Catégories:“2008年”

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330年に遷都されてビザンティン帝国の首都となった時からはコンスタンティノープルとして、その後オスマントルコのメフメット二世が陥落させてからはイスタンブールとして、そしてケマル・アタチュルクが共和制トルコを打ち立ててからも、相変わらず首都として栄えているイスタンブール。1600年もの間、首都として、そして東西の文化の融合地点として栄えてきたイスタンブールという街を、その歴史的・文化的な観点から解説していく本です。

ここに書かれているのは、ビザンティン帝国の「コンスタンティノープル」というより、題名通りの「イスタンブール」ですね。主にオスマン・トルコのメフメット2世が陥落させて以降のイスタンブールのことが解説されていて、1つの都市を通して見たオスマントルコと共和制トルコの歴史とも言えそう。時系列的に出来事を追っていくだけではなくて、時には現在のトルコから遡っていくし、陳氏自身の紀行文的な部分もあったりして、それだけにまとまりがないように感じられる部分も無きにしも非ずって感じだったんですが、全体的には分かりやすく概観してる本かと... というか、私の興味がメフメット2世やスレイマン大帝、そして聖ソフィアをはじめとするキリスト教の教会やトプカプ宮殿、ミマル・シナンの建てた数々のモスクなど建築物に集中してしまったせいで、ちょっとムラのある読み方になっちゃったかもしれないんですけど... その辺りはすごく面白かったです。紹介されるエピソードも豊富だし。
ただ残念だったのは、文庫のせいか、収められている写真が全て白黒だったことですね。トルコの写真集を横に置いて読みたくなっちゃいました。(文春文庫)


+既読の陳舜臣作品の感想+
「イスタンブール」陳舜臣
Livreに「阿片戦争」「風よ雲よ」「旋風に告げよ」「小説十八史略」「太平天国」「中国五千年」の感想があります)

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従男爵のエリオット卿にとっては、自分の美貌と社会的地位がこの世の幸せ。相当な財産も虚栄心の強い彼には足りず、13年前に夫人が亡くなってからというもの財政的に赤字続き。とうとう屋敷を人に貸して、バースに移り住むことを決意します。連れて行くのは、自分の美貌を一番継いでいる29歳の長女・エリザベス。次女のアンは、卿にとっては全く存在感がなく、しかも彼女自身バースが嫌いなこともあって、まずは母代わりの存在だったラッセル夫人の家へ、そして既に嫁いでいる妹のメアリの家へと行くことに。しかし屋敷の借り手となったクロフト提督の夫人は、アンが8年前に婚約していたウェントワース大佐の実の姉。しかも8年ぶりに海外勤務から戻ってきた大佐は、メアリの嫁ぎ先に始終顔を出し、アンに当てつけるかのように2人の令嬢と親しくするのです...。

この作品の主人公は、エリオット卿の次女のアン。美しくて優しくて献身的な女性なんですが、彼女の美貌が父親ではなく母親譲りだったため、父親は彼女に何の関心も示さないんですね。そんな父親の態度を見てか、姉のエリザベスもアンを軽視。そして我侭でプライドばかりが高いメアリは、体調が悪いと言ってはアンを気軽に呼びつけるような妹。そんな気の毒な環境に育ったアンなんですが、母の古い友人のラッセル夫人だけはアンを溺愛しています。だからこそ、8年前にアンが婚約した時、ウェントワース大佐に資産がないことを理由に強固に反対するラッセル夫人に、アンも逆らいきれなかったんですが...。8年ぶりに現れたウェントワース大佐は、既に一生働かなくてもいいだけの資産を手にしていて、しかも非常に感じの良い好男子。娘の婿に相応しい~と思われるような人物になっちゃっています。でもアンに失恋させられたことを未だに許してないみたい。
という話なんですが...
オースティンの作品としては地味な方ですねえ。「マンスフィールド・パーク」も地味だと思ったけど、こちらの方が地味度は上かも。「マンスフィールド・パーク」のファニーよりはアンに華があると思うんですけど、物語としてもそれほど波風は立たないですしね。それに、アンの家族は散々な描かれようなんですが、この作品では他のオースティンの作品ほど登場人物が欠点だらけという感じもなくて、オースティン節とでも言えそうな部分が少し薄い気も。...だからツマラナイというわけじゃないんですけどね。これはこれでやっぱり面白いですし。
読んでいてちょっと驚いたのは、この時代に30歳間近の女性がオールドミス扱いされていないこと。日本でもほんの20年ほど前までは、24歳までに結婚しなかったら「クリスマスケーキ」なんて呼ばれて売れ残り扱いされたはずなんですけど、18世紀のイギリスでは全然そんなことなかったんですねー。27歳のアンも29歳のエリザベスも全然焦ってません。まあ、自分の美貌と家柄に絶大な自信を持ってるエリザベスはそんなものかもしれないですが、周囲も特に何も思っていないみたい。「いずれ、いい人が現れれば」程度。浪費家のお父さんのせいで、それほどの財産は継げなさそうだし、結婚しないからといって仕事に生きるってわけにもいかないはずなんですけどねえ。まあ、親きょうだいが元気なうちは、無理に結婚して苦労するぐらいなら、独身のままでいた方がずっといいのかもしれませんが(笑)、当時の女性が一般的にどんな感じだったのか、もっと知りたくなってきちゃいます。(岩波文庫)


+既読のジェイン・オースティン作品の感想+
「自負と偏見」オースチン
「エマ」上下 ジェイン・オースティン
「分別と多感」ジェイン・オースティン
「マンスフィールド・パーク」ジェイン・オースティン
「ジェイン・オースティンの手紙」ジェイン・オースティン
「説きふせられて」ジェーン・オースティン
「ノーサンガー・アベイ」ジェーン・オースティン

+既読のジェイン・オースティン関連作品の感想+
「ジェイン・オースティンの読書会」カレン・ジョイ・ファウラー

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たったの一言口をきいただけで、出身階級が分かってしまうというイギリス英語。そして外見について何らかの評価を下す以前に、その人間の属する階級を無意識のうちに考えてしまうというイギリス人。文学作品を読めば、登場人物の住んでいる場所や読む新聞、食べる物、言葉遣い、仕事や学歴などの情報から階級がはっきり読み取れるようになっているといいます。なので文学をテレビや映画など他の媒体に移す時は、階級とアクセントが切っても切り離せない問題。イギリスの階級にはアッパークラス、ミドル・クラス、ワーキング・クラスという大きな分け方がありますが、この本では特にミドル・クラスを「アッパー・ミドル」「ミドル・ミドル」「ロウアー・ミドル」と分けて、その観点からイギリスの文学や映画を論じていきます。

いやあ、面白かった! 著者の新井潤美さんは小学校時代からもっぱら海外で教育を受けた方のようで、イギリスのアッパー・ミドル・クラスやロウアー・ミドル・クラスの寄宿学校も経験されてるんですよね。イギリスの階級を肌で感じる生活を送ってきた方だけに、具体的な例を挙げての説明にはとてもリアリティがありました。私もイギリス人作家の作品は今までも結構読んでますが、細かい階級について知らずに読んでいた部分が多かったので、ものすごく勉強になりましたー。しかも最近、ジェイン・オースティンの作品を何作か立て続けに読んだところでしたしね。それらの作品で一貫して描かれているアッパー・ミドル・クラスの人々や、同じ階級内でも微妙な上下関係とやそのこだわりぶりがとても良く理解できて面白かったです。なんで「エマ」で、主人公のエマが私生児のハリエットをそれほど引き立てていたかも分かったし、そもそもなんでそういう設定が使われていたかも分かったし。
それにそういった作品に出てくる住み込みの女性家庭教師(ガヴァネス)、メアリー・ポピンズみたいな乳母(ナニー)、そして「レベッカ」の主人公がしていたようなコンパニオンの話もすごく面白かったです。「ガヴァネス」は良家の子女を教育する仕事。「コンパニオン」は裕福な独身女性や未亡人の身の回りの世話をしたり、話し相手になるという仕事。通常、アッパー・ミドル・クラスかそれ以上の階級の独身女性が、家の事情などによってやむを得ずつく仕事で、普通の使用人よりも一段上の存在なのだそうです。それに対して、両親の代わりに子供を躾ける「ナニー」はワーキング・クラスやロウアー・ミドル・クラス出身者が一般的で、自分自身が教わったこともないマナーや話し方を仕込まなければならなかったのだそう。映画の「メアリー・ポピンズ」では、メアリー・ポピンズがやけに優しくて愛想が良くて違和感だったんですけど、やっぱり本のつっけんどんなメアリー・ポピンズこそが典型的な「古き良きナニー」だったんですねっ。
どの章もそれぞれに面白くて、ここには書ききれないぐらい。この本の中では、文学作品だけでなくて、そこから映画化された作品のことも例に挙げて、その階級へのこだわりがどんな風に反映されているか(あるいはされていないか)なんていう考察もあって、本好きさんだけでなく、映画好きの方にも楽しめる1冊なのではないかと♪

取り上げられている文学作品
I.ラヴ・コメディ今昔...
  「エマ」(ジェイン・オースティン)、「ブリジット・ジョーンズの日記」(ヘレン・フィールディング)(オースティン「高慢と偏見」も)
II.働く女たち...
  「ジェイン・エア」(シャーロッテ・ブロンテ)、「メアリー・ポピンズ」(P.L.トラヴァース)、「レベッカ」(ダフネ・デュ・モーリア)
III.階級と男たち...
  「大いなる遺産」(チャールズ・ディケンズ)、「眺めのいい部屋」(E.M.フォースター)、「コレクター」(ジョン・ファウルズ)
IV.イギリス人が異世界を描けば...
  「タイム・マシン」(H.G.ウェルズ)、「時計じかけのオレンジ」(アントニー・バージェス)、「ハリー・ポッター」(J.K.ローリング)
V.マイノリティたちのイギリス...
  「日の名残り」(カズオ・イシグロ)、「郊外のブッダ」(ハニーフ・クレイシ)

これらの作品を元にして作られた映画も併せて取り上げられています。(平凡社新書)


+既読の新井潤美作品の感想+
「不機嫌なメアリー・ポピンズ」新井潤美
「階級にとりつかれた人々」新井潤美

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ヒンドゥー教の代表的な聖典と言われる「バガヴァット・ギーター」は、「マハーバーラタ」の中に収められている神の歌。「マハーバーラタ」の第6巻に収められていて、宗教上特に重視されている箇所なのだそう。先日読んだ「ナラ王物語」は、確か「マハーバーラタ」の3巻辺りだったはず... 全18巻の「マハーバーラタ」をちょっとずつ切り崩す計画は着々と進行中です。(笑)
...とは言ってもこの「バガヴァッド・ギーター」、私はつい最近まで知らなかったのです。知ったのは、前回のたら本41回「私家版・ポケットの名言」で、AZ::Blog はんなりとあずき色のoverQさんが挙げてらしたから。(記事) 挙げてらした文章がかっこ良かったから。(そういう理由か!)

万物の夜において、自己を制する聖者は目覚める。万物が目覚める時、それは見つつある聖者の夜である。

ねね、かっこいいでしょう?
で、岩波文庫からその名もずばりの訳本が出てるんですけど、難しそうなので、上村勝彦さんの解説本を一緒に読むことにしたんですが... やっぱり難しかった。ちょっと気が緩むと文字を目が追ってるだけの状態になってしまうので、何度も繰り返して読んでしまいましたよ。

ええと、ものすごく簡単に言うと、「マハーバーラタ」とはバラタ王族の歴史を描いた叙事詩。そしてその中の「バガヴァッド・ギーター」は、内部分裂によって王族同士の戦争となってしまった時に、親族や師や友人を殺してまで勝っても虚しい... とやる気を失ってしまったアルジュナ王子に、クリシュナ神の生まれ変わりの人物が「それは違う」と諭す物語なんです。
面白いところがいくつか。たとえばヒンドゥー教では苦行を全然オススメしてないところとか。「バガヴァッド・ギーター」では、食事の面でも睡眠の面でも調和の取れた生活をして、心身共に健康を保つことがとても大切なんだそうです。どうも心身をいじめて極限状態にしてそれに耐えるというイメージがあったので、ちょっと意外でした。インドの行者といえば、大抵ガリガリに痩せているからでしょうか。(という絵が多いのかも) 滅多に人のしない苦行なんかをすると周囲にもてはやされるし、どうしてもそれを自慢に思う気持ちが出てきてしまいがちなので、逆効果なのだそう。釈尊自身、激しい苦行をした後でそれが無益だと気づいて、苦行を捨てたそうですしね。瞑想に入って悟りを開いたのはその後。それと、ヒンドゥー教ではあんまり早く修行を始めるのも推奨されていないということ。まずは勉学に励み、結婚して家長としての義務を果たし、孫ができる頃に森林に隠遁して、最後に聖地巡礼をして死ぬ、というのが理想なんだそうです。

そして上に引用した文は、第2章の文章。文字通りでいけば、「万物が眠っているとき聖者は目覚め、万物が目覚めているとき聖者は眠る」という意味だそうですが... 愚者は目や耳といった感覚器官によって対象を認識するし、その感覚に執着するけれど、聖者はそういった感覚を制御して、非常に静寂な瞑想状態の中で真理を知ろうとする、すなわち愚者と聖者の行動は正反対である、ということを暗示しているのだそうです。やっぱり難しーい。でも、面白かったです。(岩波文庫・ちくま学芸文庫)

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ウォルターは美しく優しく賢い若者。しかし、お互いに恋に落ちて結婚したはずの美しい妻に裏切られ、富裕な商人である父の船に乗って他国を色々と見て回りたいと考え始めます。船出の前日、波止場で目に入ったのは奇妙な3人組でした。最初の1人は暗褐色のぞっとするような肌色をした小人。次は20歳ほどの花のように美しい、しかし右足のくるぶしに鉄の環をはめた乙女、そして最後は、背が高く威厳に満ちた、あまりの美しさでじっと見つめることができないような貴婦人。ウォルターは故郷を後にした後、再びその3人連れを目にすることになります。

「輝く平原の物語」と同じような、こじんまりとした中編。モリスの晩年である60代の頃に書かれたという作品です。でも「輝く平原の物語」や「不思議なみずうみの島々」のように水を越えて異界へと旅立つのではなくて... こちらの作品でも海を越えてはいるんですけどね。異界への入り口は岩壁の「裂け目」。
この作品を読んでいて一番感じたのは、「ナルニア」のC.S.ルイスへの影響。美しいけれど傲慢な貴婦人は、丁度ナルニア国に出てくる女王・ジェイディスのようだし、この世界の描写とか異界への入り方は、「銀のいす」のイメージ。別にそっくりというわけじゃないし、実際違う部分も多いんだけど、読み始めてそれが頭に一旦浮かんできたら不思議なほどしっくりきて、すっかり頭から離れなくなってしまいましたー。
相変わらずの豊かなイメージ、森の中の瑞々しい描写を楽しめたんですが、純真な乙女のはずの「侍女(メイド)」の狡猾さに驚かされたり、「女王(レイディ)」の最期の呆気なさにはこちらが呆気に取られたり。ウォルターの故郷の話はどうなっちゃったの? 行きて還りし物語ではなかったの? 形式的ではあっても、最後はきちんと閉じてくれる物語の方が好きだし、安心できるんだけどなあ...(笑)

ということで、晶文社のウィリアム・モリス・コレクションを読んできたんですが、「アイスランドへの旅」だけが入手できてなくて読めない状態。これは、アイスランド・サガゆかりの地を訪ねた6週間の旅の紀行文だそうです。私もアイスランド・サガにはものすごく興味があるので、とても読んでみたいのだけど、残念。でも、いずれ読むぞー。(晶文社)


+既読のウィリアム・モリス作品の感想+
「世界のはての泉」上下 ウィリアム・モリス
「理想の書物」ウィリアム・モリス
「輝く平原の物語」ウィリアム・モリス
「ジョン・ボールの夢」ウィリアム・モリス
「ユートピアだより」ウィリアム・モリス
「不思議なみずうみの島々」上下 ウィリアム・モリス
「世界のかなたの森」ウィリアム・モリス
「サンダリング・フラッド」ウィリアム・モリス
「アイスランドへの旅」ウィリアム・モリス

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バーダロンは、幼い頃に魔の森の魔女にさらわれて、奴隷として育てられた少女。日々の忙しい仕事をこなしながら、時間ができると湖や森で過ごしていました。そして17歳になった夏、美しく成長したバーダロンは森のオークの木の下で見知らぬ女性に出会ったのです。鏡を覗いたことのないバーダロンには分からないものの、その女性・ハバンディアはバーダロンに瓜二つ。彼女は森に住む聖女でした。2人はすぐに親しくなり、バーダロンはやがてハバンディアに授かった知恵により、魔女の小船に乗って魔女の元から逃げ出すことになります。

「ジョン・ボールの夢」「ユートピアだより」は、ファンタジーながらも社会主義的思想が色濃く出てた作品なんですが、これは「世界のはての泉」や「輝く平原の物語」系列の中世風ロマンス。やっぱりこういう作品が好きだなあ。話の筋書き云々というより、この世界の雰囲気がほんと好きなんですよね。魔女の元を逃げ出したバーダロンが、「無為豊穣の島」「老若の島」「女王の島」「王の島」「無の島」と魔法の小船で巡る不思議な島々の様子は、まるで「ケルトの古歌『ブランの航海』序説」(感想)にも載っているようなケルトの古い航海譚のよう... そしてたどり着く「探求の城」は、アーサー王物語の世界のよう。ウィリアム・モリスがこの辺りの作品を読んでないとはまず考えられないので、おそらくその辺りを踏まえてるんでしょう。
でも、それ以外には不思議な部分が多々目につきました。まず、バーダロンは魔の森の魔女の元で奴隷として育てられてて、その生活をすごく嫌がってるんですけど、「奴隷」という言葉から想像するような生活ぶりとは思えないんですよね。魔女はバーダロンをたっぷり食べさせてるし、酷く折檻することもないようだし、バーダロンの仕事というのは森の中で生きていくために必要な日々の基本的な仕事みたい。バーダロン自身、かなりの自由時間を持っているようです。もちろん魔女が邪悪で、いずれ邪悪な目的に利用されるだろうというだけでも嫌う理由としては十分なんですけど(自分が幼い頃に母親の元から攫われたというのは、バーダロンにとってさほど重要な問題でないらしい)、その邪悪な目的というのも特に具体例が挙げられてるわけじゃないので、魔女の言いなりに嫁がされる程度のことのように思えるし。(それが嫌な相手だったら、もちろんものすごく嫌なことなんですが) それと、魔女の元から逃げ出してたどり着いた無為豊穣の島で、囚われている3人の貴婦人に出会うんですが、その3人の恋人たちを探して連れて来て助ける約束をするのはいいんですけど... その3人の恋人たちに実際に会えた時に3人が3人ともバーダロンに一目惚れしちゃうんです。最初の2人はそれでも流せる程度なんですけど、一番親切にしてくれた貴婦人の恋人とは決定的に両思い。いくらバーダロンが世間知らずだからって、これはマズイでしょー。しかも城中の男たちが皆揃いも揃ってバーダロンの美貌に心を奪われてしまうんです。神に純潔を誓っているはずの司祭までもが。それをバーダロンは何気に利用してたりして... 美人だったら何でもアリなのかーっ。

基本的には中世来の物語の形式に則ってるのに、そこから意図的に外されたらしい部分もすごく目につく作品。ものすごーく楽しめたし、こういう作品は大好きなんですけど、つきつめて考え始めると不思議な部分もいっぱい。きっと私には読み取りきれてない部分があるんでしょうけど... 誰か解説プリーズ。(晶文社)


+既読のウィリアム・モリス作品の感想+
「世界のはての泉」上下 ウィリアム・モリス
「理想の書物」ウィリアム・モリス
「輝く平原の物語」ウィリアム・モリス
「ジョン・ボールの夢」ウィリアム・モリス
「ユートピアだより」ウィリアム・モリス
「不思議なみずうみの島々」上下 ウィリアム・モリス
「世界のかなたの森」ウィリアム・モリス
「サンダリング・フラッド」ウィリアム・モリス
「アイスランドへの旅」ウィリアム・モリス

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ある初冬の晩、社会主義同盟の集まりから帰ってきた「私」は、家についた途端ベッドに転がり込んで、すぐに寝入ってしまいます。しかし翌朝、すっかり日が高くなってから目が覚め、服を着替えて外に出てみると、そこは6月上旬のようなうららかな美しい朝。空気が心地よく、そよ風が気持ち良いのです。なかなか眠気が去らないせいだと考えた「私」はテムズ川で泳ぐことを思い立ち、いつの間にか家の真正面にできていた浮桟橋から舟に乗り込むことに。しかし水の中から見た川岸の光景はいつもとはまるで違っていて、船方の青年も14世紀風の美しい服装をした洗練された紳士だったのです。その船方の青年・ディックと話すうちに、「私」がなんと未来のロンドンにいることが判明して...。

19世紀に生きる主人公が、22世紀の未来にタイムスリップしてしまうという物語。未来のイギリスはまさにユートピア。貨幣制度は既に廃止されていて、人々は生きるために働いているのではなく、自分の楽しみのために、あるいは夜の眠りを心地良くするために働いています。機械によって粗悪品が大量生産されることもなく、美しい手工芸品が喜ばれる世界。生活に追われて嫌な仕事に追われるということもなく、各自がそれぞれに好きな仕事をこなし、必要とする人に必要とする物を供給することによって自然に社会が運営されていくという仕組み。いつか「革命」がおきて、そういった世界が来ることを望んでいた主人公は、自分の生きていた時代から後に一体何が起きたのか、古老たちに聞かずにはいられません。
これはモリスにとっての理想の社会の未来図なんでしょうね。モリスにとって現実の19世紀の世の中がどんなものだったのか、そして彼の持っていた社会主義とはどのような思想だったのか、この作品を読むとよく分かります。でも、あまりに夢物語で... もちろんこの作品の中でもこれは夢物語なんですけど(笑)、ここまでくるとなんだか逆に痛々しくて、読むのがちょっとツラかったかも。
でも、満ち足りた幸せな生活を送っていると、人間の老け方も全然違ってくるというのが面白かったです。主人公はじき56歳という年齢なんですけど、未来の世界では80代ぐらいの老人と思われてるんですね。逆に20歳そこそこだと思った女性が実は40歳を過ぎていたり、がっしりと逞しい初老の男性が実際には90歳ぐらいだと分かったりして、主人公はびっくり。確かに生活に追われてると老けやすいでしょうけど、ここまで極端なのは... でも言いたいことは分かるような。(笑)(晶文社)


+既読のウィリアム・モリス作品の感想+
「世界のはての泉」上下 ウィリアム・モリス
「理想の書物」ウィリアム・モリス
「輝く平原の物語」ウィリアム・モリス
「ジョン・ボールの夢」ウィリアム・モリス
「ユートピアだより」ウィリアム・モリス
「不思議なみずうみの島々」上下 ウィリアム・モリス
「世界のかなたの森」ウィリアム・モリス
「サンダリング・フラッド」ウィリアム・モリス
「アイスランドへの旅」ウィリアム・モリス

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