Catégories:“2007年”

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吟遊詩人として各地を遍歴するローレンが出会ったのは、白い服の若い娘。娘はローレンが詩吟(うたうた)いだと知り、イスの都を知っているかと尋ね、ローレンをイスの都へと誘います... という表題作「イスの姫君」他収録。

ひかわ玲子さんの文章に、漫画家の松元霊古さんが絵を描いてらっしゃるというので、手にする前はもっと漫画なのかなと思ってたんですが、実際には挿絵の多い物語集といった感じでした。漫画もあるんですけど、ごく一部。表題作の「イスの姫君」は、ブルターニュに残るケルト伝説がモチーフだし、ほかの作品もマビノギオンやアーサー王伝説、ケルトの伝説を元に作られた物語なんですけど、予想外にしっかりした作品が揃っていてびっくり。これまでに読んできた伝説の中の登場人物たちが、ひかわ玲子さんの作品の中でこれほど生き生きと動き回ってくれるとは~。どれもとても素敵です。
特に読み応えがあったのは、表題作の「イスの姫君」。この作品は、ひかわ玲子さんのデビュー前に世の中に出た一番最初の作品なのだそう。解説で井辻朱美さんが、「『イスの姫君』は骨子の伝説に肉付けをして、生き生きした人物群像を描き出し、ひかわさんの作家的資質をすでに鮮やかに示すものでした」と書かれていますが、、本当にデビュー前の作品とは思えないほどの読み応えのある作品なんです。ひかわ玲子さんご自身は「未熟だけど、もう、二度とこんな作品はかけないーー自分で、そう思います」と書かれていて、この「二度と書けない」と思われる気持ちは分かる気がします... きっとその当時、ご自分が持っていたものを全て注ぎ込んだ作品なんでしょうね。いやあ、良かった。こういった作品を読むと、ひかわ玲子さんのほかの作品も読んでみたくてたまらなくなります。(角川書店あすかコミックスDX)


+既読のひかわ玲子作品の感想+
「ひかわ玲子のファンタジー私説」ひかわ玲子
「キャメロットの鷹」「聖杯の王」「最後の戦い」ひかわ玲子
「イスの姫君」ひかわ玲子

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19世紀のイギリスを代表する装飾芸術家・ウィリアム・モリスにとって最も重要な芸術は「美しい家」であり、次は「美しい書物」。中世の美しい写本を愛したモリスはヴィクトリア朝の本粗悪さを嫌い、晩年、私家版印刷所ケルムスコット・プレスを設立します。そこでは良質の紙やインク、行間や語間、余白、挿絵と調和する活字作りに拘った、モリスの理想の書物作りが追求され、自著やチョーサー作品集など53点の書物が刊行されることに。この本はそんなモリスのエッセイや講演記録、インタビュー記事などを1冊に集めたものです。

実際にケルムスコット・プレスでの本造りが行われていた期間に書かれたり語られたりしたものだけあって、ここに収められたモリスの書物芸術論はとても具体的。そして、美しい本を作るのも醜い本を作るのも手間と費用の面から言えばほとんど同じなんだから、それなら美しい本を作りたいというモリスの考え方はとても印象的。...でもね、粗悪本と手間と費用がそれほど変わらないとは言っても、良質の紙やインクを使用する以上、それなりの代金がかかりますよね。字間や行間が広い方が読みやすいと信じていた頑固一徹な植字工たちに自分の考えを浸透させるのも、きっと相当大変だったはず。...苦労した甲斐あって、ケルムスコット・プレスの本は本当に素晴らしいし、書物史の中で重要な役割を果たしてると思いますが!

そしてこの中に付録として「ウィリアム・モリスの愛読書」というのもあって、「良書百選」というアンケートに対する回答が収録されていました。モリスが中世の騎士道ロマンスが好きだったというのは知ってたんですけど、ここまで好きな作品が重なるとは! いえ、もちろんモリスの方が遥かに幅広く読んでますけど、モリスにとってバイブル的存在だという本は私もかなりの確率で読んでて、しかも好きな作品ばかり! バイブル的存在の中で全然読んだことがないというのは、ヘロドトスと「ヘイムスクリングラ」の2つだけですね。ヘロドトスは丁度読みたいなと思ってたところだし、ヘイムスクリングラも日本語訳さえあれば...です。これは、モリスのリストから未読本を選んで読めば、かなりの確率で私好みだということだなあ。(にやり)
折りたたみのところにブックリストを載せておきますので、興味のある方は「Lire la suite」をクリックして下さい。ここのブログに感想があるものに関しては、右側に作品名を書いてリンクしておきます。...それにしても「ヘブライ聖書」(旧約聖書のこと)がバイブル的存在って... あまりにそのまんまだわ!(笑)

ケルムスコット・プレスから刊行された53冊は、福岡大学のサイトでもリストと一部画像が見れます→コチラ。モリス自身の作品と、あとはモリス好みの作品って感じですね。1冊でいいから、こういう本を自分の物にしてみたいー。(一番欲しいのは中世の写本だけど)(ちくま学芸文庫)


+既読のウィリアム・モリス作品の感想+
「世界のはての泉」上下 ウィリアム・モリス
「理想の書物」ウィリアム・モリス
「輝く平原の物語」ウィリアム・モリス
「ジョン・ボールの夢」ウィリアム・モリス
「ユートピアだより」ウィリアム・モリス
「不思議なみずうみの島々」上下 ウィリアム・モリス
「世界のかなたの森」ウィリアム・モリス
「サンダリング・フラッド」ウィリアム・モリス

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激しい嵐のために軌道から大きくそれた熱気球は、尖塔の建ち並ぶ大きな街に下りていきます。そこは「ぼく」が生まれ育ったプラハの街。「ぼく」の家も、記憶のまま。でも3つの錆びた南京錠がかかっており、その鍵を持っていないので入れないのです。「ぼく」は鍵を探しに、人気のない街を歩き始めます。道案内をするのは、わが家の黒猫。そしてまず訪れたのは図書館...。

先日のたらいまわしで、picoさんが挙げてらした本。(記事) これは第32回「ねこ・ネコ・猫の本」と第34回「行ってみたいあの場所へ~魅惑の舞台」ですね。作者のピーター・シスの生まれ育った町・プラハは、中世の面影を今も色濃く残す街。ピーター少年が猫と共に懐かしい街をさまよい、プラハにまつわる伝説を読み進めながら、金の鍵を手に入れていくという物語。
石畳の街は迷路になっていたり、人間の顔のようなものや幻想的な動物が浮き上がっていたり。少年が訪れる図書館では、図書館員は全身本で出来ていたり、本の中から色んな人物が現れてきたり。ちょっぴり、いや、かなり異様な雰囲気... 全編が薄闇に覆われているようで、これは逢魔ヶ刻って感じですね。子供よりも大人が楽しめるであろう絵本。幻想的で美しいんですけど、でもそれは怖さと紙一重。「子供が読んだら悪夢をみてしまうかも」ってpicoさんが仰ってますが、確かにそうかも。凄いです、一気にプラハに魂が飛ばされてしまいました。(笑)
この作品の中で語られる3つの伝説とは、プラハの有名なカレル橋にまつわる、獅子を従えた騎士の伝説「ブルンツヴィーク」、ユダヤ人の指導者だったラビ・レーフが、ユダヤ人の夢と涙で作り上げた人造人間の伝説「ゴーレム」、そして地元ではオルロイと呼ばれるプラハの魔法のように美しく、信じられないほど精巧な天文時計を作ったに親方の伝説「ハヌシュ」。こういう伝説ももっと読んでみたくなりました。「ゴーレム」といえば、やっぱりグスタフ・マイリンク? あまりよく知らないんですが、怖そうです。でも今度探してみようと思います。あと洋書ですが、右の絵本もいいかも♪ 「ブルンツヴィーク」と「ハヌシュ」に関しても、何かいい作品があったら読んでみたいな。
...プラハの天文時計に関してはWikipediaに記事がありました... コチラ。これは実物が見てみたい!!(BL出版)

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エルリック・サーガの第2巻。エルリックが3人の永遠の戦士たちに出会う「この世の彼方の海」、エルリックサーガはここから始まった!「<夢見る都>」、そして初期の「神々の笑うとき」「歌う城砦」を収録。旧版では「この世の彼方の海」と「白き狼の宿命」の2冊だったものが、1冊になったもののようですね。

2巻を読み始めてすぐに、エレコーゼ、コルム公子、ホークムーンという名前が登場してびっくり。これってマイクル・ムアコックの他のシリーズの主人公たちじゃないですか! エルリックを含めたこの4人は「四戦士」、<一なる四者>であり、以前にも邂逅があった模様。コルムがエルリックに、「ヴァアロディオン・ガニャディアックの塔」でエレコーゼと一緒に闘ったという話をするんです。エルリックもエレコーゼも「そんなことを言われても」って感じで、コルム公子は未来の世界から来たんだろうという話に落ち着くんですが...。その話はきっと別の作品で読めるんでしょうね。このシリーズの日本語訳は時系列順に作品が並べられているそうなんですけど、「この世の彼方の海」という作品は、実際にはかなり後になってから書かれたようですし。マイクル・ムアコックの世界の奥行きの深さを予感させる作品で、これはぜひとも他のシリーズも読まなくちゃ!って気になってしまいます。
ということで、以下覚書。

エルリック・サーガ...「メルニボネの皇子」「この世の彼方の海」「暁の女王マイシェラ」「ストームブリンガー」「夢盗人の娘」「スクレイリングの樹」「白き狼の息子」
ルーンの杖秘録...「額の宝石」「赤い護符」「夜明けの剣」「杖の秘密」(ホークムーン)
ブラス城年代記...「ブラス伯爵」「ギャラソームの戦士」「タネローンを求めて」
エレコーゼ・サーガ...「黒曜石の中の不死鳥」「剣のなかの竜」
紅衣の公子コルム...「剣の騎士」「剣の女王」「剣の王」「雄牛と槍」「雄羊と樫」「雄馬と剣」

これで合ってるのかしら...
エルリックとルーンの杖秘録は復刊済み、ブラス城年代記とエレコーゼは復刊途中、コルムはこれから? 全部読むとなったら相当な冊数になりそうですが。
この2巻で、エルリックの世界観に引き込まれる人が沢山いる、その魅力がよく分かったような気がします!(ハヤカワ文庫SF)


+シリーズ既刊の感想+
「メルニボネの皇子 永遠の戦士エルリック1」マイクル・ムアコック
「この世の彼方の海 永遠の戦士エルリック2」マイクル・ムアコック
「暁の女王マイシェラ 永遠の戦士エルリック3」マイクル・ムアコック
「ストームブリンガー 永遠の戦士エルリック4」マイクル・ムアコック

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カンタベリーへ巡礼の旅に出かけようと考えたチョーサーは、旅籠屋で同じくカンタベリーへと向かう巡礼29人と一緒になり、その仲間に入ることに。巡礼たちを見ていた旅籠屋の主人が行く道で2つ、帰る道で2つずつ話をして、一番愉快な話をした人に夕食をご馳走するという趣向を提案し、全員その提案に喜んで従うことになります。巡礼に参加したのは、騎士、近習をしている騎士の息子、盾持、尼僧院長、助手の尼僧、3人の僧、修道僧、托鉢僧、貿易商人、オックスフォードの学僧、高等弁護士、郷士、小間物商、大工、織物商、染物屋、家具装飾商、料理人、船長、医学博士、バースの女房、教区司祭、農夫、家扶、粉屋、召喚吏、免罪符売り、賄い方、チョーサー、そして審判として参加した旅籠屋の主人の計32人。

14世紀のイギリスの詩人・チョーサーによる長大な叙事詩。カンタベリーへ向かう巡礼たちの語る24の物語です。大学の時に授業で読んだんですけど、そういえば全部は読んでなかったんですよね。知らなかった話もあって、今回初の完読となりました。(毎日のように感想をアップしてますけど、まさか1日で3冊読んだわけじゃないです! 本を読むのに感想を書くのが追いつかなくて、溜まってるのです~っ)
「総序の歌」の時点では、1人4つずつの物語が聞けるという話だったんですが、それはさすがに無理だったようで(笑)、結果的には全員が話すところまでもいってません。チョーサーが影響を受けたというボッカッチョのデカメロンでは、10人が10話ずつの全100話を語ってるというのに。でも気高い騎士には気高い物語。下衆な酔いどれ粉屋には下卑た卑猥な話、と参加者それぞれのイメージに合った話が披露されて、参加者のバラエティそのままのバラエティ豊かな作品になってて楽しい~。自分が当てこすられたように感じて、対抗する話を披露する人もいますしね。そして色んな話を1つの大きな話にまとめるのが、旅籠屋の主人の役目。
純粋に物語として読んでも面白いんですけど、むしろ中世の庶民の暮らしを身近に感じられるのが魅力なんだと思います。高尚だったりキリスト教色が濃かったり、教訓的だったりという話もありますが、基本的には下世話な話が多いんです。その中でも多かったのは、強い奥さんの話。妻を管理しようとする夫を出し抜いて結局自分の好きなように行動して、それが露見してもしたたかに開き直る妻の多いこと。あんまりそういうのが続くと、消化不良を起こしそうですが...(笑)
私が一番好きだったのは騎士の物語。これは古代ギリシャを舞台にした三角関係の話です。下世話じゃないヤツ。(笑)(岩波文庫)

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「仕事と日」は、農夫であり詩人でもある兄・ヘーシオドスから、無頼な弟・ペルセースへの訓戒を歌う教訓叙事詩。ヘーシオドスはパンドラの箱の物語や、五時代の説話を引き合いに出しながら、労働の尊さについて語り、人間としてあるべき姿や望ましい行動について語り、農業をするために大切な農事暦まで教えて聞かせます。「ホメーロスとヘーシオドスの歌競べ」も収録。

「仕事と日」は、叙事詩らしくムーサたちへの語りかけから始まるし、ギリシャ神話の神々のエピソードをふんだんに使ってるんですが、実は全編通して、できの良いお兄ちゃんからやんちゃな弟へのお説教。この兄弟は、実際に父親の遺産の土地を巡って争ったり、地元の領主に賄賂を渡して自分の分け前以上を得た弟が、あっという間にその遺産を蕩尽してしまってヘシオドスに泣きついたとか、そんなエピソードがあったようです。ギリシャ時代の叙事詩といえば、ホメロスの「イリアス」や「オデュッセイア」のような英雄譚がまず頭に浮かぶし、同じヘシオドスにだって、「神統記」のように壮大な神話世界の成立を歌う作品があるのに、こんな個人レベルの作品もあったんですねー。兄はともかく、ペルセースは2700年も後まで、情けない弟として名前が残っちゃったんだからスゴイ。しかも、まだまだ残るはず。(笑)
ちなみに五時代の説話とは、ゼウスの前のクロノスの時代に作り出された黄金の種族、銀の種族、ゼウスの時代になって作り出された青銅の種族、英雄たちの高貴な種族(半神で、オイディプス王やトロイア戦争の時代のギリシャ人はこれにあたるらしいです)、そして現在の鉄の種族、と人間の歴史の変遷を5つの時代に分けてみせるもの。オウィディウスの「変身物語」(感想)でも似たような話はあったんですが、金、銀、銅、鉄の4つで、英雄の時代はなかったです。オウィディウスは古代ローマ時代の人なので、古代ギリシャ人のヘシオドスよりも時代的にはかなり後。当然この「仕事と日」も読んでるでしょう。金、銀、青銅、鉄という金属に対して、「英雄」だけバランスが悪いと感じたのかな? ていうか、私ならバランスが悪いと思っちゃうんですけど。まあ、ギリシャ人のヘシオドスには仕方なかったのかもしれないですけど。(笑)

「ホメーロスとヘーシオドスの歌競べ」は、作者不詳の作品。共に詩聖と称せられたホメロスとヘシオドスが、エウボイア島のカルキスで対決する様子を描いた叙事詩。本当にこの2人が歌競べしたとはあまり考えられないらしいんですけど、ギリシャ人の聴衆がホメロスを褒め称えるのに対して、王が「勝利者たるべきは戦争や殺戮を縷々として述べる者ではなく、農業と平和の勧めを説く者でなくてはならぬといって、ヘーシオドスに勝利の冠を与えた」とあるのが興味深いところです。実は政治的な意図がある作品なのかしら?(岩波文庫)


+既読のヘシオドス作品の感想+
「神統記」ヘシオドス
「仕事と日」ヘーシオドス

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美貌の16歳の少年奴隷・ギトンをはさんで争いあう、エンコルピスとアスキュルトス。南イタリアを放浪する彼らの前には、様々な男女が入れ替わり立ち代り現れます。

むむー、なんかエラいものを読んでしまいました...。ローマ帝国5代皇帝ネロの治下、「趣味の権威者」として名高かったという文人・ペトロニウスによる悪漢(ピカレスク)小説とのことなんですが... いやもうほんとローマ文化の爛熟ぶりが分かるというか何というか... 要するに男色とかそういうのなんですけど(笑) 享楽的な生活とその優雅な退廃ぶりが繰り返し描かれていて、その乱れきった様子には正直辟易してしまいました。でもまあ、当時の優雅で洗練された貴族社会とかね、当時の人々の美意識とかね、そういうのを知ることができるという面では興味深いかもしれないです。
フェデリコ・フェリーニの映画「サテリコン」は、この作品を元に作られたのだそう。2人の男を振り回す奴隷の役の少年の写真を見ましたが、すごいです。目がものすごく力強くて色っぽいです。本の中の少年は、尻軽だけど根は結構良い子なんですよ。映画の少年は悪女ならぬ悪少年? きっと本とは全然違うに違いないー。(岩波文庫)

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