Catégories:“2007年”

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紀元前6世紀、ナボニドス王時代のバビロン。香油屋の養女のティアマットは、ユダヤ人の友達・シミオンを連れて王宮へと向かっていました。シミオンはアンダリ師の率いるトゥエンンティ・スクエア・チームのメンバー。ティアマットはどうしてもチームに入りたくて、シミオンに助けてくれるよう説得するために、その理由を見せに行くことにしたのです。王宮の王妃の庭は、香油の材料となる香草を集めにティアマットがよく来る場所。ティアマットは何年も前にここで古い印章を見つけており、最近、夜の城壁でその印章にも描かれている聖なる竜、シルシュの姿を見かけていました。シルシュたちは夜になると城壁に放され、しかし飢死しかけていたのです。ティアマットが王宮に来たのは、シルシュたちに持参した残飯をあげるため。しかしティアマットがざくろをシルシュに差し出した時、2人は王の軍隊に見つかって捕まってしまうことに。

古代バビロンを舞台にした冒険物語。これは世界七不思議ファンタジーということで、古代の七不思議を1つずつ取り上げたシリーズなんだそうです。(話の繋がりはないみたいですが) ここで取り上げられてる七不思議は、バビロンの空中庭園。でも空中庭園にはものすごーくそそられるんですけど、結局最後まで話に入れなかったかも...。
まず残念だったのは、まずトゥエンティ・スクエアというゲームのことが良く分からなかったことですね。巻頭に古代都市バビロンの全景図や、地図、用語解説がついていて、そこにゲームの説明もあるんです。それによると、トゥエンティ・スクエアとは実際に古代バビロンで行われ、人気があったというボードゲームとのこと。でもでも、バックギャモンにルールが似てるなんて説明されても! バックギャモン自体知らないわけですし。このゲームが物語の中でかなり重要な役回りをしているので、やっぱりもうちょっと説明が欲しかったな。
それと引っかかってしまったのは、そもそもなんでティアがシルシュを助けたいと思ったのかという部分。どうやらティアマットは動物好きで、日頃近所のマスチフ犬を可愛がってるらしいんですけど、実際に犬が登場する場面では気分が乗らなくて無視しちゃってるし... これじゃあ、全然繋がりのないシルシュを助けるために危険を冒して王宮に忍び込む理由にまではならないんじゃ? しかもシルシュには毒があるという噂なのに。猪突猛進で、一度思い込んだらまっしぐらなティアなので、シルシュと心を通わせてしまった後の行動は理解できるんですけどね。
それでも古代世界の七不思議をそれぞれテーマに取り上げて、7作品を書くというのは面白いですね。ちなみに七不思議とは、エジプトのピラミッド、バビロンの空中庭園、オリンピュアのゼウス像、ハリカルナッソスのマウソロス霊廟、エフェソスのアルテミス神殿、アレクサンドリアの灯台、そしてロードス島の巨像。今の時点では、七不思議2作目の「セヌとレッドのピラミッド」が刊行されているようです。(集英社)


+既読のキャサリン・ロバーツ作品の感想+
「ライアルと5つの魔法の歌」キャサリン・ロバーツ
「バビロン・ゲーム」キャサリン・ロバーツ

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「やさしい嘘」というテーマで書かれたアンソロジー。「おはよう」(西加奈子)、「この世のすべての不幸から」(豊島ミホ)、「フライ・ミー・トゥーザ・ムーン」(竹内真)、「木漏れ陽色の酒」(光原百合)、「ダイヤモンド・リリー」(佐藤真由美)、「あの空の向こうに」(三崎亜記)、「やさしい本音」(中島たい子)、「象の回廊」(中島紀)、「きっとね」(井上荒野)、「やさしいうそ」(華恵)の10編。
本当は嘘なんてつきたくないもの。でも「嘘も方便」という言葉もあるように、時には必要悪だったりもするんですよね。大切な人、大好きな人を傷つけたくなくて、悲しませたくなくて、思わず嘘をついてしまうことだってあるし... そんな時の嘘は、切ないんだけど暖かいもの。

今回、一番のお目当ては光原百合さんの「木漏れ陽色の酒」でした。これは「マノミ(魔の実)」と呼ばれる木の実を3年以上漬け込んだ酒、どんな薬師にも治せない病を治してしまうその酒をもらいに、ある夫婦が訪ねてくる話。でもどんな病も治る代わりに、この酒を飲むと最愛の人にまつわる記憶だけを綺麗に失っちゃうんですよね。いやあ、切ない話だわ... 彼も彼女も、そして彼女も彼も。
あと竹内真さんの「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」も楽しみにしてたんですよね。これも良かったな~。月を買ってソラくんにプレゼントした「爺ちゃん」は、あのじいさんなのかな? 爺さんって不動産屋さんだったっけ??(記憶が...)
なんだか全体に若さがいっぱいで楽しいアンソロジーでした。一度読んでみたいなと思ってた作家さんの作品も読めて嬉しいな。これは以前読んだ「ありがと。」(感想)と同じシリーズ(?)なんですよね。このシリーズ、なかなかいいかも。あと「 秘密。 私と私のあいだの十二話」「君へ。 つたえたい気持ち三十七話」なんかも出てるみたいです。(ダ・ヴィンチブックス)


+シリーズ既刊の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編

+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「花散る夜に」「ピアニシモより小さな祈り」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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虫がついた葉を切ろうとして、丹精こめて育てていたひょうたんのつるそのものを切ってしまい、落ち込むサキ。しかしそんなある晩、サキの夢の中にそのひょうたんが出てきます。夢の中のひょうたんはつるを切られてなどおらず、つっかい棒をつたって元気に壁を登っていました。それからというもの、ひょうたんは毎日のように夢に登場し、どんどん伸びて花が咲き、実がなります。サキは夢の中のひょうたんをもいで加工、夢の中の部屋に飾ることに。そしてもう夢も終わりだろうと思ったその時、ひょうたんを持っていたサキは空に浮かんだのです。そのまま窓の外に出て、空を飛んでいたサキが降り立ったのは、古い時代の武蔵の国。そこでサキは不破麻呂という若者に出会うことに。

芝田勝茂さんの作品を読むのは初めて。風待屋 の sa-ki さんに教えて頂いたんですが、いやあ、可愛らしいお話でした! 中心となっているのは菅原孝標の女の「更科日記」(だから「サラシナ」)の中の「竹芝伝説」で、史実と虚構を織り交ぜて書かれたタイムスリップ物。タイムスリップ先は聖武天皇の時代。先日読んだ高橋克彦さんの「風の陣」(感想)よりも、ちょっぴり時代を遡った頃。
ピンクのネグリジェ姿で空から降りてきたサキは、見慣れた多摩川があんまり綺麗で、しかも人影が全然ないんで、服を脱いで川で泳いだりするんですよね。それを見ていた不破麻呂が天女伝説と結びつけてしまうところが、まず可愛い~。天女とは言っても、案外本当にそんなところかもしれないですものね。宇宙服を脱いだ宇宙人とか。(笑) でもって、不破麻呂に出会った後の古代の多摩川での描写が素敵なんです。「多摩川に 晒す手作り さらさらに 何ぞこの娘の ここだ愛しき」と歌いながらの川で布を晒す娘たちや、酒壷の中でゆらゆらとゆれてる直柄のひさごとか... 不破麻呂のひさごの歌と踊りが見てみたくて堪らなーい。
で、一旦現代に戻るサキなんですが、またこの時代に来ることになります。でも今度は天女としてではなくて、天皇の第4子の竹姫こと更科内親王として。なんでここで竹姫になっちゃうのかという必然性については、ちょっと疑問なんですが... 更級日記だから天皇の姫にする必要があるのは分かるんだけど、サキがそうなる必要は特にないですしね。でも竹姫の祖母の皇太后が語る恋物語に竹姫自身の話、そしてサキと不破麻呂の話が重なって、この時代をすごく身近に瑞々しく感じることができたので、まあいっかという感じでした。サキよりもむしろ竹姫の方が身近に迫ってきましたし。ああ、この話の後、どうなったのか気になるなあ。サキの2度目の登場の仕方からいえば、この後彼はちゃんと幸せに暮らしたんじゃないかとも思うんだけど... それはまた別の話なんですね。きっと。(あかね書房)

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その国の総理大臣・美留楼公爵の末娘・美留女姫は物語に夢中で、常に新しい珍しい物語を聞きたいと思っている姫。しかし世の中そうそう新しい物語などありはしません。ある日、道行く人々の身の上話を聞くために街に出た美留女姫は、銀杏の木の下で「白髪小僧と美留女姫」という本を見つけ、それを読みながら歩いているうちに川に落ちてしまい、白髪小僧と呼ばれる乞食小僧に助けられます。美留楼公爵は白髪小僧にお礼をしたいと思うのですが、白髪小僧は何をもらってもニコニコとしているだけ。美留女姫は、白髪小僧にはどんなお礼をしても無駄だと言い、その理由は全てこの本に書いてあると、持っていた本を読み上げることに... という「白髪小僧」他、全19編の童話集。

夢野久作作品を読むのは、「ドグラ・マグラ」以来です。「ドグラ・マグラ」も、途中までは面白かったんですけど、後半の「ちゃかぽこ」が苦手でどうにもならなくなってしまって... 最高傑作とされる作品がこれじゃあ、もう2度と夢野作品を読むこともないだろうと思ってたんですよねえ。でも先日の第38回たら本 「何か面白い本ない?という無謀な問いかけに答える。」でAZ::Blog はんなりとあずき色☆のoverQさんが「白髪小僧」を挙げてらして(記事)、あんまり面白そうなので読んでみることに。私のファンタジー的バイブルである石堂藍さんの「ファンタジーブックガイド」にも挙げられてて、題名だけは知ってたんですよね。

夢野久作が書いた童話は141編にも及ぶんだそうで、ここに収められているのは19編。どれもデビュー前の大正年間に書かれたものなんだそうですけど、それぞれに面白くて(読みやすくて)びっくり。あの「ちゃかぽこ」は一体何だったんだ...?! 状態。(笑)
でもやっぱり、この中で一番読み応えがあったのは「白髪小僧」ですね。この1冊の半分近くを占めている、最早長編と言った方がいいような作品です。白髪小僧と美留女姫の出会いは既に物語として本に書かれていた... という枠物語なんですけど、中の物語が外側の枠よりも大きくなってしまって、結局どちらが枠なのか分からなくなってしまうんです。白髪小僧は、実は藍丸国という国の王様だったとして、その藍丸国の天地創造的なお話も入っていて、どうやら別世界らしいと分かるんですけど、そこには美留女姫と瓜二つの美紅という公爵令嬢がいて、さらにはこれまた瓜二つの美留藻という海女がいて、お互いにお互いのことを夢に見ていて...
...とまあ、そんな物語なんですが、結局未完のまま終わってます。解説には「失敗作であるがゆえに傑作となりえた稀有な作品である。」とありました。確かに収拾をつけられなかったという意味では失敗作なのかもしれないですけど、でもこれはほんと、無理に収拾をつけようとして、こじんまりとまとまったりしなかったところがいいんでしょうね。書いた夢野久作は不本意だったかもしれないし、読んだ人は無限ループの罠に落ち込んでしまうんですけど...(笑) でもこれはすごい。裏返される感覚が堪りません。今の時点で2度読んだんですけど、もうちょっと何度か読み返してみたいです。やっぱり「ドグラ・マグラ」よりもこちらから入るべきだったな~。(ちくま文庫)

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ナチスによって著書が焚書の対象となり、執筆・出版を禁止されたエーリヒ・ケストナーが、その執筆禁止を逆手にとって、既存の物語の再話なら執筆には当たらないだろうと、「ほらふき男爵」をはじめとする広く知られたお話を子供のために再話したもの。ドイツ国内では出版できなかったため、スイスで出版され、スイス経由でドイツの書店に登場したのだそうです。ここに収録されているのは、「ほらふき男爵」「ドン・キホーテ」「シルダの町の人びと」「オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」「ガリバー旅行記」「長靴をはいた猫」の6編。

ここに収められた6編のうち、私が元々の作品を読んでいるのは「ほらふき男爵」「ガリバー旅行記」「長靴をはいた猫」の3編だけなんですが(「ドン・キホーテ」は、児童用の簡易版なら読んでるんですけど、大元のは未読)、どれも元々の話のそのままの筋なのに、ケストナーらしさがよく効いていて、お話の面白さが元のお話以上に際立っているような気がしました。テンポもいいし、ケストナー独特の語り口が楽しい~。特に「ガリバー旅行記」と「ドン・キホーテ」は元々大人向けとして書かれた本ですしね。子供が読むには、このケストナー版の方が絶対面白いでしょうね。(「ガリバー旅行記」の大人版を読んだ時は、この作者絶対病気だわ、と思った覚えが...)
ゲシュタポに2度も逮捕されながらも、周囲の作家が一斉に亡命していく中、ドイツ国内に留まって自国の崩壊を見つめてきたケストナー。でも、常に社会風刺には富んでるんですが、悲惨さや哀しさは作品に現れることがなくて、作品はあくまでも伸びやか。窮屈なところが全然ないのがすごいです。で、そこにケストナーの作品でお馴染みのレムケの挿絵がぴったり。そしてレムケの死後は、後輩のトリヤーが後を引き継いでいます。(ちくま文庫)


右手の人差し指の爪がバキッと割れてしまって、キーボードを打つのがツラい...
いえ、かなりマシになったんですけどね。イタタ。


+既読のエーリヒ・ケストナー作品の感想+
「点子ちゃんとアントン」エーリヒ・ケストナー
「ケストナーの『ほらふき男爵』」E・ケストナー
Livreに「雪の中の三人男・ガス屋クニッテル」「消え失せた密画」「一杯の珈琲から」の感想があります)

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16年ぶりに三軒茶屋を訪れた有坂祐二は、かつての恋人・江上奈津美と歩いた道や一緒に行った店を辿るうちに、香菜里屋という店を見つけ、思わず中に入ることに... という「螢坂」他、全5編の連作短編集。「花の下にて春死なむ」「桜宵」に続く、ビアバー「香菜里屋」シリーズ第3弾です。

今回もとても美味しそうな作品群でした! 美味しいシリーズだというのは頭では分かってても、前もここまで美味しそうだったっけ... と改めて驚いてしまうほど料理は美味しそうだし、香菜里屋という空間はとても居心地が良さそう。もちろんマスターの工藤哲也も相変わらず魅力的です。客の話すどんな小さいことも、どんな小さい出来事も見逃さずに、正しい筋道を見つけてしまうマスター。今回は「死」と密接に結びついている分、謎が解き明かされても救いとはならないこともあって、いつもよりも重めの話が多かったように思うんですが、それでも生々しい傷を負った心が柔らかく揉み解されて、辛い情景が過去の風景へと変わっていくのは、マスターの人柄というものでしょうね。ほろ苦くて切なくて、でも暖かい物語。この中で私が一番好きだったのは「双貌」でした。これは小説家による作中作が登場して、他の4編とはちょっと違う雰囲気の作品です。
「桜宵」から登場している工藤の旧友・香月が、「雪待人」でも意味深な一言をもらしてるし、次は工藤の過去が明かされる内容になるようですね。どんな話になるのかいつも以上に楽しみ~。これは単行本が出たらすぐ読まなくちゃ!(講談社文庫)


そして北森鴻さんといえば、11月24日(土)三重県名張市主催の、「第17回なぞがたりなばり講演会」に出演されることが決定したそうです。テーマは「旅とミステリー ~乱歩と香菜里屋の不思議な邂逅~」。名張市は江戸川乱歩生誕の地ということで、毎年豪華なゲストを招いて講演会を開催してらっしゃるんです。去年は綾辻行人さん、その前は有栖川有栖さん、その前は福井晴敏さん、高村薫さん、真保裕一さん、馳星周さん、北村薫さんと宮部みゆきさん...
乱歩と香菜里屋の不思議な邂逅だなんて、一体どんなお話になるんでしょうね? 美味しいお話もたっぷり聞けるかも? 興味のある方はコチラまでどうぞ~。

あとイベントといえば、11月11日(日)立教大学キャンパスで行われる日本推理作家協会60周年イベント「作家と遊ぼう!ミステリーカレッジ」も面白そうです。参加作家さんが、ものすごーーく豪華だし、企画もそれぞれにとっても楽しそう。全部で6時間ほどのイベントなので、どれに行くか迷ってしまう人も多いかも? 参加作家さんとして名前が挙がっていなくても、ふらりと遊びに来る作家さんも多そうです。詳細はコチラ

ということで、ちょっぴり回し者になってみました。えへ。


+シリーズ既刊の感想+
「花の下にて春死なむ」「桜宵」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「螢坂」北森鴻

+既読の北森鴻作品の感想+
「共犯マジック」北森鴻
「蜻蛉始末」北森鴻
「親不孝通りディテクティブ」北森鴻
「瑠璃の契り」北森鴻
「写楽・考」北森鴻
「暁の密使」北森鴻
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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雪沼の小さなボーリング場、リトルベアーボウル最後の日。午前11時からの営業だというのに、夜9時を回っても誰1人として客がなかったその日、見切りをつけて壁の照明を落とした時に入ってきたのは、トイレを借りたいという若い男女でした... という「スタンス・ドット」他、山間の静かな町である雪沼とその周辺に住む人々を描いた全7編の連作短編集。

堀江敏幸さんの作品を読むのは今回が初めて。今までたらいまわしの時などにお名前を見かけていてずっと気になっていたんですが、ようやく読めました。
いやあ、良かった。解説で池澤夏樹さんも書いてらっしゃるんですけど、読んでいる間、まさに自分も雪沼にいるような気がしてくるような作品群でした。雪沼という場所の空気をそのまま感じることのできるような... 雪が降る時の匂いまで感じられそう。そしてこの雪沼で暮らしている人々。他人から見たら、平凡極まりない人生かもしれないんですけど、それぞれにとってはただ1つのかけがえのない人生を、彼らなりにきちんと向き合って生きてるんですよね。その中でとても強く感じたのは、「死」の存在。それぞれの物語の中では過去の話も多く語られていて、身近な人間の死の思い出も多いんです。それに中心で語られている人物もそれぞれに人生の終盤に差し掛かっていて、そう遠くない将来の「死」を感じさせます。でも落ち着いた筆致で描かれているので、過去の「死」は遠景として眺めることができるし、登場人物たちもそれぞれに自分の遠くない「死」そのことを静かに受け入れている、もしくはその時になればごく当たり前のこととして静かに受け止めそうな感じ。だからこんな静かな力強さが生まれるのかなあ...。読後、しみじみとした余韻が残りました。堀江敏幸さんの作品、他のも読んでみたいです。(新潮文庫)


+既読の堀江敏幸作品の感想+
「雪沼とその周辺」堀江敏幸
「いつか王子駅で」堀江敏幸

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Note


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