Catégories:“2008年”

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「時と神々の物語」は、「ぺガーナの神々」「時と神々」「三半球物語」の全作品及び、生前単行本未収録だった短編11編、シドニー・S・シームの挿絵も全点収録。「最後の夢の物語」は、「五十一話集」、本邦初公開の「不死鳥を食べた男」の全作品、その他2編の短編を収録。

ロード・ダンセイニの幻想短編集成全4巻の3巻と4巻。もっと早く読もうと思っていたのに、以前に1巻と2巻を読んでから(感想)、大分時間が経ってしまいました。なんせ分厚いんですよね、この4冊。3巻も4巻も、短編集が丸々3つ4つ入っているようなものだし。
この中では、3巻に収録されている「ぺガーナの神々」「時と神々」が再読です。(感想

ダンセイニの真骨頂というのは、やっぱりこういった初期の神話系の作品にあると思うんですよね。ダンセイニの文章は17世紀のジェームズ王の欽定訳聖書の格調高い文体の影響を色濃く受けていると言われていて... これはたとえば2人称が「you - your - you - yours - yourself」ではなくて「thou(複数形はye) - thy - thee - thine - thyself」が使われているとか、動詞の活用形が今とは違うとか、そういうのなんですけど、たとえば16世紀のシェイクスピアの作品なんかでも、その2つの人称形が相手との微妙な距離感によって使い分けられてたりするんですよね。いわゆる「初期近代英語」。ダンセイニの作品でこの古風な言葉が使われていたのは、もっぱら初期の作品の「ぺガーナの神々」「時と神々」「エルフランドの王女」(感想)辺りのようです。
そんな風に言葉に強いこだわりを持っていた作家といえば、J.R.R.トールキンがいるんですが... この本の解説に、トールキンはきっと最初はダンセイニの本を沢山読んで熱中したのだろうけど、細部の言語学的な注意が不十分で深みがないと批判的になったのではないか、というようなことが書かれていて、いかにもありそうだなあと笑ってしまいました。もちろん、どちらも原書で読まない限りは、本当に味わうことはできないのだけど。C.L.ムーアが言ったという「誰もダンセイニを真似ることはできないのだが、ダンセイニを読んだことのある者はたいてい誰でも一度はやってみようとするものである」という言葉だって、原書を読まない限りは本当に理解することはできないし。
ダンセイニの後期の作品は、たとえば「魔法の国の旅人」(感想)のホラ話のような軽快な作品が中心となったようで、ここに収められている沢山の短編の中にもそういった芽がいくつも見られるんですが、やっぱり私は初期の重厚な作品の方が好きですね。「ぺガーナの神々」ほどの神話とまではいかなくても、既存の神話にモチーフを取った話や、異世界との境界線をふっと越えてしまうような作品が好きです。(河出文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ

+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ
「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ
「牧神の祝福」ロード・ダンセイニ

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「窓のそばで」は、ルイコという小学生の女の子が主人公の連作短編集。「星占師のいた街」は、12の月それぞれのスケッチ「12のオルゴール」と、ごみごみした街中の古いレンガ造りのビルのてっぺんにあるみすぼらしい箱舟に、猫と一緒に住んでいた年寄りのノアの物語「ノアの箱舟」、古いアパートの前のぽっかりとした空き地が気に入っていたのに、そこに突然建ったのはお洒落な豪華マンションで... という「ポリーさんのおうむ」の3編。

どちらもほんのりと不思議な雰囲気が漂うファンタジーの物語集。「窓のそばで」も可愛らしくて良かったんだけど、こちらはちょっと対象年齢が低かったかな... 「星占師のいた街」の方が断然楽しめました。目の前に鮮やかな情景が広がるのは、竹下文子さんの他の作品と同様で、今回もとても綺麗です。「12のオルゴール」では、季節折々の情景が広がるし、「ノアの箱舟」では、ビルの上に箱舟があって老人と猫が住んでいるというのもさることながら、最後にそれが深い水の底に沈んだ街から船出する場面が、とても素敵。このノアのおじいさんが占い師をして暮らしてるので、これが表題作ということですねー。そしてこの本の書影が出ないのがとても残念なんですが、表紙も挿絵も牧野鈴子さんが描いてらして、これがまたとても雰囲気に合っていて素敵なんです。(偕成社)


+既読の竹下文子作品の感想+
「風町通信」竹下文子
「木苺通信」竹下文子
「星とトランペット」竹下文子
「窓のそばで」「星占師のいた街」竹下文子
「むぎわらぼうし」竹下文子・いせひでこ

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冬の夜更け、みんなが寝静まった頃に父さんと2人でみみずく探しに出かけた女の子。2人は凍った雪の上をしゃりしゃりと音を立てながらも、黙って歩き続けます。みみずくに会いに行く時は、静かにしていなくちゃいけないのです。

大好きなジェイン・ヨーレンの絵本ということで、ずっと読みたいと思っていたのに、機会がなくて随分時間が経ってしまいました。これも先日柳田邦男さんの「砂漠でみつけた一冊の絵本」に載っていた絵本。(感想) しーんと静かな雪の中を森に向かって歩いていく2人。その静けさがとても印象的な絵本。日本語の文章もとても詩的に訳されていて、叙情的なジェイン・ヨーレンの美しさがよく出ているかと。そして、森の中で出会ったみみずくの目に、ものすごくインパクトがありました。本当に自分がみみずくに出会ったみたいな気分。ドキドキ。

そしてせっかくジェイン・ヨーレンの絵本を読むのだからと、ずっと気になっていたきょうりゅうの2冊も一緒に借りてきました。こちらは打って変わって、とっても元気。寝る前の子供たち、かぜをひいてしまった子供たちがすっかりきょうりゅうの姿になってしまって、なんて可愛い! 元気すぎるほどやんちゃな子供たちに、このきょうりゅうという姿はなんてぴったりなんでしょう。きっとジェイン・ヨーレンのお子さんたちやお孫さんたちも、こんな風に元気いっぱいなんでしょうね。愛情たっぷりで心がほわっと温かくなるような絵本です。マーク・ティーグによるきょうりゅうの絵も可愛いです~。(偕成社)


+既読のジェイン・ヨーレン作品の感想+
「夢織り女」ジェイン・ヨーレン
「水晶の涙」ジェイン・ヨーレン
「三つの魔法」ジェイン・ヨーレン
「光と闇の姉妹」「白い女神」ジェイン・ヨーレン
「月夜のみみずく」ジェイン・ヨーレン ショーエンヘール

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1913年、フランスのプロヴァンス地方の山深い地方を旅していた「わたし」は、荒地に水を求めて歩き回っていた時に1人の羊飼いの男に出会います。一番近い村まででも歩いて1日半はかかるという辺鄙な場所に、その男はたった1人で暮らしていました。その晩、その男の家に泊まることになった「わたし」は、質素ながらも心やすまるもてなしを受け、男が100粒の完璧などんぐりをより分けるを眺めることに。そのどんぐりは、山の中に植えるためのもの。男は3年前からこの不毛の地に木を植え続けているというのです。

これも先日柳田邦男さんの「砂漠でみつけた一冊の絵本」を読んだ時に載ってたんですが(感想)、むしろ去年読んだ「須賀敦子全集」の7巻を読んだ時に興味を持った本。(感想)須賀さんがイタリア人の友人に宮沢賢治の話をしたのがきっかけで、教えてもらったという物語が絵本になってました。これはジャン・ジオノ原作でフレデリック・バックの絵なんですけど、映像化もされているようですね。(右) フレデリック・バックという人はカナダのアニメーション作家なのだそう。高畑勲さんが「木を植えた男を読む」なんて本も出してました。
それにこの本、絵本だけじゃなくて単行本もあったみたい... そっちを読めば良かったかな? でも単行本も52ページという薄いもののようだし、こちらは絵本は絵本でもものすごく字が多かったので、それほど変わらないのかも。となると、絵がある方が楽しいですが。(笑)

賢者のような佇まいで、何の見返りも求めず、誰にも知られないままに、黙々と木を植え続ける男。彼にとっては世の中の移り変わりも戦争も何の影響を及ぼすことないのです。何も知らない周囲の人間たちが好き勝手なことを言っているのが、とても滑稽。でも世の中、こんなものなのかも。最初の頃の茶色とグレーだけの地味だった絵が、後半、虹のような美しい色彩に変わっていきます。(あすなろ書房)

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乾千恵さんの書の絵本。先日、柳田邦男さんの「砂漠でみつけた一冊の絵本」(感想)を読んだ時に読みたくなった本です。乾千恵さんの書に、谷川俊太郎さんの言葉と、川島敏生さんの写真をつけたもの。

これはまず乾千恵さんの書ありきなんですが、この書がとてもいいんです。何ともいえない味があって。収められている字は「扉」「猫」「風」「音」「馬」「影」「水」「石」「火」「山」「蟻」「月」「人」の13文字。ひらがなやカタカナみたいな表音文字と違って、漢字の場合は元々それ自体で意味を表す表意文字なわけですが、それ以上に雄弁にその字が何を表しているのか語っているよう。動きのあるものと静かなもの、大きいものと小さいもの。目に見えるものと見ないもの。
そして、その字に添えられた写真と言葉がまたいいんですよねえ。3人のパワーがぶつかり合って、生きている生々しさとでも言えそうなものがふきだしていて、それでいて、すごくバランスが取れてるという印象。どれもいいんだけど、特に気に入ったのは「扉」と「山」、そして「人」。「砂漠でみつけた一冊の絵本」でも紹介されていたのだけど、特に「人」のところで、乾さんが書を書いてる後ろ姿を使ったところはやっぱり凄いと思う... しかも白黒で。そしてここに添えられているのは、「もじに ひそむ ひとの こころ」。
形態としては絵本だし、図書館でも絵本のところに並べられているんですけど、むしろ画集? こういうのもいいなあ。飽きずに何度も眺めてしまいます。(福音館書店)

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何年も一緒に暮らしてきたのに、そのあくる日から別々の生活へと踏み出すことになっているヒロとアキ。最後の晩、荷物もすっかり運び出してがらんとした部屋の中で、買ってきた酒と惣菜を片手に話し始める2人。とりとめもない話題に始まった会話は、やがては1年前の夏の旅行の話へ。その旅行が2人の別離の決定的なきっかけとなったのです。彼を殺したのは、やはり彼(彼女)だったのか? 夜明けまでに相手に白状させることはできるのか?

場所は何もない部屋の中、一組の男女の一夜の会話だけで物語が進行。なんだか舞台の芝居を見ているみたいな作品でした。というかこれ、舞台で演じられているところが、読みながらまさに想像できるんですけど... 既にどこかやろうとしてる劇団があったりして。(笑)
何も事前知識がないまま読み始めたんですが、思いっきりミステリだったんですね。なんとなくびっくり。2人のことはなかなか明らかにされなくて謎だらけだし、ふと思い出した情景がまた新たな謎を呼んで、それまで真実だと思っていたこととはまた全然違う新しい真実が見えてくるんです。今まで確かに見えていたはずのものが、一瞬のちにはまるで違う表情を見せて、まるで万華鏡みたい。もちろん、それに連れて2人の間の緊迫感も刻々と変化。これは真実が何なのかということを突き詰めるというよりも、このくるくると変わる表情を楽しむ作品なんでしょうね。川の表面で光る木洩れ日の中にちらちらと見えているのは、本当に魚...?
いやあ、こういうの久々に読んだなって感じ。楽しかったです。(中央公論新社)


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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いつものように朝起きて大学に行き、午前中の講義を受けたあとは学生食堂で親友の由利江と昼食をとった11月7日の水曜日。しかしその次の日も、11月7日だったのです... という「秋の牢獄」他、全3編の短編集。

3つの物語が収められた短編集。表題作にしか「牢獄」という言葉はついてないのだけど、3つの作品はそれぞれに違う「牢獄」を描いたもの。「秋の牢獄」は同じ日に閉じ込められちゃう話で、次の「神家没落」は、見知らぬ藁葺き屋根の家から出られなくなる話。そして3作目の「幻は夜に成長する」も、座敷牢みたいなところに幽閉されている話。でも「秋の牢獄」みたいに、同じ日を何度も繰り返す話は他にも2つ読んでるし...。そちらの2つがそれぞれに名作なだけに、どうしてもそちらと比べてしまうなあ。
今回、図書館の予約が回ってきた時にどうもソソられなくて、読もうかどうしようかかなり迷ったんですけど、やっぱり読まなくても良かったかも。どうしても、最初の「夜市」「風の古道」の感動を期待してしまうんですけど、2作目の「嵐の季節の終わりに」も、どこかその期待とは違う場所に置き去りにされてしまったような感じだったし、今回もそうでした。今回の3作のうちでは「神家没落」が一番、期待していた恒川ワールドに近かったんですけどね。この藁葺き屋根の家は「風の古道」の世界にあっても全然おかしくない雰囲気だし。でも前2作には感じられた叙情的な美しさが今回あまり感じられなくて、どうも物足りなかったなあ... 求めるものが間違ってるのかもしれないけど。(角川書店)


+既読の恒川光太郎作品の感想+
「夜市」恒川光太郎
「雷の季節の終わりに」恒川光太郎
「秋の牢獄」恒川光太郎

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Note


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