですが、本編を楽しんだ人ならニヤリとできるでしょうね。とにかく懐かしかったです♪ (中央公論社C★NOVELS)


+シリーズ既刊の感想+
「大鷲の誓い」茅田砂胡
Livreに「王女グリンダ」「デルフィニア戦記」シリーズの感想があります)

+既読の茅田砂胡作品の感想+
「レディ・ガンナーと二人の皇子」上中下 茅田砂胡
Livreに「レディ・ガンナー」「桐原家の人々」「スカーレット・ウィザード」の感想があります)

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折原雅之は船の模型を作るのが大好きな中学3年生。ある日、叔父を訪ねた雅之は、「海賊に会いたくはないか」という言葉と共に、叔父に不恰好な黒いラジオを渡されます。そしてそのラジオを通して、不思議な物語を聞くことに...。

ずいぶん前に彩水仙さんにオススメ頂いていた作品。その時に、空猫の図書室の空猫さんもお好きだと仰ってて気になっていたのですが、あいにく絶版となっていて、市内の図書館にもない状態。今回、ようやく読めました!
1人の男の子とラジオをめぐる、オムニバス形式... でいいのかしら、連作短編集です。全部で9編が収められているんですが、それぞれの題名はそのまんまラジオから流れてくる物語の題名でもあります。このラジオの物語が可愛くていいですねえ。童話風の物語あり、現代恋愛物ありと色々なんですが、どれもどこか不思議テイスト。毎回、唐突と言っていいほど突然始まるのに、現実の雅之の物語とほんのりリンクしているせいか、全く違和感なくその世界に入り込めてしまいました。この中では「ひとりぼっちのミーデ」と「ハッピー、ホップ、グリーン、ピー」が好きだなあ。
でも作中作の物語だけでなく、主人公をめぐる人々もいい感じ。特に良かったのは、ラジオをくれる叔父さんと、都会の学校から転校してきた神田さんかな。特に、雅之のおじさんが、シュヴァルの理想宮に憧れて...というクダリは、おじさんらしくて良かったし。コバルト文庫というと、ちょっと色眼鏡で見てしまいがちな私なんですが(失礼)、これは普通の児童書(YA)のレーベルから出して欲しい作品かも。久下じゅんこさんの挿絵も素敵でした。(集英社コバルト文庫)

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「仙人の壺」の続編。「仙人の壺」と同じように、南伸坊氏が様々な中国の古典を元に漫画を書いて、「蛇足」という名前の元に解説したもの。全17編が入ってます。相変わらずの妙な話ばっかり。子供の頃から「聊斎志異」やそんな雰囲気の志怪小説が大好きだったので、こういう妙な話は大歓迎なんですけど、やっぱり中国の話って変!(←褒めてます)
たとえば、「捜神後記」に載ってる話。夜、庭で2つの光の玉がゆらゆらと近づいてくるのに気づいた男が目を凝らして見ると、それは2人の男の持つ灯り。てっきり賊が入ったのだと思って杖で打ちかかると、その途端に2人は蝶になってしまいます。そしてその蝶が男の脇の下に触れたため、彼はそのまま倒れて死んでしまう... その2人が誰だったのかなんていう説明はないし、なんで死んでしまったのかも謎。
他にも「桃太郎」の変形で、少年が大きな蛤の中に刀が入ってるのを見つけるんですけど、人にその話をしようとするたびに、聞き手の首がポロリととれる話とか。(えらいこっちゃ)

私としては、「仙人の壺」の方が良かったかなという気はするんですけど(「蛇足」でも、もっと「なるほど~」が多かったような)、こちらもやっぱり楽しかったです。南伸坊氏のとぼけた絵も相変わらず。やっぱりこういう話は、裏読みなどしようとせずに、ありのまま受け止めるのが正解みたいですね。
最後に、「「蛇足」に紹介されていたものすごーく短い話を2つ。

311 人魚 「南海の果てに鮫人がいる。水中に住み、魚の形をして、機織りの手を休めることがない。泣くと、眼から真珠がこぼれ落ちる。」(捜神記)

「晋の義煕の初年、晋陵の薛願の家に虹が下りて、釜の中にたまった水を飲んだ」(異苑)

だから何なんだって感じですけど(笑)、こういうの、なんか良くありませんか~?(ちくま文庫)


+既読の南伸坊作品の感想+
「李白の月」南伸坊
Livreに「仙人の壺」の感想があります)

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ある夏、自然科学の研究をしながら高い山脈から丘陵地へと向かって歩いていたハインリヒは、西の方に雷雲が拡がるのを見て、近くにある薔薇の花に覆われた家に雨宿りを求めます。その家に住む老人に雷雨は来ないと断言されながらも、自分のこれまで観察してきた自然科学を信じるハインリヒ。しかし結局、老人の言った通り雷雨は来なかったのです。その理由を解き明かす老人の言葉に深く感銘を受けたハインリヒは、その夏から足しげくその薔薇の家を訪れることに。

「水晶」(感想)を読んで以来大好きになってしまったシュティフターの作品。第15回のたらいまわし企画「私の夏の1冊!!」で、The Light of the Worldのnyuさんが出してらした作品でもあります。(記事) 「晩夏」という題名なので、本当はもっと時期を合わせて読もうと思っていたんですが、まだ初夏のこの時期に読んでしまいましたー。でも作品の中に終始漂う爽やかな空気は、今の時期の爽やかな空にもぴったり。というよりむしろ、日本で読むなら秋よりも今の気候の方が合ってるような気もします。

そしてこの作品は、劇作家フリードリヒ・ヘッベルには、この小説を終わりまで読み通した人には「ポーランドの王冠を進呈しよう」とまで酷評され、一方、ニーチェには「ドイツ文学の宝」と絶賛されたという作品。トーマス・マンにも高い評価を受けていたようです。きっと今も昔も、絶賛されるか酷評されるかどちらかなんでしょうね。そしてその酷評された理由は、まずこの作品の起伏に乏しさにあるのではないかと。文庫の上下巻で丁度1000ページほどあるんですけど、確かにこの長さには不釣合いなほど、ほんと何も起きないんです。ただ淡々と物語が流れていくだけ。話がようやく動き始めるのは、かれこれ3分の2も読み終えた頃。あと、人間が描けていない、なんてことも言われちゃうのかも。ここに登場する人たちは皆、嫉妬や傲慢といった悪感情には縁がない人ばかりなんです。特に主人公の家族は凄いです。この時代でも、本当にこんな家族は存在してたのかしら... なんて思ってしまうほど。(ちょっと羨ましい) そして恵まれた環境に生まれ、自らたゆまぬ努力を続け、挫折を知ることなく成長していく主人公は、この先、例えば逆境に陥った時とか、本当に大丈夫なのでしょうか?(挫折を知らない人って、どうも信用できなくて・笑)
でもそんな風に、酷評された理由を想像することもできるんですけど、それらは私にとっては、全然マイナスではなかったです。薔薇の家の主人の話はどれも興味深かったし、負の感情がないからこそ際立つ部分もあったし、高地と丘陵地、そして都会という対比も面白かったし... それにこの作品は、読んでいること自体がとても気持ちがいいんです。この世界に、そして薔薇の家にずっと居続けたくなっちゃう。一気に読んでしまうのが勿体なくて、2ヶ月ほどかけて少しずつ読んでました。シュティフターの作品をいくつか読んだ中では「水晶」が一番好きなんですが、この作品もなかなか良かったです。

ということで、ポーランドの王冠は私が頂いておきましょうかね?(要らないけど・笑)(ちくま文庫)


+既読のシュティフター作品の感想+
「水晶 他三篇 石さまざま」シュティフター
「森の小道・二人の姉妹」シュティフター
「晩夏」上下 シュティフター
「ナレンブルク 運命に弄ばれた人々の城」A.シュティフター
「石さまざま」上下 アーダルベルト・シュティフター
「森ゆく人」アーダルベルト・シュティフター
「書き込みのある樅の木」アーダルベルト・シュティフター

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壹萬壹阡之本のヤマボウシさんに「これ絶対、四季さん好きだと思う」と言われて手に取ったんですが、いや、本当にその通りでした。まさに私好み! 本は図書館で借りて読んだんだけど、これはきっと買ってしまいます。
桑原弘明さんが作られた手作りの極小のスコープと、その中に見える情景に、巖谷國士さんが文章をつけた本。堅固な合金で作られたスコープは、手に乗せるとずっしりと重いのだそうです。箱の側面の小さな円い穴に懐中電灯の光を当てながら覗くと見えてくる、小さな部屋や庭の情景。手のひらサイズの箱の中に存在する世界なのだから、ほんと相当小さいもののはずなんですが、これがとても精巧なんですよね。本当に覗き窓から覗いているみたいです。素晴らしいー。そして光を入れる窓を変えることによって、その情景は白昼夢のようになったり、夕暮れ時になったり、朝の光景から一転して神秘的な夜の情景となったり。その一瞬でがらりと変わる雰囲気に、ノックアウトされてしまいました。
箱の中に作られているのは部屋が多くて、実際に窓や扉や鏡があるものがほとんどなんですが、そうでなくても、常に覗き窓から覗いているせいか、常に窓の存在を感じさせます。扉や窓、そして鏡というのは、異世界へと通じる場所。本をめくっただけで、日常生活の中から一気に別世界へと引きずり込まれるようです。

これを見ていると、視野いっぱいに広がる小さな幻想的な世界をぜひとも体験したくなってしまいます。以前個展が開かれたこともあるのだそう。またどこかでやってくれないかなあ。今度される時は絶対に行きたい! こちらに以前の個展の写真が載ってますので、ぜひ見てみてくださいませ。箱の外側の装飾も、中の情景と良くマッチしていて美しいです。(パロル舎)

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セントラル・パークで通りゆく人々の写真を撮って生計を立てているビンゴとハンサム。アパートの家賃にも困っている2人でしたが、ある日現像した写真にサンデー・ピジョンの姿が写っていることに気づきます。サンデー・ピジョンとは、7年前に忽然と姿を消して話題になった男。友人と東洋アンティークの輸入会社を経営し、日曜日にセントラル・パークで鳩に餌をやるのが習慣だった彼が姿を消してから7年、次の日曜日までに現れなければ、共同経営者のペニースが50万ドルの死亡保険金を受け取ることになっていました。ビンゴはサンデー・ピジョンを自分たちで探し出し、死亡保険金の分け前にありつこうと考えます。

大好きなクレイグ・ライスの作品。ミステリ作家さんもたくさんいますが、海外のミステリ作家さんの中で私が一番好きなのは、このクレイグ・ライスかも。...なーんて考えはじめると、いや、コリン・デクスターも捨てがたい、ハリイ・ケメルマンはどうした? ローレンス・ブロックにだってハマってるでしょ、ピーター・ラヴゼイだっているし、他にもあの人は? あの人は? あの人は? なんて他の作家さんの名前がどんどん出てきちゃって困るんですけど(笑)、少なくとも私の中では、海外ミステリ部門でトップ5に入る作家さんです。古き良き時代が舞台のコージーミステリ。特にヘレンとジェイクのシリーズの、粋でお洒落な雰囲気が堪りません~。
でも、創元推理文庫とハヤカワ文庫HMから出てる作品は全部読んでるんですが、実はハヤカワのポケットミステリに手を出したことがない私、この作品もポケットミステリから出ていたので未読なんです。また違うシリーズらしくて、今度はどんな雰囲気なのかドキドキ。

ということで、チビでやせっぽちで赤毛のビンゴと、長身で男前、超人的な記憶力の持ち主だけど頭の回転は鈍い、元新聞社のカメラマン・ハンサムのシリーズです。これが1作目。
保険金目当ての誘拐や脅迫などを企んではいても、いっぱしのワルぶっていても、主人公がワルになりきれないお人よしの2人なのが、とてもクレイグ・ライスらしいところ。いくら食費や家賃に困っていても、今にも部屋を追い出されそうだからといっても、誘拐した相手からお金を取るなんて!と、2人は妙なところで筋を通してますし、ピジョン氏ともすっかりお友達になってしまって、ピジョン氏が朝食に作ったオムレツのできばえにも感動して和気藹々と食事をしてるし、とっても和やか~。もちろん殺人事件も起きるし、2人も悪いヤツらに狙われ続けるんですけどね。そして、一見ビンゴがもっぱら計画を立てて、ハンサムをひっぱっているように見えるんですが、ふとしたところでハンサムの天然な言動にビンゴが助けられてるのも楽しいところ。でも今回はシリーズ1作目のせいか、話の展開自体はあまり...。今後の2人の活躍ぶりに期待、ですね。(ハヤカワ文庫HM)


+既読のクレイグ・ライス作品の感想+
「暴徒裁判」クレイグ・ライス
「セントラル・パーク事件」クレイグ・ライス
Livreに「マローン御難」「マローン殺し」の感想があります)

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Note


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