Catégories:“2006年”

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翻訳家の青山南さんのエッセイ。unaG-2nd Seasonのうなさんが、前回のたらいまわし「笑の文学」に挙げてらした本。(記事) アメリカ文学にはとんと疎い私なんですが(じゃあどこが得意なんだと聞かないように)、読んだばかりのミラン・クンデラやパトリック・マグラアのエピソードも出てきて、とってもタイムリー♪(と言いつつ、どちらも今ひとつ楽しめなかったのですが...(^^;)
名前の表記を巡って深く静かに進行する論争の話とか、世界各国の翻訳事情の話、「こころ」で訳す話、日本の翻訳家が作家に出した質問状の話。こういう話は楽しいなー。でもでも、ロレンス・ダレルの翻訳をやっていた富士川義之氏が、どうしても分からない文章の意味を作者に問い合わせた時の返事にはびっくり。そういうものなんですか! でもって、青山南さんが各作家さんがどう答えるかコメント付きで予想してるのが、また楽しいのです。
あと私としては無視できないのは、「あるスピーダーの告白」。要するに速読者の話です。以前オハイオ州で速読チャンピオンだったという(アメリカには速読試合なんてものがあるんですか!)、ウィリアム・H・ギャスの話が、また面白いんです。速読者たちの読み方が凄くって。ええと、速読者たちが本を読むのは、まさしくサイクリングのようなもの。田園(本のページ)を突っ走り、目的地に向かって快走し、頬に風すら感じるのだとか。へええ、そうなんですかー。いや、分かるような気はしますが。(笑)
それと

「速読者は、名人が魚をさばくみたいに、本をさばく。エラは捨て、尾も、ウロコも、ヒレも捨てる。たちまちのうちに骨のない切り身がずらりと並ぶ」
その点、遅読者はエラとか尾とかウロコとかヒレばっかながめている、とギャスは言う。うーん、その通りだ。まったく。そういえばあら煮も好きだし。

なるほどねー。ああ、なんだか分かるような気がするなあ。
かくしてギャスは、「テキストを完全に無視することによって、チャンピオン・メダルを手にいれた」のだそうです。...それって、それって、一体何のために本を読んでるんですか!!(爆)

あとは、翻訳本の文章が合わなかった時に、「訳文がほんとうにひどい」「訳文が性にあわない」の2つの理由があるけれど、大抵の場合は、「訳がひどいんだよなあ」って吹聴して廻るという話。ああ、確かにそうかもしれないですねー。私はまず言わないけど。いえ、苦手な訳者さんというのはいますけど。
そして書評では、訳文に言及する人としない人は、はっきり分かれるんだそうです。これも、私はまず言わないタイプだな。(書評を書いてるとしたらですが) だって絶対的な評価として、その文章がに良いとか悪いとか、私には分からないんですもん。もちろん、好きな文章とか読み心地の良い文章はあるし、嫌いなタイプの文章、読みにくい文章もあります。何度読み返しても意味が伝わってこないような文章を読むと、「下手くそー」って思いますしね。でも、「読み心地の良い文章=自分の好きな文章」だけど、「自分の好きな文章=文章が上手」かどうかは分からない...。私が1人で「下手くそー」と思ってても、それが実はものすごい美文なのかもしれないし、「あの作家は文章が上手い」と言われるのを聞いて、「あんな読みにくい文章が?」と思うこともあるわけで。
まあ、私にとっては、自分の読み心地良い文章が一番大切だから、絶対的な基準はそれほど問題じゃないですけどね。
あ、でも書評の最後に訳について書くと、それが不思議なほどハマるんだそうです。一通りのことを書いた後で、最後に「訳文は読みやすい」とか、「なお、訳文に気になるところがいくつかあった」とか付け加えるのがコツ。(笑)

青山南さんの文章は、とても読みやすくて楽しかったので(書くとしたらこんな感じ・笑)、今度はうなさんが一緒に挙げてらした「ピーターとペーターの狭間で」や、青山さんが訳されてる本も、探して読んでみようと思います。(ちくま文庫)


+既読の青山南作品の感想+
「翻訳家という楽天家たち」青山南
「ピーターとペーターの狭間で」青山南
「眺めたり触ったり」青山南
「外人のTOKYO暮らし」青山南
「英語になったニッポン小説」青山南
「気になる言葉、気が散る日々」青山南
「小説はゴシップが楽しい」青山南
「大事なことは、ぜーんぶ娘たちに教わった」青山南

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プラハの裕福な家に生まれた母親と、貧乏な若い技師の間に生まれた詩人・ヤミロール。母親に溺愛されて育ったヤミロールは、自分の言葉が周囲に大きく影響を及ぼすことに気づき、常に自分は特別なのだという意識を持つようになります。

この方、「存在の耐えられない軽さ」を書いた方だったんですね。という私は、原作も読んでないし、映画も観てないのですが...。
短い章を畳み掛けるような構成で、「詩人」ヤミロールの一生を描いた作品。生まれたのは、第二次世界大戦後の混乱期、そして思春期には「プラハの春」が、という時代背景で、これはクンデラの自伝的作品でもあるのだそうです。小説というよりも、むしろ散文詩のような感じかな。でも、クンデラらしさが一番表れていると書かれていたんですけど... 文章自体は読みやすかったんですけど... 作品はちょっと分かりづらかったです。というよりむしろ、作品にあまり近づけなかったような気が。
自信たっぷりでいながら、常に他人の賛辞がないと不安な小心者。唯一自分を常に認めてくれる母親からは、結局精神的に巣立つことができなかったし、赤毛の恋人を愛しているとはいっても、決して美しくない(どころかブスらしい)恋人を愛している自分に酔っているように見えました。結局のところ、ヤミロールは彼女たちを通して自分しか見てなかったんでしょうね... そんなヤミロールの最期が哀れです。
チェコスロバキアでこの作品が発禁処分となって、フランスに亡命したというミラン・クンデラ。その後はフランス語による作品を発表しています。(ハヤカワepi文庫)

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「なつこ、 孤島に囚われ」「両性具有迷宮」に続く、森奈津子シリーズの連作短編集。
いや~、もう相変わらずのエロティックぶりで大変でした。4作入ってるんですが、特に最初の2作は凄いです。エロエロ。おお、こういうオチだったのか!と、楽しく読めるのがさすが西澤作品なんですが、でもやっぱりエロすぎ。これじゃあ感想が書けません。(笑)
あとの2編はそれほどエロではなかったかな。(前2作を読んだ後なので、もはや一般的なレベルとは比べられなくなってますが) むしろ表題作の「キス」は、ロマンティックでメランコリックな作品だったし、「舞踏会の夜」では、思いがけないシロクマの文才を楽しむことができました。シロクマの作品としていくつかの小編が紹介されてるんですが、これは西澤さんご自身がかつて書いた幻の作品のようですね。「凶歩する男」、面白かったです。
今回初登場で、森奈津子さんとディープなエロ話を繰り広げる美人編集者・遅塚久美子さんも、実在の方なんですって。こういう作品に登場するのって、勇気あるなあ。この方も、ここに描かれた通りの方なんでしょうかー。(笑) (徳間書店)


+シリーズ既刊の感想+
「なつこ、孤島に囚われ。」「両性具有迷宮」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「キス」西澤保彦

+既読の西澤保彦作品の感想+
「方舟は冬の国へ」西澤保彦
「生贄を抱く夜」西澤保彦
「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」西澤保彦
「フェティッシュ」西澤保彦
「春の魔法のおすそわけ」西澤保彦
「ソフトタッチ・オペレーション」西澤保彦
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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生まれた時から内向的で、科学の天才と言われながらも、今はアパートの部屋に引きこもり、極力人づきあいを避けて生活しているジュリアン。対照的に、生まれながらに外交的で、話すよりも早く歌い始めた妹のポーラ。2人は同じアパートの上下の部屋に住んでおり、普段はポーラがジュリアンの世話をしています。しかしプロのオペラ歌手を目指すポーラは、自分の声の可能性を試すためにヨーロッパへ。そしてポーラが留守の間は、それまでポーラの部屋を掃除していたソーラという女性が代わりにポーラのアパートに住んで、ジュリアンの世話をすることに。

ジュリアンが現在のような対人恐怖症になってしまったのは、父親の影響。父親自身は、死ぬまで2人に何も語ろうとはしませんでしたが、ナチス・ドイツ時代にアウシュビッツに収容されて生き延びた人間なのです。でも同じような家庭環境に生まれ育っていても、ジュリアンは何も語ろうとしない父に大きな影響を受け続け、ポーラはそれほどの影響は受けなかったんですよね。きっとポーラは、それまで家の中で何か重苦しい雰囲気を感じていたにしても、普段はジュリアンの感じていたような父の呪縛を感じることなく育ったんでしょう。事実を第三者から聞いた時に初めて、大きな衝撃を受けたポーラの姿が印象的でした。そして、それまでは妹のポーラが兄を守る立場だったのに、その出来事を境に力関係が逆転するのも興味深かったです。この2人と比べると、ソーラの存在感はやや弱かったかなと思うんですが、それでもソーラとジュリアンがお互いに心を開く過程がごくごくゆっくりと描かれていたのがとても良かったです。
物語はジュリアンとポーラ、そしてソーラの3人の視点から語られ、ごく短いパートで移り変わっていきます。。3 人の視点から、現在のことや過去のことが次々と語られて、徐々に全体像が見えてくる感じ。テンポが良くて読みやすかったです。重いものを含んではいますが、むしろ元々は詩人だというロズナーの描く美しい情景の方が印象に残りました。(ハヤカワepi文庫)

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ロンドンの下宿に住んでいるスパイダーは、過去の思い出が甦って目の前の光景に重なるような感覚に混乱して、日記をつけ始めることに。それはスパイダーの子供の頃の物語。その頃のスパイダーは、怒りっぽい父と優しい母との3人で、今の下宿から程近い街に暮らしていました。しかしスパイダーが12歳の時、父はあばずれのヒルダ・ウィルキンソンと出会い、夢中になり、なんと母を殺害してしまうのです。ヒルダは、我が物顔にスパイダーの家に居座るのですが...。

解説によると、物語分析には「信頼できない語り手」という言葉があるんだそうです。この物語の主人公・スパイダーは、まさにその「信頼できない語り手」。何も予備知識を持っていなければ、読者は当然1人称の主人公の言うことを信じて読み進めることになりますけど、どこかの時点で、その認識を覆されるわけですね。ミステリで言えば叙述トリック。普段、ミステリの感想を書く時に、「素晴らしい叙述トリックでした~」なんて書いてしまったら思いっきりネタバレなんですけど(書いちゃダメですよ!)、この作品に関しては、主人公に対する印象の変化が主眼なので大丈夫なんでしょう... きっと。本の裏にも解説にも主人公の狂気について思いっきり書いてあるし。...それでも「叙述トリック」という言葉を書くと、どこか後ろめたくなってしまうのは、ミステリ者のサガ?(笑)
この「信頼できない語り手」に、某有名古典ミステリが挙げられているのは当然として(もちろん作者も作品名も伏せられてましたが、読んでる人はぴんと来ますよね)、カズオ・イシグロの「日の名残り」(感想)も挙げられていたのにはびっくり。あれも叙述トリックだったのか...!(違います) でも言われてみると、確かに。納得。あの主人公は自信満々だし、プライドもすごーく高いし、何食わぬ顔で事実をさりげなく脚色してそうです。

まあ、叙述トリックなんて言葉が出てくる通り、この作品もミステリ的ではあるんですが、むしろサイコホラーですね。最初は普通の主人公に見えるんですが、もしかしたらこの精神状態は...? と感じ始めた頃から、どこからどこまでが事実なのか分からなくなっちゃいます。本当に殺人事件はあったのか、あったとすれば誰が殺したのか。そして誰が殺されたのか...。
でも私自身、叙述トリックもサイコホラーも苦手なこともあって、正直ちょっと読みづらかったです。主人公の狂気も、あまり楽しめず仕舞いでした。残念。(ハヤカワepi文庫)

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宇宙の成り立ちから太陽系の誕生、そして生物の進化といった壮大な物語が繰り広げられる、12の奇妙な物語。
語り手は、宇宙が出来る前から生き続けているというQfwfq老人。さすがビッグバンの前から知ってるだけあって、老人の物語はちょっと凄いです。とにかく壮大。そしてユーモアたっぷり。だって、ある女性の「ねえ、みなさん、ほんのちょっとだけ空間(スペース)があれば、わたし、みなさんにとてもおいしいスパゲッティをこしらえてあげたいのにって思っているのよ!」という発言がきっかけで、ビッグバンが起きたなんていうんですよ! なぜビッグバンの前に人間が存在していたのか、しかもスパゲッティを作るって... なーんて言ってしまうのは、あまりにも野暮というもの。カルヴィーノはよくこんな荒唐無稽な話を思いつきますねえ。Qfwfq老人は、「二億年待ったものなら、六億年だって待てる」なんて簡単に言ってしまいますし、1億光年離れた星雲と気の長いやりとりを続けていて、時の流れも雄大。子供の頃は、友達と水素原子でビー玉のような遊びをしてるし、友人とは「今日、原子ができるかどうか」という賭け事をしています。しかもこの原子が誕生するかどうかという凄い賭けが、サッカーチームの試合の結果の賭けと同列に並んでるんです。(笑)
この本は、元々はハヤカワ文庫SFに入っていたそうです。SFがちょっと苦手な私は、SF寄りの作品よりも、やっぱり幻想的な情景が描かれてる作品が好きですね。12編の中で一番好きなのは、「月の距離」という作品。水銀のような銀色に輝く海に船を漕ぎ出し、脚榻の上に載って月へ乗り移る描写がとても素敵。あと、月に行って、大きなスプーンと手桶を片手に月のミルクを集めるというのも。この月のミルク、成分を聞いてしまうと実は結構不気味なんですけど、この作品の中で読むとまるで夢のようです。
そして河出文庫から出ている「柔かい月」は、これの続編と言える作品なのだそうです。訳者さんが違うので文章がやや読みにくいらしいのですが、やっぱり気になります。(ハヤカワepi文庫)


+既読のイタロ・カルヴィーノ作品の感想+
「宿命の交わる城」イタロ・カルヴィーノ
「不在の騎士」イタロ・カルヴィーノ
「レ・コスミコミケ」イタロ・カルヴィーノ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」イタロ・カルヴィーノ
「イタリア民話集」上下 カルヴィーノ
「魔法の庭」イタロ・カルヴィーノ
「見えない都市」イタロ・カルヴィーノ
「マルコヴァルドさんの四季」カルヴィーノ
「冬の夜ひとりの旅人が」イタロ・カルヴィーノ
「柔かい月」イタロ・カルヴィーノ
「カルヴィーノの文学講義」イタロ・カルヴィーノ
「パロマー」カルヴィーノ
「くもの巣の小道」イタロ・カルヴィーノ
「むずかしい愛」カルヴィーノ

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24歳だった頃の森絵都さんのエッセイ。全編恋のことばかり。そして森絵都さんの体験からの言葉ばかり。高校のクラスメートだった彼への初恋から、半年後にそれを失ったこと、どうしても意地ばかり張ってしまう話、そんな初恋を経験する前の詰まらなかったデートの話、そして「無人島幻想」などなど。
「どんなに辛い恋だって、何年かたてば笑い話になるもんだ」と言い古された言葉を嘘だと言い切り、「がんばれ。」と言う言葉には、森さんの実体験としての重みがありました! 高校生ぐらいの女の子なら、かなり励まされるのではないでしょうか~。そしてこういう風に自分の学生時代のその時々の気持ちを鮮明に覚えているからこそ、今の森絵都さんの作品があるのですね。「リズム」も「ゴールド・フィッシュ」も「DIVE!!」も「アーモンド入りチョコレートのワルツ」も「カラフル」も他の作品も、こういう森絵都さんが書いてるんだなあって、しみじみと感じます。普段の小説とはまた違う、それでいてやっぱり同じ人なのだと納得できる、森さんの素顔が見えてきました。とても爽やかで清々しいです。(大和書房)


+既読の森絵都作品の感想+
「いつかパラソルの下で」森絵都
「にんきもののひけつ」「にんきもののねがい」「にんきものをめざせ!」「にんきもののはつこい」森絵都
「あいうえおちゃん」「流れ星におねがい」森絵都
「ぼくだけのこと」森絵都
「いちばんめの願いごと」森絵都
「屋久島ジュウソウ」森絵都
「風に舞いあがるビニールシート」森絵都
「アーモンド入りチョコレートのワルツ」森絵都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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