Catégories:“2007年”

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アルテミス・ファウルは、何世代にも渡って悪事を働いて金を蓄えてきたた伝統的な犯罪一家・ファウル家の12歳の少年。乗っていた船がロシアのマフィアに木っ端微塵にされて父親が消息不明となって以来、母は神経症になって寝たきりの生活。アルテミス・ファウルは学校にも行かずに、父の事件で失った家運の挽回のための計画を立て始めます。それは妖精から黄金を奪う計画。人間と同じように金の好きな妖精は、それぞれに黄金を隠し持っているのです。そのためにアルテミスは「妖精の書(フェアリーズブック)」を入手し、妖精の言葉を人間の言葉に翻訳。妖精の思考回路や行動パターンを掴み、綿密な計画を立て始めます。

「アイルランドのハリー・ポッター」「悪のハリー・ポッター」などと称されて、出版前から大きな話題になったという作品。元は児童書のファンタジーでハードカバーなんですが、最近はこういう作品が文庫で読めるのが嬉しい~。
そしてこの作品が普通のファンタジーと違うのは、登場する妖精の設定。ここに出てくる妖精は、よくある「綺麗」「可愛い」「不思議」のイメージでもなく、かといってアイルランド系の妖精のようなちょっぴり意地悪なイメージでもなく... 強いて言えば、未来人間みたいな感じでしょうか。昔ながらの魔法の力は持っているんですが、人類よりも遥かに科学技術が進んでいて、すっかりハイテク武装をしてるんです。そもそも「レプラコーン」(アイルランドの伝承に出てくる妖精の種類)という言葉の起源が、実は「LEP(地底警察(ロワー・エレメンツ・ポリス)レコン」だというのが可笑しいところ。そして対するアルテミス・ファウルは、12歳ながらもその能力は計り知れないという神童という設定。伝統的な犯罪一家に生まれ育ってるので、ただ賢いというよりも、悪知恵が働くって感じなんですけどね。なのでアルテミス・ファウルと妖精の戦いは、妖精の伝統的な魔法+科学技術vsアルテミス・ファウルの情報収集+悪知恵 なんですが...
うーん、ちょっと期待はずれだったかな。
というのも、肝心のアルテミス・ファウルに全然魅力が感じられなかったんですよね。別に善と悪の対決でなくても全然構わないので、これでアルテミス・ファウルに悪の魅力があればきっと楽しめたと思うんですけど... 天才的な頭脳の持ち主という面もそれほど実感できなかったし、悪の少年のはずが、例えば母親の病状にうるうるしてるところなんかもどうも...。(悪の少年の意外な一面で、きっといい所なんでしょうけど) だからといって、妖精の方もイマイチよく分からなかったし...。一番良かったのは、アルテミス・ファウルのボディガードのバトラーだったな。あと、せっかく入手した「妖精の書」(妖精にとってはバイブルのようなもので、アルテミス・ファウルの主な情報源)の出番が、ほとんど最初だけだったというのも残念だったんですよねえ。せっかく魅力的な小道具なんだから、もっと活躍させて欲しかったです。(角川文庫)

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老いたヴァンパイアの姫君に長年仕えてきたヴァシュは自分の死期を悟り、自分の後任となる者を探し始めます。そしてヴァシュが目をつけたのは、自分から金を巻き上げようとした青年・スネークで... という「別離」他、全9編が収められた短編集。

河出書房新社の奇想コレクション。中短編に関してタニス・リーの脂が最も乗っていたという1979年から88年にかけて発表された作品の中から、本邦初訳の9編を選んだという短編集です。タニス・リーの本領はファンタジーとホラーの中間領域の「幻想怪奇小説」にあるということから、SF系の作品は省いたセレクト。いやあ、ここのところ作品が続けざまに邦訳されてたのは嬉しかったんですけど、ジュヴナイルだったり、タニス・リーにしては...うーん... という作品が続いてて、正直物足りなかったんですよね。でも、これは久々にタニス・リーらしい作品でした~。私の一番のお気に入り「闇の公子」にはちょっと及ばないんですけど、タニス・リーらしい妖しい美しさがいっぱい。絢爛豪華で幻想的で官能的。ほの暗い夜を感じさせる作品群。「現代のシェヘラザード姫」という異名は、やっぱり彼女に相応しい!
タニス・リーの短編は、短いのに世界の広がりを感じさせてくれるところが好きなんですが、この作品の配列も絶妙。編者の中村融さんは、「いま・ここ」から次第に遠ざかるように作品を並べたのだそうです。これによって、さらに世界が広がるような感覚...。大体どの作品も良かったんですが(好みではないのも、実は少し)、私が特に好きだったのは「別離」「美女は野獣」「魔女のふたりの恋人」「愚者、悪者、やさしい賢者」、「青い壷の幽霊」辺り。その中でも、タニス・リー版「壷中天」の「青い壷の幽霊」が一番好みだったかな。あと「魔女のふたりの恋人」も好き好き♪
タニス・リーの未訳の短編はまだまだ沢山あるんです。ぜひともこの本の第2弾を出して欲しい~。それと、もちろん長編も。例えば「美女は野獣」は、フランス革命をモチーフとした大作歴史小説「The Gods Are Thirsty」からの派生作品なのだそう。その本編の方もぜひとも読んでみたいです~。(河出書房新社)


+既読のタニス・リー作品の感想+
「闇の公子」タニス・リー
「死の王」タニス・リー
「タマスターラー」タニス・リー
「ドラゴン探索号の冒険」タニス・リー
「白馬の王子」タニス・リー
「惑乱の公子」タニス・リー
「熱夢の女王」上下 タニス・リー
「ゴルゴン 幻獣夜話」タニス・リー
「血のごとく赤く」タニス・リー
「バイティング・ザ・サン」タニス・リー
「鏡の森」タニス・リー
「黄金の魔獣」タニス・リー
「幻魔の虜囚」タニス・リー
「幻獣の書」「堕ちたる者の書」タニス・リー
「月と太陽の魔道師」タニス・リー
「冬物語」「闇の城」タニス・リー
「銀色の恋人」タニス・リー
「妖魔の戯れ」タニス・リー
留守中に読んだ本(18冊)(「ウルフタワー」の感想)
「影に歌えば」「死霊の都」タニス・リー
「パイレーティカ 女海賊アートの冒険」タニス・リー
「銀色の愛ふたたび」タニス・リー
「水底の仮面」「炎の聖少女」タニス・リー
「土の褥に眠る者」「復活のヴェヌス」タニス・リー
「悪魔の薔薇」タニス・リー

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父の転勤で北九州に引っ越すことになった、小学校5年生の高見森(シン)。東京では腕白のいじめっ子として問題児扱いをされていた森ですが、引越し当日の夜にはこっそり外に抜け出て、パックという少年と一緒に社宅の屋根に上り、翌朝には同じ登校班の子供たちにもすんなりと受け入れられて、今度の学校では楽しくやれそうな予感。しかし、てっきり一緒に学校に通うとばかり思っていたパックの姿が見えないのです。しかも周囲の子供たちに聞いても、みんな口を濁すばかりで...。

講談社ミステリーランドの第13回配本。加納朋子さんらしく、とっても可愛らしいお話でした~。
大人から見れば単なる乱暴者の森なんですが、実は意外と素直な少年。話の合いそうな転校生と友達になりたいと思った時も、おばあさんのアドバイス通りにしてるし... いや、これに関しては、今時の少年が本当にそんなことをするのか?! とも思っちゃうんですけどね。それまで森の周囲にいた子供たちは、森がそんなことをするなんてまさか思わなかったでしょう... 地方によって子供たちに違いがあるなんて書きたくないんですけど、やっぱり大人になるのが早い分、大人の色眼鏡ごしに物事を見てしまいがちなのかも、とか思ってしまうー。それに比べて、北九州の子供たちの可愛いことったら。彼らの話す北九州弁が、またいいんです。これですっかり親しみが湧いてしまいました。...ええと、肝心の謎に関してはそれほどでもなくて、少年たちの冒険譚といった要素の方が強かったんですが、それでも社宅という条件がすごく利いてると思ったし、夢がありながらほろ苦い現実もあるところが良かったです。爽やか~。
「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」と言いつつ、今までは「かつて子どもだったあなた」向けの作品が多かった気がするミステリーランドのラインナップの中では、純粋に「少年少女のため」に近い作品かも。(そしてこの表題の文字が可愛い! 可愛すぎる! こんなPC用フォントがあったら、絶対欲しいー)(講談社ミステリーランド)


+既読の加納朋子作品の感想+
「てるてるあした」加納朋子
「ななつのこものがたり」加納朋子
「モノレールねこ」加納朋子
「ぐるぐる猿と歌う鳥」加納朋子
Livreに、これ以前の全作品の感想があります。

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1957年5月のパリ。フルート奏者のラファエル・ルパージュのアパートを訪れたのは、ドイツからパリにやって来たばかりの20歳のサフィー。ラファエルが新聞に出した家政婦募集の広告を見てやって来たのです。会った途端、ラファエルはサフィーの現実に対する無関心な態度に魅了され、翌6月には2人は結婚。しかし1人息子のエミールが生まれても、サフィーの無関心さには変化がなかったのです。そんなある日、ラファエロのバス・フルートを修理に持って行ったサフィーは、そこで出会った楽器職人のアンドラーシュと突然激しい恋に落ちてしまい...。

第二次世界大戦が終結して12年という、まだまだ戦争の傷の生々しい時代に出会うことになった、3人の男女の物語。
ラファエルは、父親をドイツ人のせいで亡くしているフランス人。ハンガリー系ユダヤ人のアンドラーシュも、多くの血縁をナチスのせいで失っています。そしてドイツ人のサフィーの父は、ナチスの協力者。それだけでも十分すぎるほどなのに、サフィーは母親と一緒にロシア人兵士に陵辱された経験があって、そのために母を失っていて、ロシアに代表される共産主義者は忌み嫌うべき存在だというのに、アンドラーシュはアルジェリア戦争を支持す共産主義者。そしてこの物語の背景となるシャルル・ドゴール時代は、かつてドイツにやられたことを別の相手にやり返そうとしているかのように、フランスはアルジェリア人を大量に虐殺してるんです。本来なら、問答無用で憎み合ってもおかしくない3人なのに、惹かれあってしまうんですね。でも相手に惹かれるということは、その背景をも一緒に受け入れるということに他ならないわけで。
そんな重い愛が描かれていながらも、同時にとても静かで透明感のある作品でした。それにとても映像的。特にサフィーがアンドラーシュに恋した後は、それまでのモノクロームな画面がいきなりフルカラーに変わってしまったような鮮やかさがありました。いそいそと乳母車を押して楽器工房へと向かうサフィーの姿、アンドラーシュと散歩をするサフィーの姿などがとても鮮やかに印象に残ります。そしてそんな場面を眺めていると、ラファエルの奏でるフルートの音色や、アンドラーシュの工房での音楽が遠くから聞こえてくるという感じ... 美しい。

ちなみに原題「L'EMPREINTE DE L'ANGE」は、「天使の刻印」という意味だそうです。ユダヤ人には、赤ん坊が生まれる時に天使が鼻と唇の間に指をおいて天国での記憶を消し去るから、赤ん坊は純粋で無垢なまま地上に生れ落ちるのだという伝承があるのだとか。そんな風に無垢に生まれついたはずの人間がいつの間に無垢でなくなってしまうのだろう... というサフィーの言葉もとても印象に残りました。(新潮クレストブックス)

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「Menu」「Aors d'Oeuvre」「Fish」「Meat」「Specials」「Beverages」「Desserts」と、フルコースのメニューになぞらえた章立てで、翻訳家の柴田元幸さんが主にアメリカ文学の中の食べ物を紹介していく本。あとがきとして、挿絵を描いた吉野朔実さん、一日従業員だという都甲幸治さんとの対談付きです。

美味しそうな料理が登場する本は大好き。自分も食べてみたくてうずうずするし、読んでるだけでも楽しいですよね。そんな美味しそうな作品っていっぱいあると思うんですが... この本を一読して驚いたのは、これだけ料理の場面を紹介しておきながら、美味しそうな料理がほとんどないこと! 一番美味しそうだったのが、柴田元幸さんの小学校時代の給食の鯨の話なんですよー。たまに美味しそうだと思えば、紹介されるだけで品切れと判明してしまうし、大抵のは全然食べてみたくなりません。「オードブル」の中の「根菜類等」の章なんて、かつてミスター・ポテトヘッドというゲームで使われたじゃがいもが、そのまま箱の中に放置されて、今はすっかりしなしなに萎れてる話とか... あとこの章には、医者が83歳の老人の腸から取り出した良性のポリープをキクイモとして料理して、兄夫婦にご馳走してしまうなんて話もありました。^^; (これは強烈だった)

これを読んでると、海外作品ってそんなに料理が不味そうだっけ? なんて思ってしまうんですけど、そんなことないですよね。子供の頃読んだ本にも美味しそうな本はいっぱいあったし。私の中ではワイルダーの「農場の少年」が一番なんですが、その他にも「ちびくろさんぼ」のホットケーキとか、「ハイジ」のおじいさんのチーズとパンの食事とか。「秘密の花園」のはちみつたっぷりのおかゆ、食べてみたかったなあ。それなのになぜそんな不味そうな料理ばかり? と思ったら、対談にこんな言葉がありました。

上手くいってる恋愛の話なんか聞きたくないじゃないですか。それと同じように、旨い食べ物の話を聞くぐらいなら自分で旨いものを食べたいと思うから、人は旨い食べ物の話なんか読みたくないだろうというのが、僕の頭の中のロジックなわけです

な、なるほどね。そういうものなのでしょうかー。

やっぱり、だから『アンナ・カレーニナ』の出だしの、幸福な家庭はどこも似たようなものだが、不幸な家庭はみんなそれぞれ違っている、それぞれの不幸があるという、あれですよ。あれと同じで、おいしい食べ物はみな似たようなものだが、不味い食べ物には、それぞれ独自の不味さがある... 違うか。(笑)

そこまで!(笑)

どうやら、アメリカの日々のベーシックな食事がとーっても不味いということも関係してるようなんですけどね。(そんなに不味いの?) 
吉野朔実さんの「あんまり不味いものの話を聞くと、ちょっと心惹かれるんですよね。一度ぐらい、それを口にしてみようかなって」という言葉も可笑しかったです。食べてみたくなるかどうかは不味さの質によるんだけど、この言葉って読書にそのまんま当てはまりますね。あんまりぼろくそにケナされてると、逆に読みたくなってみたり。

と、そんな風に不味そうな料理が勢ぞろいしてるんですけど、紹介されてる作品には面白そうなのがいっぱい。いや、「面白い」というよりもむしろ「妙」や「変」という言葉が相応しい作品かもしれないんですが... 柴田元幸さんの読み方も時々妙にマニアックですしね。(というより妄想系? 笑) でも、料理が料理として純粋に存在しているのではなくて、小説の中の負の要素を強調するような使い方をされているのが分かったりなんかして、その辺りも面白かったです。(角川書店)

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聖武天皇による寺院建立や大仏鋳造が続いた天平21年、陸奥から黄金が発見されたという知らせが朝廷に届きます。日本初の黄金産出の知らせに、陸奥に対する朝廷の眼差しは一変。そしてその黄金を陸奥守に貢いだのが父の丸子宮足であったことから、丸子嶋足は陸奥守について都に上ることに。嶋足はかねてから都で自分の腕を試したい、いつかは陸奥守となって故郷に戻り、陸奥を都と変わらない国にしたいと考えていたのです。そして嶋足が都に上って8年の歳月が流れます。右兵衛府の見回りの長になっていた嶋足の前に現れたのは、同じく陸奥の出身である物部天鈴。嶋足は天鈴の助けを得て、やがて左衛士府の坂上苅田麻呂の片腕となることに。

ここに登場する坂上苅田麻呂は、「火怨」の坂上田村麻呂のお父さん。「火怨」の前日譚的作品なんですねー。
今回読んだのは、「立志篇」「大望篇」「天命篇」の3巻。読んでる最中は、この3冊で完結するのかと思い込んでたんですが、「天命篇」を読んでる時に、どうも終わりそうもないなあ、と気づきました...。調べてみたら、先月4巻「風雲篇」の単行本が出たところじゃないですか。しかも、今は5巻目に当たる「裂心篇」が連載中ですって。ここで一旦主人公が別の人物に変わっているとか。とは言っても、また嶋足に主人公が戻るんだろうし... 一体、何巻までいくんだろう?(笑)
「立志篇」は橘奈良麻呂、「大望篇」は藤原仲麻呂(恵美押勝)、「天命篇」は弓削道鏡と、それぞれに時の権力者を抱きこんでわが世の春~♪ を謳歌しようとしてたり、実際謳歌してた人たちを、嶋足や天鈴が蝦夷のために追い込んでゆくさまが描かれています。話そのものもすごく面白いんですけど、例えば吉備真備とか和気清麻呂なんかも登場して、自分の中では名前だけの存在だった人たちがどんどん繋がって広がっていくのが、また面白いんですよね~。教科書で読んでる分には、あんなに面白くなかったのに。歴史物の醍醐味ですね。これは続きも楽しみです。
3巻合わせて全部で46の章があるんですけど、その章題全てが風にまつわる言葉なんです。これがまた想像力をかきたててくれて、いい感じです。(PHP文庫)


更新にちょっと間があきましたが、実はちょっと熱を出したりして体調不良...。その間に第38回たら本も始まっていたようですね。今回のお題は、「何か面白い本ない?」という無謀な問いかけに答える、です。主催はりつこの読書メモのりつこさん。(こちら
体調の悪さもあるんですけど、この問いかけにはイタイ思い出が色々と... しかもなんだか生々しく蘇ってきちゃったので、今回は参加できないかもしれません。うむむ。


+シリーズ既刊の感想+
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」1~3 高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「闇から招く声」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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目の前を行く女性の尻に目を奪われて、思わず付いて行ってしまった鍵和田巴は、それが中学時代の友人・服部ヒロシの姉のサトだということに気づきます。それがきっかけで、巴はかつての同級生の家に招じ入れられることになるのですが... という表題作「「余は如何にして服部ヒロシとなりしか」他、全4編の収められた短編集。表題作は、第12回ホラー小説大賞の短編賞受賞作。恒川光太郎さんの「夜市」がホラー大賞を受賞した時の短編賞です。ペンネームの「あせごのまん」とは、「あせご」という場所の「まん(化け物・憑き物)」という意味だとのこと。どうやら「あせごの」が苗字みたいですね。

前エントリに続いて、これも頂き物。ホラー系は基本的に苦手なので、滅多に読まないんですけど、この表題作は、結構気に入ってしまったわ!  選者の荒俣宏氏が「異様に気に入った」という作品なんですけど、その気持ちが分かる~。でもこれは、気に入る人は異様に気に入るし、それほどでもない人にはそれほどアピールしない作品かもしれません。私の場合、ごく普通のはずが日常の情景が少しずつズレていくというのは元々好きだし、この作品はまるで夢を見ているように逃げ出すことができないまま、不条理感にがんじがらめになっていく感じなんですよね。それも好き。妙な迫力があります。この雰囲気を盛り上げている各所の描写の気持ち悪さも堪らないし。
その他は、「浅水瀬」「克美さんがいる」「あせごのまん」の3編。「浅水瀬」はあまりにも予想できるオチなんですけど、この本の中では一番ホラーらしいホラー作品。きっと、分かっていてもあえて楽しめる、というところを狙った作品なんだと思います。「克美さんがいる」も予想できるオチなんですが、もう少しミステリ的かな。リアルな怖さがあって、私は「浅水瀬」よりもこっちの方が好きでした。最後の「あせごのまん」は、なんと土佐弁で書かれた作品。岩井志麻子さんの「ぼってえ、きょうてえ」を思い出すなあ。(角川文庫)

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