Catégories:“2007年”

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そこにある古い石の壁が名前の由来となっているウォールの町。壁のただ1つの穴の向こうには妖精の国が広がっており、普段は誰も抜け出せないように、穴には見張りがつけられています。しかし9年に1度の5月1日、壁の向こうの草原に市が立つ日だけは、見張りも警戒を緩める日。そしてトリストラン・ソーンは、そんな市の日に人間の父が妖精の母に出会ってできた息子。17歳になったトリストランは、その界隈で一番の美人のヴィクトリアのために、一緒に見た流れ星を拾ってくる約束をして、壁を抜けて妖精の国へと向かうことになるのですが...。

頂き物です。
訳者あとがきには、「ハリー・ポッター」は「子ども向けだけど、大人も楽しめる」作品で、こちらの「スターダスト」は「大人向けだけど、子どもも楽しめる」と書かれてたんです。でも、実際に読んだ印象としては「ハリー・ポッター」よりも子供向けのファンタジーという印象。確かにアダルト~な場面もあるんですけど、それさえなければ、児童文学として読んだ方が楽しかったと思うんですけよね。読み方を間違えちゃったかも...。町と隣り合わせに妖精の国があるという設定は好きだし、9年ごとに開かれる市というのもソソるところ。これで旅がもっと波乱万丈でじっくり書き込まれてたら、もっと面白かったはずなのに、比較的あっさりとおわっちゃってびっくり。小説というよりも、むしろ映画のノベライズを読んでるような感じでした。この作品は、実際映画化されてるそうなんですけどね。ニール・ゲイマンは作家であると同時に脚本家でもあるそうだし、この作品も最初から映画のための書かれ方をしているということなのかな?
訳者あとがきに書かれているように、「ちょっと初々しく、ちょっとストレートで、ちょっとほほえましく、ちょっとはにかみがちで、思いっきりロマンチック」な作品。ニール・ゲイマンって、今ものすごく人気がある作家さんなんですってね。イギリスやアメリカでは、ちょっとしたタレント並みの人気みたい。調べてみると、「コララインとボタンの魔女」とか「ネバーウェア」とか「アナンシの血脈」とか面白そうな作品があるようなので、ちょっとチェックしてみようと思います。(角川文庫)


+既読のニール・ゲイマン作品の感想+
「スターダスト」ニール・ゲイマン
「コララインとボタンの魔女」ニール・ゲイマン

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お目当ては、光原百合さんの「写想家」。これは潮ノ道幻想譚のシリーズ最新作で、今回登場するのは、フォトアーティストの菊川薫。
この「フォトアーティスト」というのが、実は... ふふふ。題名も「写真家」じゃなくて「写想家」ですし。読む前は、何だろう? って思ったんですが、読んでみるとその意味がすごく分かる! 撮った写真、実物を見てみたいなあ。...とも思ったんですが、文章から具体的なイメージが目の前に浮かび上がってきたので、やっぱり見せてもらわなくてもいいかも。(笑)
この作品は、今回シリーズの5作目。毎回少しずつ不思議なことがあって、少しずつ繋がってるんですが、今回「閉め出し」とか「わたしたちのきまりごと」とか、気になる言葉があったんですよね。そろそろ俯瞰的にシリーズ全体を眺めたくなってきました。続きも楽しみ~。

あと今の時点で読んでるのは、森絵都さんの「あの角を過ぎたところに」と、柴門ふみさんの「結婚力講座」。
森絵都さんの方は、ほのぼのするのかと思いきや、最後にゾクッとさせられるような話でした。そして「結婚力講座」は、柴門さんと土屋賢二さんの対談。これは結構面白かったなあ。「続く結婚」と「続かない結婚」の違いは何なのか、そこには「結婚力」というものが存在するのでは? という話です。私自身は、「男は」とか「女は」とか決め付けるのも決め付けられるのも嫌いだし、そういうのを読んでカチンとくることもあるんですけど、まあ、男女別の傾向みたいなものは確かにありますしね。今回は、へええ~とすっかり他人事で読んでたので楽しかったです。ここに書かれてる「結婚力」の中には、それはどうよ?って思う部分も結構あったんですけど(例えば「妻へは褒め言葉か楽しいジョーク以外話しかけないことだ」とか。私だったらそんな夫は要らないな)、意外な組み合わせで長続きしてる人たちもいるし、やっぱりコツはあるんでしょう。
でも、「ノルウェイの森」があんなに女性に売れたのは、言葉で女を喜ばせる場面が沢山あったから、という言葉にはびっくり! そうだったのか、知らなかった。だから私には全然アピールしなかったのか。納得。(笑)


+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「花散る夜に」「ピアニシモより小さな祈り」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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大学に入る時に、それまで続けていた陸上競技をやめて自転車のロードレースを始めた白石誓は、今は国産自転車フレームメーカーが母体のチームに所属する選手。チームのエースは33歳のベテラン、石尾。そしてその次の位置につけているのが、誓と同期でまだ23歳の伊庭。誓はエースを狙うほどの実力ではなく、アシストに徹した走り。そして日本で行われる数少ないステージレース、ツール・ド・ジャポンに、誓も出場することになります。しかしその中の南信州での山岳コースで、思いがけず誓が総合トップに踊り出てしまうのです。その時、エースの石尾にまつわる3年前の黒い噂が明るみに出て...。

近藤史恵さんの、久々のノンシリーズ作品。近藤史恵さんにしてはちょっと珍しい雰囲気かな。自転車のロードレースの話です。今まで自転車競技には全然興味も知識も無かった私なんですけど、いやあ、面白かった!

まず、この本で知ったこと。

・自転車のロードレースは、紳士のスポーツとも、この世で最も過酷なスポーツとも呼ばれる。
・集団の先頭を引っ張る選手が空気抵抗を1人で引き受けることになるので、レースの最中でも、相手がライバルだったとしても、順番に先頭交代するのがマナー。(紳士のスポーツたる所以の1つ)
・ロードレースにはエースとアシストという役割分担があり、実際には個人競技というよりも団体競技に近い。
・アシストはチームのために、時にはエースの風除けとなり、時にはエースとは違う場所でレースを作る。エースの自転車にトラブルがあった時は、アシストが自分の自転車を明け渡すこともある。

まあ、ほかにも色々あるんですが(紳士協定的な暗黙の了解がいっぱい)、内容を読む上で重要なのはこのぐらいでしょうか。作品の中には、うちから比較的近い地名も登場してて、確かにそこの道で自転車のトレーニング姿をよく見かけてはいたんですけど、こういうことをやっていたとは、ほんと全然知らなかった。でもこれが素直に面白くて~。本当の自転車レースを見たくなってしまったわ! 自ら1位でゴールするよりも、アシストに徹する方が好きだという主人公の気持ちにも共感してしまったし。でも、アシストに徹したい主人公の思いとは裏腹に、思いがけずエースへの道が開けてしまって、周囲の人間の主人公に対する視線や態度が変わっていくんですね。それにつれて、様々な思惑が交錯して。
でもそんな風にロードレースの魅力とか、それにまつわる人間ドラマを描く作品だったはずなのに、さすが近藤史恵さん。ミステリ作品でもありました。しかもそのミステリ部分がいいんです~。そういう風にミステリが絡むと、思いがけない人間の暗部が見えてきたりするものだし、近藤作品だからこそ尚更そうなりそうなところなんですけど... この解決は良かったな。自転車のロードレースがそれまで以上に理解できたような気がします。...本当にそこまで...?という部分も正直ちょっぴりあるんですけど、でも良かった。ほおおっ。

自転車を扱った作品といえば、竹内真さんの「自転車少年記」もそうですね。この作品とはまたタイプが違いますが、あれもとっても爽やかな青春小説でオススメです~。今度テレビで自転車のロードレースをやってることがあれば、見逃さないようにしようっと。(新潮社)


+既読の近藤史恵作品の感想+
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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1950年代、アイオワのエイムズは、離婚した夫婦は1組だけ、殺人事件が起きたのは1回きり、アルバイトといえばベビーシッターかトウモロコシの雄穂摘みぐらいしかないような、静かな時代の静かな町。そんな小さな町での、「何も起こらなかった」けれど様々な思い出が濃密に詰まっている少女時代を描く、スーザン・アレン・トウスの回想録。

ああー、古き良きアメリカ! 作者自身冒頭で、当時は通販カタログの表紙の写真のような、背が高くてハンサムな夫と頬の赤い2人の子供、アイリッシュセッターに囲まれてピクニックをしている美人でお洒落な女性が理想の姿だったと書いてるんですけど、でもほんと、読んでいたら一昔前のアメリカのコマーシャルに出て来そうな、そんな幸せそうな情景を思い浮かべてしまいました。作者のスーザン・アレン・トウス自身は、早くに父親を亡くして母子家庭だったんですけどね。本に収められていた家族写真が、まさにそのイメージだったし~。髪の毛がくるくるとカールして可愛らしい姉妹と、(それほどハンサムではないけれど)優しそうな笑顔のお父さん、そして美人でお洒落なお母さん。(いかにも働く女性という知的な雰囲気)
現在の1人娘とのやり取りの合間に、思い浮かぶままに思い出を連ねていったというような回想録で、あまり整理されているとは言えないかもしれないんですけど、そのさりげなさが読んでいてとても心地よかったし、1人の少女の等身大の姿が伝わってくるところが、とても素敵でした。少女たちの親友作りと水面下でのライバル関係、男の子たちの目を意識しながらのプールやパジャマ・パーティ。パーティのためのドレスを自分で作るのは当たり前で、自分を最大限に魅力的に演出するために知恵を絞り、男の子とは時間をかけて恋を育んだ時代。作者自身が「男女交際の速度が高速道路並みにスピードアップされ、わたし自身、すぐにベッドに誘おうと試みない男性がいると、ゲイかもしれないわと思う今の時代には、とても信じられないかもしれないけれど」と書いているように、今のアメリカには、こんな恋愛はもうないんでしょうね。でもこんな風にゆっくりと手探りで進んで、一線を越えるかどうかで悩んじゃうような恋愛の方が、精神的には遥かに豊かに感じられちゃうな。
なんだか少女たちのざわめきやくすくす笑いが聞こえてきそうな回想録で、良かったです!(新潮クレストブックス)

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漫画家の吉野朔実さんが「本の雑誌」に連載している「吉野朔実劇場」の3冊目と5冊目。1・2冊目が以前角川文庫になったので、3冊目以降もそれを買おうと思って待ってたのに、全然文庫にならないので図書館で借りてきてしまいましたー。しかし図書館の蔵書には4冊目の「犬は本よりも電信柱が好き」だけがないんです... なぜ?

今回で面白かったのは、「弟の家には本棚がない」の「『酸素男爵』を知りませんか」という章!
本を買うのに、絶対書店で手に取って買う派もいるでしょうし、オンライン書店を利用する派もいると思います。私の場合は、書店で背表紙を眺めながら本を探すのも好きなんですけど、何といっても本は重いですしね。改めて実物を確かめなくても買うと決まってる本はオンラインで注文してます。吉野朔実さんも、オンラインで注文が多いみたい。でも、その時点での遊び心が、私とは全然ちがーう。私の場合、本来の目的とは関係ない本ってあんまり買わないんです。せいぜい、同じ作者の別の本とか関連本を併せて買うぐらい。その点、吉野朔実さんは! たとえば、とあるオンライン書店で「男爵」を検索してみて、69件ヒットしたとします。そしたら続けて「公爵」「侯爵」「子爵」「伯爵」なんかもやってみて、男爵のヒット件数の方が多いことから、「どうも『男爵』が一番変わり者が多いらしい」と考えて、その手の面白そうな本を見つけては注文しちゃう。これは、検索ができるオンライン書店ならではですねー。そういう使い方って全然思いつきませんでした。面白いなあ。で、「酸素伯爵」が在庫切れで届かなくてがっかりした吉野朔実さんは、そのストーリーを色々想像しては叫ぶのです。

「読みたいーっ 読んでがっかりしたいー!!」

手に取った本が実は全然面白くなくて大失敗、というのは、本の選ぶ側の責任もあると思うんですけど(その本が自分の好みかどうか、なんとなく匂いで分かりますよね?)、「がっかりしたいー!!」というのが、またいいんですよねえ。そういう楽しみ方もあるのかあ。と、目からウロコ。ついでに、「穴堀り男爵」をベースに、「木のぼり男爵」「まっぷたつの子爵」「不在の騎士」「ほらふき男爵の冒険」を混ぜこんだ漫画も、面白かったです。自分が5冊とも読んでるのが、妙に嬉しかったり♪

「本を読む兄、読まぬ兄」も面白かったです。でもだんだん本の内容よりもエッセイ(漫画ですが)の方がメインになってるような...。エッセイの中には登場しないのに、その内容から連想したような本を冒頭で紹介、というのが半分ぐらいあるんですよね。エッセイだけでも面白いからいいんだけど、やっぱりこのシリーズは純粋に本にまつわるアレコレを読みたいなあ、というのが正直なところかな。(本の雑誌社)


+シリーズ既刊の感想+
「お父さんは時代小説(チャンバラ)が大好き」「お母さんは『赤毛のアン』が大好き」吉野朔実
「弟の家には本棚がない」「本を読む兄、読まぬ兄」吉野朔実
「犬は本よりも電信柱が好き」吉野朔実

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唐の玄宗皇帝の時代。金品を溜め込んで県令を引退した父のおかげで、無為に100歳まで暮らしても十分おつりがくるということに気づいた王弁は、その日から机を離れ、武具を持つこともなく、何もせず佳肴を楽しみ、風光を愛でる日々。そして父は、まだ22歳の息子が日がな一日庭でぼおっとしている不甲斐なさに怒る日々。しかし近くの黄土山に仙人が住み始めたと聞きつけた父は、息子に供物を持たせて仙人に会いに行かせることに。黄土山中の庵にいたのは、王弁が想像したような見事な白髪姿の仙人ではなく、若く美しい少女の仙人。少女は「僕僕」と名乗ります。仙骨はないものの、「仙縁」はあるという王弁は、早速僕僕と酒を酌み交わし始めて...。

第18回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。ずーっと図書館に予約を入れてた作品。待ってる人数は10人もいなかったのに、延々半年以上待たされて、ようやく読めました!
何万年も生きているらしい仙人の僕僕が、なんと美少女の姿をしていて、仙人だという説得力を出す時だけ老人の姿になるというのも人を食っていて楽しいし、少女の姿をしていると、くるくると表情が変わる本物の可憐な少女に見えてくるのが不思議。そしてそんな僕僕に振り回されてるうちに、日々ふわふわと生きるだけで覇気が全くなかった王弁が徐々に自分を持ち始めるというのもいいですね。2人の間の淡い恋心も可愛らしくて、ほのぼの~。ただ、僕僕が王弁のどこを気に入ったのかは、今ひとつ分からないんですが。(笑)
時代背景としては、玄宗皇帝が即位して間もない頃。楊貴妃がまだ現れてなくて、玄宗皇帝が優秀な皇帝として唐を治めていた頃です。中国の神話を始め、「列仙伝」などに登場する仙人の名前や、「山海経」に登場するような異形の存在、そして中国史上の人物の名前なんかがあちこちにばらまかれていて、中国物好きとしては堪らないところ♪ (この辺りはそれほど濃くないので、全然知らなかったとしても問題ないと思いますが) ただ、今のままの緩めの雰囲気もとても心地良かったんですけど、エピソード同士の繋がりが薄くて、なんだかちょっと散漫な感じもあるんですよね... もう少し整理すれば、もっと芯の通った話になっただろうに惜しいな、という気もちょっぴりしました。...それでもやっぱり好きなんですけどね。この方はこれからも中国物を書かれるのかしら? そうだったらいいな。楽しみ!(新潮社)


+シリーズ既刊の感想+
「僕僕先生」仁木英之
「薄妃の恋 僕僕先生」仁木英之」

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ロッスムのユニバーサル・ロボット工場(R.U.R.)は、ロボットと呼ばれる人造人間を開発・製造し、人間の労働を肩代わりさせるために世界中に販売している工場。その工場に、ある日社長のドミンを訪ねて来たのは、ヘレナ・グローリーという女性でした。ヘレナは人道連盟を代表して、ロボットたちに過酷な労働を課することをやめ、人を扱うように扱うようにするべきだと言いに来たのです。それに対し、ドミンはロボットは自分の意思を持たないため喜びや幸せを感じることは不可能だと諭します。しかし10年後、自分たちが人間よりも優秀だと知ったロボットたちが人間に反旗を翻して...。

カレル・チャペックの名を一躍有名にしたという戯曲。「ロボット」という言葉が生まれたのは、この戯曲からなんですよね。チェコ語で「労働」を意味する「robota」から作り出された言葉。(実際思いついたのは、お兄さんのヨゼフだったらしいですが) でもここに登場するロボットは、普段ロボットと言われて想像するような機械を組み立てたようなものではなくて、人間の組織的構造を単純化させて作り出された、文字通り人造人間といえるようなもの。見かけは人間とまるで同じ。でも魂や心を持っていないのです。
楽園にいるために子孫を作ることのできなくなってしまった人間たち、感情を与えられてしまったために人間に対して反乱を起こすロボットたち、そして存在意義を失う人間たち。ロボットを作り出したそもそもの理由は、人間を労働から解放したいという思いだし、ロボットに感情を与えてしまったのは、軽率だったかもしれないけれど、紛れもない善意からなんですよねえ。でも、ロボットもまた人間と同じことを繰り返すことに...。登場人物も少なくて、作品自体もごく短いんですけど、その中にものすごく色んな要素が入っていて、色んな角度から読めそうな作品。最後の結末が何とも皮肉で面白いです。
チャペックの本を読むたびにびっくりするのは、どの作品も古さがまるで感じられないこと。これには本当に毎回驚かされてます。エッセイや紀行文といったものはともかく、こういう作品も全然古びないというのは、やっぱりすごいことだなあー。(岩波文庫)


+既読のカレル・チャペック作品の感想+
「ダーシェンカ」「チャペックの犬と猫のお話」「園芸家12ヶ月」カレル・チャペック
「イギリスだより」「スペイン旅行記」カレル・チャペック
「ロボット」チャペック
「チェコスロヴァキアめぐり」カレル・チャペック
「北欧の旅」カレル・チャペック

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