Catégories:“2006年”

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フェルダー・セプウィンがクレイ・オルモルの助けを借りて作り上げたのは、人の心の望みを映し出す鏡。しかし覗いた人々の望みは映るのに、クレイが覗いてもそこには何も映らなかったのです。そして数年後、再びクレイが鏡を覗くと、そこには1人の少女の姿が。

3月に読んだ「妖魔の騎士」の続編。(感想) 初期のハヤカワ文庫FTには対象年齢が低めの作品が多くて時々うんざりするんですけど、それだけに「妖魔の騎士」みたいな作品に出会えた時は嬉しくなっちゃいます。そしてこの続編、期待しすぎてがっかりするのが怖くて、なかなか手に取れなかったんですけど、ようやく読めました♪
結論からいえば、小さな不満は色々とあったものの、面白かったです! やっぱりこの世界も登場人物たちも好き~。「妖魔の騎士」とどちらが好きかと聞かれれば、やっぱり「妖魔の騎士」なんですけどね。前回同様、織物の魔法使い・デリヴェヴや炎の妖魔・ギルドラム、風の妖魔・エルルレットといった面々が再登場してくれて、嬉しい限り。

そして今回は、氷の世界の城に住むアライザという少女の物語です。氷の魔界にある広大な城に1人ぼっちで住み、日々魔法の修行に励む少女。一緒にいるのは氷の妖魔だけ。ただ1人の血縁の祖父は1年に1度訪ねてくるんですが、それは修行の進み具合をチェックするためだけ。そんな風に、外の世界との接触が全くないアライザを訪ねて来たのが、主人公のクレイなんですが...
クレイがちょっと鬱陶しいと聞いてたんですけど、うーん、確かに。アライザは終始、今は修行のことで頭がいっぱいだし、それの妨げになるような知識は要らないからこのままにしておいてくれって言うんですけど、クレイは無理やりアライザを外の世界に連れ出すんです。まあ、それはそれでいいんですけど... それはアライザが好きになってしまったからとかではなくて、憐れみの感情からなんですよね。そりゃアライザのこの状態は不健康だし、外のことを何も知らないというのも問題があるでしょうけど、アンタは一体何様よ? むしろ鏡に映ったアライザに一目惚れしてしまったから、という方が、展開として無理がなかったんじゃ...? しかもこのクレイ、周囲の個性に完全に負けてます。考えてみれば、前作でもデリヴェヴやレジーク、ギルドラムといった面々が物語を引っ張っていっていて、クレイはただの進行役だったような...。
しかも考えてみればアライザの状態って、かつてのデリヴェヴと一緒。デリヴェヴだって閉鎖的だったけど、自然と外界に目が開かれていくことになったのだし、こういうことって自分から気づくことが大切なんじゃ...? 結局クレイはアライザのお祖父さんと似たようなことをやってるとも言えるわけで... 悪気がなければいいってものじゃないわよーっ。

まあ、そういった部分にはちょっと首をかしげてしまったんですけど(結構多いな)、でも全体的には面白かったです。魔界の描写や、氷の魔界にあるお城の情景も素敵だったし、妖魔たちも魅力たっぷり。ギルドラム、やっぱりいいわあ。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のフィリス・アイゼンシュタイン作品の感想+
「妖魔の騎士」上下 フィリス・アイゼンシュタイン
「氷の城の乙女」上下 フィリス・アイゼンシュタイン

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先月読んだ「愛のゆくえ」がとても良くて気に入ったリチャード・ブローティガン。(感想) 今度は夜中に台所で僕は本を読みたかったのkeiさんが、「私のエヴァーグリーンです」と仰っていた「西瓜糖の日々」を読んでみました。

「愛のゆくえ」は物語としてまとまってたんですが、こちらは情景のスケッチをランダムに並べていったような感じ。とっても妙な話でした! まず、舞台となっているのが、西瓜糖の世界の中心・アイデス(iDEATH)なんですよね。西瓜糖の世界には西瓜畑が沢山あって、西瓜工場では西瓜の汁を砂糖になるまで煮詰めて西瓜糖を作っていて、その西瓜糖から色々な物が作り出されているんです。川にかかっている橋にも西瓜糖から出来ているものがあるし、主人公が住んでいる小屋も西瓜糖と松と石から出来ていて(窓も西瓜糖)、本を執筆中の彼は、西瓜種子インクにペンを漬けて、西瓜の甘い匂いのする薄片に書いてます。服も西瓜で出来ていれば、ランタンの油は西瓜と鱒を混ぜた西瓜鱒油。しかも月曜日から日曜日まで日替わりで違う色の太陽が輝き、その色によって、できた西瓜も変わっちゃう。月曜日は赤い太陽に赤い西瓜、火曜日は黄金色の太陽に黄金色の西瓜、水曜日は灰色の太陽に灰色の西瓜...。
そんな舞台設定を含めて、この世界で起きることが淡々と語られていきます。とっても寓話的。でも私に分かるのはごく一部分だけ。穏やかで落ち着いた世界に見えるアイデスは死の世界で、そことは対照的な「忘れられた世界」が、今のこの現実世界じゃないかということだけです。アイデスは穏やかで落ち着いてはいるけれど、変化を求めない閉鎖的な環境。後半、「忘れられた世界」絡みで強烈な出来事が起きるのですが、それでもアイデスの住人たちはそれほどの衝撃も受けていないし、アイデスはすぐにいつものアイデスに戻ってしまうんですよねえ。この辺りもとても象徴的です。
きっと掴みきれていないことがいっぱいあるとは思うのだけど、それでもやっぱりこの雰囲気は好きです。こういうのが好きか嫌いかっていうのは、多分理屈抜きの世界なんですよね。感想を書くために何度もパラパラと読み返していたんだけど、読み返せば読み返すほど惹き込まれてしまいます。やっぱりブローティガンはいいですねえ。また他の作品も読んでみたいです。(河出文庫)


+既読のリチャード・ブローティガン作品の感想+
「愛のゆくえ」リチャード・ブローティガン
「西瓜糖の日々」R.ブローティガン

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トルーマン・カポーティの生前最後に出版されたという作品集。「序」には8歳の時に文章を書き始めて以来、自分なりの文学修行に励み、17歳の時に主だった文芸季刊誌に送った原稿が認められてデビュー。それ以来様々な試みをしながら、最終的に物語風ジャーナリズムに惹かれるに至った心情が書かれています。そして作品は3部に分かれて、全14編が収められています。

カポーティの作品は、確か中学の頃に「ティファニーで朝食を」を読んだきりなんですが、その時とはまた全然イメージが違ってびっくり。なんと、南部出身の方だったんですか! 「ティファニーで朝食を」のイメージそのままの、お洒落で都会的なニューヨーカーかと思ってました。でも、確かにこの作品集を読んでみると南部を舞台にした作品が多いし、南部を舞台にしていない作品にも、どこか南部の濃密な空気がまとわりついているよう。
「序」に、控えめに書くのを好み、単純ですっきりとした仕上がりを目指して試行錯誤した上で書きあがったのが「カメレオンのための音楽」だと書かれているように、すっきりと無駄のない文章。でもすごく雄弁なんですよね。作品の中には、トルーマン・カポーティ自身が「TC」として登場することもあるんですが、ノンフィクションともフィクションとも言い切れない不思議な雰囲気。というか、「TC」が登場すればするほど、フィクションに感じられてしまうのはなぜかしら。この中で私が特に好きだったのは、表題作の「カメレオンのための音楽」。ここで描かれているのは、色とりどりのカメレオンがモーツアルトに聞き入っている不思議な情景。会話が行き違い、宙ぶらりんのまま打ち切られてしまう短編には、とても存在感があります。あとは、姉御肌の女優の機転が楽しい「命の綱渡り」や、マリリン・モンローとのやりとりを通して、素顔のマリリンを間近に見ているように感じられる「うつくしい子供」も好き。
でも作品も印象的なんですが、「序」がまた良かったです。「神が才能を授け給うにしろ、必ず鞭を伴う。いや、鞭こそ才能のうちなのだ。自らを鞭打つ。」とか、「単に出来のよい作品と本物の文学とには相違がある。この違いは些細なようにみえて、決定的、根源にかかわる。」とか... ちょっと「おおっ」と思うでしょう?(ハヤカワepi文庫)


+既読のトルーマン・カポーティ作品の感想+
「カメレオンのための音楽」トルーマン・カポーティ
「ローカル・カラー/観察記録」「詩神の声聞こゆ」トルーマン・カポーティ

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ニューヨークの有名企業で働くキャリアウーマンのダイアナは、3年以上も前の失恋を未だに引きずっている状態。それでも占星術師で霊能力者のマーガレットおばさんに、これから3年間は人生でも最高の時だと約束されて、楽しみにしていました。しかしそのそんな時、両親と兄の乗った車が酔っ払い運転のトラックと激突。ダイアナはいきなり家族を3人とも失ってしまいます。どん底まで落ち込んだダイアナは仕事を辞め、車でふらふらと旅に出るのですが、しニュージャージーの田舎道で、バイクに乗った老女・ロージーをはねてしまい...。幸いロージーは無事で、ダイアナはロージーと彼女の孫・ルイーザの家に滞在することに。

私にとってアメリカ人、それもニューヨーク在住のキャリアウーマンといえばドライなイメージなので(単純思考)、これほどウェットな人もいるのかと少し驚きましたが、自分でも感情を持て余しているダイアナの気持ちは伝わってきましたし、ダイアナがロージーやルイーザに、なかなか自分の家族の事故のことを言おうとせずにいた気持ちも良く分かります。本当に悲しいことがあった時は、下手に同情の言葉をもらっても困ってしまいますものね。でもそんなダイアナに投げつける、ルイーザの大人気ない言動は傍から見ていても見苦しいほど。いくら美人で魅力的でも、言葉の暴力というのは決して許されるべきことではないはず。...とは言え、この時のダイアナに限って言えば、ルイーザの存在が逆に良かったような気もします。人の振り見て我が振り直せではないですけど、自分よりも困ったお嬢さんであるルイーザの相手をして振り回されているうちに、ダイアナはいつの間にか元の自分を取り戻しつつあったのですし。
水面に浮かんだ何千何百というクランベリーの赤い実の色と水の青、紅葉した木々と長靴の黄色、コバルトブルーの空。でもこの作品の文章からは、今ひとつその情景が思い浮かべられなかったのだけが残念。実際に見てみたくなりました。(ハヤカワepi文庫)

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暗黒の女王・ドリーニは、双子の妹である光の女王・ロリーニの2つの世界を奪い、今またその魔の手を、現在ロリーニがいる<アトラントン地球>に伸ばそうとしていました。そしてその頃、何かに駆り立てられて天の住まいから旅立ったクマ、山の麓の家で旅支度を始めた小人のブロコ、ブロコに出会って自分も出発の時だと感じたカワウソが出会い、一緒にカリクス・ステイの川を越えて<時に先だつ世界>へ。

光の輪4部作。
とても「指輪物語」を連想させる物語。ロリーニ率いる<光の輪>側が持っていて、暗黒の女王・ドリーニとが狙っている<神聖なる箱>は、まるであの指輪のようだし、登場する魔法使いはガンダルフ、小人とカワウソとクマはホビットたちみたい。でも、基本的には悪くなかったんですけど... どうも全体的に説明不足なんですよね。ここは世界がいくつもあって重層的に並んでるみたいなんですけど、それぞれどういう存在なのかも分からないし、全体像も見えてこない。訳者あとがきによると<光の輪>には魔法使いが7人いて長となってるらしいんですけど、それも今ひとつ掴めなかったし、<神聖なる箱>が持っているらしい<5つの秘密>についても同様。
それに、過去・現在・未来のことが全て書かれている<黄金の書>というのが存在するんです。別にそういう書があっても構わないんですけど、そういう本が登場したら、大抵、どうとでも受け取れるような文章で書かれていて、全てが終わった後に「そういうことだったのか」になるのが普通だと思うんですよ。全てを知ってる人がいても、軽々しく口にしたりしないし。でもこの作品では、「サイベルさまがお戻りになることはわかっております。そう定められておりますから、ご心配には及びません。...(中略)...ご帰還のことは<書物>に記されています。」なんて台詞があったりするのです。もう未来は全て決まっていて、変わる余地はないということなのかしら? そんな風に未来が決まってると知ってたら、やる気を殺がれる人も結構いると思うんですけど、なんでみんな「自分の役割を果たさなくちゃ」って前向きでいられるのかしら。私だったら絶対気が緩んじゃって怠けちゃうだろうなあ。なんてところに、ひっかかっちゃいました。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のニール・ハンコック作品の感想+
「二人の魔法使い」「光の女王ロリーニ」「終わりなき道標」「聖域の死闘」ニール・ハンコック
「竜の冬」ニール・ハンコック

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小市民としての道を追求してやまない小鳩くんと小山内さん。周囲は2人のことを恋人同士だと思っているのですが、実は2人の関係はお互いをかばい合うためだけのもの。そして高校2年生の夏は、甘いものをこよなく愛している小山内さんのたっての希望で、小山内さんの夏の運命を左右するという「小山内スイーツセレクション・夏」を完遂することに。

「春期限定いちごタルト事件」が好評だったため、「夏期限定」も書かれることになったという小市民シリーズの2作目。
謎までもがあまりに小市民的で小粒、謎解きのための謎といった遊びの要素が強いように思えた「春期限定いちごタルト事件」は、どうにも物足りなかったんですけど、こっちは面白かったです! 今回も日常の小さな謎から始まるんですが、思わぬ方向へと発展していってびっくり。小鳩くんと小山内さんの目指す「小市民」についても、前作ではどこか地に足が着いていないような違和感を感じてたんですが、こちらでは十分納得。いやー、いいですねえ。しかもまさかこういうエンディングを迎えるとは...。最後まで読んでまた最初に戻ると、各所にきちんと伏線があったのも分かるし、同じ情景がまた全然違った風に見えてくるのが怖いほど。前作が小粒すぎるほどの日常の謎だったことも、今回の驚きに一役買っているんでしょうね。前作が出た時点では、シリーズ化は決定していなかったはずなのに、まるで全てが計算づくのようじゃないですか! そして、ここで終わり、というのも私としてはアリだと思うんですけど(ブラックだ~)、次は「秋期限定モンブラン事件」が出るようですね。ここから一体どんな展開を見せてくれるのか、どきどき。ここから話をどう持っていくかって、難しそう。
ただ、甘い物があまり得意ではない私には、読んでいるだけで胸焼けしてきそうな作品でした。(あのシャルロットなら、いけそうですが) 次回のモンブランも、私には食べられないのよ~。でも、甘い物好きの人にはきっと堪らないんでしょうね。(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信
「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信

+既読の米澤穂信作品の感想+
「犬はどこだ」米澤穂信
「クドリャフカの順番 『十文字』事件」米澤穂信
「ボトルネック」米澤穂信
「遠まわりする雛」米澤穂信
「インシテミル」米澤穂信
Livreに「氷菓」「愚者のエンドロール」「さよなら妖精」の感想があります)

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たらいまわし企画・第23回「笑う門には福来たる! "笑"の文学」の時に、おかぼれもん。のpicoさんが挙げてらした本。(記事
群ようこさんの、様々な音にまつわるエッセイです。

友達のお姉さんの影響もあって、小学校の時からビートルズやストーンズといったロック系にのめりこんでいたという群ようこさん。私も中学頃からは洋楽ロック一辺倒だったし、「そうなったらもう、歌謡曲なんて屁のようなものだった」というのは、すごくすごくすごーーーく良く分かるのだけど... それなのに、なぜまたいきなり、北島三郎の「函館の女」に「がーん」と来てしまうのかしら! 「好きになるはずがないと思えば思うほど気になって仕方がない」という気持ちは分からなくもないけど、なんでよりによって「函館の女」! しかも次に気になったのが、中条きよしの「うそ」って...!(笑)
私は洋楽が好きになってから、どんどん時代を遡って聴いていったので、古いのも大好きだし、ストーンズやジャニス・ジョプリン、プリンス、トーキング・ヘッズ、マービン・ゲイ、マーク・ボランといった名前を見てるだけでも嬉しくなっちゃうんですが(とは言っても、このメンツって時代がバラバラだな)、群さんご自身も書いてらっしゃるように、洋楽ファンは洋楽一辺倒のことも多いと思うんですよね。それなのに群さんは結構広く聞いてらしたようで... あとは「ええっ、そういうのも...?!」の連続。そこに登場する面々に時代のギャップを感じてしまったこともあり、なんだか終始妙な気分でした...(^^;。

やっぱり一番面白かったのは、愛猫「しい」のテーマソングの話ですね。猫を膝に乗せたり抱っこしている時に、無意識のうちにわけの分からない歌を口づさんでることに気づいていたという群さん。漫画家さんには変わった人が多いとか友達と笑いながらも、実は笑えないことに気づいてしまいます。このテーマソングは即興で口をついてくるものらしいんですけど、歌詞がすごいんですよー。猫に対する愛情がたっぷり。第三者がその場にいたらびっくりするだろうなあ...。そういえば私はまだ歌が口をついてくるほどではないし、赤ちゃん言葉にもならないや、と自分はまだまだ飼い主として甘いということに気づいたのでした。(幻冬舎)

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