Catégories:“2006年”

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「僕」がかつて見た中で最も美しいマシン、アイビスに出会ったのは、数世紀前ヒトが繁栄していた頃は「新宿」と呼ばれていた、今は無人の寂しい場所。「僕」はアイビスを攻撃しようとするのですが、逆に攻撃を受けて足を脱臼。見知らぬ建物に収容されて怪我の治療を受けることに。そこでアイビスは「僕」に向かって、1つずつ物語を語っていきます。

人間の数はごく少なくなり、意思を持ったロボットが支配する世界が舞台の物語。私にしては珍しくSFの作品なんですけど、これは頂き物なので...。(笑) 読む前は大丈夫かなとちょっとどきどきしてたんですけど、面白かったです~。
アイビスが「僕」に語る物語は全部で7つ。最初はどこかで聞いたような普通の話なんです。インターネットの仮想世界を舞台にした、いかにもありそうな話。でも1つずつ話が進むにつれて、中のAIはどんどん進化していくし、物語自体も深みを増していくような。最初は普通のSF短編集にちょっと外枠をくっつけて繋いでみましたって感じだったのに、最後まで読んでみると、バラバラだった短編同士が繋がっていくように感じられて、しかもおまけっぽかった外枠は、いつしかきちんとメインになっていました。

アイの見せるアンドロイドの姿は、ある意味人間の理想の姿。でも理想ではあっても、人間には決してなることのできない姿。人間が作り出したもののはずなのに、全然違うんです。人間の欠点を認識しつつも、何も言わずに見守る彼らの姿が、とても優しいんですよねえ。それなのに、自分たちの姿を投影し、ありもしないことを思い込み、勝手に疑心暗鬼に陥る人々。これを読んでしまうと、人間が衰退していくのも当然の結末に思えてきちゃう。でも、人間の欠点や愚かさを目の当たりにさせられつつも、どこか幸せな気分になれるのが不思議なところ。暖かい気持ちで読み終えることができました。熱心なSFファンには、これじゃあ物足りないかもしれないし、私自身、どこかもう少し掘り下げて欲しかった気もするんですけど... でもとても面白かったです。
それにしても、「クラートゥ・バラダ・ニクト」って、何なんだろう。どこから出てきた言葉なのかしら? 逆に読んでみても... 意味ないし。と思っていたら、「地球の静止する日」という映画に出てくる秘密の呪文だったんですね。なるほど~。(角川書店)


+既読の山本弘作品の感想+
「アイの物語」山本弘
Livreに「神は沈黙せず」の感想があります)

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スペインの黄金時代。自分の死期を悟ったアルゲント・アレスの領主は、自分自身で何かを勝ち取る力のない次男に土地を残し、長男のロドリゲスにはカスティーリャの古い長剣とマンドリンを遺すことに。父の葬儀を終えたロドリゲスは、剣を佩きマンドリンを背負うと、父の言葉に従って戦さを求めて旅に出ます。そして途中の宿屋で出会ったモラーノも、ドン・ロドリゲスに同行することに。

今はない月刊ペン社の妖精文庫に入っていた時の題名は、「影の谷年代記」。この妖精文庫というのが、当然のようにことごとく絶版なんですけど、気になる作品が多いんですよねえ。いくつかはちくま文庫などで復刊されていて、私も読んでるんですが、もっと(文庫で)出してくれないかなと思ってるシリーズ。
訳者あとがきに、この「影の谷物語」がセルバンテスの「ドン・キホーテ」を意識的にモデルにしているようだと書かれていたんですが、私もそれはすごく感じました。ロドリゲスはドン・キホーテだし、モラーノはサンチョパンサ、セラフィーナはドゥルシネーアといった役回り。ロドリゲスはドン・キホーテほど滑稽な人物ではないんですけどね。むしろ非常に真面目。着実にやるべきことを果たして、一番の望みを叶えますし。とは言っても、私は「ドン・キホーテ」をきちんと読んだことがないんですよね。読んでいたら、もっと色々と分かったんでしょうに、悔しいなあ。
ダンセイニらしく物語は淡々と進みます。主人公は一応ロドリゲスだと思うんですが、この作品ではモラーノがすごく魅力的。常にフライパンを大切に持ち歩いて、朝食になるとベーコンを焼くモラーノ。ロドリゲスがドン・アルデロンと戦っている時にとる行動なんて、思わず笑ってしまうほど。純朴で真っ直ぐな愛すべき田舎者です。 (ちくま文庫)


+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ
「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ
「牧神の祝福」ロード・ダンセイニ

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行方不明の伯父から甥に届いた手紙。それは、かつてイギリスを捨てて旅に出て、今は北極にいるという伯父が突然書いてよこしたもの。伯父さんは、雪原の帝王である幻の白いライオンを追い求めているというのです。

本当は「ゴーメンガースト」シリーズに取り掛かっているんですが、全3冊のうち、今2冊目の途中。これはものすごく重厚... というか暗くて重苦しくいファンタジー。こういうのをゴシック・ファンタジーというのかなあと思いつつ、分類には疎いのでよく分からないのですが... ちょっと疲れたので、そちらを中断して同じマーヴィン・ピークのこちらの本を読んでみました。
表紙の画像を見てもいい感じだと思ってもらえると思うんですが(オレンジの地に白抜きになってるのが、幻の白ライオンの絵がついた切手)、中身もいいです。要するに絵入りの手紙集なんですけど、これが凝ってるんですねー。本を開くとまず目にうつるのが味のある鉛筆画。左脚を失った代わりにメカジキのツノをつけている伯父さんの絵や、助手の亀犬・ジャクソンの絵、他にも動物たちの絵が沢山。この絵を描いたのはマーヴィン・ピーク自身なんです。そしてそんな絵を背景に、伯父さんからの手紙。タイプライターで打った紙を絵の余白に切り貼りしていたりして、芸が細かい! しかも伯父さんの使ってるタイプライターが古いので、文字によって太さも濃さもまちまちで、沢山ある誤字脱字が頻繁に訂正されていたり、手書きの説明が余白に記入されていたりするのが、日本語で再現されているんです。(原書ではどんな感じなのか見てみたい) その手書きの文字がまた汚い字なんですけど、雰囲気にぴったりなんですよね。いかにもこの伯父さんが書きそうな字。そして時には、手紙にコーヒーや肉汁、血の染み、足跡、指紋が...。(血の染みだけはあまりリアルじゃなかったけど)
手紙を受け取った甥の反応などはまるで分からないんですけど、こういう手紙を受け取ったら、やっぱりワクワクしちゃうでしょうね。陰鬱な「ゴーメンガースト」からは想像できないような、ユーモアたっぷりの冒険話。絵はいっぱいあるけど、絵本ではないです。意外と読み応えがあってびっくりでした。(国書刊行会)


+既読のマーヴィン・ピーク作品の感想+
「行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙」マーヴィン・ピーク
「タイタス・グローン」「ゴーメンガースト」マーヴィン・ピーク

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以前にも「トールキン指輪物語事典」を読んだんですが(感想)、デイヴィッド・デイは、有名なトールキン研究家らしいです。ギリシャ神話や北欧神話、ケルト神話、アトランティス伝説、ベーオウルフやアーサー王など世界の神話や伝承、そして聖書の世界と、トールキンの作り出した指輪物語の世界を比較研究した本。

「シルマリルの物語」のメルコールの造形が堕天使ルシファーにそっくりだとか、ヌメノールの没落がまるでアトランティスみたいだとか、そういうのに気づく人は多いと思うんですが、この本によると実は逆! そういう既存の神話や伝承に影響を受けたのではなくて、トールキンが作り出そうとしたのは、それらの神話や伝承が生み出されてくるための背景となる歴史だった、というのが面白かったです。例えば、「シルマリルの物語」では、中つ国で目覚めたエルフたちが、ヴァラールたちによって西に来るように言われ、実際かなりの数のエルフは西へと渡っていくんですけど、最初から行くつもりのなかったエルフたちもあれば、行くつもりだったのに出遅れたエルフたちもあり、結局行けず仕舞いだったエルフたちもいるんです。なんでこんな複雑なことするんだろうと思っていたら、どうやら古代アングロサクソン人や初期ゲルマン人などに伝わるエルフ信仰に、うまく対応させようとしたみたいですね。「シルマリルの物語」で色々な動きを書くことによって、様々なエルフ伝承に一貫性を与えようとしたんですって。そうだったんだ! それから、単純明快なおとぎ話となってしまった出来事にも、背後に存在していたはずの歴史を作り出そうとしていたとか。たとえば、ロスロリアンの黄金の森にいるガラドリエルとアルウェンという2人の美女、深い森や魔法の鏡などの要素は、「白雪姫」にみられるもの。実際にはガラドリエルとアルウェンは対立関係にはないんですが、そういうことが元になって「白雪姫」の話が出来ていったとしているのだとか。そして、本当に眠っていたのは、白雪姫ではなく7人の小人。ヴァラールのマハルの作り出したドワーフの父祖の7人であったとか... へええ。
あと、ホビット庄が、トールキンが生まれ育ったイギリスの田園地帯とすれば、裂け谷はオックスフォード、ゴンドールとミナス・ティリスはフィレンツェの辺り、モルドールはオスマントルコとか、地理的な考察も面白かったです。そっかー、初期のドゥネダインの王国は古代ローマ帝国で、分裂してしまった帝国を再統一したアラゴルンは、シャルルマーニュ(カール大帝)だったのか。そして中つ国に神聖ローマ帝国が再建されたのね。(笑)(原書房)


+既読のJ.R.R.トールキン作品の感想+
「農夫ジャイルズの冒険 トールキン小品集」J.R.R.トールキン
「妖精物語の国へ」「妖精物語について」J.R.R.トールキン
「シルマリルの物語」上下 J.R.R.トールキン
「ビルボの別れの歌」「指輪物語『中つ国』のうた」J.R.R.トールキン
「ブリスさん」「サンタ・クロースからの手紙」J.R.R.トールキン
「仔犬のローヴァーの冒険」J.R.R.トールキン
「ホビットの冒険」上下 J.R.R.トールキン
「指輪物語」J.R.R.トールキン
「サー・ガウェインと緑の騎士」J.R.R.トールキン
「終わらざりし物語」上下 J.R.R.トールキン

+既読の指輪物語関連作品の感想+
「トールキン神話の世界」赤井敏夫
「トールキンによる『指輪物語』の図像世界」W.G.ハモンド/C.スカル
「トールキン指輪物語事典」デヴィッド・デイ
「図説 トールキンの指輪物語世界 神話からファンタジーへ」デイヴィッド・デイ

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「指輪物語」の世界にまつわるJ.R.R.トールキンの遺稿を、息子のクリストファー・トールキンが編纂したもの。
決して完全なものではないですし、むしろ断片的で矛盾を感じる部分も沢山。あの完全主義のトールキンのこと、生きている間だったらまず発表しないような段階ですし、実際クリストファーも、父親が生きていたら「本書に載せた物語のうち比較的仕上がっているものでも、さらに十分な手を加えた後でなければ、人目にさらすなど思いもよらなかっただろう」と書いています。でもそういう矛盾点すら、その神話的世界の真実味を増しているように思えるんですねえ。というのは、ファンの欲目でしょうか。(笑)
上巻は「シルマリル」の時代の物語が多くて、実際「シルマリルの物語」で読んだものと重なる部分も多かったんですが、下巻になると「指輪物語」に直結するエピソードが多くなります。そもそもガンダルフがなぜビルボに目をつけたか、という「ホビットの冒険」の裏話のような話があったり、裂け谷でのエルロンドの会議でガンダルフが語った指輪の歴史をもっと詳しくしたものがあったり。さらにガンダルフやサルーマンといった「イスタリ」(魔法使い)についてや、遠くを見ることができる石「パランティーア」についての文章も。

小説として読むには断片的すぎると思いますが、これを読むと「指輪物語」世界がさらに広がり、深くなります。刊行された当初は、あまり読む気がしなかったんですけど、やっぱり読んで良かった。あ、先に「シルマリルの物語」は読んでおいた方がいいと思いますし、「シルマリル」を楽しめた人限定でオススメなんですけどね。ということで、トールキンはコンプリート。指輪物語関連は、あと1冊関連本を読もうと思ってますが、それで一区切りかな。やっぱり楽しいです、この世界は♪(河出書房新社)


+既読のJ.R.R.トールキン作品の感想+
「農夫ジャイルズの冒険 トールキン小品集」J.R.R.トールキン
「妖精物語の国へ」「妖精物語について」J.R.R.トールキン
「シルマリルの物語」上下 J.R.R.トールキン
「ビルボの別れの歌」「指輪物語『中つ国』のうた」J.R.R.トールキン
「ブリスさん」「サンタ・クロースからの手紙」J.R.R.トールキン
「仔犬のローヴァーの冒険」J.R.R.トールキン
「ホビットの冒険」上下 J.R.R.トールキン
「指輪物語」J.R.R.トールキン
「サー・ガウェインと緑の騎士」J.R.R.トールキン
「終わらざりし物語」上下 J.R.R.トールキン

+既読の指輪物語関連作品の感想+
「トールキン神話の世界」赤井敏夫
「トールキンによる『指輪物語』の図像世界」W.G.ハモンド/C.スカル
「トールキン指輪物語事典」デヴィッド・デイ
「図説 トールキンの指輪物語世界 神話からファンタジーへ」デイヴィッド・デイ

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「一瞬の風になれ1 イチニツイテ」(感想)の続編。

1巻でお馴染みになった登場人物たちが、さらに生き生きと動き回ってます。新二や連も2年になって後輩が入部してくるし、部員たちの絆もますます深まるし、部長の守屋を慕っている部員たちの様子もいい感じ。1巻ではまだまだ半人前だった新二も、ここではもうすっかり立派な陸上部員となっていました。なんだかんだ言って、連もちゃんとやってますしね。
でもね、終盤のアレはどうなんでしょう...。ここでそういう展開にはして欲しくなかったなあ。なんでそんなことにしたのか解せないし、相当の理由じゃないと納得もしたくないぞ。...ということで、最終巻が待たれます!(って、もう出てるんだよね) (講談社)


+シリーズ既刊の感想+
「一瞬の風になれ1 イチニツイテ」佐藤多佳子
「一瞬の風になれ2 ヨウイ」佐藤多佳子
「一瞬の風になれ3 ドン」佐藤多佳子

+既読の佐藤多佳子作品の感想+
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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ということで、昨日に引き続きのメアリ・ド・モーガン。3冊続けざまに読んだらさすがに飽きるかなと思ったんですが、全然飽きなくて逆にびっくり。昔ながらの神話や伝承、童話の中に紛れ込んでいてもおかしくないような物語だったり、「あ、これファージョンみたい」とか「イワンのばかにありそうな話だ~」なんて思いながら読んでたんですけど、でもやっぱりメアリ・ド・モーガンの世界でした。昔ながらの童話には、お約束というか暗黙の了解的部分があると思うんが、彼女の作品はそれをちょっと外してるんですよね。その違いが、一見ちょっとしたズレのようなんだけど、実は大きいような気がします。インパクトからいけば、昨日の「フィオリモンド姫の首かざり」の方が強かったし、私は好きだったんですが、こちらの2冊も良かったです。
今度の2冊の中で一番印象に残ったのは、「針さしの物語」の中に収められている「おもちゃのお姫さま」。礼儀正しいあまりに感情を表すことはおろか、必要最低限の言葉しか口にすることのできない国が舞台の物語。その国で生まれたウルスラ姫は、思ったことを何も言えない生活に息が詰まりそうになっているんですが、亡き母の名付け親だった妖精に救われるんです。妖精は「どうぞ」「いいえ」「はい」「たしかに」の4つの言葉しか話せない人形を身代わりに置いて、本物の姫は別のところに連れて行っちゃう。で、姫はようやく息がつけるんですが... 最後に、王国の人々が本物の姫か偽物姫かを選ぶ場面があるんですよね。いやー、すごいです。こんなことでいいのか!と思ってしまうんですけど... でも双方幸せなら、結局それでいいのかなあ。(笑)(岩波少年文庫)


+既読のメアリ・ド・モーガン作品の感想+
「フィオリモンド姫の首かざり」ド・モーガン
「風の妖精たち」「針さしの物語」ド・モーガン

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Note


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