Catégories:“2006年”

Catégories: / /

 [amazon]
現場には行かず、話を聞くだけで事件を解決してしまう探偵を安楽椅子探偵と言いますが、これは文字通り、家具としての安楽椅子が名探偵になっちゃって...?! という安楽椅子探偵アーチーシリーズの2作目。今回は、「オランダ水牛の謎」「エジプト猫の謎」「イギリス雨傘の謎」「アメリカ珈琲の謎」というエラリー・クイーンばりの国名シリーズの連作短編集となっています。

1作目を読んでからもう3年経ってるので、前のを覚えてるかちょっと不安だったんですが、心配は無用でした。もうアーチーは相変わらずですしね。椅子の持ち主の及川衛との会話は、以前同様の「おじいちゃんと孫」っぷり。野村芙紗は、塾通いを始めたせいで、前回ほどの登場ではないんですけど、代わりに前作でも登場していた鈴木さんが来たりして、この鈴木さんとアーチーがまた好一対。2人の会話が楽しいです。そして芙紗が本格的に登場してからは、衛がとっても微笑ましかったり。
どれも楽しい作品でしたが、今回私が特に気に入ったのは、衛と芙紗、そして衛のお父さんの3人が近所にできたインド料理のレストランに行って、そこで奇妙な出来事に遭遇するという「インド更紗の謎」。その店は、衛のお父さんがものすごく信頼しているインターネットの横浜限定のグルメサイトが褒めてるという店なので、お父さんの思い込みが楽しくて。現実的なお母さんにロマンティックなお父さん、という設定がとても生かされていて、不憫なお父さんを応援したくなりました。本当の結末とのコントラストもいいですね。 (東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+
「安楽椅子探偵アーチー」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美

+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

| | commentaire(0) | trackback(1)
Catégories: / /

4150200580.jpg [amazon]
豊かな平野にあるドリメア自由国は、西の境は妖精の国と隣接している国。しかし革命が起き、商人階級が当時の支配者・オーブリ公爵に取って代わってからというもの、2国間の交流はすっかり途絶え、魔法や空想の類に関すること、特に「妖精」という言葉はドリメア国では禁句とされていました。しかしそのドリメア国の首都、霧のラッドで一番の名士、チャンティクリア判事の長男・ラナルフが、妖精国の「魔法の果実」を食べたと告白したことから、大騒ぎになります。

解説によれば、作者はアイルランド系英国人とのこと。(どうやらトールキンやルイスと同時期にオックスフォードで教鞭を取っていたこともあるらしいです) 道理で物語全体がとてもケルト風の雰囲気でした。でも、思いっきり妖精の存在を感じさせるような舞台設定にも関わらず、そういった存在自体は、逆になかなか登場しないんですよね。その辺りが独特。しかも妖精にまつわる言葉や妖精を彷彿とさせる言葉は、登場人物たちにとって禁句となってるはずなのに、「太陽と月と星に誓って」「西の国の黄金の林檎に誓って」なんて、いかにも妖精の国の影響が見える決まり文句が頻繁に飛び出すところが可笑しいのです。
登場人物たちは大真面目に現実的な生活を生きようとしていて、中盤には過去の殺人事件の調査なんてミステリ的展開もあって、その辺りはきっちりと白黒はっきりするんですけど、それでもやっぱり最終的にはファンタジー的環境には逆らえず... その辺りの微妙な感じが面白かったです。(ハヤカワ文庫FT)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / / / / /

  [amazon] [amazon]
「マビノギオン」は、イギリスのウェールズ地方で吟遊詩人たちによって伝えられてきた叙事詩。その後、「ヘルゲストの赤い本」「レゼルッフの白い本」といった本に書き残されることになり、それらに収められた11編の物語が、19世紀になって初めてシャーロット・ゲストによって英訳され、「マビノギオン」という題名で広く知られるようになったのだそうです。
左の「マビノギオン」は、中野節子さんがウェールズ語から日本語へと直接訳したという初の完訳本。右はシャーロット・ゲストが19世紀に英訳した本にアラン・リーが挿絵を描いたのを、井辻朱美さんが日本語に訳したというもの。こちらには、ウェールズに広く流布していたという「タリエシン」という短い物語も収められています。

11編のうちの最初の4編は、まさに超自然的なケルト神話の世界。そこから徐々に現実的な物語へと移り、後半になると、後にアーサー王伝説を作り上げることになる騎士道物語になっていきます。ただ、アーサー王自身も登場するし、アーサー王の宮廷の様子も垣間見えるんですけど、むしろ騎士たちのエピソードが中心なんですよね。ここには魔術師マーリンも登場しませんし(これが残念)、アーサー王自身のエピソードもほとんどありません。
この2冊、内容的にはほぼ一緒なんですが、ウェールズ語からの直接の翻訳と、英訳からの翻訳ということもあって、固有名詞の表記が結構違うんですよね。あとシャーロット・ゲスト版ではまるっきり書かれていなかったり、表現がぼかされてる部分が目につきました。例えば「ダヴェドの大公プイス」(シャーロット・ゲスト版では「ダヴェドの王子プウィル」)では、大公プイスとアラウン王がお互いの立場を密かに入れ替えて1年間過ごすというエピソードがあるんですけど、アラウン王が許可(?)してるのに、プイスは絶世の美女であるアラウン王の妃の体には触れようとしないんです。それが後に友情をさらに強くすることにもなるんですが、シャーロット・ゲスト版では、その辺りがまるっきり欠落してました。こういうのって、18~19世紀のモラルによるものなのかしら? 同じく18~19世紀の作家トマス・ブルフィンチの著作でも、性的な部分が色々と欠落してると聞いた覚えが...。
中野節子さんの日本語訳は、平易で読みやすいです。井辻朱美さんの訳は、わざと古めかしい日本語にしているので、慣れるまでがちょっと読みにくかったんですが、雰囲気はたっぷり。「蒼天なんじに報いたまわんことを」といった感じですね。どちらの本がオススメかといえば、ちょっと難しいですが... シャーロット・ゲスト版の方が美麗な挿画も入っているし、固有名詞の訳でも一般的な名称を使ってるので、純粋に物語として楽しむにはいいかも。(例えばアーサー王に関して、井辻訳では「アーサー」と表記してますが、中野訳では「アルスル」なんです) でも中野訳の方には詳細な解説や、人名や地名の一覧がついているので便利なんですよね。一長一短かな? 私にとっては、どちらも読んで正解でした。(JULA出版局・原書房)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: /

[amazon]
3編が収められたアンソロジー。ローマ皇帝の前に現れたのは、ギリシャ人発明家のパノクレス。彼は新発明を皇帝に説明し、実際にどんどん作り上げていくのだが... というウィリアム・ゴールディングの「特命使節」。目が覚めた「わたし」がいたのは、女性だけの世界。周囲の状況も自分が何者なのかも思い出せない「わたし」がパニックに陥る、ジョン・ウィンダムの「蟻に習いて」。少年城主の14歳の誕生日、煩雑な儀式にこれ以上耐えられないと感じた少年は城からの脱出を考え始め... というマーヴィン・ピークの「闇の中の少年」の3作。

いやあ、面白かったです。なんでこの3作の組み合わせになったのかはよく分かりませんが、元々アメリカでアンソロジーとして出版されていた本をそのまま訳して、ハヤカワ文庫FTから出したみたいです。副題は「ファンタジイ傑作集3」。1と2は子供向けのおとぎ話みたいな作品が多かったので、(感想)、3でいきなり大人向けになってびっくり。

最初の「特命使節」は、「蝿の王」で有名なウィリアム・ゴールディングの作品。とは言っても、私は「蝿の王」も他の作品も読んでないんですが...。ローマ時代に圧力鍋だの蒸気船だの大砲だのを考案してしまう発明家の話は、実際にはあり得ないと分かっていても面白いー。パノクレスが発明するのは、後世になれば確かに役に立つ物ばかりだし、皇帝自身もそれらの真価は分かってるんですけど、科学や技術の発展が人間の幸せに直結するとは限らないという話。
ジョン・ウィンダムも有名なSF作家だそうなんですが、私は名前を聞くのも初めて。男性が滅亡した未来の世界では、過去の歴史が微妙に歪んで伝わっていて、みんな女性だけの社会に満足しきってます。だから主人公が、男性の必要性や男性との生活の素晴らしさを説こうとしても、何も伝わらないし、理解もしてもらえません。そういう考えになったのは、男性にそう思い込まされていただけ、とあっさり片付けられちゃう。主人公の女性の歯痒さが伝わってくるんですが、同時に過去や現代の歴史が本当に自分が思ってる通りなのか、改めて考えさせられる作品。
「闇の少年」は、「ゴーメンガースト」の外伝とも原型とも言えそうな作品。ここに登場する少年城主は、名前は出てこないんですけど、きっとタイタスなのでしょう。城から脱出したタイタスが出会うのは、かつて人間だった山羊とハイエナ、そして彼らの主人である子羊。でも子羊といえば、キリスト教ではイエス・キリストにもなぞらえられるような存在なんですよね... きっとそういう前提があってこその話なんじゃないかと思います。この子羊が、限りなく邪悪な存在で、しかも甘美な声の持ち主というのが、何とも言えません...。(ハヤカワ文庫FT)

| | commentaire(4) | trackback(0)
Catégories: / /

[amazon]
市の参事官・アージオの書記として、朝から晩までせっせと書類を書き写しているグントラム・は、毎日の味気ない仕事の連続にうんざり。そんなある日、グントラムは年上の書記・ブーボに話しかけられて驚きます。ブーボは天涯孤独だと思い込んでいたグントラムに、実は裕福な親類がいることを明かし、窓から入ってきたスズメをグントラムの姿に変えてグントラムの仕事をさせると、グントラムにスズメの姿になって田舎の親類の元まで飛んでいくようにと勧めたのです。

登場人物たちが、本物の人間なのか本当は鳥なのか分からなくなってしまう可愛らしいファンタジー。以前読んだ「あべこべの日」(感想)は、正直あまり面白くなかったんですけど、こちらは結構楽しかったです。正義が勝つわけでもなく、努力する者が報われるわけでもなく、だからといってハッピーエンドにならないわけでもなく、ファンタジーやおとぎ話の文法を無視したような、あと一歩捻るのか捻らないのか予測不能な展開がいいのかも。...とはいえ、読み終わった途端に忘れてしまうような話でもありましたが...。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のハンス・ファラダ作品の感想+
「あべこべの日」ハンス・ファラダ
「田園幻想譚」ハンス・ファラダ

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: /

  [amazon] [amazon]
ケリゴールが閉じ込められてから14年。サブリエルとタッチストーンによって敵が一掃されたはずの古王国で、今またネクロマンサー(死霊使い)たちの動きが活発になってきていました。そしてクレア氷河の奥では、父を知らず、10歳の時に母も失ったライラエルが絶望していました。ライラエルはクレア族特有の明るいブロンドと青い目、浅黒い肌の代わりに、黒い髪に茶色い目、そして青白い肌の持ち主。それだけでも浮き上がっているのに、14歳の誕生日を迎えても、まだクレア族特有の「先視の力」が発現しなかったのです。今また11歳になったばかりの少女に抜かされたことを知ったライラエルは、自ら命を絶つことを考えて、1人氷河の上に向かう階段を上り始めます。

古王国記シリーズの第2作。「サブリエル」(感想)の続きです。
今回もサブリエルやタッチストーンは登場しますが、主人公としてはライラエルと古王国のサメス王子。あっさり世代交代してしまいました。それもそのはず、2巻が始まった時点で、王国では既に「サブリエル」の時から14年経ってるんですね。主な物語に至っては19年後。
物語はライラエルとサメス王子の視点から交互に語られていきます。先視の力が得られないせいで、一度は自殺を考えながらも、図書館での仕事をもらって、「不評の犬」という仲間もできて、どんどん生き生きとしてくるライラエルが楽しいパートに対して、サメス王子の情けなさは鼻につく! 序盤で冥界に入っていった時のことがトラウマになってしまっているのは分かるんですけど、それにしても自分の生まれに甘えているとしか思えなーい。義務を放棄して、ひたすら自分の世界に閉じこもってるし、両親が帰ってきたらあれを言おうこれを言おうなんて思ってたことも、いざ帰ってきたら何一つ言えないまま。2人のパートのバランスが、あまりにも取れていないように感じられてしまうのですが...
でも先視の力を授かるのが遅ければ遅いほど強い力を得られることが多いように、悩みが大きければ大きいほど、自分探しに手間取れば手間取るほど、一旦迷いを捨てれば強いもの。2巻から3巻へは直接繋がっているようなので、そちらの展開もとても楽しみ。これはいつ文庫になるのかしら? 図書館でハードカバーを借りてきちゃおうかなあー。(主婦の友社)


+シリーズ既刊の感想+
「サブリエル 冥界の扉 古王国記I」上下 ガース・ニクス
「ライラエル 氷の迷宮 古王国II」上下 ガース・ニクス
「アブホーセン 聖賢の絆 古王国記III」上下 ガース・ニクス

| | commentaire(6) | trackback(1)
Catégories: / / /

  [amazon] [amazon]
石造りの城・ゴーメンガーストの周囲には<外>の民のあばら家が、貝がらのようにびっしりと張り付いており、それがこの世界の全て。そのゴーメンガーストの現当主は76代目のセパルクレイヴ。城での生活は、数限りない儀式によって支配されており、老書庫長のサワダストだけがただ1人、それを理解し取り仕切っていました。そしてその日の朝、77代目伯爵となる菫色の瞳をしたタイタスが生まれます。

先日「行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙」の感想で読みかけだと書いたゴーメンガースト3部作、最初の2冊をようやく読み終わりました。
これはトールキンの「指輪物語」と並んで、20世紀のファンタジーの最高峰と言われている作品なのだそう。でもその雰囲気は、正反対と言ってもいいほど違うんですね。「指輪物語」は、その後のファンタジー作品に多大な影響を与えてるし、実際追随する作品がとても多いんですけど、こちらの作品はとにかく独特。並大抵の作家じゃあ、こんな作品に追随する作品なんて書き上げられないんじゃないかしら。全編、陰鬱で重厚な雰囲気。暗くて重苦しいゴーメンガースト城の情景が、質感も含めて、周囲に浮かび上がってくるよう。しかも登場人物たちがまた、揃って個性的... というかアクが強いんです。どうやら美しい人間は1人もいないようで、それぞれに醜さが強調されてるんですけど、それが作品の雰囲気と相まって、ものすごく印象的なんですよね。マーヴィン・ピーク自身による挿絵も異様な雰囲気を醸し出してました。そしてこの作品、展開がとても遅いです。シリーズを通して、主人公は多分タイタスだと思うんですけど、1冊目が終わった時点で、まだ2歳ですから。(笑) でもその展開の遅さが逆に、ゴーメンガースト城をめぐる悠久の時の流れを感じさせます。
きっと絶賛する人は絶賛するんでしょうねー。という私は、絶賛というほどではなかったです。が、それでも読んでから時間が経てば経つほど、場面ごとの印象が鮮明になりそうな作品ではありました。でもとにかく読むのにパワーが... 本当は3冊まとめて感想を書きたかったんですけど、3冊目はやっぱりもうちょっと時間を置いてから読むことにします。ちょっとぐったり。(創元推理文庫)


+既読のマーヴィン・ピーク作品の感想+
「行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙」マーヴィン・ピーク
「タイタス・グローン」「ゴーメンガースト」マーヴィン・ピーク

| | commentaire(2) | trackback(0)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.