Catégories:“2007年”

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今年35歳になる藤枝梅安は、普段は腕の良い鍼医者、裏の顔は金で殺しを請け負う仕掛人。その日、赤大黒の市兵衛から請け負ったのは、薬研堀の料理屋・万七の女房・おみの殺しでした。しかし実は梅安は3年前に違う筋からの依頼で、先妻のおしずを殺していたのです。仕掛人は詳しい事情を聞かないのが原則。しかし女房が立て続けに殺される裏にはどのような事情があるのか、梅安は気になり始め... という「おんなごろし」他、仕掛人・藤枝梅安の連作短編集です。

「剣客商売」を読了したのが去年の8月。それから「仕掛人・藤枝梅安」の方も貸して頂いてたんです。去年から続いてる海外物ブームのせいでしばらく寝かせてしまったんですけど、ここらでちょっと和んでみたいと思います。(...仕掛人で和むって一体。^^;)
テレビの必殺シリーズを何度か見た程度なので、そういう仕掛け人のグループがあって、回ってきた仕事をみんなでやるのかと思ってたんですけど、梅安は基本的に一匹狼。彦さんという仕掛人仲間がいることはいるけど、それぞれ別々に仕事をしてたんですねー。中村主水なんて出てこないじゃないですか! ということはあのお姑さんも出てこない!(笑)
あ、テレビのシリーズでは藤枝梅安は出てないんだと思い込んでたんですが、緒形拳がやってたんですってね。知らなかった。

仕掛人が仕事を請け負うまでには、まず殺しの依頼人(起こり)がいて、その「起こり」が「蔓」と呼ばれる顔役に殺しを依頼、その「蔓」から「仕掛人」に話が来るという流れ。「起こり」がいくら殺しを依頼しても、その人間が殺されるべきかどうかは「蔓」が判断するので、ただの私怨程度の依頼はボツ。その代わり、「蔓」が「コイツは死んだ方が世の中のためだ」と判断したら、「仕掛人」に話がいきます。「仕掛人」が詳しい事情も聞かないまま仕事を遂行するのは、「蔓」を信頼しているからこそ。
でも梅安だって人間だし、たまには裏事情が気になることもあるんですよね。そうでなくても事件に巻き込まれて、やむなく調べ始めることもあるし。その辺りの事情の繋がっていき方が面白いです。それに、鍼医者として病人を治療する梅安は、貧乏人から無理に治療費を取り立てたりしない神様のようなお医者さんなんですけど、そうやっていられるのも、仕掛人として稼いだお金があるからこそ。そんな相反することをしてるようでいて(人の生死のどちらも一手に握ってるんですね)、梅安の中では特に葛藤はないんですよね。どちらも1人の人間の中に自然に存在してるのが、なんか好き♪
途中で牛堀九万之助なんて名前が登場して、「剣客商売」との繋がりを感じさせてくれるのも嬉しいところ。それに相変わらず美味しそうな場面がいっぱい~。これは続きも楽しみです。^^(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「殺しの四人」「梅安蟻地獄」池波正太郎
「梅安最合傘」「梅安針供養」池波正太郎
「梅安乱れ雲」「梅安影法師」池波正太郎
「梅安冬時雨」「梅安料理ごよみ」池波正太郎

+既読の池波正太郎作品の感想+
お正月休みの間に読んだ本(7冊) (「剣客商売」1~4)
「剣客商売」5~8 池波正太郎
「剣客商売」9~12 池波正太郎
「剣客商売」13~16+α 池波正太郎

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紀元前8世紀、ローマを建国したロムルスとその双子の弟・レムスを回想する「火の鳥はどこに」、紀元前5世紀のペルシャで、子供が生まれないために、幽鬼(ジン)疑惑をかけられて追放されたペルシャのヴァシチ王妃と、王妃を追いかけた小人のイアニスコスの物語「ヴァシチ」、13世紀のイギリスを舞台に、2人の少年と1人の少女の冒険譚を描いた「薔薇の荘園」の3編。

トマス・バーネット・スワンは元々詩人なのだそうで、どれも詩人らしい叙情性に満ちた美しい作品でした! れっきとした史実を背景にしながらも、半人半獣のファウニ(フォーン?)や、木の精(ハマドリュアス)、ユニコーン、幽鬼(ジン)、マンドレイクといった神話的な存在が登場して幻想味たっぷり。こういうの好きだなあ。あ、もちろん、いかに幻想的な舞台背景ではあっても、史実の裏側を書いているようでも、そこに描いているのは人間そのものでしたけどね。
3編の中で一番気に入ったのは、ペルシャを舞台にした「ヴァシチ」。これはゾロアスター教の光明神アフラ・マズダと暗黒神アーリマンが基礎となった、光と闇の戦いの物語。ペルシャといえば、以前「王書」は読んだんですが(記事)、これはペルシャがゾロアスター教からイスラム教に変わった後に書かれた詩なんですよね。ゾロアスター教に関して、あまり知識がないのがとっても残念。クセルセス王のギリシャ遠征のことも、もっと知ってたらもっと楽しめただろうな。そちら方面の本も探してみなくてはー。(ハヤカワ文庫SF)


+既読のトマス・バーネット・スワン作品の感想+
「薔薇の荘園」トマス・バーネット・スワン
「ミノタウロスの森」「幻獣の森」トマス・バーネット・スワン

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ジョイリーの女領主・ジレルが征服者ギョームに敗北を喫します。兜を取ったジレルの美貌に見とれたギョームにくちづけを強いられ、怒りに駆られるジレル。ギョームを倒す武器を手に入れるために地下牢を抜け出し、城の地下からひそかに通路が通じている地獄へと向かうことに... という表題作「暗黒神のくちづけ」他4編の連作短編集。

ハヤカワ文庫SFに入ってるんですが、これはSFではなくファンタジー作品ですね。舞台となっているのは中世のヨーロッパ。5つの短編のそれぞれで、主人公が超常的で、人間の力の及ばない場所に行き、それでも何とか自分の力で切り抜けていくというパターン。ヒロイック・ファンタジーならぬヒロイニック・ファンタジーです。
ヒロインのジレルは、どうやらスタイルはいいみたいなんですけど、あんまり女っぽくありません。赤毛の短い髪と金色に燃える眸、男に負けない大柄な体、そして男以上の獰猛さを持つ女性とあるので、かなり迫力の怖いおねーさんですね。男なんて全然目じゃないので、「暗黒神のくちづけ」では無理矢理キスされて怒り狂ってます。だからといって、いきなり地獄にまで行かなくても... なんですが、地獄の情景はとても良かったです! 3編目や4編目で訪れる魔法の国や暗黒の国の描写もとても魅力的。こういう描写が素敵な作家さんなんですねー。...ただ、無理矢理キスされて、逆にその相手がなんだか気になってきたわ~的な展開は、ちょっと気になったんですが... それに全編通してキスぐらいしか出てこないのに、妙にエロティックな雰囲気なのはなぜ。
思った以上に面白かったんですが、イラストが松本零士氏なんですよね。この方のイラストの女性って、どうしてこんなに全部メーテルなんだろう? ジレルとはイメージがちがーう。しかもジレルの髪は短いってあるのに、相変わらずの長い髪の女性の絵なんです。なんだかなあ。(そういやこの表紙の絵は誰なんだ?)(ハヤカワ文庫SF)

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かつて意気投合した高名な映画音楽家の指示通り、夜中に起き出して、40年間空き家になっている屋敷へと向かった16歳のマイケル。渡されていた鍵を使って玄関のドアから入り、家の中を通り抜けて裏口から外へ。そして再び左の隣家の玄関から入って中を通り抜けて裏口へ。途中、裏庭のパティオにいた女性に追われて慌てるものの、マイケルはなんとか指示通りに6つ目の門を開けて飛び込みます。その門の先にあったのは、妖精シーと人間、そしてそのハーフが暮らしている妖精の王国。地球ではない、全く別の場所だったのです。

マイケルが行ってしまう異世界は、基本的にシーの国。一応人間もいるんですけど、特定の場所に保護されてます。そこにいる人間たちは、全て音楽にまつわる人々。ピアニストだったり、トランペッターだったり、音楽評論家だったり、音楽教師だったり、ある音楽会を聴きに行っていた人だったり。
マイケル自身もワケが分からなくて困るんですが、読者の私もワケが分からなくて困っちゃう。なんでマイケルがここに来ることになったのかも分からないし(マイケルは音楽家ではなくて詩人)、わざわざ他の人と違う方法でやって来なければならなかった意図も分からないし、ここで何をすることになってるのかも分からない! そもそもこの世界の設定自体、分からないことだらけなんです。みんなマイケルに学べ学べと言うんですけど、質問してもまともに答えてくれる人はほとんどいないし、それ以上質問するなって怒られたりしてるんですよね。マイケルの「質問しないでどうやって学ぶのさ?」という台詞は本当にごもっとも! 読み進めていくうちに徐々にこの世界のことが分かってくるという構成なんですが、これがほんと分かりにくくて、実は「無限コンチェルト」の途中で話が分からなくなってしまった私...。仕方がないので、とりあえず1冊読み終えてから、また最初に戻って読み返すことに。でも一旦分かってくれば、骨太でなかなか魅力的な世界観。続編がなかったらきっとここで諦めてたかと思うんですけど、もう一回読んで良かったー。苦労した甲斐がありました。
詩と音楽の使い方が面白かったし、宇宙の成り立ちにまで話がいってしまうところは、さすがSF作家。とは言っても、感想がものすごーく書きにくい作品なので、ここにもまともなことは書けそうにありませんが... 2冊で1000ページ超、とにかく読み応えがありました。きっと再読したらさらに面白くなるんでしょう。でもとりあえずは「ぐったり」です。(ハヤカワ文庫FT)

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ある8月の暑苦しい日のこと。背が高くて痩せっぽちで、みすぼらしい髭を生やした魔法使い・プロスペロは、漠然とした不安感を感じていました。何かがやって来るのは分かるのですが、それが何なのか分からないのです。その日の夜、プロスペロの家を訪れたのは、親友の魔法使い・ロジャー・ベーコン。翌日、家が見知らぬ男たちに包囲されているのに気づいた2人は、隠し扉から脱出することに。

プロスペロという名前は、シェイクスピアの「あらし」に登場する魔法使いの名前と一緒。わざわざ別人だという断ってありますけどね。でもロジャー・ベーコンは、13世紀のイギリスの哲学者でありカトリック司祭でもあるロジャー・ベーコンみたいです。
この作品で何が一番楽しいかといえば、昔ながらの童話に出てくる魔法使いらしい家が描かれていること。プロスペロの二階建ての大きな家は、「骨董屋の悪夢にでてきそうな」滑稽な安ぴか物でいっぱい。こういう部分は、作者も楽しんで書いてるんでしょうねー。私が一番気に入ったのは、プロスペロが旅先で使う、普段は小さな銀の嗅ぎタバコ入れの中に入っているヒマワリの形の灯りでした。
でもそういう部分は楽しいんだけど、基本的に話の展開にはあまり関係ないし、しかもその展開自体、私にはどうも掴みにくかったです。あんまり物語に入り込めないまま終わってしまいました...。これは本当はとても面白い作品で、実は私に分からなかっただけなのかしら?なんて思いつつ読み終えるのって、イヤですねえ。あ、でもこの作品、作者はアメリカ人なんですが、アメリカというよりもイギリス的なユーモアのある作品なんですよね。もしかしたらそれが合わなかったのかもしれません。イギリスの作品は基本的に好きなんですが、イギリス人のユーモアって、あまりピンと来ないことが多いような気が...。(嗚呼)(ハヤカワ文庫FT)

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ダークエンジェルは、若く美しい乙女をさらって花嫁にしては、その魂と血を抜き取るという吸血鬼。その13番目の花嫁となったのは、エイリエルの美貌の主人・エオドゥインでした。エイリエルと一緒に、従姉妹の結婚式のための花を山の上に摘みに行った時、ダークエンジェルに攫われたのです。一旦山を降りるものの、エイリエルはエオドゥインの復讐をするため、もう一度山を登ることに。そして13人の魂を抜かれた花嫁の侍女としてダークエンジェルに攫われることになるのですが...。

まー、なんて可愛らしいお話なんでしょー。本の感想にはあまり書かないようにしてるんですが、まさに「少女漫画みたい」という言葉がぴったりの作品でした... ものすごーく絵にしやすそう。しかもちょっと昔の少女漫画に実際にありそうな雰囲気。でもライオンが出てきたり湖の白い魔女と戦ったりという部分はナルニア的だし、ヴァンパイアが羽を持って空を飛ぶことからイカロスと呼ばれていたり、湖の魔女がローレライと呼ばれてるところは、なんだかタチの悪いパロディみたい...
なんて思いながら読み進めてたんですが、途中でこの世界の成立ちや神々について書かれている部分があって、そこを読んだ途端、印象が変わりました。オケアヌスと呼ばれる星(多分地球... でもって、この世界の舞台は月)から炎の車に乗ってやって来たラヴェンナと呼ばれる古き神々が地上に空気や水、そして生命をもたらしたこと、このラヴェンナが星馬や太陽のライオンなど世界の守護者を創り出したこと、しかしオケアヌスでは大いなる戦いと疫病が起こり、そのため炎の車は来なくなったこと、そのためこの世界の環境は次第に変わり始めたこと、ラヴェンナはドームの街に入り、そこは封じられて外の世界との接触が絶たれたこと... なかなか興味深かったです。これは未来の地球の物語でもあるのでしょうか。これこそが、メレディス・アン・ピアスとしてのオリジナルな部分なんでしょうね。(メインの部分はユングの患者の幻覚からインスピレーションを受けてるそうだし、あまりオリジナリティがないと言ってもよさそう) この辺りをもっと前面に出してくれればいいのにな。
アメリカではこの作品が好評で、早速3部作として続編も書かれたのだそう。続編では一皮剥けているのかな? 一歩踏み出すだけで、ものすごく魅力的な世界を見せてくれそうな気配が感じられるので、もしそうなら読んでみたいものです。どうやら日本語には訳されてないようですが...。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のメレディス・アン・ピアス作品の感想+
「ダークエンジェル」メレディス・アン・ピアス
「炎をもたらすもの」「闇の月」「夏星の子」メレディス・アン・ピアス

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見慣れない黒ずんだ建築物のある都市を暗黒の生き物が襲い、深夜の街を慌てふためきながら逃げまどう人々。それはジルのみている夢でした。しかもジルは、自分が夢を見ているということをよく分かっていたのです。しかしその夢はとてもリアル。同じような夢を何度も見るうちに、それが単なる夢ではないことにジルは気づき始めます。そしてある晩ジルがふと目覚めると、アパートの台所のテーブルには夢の中で出会った魔法使いが座っていたのです。

ダールワス・サーガ3部作。ダールワスという、中世ヨーロッパ的な異世界の王国を舞台にしたファンタジーです。異世界に巻き込まれるのは、大学院で中世史を専攻しているジルと、偶然現れた自動車整備工・ルーディの2人。
作者のバーバラ・ハンブリー自身が中世史を専攻していたそうで、ダールワスの描写にもそれがよく表れていました。石造りの建物の重厚で陰鬱な雰囲気も、宗教と政治の対立具合も、とても中世っぽい雰囲気。となると雰囲気はとても好きなはずなんですが... どうも今ひとつ入り込めませんでした。研究者肌のジルには実は戦いの才能があって衛兵にスカウトされたとか、自動車整備工のルーディには魔法の力があって、魔法使いの弟子になったとか、ちょっと普通とは違う役割分担のところも面白いし、さらにこの2人の最終的な決着の辺りも普通のファンタジーとは違っていて個性的だなと思ったんですけど... 中世の世界に現代人がタイムスリップして現代の知識を生かすというのも嫌いじゃないはずなんですけどねえ。どこかSFっぽさが感じられてしまうのが、違和感だったのかしら。

結局、ジルとルーディをこの世界に連れてきた魔法使いインゴールドの言葉が一番興味深かったです。

魔法使いは良い人々ではない。親切な心が魔法使いの一番の特徴になることはめったにない。魔法使いの大半は悪魔のように高慢だ。特に数ヶ月しか訓練を受けておらぬ者は。だからこそ会議があるのだ。宇宙の道を変えられると知ったうぬぼれをへこますものがなくてはならぬ。

これにはちょっと説得力がありました。なるほどね。(ハヤカワ文庫FT)

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Note


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