Catégories:“2006年”

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「オズの魔法使い」のシリーズで有名なライマン・フランク・ボームの処女作。14編の短編が収められた連作短編集です。このうち2作は、以前アンソロジーで読んでいて(感想)、まるでオズの国の延長にいるような可愛らしいおとぎ話だなーと思ってたんですが、実際にこのこの国はオズの国に繋がっていたんだそうです。登場人物も共通してるし、この物語の舞台となるモーの国は、オズの国の南東にあるのだとか。そしてこのお話はほんと美味しそうなんです。

<モーの谷>には二筋の河があり、その一つにはとても濃い牛乳が流れています。このミルク・リヴァーの中には島がいくつかありますが、なかにとびきり上等のチーズできている島があり、人々はいつでも食べたいと思うときにシャベルですくっていいことになっています。流れがゆるやかな岸辺の淵には、舌もとろけるようなクリームが牛乳の面てに盛り上がっており、睡蓮のかわりにイチゴの大きな葉が浮かんでいて、よく熟れた赤いイチゴが鼻先をクリームの中にトップリとつっこんでいるさまは、さあここへ来て召し上がれといわんばかりです。河岸を形づくっている砂は、まじりけなしの白砂糖。藪の中にはありとあらゆるキャンディやボンボンが鈴生りで、だれでも気軽に摘み取ることができます。

この他にも、全編美味しそうな描写がたっぷり。でもこういうのは、子供の頃に読みたかったですね。大人になってから読むと、可愛らしいとは思うけど物足りない...。
処女作のせいかオズシリーズではなかなか見られないようなグロテスクなシーンもあるんですが、どこか上品なユーモアに感じられるのが魅力。でも初期のハヤカワ文庫FTって子供向けの作品が結構目につきます。もっと大人向けのが読みたいぞ。(ハヤカワ文庫FT)

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作家の「ピエールさん」が眠っている間にみたのは、とても美しいお話の夢。それは、ピポ王子の物語。跡継ぎの息子がいなくて悲しんでいた王さまは、王妃さまのアドバイスで、"水のほとりの大魔女"に相談しに行き、"新生児デパート"でピポという名前の赤んぼうを見つけます。王さまは、15歳になったら赤い小馬をあげるという約束で、ピポを自分の子供にするのですが...。

物語自体はいかにも子供向けの冒険ファンタジーで、例えばエルショーフの「せむしの小馬」のような雰囲気。でも「とても美しいお話の夢」の話から始まるせいか、まるで夢の中の出来事みたいです。夢の中で、見る見るうちに怪物が迫ってくるのに、身体が重くて思うように走れない時のような、自分が夢を見ているのが分っているのに、どうしても目を覚ますことができない時のような感覚。そして夢の中ってかなり唐突に場面が変わっても、夢を見ている本人は自然に受け入れてしまいますよね。それと同じような感じ。
「夢」が絡むことによって、普通の冒険物語がすごく重層的な構造になることにびっくり。なんだかとっても不思議な感覚の作品でした。これは何だったんだろう? どういう意味があったんだろう? と思う部分が多くて、一読しただけではつかみきれなかったんですけど、色々なモチーフにはそれぞれ深い意味が隠されていそうです。なんだかとっても気になる、後を引くタイプの作品でした。(ハヤカワ文庫FT)

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恋人のアンジーが、大学の研究室の霊体投射実験でどこかに転送されてしまった?! 目の前でアンジーが消えてびっくりしたジムは、早速自分も同じように投射してもらうのですが、気がついた時、ジムの意識はなんとドラゴンの中に入り込んでいて...。

中世のイギリスらしき場所に飛ばされてしまい、しかもドラゴンの身体の中に入り込んでしまったジムが、アンジーと一緒に現代アメリカに戻るために、魔法使いや騎士、弓矢の名人、言葉を話す狼、ドラゴン仲間などの協力を得て、「暗黒の力ある者たち(ダーク・パワーズ)」を滅ぼすという、言ってみれば正統派のファンタジー。
設定もいいんですけど、何よりも登場人物たちが魅力的で良かったです。種族も気質も様々な寄せ集めの仲間なんですけど、下手に同じ志を持たせたりしないで、それぞれの思惑の通りに進んでいくと最終的に目的が一致するという辺りもいいんですよねえ。ただ単に悪を倒すというんじゃなくて、運命と歴史のバランスを保つという論理も面白かったし。
ラストも意外性たっぷり。霊体投射実験って一体何だったのかしら? この世界は結局パラレルワールドだったのかしら? なんて良く分からなかった部分もあるんですが、続きがあるそうなので、これはぜひ読んでみたいです。(ハヤカワ文庫FT)

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ヒューズは日本ではあまり知られていませんが、イギリスでは非常に有名な作家とのこと。これはヒューズの初めての児童書だそうで、ごくごく短い作品ばかり20編が収められた短編集。
常識に捉われない個性的な発想とナンセンスぶりが楽しい作品群。これらの作品は、ヒューズが友人の子供相手に即興で話して聞かせた物語をそのまま活字にしたんだそうです。特に手を入れなかっただけあって、最初に語った時のままの生き生きとした雰囲気がそのまま残ってる感じ。そして意外なほどブラック味もあったりします。
例えば、この中に収められている「電話旅行」という話は、血の繋がらない両親に厳しく育てられている少女が、時々電話線を通って、電話の相手の家に遊びに行っちゃうという、発想そのものがとても楽しい作品。でも両親に可愛がられてない可哀想な女の子と言うと、大抵「小公女」的な良い子を想像すると思うんですけど、この少女が意外な我儘ぶりを発揮してびっくりなんですよね。しかも彼女がしばらくいなかった間、両親は心配していたのか全然だったのか、それも良く分からないようなエンディング。結構煙にまかれます。
思いっきり破綻してて収拾がつかない話も多いんですけど、案外楽しかったです。(1作ずつが短いからかも)(ハヤカワ文庫FT)

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題名の「ムルガー」とはサルのことで、要するにサルが主人公のファンタジーです。本国イギリスでは、トールキンの「ホビットの冒険」が出るまでは、並ぶ作品がないと言われるほど評価されてたそうなんですけど... うーん、読みにくかったです。沢山いるサルの種類にも、食べ物や樹木の名前にもムルガー語の名前がついてて、それを追うのが大変なんですよね。巻末に「ムルガー語小辞典」がついてるんですけど、そんなのをいちいち調べてたら、話の流れになんて、とてもじゃないけど乗れませんー。脇役として登場する人間や水の精が印象的だったし、厳しい冬の情景がとても綺麗だっただけに残念。この厄介なムルガー語さえなければ、もっと楽しめたでしょうに。

この作品はハヤカワ文庫FTと岩波少年文庫から出てますが、どちらも絶版状態。読んだのはハヤカワ文庫なんですが、岩波少年文庫の画像があったので、そちらを載せておきますね。訳者さんは同じなのでどちらを選んでも一緒だろうと思ったんですが、岩波少年文庫の方が新しくて、色々と手を加えてあるようです。岩波少年文庫版を選んだら、もっと読みやすくて良かったのかも... 図書館にあったのに、惜しいことしちゃいました。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のウォルター・デ・ラ・メア作品の感想+
「妖精詩集」W.デ・ラ・メア
「ムルガーのはるかな旅」ウォルター・デ・ラ・メア
「昨日のように遠い日 少女少年小説選」

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岩波文庫か集英社文庫ヘリテージシリーズかと考えていたダンテの「神曲」ですが、overQさんにアドバイス頂いて、河出書房新社の平川祐弘訳を選んでみました。口語訳だし、フォントも普通で読みやすかったです! これから読む人には、私からもオススメ。

ということで、13世紀~14世紀のイタリアの詩人・ダンテによる叙事詩。話は知ってるものの、実際に読むのは初めてです。「地獄篇」「煉獄篇」「天国篇」の3部構成で、深い森の中に迷い込んだダンテを救い出すために、ウェルギリウスが地獄と煉獄を案内していきます。そして天国で案内するのは、ダンテの永遠の恋人・ベアトリーチェ。
通して読んでみると、地獄篇が一番面白かったです。次は煉獄篇。地獄に堕ちた人たちはもう救われる見込みはないけど、煉獄に堕ちた人は天国目指して頑張ってるんですよね。で、一番気が入らなかったのが天国篇。こういうの読んでても、あんまり天国自体には興味がないのに気がついちゃいました。構成とか構造は好きなんですけど、この辺りのキリスト教の教義を今更聞いてもっていうのもあるし、それ以上に、ウェルギリウスは終始丁寧だったのに、天国を案内するベアトリーチェったら終始偉そうで鼻につくんですよねえ(^^;。

それにしても、ホメロスを始めとする詩人たちや、、アリストテレス、ソクラテス、プラトンといった哲学者たち、そしてアエネアス、カエサルといった歴史上有名な人物たちが、洗礼を受けなかったからという理由だけで、地獄の「辺獄(リンボ)」に堕とされていて、しかもまず救われる見込みはないという部分にはびっくりです。そりゃ、洗礼を受けないと天国に行けないというのは知ってましたが、救われる見込みもないなんて。しかもアダムやアベル、ノアやモーセ、ダビデといった旧約聖書の重要な面々ですら、かつてはこの「辺獄」にいたんですって! イスラエルの人々に関しては、その後キリストが救い出して天国に連れていったみたいなんですけど(一旦救われると、随分と高い地位にいるようです)、古代ギリシャの偉人たちはどうするつもり?! なんだかキリスト教徒の驕りを感じてしまいます。(ダンテ自身もこれには納得できなかったらしく、天国篇でそのことについて尋ねることになるんですが) ...そういえば、洗礼を最初に始めたのは、「バプテスマのヨハネ」(サロメに殺される彼です)でいいのかしら? 考えてみたら、神自身が定めた儀式じゃないんですよね、洗礼って。

そして地獄で番人の役割を果たしているのは、主にミノス、ケルベロス、プルートン、メドゥーサ、ケンタウロスなどのギリシャ神話の存在。西洋の古典文学にはほんとギリシャ神話が良く登場しますけど、本来なら一神教のキリスト教にとって多神教は排他するべき敵なのでは...?と改めて不思議になりました。信仰の対象でなければ構わない? モチーフとして絵になるから見逃されるのでしょうか? そしてキリスト教の悪魔の頭領・ルチフェロ(ルシファー)は最下層で氷漬けになってました。キリスト教における「悪」は、とにかく悪魔の誘惑が第1の要因だろうと思っていたんですが... 他にも悪魔は色々といるとはいえ、人間を誘惑するべきルチフェロが氷漬けだったら、あんまり悪いことできないんじゃん。結局、罪は個人の責任ということでいいのかなあ。(笑)

ダンテはそこで出会った色んな人に話を聞くんですけど、聞かれた方もまだ生きてる人間に祈ってもらえると罪が軽減されるので、生者に伝言を頼みたがるし、色んなことを進んでダンテに話すんですよね。それが上手いなあと思ったところ。そして当時の人間がかなり沢山地獄に堕とされてますが、これはどうやら当時のダンテの政敵だったようで... 地獄に堕として意趣返ししてます。なんてこったぃ。(笑)

全部読み通すのに、ものすごく疲れたんですけど(毎日のように本の感想をアップしてますが、まさかこれを1日で読んだわけじゃないです)、叙事詩はやっぱり大好き。次は何にしようかしら。ウェルギリウス繋がりで、「アエネイス」かなあ。叙事詩は大作が多いので立て続けには読めないんですけど、ぼちぼちと読んで行くつもりです。(河出書房新社)

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18世紀のフランスの啓蒙思想家ヴォルテールの作品。1冊に「バビロンの王女」と「アマベッドの手紙」が収められています。
でも、啓蒙思想家とは言っても別に小難しい作品じゃなくて、特に「バビロンの王女」の方は、「千夜一夜物語」の中でシェエラザードが語りそうな物語。前半は、バビロンの世にも美しいお姫さまと結婚するために、エジプトの国王、インドの帝、スキチヤの太守、そして羊飼いという4人の男性がやって来て力比べだの技比べだのする話。そして後半は、恋に落ちたお姫さまと羊飼いの間に行き違いがあって、お姫さまは彼を追って世界中を旅して回る話。中国からシベリア、ロシア、スカンジナヴィア、ポーランド、オランダ、イギリス、イタリア、フランス... その場面場面で当時の世界諸国の政治や社会、風俗なんかを考察してて、時には批判的だったりするんですけど、でもそれほど痛烈でもないし、むしろこれは当時のことが色々と分かる楽しい漫遊記として読んでしまってもいいような気がします。
でも「アマベッドの手紙」の方は、キリスト教に対する痛烈な批判。ヨーロッパから来たキリスト教宣教師と共に船出してインドからヨーロッパに向かったアマベッドとその妻アダテが、この宣教師に騙されて酷い仕打ちを受けることになる話。非キリスト教のインド人夫婦のめを通してみたキリスト教の姿があからさまに書かれていて、ちょっとびっくり。でもこういう宣教師って結構多かったんだろうなあって思っちゃいました。キリスト教世界を広げようと焦るあまりに、あるいは自分たちの富を蓄えることに気を取られて、大切なはずの教えを見失った人々の姿が浅ましいです。これはローマ法廷によって発売禁止の宣告を受けた作品とのこと。

結構読みやすくて面白かったんだけど、ヴォルテールという人物はあまり見えてこなかったかな...。今度は「カンディード」を読んでみようかしら。あと、この時代は異国に対して興味が強かったようで、「バビロンの王女」のような異国情緒たっぷりな作品が色々あるようなんですよね。そういうの大好き。モンテスキューの「ペルシア人の手紙」も読んでみたい作品です。でも絶版みたいで残念。(岩波文庫)


+既読のヴォルテール作品の感想+
「バビロンの王女・アマベッドの手紙」ヴォルテール
「カンディード」ヴォルテール

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Note


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