Catégories:“2006年”

Catégories: /

 [amazon]
中学の修学旅行で京都に行っていた小野寺冬葉が失踪。その時に一緒にいたのは、修学旅行で同じ班だった6人。知恩院に向かっていた彼らが、市バスに乗り込んでいる間の出来事でした。バスがひどく混んでいたため、乗り込んだ時はバラバラの場所にいた6人。その後バスがすいてきた時、1人足りないのに気づいたのです。行き先はきちんと分っており、自分の意志でバスを降りたとしか思えない冬葉。...そして20年後。冬葉の名前でメールが届きます。文面は「わたしを憶えていますか? 冬葉」。

失踪した冬葉からのメールが届いたことが呼び水となって、20年ぶりに集まることになった元同級生たち。冬葉がまだ生きているのか既に死んでいるのか、メールの発信人は本当に冬葉なのか、冬葉でないとすれば一体誰なのか。そして20年前の冬葉に一体何があったのか。それらの謎を含んで、物語は展開していきます。単行本にして554ページの2段組という長さなんですけど、長さを感じさせませんね。柴田よしきさんならではの語りの上手さもあって、先が気になってどんどん読み進めてしまいましたー。
冬葉にまつわる謎も魅力的なのですが、20年ぶりに集まった5人(6人のうち1人は消息不明)の造形がいいですねえ。14~15歳だった彼らも今や30代半ば。当然仕事にも人生にも一波乱二波乱あるわけです。そんな波乱を乗り越えてきたり、今まさに乗り越えつつある姿が良かったし、読んでいて楽しかったです。でも最後に明かされた真相は...。物語の終盤、とある悪意の存在が明らかになるんですけど... 犯人がそういう人間だったという説得力はあったし、そんな悪意が他の悪意を増幅させていくのも分かるんですけど... でも所詮は単なる自分勝手な大馬鹿人間、という感じに見えてしまって、それまでのこの作品を受け止めるにはちょっと役不足だった気がします...。面白かったし、読んでる間は夢中になってたんですけど、その辺りがちょっぴり残念でした。(徳間書店)


+既読の柴田よしき作品の感想+
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき
「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき
「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき
「夜夢」柴田よしき
「激流」柴田よしき
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: / /

 [amazon]
その頃、神降市で起きていたのは、野良猫の連続殺害事件。猫はただ殺されているだけでなく、そのたびに首や手足が切り取られて持ち去られていました。芳雄のクラスメートが可愛がっていた猫も、3日前に4匹目の犠牲者となったばかり。そんなある日、トイレ掃除で一緒になった転校生の鈴木君に話しかけた芳雄は、鈴木くんが自分のことを神様だと言うのを聞いて驚きます。鈴木くんが真面目なのか冗談を言ってるのか判断がつかなかった芳雄は、自分や周囲の人々のこと、そして猫殺しの犯人について訊ねることに。

ミステリーランドの7回目の配本。同時配本は、田中芳樹氏の「ラインの虜囚」。小学校最後の夏休みの冒険譚、みたいな話ばかりが続いて食傷気味だったミステリーランドなんですが、違うタイプの作品も増えてきたようですね。「ラインの虜囚」は、「三銃士」や「紅はこべ」が好きな人には堪らない作品だし(感想)、こちらの「神様ゲーム」もまた一味違いました! これはともっぺさんのオススメ。そういえば「ラインの虜囚」も、ともっぺさんにオススメいただいたんですよねえ♪
そしてこの作品は、一言で言って、「さすが麻耶さん!」 かなりブラックではあるんですけど、ミステリーランドというレーベルに相応しくとても分かりやすい展開。それでも麻耶さんの作品なので油断せずに読んでいたんですが... うわあ、最後の最後が! そうきましたか! さすが「夏と冬の奏鳴曲」の作者だー。うわー、この感覚は久々です。実は麻耶さんの作品は、最初に読んだ「夏と冬の奏鳴曲」のインパクトが強すぎて、他の作品にやや物足りないものを感じていたんですけど... いえ、普通は他の作品の方が読みやすいと思うんですが、「夏と冬の奏鳴曲」の、不可解さに頭がぐるぐるしてしまうような感覚が忘れられなくなってしまった私にとっては、ということです。そしてこの作品は、それ以来のぐるぐる感。もう、嬉しくなってしまいましたー。

でも本当にワケ分かんないです。これは結局どういうことだったの...???(ヲイ)

この作品で一番面白かったのは、やっぱり鈴木くんの存在ですね。自分のことを神様だと言い、「きみといろいろ話せて楽しかったからね。そのお礼だよ」と、簡単に犯人の名前を明かしてくれる鈴木くん。神様を前にしてしまうと、ミステリ的な論理的な推理は存在しません。そこにあるのは、ただ「真実」だけ。でも、鈴木くんは本当に「神様」なのかどうか... 信じていいのか分からない読者(芳雄もですが)にとっては、それは逆に持て余してしまうような真実。
この作品は子供には読ませたくない、という意見は多いし、その気持ちも分かるんですけど... ええと、やっぱりダメですかね? 私自身は、別に構わないんじゃないかなって思うんですけど... 少なくとも第1回目配本の某作品みたいな後味の悪さはなかったと思うし、これなら許容範囲かと... でも、そんな意見は少数派なんでしょうね。限りなくゼロに近かったりして。(笑)(講談社ミステリーランド)


+既読の麻耶雄嵩作品の感想+
「神様ゲーム」麻耶雄嵩
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

| | commentaire(8) | trackback(4)
Catégories: /

 [amazon]
8年後に小惑星が地球に衝突して世界が滅亡するというニュースが流れて以来、地球上は大混乱。ここ仙台でも、人々はパニックに陥り、秩序は崩壊していました。暴動や殺人、強盗、放火、自殺も日常茶飯事に。...そして5年が経過。多少の落ち着きを取り戻した街に、今なお住む人々は...。地球に残された時間はあと3年。

またまた凄い設定ですねー。伊坂さんらしいです。でも、地球滅亡まであと8年なんて発表されたら、本当に世の中はここまで荒んでしまうんでしょうかねえ。だってまだあと8年もあるんですよ! スーパーに食糧の確保に走るのならまだしも、ここまでタガが外れてしまうなんて。人間、元々明日の命だって分からないじゃないですか。8年後に地球が滅亡するとはいっても、本来はもっと短い寿命かもしれないのに。しかも衝突なんて、結局起きないかもしれないのに。...という私は、おそらく日々の生活を規則正しく続けようとするのではないかと思うんですが... でも、世の中そういうわけにもいかないんでしょうね。たとえ一部の人でも、そういう興奮状態に陥ってしまったら、それが伝染してみんな熱に浮かされたようになってしまうんだろうなあ... そういえば、これって新井素子さんの「ひとめあなたに...」の逆パターンかも。「ひとめあなたに...」は、確か、骨肉腫で右手を切断しなくちゃいけないと分って彼氏が荒れるんですけど(彫刻家か何かを目指していたので、右手切断は死亡宣告と同じだった)、そんな時に1週間後に地球が滅亡すると分って(これも隕石か惑星の衝突)、そんな細かいことがふっとんじゃう話。

でもニュースが発表された直後でもなく、地球が滅亡するまさにその時でもなく、騒ぐだけ騒いで、世の中が少し落ち着いた頃という設定がいいですねえ。残された時間は3年。自暴自棄のまま突っ走るには長丁場すぎるし、そのまま何もしないで終わらせるにも勿体ないような長さ。一時の混乱の中を生き延びた人々の中を流れるのは、かりそめではあるにしても、静かで穏やかな時間。皆それぞれに何かを失いつつも、きちんと前向きに人生と向き合っています。ただ生きるということが、生物の一番の基本だということを改めて感じさせてくれるようです。 (集英社)


+既読の伊坂幸太郎作品の感想+
「死神の精度」伊坂幸太郎
「魔王」伊坂幸太郎
「砂漠」伊坂幸太郎
「終末のフール」伊坂幸太郎
「陽気なギャングが地球を回す」「陽気なギャングの日常と襲撃」伊坂幸太郎
「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

| | commentaire(6) | trackback(8)
Catégories:

onomichizoushi.jpg
これは、大好き~な光原百合さんが講師をなさってる尾道大学日本文学科の文芸創作の授業から生まれたという本。学生さんから提出された、尾道を舞台にしたオリジナルの作品が予想外に面白いものだったことから、美術学科の学生さんの挿絵を付けて、共同制作ということで本を作ることになったのだそう。全部で38ページほどのごく薄い本です。
光原さんと学生さん5人の、合計6つの作品。送られてきてすぐには読めなかったので、記事にアップするタイミングを逸していたのですが(せっかく記事にしてアップしても、既に在庫がなくなってしまっていたら... とか考えてしまって)、光原さんにまだ在庫があると仰って頂いたので、早速記事にしてしまいますね。

以前KUMAさんが、予想以上にハイレベルな作品集で驚いたと仰ってたんですが、確かに!
特に「ことほぎのしろ」という作品なんて、プロの作家さんが書いたと言っても違和感がないぐらい。ここに描かれている出来事は、小さかった「ばぁ」にとってはとても怖いことだったはずなのに、遠い昔の思い出となってしまった今では、どこかほのぼのとしたユーモアが感じられて、なんだかとてもバランスがいいんですよね。あの人たち、そんなに悪い人たちには見えないんだけど、あのまま一緒に行っていたらどうなったのかしら? ...と、「ことほぎのしろ」を褒めてますが、実は今回私が一番好きだったのは、「港の双子」。読み終えてみると、ありがちな話のようにも思えてくるんですけど、でもすごく好き。双子も主人公の「私」もとっても可愛らしくて、思わず抱きしめたくなるような作品でした。
そして、学生さんたちのレベルも高いのだけれど、お目当ての光原百合さんの「雁木の夢」は、やっぱりプロの作家さんだなあって思わせてくれるような作品。ちょっとした言葉の遣い方が、学生さんとはやっぱり違う! 「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト」の表現が雰囲気たっぷりで大好きだし、ひたひたと路地を満たしていく水の煌きが見えるような気がしました。
それぞれの物語の舞台となる場所がマップで示されているのも嬉しいところ。尾道には以前から行ってみたいと思っていたんですが、今回の6つの作品を読んで、ますます行きたくなっちゃいました。こういう風に物語を感じさせてくれる場所って大好きです~。

注文は、啓文社書店外商部(0848-20-2424、午前9時から午後5時半まで、日・祝休)に、電話にて。尚、取り寄せの場合、本代500円に送料がかかります。民話がお好きな方、尾道がお好きな方、光原百合さんのファンの方はぜひどうぞ♪


そして光原さんといえば、「時計を忘れて森へいこう」が、とうとう文庫になります! 東京創元社から6月に刊行。今まで単行本だからと躊躇されてた方は、この機会にぜひ! 決して後悔はさせませんー。そして6月には、光原ファン待望の新作も発表されます! ケルト伝説モチーフの小説で、題名は「銀の犬」。こちらは角川春樹事務所から。さらに、現在WEBダヴィンチ上で、短編「木洩れ陽色の酒」が連載されています。全4回予定で、ただいま第2回目。私は完結してから読むつもりなので、まだ読んでないのですが...(^^ゞ
以上、光原百合さん情報でした~。


+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「花散る夜に」「ピアニシモより小さな祈り」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: / /

  [amazon] [amazon]
修道士カドフェルシリーズの19作目と20作目。あとは短編集を1冊残すのみなので、長編はこれでオシマイです。淋しいー。でも、特に20巻で完結という作りになっているわけではないし、そういう意図もなかったようなんですが(エリス・ピータースは続編を書こうとしていたそうなのですが、その途中で亡くなられてしまったようです)、19巻では、1巻の「聖女の遺骨求む」で聖ペテロ聖パウロ修道院にやって来た聖ウィニフレッドの遺骨が盗まれるという事件で、カドフェルの行動を色々振り返ることになるし、20巻ではこれまでのスティーブン王と女帝モードの争いという歴史も大きく絡み合い、しかもこれまで探偵役に徹していたカドフェルが名実共に話の中心となり、最終作に相応しい物語となっています。

このシリーズは、12世紀という時代背景における人々の生活や修道院での暮らしが色々と描かれているのがとても興味深いんですが、今回は19巻に出てきた聖書占いというのが面白かったです。これは聖骨箱の上に福音書を載せて、目は他の方向に向けて両手で福音書を開き、人差し指で指した部分の文章を読み取り、解釈するというもの。今回の占いの結果に関してはやや出来すぎの感があるのですが、それでも臨場感たっぷり。荘厳で敬虔な雰囲気がよく現れていました。そんな偶然に頼るなんて! とも思ってしまうのですが、それも神の御心ということなんでしょうね。今よりも遥かに信心の篤いこの時代ならではの占いで、すごく面白かったです。
ただ、このカドフェルシリーズは何人かの訳者さんが訳してらっしゃるんですが、岡本浜江の訳だけ登場人物の言葉遣いが違うのが気になります。19巻もやけに古めかしい言葉遣いだし...。これでシリーズ全部を統一しているのならまだしも、訳者さん同士での連携というのはないのかしら? 1人だけ浮き上がってしまうのは問題だと思うんですけどねえ...。(光文社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「聖女の遺骨求む」「死体が多すぎる」「修道士の頭巾」...ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「聖ペテロ祭殺人事件」エリス・ピーターズ
「死を呼ぶ婚礼」エリス・ピーターズ
「氷のなかの処女」エリス・ピーターズ
「聖域の雀」「悪魔の見習い修道士」エリス・ピーターズ
「死者の身代金」「憎しみの巡礼」エリス・ピーターズ
「秘跡」「門前通りのカラス」エリス・ピーターズ
「代価はバラ一輪」エリス・ピーターズ
「アイトン・フォレストの隠者」エリス・ピーターズ
「ハルイン修道士の告白」エリス・ピーターズ
「異端の徒弟」エリス・ピーターズ
「陶工の畑」「デーン人の夏」エリス・ピーターズ
「聖なる泥棒」「背教者カドフェル」エリス・ピータース
「修道士カドフェルの出現」エリス・ピーターズ

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: /

 [amazon]
筑摩書房のPR誌「ちくま」の表紙に、2年間に渡って掲載されていたフジモトマサル氏のイラストレーションの通しテーマは「読書」。そして描きあがったイラストを受け取った吉田篤弘さんが、文章を添えていたのだそうです。24枚のイラスト全てが動物の絵。そしてその動物が本を読んでいたり、手に持っていたり。そしてそこに添えられた短編小説のような小文には、何かしら心にひっかかり、そのまま残る文章が入っていました。
その中でも一番心に残ったのは、「何ひとつ変わらない空」という話の中で、今の情報過多ぶりを嘆くアンテナ氏の言う、「十年前はこれほどではありませんでした。いま思うと、まだほどよい時代だったんです。ああ、西の空にNHKの『みんなのうた』が飛んでゆくなぁ、とはっきり確認できたんですから」という言葉でしょうか。そして「待ち時間」という話の中の、「死因は、携帯電話による『情報過多死』。」

情報が多すぎる、選択肢が多すぎる、っていうのは、実はあまり幸せなことではないと思ってます。選択肢が沢山あるのは自由なように見えて、実はとても不自由なこと。ある程度限られている方が、却って自分の望むものが見えてきたりするもの。実際、例えばお店の販売員さんがお客さんの前に全部の商品を並べてしまったら、とても選びにくいですよね。お客さんの好みを掴んで2つ3つ出してみた時の方が、売れゆきは遥かに良いはず。でもインターネットというのは、全部の商品を並べられてしまった状態なわけで... 自分である程度遮断しない限り、情報だけがどんどん流れ込んできてしまう... そんなことを思っている時に丁度この本を読んだので、なんだかとてもタイムリーでした。
決して派手ではありませんが、本が好きな人でなければ書けないし、本が好きでないと反応しないだろうと思われる文章。吉田篤弘さんご自身が本がお好きなことがとても伝わって来ます。(筑摩書房)


+既読の吉田篤弘作品の感想+
「百鼠」吉田篤弘
「78」「十字路のあるところ」吉田篤弘
「という、はなし」吉田篤弘
「空ばかり見ていた」吉田篤弘
「それからはスープのことばかり考えて暮らした」吉田篤弘
「小さな男*静かな声」吉田篤弘
Livreに「フィンガーボウルの話のつづき」「つむじ風食堂の夜」「針がとぶ」の感想があります)

+既読のクラフト・エヴィング商會の感想+
「アナ・トレントの鞄」クラフト・エヴィング商會
「犬」「猫」クラフト・エヴィング商會プレゼンツ
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: /

 [amazon]
今回の作品は、一言でいえば演劇物。書けないで苦しんでる脚本家や、若手の実力派女優や、大学生の劇団員らの視点から物語は進んでいきます。「ネクロポリス」では正直がっかりしたし、「エンドゲーム」では、途中まではものすごく面白かったのに、読み終えみると自分の中に何も残ってなくて、これまたがっかりしていたんですが、これは良かったです。久々の大ヒット! もう、夢中で一気読みしてしまいました。最近すっかり海外物づいてて、日本物を読むのをちょっと躊躇ってたんですが、これは読んで良かったです~。

というのは、きっと私自身がお芝居をとても好きなせいも大きいと思うんですが...。ここ数年はほとんど観てないんですけど、この「チョコレートコスモス」に登場するあの劇場にも、大学時代によく通ってたし、実際に小劇団の公演のお手伝いをしたこともありますしね。(お手伝いとは言っても、ほんのちょっぴりなんですが) そして私自身は大学時代にバンドを組んでいて、ライブハウスの雰囲気が堪らなく好きだったんですが、ライブハウスと小劇場ってあの空気感が共通してたんだなあって、今頃になって思ったりします。そして、これまた今頃気がついたんですけど、私が読んでいて興奮する本って、そういう空気に通じる作品みたいです。どれだけ臨場感があって、どれだけ鮮やかにその情景が浮かび上がってくるかが、私の中での最重要ポイントみたい。いい作品だとは思っても、映像として鮮やかに浮かんでこない作品って、あまり意識や記憶の中に残らないような気がします。

それにしても、役者さんによって演じられている舞台の場面を文章にして、その臨場感や興奮をダイレクトに読者に伝えるのって、とても難しいんじゃないかと思うのに、この作品からは、本当に鮮やかにその臨場感や興奮が伝わってきました。舞台ものとしては、服部まゆみさんの「ハムレット狂詩曲」以来かも。(これも、繰り返し繰り返し「演じる」場面が描かれる作品なんです) 臨場感が肌に直に伝わってくるし、まるで自分もその芝居の場に居合わせているような感覚。それも観客席から見ているのではなく、同じ舞台に立っているかのような、しかも自分も一緒に「向こう側」へと連れて行かれてしまったかのような...。
登場人物の中では、演劇界のサラブレッドで、天才子役から現在や若手実力派女優となっている東響子がすごくいいです。その力やオーラをひしひしと感じます。彼女に比べると、佐々木飛鳥の造形は一見負けてるようにも見えるんですが、でもそれは、彼女がまだまだ卵の段階だから。殻を破って、自分の力で飛び立った後の飛鳥の姿が無性に見てみたくなってしまいます。それに脚本家の神谷の書く芝居がどんな本になるのか、そしてそれがどんな風に演じられるのか、観てみたくて堪らない!
そしてこの作品は、登場する役者さんや劇団について、「これは... もしかして○○?」と考えながら読むのも楽しいです。(毎日新聞社)


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

| | commentaire(10) | trackback(6)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.