Catégories:“2006年”

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ホラー小説大賞を受賞しているけど、それほどホラーではなく、むしろファンタジック、と聞いて興味を持ってた作品。その言葉を聞いた時に、私がまず思い出したのが朱川湊人さんだったんですよね。読んでみると、確かに朱川さん... しかも私がダントツで好きな「都市伝説セピア」に通じる雰囲気が...?! いやー、良かったです。この「夜市」という本には、表題作の「夜市」と「風の古道」という中編が2つ収められていて、私は最初「夜市」の方だけ読ませてもらったんですけど、「風の古道」も読みたくて、思わず本屋に走ってしまいました。(笑)

「夜市」は、異界が交わる場所に現れる、お金さえ出せば何でも手に入るという夜市の物語。夜市のイメージ自体はそれほど目新しくないかもしれないんですが、不思議で、ちょっと不気味で、やっぱり魅力的。静かな暗闇の中に、この夜市が鮮やかに浮かび上がってくるように感じられるのがいいんですよね。そして「風の古道」は、花見に行った公園で迷子になった少年が、不思議な道を教えてもらって家に帰り、その道のことが忘れられず... という物語。こちらも読んでいると絵が浮かびます。この道がいいんですよねえ。どちらかといえば、私はこちらの方が好きかな。どちらにしても、これがデビュー作なんてびっくり。
本当の怖いホラーは苦手なんですけど、こういう幻想的な作品は大好き。あっという間に異世界に引き込まれてしまいました。とは言っても、2作品とも異世界から抜け出せる保証はどこにもなくて、そういう意味では十分怖いんですけどね。
「都市伝説セピア」がお好きな方は、ぜひ読んでみて下さいませ~。(角川書店)


+既読の恒川光太郎作品の感想+
「夜市」恒川光太郎
「雷の季節の終わりに」恒川光太郎
「秋の牢獄」恒川光太郎

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滝沢馬琴による「南総里見八犬伝」を、浜たかやさんが児童書用に編集したもの。山本タカトさんの表紙絵に惹かれて、ずっと読んでみたかったんですけど、お正月にテレビドラマを見て、いてもたってもいられず読んでしまいましたー。1巻は「妖刀村雨丸」、2巻は「五犬士走る」、3巻は「妖婦三人」、4巻は「八百比丘尼」。

こうやって並べると凄いですね、壮観。実際に手に取ってみても、やはりこの表紙は美しかったです~。表紙だけでなく挿絵も山本タカトさんで、随所に登場人物画が挿入されているのが、またイメージを掴み易くていいんです。
私は子供の頃に他のリライト版を読んだだけで、原作の現代語訳なんてものは読んでないので、他のリライト版に比べてこれがどの程度のレベルなのか良く分からないんですが、解説によると、原作を六分の一から七分の一ほどに縮めてあり、後半部分はかなり思い切って割愛、ストーリーを単純で分かりやすくして、約400人と言われる登場人物も大幅に整理したのだそう。数多い敵役を整理して籠山逸東太に兼ねさせたり、原作にはいない人物を作り出したり、最後の決戦に犬江親兵衛を登場させるなど、エピソードを変えた部分も多々あるのだそうです。でもそういう違いがあっても、読み手がきちんと認識していればいいことですしね。(読者が必ず解説を読むとは限らないけど) おそらく八剣士や他の登場人物たちのそれぞれの性格も、原作よりも分かりやすく強調されているんでしょうね。正義の味方も悪役もそれぞれに個性的で、すごく楽しかったし面白かった! 児童書なので、さすがに字は大きいんですが、これは入門編にぴったりかと。という私もいずれは岩波文庫から出ている全10巻の現代語訳を読破したいなと思ってるのですが、この4冊で一通り満足してしまったので、ちょっと先の話になりそうです。(^^ゞ (偕成社)

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たったひとりでライラックの森に住んでいたユニコーンは、ある日自分がこの世で最後に残ったユニコーンだと知って驚きます。1つの土地にひとりぼっちで住むのが特性のユニコーンたちにとって、自分以外のユニコーンに会うことは稀。しかし不死ということもあり、自分の仲間が他にもいることを信じて疑っていなかったのです。ユニコーンは、自分以外のユニコーンがどうなってしまったのか知るために、森の外の世界へ。

なんて綺麗な物語なんでしょう。リリカルという言葉はこういう作品のためにあるんですね、きっと。他のユニコーンを探す旅という冒険物語と言ってもいいような内容なのに、読んでる間も読み終わった後も、その印象はあくまでも「静謐」。どこがどうとは言えないけど、なんだかすごく不思議なんです。確かにファンタジー作品なんですけど、他のファンタジー作品と同じジャンルに入れちゃっていいのかしら、という感じ。他の作品とはまた全然違う時間が流れているような気がしてきちゃいます。というよりも、神話を読んでるような感覚に近いかな。この透明感のある繊細な世界観も素晴らしい~。
それぞれに何かに囚われていて、自分が本当は何者なのか探し求めてる登場人物たちの中で唯一絶対的な存在で、異質だったと思えるのが主人公となるユニコーンなんですよね。でも物語が終わって自分の森に帰ろうとするこのユニコーンもまた、既に純粋な意味でのユニコーンではなくなっていて...。今回は表面的な流ればかり追ってしまったけど、奥を探れば色々と深い意味がありそうな物語です。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のピーター・S・ビーグル作品の感想+
「最後のユニコーン」ピーター・S・ビーグル
「心地よく秘密めいたところ」ピーター・S・ビーグル

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去年の暮れに出た、クラフト・エヴィング商會の吉田篤弘さんの2冊。「78」は、78回転の古いSPレコードにまつわる物語。そして「十字路のあるところ」は、題名の通り十字路を感じさせる6つの街の物語に、坂本真典さんの写真を合わせたもの。
どちらも吉田篤弘さんらしい世界なんですが、私としては「78」の方が断然好み。こちらには13の短編が収められていて、語り手も、舞台となる場所や時代も様々な物語が立体的に交錯していきます。登場する人物や小道具が次の物語へと繋ぐ役割をしていて、まるで物語同士が響き合っているみたい。こういうのは大好き。ほんと吉田篤弘さんらしいですね。読み終わった後も、またつらつらと読み返して余韻に浸っていました。
33回転や45回転のレコードは知ってますが、蓄音機や78回転のレコードというのは、私にとっては本来未知の世界。でも先日、古道具が好きな親戚の家に行ったら、古い蓄音機を修理したところだと言って、78回転のレコードをかけてくれたところだったんですよ。そんな風にとてもタイムリーにこの作品を読めたのも嬉しかったです。それに、物語の中に「SPは、空気を聴くためのものだから」「演奏者が盤に刻んだ音を聴きながら、同時にそれを繰り返し聴いてきた人たちが刻んだ『傷』の方も聴いている」という言葉が登場するんですが、これは私も(78回転ではないにせよ)33回転のレコードに感じていたこと。なんだか妙に幸せな気分になりました。(小学館・朝日新聞社)


+既読の吉田篤弘作品の感想+
「百鼠」吉田篤弘
「78」「十字路のあるところ」吉田篤弘
「という、はなし」吉田篤弘
「空ばかり見ていた」吉田篤弘
「それからはスープのことばかり考えて暮らした」吉田篤弘
「小さな男*静かな声」吉田篤弘
Livreに「フィンガーボウルの話のつづき」「つむじ風食堂の夜」「針がとぶ」の感想があります)

+既読のクラフト・エヴィング商會の感想+
「アナ・トレントの鞄」クラフト・エヴィング商會
「犬」「猫」クラフト・エヴィング商會プレゼンツ
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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色んなところに何度も書いてるので「もういい」と言われそうですが(^^;、私が小学校の頃大好きだった作家のベスト3は、「ナルニア」シリーズのC.S.ルイスと「指輪物語」のJ.R.R.トールキン、そしてエーリッヒ・ケストナー。でもケストナーは全部の作品を読みたいと思ったし、実際に全集を愛読していたのに、C.S.ルイスとトールキンに関しては「ナルニア」と「指輪物語」だけで、他の作品に手を伸ばそうと思ったことがなかったんですよね。あんなに好きで何度も何度も繰り返し読んでたのになぜなのかしらー、なんて今頃になって思ったりします。指輪物語の前段階の物語「ホビットの冒険」を読んだのも高校になってからぐらいだったし、それもそれほど積極的ではなかったような。
ということで、この短編集も初読みです。「農夫ジャイルズの冒険」「星をのんだかじや」「ニグルの木の葉」「トム・ボンバディルの冒険」が収録されています。「農夫ジャイルズの冒険」は、まるでヨーロッパに伝わる民話の1つのような物語。ユーモラスで風刺もたっぷり。「星をのんだかじや」はとても幻想的で美しい物語。「ニグルの木の葉」はキリスト教的な寓話。そして「トム・ボンバディルの冒険」は詩集。

ええと、それぞれに楽しかったんですが... やっぱり「指輪物語」とはスケールが違いますね。ってあんな長編と比べちゃダメですね。でも小粒な感じは否めませんが、やっぱり読んで良かったです。トム・ボンバディルと川の娘・ゴールドベリの馴れ初めの話も読めたし! 映画ではすっぱりと切り落とされてたんですが、実はトム・ボンバディルはお気に入りなので~。(これで訳者が瀬田貞二さんだったら言うことなかったのに) あとは、「星をのんだかじや」も好み。読んでいるとエルフたちの住むロスロリエンが蘇ってくるようだったし、ちょっぴり切ないラストでは最後の船出を思い出しました。そしてこの本、ナルニアシリーズの挿絵でも有名なポーリン・ダイアナ・ベインズの挿絵も素敵なんです。この人の絵の場合、カラーよりも白黒の方が雰囲気があって好き♪

やっぱりトールキンとルイスの作品は、今からでも一通り読んでみようっと。...もしかしたら、「指輪物語」も「ナルニア」も、自分の中でそれぞれが完璧な形として確立されてしまっていたから、あえて他の作品を読もうとは思わなかったのかもしれないなあ。なんて自己分析してみても... 今更?(笑) (評論社)


+既読のJ.R.R.トールキン作品の感想+
「農夫ジャイルズの冒険 トールキン小品集」J.R.R.トールキン
「妖精物語の国へ」「妖精物語について」J.R.R.トールキン
「シルマリルの物語」上下 J.R.R.トールキン
「ビルボの別れの歌」「指輪物語『中つ国』のうた」J.R.R.トールキン
「ブリスさん」「サンタ・クロースからの手紙」J.R.R.トールキン
「仔犬のローヴァーの冒険」J.R.R.トールキン
「ホビットの冒険」上下 J.R.R.トールキン
「指輪物語」J.R.R.トールキン
「サー・ガウェインと緑の騎士」J.R.R.トールキン
「終わらざりし物語」上下 J.R.R.トールキン

+既読の指輪物語関連作品の感想+
「トールキン神話の世界」赤井敏夫
「トールキンによる『指輪物語』の図像世界」W.G.ハモンド/C.スカル
「トールキン指輪物語事典」デヴィッド・デイ
「図説 トールキンの指輪物語世界 神話からファンタジーへ」デイヴィッド・デイ

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わー、楽しかった。大学の4年間が春夏秋冬の章に分けて描かれていく群像劇なんですけど、もうほんと読んでて自分の大学時代が懐かしくなっちゃうような作品でした。
大学生活の良さって、在学中ももちろん色々とあって楽しいんですけど、卒業して就職して社会に出て初めて実感できるものだと思うんですよね。もう思い出すだけで身悶えしてしまいたくなるような恥ずかしい思い出も含めて(笑)、全部懐かしくなっちゃったり。中学や高校時代と同じようなもののはずなんだけど、それでも大学の4年間はやっぱり特別だと思うし、そんな日々が鮮やかに切り取られている作品。(あ、でも懐かしんでなんていたら、きっとこの大学の学長に怒られちゃうのね・笑)
中心となる5人がそれぞれにいい味を出してるんですけど、特に、最初はただの変な人物だった西嶋が良かったです。もう最初登場した時は「何なんだコイツ」だったんですが、読み進めるうちに一番好きになってました。(笑) なんで氷の美女・東堂が西嶋に惹かれたのかも、やっと分かったわ。東堂、すごい眼力。そして最後の最後に「幹事役の莞爾」が言う台詞も良かった。「夏」の章の鳥井のエピソードだけは、ちょーっときつかったんですけどね。

それにしても今回は麻雀が登場ですか。雀荘には行ったことないんですけど、私も麻雀は子供の頃に父親に教え込まれて多少は知ってるので、そういう意味でも楽しめました。麻雀を全然知らなくても、それほど差し障りはないとは思うんですけどね。実は賭け事全般に結構強いんです、私。いや、まず実際にはしないんですが。(ということは永遠のビギナーズ・ラック? 笑)(実業之日本社)


+既読の伊坂幸太郎作品の感想+
「死神の精度」伊坂幸太郎
「魔王」伊坂幸太郎
「砂漠」伊坂幸太郎
「終末のフール」伊坂幸太郎
「陽気なギャングが地球を回す」「陽気なギャングの日常と襲撃」伊坂幸太郎
「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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石堂藍さんの「ファンタジー・ブックガイド」に紹介されていて興味を持った異世界ファンタジー。「水の都の王女」と「神の住む森」がそれぞれ上下巻になっていて、題名は違うんですけど、完全な続編。逆に言えば、4冊読まないと完結しない作品。

異世界ファンタジーって、いかに魅力的な世界を構築するかがポイントだと思うし、もう既に色んな世界が描かれてきていると思うんですけど、その中でもこの作品の世界観は独特。しかもその奥行きの広さにはびっくりしました。例えば、この世界では北方の山岳地帯ではあらゆるものに神が宿っているのに、南の方では大河の神という唯一の神しか存在しないんですよね。宗教として一神教を信じていたり多神教を信じていたりというんじゃなくて、実際に北には様々な神が存在していて、南には大河の神1人だけなんです。しかもその大河の神の力が強大で、北方の神々を日々飲み込み食べ尽くしていってしまうという...。でもだからといって、大河の神が悪だと簡単に決めつけられられるわけではないんですよね。この辺りがすごく深いんです。
そしてそんな神々同士の争いに巻き込まれてしまったのが、北から来た青年・ペルカルと、南の水の王国の王女・ヘジ。主に彼ら2人の視点から物語は進んでいきます。このヘジや彼女の周囲の人間もすごく魅力的。でもねえ、もう一方のペルカルが... 悪気はないけど、すぐに仲間を危険に陥れちゃうし、良かれと思ってしたことでも裏目に出てしまうような青年なので、なかなか感情移入ができなくて、その辺りは少し辛かった。でもやっぱりこの世界観は凄いです。ファンタジー・ブックガイドに選ばれるのも納得なのでした。(ハヤカワ文庫FT)

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