Catégories:“2007年”

Catégories: / /

 [amazon]
高校の英語教師をしているトーマス・アヴィの夢は、作家マーシャル・フランスの伝記を書くこと。9歳の誕生日に父親に「笑の郷」を贈られて以来、手に入る限りの本を集め、フランスについての細かいことを色々と調べているのです。ある日の午後、稀覯本を扱う書店に立ち寄ったトーマスは、何年も絶版になっていた「桃の実色の影」の初版が置かれているのを見つけます。しかしその本は既に買い手が決まっていました。買い手のサクソニー・ガードナーに、100ドルで譲って欲しいと持ちかけるトーマス。2人はやがて一緒に組んでフランスの伝記を書くことになり、フランスが亡くなるまで住んでいたミズーリ州ゲレインへと向かうことになるのですが...。

ジョナサン・キャロルの作品は初めて。実はこの本、ずーーーっと積んでたんですよね。いつから積んでるのか不明。サイトを始めた2000年頃からなのか、それとももっと前からなのか... 誰かにオススメしてもらったか、何かで紹介を見たのか、それすら覚えてないほど。(笠井潔さんが創元推理文庫の企画でベスト5に挙げてたから買ったと思い込んでたんだけど、それはコリン・ウィルソンの「賢者の石」だったらしい...) でも先日翻訳家の浅羽莢子さんが亡くなって、この本も読まなくちゃなあと思っていたところに(浅羽さんは、ジョナサン・キャロルの作品を沢山訳してらっしゃるのです)、先日、檀さんがたらいまわし企画第30回「フシギとあやし」で挙げてらしたんですよね。(記事) 既に十分過ぎるほど熟成済。ようやく手に取ってみました。

最初のうちは緩やかな展開なんですが、トーマスとサクソニーがゲレインに着いた頃からは、どことなく不安感が付きまとい始めることに。これまで伝記を書こうとしていた人々にはけんもほろろだったはずのアンナが親切なのはなぜ? ゲレインの人々と会った時にサクソニーが感じていたのは何? 町の人々が常に全てを知っているのはなぜ? 残念ながら夢中になるところまではいかなかったんだけど、面白かったです。この最後の一文がスゴイ。
それにしても、マーシャル・フランスが実在の作家さんではないのが、ものすごく残念。「笑いの郷」「緑の犬の嘆き」「桃の実色の影」... どれも読んでみたくなっちゃうんですもん。一番読みたくなってしまったのは「笑の郷」ですね。いっそのこと、ジョナサン・キャロル自身に書いてもらいたいほど!(創元推理文庫)

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: / /

  [amazon] [amazon]
1912年4月10日。世界最大の客船・タイタニックが出航し、楽師として雇われた7人も乗船。バンドマスターはジェイソン・カワード。何度も楽師として船に乗り込んだ経験を持つ30台半ばの男。一緒に乗り込んだのは、ジェイソンと長年組んでいるロシア人バイオリニスト・アレックス、ビオラ奏者のジム、チェロ奏者のジョルジュ、中流階級の教師のような雰囲気を持つピアニストのスポット。急遽ベース担当として呼ばれた老イタリア人・ペトロニウス、そしてウィーンから出てきたばかりの17歳のダヴィットという面々でした。

タイタニック号では、沈没する時まで、楽団員が演奏をし続けていたんだそうですね。この作品は、その楽団員たちを描いた物語。とは言っても、ここに描かれているのは、実際にタイタニック号に乗っていた楽師たちではなくて、ハンセンの創作した人物たちなんだそうです。タイタニック号の細部や航海の様子、その船長などといった部分は忠実に描き、そこに全くのフィクションを作り上げたのだとのこと。
その7人の楽団員たちは、生まれた国も育ちもバラバラ。この作品では、ジェイソン、アレックス、スポット、ペトロニウス、ダヴィットという5人について、1人ずつ描き出していくんですが、その共通点は、幸せだったはずの人生からいつの間にか転落し、彼らを取り囲む全てが崩壊していったということ。きっかけは人それぞれでも、5人とも見事なほど深淵へと堕ちていくんですね。タイタニック号のような豪華客船ではあっても、船の楽師というのは決して高い地位ではなく、むしろ楽師としては、吹き溜まりと言っていい状態。彼らの破滅の総仕上げがタイタニック号の沈没となり、それがまるで古き良き時代の終焉でもあるような...。
タイタニック号が舞台ではありますが、船の場面はそれほど多くないですし、重要でもないです。船が氷山にぶつかってから沈没するまでがあまりにあっさりしていて、逆に驚いたほど。私は映画「タイタニック」は観てないんですけど、予告編は見てるから雰囲気はなんとなく分かるし、「ポセイドン・アドベンチャー」はテレビで観た覚えが... とは言っても、それもあまり覚えてなくて、背の高い神父が頑張ってた場面が浮かんでくる程度なんですけど(笑)、ポール・ギャリコの原作は読んでるんですよね。(感想) でも、そういった作品とはまるで違っていました。普通なら、氷山にぶつかってからが本番といった感じですが、こちらでは全然。

全編通して回想シーンがとても多いんですけど、その中でもジェイソンのお父さんが語る、宇宙に存在する壮大な音楽について、バイオリンの弦を使ったケプラーの法則の実験の場面がとても素敵でした。そして人物的に惹かれたのは、ピアニストのスポット。ただ、ここで語られているのは、7人の楽師のうち5人だけなんですよね。あとの2人、ジョルジュとジムについて語られなかったのはなぜなんだろう? 7人中7人が破滅へまっしぐらとなると、それはちょっと出来すぎだから? でもこの2人の人生も気になります。特に本好きのフランス人のジョルジュ。だって、彼がギリシャ神話をモンマルトルに例えて説明するの、結構面白かったですもん。(笑)(新潮文庫)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / /

 [amazon]
親父が女を雇ったと聞いて驚く「俺」たち兄弟。それははるばるペンシルバニアからオンボロ車でやって来た、19歳のマーサ・ノックスで... という表題作「巡礼者」以下12編が収められた短編集。

新潮文庫で読んでますが、元々は新潮クレストブックスの作品。いやー、良かったです。私は基本的に短編集は苦手なんですけど、これは良かった。短編集といえば、同じく新潮クレストブックスから出ていたジュンパ・ラヒリの「停電の夜に」もすごく良かったし(感想)、やっぱり短編の書き手となる人っているものですね。素敵な短編を読んだ時って、それほどの長さではなくても、まるで長編を読んだ時のような満足感が残りませんか~?
どの物語も何か特別なことが起きるわけではないし、むしろ起伏は少なすぎるほど少なくて、しかもあっけないほどあっさりと終わってしまいます。ごくごく淡々と日常の場面を切り取っているだけ。それなのにとても心に残るんです。私が特に好きなのは、「デニー・ブラウン(15歳)の知らなかったこと」。そしてダントツで好きなのは「最高の妻」。でもどれも良かった。素敵です。やっぱりクレストブックスはいいなあ。でもクレストブックスで1つ難点なのは、あまり文庫にならないで、ソフトカバー版がそのまま絶版になっちゃうことですね。そりゃソフトカバーの装幀は素敵だし軽くて読みやすいし、揃えたくなっちゃうんですけど、お財布的にも置き場所的にもそれはちょっと無理なんですもん。せめて文庫にして欲しいー。(新潮文庫)

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: / / /

   [amazon] [amazon] [amazon]
シカゴの辣腕弁護士ベン・ホリデイは、2年前に妻とそのおなかの中にいた子供を亡くして以来、自分の殻に閉じこもりがち。弁護士会を何度もすっぽかし、最後に残った友達は同僚のマイルズ・ベネットただ1人。そんなある日、亡き妻宛てに有名デパートのクリスマスカタログが届きます。何とはなしに見ていたベンの目に飛びこんできたのは、「魔法の王国売ります」の文字。値段は100万ドル。一流デパートが出す広告とも思えないまま、ベンはその魔法の王国が気になって仕方なくなるのですが...。

ランドオーヴァーシリーズ3冊です。最初の1冊は以前にも読んだんですけど、細かい部分を忘れているので再読。(感想
いやー、やっぱり設定が面白いです。主人公が弁護士というのがいいんですよねえ。弁護士だから頭もいいし、文字通り弁も立つわけで。しかも趣味はボクシング。ちょっとは戦えるわけです。(笑)
ランドオーヴァーには魔女もいればドラゴンもいて、ノームやコボルト、シルフ、妖魔なんかもいて、思いっきりファンタジーの世界。でも主人公が大人でしかも弁護士というだけあって、物事の進め方がかなり現実的。この点、子供が主人公のファンタジーとは一味違います。そして1巻で完全にランドオーヴァーに引っ越してしまったかと思いきや、2巻3巻でもまだアメリカの場面が結構登場してました。そういうのがウリの1つなんでしょう。私としては、アメリカの場面が入るのもいいけど、基本はランドオーヴァーでお願いしますって感じなんですが。
このシリーズ、今のところ5冊出てます。5冊で完結してるのかしら? やっぱり1冊目が一番面白かったな、なんてことにもなりそうなんですけど、近いうちに読んでみようと思います。(ハヤカワ文庫FT)


+シリーズ既刊の感想+
「魔法の王国売ります!」テリー・ブルックス
「魔法の王国売ります!」「黒いユニコーン」「魔術師の大失敗」テリー・ブルックス
「大魔王の逆襲」「見習い魔女にご用心」テリー・ブルックス

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / / /

 [amazon] [amazon]
いつの間にか悪夢をもたらす才能を失ってしまった夢馬のインブリは、闇の馬将軍によって、夜の悪夢の運び手から白昼夢を運ぶ任務に変えられてしまうことに。インブリは、闇の馬将軍がトレント王に宛てた「馬の乗り手(ホースマン)にご注意あれ」というメッセージを持って、生まれて初めて昼のザンスに行くのですが... という「夢馬の使命」。
トレント王が王座を退き、ドオアがザンスの王位について5年。秘密の会議をするためにゾンビーの頭の城を訪れるドオアとイレーヌ、そして3歳の娘のアイビィなのですが、城に近づいた時、イレーヌは夢馬のインブリとドラゴンとアイビィの恐ろしい幻影を見ることに... という「王女とドラゴン」。

魔法の国ザンスシリーズの6巻と7巻です。ここまでくると、もうすっかり初期のザンスシリーズからは変わってしまってますねー。登場人物たちも、すっかり世代交代の時期に来てるようです。やっぱり最初の3冊の頃の雰囲気が良かったなあ、と思ってしまいます。それでも「夢馬の使命」の方は面白かったんですけど、「王女とドラゴン」の方は... そろそろ続きを読むのがしんどくなってきました。
この「夢馬の使命」、原題が「Night Mare」なんです。そのまんま訳せば、「夜の雌馬」という意味。明らかに「Nightmare(悪夢)」とかけてるんですよね。ザンスらしいだじゃれ。で、この言葉の「Night Mare」の日本語訳が「夢馬」。そうなると「夢魔」にも通じるわけです。いつものことながら、山田順子さんの翻訳センスは見事だなあ、と本題とは関係ないところで感心してみたり。(ハヤカワ文庫FT)


+シリーズ既刊の感想+
「カメレオンの呪文 魔法の国ザンス1」ピアズ・アンソニイ
「カメレオンの呪文」「魔王の聖域」「ルーグナ城の秘密」ピアズ・アンソニイ
「魔法の通廊」「人喰い鬼の探索」ピアズ・アンソニイ
「夢馬の使命」「王女とドラゴン」ピアズ・アンソニイ

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / / / /

  [amazon] [amazon]
12世紀末のイギリス。ウェールズ近くのコルディコットの荘園領主の息子・アーサーは13歳。神父に習う読み書きの勉強は楽しいものの、目下の夢は騎士に仕える従者としての修業をすること。しかし16歳の兄は12歳の時に修業に出してもらったのに、アーサーが修業に出してもらえる見込みはまるでないようなのです。そんなある日、アーサーは父親の友人のマーリンに黒曜石の石を渡されます。絶対に秘密だと言われたその石を自分の部屋で見ていたアーサーは、石の表面に突然見知らぬ情景が映し出されて驚きます。

これは、ソニーマガジンズから全3巻の単行本で刊行されている「ふたりのアーサー」と同じ作品。角川文庫から再版されるに当たって題名が変わったようですね。でも1巻が2004年、2巻が2005年に出たのに、3巻目がなかなか出ないんです。本当は出揃ってから読もうと思ってたんだけど、積んでるのも気になるし、待ちきれなくて先に読んでしまいましたー。
獅子心王リチャードからジョン王へと移り変わろうとしているイギリスが舞台で、13歳の少年アーサーの視点から日記のように描かれていきます。最初のうちは荘園の生活が事細かに描き出されてるだけで、それはそれでとても興味深いんですが、アーサーがマーリンに石をもらってから、話が一気に動き始めるんですね。石が見せるアーサー王伝説の場面は、現実のアーサー少年の出来事とどこかしらリンクしてて、アーサー王の出生の秘密が明かされるとアーサー少年のことも明らかになったりします。...でも、そこにどういう意図があるのかはまだ不明。私はてっきりアーサー少年がアーサー王の生まれ変わりで、アーサー王がブリテンの危機に復活するという話なのかと思ったんですけど、どうやら違うようで... マーリンについてもよく分からないままだし。
それにしても、この話に登場する人たちって、ほんと全然アーサー王の話を知らないんですね。アーサー少年のおばあさんが、アーサー王のこととは知らずに眠れる王様の話をしたりするんですけど、誰もアーサー王という存在自体知らないようです。なんだか不思議になってしまうほど。字の読めない人たちはともかく、神父ですら「ティンタジェル」が何なのか全然知らないんですもん。この当時は本当にそうだったのでしょうか。
でも3巻まで全部読まないと、感想が書きにくいな。3巻は一体いつ出るんでしょう?(角川文庫)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / / /

[amazon]
amazonの紹介は、「7世紀頃に成立したアイルランドの伝承詩「ブランの航海」の解題と解読、又、その背景にあるケルト文学における冒険譚・航海譚の特徴や、異界への旅の意味を探った論文を収録」。一般には「ブランの航海」として知られる、「フェヴァルの息子ブランの航海と冒険」に関する論文です。この詩は7世紀頃に成立したそうで、ケルト異界を描く冒険譚と航海譚の2つの要素を兼ね備えており、古代アイルランド文学の中でも重要な作品と考えられているのだそう。

論文なので、「へええ、なるほど」とは思っても「面白かった」って感じではないんですが、「ブランの航海」と一緒に、「コンラの冒険」「マールドゥーンの航海」「青春の国のアシーンの物語詩」といった物語群も紹介されてるのがありがたかったです。こういうの、なかなか読めないですからねー。どれもケルトの異界にまつわる物語で、その異界の共通点は、「はるか彼方の海上の国」「不老不死の至福の世界」。そして「マールドゥーンの航海」だけは、旅の後普通に帰国できるんですけど、他の3つの物語では戻った途端に、現世での時間の経過を思い知らされることになります。丁度「浦島太郎」と一緒ですね。実際、「アシーンと浦島伝説をめぐって」という副題で、「異界と海界の彼方」という文章も収められていました。
ただ、この論文では、ケルトの物語が大きく冒険譚と航海譚に分けられているんですけど、肝心の冒険譚と航海譚の違いが今ひとつ分からないんですよね。航海譚だって冒険なんだから、冒険譚の一分野でいいじゃないの。ってどうしても思ってしまうんですけど、「冒険譚と対照的なのが航海譚であり」という文章があるので、海に出れば航海譚、それ以外は冒険譚というだけではないのでしょう...。何かもっと明らかな違いがあって、でも研究者には常識だから、ここには触れられていないのかも。うーん、私の知識不足かあ。(中央大学学術図書)

| | commentaire(0) | trackback(0)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.