Catégories:“2007年”

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子供の頃から「ギリシア・ローマ神話」でお馴染みだったブルフィンチ。神話関係で有名な人なので、ずっとイギリス人か、そうでなくてもヨーロッパの人なんだろうと思っていたんですけど、実はアメリカ人だったんですねー。「ギリシア・ローマ神話」「中世騎士物語」、あと「シャルルマーニュ伝説」(近々読む予定)の3冊は、どうやらイギリス文学を読もうと考えているアメリカ人のために書かれた本のようです。必要な知識を手っ取り早く得るための本だったのか。道理で、幅広く分かりやすく網羅しているはずです。確かにヨーロッパの文学を読む時は、神話とか英雄伝説といった基礎知識があった方が絶対いいですものね。あと聖書も。...本書の訳者の野上弥生子さんも、この本や「ギリシア・ローマ神話」を訳したのは、「西欧の芸術文化を理解するにあたって、なくてはならない知識を一般に与えたいためであった」と書かれていました。確かに騎士道物語や英国における英雄伝説に関する幅広い知識が得られる本書は、入門編にぴったり。

以前、同じブルフィンチの「新訳アーサー王物語」を読んだ時は、その浅さに正直がっくりきたんですが、これはなかなか面白かったです。まず冒頭には、中世英国の歴史。社会的な状況や当時の騎士に関する簡単な説明があって、シェイクスピアで有名なリア王なども登場。次はアーサー王伝説。これが本書の中心ですね。明らかにマロリーの「アーサー王の死」を元にしたと思われます。そして、アーサー王伝説も登場する中世ウェールズの叙事詩「マビノジョン」。「アーサー王の死」はもちろん、「マビノジョン」も去年読んでいるので(記事)、特に目新しい部分はなかったんですが、それでも楽しめました。そして最後に「英国民族の英雄伝説」の章では、「ベイオウルフ」「アイルランドの勇士キュクレイン」「油断のないヘレワード」「ロビン・フッド」という4人が簡単に取り上げられています。この章に関してはごくごく簡単な取り上げ方なので、特にどうということもないのですが... ウォルター・スコットの「アイヴァンホー」にロビン・フッドが登場してると知ってびっくり。そうだったんだ! 迂闊にも全然知りませんでした。うわー、ロビン・フッド大好きなんです。これはぜひとも!読んでみたいと思います。(岩波文庫)


+既読のトマス・ブルフィンチ作品の感想+
「中世騎士物語」ブルフィンチ
「シャルルマーニュ伝説」トマス・ブルフィンチ

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バグパイプ奏者のジェーニー・リトルは、祖父の家の屋根裏部屋で、祖父の旧友であり、今は亡き作家のウィリアム・ダンソーンの未発表の小説本を見つけます。そのタイトルは、「リトル・カントリー」。限定発行一部のみという表記のある羊皮紙の本には、祖父に宛てて、この本は絶対に手放してはならない、そして何があろうとも絶対に公表してはならないという手紙がついていました。元々ダンソーンの大ファンだったジェーニーは、屋根裏部屋に座ったまま、その話を読み始めます。しかしジェーニーがその本を読み始めたことによって、何かが動き始めたのです。ジェーニーの周囲に妙な人々が出没し始めます。

隠されていた本を見つけた途端、謎の秘密結社が暗躍し始める現実世界の物語は、ミステリアスなサスペンス風。魔法で小人にされてしまった少女が仲間と一緒に魔女と戦うという、ダンソーンが書いた本の中の世界は、魔女と魔法のファンタジー。この2つの世界が交互に描かれていくんですが、そのどっちもが面白い! 読み始めた途端、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。舞台であるイギリスのコーンウォールもすごく魅力的に描かれてるんです。で、てっきりイギリスの作家さんなのかと思ったら、カナダ在住のオランダ人と分かってビックリ。でもチャールズ・デ・リントは元々作家である以前にケルト音楽奏者なのだそうで、納得。何度も訪れてるんでしょうね。音楽家だったなんて。道理で演奏シーンがリアルに楽しそうなわけだ!(巻末には、主人公の作曲した曲の譜面までついてました)
そしてこの作品で面白いのは、ジェーニーとその祖父、そしてジェーニーの友人2人が、同じ本で違う物語を読んでいるということ。たとえ同時に文字を追っていたとしても、それぞれに読んでいる物語はまるで違うというところなんです。ジェーニーが読んでるのはファンタジーだけど、他の3人が読んでるのはそれぞれ、場所的な設定はそのままだけど、冒険物だったり、恋愛物だったり。作中にはジェーニーの読んだ物語しか載っていないのですが、他の3人の読んだ物語も読みたくなってしまいました。
ただ、肝心の主人公のジェーニーがあまり好きになれなかったのが残念... これほど癇癪持ちだと周囲も大変でしょうね。悪役の女性の方がよっぽど可愛く感じられてしまいました。(苦笑)(創元推理文庫)


+既読のチャールズ・デ・リント作品の感想+
「リトル・カントリー」上下 チャールズ・デ・リント
「ジャッキー、巨人を退治する!」チャールズ・デ・リント

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猫好きで知られる作家20名による猫ファンタジー競作集。それぞれに既成の辞書には存在しない、架空の猫熟語を思い浮かべ、それにちなんだ物語を書き下ろしたという趣向なのだそうです。以前sa-ki さんのところで見かけて、井辻朱美さんの風街シリーズの作品も載っていると知って、ずっと気になってた本。どれも10ページ前後という短い作品ばかりなんですが、それぞれに味わいがあって面白かったです~。東雅夫さんも「猫たちによって誘われる『異界』を描いた物語と、異界への導き手でたる『猫』たちの玄妙なる生態を描いた物語」の2種類に大別されて驚いたと書いてらっしゃいますが、本当にその通りですね。やっぱり1匹の猫の中に可愛らしさとか妖しさ、怖さが自然に共存するというところが、現実と異世界を結び付けるのにぴったりなのかも。

私が気に入ったのは、ふと気がつくとファンタジックな世界に招き入れられていた「猫火花」(加門七海)、スキマにも自然体で対応している猫的性格が可笑しい「猫眼鏡」(谷山浩子)、こんな書店が本当にあれば...と思ってしまう「猫書店」(秋里光彦)、猫の妖しさが澁澤龍彦の世界によく似合いながらも、妙に可愛らしい「猫寺物語」(佐藤弓生)、大好きな風街を舞台にした「魔女猫」(井辻朱美)、日記調の作品がこのアンソロジーの中では珍しくて存在感がある「失猫症候群」(片岡まみこ)、哀しさの中にほのぼのとした暖かさが残る「猫波」(霜島ケイ)など。
その中でも一番良かったのは、加門七海さんの「猫火花」かな。加門七海さんってこういう作品も書かれるんですね。このシリーズで、もっと書いてもらいたい!(日本出版社)

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「仕掛人・藤枝梅安」シリーズ、読み終えてしまいました。7巻「梅安冬時雨」は「シリーズ白眉の長編完結を目前に、著者が急逝した痛恨の作品」だそうで、「そろそろ、こちらの仕掛をしてもいいころだ」「いつでもようござんすよ」という、すごーくいいところで終わってしまってます。うわーん。それに、この巻に浅井新之助という往年の剣客が登場するんですが、これが秋山小兵衛に「近世の名人、それも希代の名人は、ただひとり、浅井為斎先生あるのみじゃ」と評されたという人物。既にちょっとした活躍をしてるんですが、この後にもまだ重要な役回りをすることになっていたんじゃないかと思うんですよね。それほど前面に出てないのにものすごく存在感があるので、その辺りが読めないのがすごく残念。シリーズとしてすっごく面白かっただけに、もっともっと読みたかったですー。

「梅安料理ごよみ」は、「剣客商売包丁ごよみ」と同じく、作中に登場する様々な料理を紹介した本。とは言っても「剣客商売包丁ごよみ」のように池波正太郎氏自らが紹介してるわけではなく、佐藤隆介・筒井ガンコ堂両氏によるものだし、レシピも写真も、ましてや絵もないんですが、作中の文章を抜き出して、そこに書かれた料理を紹介するというのは同じ。(私の場合、直接写真を見てしまうよりも文章で読む方がそそられるので、写真がないのは無問題) 「剣客商売」と同じ頃の料理なのに、料理はそれほど重なってないのかな? 新鮮な魚介類が美味しそうでした。海の海水と川の淡水が混ざり合う江戸湾で取れた魚介類には、独特の風味があったのだそうで、それが「江戸前」なんですって。知らなかった。それにはまぐりなんて今じゃあ高級品になっちゃってますけど、アサリとかはまぐりはこの頃は庶民の味だったんだとか。池波正太郎さんのインタビューを読んでいても、ほんと江戸時代のことをよく知ってた人なんだな... というよりもむしろ、江戸時代と地続きで生きてた人なんだなって思いますね。

剣客商売が全19冊、鬼平シリーズが全24冊、梅安シリーズは7冊と、梅安シリーズだけが妙に少ないんですが、これについては池波氏ご自身が語ってらしたようです。「乱れ雲」のあとがきで引用されていました。

「やはりね、そう殺せないわけですよ、金もらって殺すのがね。毎月毎月書くっていうわけにはいかないものねえ。毎月毎月ね、金もらって人殺してることになりますからねえ。そこが書きづらい...。」
「うーん、とにかく書いている小説で、これがいちばん難しいですよ、『鬼平』よりも『剣客商売』よりも。」

なるほどねえ。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「殺しの四人」「梅安蟻地獄」池波正太郎
「梅安最合傘」「梅安針供養」池波正太郎
「梅安乱れ雲」「梅安影法師」池波正太郎
「梅安冬時雨」「梅安料理ごよみ」池波正太郎

+既読の池波正太郎作品の感想+
お正月休みの間に読んだ本(7冊) (「剣客商売」1~4)
「剣客商売」5~8 池波正太郎
「剣客商売」9~12 池波正太郎
「剣客商売」13~16+α 池波正太郎

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雨宿りに飛び込んだ小屋で、かつての恩師の死のきっかけとなった男を見かける短編「梅安雨隠れ」、梅安を裏切り者として制裁しようとする白子屋菊右衛門が大坂から江戸に仕掛人を送り込み、自らも江戸へ赴くことになる「梅安乱れ雲」、白子屋残党が各方面から梅安を狙う「梅安影法師」。

短編の「梅安雨隠れ」は「梅安乱れ雲」の冒頭に収められているんですが、これだけは独立した作品で、その後からが長編。この「梅安乱れ雲」が、このシリーズのクライマックスですね! 白子屋菊右衛門との因縁の対決。そして「梅安影法師」がその余韻。この辺りはずっと話の続いている長編のような感じでもあります。なんで「雨隠れ」をここに入れたんだろう? 前の巻に入れてしまえば良かったのに... と思ったら、前の巻「梅安針供養」も長編だったのでした! そうそう、話はここからもずっと続いていたんでしたね。...まあ、それを言ったら、シリーズ全作品続いているとも言えるのだけど。(笑) でもこの辺りは長編ならではの話の絡み具合と盛り上がりぶり。いや、いいですねえ。特に「乱れ雲」の緊迫感はもう堪らないー。
それにしても、白子屋菊右衛門が考え出した仕掛の方法は、梅安の最大の弱点を突くもの。闇の世界は正々堂々となんてしてられないから仕方ないんですが... これはツラい。そして白子屋が「梅安は仕掛人の掟を破った」という理由で殺そうとしているうちはまだ良かったんですが、「藤枝梅安というやつ、表向きは鍼医者をしているが、裏へまわると強欲非道な奴でのう。こいつ、生かしておけば、世のため人のためにならぬ」と言い始めた時はぞぞーっ。色んな意味で怖い台詞...。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「殺しの四人」「梅安蟻地獄」池波正太郎
「梅安最合傘」「梅安針供養」池波正太郎
「梅安乱れ雲」「梅安影法師」池波正太郎
「梅安冬時雨」「梅安料理ごよみ」池波正太郎

+既読の池波正太郎作品の感想+
お正月休みの間に読んだ本(7冊) (「剣客商売」1~4)
「剣客商売」5~8 池波正太郎
「剣客商売」9~12 池波正太郎
「剣客商売」13~16+α 池波正太郎

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紀元前1500年ミノア時代の後期、大森林に逃げ込んだ海賊を討伐しに行っていたクレタ王国のミノス王の弟・アイアコスは、数年間の行方不明ののち、耳の先が尖り、緑がかった褐色の髪をしている子供を2人連れて帰ってきます。姉のテアが16歳、弟のイカロスが15歳になった時、2人が暮らす宮殿にアカイアの侵略軍が入り込み、2人は翼のついた魚に乗って宮殿から脱出。しかし行き着いたのは、父からは行ってはいけないと言われた「けものの国」だったのです... という「ミノタウロスの森」と、その前日譚の「幻獣の森」。

「薔薇の荘園」(感想)がものすごく素敵だったトマス・バーネット・スワン。「ミノタウロスの森は」はスワンの処女長編なのだそう。「薔薇の荘園」の詩的な雰囲気に比べると、こちらはちょっと物足りないかなと思うんですが、それでも幻の獣たちが暮らす森林の情景はなかなかでした。ここから「薔薇の荘園」のあの雰囲気に繋がっていくんでしょうね。
ギリシャ神話に登場するミノタウロスは、牛頭人身の怪物。ミノス王の妻と牛の間に生まれたミノタウロスは迷宮に閉じ込められて、アリアドネの糸を使ったテセウスに退治されたというエピソードがあります。でもここに登場するミノタウロスのユーノストスは、神話のミノタウロスと同じ牛頭人身の獣ながらも、「気は優しくて力持ち」。戦闘時には獰猛果敢になるんですけど、普段はごくごく穏やかな存在。こういう作品を読んでると、元々はこういう存在だったのに、こんなことがあったからギリシャ神話のエピソードが生まれてきたのかな、なんて思えるのが楽しいところです。(迷宮を作ったダイダロスがちゃんと存在してるらしいのが、また面白い)

「幻獣の森」は、「ミノタウロスの森」にも登場した木の精(ドリュアス)のゾーイが回想する、ユーノストスとドリュアスのコーラ、そしてクレタの王子アイアコスの物語。「ミノタウロスの森」で、ユーノストスがテアとイカロスにその両親のことを一通り語っているので大筋では一緒なんですが、年齢その他の設定に色々と食い違いが! これはもしやユーノストスが姉弟に生々しい話を聞かせたくなくて脚色したのかしら?と思ったんですが... 著者あとがきによると、そういう意図はなかったようです。
いずれにせよ、もっと人間の王子とドリュアスの素直な悲恋物かと思っていたのですが、実はあまり気持ちのよくない物語でした... 恋に恋するコーラの身勝手な話だったのか! とはいえ、「ミノタウロスの森」では、あまり上品とは言えない年寄り女だったゾーイが、こっちではすごく魅力的で良かったです。哀しいんですけどね。 (ハヤカワ文庫FT)


+既読のトマス・バーネット・スワン作品の感想+
「薔薇の荘園」トマス・バーネット・スワン
「ミノタウロスの森」「幻獣の森」トマス・バーネット・スワン

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既に隠居して百姓暮らしをしている亀右衛門に、会うだけ会って欲しい、仕掛は断っても構わないと言われて梅安が会うことになったのは、大井の駒蔵という元締。以前からの義理で、亀右衛門が断りきれなかったのです。しかしその時依頼された仕掛の相手は、先ごろ梅安が仕掛を引き受けた音羽の半衛門で...という「梅安鰹飯」が入った連作短編集「梅安最合傘」、そしてシリーズ初の長編となる「梅安針供養」。

今回も面白かった~。1・2巻では元締はあくまでも仕掛を頼む人というスタンスで、それほど話の中に深入りして来なかったように思うんですけど、今回の梅安は元締同士の争いにすっかり巻き込まれて、どちらからも仕掛の依頼がきてしまいます。そして、だんだん、この世界に一度入ってしまったら足を洗うことはできないという面を実感させられるような展開になってきてますね。長編「梅安針供養」では梅安にいい感情を持っていない元締なんかもいたりして、狙い狙われの緊迫感がたっぷり。色んな状況が二重三重にも絡んできて読み応えがありました。そして、大抵の作家さんの場合、短編が得意か長編が得意か、自然にどちらかに分かれると思うんですけど、池波正太郎作品は、どちらも同じように面白く読ませてくれるなあと実感。ほんと短編でも長編でも面白いです。短編とは言っても実際には連作短編なんで、長編みたいなものですけど... 1編だけ取り出しても十分面白いですし。
あ、今回見つけた「剣客商売」との繋がりは、浅草の料亭・不二楼でした♪(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「殺しの四人」「梅安蟻地獄」池波正太郎
「梅安最合傘」「梅安針供養」池波正太郎
「梅安乱れ雲」「梅安影法師」池波正太郎
「梅安冬時雨」「梅安料理ごよみ」池波正太郎

+既読の池波正太郎作品の感想+
お正月休みの間に読んだ本(7冊) (「剣客商売」1~4)
「剣客商売」5~8 池波正太郎
「剣客商売」9~12 池波正太郎
「剣客商売」13~16+α 池波正太郎

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