Catégories:“2006年”

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Baroque Midnight の森山樹さんに教えて頂いた本。アイルランドに伝わる民間伝承をモチーフにしたアイリッシュ・ホラー11編です。ホラーも短編も得意じゃないので大丈夫かな... とちょっと恐る恐る読み始めたんですけど、これがすごく面白かった!
物語の中心となるのは、よその土地に住む、それほどアイルランドに関する知識のあまり深くない人間。でも気がついたら、するりとこの世界に入り込んでしまってるんですよね。そしてこの土地の呪縛に囚われてしまう... ここで描かれるアイルランドの土地には、今も古い神々や精霊たちが息づいていて、しかもこの土地がずっと見てきた人々の営みや歴史、特に12世紀に始まるイングランドによるアイルランド侵略と虐殺や、19世紀半ばの大飢饉が色濃く影響を残してるんです。慟哭と呪詛の歴史から生まれるホラー。本当なら起きるはずのないような出来事でも、アイルランドというこの土地ではいかにも起こりそうに感じられてしまうのも、怖いところ。アイルランドにもいつか行ってみたいんですが、もし旅行直前にこれを読んだら、行くのを躊躇っちゃうかも。...少なくとも土地の人たちの言うことはきちんと聞こう!と思いました。(笑)

それにしても、土台がものすごくしっかりとした作品だなあと思ってたら、作者のピーター・トレメインは、実は高名なケルト研究者なんだそうです。道理でしっかりしてるはずだ! とは言っても、学者先生が書いたというより、本職の小説家が書いたとしか思えないような素晴らしい作品群でした。普段なかなか触れる機会のないゲール語がふんだんに使われているのも楽しかったし、その言葉の奥に隠された意味から導き出される結末にはひやりとさせられたし、短編集でこれだけ楽しめたのって本当に久しぶり。そしてホラーではあるんですが、幻想的でもあり、私には十分許容範囲でした。
アイルランドやケルトに馴染みが薄い人でも読みやすいと思うし、詳しい人にもきっと満足がいくような1冊。アイルランド近辺に興味のある方は、ぜひ読んでみて下さいませ~。(光文社文庫)


+既読のピーター・トレメイン作品の感想+
「アイルランド幻想」ピーター・トレメイン
「蜘蛛の巣」上下 ピーター・トレメイン
「幼き子らよ、我がもとへ」上下 ピーター・トレメイン
「修道女フィデルマの叡智」ピーター・トレメイン

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SukuSukuPu-sanのmort_a_creditさんが、たらいまわし企画「第18回心やすらぐ本」であげてらした本。(記事) 「詩はよくわからないから、と敬遠している人は、これを読んでみて、気に入った詩、三好と意見の合った詩があれば、その詩人の詩集を読んでみる、というところから始めてみるのもいいと思う。」と書いてらっしゃるのを読んで、これはまさに私のことだ!と本を買ってきてしまいました。
紹介されているのは、島崎藤村、薄田泣菫、蒲原有明、北原白秋、伊良子清白、三木露風、高村光太郎、山村暮鳥、千家元麿、村山塊太、中川一政、室生犀星、佐藤惣之助、中野重治、大木惇夫、佐藤一英、萩原朔太郎、堀口大學、丸山薫、竹内郁、田中冬二、津村信夫、立原道造、中原中也、伊東静雄など。もちろん作品を知ってる詩人も含まれていますが、まるで名前を知らなかった人もいれば、名前は知ってても詩を書くなんて知らなかった人もあり、普段ほとんど詩に触れてないだけに、とても新鮮。

この本は少しずつ読んでいったので、すごく時間がかかっちゃったんですけど、やっぱり詩を読むには声に出して読むのが一番いいですね。声を出して読んでみると、目だけで追っているのとはまた違う部分で、どこか気持ちよく感じられるものがあるものだなあと実感。私はどちらかといえば定型詩の方が好きみたいで、その方が読んでいてすっと入ってくるんですが、もちろん口語詩にもふっと気持ち良く感じられる詩があって、そんな詩人の作品はもっと読んでみたくなりました。三好達治さんの文章も、読んでいて心地良かったです。(岩波文庫)

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先日有栖川さんのサイン会に行ってきました。これはその時のエッセイ本。映画とミステリーと阪神タイガース(笑)について、様々な媒体に書かれた文章を集めた本です。
色々頷ける部分があったんですけど、その中で一番同意したくなったのは、最近のハリウッド映画がつまらなくなったという話。映像技術は進歩してるけど、脚本がいい加減になっている、「『大脱走』や『ポセイドン・アドベンチャー』のビデオを観て勉強してもらいたい」という部分には、思わず深く頷いてしまいました。「ポセイドン・アドベンチャー」もいい映画ですけど、それより「大脱走」ですよ。大好き! あのテーマ曲を聞くだけで場面が蘇ってきちゃいます。主役のスティーブ・マックイーンはもちろん、脇も味のある役者さんが固めてて(チャールズ・ブロンソンが渋くて好きでした)、それ以上に話が良かったんですよね。初めて観たのは中学の時で、テレビの洋画劇場だったんですけど(笑)、もう手に汗握って観てました。今の映画にはあまりそそられないけど、古いハリウッド映画ってほんと好きです。あと、「洋画のタイトルから格調が失われて久しい」という話は、私もずっと同じことを思ってました。何でもかんでも、英題そのままのカタカナの題名にしなくてもねえ。以前、昔の洋画の邦題名を決める時の話を聞いたことがあるんですが(誰だったか忘れたんですけど、淀川長治氏や水野晴夫氏のような映画人だったような気が)、その頃はぴったりの邦題を決めるのに結構苦労して、でもその甲斐あって「巴里祭」や「俺たちに明日はない」みたいな素晴らしい邦題が生まれたって言ってたんですよね。こういう伝統(?)が失われちゃったのって、ほんと勿体ないと思います。今もやってくれればいいのに。
ミステリ関連では、これは映画の部分に書かれていたんですけど、ミステリの探偵たちの話も面白かったです。例えばホームズは、化学や地質学に精通してる割に文学や哲学についてはまるで無知だし、地動説も知らないという偏りよう、しかもコカインの愛飲者。でもミステリ作品の中には、ホームズ以上に近寄りたくないような奇人変人がうようよしてるという話。身体的に色んなハンディキャップを持つ名探偵も多いけれど、それは物語を盛り上げる効用だけでなくて、「人間はパーフェクトなものを信じないから」、「過剰な推理能力と交換されるべき欠落」ではないだろうかという話。まあ、時にはスーパーマンみたいな名探偵もいますけど、基本的に人間臭い方が魅力的ですね... それにもしスーパーマン探偵だったら、事件が始まった途端に解決できるはずだから、話が続かないですね。(笑)
その他にも、思わず笑ってしまうような部分が色々と。私はタイガースには興味ないんだけど、タイガースファンを見てるのは好きなので、その部分も意外と楽しめました。有栖川さんのエッセイは、やっぱり好き。文章を読んでいても口調が感じられるし、同じ生活圏だということもあって、いたずらの共犯者めいた楽しさもあるんですよね。(というのは、ご本人には心外かも...)(講談社)

ちなみに火村シリーズの長編が6月に新潮社から出るのだそう。秋には... という話だった学生編は、ちょっと怪しげかな?? 出るといいですねえ。

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テレビ番組にレギュラー出演し、招霊木(オガタマノキ)を片手に、その卓抜した霊視能力で相手のことを全て見抜いてしまう人気霊媒師・能城あや子。本当は霊視能力などまるでないのですが、何もかも見抜いているかのような発言に人気は急上昇、という連作短編集。
能城あや子は、テレビにもよく登場してるし、書店では著作をよく見かける「あのヒト」(こちらは霊媒というより占い師か)のイメージ。私は、テレビに出ている霊媒師なんて、言っていることがどれだけ当たっていたとしても本物だなんて到底思えないし、ましてや好感を持つことなんて、まずないんですが... でもその認識が、この本を読んでると覆りそうになっちゃう。

表向きには、彼女にはマネージャーが1人いるだけで、テレビの収録の日に出掛けて行って相談者に初めて会い、霊視を行うわけなんですが、実は秘密裏に2人の調査隊がいて、その2人が予め誰が相談者になるのか、どんな相談なのかを探り出し、完璧に調査し推理していくんですね。この過程が、ほとんどミステリの謎解きと一緒なんです。実際には、相談者を尾行したり、その人の家に不法侵入したり、会社のパソコン相手にハッキングをしかけたりと、とてもじゃないけど穏やかとは言えないやり方をしてるんですけど、でもその態度に一本筋が通っているので説得力があるし、あと、このメンバーが「金儲け」から超越してるのがいいのかな... 実際にはかなり儲けてるはずなんですけど、そういう俗っぽい部分が見えてこないんです。なんだか腕のいい職人芸を見せられているような気分。(井上夢人さんご自身が卓越した職人芸を楽しませてくれる作家さんだ!)
やり方はどうであれ、相談者の悩みは解決するし、真犯人は捕まるし、時には監禁されていた人が助け出されることもあるし、どこにも被害者がいないどころか、関係者にとっては能城あや子の霊視はまさに天の声のようなもの。もちろん、能城あや子は絶対にインチキだと決め付けて、カラクリを暴こうとする人間もいるんですけど、スタッフたちの仕事振りは常に完璧を目指していて、敵を欺くには味方から。テレビ局のスタッフのことも調べあげていて、番組に映らない部分でも、こまめに能城あや子に「霊視」させてたりするんですよね。
引き際も鮮やかな、井上夢人さんらしい楽しい作品でした。(集英社)


+既読の井上夢人作品の感想+
「オルファクトグラム」上下 井上夢人
「クリスマスの4人」井上夢人
「the TEAM」井上夢人
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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ともっぺさんに、「四季さんのお好きな『鳥類学者のファンタジア』のフォギーが出てますよー!」と教えて頂いて、その後Bryumさんにも「まだ半分くらいなのですが、面白いです!」とオススメされた作品。ともっぺさんたら、最初にお会いした時に、私が「鳥類学者~」を読んでたのを覚えてらっしゃったんですね。素晴らしい~。

内容としては、「日本近代文学者総覧」という書物で無名の作家・溝口俊平について書いた、三流女子短大の国文助教授「桑幸」が、溝口俊平の遺稿が見つかったという編集者からの知らせがきっかけで、騒ぎに巻き込まれていくという話です。

物語は2つの視点から交互に描かれていて、その一方が助教授・桑幸。こちらが伝奇部門。そしてもう一方はジャズ・シンガーのアキとその元夫・諸橋倫敦という元夫婦(めおと)探偵。こちらはミステリ部門。「鳥類学者のファンタジア」の主人公・フォギーは、このアキの友達なんです。まあ、ほんの脇役なんですけど、でもまた再会できるのはやっぱり嬉しい♪
そして桑幸のパートでは、怪しげな新興宗教団体やら、失われた例の大陸やらロンギヌスやらフィボナッチの数列やら、「鳥類学者のファンタジア」でもお馴染みだった、怪しげなモチーフが満載。いやあ、面白い~。マニアックなユーモアもたっぷりだし、「哀しく、切なく、でもほのぼの幸せなき持ちになれる」と世間一般で絶賛される溝口俊平の童話集には、今の本の売れ方読まれ方に対する強烈な皮肉がたっぷり。桑幸本人は、見かけも中身も人並み以下で、本人が不満な割には三流女子短期大学という場所に実に良く似合った俗物。なけなしの見栄を張っているところとか微笑ましくて、お近づきにはなりたくないタイプですけど(笑)、傍から見てる分には結構好きでした。
でも、桑幸のパートの面白さに対して、ミステリパートはちょっと退屈...。ミステリ系叢書からの配本だからミステリ部分に力が入ってるんでしょうけど、元夫婦探偵の視点オンリーの2章では、読んでる途中何度も寝てしまって、もう金輪際読み終えられないかと思いました...。元夫婦探偵もいいんですけど、全体的に桑幸のパートをメインにしてくれたら、もっと面白くなったんじゃないかと思うし、奥泉さん的にも本領発揮だったんじゃないかと思うのに!
とはいえ、2章さえ終わればこっちのもの。(?) 桑幸のパートが再び挿入される3章からは復活、最終章で2つの視点がめまぐるしい移り変わるクライマックスがまた面白かったです。(文藝春秋ミステリ・マスターズ)


+既読の奥泉光作品の感想+
「モーダルな事象」奥泉光
Livreに「葦と百合」「鳥類学者のファンタジア」の感想があります)

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「神話なき国」とされる中国の、断片しか残されていない中国神話の体系的記述を試み、夏や殷といった国々に絡めて、神話の成立や消滅を論じた本なんですが... 白川氏の専門である漢字、それも殷の甲骨文などを解読しながらの内容はかなり専門的。いやあ、難しかったです。一読しただけでは、あまり内容が頭に入らなくて、自分の知識不足を実感してしまいました。私程度の知識ではもう全然ダメ。もうちょっと知識を蓄えてから、もう一度改めて読まなくちゃ。
あ、でも、深い理解はできないながらも、伝説の夏王朝や殷王朝をからめての話は、中国古代史好きにとっては面白かったです。まず洪水神話があったとして、洪水神として共工、禹、伏羲と女?(女+咼)が存在し、3つの洪水説話が並列して存在したという話とか。これらは元々異なる種族に存在した神話で、共工はおそらくチベット系とみられる西方の羌、禹はおそらく北方の夏系の神であり、伏羲と女?(女+咼)は南人と呼ばれた苗系の諸族の神。まず至上帝である共工が治水に失敗し、禹が洪水を治めた、もしくは共工が治水に失敗し、伏羲と女?(女+咼)が補修したという説話がそれぞれに伝わっていて、そしてそれが各種族の支配権争いを表しているとのこと。
あと、「若」という字は、「若い巫女が、両手を上にあげ、髪をふり乱して、神がかりの状態にあることを示す字」なんだそうで、そういうのも興味深かったです。(中公文庫BIBLIO)

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大好きな中華風ファンタジー、彩雲国物語の第9作目。...とは言っても途中で外伝が1つあるので、本編としては8作目。これで彩八仙の8色が揃うことになって、ここで完結してしまうのかどうなのかというのが最大の関心事だったんですけど、結論から言えば、終わりませんでした!(良かったー) むしろ8色揃ってここからが本番という感じもあります。
今回は影月編の完結編。もう読みながらウルウルきてしまって大変でしたよぅ。何にもないはずのところでもジワ~としてきちゃうんだから、全く手に負えません。でも、それだけ登場人物に感情移入しちゃってるってことなんですよね。登場人物たちそれぞれの決意やら思いやらが泣かせてくれます。ちなみに今回、王都メンバーは顔をちらっと出しただけ。でも次回からはきっともっと登場するのでしょう。楽しみです。(角川ビーンズ文庫)

4月からNHK BS2でアニメ放映ですって。そっちは正直あまり見たくないかも... 絶対絶対イメージを崩して欲しくないシリーズなので!


+シリーズ既刊の感想+
「彩雲国物語 はじまりの風は紅く」「彩雲国物語 黄金の約束」雪野紗衣
「彩雲国物語 花は紫宮に咲く」雪乃紗衣
「彩雲国物語 想いは遙かなる茶都へ」雪乃紗衣
「彩雲国物語 漆黒の月の宴」雪乃紗衣
「彩雲国物語 朱にまじわれば紅」雪乃紗衣
「彩雲国物語 欠けゆく白銀の砂時計」雪乃紗衣
「彩雲国物語 心は藍よりも深く」雪乃彩衣
「彩雲国物語 光降る碧の大地」雪乃紗衣
「彩雲国物語 藍より出でて青」雪乃紗衣
「彩雲国物語 紅梅は夜に香る」雪乃紗衣

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