Catégories:“2007年”

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カナダのグウェンに、アイルランドのハートおばばからのメールが届きます。妖精国を大きな災いが襲おうとしており、その鍵となるのが妖精と人間の血を引くダーナ・フウェイラン。しかし彼女は準備が全くできていないため、命がけで守ってやらなければならないというのです。ダーナを守るのは、決戦の地であるカナダの人間の役割だと聞いたグウェンは、同じくカナダにいるローレル・ブラックバーンを訪ねて、一緒に戦って欲しいと訴えます。しかしローレルは、もう妖精国とは係わり合いになりたくないと考えていたのです。

O.R.メリングのケルトファンタジー第6弾。
前巻の予告通り、今回の舞台はカナダ。そして「妖精王の月」「夏の王」「光をはこぶ娘」の3冊の物語がここに1つにまとまります。カナダの歴史を辿るダーナの旅は楽しかったし、特にケルトの伝説「聖ブランダンの航海」が登場するとは思っていなかったので、嬉しいびっくり。今回新しく登場する人々もなかなか良かったし、妖精が存在するのはアイルランドだけでなくて... という概念も面白かったんだけど。
でも上下巻と長い分、どうしても冗長に感じられてしまう部分があったのと、「7者」が結局ほとんど登場しなかったのが、すっごく残念。ちゃんと出てきたのはグウェンぐらいなんですよね。カナダの人間がやらねばならなかったという前提は分かるんだけど、3つの物語の完結編となるんなら、もう少しそれらの物語の積み重ねを感じたかったなあ...。これまで登場してきた人たち同士の繋がりができて、3冊分(うまくすればもっと)の世界が繋がるんじゃないかと思ってただけに、かなり残念でした。結局、グウェンとローレルの繋がりが出来る程度。結局これまでとパターン的には一緒なのね。うーむ。(講談社)


+シリーズ既刊の感想+
「妖精王の月」「歌う石」「ドルイドの歌」O.R.メリング
「夏の王」「光をはこぶ娘」O.R.メリング
「夢の書」上下 O.R.メリング

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日の暖かなある初夏のこと、世の不可思議なことどもを聞こうと世間を歩き回っていた「私」は、丘の斜面でぐっすり寝込んで、驚くべき夢を見ます。夢の中で「私」はある荒野の中にいて、東を見ると丘のうえに見事な造りの塔が、その下には底深い谷間が、谷間には恐ろしい掘割をめぐらせた城塞があり、塔と城塞の中間の平らな野原には、あらゆる階層の人々が世のならわしのままに働いたり彷徨っていたのです。

14世紀後半の詩人・ウィリアム・ラングランドによる寓話的な夢物語。「報酬」や「良心」といった抽象概念が擬人化されて、その言葉の意味を持ったまま普通の人間と同じように活動し、特性や機能を表すという擬人化のアレゴリーで、これは17世紀前半ぐらいまでよく使われた形式。夢を見て、というのも、中世でよく使われた形式。この「農夫ピアズ」の場合、語り手は夢から何度か醒めて、読者は語り手と一緒にその夢について考えることになります。
要は当時の社会・宗教問題をラングランドなりに解明しようとしたものなんですが... うーん、ちょっと分かりにくかったかも。夢から何度か醒めちゃうのがいけないのかな? そのたびに繋がりが切れて場面が変わってしまうせいか、あんまり物語として面白くなかったです...。まあ、元々教訓的な話なんで、面白く感じられなくても仕方ないかもしれないんですけど、同じ形式でももっと美しく感じられる作品はあるし、例えば同じく擬人化アレゴリーの作品、ジョン・バニヤンの「天路歴程」なんかは結構面白かった覚えがあるんですよね。なんだか首尾一貫してないような感じで、あまり楽しめませんでしたー。残念。(中公文庫)

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神田の古名主、高橋宗右衛門の自慢の息子・麻之助は、16歳になった途端に生真面目で勤勉な青年から、お気楽な若者へと変貌してしまったという青年。そんな麻之助も22歳。ある日、悪友の八木清十郎に男色の仲だと宣言して欲しいと言われ、さすがの麻之助も驚きます... という表題作「まんまこと」他、全6編の連作短編集。

畠中恵さんの新シリーズ。やっぱりこの方の作品には、江戸の雰囲気がよく似合いますね。今度のシリーズ中心となるのは、主人公の高橋麻之助と、女好きの八木清十郎、堅物の相馬吉五郎という3人組。とは言っても、それほど一緒に行動するわけじゃないんですけどね。基本的には名主のところに持ち込まれた麻之助絡みの揉め事を、麻之助が友人たちの助けを借りて調べて、人情味たっぷりに解決するという流れです。八方丸く収まって読後感が良いところは、さすが畠中恵さん。でもまだシリーズ最初の作品のせいか、まだどこか定まりきっていない印象もあるんですよね。麻之助の機転がきくところはいいんだけど、どうしても若旦那と重なっちゃうし... そうなると妖(あやかし)がいない分、こちらはやや部が悪い気も。麻之助が16歳でお気楽になってしまった理由に早々に見当がついてしまったのも、ちょっと残念でした。ただ、「しゃばけ」シリーズでは常時登場して活躍する女性がいないので、今後のお寿ずの活躍に期待かな。(文芸春秋)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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「図書室の海」以来の短編集。「水晶の夜、翡翠の朝」「ご案内」「あなたと夜と音楽と」「冷凍みかん」「赤い毬」「深夜の食欲」「いいわけ」「一千一秒殺人事件」「おはなしのつづき」「邂逅について」「淋しいお城」「楽園を追われて」「卒業」「朝日のようにさわやかに」の14編。

この中では、三月の学園の「水晶の夜、翡翠の朝」と、アガサ・クリスティの「ABC殺人事件」へのオマージュ「あなたと夜と音楽と」だけが既読だったんですが、どうも既視感のある作品が多くて、ちょっとびっくり。他の作品もどこかで読んでるのかも...。それとも、気づいてないところに特定の作家さんや作品へのオマージュ作品もあるのかしら? さすがに「一千一秒殺人事件」なんてタイトルだと、稲垣足穂系だなと分かるんですが。
どの作品も現実離れしているようでいて、でも妙なリアリティがあって、ちょっと不気味なホラー系。この本に収められた短編のうち「朝日のようにさわやかに」だけが全然ホラー系じゃなくて、むしろエッセイタッチの作品なので、それが表題となってるのがなんだか悪い冗談みたいです。本を読み進めるにつれて世界が徐々に歪んでくるような感じ...。それほど怖くはないんですが、様々なパターンのホラー作品が楽しめます。
私がダントツで気に入ったのは「冷凍みかん」。これも、どこかで読んだことがあるような気がするんですけどね...。これは星新一さんのショートショートみたいな雰囲気。これはいいなあ。あと「淋しいお城」は、講談社ミステリーランドのための作品の予告編なんですって。本編を読むのが楽しみ! でもやっぱり「水晶の夜、翡翠の朝」も素敵でした。それでも天使のようなヨハンにうっとり。(新潮社)


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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「イケてる小説はないのかよ!」「スゴいやつを読ませやがれ!」 そう口走りながら、ケワしい目つきで書店の棚を睨めつけている人たちのための文学ガイド。幻想フルーツ&奇想キュイジーヌ小説75作を紹介する、だそうなんですが...(笑)
先月、図書館の館長(上司です)に「面白かったよー」と勧められて楽しく読んだというのに、ここに感想を書くのが抜けてました。いやーん。
まず、「はじめに」からして面白いです。「文学は最高のエンターテイメントだ。ぼくはそう思っている。」という掴みもいい感じ。私も文学系作品は好きなんですが... という以前にきっちりとしたジャンル分けはよく分からないんですが... 作品の傾向が分かる程度のジャンル分けで十分だと思ってますしね。でもやっぱり「文学」と聞くと、堅苦しそうな、いかにも退屈でつまらなそうなイメージがあると思います。実際に文学作品と呼ばれてる作品を読んでみると、全然そんなものじゃなかったりするのに。もちろん退屈で詰まらない作品もありますけど(おぃ)、格調高すぎと敬遠されがちな作品だって、時には昼メロだったり吉本新喜劇だったりするわけで。(それはそれでガッカリかも...)
そんな敬遠されがちな文学だけど、実はこんなに面白いんだよ!という筆者の熱意が伝わってきます。でも、砕けている「はじめに」とは裏腹に、紹介されてる75冊はかなりきちんとしたもの、という印象を受けました。これは実は相当真面目な文学系ブックガイドなんじゃ...。でもね、この中で紹介されてる本で私が既読の作品って、ほんの数冊しかないんですよぅ。それがちょっと悔しかった。もちろん新たに読んでみたくなるブックガイドなんですけど、それ以上に、既読本の紹介を読むのが楽しかったから。
ということで、読みたい本がまた増えてしまいました... 今はここに紹介されてるようなのよりも古いのを読みたい気持ちが強いので、実際に読むのはもうちょっと先になりそうですが、その時にこの本があると思うと心強いな。(本の雑誌社)

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イングランド中部ダービシャー州の町でサイン会を開いていた作家のスチュワート・グラットンは、サイン会を訪れたアンジェラ・チッパートンという女性に、その父親が書いていたというノートのコピーを渡されます。以前からグラットンは、ソウヤーという名前の1940年代に英空軍爆撃司令部に属していた人間の情報を求める広告を出していおり、父親が書き遺したノートが役に立つのではないかと考えたアンジェラは、その一部をコピーして持参したのです。

先日「奇術師」と「魔法」を読んだクリストファー・プリーストの作品。(感想) 本当はkotaさんが「SFガジェット満載」で「最後に現実崩壊感覚を味わえます」と仰る「逆転世界」を先に読もうと思っていたのに、入手の順番が逆になってしまいましたー。「双生児」はさらに圧倒的な傑作だそうなので、最後のお楽しみにしようと思ってたのに!
というのはともかく、今回は第二次戦争下の英国が舞台の物語です。その頃のことを本に書こうと調べている作家の集めた資料を読むという形で物語は進んでいきます。グラットンが調べていたのは、ソウヤーという名前の兵士もしくは士官。ソウヤーは良心的兵役拒否者でありながら、同時に英空軍爆撃機操縦士でもあるという人物で、英国首相・チャーチルが、なぜそのようなことが可能なのかというメモを残していて、そこにグラットンは物語を感じたんですね。まあ、この疑問の答は、ソウヤーが1人の人間ではなくて一卵性双子だったということで、早々に明かされてしまうんですけど...(笑) そこからが本領発揮。そこはクリストファー・プリーストだけあって一筋縄ではいきません~。本格ミステリ作品では双子を使ったトリックは使い古されてますけど、これはそういったトリックとはまた全然違う! プリーストならではの世界。
読み始めてすぐに「1940年半ばの米中戦争」という言葉にひっかかったんですが、もうここから始まっていたんですね~。ボート競技でベルリンオリンピックに出場したところから始まる双子の物語も、時代が戦争へと流れ込んでいく辺りも、読んでいて純粋に面白いです。私がもっとウィンストン・チャーチルやルドルフ・ヘスに詳しかったらなあ、なんて思ったりもしたんですけど、それでも十分楽しめます。その辺りはこの作品の表層上のことにすぎないんですけど... やっぱり読みやすくて面白いというのは重要ポイントですね。小難しいことを小難しく書ける人はいっぱいいるけど、そういうのってごく普通。難しげな単語を振りかざしてるだけで、結局虚仮威しに過ぎないなんてこともありますし。でも本当に頭が良い人の文章ってそうじゃないと思うんです。ここまで複雑な話をこんな風に読みやすく面白く書けるのって凄いです。なーんてことを書き続けてるのは、ひとえにネタバレしたくないからなんですけど...(笑)
大胆でありながら緻密。クリストファー・プリーストならではの、知的な「語り=騙り」を試してみてください。肝心のトリックに関しては、もし読み終えた時には分からなくても、大森望さんによる解説に詳しく書かれているので大丈夫です。^^(早川書房)


+既読のクリストファー・プリースト作品の感想+
「奇術師」「魔法」クリストファー・プリースト
「双生児」クリストファー・プリースト
「逆転世界」クリストファー・プリースト

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左は岩波文庫、右はマール社というところから出ている本。
岩波文庫版は原典から直接訳したもの。こちらは小川亮作さんによる口語訳なんですが、初版が1949年(昭和24年)の口語なので、読みやすいながらも今の口語よりもずっと端整な感じ。そしてマール社版は19世紀の詩人・エドワード・フィッツジェラルドが英訳したものを、竹友藻風さんが日本語に翻訳。格調高い七語調です。フィッツジェラルドによる英訳も同じページに載っていて、これって実は日本語よりも分かりやすいんじゃ...(笑)
その右の本は、風待屋 のsa-ki さんに教えていただいたものです。表紙も紺地に金銀が使ってあってとても美しいんですけど、中身も素敵!全てのページが挿絵入り。エキゾティックでほんのりエロティックな、ビアズレーのようなペン画で、ところどころ印象的な赤が使ってあって、それがまた素敵。この美しさだけで、この本を買う価値は十分あります。^^

そして中身はそのものズバリ、酒への賛歌。いくつか引用してみると...

恋する者と酒のみは地獄へ行くと言う、
根も葉もない囈言(たわごと)にしかすぎぬ。
恋する者や酒のみが地獄に落ちたら、
天国は人影もなくさびれよう!(岩波文庫版87)

天女のいるコーサル河のほとりには、
蜜、香乳、酒があふれているそうな。
だが、おれは今ある酒の一杯を手に選ぶ、
現物はよろずの約にまさるから(岩波文庫版89)

一壷の紅の酒、一巻の歌さえあれば、
それにただ命をつなぐ糧さえあれば、
君とともにたとえ荒屋(あばらや)に住まおうとも、
心は王侯(スルタン)の栄華にまさるたのしさ!(岩波文庫版98)

たった4行の簡潔な詩の繰り返しなんですけど、驚くほど豊かなイメージが伝わってきませんか~? イスラム教の社会では、コーランによって酒は禁じられているはずなんですが... 死後のことを気にして戒律を守るよりも、今現在を大切にして奔放に酒を愛するという前向きな姿は逆に清々しいほどです。(笑)
そしてちなみに最後の「一壷の紅の酒~」の4行は、マール社版だとこんな感じ。

ここにして木の下に、いささかの糧
壷の酒、歌のひと巻ーーまたいまし、
あれ野にて側(かたわら)にうたひてあらば、
あなあはれ、荒野こそ樂土ならまし(マール社版12)

かなり違いますよね。もちろん日本語への訳し方にもよると思うんですが、フィッツジェラルドが英訳する時に結構変えてるんじゃ... なんて思った箇所も結構多かったです。マール社版には、たまにキリスト教的な匂いがあって、それはきっとフィッツジェラルドによるものだと思うし、例えば「薔薇(そうび)」という言葉もやけに多用されてるんですけど、岩波文庫版に薔薇はそれほど登場しなかったですもん。花ならむしろチューリップ。(笑)
載っている詩の数も岩波文庫は114編、マール社は110編と違うし、掲載されている順番も全然違うんです。どうやら「ルバイヤート」には贋作も多いらしくて、それぞれの本で選んでる詩も結構違うみたいなんですよね。これと思う詩をもう一方の本から探し出して比べてみるのは結構大変でした。でもそれぞれに素敵な本なので、楽しかったです。(岩波文庫・マール社)

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