Catégories:“2008年”

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既に毎夏の恒例行事となってるんですが、夏になるとどうしてもPCの調子が悪くなってきて困ります。先日とうとう再インストールしてしまいましたよー。それもあって、どうも本の感想を書くのが追いつきません... いや、連日のこの暑さで読書もそれほど進んでいないのですが。

この二階堂善弘氏、中国物関係のサイトを持ってらっしゃるとあったので、てっきり中国物好きの素人さんかと思っていたんです。文章も読みやすく分かりやすくまとまってたし、2冊とも「西遊記」と「封神演義」が中心になっていますしね... ってそれは偏見?(笑) そしたらなんと、関西大学の教授先生だったんですねー。道理でふとしたところで知識の深みを匂わせていたわけだ! でもそんな風に知識の深さを感じさせつつもマニアックに走ったりせず、むしろ全体像を概観できるように表層がきれいにまとめられているという感じの本でした。この2冊では「中国の神さま」の方が、民間信仰系、道教系、仏教系と、数多い神さまが系統立って要領良く紹介されていて良かったかな。中国物を読みながら、ふと調べてみるのに丁度いいかも。対する「中国妖怪伝」は、それほど「要領良く」という感じではないですね。知名度も高く、ある程度確立した存在の「神さま」に対して、妖怪は特定のお話の中にしか登場しない存在のことが多いので、仕方ないんだけど。
ただ私、「西遊記」は何度も読んでるので神さまも妖怪もお馴染みだし、登場してると嬉しいんですが、「封神演義」は読んだことがないんですよね... 以前読もうとしたことはあったんですが、丁度宮城谷昌光さんの「王家の風日」を読んだところだったので、同じ登場人物が共通してるだけに雰囲気の違いについていけなくて。(あまり覚えてないんですが、文章もダメだったのかも) 中国・台湾での知名度と人気ぶり、影響度を考えると、一度読んでみなくっちゃとは思ってるんですが...。(平凡社新書)

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「中国昔話大集」のIとIIです。この話梅子さんという方は、中学の頃に「聊斎志異」や「紅楼夢」にハマって以来あれやこれやの中国物を読んだ挙句、原書にまで手を出すようになり、そうやって読んだ話を翻案・翻訳してメールマガジンで流してらして、そういった話が本になったのだそう。ちなみに「話梅子」の読み方は「フアメイズ」。「話梅」という梅を乾して砂糖をまぶした中国のお茶請けにちなんだ名前なのだそうです。私もそういった中国物は子供の頃から大好きだし、平凡社の中国古典文学全集は宝物。原書に手を出そうなんて考えたことはなかったですけどね。(笑)
で、早速読んでみたら、知らない話が色々と... やっぱり原書が読めるというのは強いですねえ。それぞれに章ごとにテーマが決められて、似たような話がまとめられています。「游仙枕」の方は幽鬼や情愛、妖怪、動物、奇妙、神仙や幻術。「大器晩成」の方は、出世、試験、賄賂、名声、処世術、習性、犯罪、異界。科挙にまつわる話や大岡裁きみたいな現実的な話も面白かったんですが、私が好きなのは、やっぱり不思議系。そういう意味では「游仙枕」の方が好みですね。結局私も「聊斎志異」が好きなんだなあー。
宋や明、清の時代の話が多かったですが、宋と明の間の元の時代の話はなかったような...? あったのかもしれないですが、ものすごく少なかったはず。やっぱりモンゴル民族の時代は少し毛色が違うんでしょうね。「杜十娘」の冒頭に「明の萬暦二十年(千五百九十二年)に日本の関白平秀吉が朝鮮を侵略した。朝鮮が助けを求めてきたので...」という文章で始まる話があってびっくりでした。日本が出てきたのは、そのぐらいかな。(アルファポリス文庫)


+既読の話梅子作品の感想+
「游仙枕」「大器晩成」話梅子編・訳
「中国百物語 中国昔話大集III」話梅子編・訳

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三舟シェフと志村さんが珍しく喧嘩... その原因は、三舟シェフがついつい餌付けしてしまった黒い痩せた猫でした。責任を取ってその猫を飼うようにと志村さんに言われた三舟シェフは、お店に貼り紙をして、早急に猫の貰い手を捜すことになります... という「錆びないスキレット」他、全7編の短編集。

「タルト・タタンの夢」に続く、ビストロ・パ・マルのシリーズです。
相変わらずお料理が美味しそう~。それにパ・マルの雰囲気も相変わらずいい感じです。無口で無愛想だけど絶品の料理を作る三舟シェフ、シェフとして十分一人立ちできる実力があるのに、敢えて三舟シェフの下で働くことを選んでいる志村さん、そしてソムリエの金子さんにギャルソンの高築くん。「タルト・タタンの夢」を読んでから1年も経ってないのに、ようやく懐かしい面々に会えた~という感じ。
今回は三舟シェフがパ・マルを開店する前、フランスにいた頃のエピソードも2つあって、その中にヴァン・ショーを作るきっかけとなった出来事も語られるのが嬉しい♪ 前回のように、毎回謎解きの後にヴァン・ショー... にならなかったのは、表題作「ヴァン・ショーをあなたに」を際立たせるためだったのかな? 今回は謎解きとしては少し小粒な感じだったし、ヴァン・ショーがあんまり登場しなかったのも寂しかったんですが、その分三舟シェフの素顔を見せてくれていたので、物足りなさは感じなかったです。
今回特に気に入ったのは、「ブーランジュリーのメロンパン」と「ヴァン・ショーをあなたに」の2編。どちらも家族の絆を感じさせる暖かい作品でした。あと印象に残ったのは、「錆びないスキレット」での志村さんの台詞。「猫に餌をやるということは、そういうことです。その猫に責任ができるのです。だから、シェフ、きちんと責任を取ってください」 ...南方署強行犯係のシリーズを思い出しますね。(東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「窓の下には」の感想)
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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60年ぶりの満月のハロウィーンの晩。前回の満月のハロウィーンの晩の魔女の悪戯がひどかったため、今回子供たちは「お菓子をくれないといたずらするぞ!」のおふせまわりも早々に終わらせて家に入るように言われていました。しかし魔女のどんちゃん騒ぎに紛れ込んでみたいと考えたアリゼとエクレルは、魔女に扮装してホウキを持って、魔女の集まる星見丘へ。魔女が来ないうちに藪に隠れて待っていると、空は突然、ホウキに乗った魔女でいっぱいになります。ひとしきりゲームや競争をしてから地上に降り、焚き火をたいてお茶を入れ始めた魔女たち。それを見たアリゼは、藪に立てかけられたホウキを1本取って自分のホウキと取替え、「魔法入門」で覚えた呪文を唱えて空に舞い上がります。

先に読んだ「ティスの魔女読本」に出てきた魔女のティスとアリゼの出会いがこの本。空の上で困っていたアリゼを助けてくれたのがティスだったんです。でも、子供の頃に魔女のホウキで空を飛んでみたいと思ったことのある人は結構いるんじゃないかと思うんですが、こんな恐ろしい思いをするなんて想像してる人はほとんどいないと思いますねえ...。ここに登場する魔女たちの羽目の外し具合にもちょっとびっくり。物語に登場するような、いわゆる「良い魔女」「悪い魔女」とはまたちょっと違う「魔女」。これを読んでいると、本来の魔女ってこんな存在なのかもしれないなーなんて思えてきます。
そして魔女たちのハロウィーンパーティの後は、人間たちのハロウィーンパーティ。これは魔女のパーティとは全然違って、なんだかロマンティック。前後の本は読んでるので、おおー、実はこんな出来事があったのね!ってびっくりです。(河出書房新社)


+シリーズ既刊の感想+
「エルフさんの店」高柳佐知子
「ティスの魔女読本」高柳佐知子
「ハイウィロウ村スケッチブック」高柳佐知子
「アリゼの村の贈り物」高柳佐知子
「不思議の村のハロウィーン」高柳佐知子

+既読の高柳佐知子作品+
「イギリス湖水地方を訪ねて」「風のまにまにイギリスの村へ」高柳佐知子
「ケルトの国に妖精を探しに」高柳佐知子
「ナチュラル暮らしの手作り工房へ、ようこそ」高柳佐知子
「庭が仕事場」高柳佐知子

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夏休みの最後の3週間を、父と2人で海のそばの小さな町で家を借りて過ごすことになったと聞かされて驚くカズヤ。母がその間ずっと遠くで仕事なので、2人で東京にいても仕方がないというのです。カズヤは小学5年生。父は小説家で、母はデザイナー。そしてたどり着いた海辺の町は、海水浴場などではなく、小さな漁港があるだけの町。カズヤは早速、同じ小学5年生でミステリー好きのミツルと話すようになります。そのミツルがしてくれた秘密の話は、この町に住んでいた佐多緑子という大金持ちの老婦人の遺産にまつわる謎の話。彼女は亡くなる4日前に全財産を銀行からおろし、亡くなるまで一度も外出せず、訪ねてきた客もいなかったというのに、死後、そのお金は屋敷のどこにもなかったというのです。2人は早速佐多緑子の遺産はどこに消えたのか考え始めます。

ポプラ社にTEEN'S ENTERTAINMENTというYA向けのシリーズが出来ていたようですね。これはその第一回配本作品。
題名の「フリッツと満月の夜」の「フリッツ」は、表紙の絵にも描かれている猫のこと。満月の夜に一体何があるのかな~?なんて思って読んでいたんですけど... いや、確かにフリッツも満月の夜も一応重要ではあるんですけど... あんまり話の中心というわけではなかったんですね。むしろカズヤとミツルのひと夏の冒険物語という感じ。もしかして、元々はきっともうちょっと違う話になるはずだった? 書き直してるうちに路線が違う方向にズレちゃったの? って思っちゃう。このフリッツの存在こそが松尾さんらしいところになるはずだったんでしょうに、この程度じゃああんまり必然性が感じられない... せめてもう少し早く物語の前面に出てきていれば。
うーん、ダビデの星の使い方は面白かったんですけどねえ。私にはどうも全体的に物足りなかったです。残念(ポプラ社)


+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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熊井明子さんといえば「ポプリの人」というイメージしかなかったんですが、やっぱりそのポプリのイメージそのままの本でした。少女だった頃の話から、映画監督の熊井啓氏と結婚したこと。そして結婚後のことなどが色々綴られていて、実際にはポプリの話はあまり出てこないんですけど、その土台はやっぱり「ポプリ=乙女」なイメージ。このエッセイが書かれた時、熊井明子さんはもう30台後半になってらしたはずなんですけど、まだまだ少女らしさを残してらしたんですねー。お好きな詩が沢山引用されてるところも一昔前の文学少女という感じだし... たとえば内藤ルネさんデザインのハンカチの話が出てくるところでは、以前読んだ田辺聖子さんのエッセイを思い出してしまいます。田辺聖子さんは中原淳一さんがお好きで、そのことを書いてらしたので、内藤ルネさんのお名前が出てきてたかどうかはさだかではないのですが...。随所で時代を感じさせるし、そもそも私自身が全然乙女系じゃなかったので、読んでてちょっとツラい部分もあったんですけど、それでも気がついたらするすると最後まで読んでしまいました。
読んだ後でちょっと調べてみたら、熊井明子さんのご主人の熊井啓氏は2007年に亡くなってたんですね。ということは1962年に結婚してらっしゃるので結局、40年目のルビー婚式... か、45年目のサファイア婚式までだったのかあ...(文中にそういう話が出てくるのです) でも1972年公開の「忍ぶ川」の前後で体の具合が相当悪くて生死の境をさまよったような話が出てくるので、「2007年に亡くなった」というよりも「2007年まで生きていた」という方が強いかも。最近まで生きてらしたと知って、なんだかちょっとほっとしてしまいました。(じゃこめいてい出版)

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信乃にアルバイトの話を持ってきたのは、継父の「村尾さん」。取引先の社長に、ある10歳のお嬢様が女子高校生限定の家庭教師を探しているという話を聞いてきたのです。無事にその子の家庭教師になれた時の謝礼は、かなりの高額。しかしお嬢様はなかなか気難しいらしく、これまで面接を受けに別荘まで行った高校生のほとんどが、その日のうちに帰されてしまっているというのです。信乃は再婚したての両親を2人きりにさせてあげる意味もあって、面接を受けに行くことを決めます。そして翌日早速その少女、阿久根芽理沙に会いに行くことに。

普通なら、我侭なお嬢様の家庭教師になった女子高生が別荘地で連続殺人事件に巻き込まれて... というミステリになるはずのところなんですけど、この作品を書いてるのは松尾由美さん。そんな一筋縄でいくはずがありません。なんせ人くい鬼モーリスが殺人事件に絡んできちゃうんですから。
この「人くい鬼モーリス」は、実際には何なのかははっきりと分からないものの、この土地が別荘地になる前、普通の村だった頃は時々目撃されていた存在。芽理沙のお祖父さんもお母さんも、子供の頃に何度も見ています。お祖父さんの観察ノートによると、モーリスは自ら人を殺すことはしないものの、新鮮な人間の死体が大好物。死体を前にお祈りでも捧げるように頭を少し垂れていると、死体が光を放ち始め、数秒で死体が消えてなくなってしまうといいます。お祖父さんの考えでは、モーリスが食べてるのは生物の残留思念で、死体が消えてなくなるのは、その副作用のようなもの。そして最大のポイントは、モーリスを見ることができるのは高校生ぐらいまでの子供だけだということ。
この別荘地で起きる殺人事件では、いずれも死体が消滅してしまいます。読者や主人公たちにすれば、モーリスが食べてしまったんだろうというところなんですが、実際に推理する大人たちはそんな存在自体全然知らないし、人くい鬼の噂を聞いたとしても信じられるわけもなく...。そもそも死体と一緒に犯人の手がかりとなりそうなものも消えてしまってるだけでも問題なのに、死体を移動させられる腕力というのが犯人の条件になってしまうんだからヤヤコシイ。

読んでいても、モーリスの姿があまり鮮明に浮かんでこなかったのがちょっと残念でした。この作品は、ある怪獣のお話のオマージュになってるので、それが分かればそちらの絵が出てくるんですけど、最初はそんなこと分からないですしね。それに終盤、ちょっと唐突だなーとか、ツメが甘いなーと思ってしまう部分も... 本当ならもっと強烈に面白い作品になったんじゃないかって思ってしまうー。それでもモーリスの存在というファンタジックな存在が現実的なミステリと上手く絡み合っていて、これはこれでなかなか面白かったです。(理論社)


+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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