Catégories:“2007年”

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その日、アイルランドの小さな村・バリナクロウにオープンしたのは、バビロン・カフェ。これはイラン革命の直前に流血のテヘランから命からがら脱出したマルジャーンが、バハールとレイラーという2人の妹と一緒に経営するペルシャ料理の店。マルジャーンたちはイラン革命の直前に国から逃れて、ロンドンへ。そして今またアイルランドへとやって来たのです。

先日「ほんぶろ書店にお料理本コーナーがあったら」という企画があった時に、日常&読んだ本logのつなさんが挙げてらした本。(記事
中心となるのが3姉妹のペルシャ料理店だけあって、ペルシャの料理がいっぱい登場。そして1章ごとに、その章の中で一番クローズアップされた料理のレシピが載っているんです。そのペルシャ料理が、ものすごく美味しそう! 最初にその料理の匂いが漂ってきた時に、「これが天国の匂いじゃないんなら、なにが天国の匂いなんだって」なんて言う人もいるほどなんですよー。シナモンやカルダモン、クミン、ターメリック、サフラン、アドヴィエ... 匂いが分かるスパイスもあれば全然分からないのもあるけど、組み合わさったらまた全然違う深みが出たりするんでしょうね。このスパイスの香りがなんだかとっても濃厚で情熱的で官能的で、全編通して本から立ち上ってくるような気がするほど。レシピを見ただけでは、実際にどんな料理か分からないお料理がほとんどなんですが、それほど手に入らない材料はなさそうなので、作ってみたくなっちゃいます。私が一番食べてみたいのは、肉と米をブドウの葉でくるんだドルメかなあ。おこげが美味しいというお米料理のチェロウもいいし、はたまたラム肉とジャガイモのシチューのアーブグーシュトも濃厚で美味しそう... うーん、やっぱり自分で作るよりも、ちゃんとしたペルシャ料理のお店で食べてみたいなあ。
長女のマルジャーンが作った料理は、元気を取り戻したり、満ちたりた気分になったり、それまで不可能だと思っていたことを成し遂げようという気にさせたりする力を持っているみたい。突然現れたよそ者の3姉妹に、小さな町の人たちは戸惑うし、排除しようとする人もいるんだけど、3姉妹は少しずつバビロン・カフェに新しい人間を招きいれていきます。その辺りはまるでジョアン・ハリスの「ショコラ」のような雰囲気です。美味しいものが人を幸せにしたり、閉じていた心を開かせたりするというのは、やはり万国共通ですね!
でも、美味しいだけの話ではなくて、徐々に受け入れられゆく3姉妹の姿とは対照的に、バリナクロウまでやってくる間の3姉妹の苦労や過去の傷が明らかになっていきます。意外と重いものも含んだ物語でした。面白かったです! (白水社)

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パラレルワールドのヴェネチアは、現在、歴史上最大・最強と言われるエジプト帝国軍に包囲されているのですが、30年前の侵入を水の女王が撃退して以来、その力に守られている状態。そんな町に育った14歳のメルレは、孤児院出身の女の子。同じく孤児院出身で目の見えない13歳のジュニパと共に、追放されし者の運河にあるアーチンボルトの魔法の鏡工房に弟子入りすることになるのですが...。

ええと、上には3つ画像を出してますが、読んだのは左の2冊です。全然ダメでした... 薄々感じてはいたんですけど、私、ドイツ系のファンタジーとは相性がイマイチなのかもしれません。「ドイツ系のファンタジー」なんて大きく括ってしまうのは、危険なんですけどね。それほどドイツのファンタジーを読んでるわけでもないですし。でもイギリスのファンタジーを楽しめるほどには、ドイツのファンタジーは楽しめないことが多いのです。もう読まなくてもいいや、というドイツ系のファンタジー作家さんが、これでまた1人。まだ試してないドイツ系有名ファンタジー作家さんといえば、コーネリアス・フンケぐらいかしら。

感覚的に合わないところはともかくとして、なんていうか、設定そのものは悪くないのに、このページ数にしては物事が忙しく展開しすぎだと思いますね。弟子入りしたかと思ったら、すぐに大きな展開があって、こっちの彼と知り合ったかと思えば、もう一緒に冒険。落ち着いて状況を味わう間もありません。小説を書くというのは、基本的にまず骨格となる部分があって、そこに血肉をつけていく作業じゃないかと思うんですが、この作品は、まるで骨を半分剥き出しにした状態で歩き回ってるような... もしくは梗概? 起きた出来事や会話を羅列してるだけで、それを登場人物がどう感じているのかがほとんど書き込まれてないので、どの出来事も上滑りのように感じられてしまうー。そもそも、登場人物たちの容姿ですら、ほとんど分からない状態なんです。主人公の女の子は黒髪で、その親友はプラチナブロンド。2人とも、どちらかというと細め。それだけ。...それで? 彼らはどんな性格で、何をどんな風に感じるの? ただ単に色が白いとか黒いとか、熱いとか冷たいとか、そんな言葉だけが並んでいても、こちらには実感として何も伝わって来ないです。同じ話でも、倍ぐらいのページでもっとじっくり書いてくれれば、まだ良かったのかもしれないんですけどね。(あすなろ書房)

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ヨークシャーの田舎で開業医をしていた父は、チャンスさえあれば、ちょっとしたズルやイカサマをするのが大好きで、お金と時間を節約しようとするような人間。時には鬱陶しい思いをしたり、怒りを感じたりもしたものの、その父が末期癌であることが分かり、「僕」は思いがけないショックを受けます。死に行く父を見つめながら、父との思い出を語るエッセイ。

読む前は、癌の闘病記のようなものを予想していたんですが、実態は全然違っていて、父と子の回顧録でした。父親のケチでズルいところ、息子に負けたがらないようなところ、いつまでも息子の人生に口出ししたがるところなど、苦々しく思っていた数々のこと、そんな父親から逃れるために、父親がまるで興味を持っていないサッカーをやり、聖歌隊に入り、医者にはならずに文科系に進んだ自分のこと。そこから浮かび上がってくるのは、どうしようもない俗物のように見えても、根は憎めない人間である父の姿。お互いの女性関係のことまで洗いざらい、乾いた文章で苦笑い交じりに書かれている感じなので、とても読みやすいです。でも訳者あとがきによると、これは最初から本にするために書かれた文章ではなくて、予想以上に衝撃を受けている自分自身のセラピーのために書かれた日記やメモだったのだそう。そうだったのか、ああ、なんだか分かる気がする... いろんな文章から、受けている衝撃の大きさが迫ってきます。(新潮クレストブックス)

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紀元68年の皇帝ネロの自死から、紀元97年の五賢帝の最初の1人・トライアヌスの登場までの29年間は、ガルバ、オトー、ヴィテリウス、ヴェスパシアヌス、ティトゥス、ドミティアヌス、ネルヴァという7人次々にが即位することになったという、ローマ帝国史上における「危機と克服」の時代。タキトゥスの「歴史」他の資料を元に、塩野七生さんが自分の考えも交えながら描き出していくローマ史です。

最近、リンゼイ・デイヴィスのファルコシリーズ(感想)にハマってるんですが、そのシリーズを読みながら、この時代についてもっと知りたいなあと思ってたんです。この「ローマ人の物語」は通読するにはかなり長いけど、ローマ帝国500年の歴史を年代順に追ってるので、読みたいところを集中的に読むのに便利ですね! しかもヴェスパシアヌス帝という、どちらかというと地味な時代のことを知りたいなら尚更。(笑)
いやあ、面白かったです。主要な登場人物の名前が既に頭に入ってるっていうのも大きいかもしれませんが、もしそうでなかったとしても、これならきっと面白く読めたはず。学者の書く歴史とは違う、作家として描き出す歴史は、読み物としてすごく面白いし、しかもすごく分かりやすかった。暴君として悪名高いカリグラやネロ、そして五賢帝の時代に挟まれて、どうしても地味に思われがちなこの時代なんですけど、いやあ、全然地味じゃないです。スペイン北東部の属州総督としては公正な統治をしていたたガルバ、ルジタニア属州の総督として善政が評判だったオトー、特に何もしてはいなかったけれど、マイナス材料もなかったヴィテリウスの3人が、なぜ皇帝としては失敗だったのか、3人の相次ぐ死で乱れ切っていたローマ帝国を、なぜ「田舎者丸出し」だったヴェスパシアヌスが立て直すことができたのか、よーく分かりました。それぞれの人間性が丁寧に描かれていくことによって、すごく説得力が出てきますね。

ファルコシリーズでは、ヴェスパシアヌスとティトゥス、ドミティアヌスが登場してて、3人ともファルコに散々な言われようをしてたりするんですけど、あれはまあ愛情の裏返しということで...。(笑) やっぱりこの3人の堅実ぶりはいいですね。カエサルのようなカリスマ性はなくても、華々しい偉業がなくても、日々の地道な努力で帝国を安定させ、繁栄させることは十分可能だということなんでしょう。最後のドミティアヌスは15年の治世の後に暗殺されてしまうんですけど、その彼にしたって、悪い皇帝だったとは思えないです。何よりも健全な財政を次世代に引き継いだというのが大きいし... この3人がいたからこそ、五賢帝が五賢帝でいられたとも言えそう。
古代ローマには以前から微妙な苦手意識があったんですが、どうやら払拭できそうな予感です。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」14~16 塩野七生
「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語 賢帝の世紀」24~26 塩野七生
「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

+既読の塩野七生作品の感想+
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生

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小学校6年生の光太郎は山村留学中。やることなすこと時間がかかる光太郎は、勉強も体育も苦手で、得意なのは図工だけ。それもものすごく時間がかかり、丁寧にすることはいいことだと言ってくれる先生にも、最後には「早くしてね」と言われてしまうのです。しかも身体が小さく細くて、泣き虫。周囲にイジメられて、とうとう東京の学校には行けなくなってしまったという経緯がありました。コンビニも本屋もないけれど、ヤマメのいる川は綺麗で、夜には満天の星空が広がる村。世話になっている家には同じ年のタツオがいて、兄のようにひっぱってくれます。しかし大雨が続いて山が崩れ、ヤマメのいる淵が無事かどうか見に行った光太郎は、そこで河童らしきものを助けることに。そして落ちていた赤い皿を拾ったその晩から、光太郎は原因不明の高熱に襲われ、不思議な夢をみることに...。

別名義の作品は読んだことがありますが、たつみや章さん名義の作品は初めて。これは、「ぼくの・稲荷山戦記」「夜の神話」と一緒に、神さまシリーズと呼ばれている作品なのだそう。3作に特に繋がりはないそうなんですけどね。これはイジメ問題と環境問題を大きく取り上げた作品でした。
これを読んで思ったのは、やっぱり「知らない」じゃ済まされないのよね、ということ。知らなかったから、というのは何の理由にも言い訳にもならないんですよねえ。全てのことに通じると思うんですが、たとえば環境破壊のように人間の生活に直接関わってくる部分は、特にそうじゃないかなと思ってます。自覚があって破壊するほどは悪くはなくても、結果的に破壊してしまえば結局のところは同じことだし。何事においても、きちんと自分の行動の意味と結果を知る努力は必要なんでしょうね。
とまあ、これも悪くないんだけど... 龍神とか山の姫が出てくる辺りはいいんだけど... あまりそんな風にメッセージ性の強い作品は、今はちょっと。たつみや章さんの作品を読むなら、やっぱり「月神の統べる森で」を選ぶべきだったかもしれないな。(講談社文庫)

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何不自由ない裕福な家に生まれ育ちながらも、株の投機で失敗して全財産を失い、今や猫捜しをして生計を立てている自称詩人の鈴木大切。ある日、猫を探している最中に煉瓦造りの洋館の詩人の会に迷い込んだことから、そこの受付にいた妙齢の女性・雪乃と知り合い、詩人の会のメンバーの1人・馬渕という男に「魔法杖」というものをもらうことに。それは猿の手で、捜し物がある時に持って歩くと、手がひとりでに動いて、目当ての物のあるところを教えてくれるという物なのです。

南條竹則さんらしい、のほほんとした雰囲気の作品。中華料理こそ登場しませんが、飲食の場面は相変わらずたっぷりとありました。(笑) そして舞台設定は現代の東京なんですが、全編通して昭和の雰囲気。時間の流れがゆったりとしていて、肩の力がほど良く抜けた感じなので、何度か現れる過去の懐かしい情景は、とても自然。逆に突然「リストラ」「インターネット」などという現代的な単語が登場すると、そのたびに本当は現代の話だったのか...! と、ちょっとびっくりしたりして。
「魔法探偵」という題名なんですが、これは探偵小説ではないですね。反魂香を使った中華風の魔法らしきもの以外、魔法らしい魔法も存在しないんですが(鈴木大切によれば、猿の手を使ったダウジングは自然魔法の1つとのこと) この世とあの世が自然に重なり合う不思議な交流の辺りは、ファンタジーと言えそう。小説としては、かなり淡々としてるので、盛り上がりに欠けるとも言えるのかもしれませんが... その散漫さが南條さんらしくて、読んでいてとても居心地が良かったです。(集英社)


+既読の南條竹則作品の感想+
「セレス」南條竹則
「りえちゃんとマーおじさん」南條竹則
「鬼仙」南條竹則
「あくび猫」南條竹則
「魔法探偵」南條竹則
Livreに「酒仙」「満漢全席」「遊仙譜」「ドリトル先生の英国」の感想があります)

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ロバート王亡き後、サーセイ妃は自分が摂政となって嫡男・ジョフリーを鉄の王座に座らせます。アリアはキングズランディングから脱出しますが、サンサは王城に囚われの身、ロブは北の地で王として名乗りを上げます。しかしハイガーデンではロバートの末弟・レンリー・バラシオンが、ストームズエンドでは次弟のスタンニス・バラシオンもまた、王として名乗りを上げたのです。

「氷と炎の歌」の第2部。シリーズ物なので、あらすじはごく簡単に。
「七王国の玉座」の最後で一気に分裂した王国。乱世らしく、血みどろの戦争やそれに伴う悲惨な場面が多いです。この第2部で語り手となっているのは、スターク家のアリア、サンサ、ブラン、ジョン、ケイトリン、ラニスター家のティリオン、バラシオン家からはスタンニスに仕えるダヴォス、海の彼方からはデーナリス、グレイジョイ家からはシオンの計9人。やっぱり中心となるのはスターク家だとは思うんだけど... これでもかこれでもかと悲惨な出来事が! 本当にこの作者さんは、どのキャラクターも一様に突き放してますね。というか、スターク家が中心だからこそ、彼らが一番の重荷を背負わされているということなのでしょうかー。彼らに限らず、どのキャラクターもいつどこで殺されても不思議はないという緊迫感なんですけどね。4巻の途中では、もう本当にびっくりしました...。
読んでいて楽しかったのも、やっぱりまずスターク家のパート。特にアリアのパートが好き~。サンサもそれなりに苦労してるんですけど、やっぱりアリアですよ。行方不明のナイメリアの今後の役割も気になるところ。健気なブランも可愛い~。彼のパートには、森の子供たちの緑視力、獣人や変容者と気になるモチーフが満載です。そして次に楽しいのは、デーナリスのパートかな。彼女とドラゴンたちは今後一体どうなるんでしょう? 「七王国の玉座」を読んだ時はティリオンが結構気に入っていて、こちらでもティリオンと宦官のヴェリース、ティリオンとサーセイといった辺りのやり取りは楽しかったんですが... 彼に関しては、前作の方が良かったかも。(前作の方が良かったといえば、ジョンもそうかも)
最初のうちこそ、どんな話だったか思い出せなくて戸惑ったんですが、すぐに勢いに乗れました。でもこういう作品って、どうしても初読時はストーリーを追うことに集中してしまうんですよね。本当に重層的な作品だから、ストーリーを追うだけじゃ勿体ないって良く分かってるんだけど...。シリーズ全部出揃ったら、ぜひとも再読したいです。(ハヤカワ文庫SF)


+シリーズ既刊の感想+
「七王国の玉座」全5巻 ジョージ・R・R・マーティン
「王狼たちの戦旗」全5巻 ジョージ・R・R・マーティン

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Note


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