Catégories:“2007年”

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南イングランドのサクソン人の王国で臨終の王・エアドムンドを取り囲んでいたのは、王の兄弟で唯一の生き残りのアセルリックと、王妃との間にできたアンウィン、ハンティング、ウルフウィアードの3王子。王は次の王を指名しておらず、このままでいけば、賢人会議はアセルリックを指名するのではないかと考えられていました。しかしその時、エアドムンドが意識を取り戻したのです。エアドムンドが次の王にと指名したのは、エアドムンドと森のエルフの間に出来た子のエルフギフト。母親はエルフギフトを産み落としてすぐに死に、王はエルフギフトを乳母に託して農場に住まわせ、そのままになっていました。王の言葉を聞いたアンウィンは、早速弟のハンティングにエルフギフトを討つように言い、ハンティングは兵士を引き連れて農場へと向かいます。

いやー、面白かった。一応児童書なんですけど、ものすごく生々しくて力強くて、重厚な物語でした。
表向きは血族同士で王位を巡って骨肉の争いを繰り広げる物語で、同時にゲルマン神話のオーディンやトールを信仰する人々と、唯一神であるキリストを信仰する人々の対立の物語でもあるんですけど、それ以上に、神話の世界と地続きのような物語なんです。本の紹介にも「ゲルマン神話の世界観で語られる重厚なファンタジー」とある通り、ワルキューレやオーディンが登場するし、柱に刺さっている「オーディンの約束」という剣をエルフギフトが引き抜く場面は、まるでニーベルンゲン伝説。でも、同じぐらいケルト神話の要素も入ってますね。半人半エルフのエルフギフトは、まるでケルト神話のクーフリンみたい。同じように異界で戦う技術を身につけるし、同じように死期も既に定められているんです。エルフギフトがワルキューレに連れられて行く異界の描写は、ヴァルハラというよりもむしろティル・ナ・ヌォグのイメージ... というのは個人的な印象なんだけど... そして叫ぶ石とか大釜といったモチーフもケルト的。...なんて細かいことはどうでもいいんですけど。(笑)
一応主人公はエルフギフトのはずなんですけど、でもむしろ神々の物語のような気がします。この物語に登場する人々は、それぞれに最善を尽くしてはいるんだけど、所詮は神々の操る駒にすぎないような... 神々の気紛れに振り回されてるという印象。そしてそれはエルフギフトも同じ。半分のエルフの血のせいか人間の世界にはあまり馴染んでいなかったエルフギフトも、本来なら神々の側に入る資格を持っていたようなのに、愛するワルキューレを失う覚悟でウルフウィアードの助命を嘆願した時に、その神性が失われてしまったようなんですね。それも神々の気紛れとしか思えない... だからこそ、最後にエルフギフトの血が流される必要があったのかな、とも思うんですが。...圧倒的な死と再生の物語でした。でも物語が幕を引いても、そこにあるのは平和な世の中ではないんですよね。
いや、いいですねえ、スーザン・プライス。他の作品も読んでみたいです!(ポプラ社)


+既読のスーザン・プライス作品の感想+
「エルフギフト」上下 スーザン・プライス
「ゴースト・ドラム」「オーディンとのろわれた語り部」スーザン・プライス
「500年のトンネル」上下 スーザン・プライス

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風も波も土地も、全てのものが音楽でコントロールされている世界... 歌使いになるための訓練が行われているこだまの島では、少し前から続いている嵐のために難破した本土の船の破片を探すために、年長の生徒たちが浜辺へと出てきていました。ひどい頭痛に悩まされていたライアルもその1 人。そんなライアルの耳に聞こえてきたのは、今まで一度も聞いたことがない、荒々しい歌。奇妙な船がやってきて、子供たちが食われてしまうという歌詞に、ライアルは思わず悲鳴を上げます。それは半人のマーリーの歌声。周囲の生徒たちには全く聞こえず、ライアルだけがそれを聞いたのです。一方、日頃からライアルを敵視し、上の者たちが自分の能力を軽視していると考えていたケロンは、洞窟の中で難破した船に乗っていた水夫を見つけ、その水夫を助けてこっそり本土へと渡ろうと考えていました。

エコリウムの5つの歌という言葉のない歌が支配する世界が舞台の物語。この世界の歌使いたちは時と場合に応じて、夢の歌チャラ、笑いの歌カシュ、苦しみの歌シー、恐怖の歌アウシャン、死の歌イェーンを歌い、聴いた者の記憶や感情をコントロールするという設定。歌が力を持つ世界という設定自体は、きっと他にもあるんでしょうけど、それでも魅力的。5つの歌は、ちょっと「古王国記」(感想)に出てくるハンドベルみたい。でも、巻頭に「「歌使い」たちの世界へのガイド」として、登場人物や語句に関する説明があるんですけど、こういうのって本来なら物語の中で説明されるべきですよね。まず本文ありきのはずなのに、ここの説明は物語の中の説明よりもずっと詳しいんです。全然分からない世界の物語なので、実際にはこのページがあって助かったんですけど、やっぱり何か違ーう。本文中の説明がもっと丁寧だったら良かったのに。長くなってしまうのは分かるんですけど、でも異世界を描く時には、もっときちんとに描写して欲しいです。
中には残酷な場面もあったりして、その辺りは正直好きではないんですが、マーリー(人魚)やケツァル(鳥人)といった半人たちを交えた物語自体は、なかなか面白かったです。でも主人公のはずのライアルよりも、ケロンの方が印象が強いような... まるでケロンの成長物語のようでした。(サンマーク出版)


+既読のキャサリン・ロバーツ作品の感想+
「ライアルと5つの魔法の歌」キャサリン・ロバーツ
「バビロン・ゲーム」キャサリン・ロバーツ

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「魔法の鍵」が共通のテーマとなったアンソロジー。ここに収められているのは、「M・J(ミック・ジャガー)笑いの女の子」(大原まり子)、「竜の封印」(大和真也)、「カムデン・マーケット」(小室みつ子)、「博物館」(風見潤)、「スタンスランの青い霧」(久美沙織)、「私はその鍵を、十年間持っていた」(波多野鷹)、「鍵の物語-『風街物語』異聞」(井辻朱美)、「To be a girl」(正本ノン)、「新宿鍵物語(キイストーリー)」(菊地秀行)の9編。

風待屋のsa-ki さんに教えてもらった本です。漫画家のめるへんめーかーさんが、友人の小説家さんたちと一緒になって作ったという本。共通のテーマは「魔法の鍵」。それも、「何でも開くことができるけれど、1度きりしか使えない」という鍵。
この、1度しか使えないというのがいいんですよねえ。登場人物の1人も言ってましたが、本当に開けたいものなんて、そうそう見つからなさそうです。たとえ見つけても、本当にこれでいいの?なんて考え始めたら、もう開けられなくなっちゃいそうですよね。
9人の小説家さんたちは、それぞれにめるへんめーかーさんの絵のイメージで話を作ったんだそうですが、この鍵を使うパターンが予想以上にバラエティに富んでいて、それぞれに面白かったです。特に好きだったのは、大好きな井辻朱美さんの風街シリーズの外伝「鍵の物語」かな。すごく井辻さんらしいお話でした。あと、小室みつ子さんの「カムデン・マーケット」もすごく好き。めるへんめーかーさんの絵にぴったりという意味では、これが一番だと思います。めるへんめーかーさんの単行本に入ってたら、何も疑わずにご本人の作品と思い込んでしまいそうなぐらい、イメージにぴったり~。
そして、今回読んだのは小説ばかりなんですが、この中の4つの作品が実際に漫画化されてるそうなんですよね。そちらも見てみたいなあ。...でもとっくに絶版のはず。こちらのコバルト文庫版もそうですしね。...探してみる?(集英社コバルト文庫)

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スターリング城にやって来たのは、追放された魔術師のホリス・キュー。前王の時にベンの元いた世界に追放されたホリスは、そこで宗教団体を作って荒稼ぎをしていたのですが、イカサマが信者にバレて、ランドオーヴァーに逃げ込んできたのです。しかも唐草箱の中に封じ込められていた強大な魔物のゴースも解放してしまっており... という「大魔王の逆襲」。スターリングシルバー城にやってきたのはリダル王と名乗る人物。妖精の霧を超えてランドオーヴァーを征服しにやって来たというリダルに、ベンとウィロウはミスターヤを河の長のところへ避難させようと考えるのですが、その途中で魔女のナイトシェイドに襲われ、ミスターヤは攫われてしまい... という「見習い魔女にご用心」の2冊。

先日3冊読んだので、忘れないうちに続きの2冊を... ということで、やり手の弁護士が百貨店の通販カタログで魔法の国を買って、そこの王様になってしまったランドオーヴァーのシリーズ。シリーズ物で1巻が一番面白いというのはよくあることだし、実際このシリーズもそうなんですけど(笑)、でも今回読んだ4巻5巻も悪くなかったです。1冊ずつとったら、まあ普通なんですが(失礼)、4巻5巻通して読むと魔女のナイトシェイドが大きな読みどころになっていて、それが展開そのものよりも面白かったんですよね。
この2冊、どちらも3つの視点から描かれていて、そのうちの1つがナイトシェイド絡み。4巻では、ベンとナイトシェイドとドラゴンのストラボが唐草箱の中に閉じ込められるんですが、3人(?)とも記憶を失って、「騎士」「貴婦人」「ガーゴイル」として放浪することになります。この時にベンとナイトシェイドの関係が大きく変化するんです。これにはびっくり。そして記憶を取り戻した時にナイトシェイドが受けた衝撃といったら! 5巻でもその衝撃が尾を引いています。これまで以上にベンを憎むようになったナイトシェイドはベンを抹殺するために色々画策するんですが、その行動が愛情の裏返しというか、前巻で心ならずも親しくしてしまった自分への歯がゆさに見えるんです。自分の感情の揺れに動揺してしまって、その動揺を違う感情にすり替えて自分を誤魔化してるというか。目的はベンを殺すことだけなのに、その割に「見習い魔女」にきちんと魔法を教え込んでるところも、なんか意味深な気が~。これまでは、「面白いアイディアがいくつかあったので、適当に放り込んで作ってみました」的なところがあって、あと一歩何かが足りなかったんですが、5巻にしてようやく深みが出てきたような気がします。
でもこのシリーズは、とりあえずこれでオシマイ。まだまだいくらでも続きそうだし、実際決着が付いてない部分もあるんですが、本国でもどうやら今のところ5冊しか出てないようです。(ハヤカワ文庫FT)


+シリーズ既刊の感想+
「魔法の王国売ります!」テリー・ブルックス
「魔法の王国売ります!」「黒いユニコーン」「魔術師の大失敗」テリー・ブルックス
「大魔王の逆襲」「見習い魔女にご用心」テリー・ブルックス

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クーフリンもフィン・マックールもケルト神話の中に登場する人物。クーフリンの方が時代が古いです。アルスター伝説の時代。そしてフィン・マックールはその3世紀ほど後のフィアナ伝説の時代。サトクリフ自身によるまえがきにもあるように、クーフリンは叙事詩、英雄物語と呼ぶのに相応しいような荒々しい物語で、フィン・マックールは叙事詩というより民話や妖精物語といった感じかもしれません。多分、フィン・マックールの息子・アシーンが、妖精の女王・ニーヴと共に常若国ティル・ナ・ノーグに去ってしまうエピソードが入ってるのも大きいと思うんですけどね。これは浦島伝説のように、何年か経って戻って来てみたら何百年も経っていたというものです。
先日読んだO.R.メリングの「ドルイドの歌」にクーフリンの牛捕りのエピソードが描かれていたので久々にこの辺りを読みたくなって、まだ読んだことのなかったこの本を借りてきました。

ローズマリー・サトクリフの作品は、以前「ケルトの白馬」を読んだだけで(感想)、しかもそれはサトクリフのオリジナルな物語だったので、純粋な歴史物(?)を読むのは初めて。なのでこの2作しか知らないんですが、もしかしたらサトクリフの歴史物って、オリジナルには忠実だけど、その分遊び心はあまりないのかもしれないなあ、なんて思いました。読む前からそんな予感はしてたんですけどね。クーフリンに関して言えば、O.R.メリングの描き出したクーフリンの方が意外な少年らしさがあって好きだったし、フィン・マックールに関して言えば、「オシァン ケルト民族の古歌」があんまり良かったものだから(感想)、なんだかこちらがとっても散文的に思えて仕方なく... いえ、本当に散文だから仕方ないんですけど...(笑) 読みやすいのはこちらの方が上だと思うんですが、美しさとか雄々しさとか、気高さなんかがちょっと足りないような気が...。とはいえ、決してけなしているわけではなく。応用編を読む前に読むべき作品というか、この辺りの世界には、まず最初にサトクリフから入ったら楽しかったんだろうな、って感じです。きっとサトクリフは、オリジナルの空気を掴むのが上手いんでしょうね。ケルトの魅力の1つは斜陽の美。どちらも散り際が鮮やかでした。(ほるぷ出版)


+既読のローズマリー・サトクリフ作品の感想+
「ケルトの白馬」ローズマリー・サトクリフ
「炎の戦士クーフリン」「黄金の騎士フィン・マックール」ローズマリー・サトクリフ

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「太陽の東 月の西」というのは、ノルウェーの民話集。P.C.アスビョルンセンとヨルゲン・モオという2人の民話研究家が採取したもので、本になったのはグリムよりも早かったのだそうです。私も子供の頃に岩波少年文庫から出ている版はよく読んでたんですけど(右)、今回読んだのは、カイ・ニールセンの挿絵入りのもの。肝心の表紙が出てこないのが悲しいんですが、これがものすごく美しいんです~。やっぱりニールセンの絵は素敵。妖しい表情に、ぐぐっときちゃいます。

北欧、特にノルウェーの民話といえばトロルが出てくるのが特徴というのは知ってたんですけど、今回の本のまえがきに「動物が主人公を救うという形式」が指摘されていたのには、ちょっとびっくり。いや、確かに動物が助けてくれる話は多いし、ここに収められた7編は全部そういう形ですが... でもね、民話にはそういう話って結構あるじゃないですか。私としては、むしろロシアのせむしの小馬とか火の鳥の方が印象強いし、咄嗟にはあんまり思い浮かばないんですけど、ペロー童話の「長靴をはいた猫」なんかもそうですよね。これがどの程度ノルウェーの民話の特徴と言えるのか、逆に疑問がむくむくと。岩波少年文庫版には18編入ってるので、思わずこちらも読んでしまいましたが、ニールセン版にも入ってる7編ぐらいしか主人公が動物に救われる物語はなかったです。うーん??(新書館・岩波少年文庫)

そしてカイ・ニールセンといえば、先日こんな本を買ってしまいました。「Nielsen's Fairy Tale Illustrations in Full Color」。(左下)エドマンド・デュラック、アーサー・ラッカムのも一緒に。どれも50~60ページという薄い本なんですけど、題名通りフルカラーの絵が50枚ほど収められていて、とても素敵なんです。これはお値打ちでした! ...と思ったら睡記の睡さんも買ってらしたようで~。(記事
という私も、カイ・ニールセンが一番ツボでした~。
  

そして今、気になってるのは下左側の2冊。ヴィクトリア朝時代のイギリスを代表する挿画家、ウォルター・クレインです。早くからラファエル前派の影響を受けていて、ウィリアム・モリスらとともにアーツ・アンド・クラフト運動を進めたという人物。「絵本の父」とも呼ばれているとか。一番右のド・モーガンの「フィオリモンド姫の首かざり」を読んだ時から、素敵な絵だなあと思ってたんですよね。特に見たいのは、左の「The Faerie Queen」。思いっきり好みのツボのような予感です~。
  

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双子の妹・オナーがアイルランドで亡くなって1年、ローレルは再びカナダから祖父母のいるアイルランドへと来ていました。神話や伝説が好きで、妖精を信じていたオナーは、日記にローレルが知らなかった様々なことを書き残しており、どうやら何かの使命を果たす人間に選ばれていたようなのです... という「夏の王」。そして、アイルランドからカナダへと引っ越すことを決めた父親に憤慨していた少女ダーナの前に現れたのは、妖精の女王。上王(ハイキング)の使者が国境ではね返されて困っており、ダーナにその使者の役目を務めて欲しいというのです。それをすれば心の奥底にある望みを叶えてくれると言われ、ダーナは3歳の頃に突然消えたという母親のことを考えます... という「光をはこぶ娘」の2冊。

先日読んだO.R.メリングの3冊のケルトファンタジーシリーズの続きです。シリーズとは言っても話がきちんと繋がってるわけじゃないんですが、登場人物にも共通点がなかった前3冊とは違って、「妖精王の月」に出てきた人たちがちらほらと顔を見せるようになってきました。こちらも面白かったんだけど、どこか次の作品への繋ぎっぽい感じもちょっぴりあるかなあ。でも、今までは全部アイルランドが舞台で、カナダとかアメリカとかがちらっと出てくる程度だったんですけど、訳者あとがきによれば次はカナダが舞台らしいんです。そろそろ登場人物が出揃った? 次こそ色んな出会いがあるのかも~。楽しみです。
でもこのシリーズって全部で何冊になるんでしょう。Amazon.comを見る限り、次のは多分「The Book of Dreams」だと思うんですけど... 「光をはこぶ娘」の原書は2001年発行で、日本語訳が出たのは2002年。「The Book of Dreams」は2003年発行なのに、日本語訳が未だに出てないということは、何か問題でもあったのでしょうか。シリーズが終わるまで相当待たされるかもしれないですねえ。まあ、話は1冊ずつで独立してるので、次が気になって身悶えるということはないんですが。(笑)(講談社)


+シリーズ既刊の感想+
「妖精王の月」「歌う石」「ドルイドの歌」O.R.メリング
「夏の王」「光をはこぶ娘」O.R.メリング
「夢の書」上下 O.R.メリング

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Note


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