Catégories:“2008年”

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ある日ディジョンの火縄銃(アルクビューズ)公園のベンチに座っていた「私(ベルトラン)」は、貧困と苦悩を全身に纏ったような哀れな男に出会います。同じベンチに座って読書をしていたその男の本からひとひらの押し花が地面に落ち、「私」がそれを拾い上げて男に返したことがきっかけで、話し始めた2人。芸術を探し求め、そして見つけたという彼は、「私」にそのことを語り聞かせ、持っていた本を読むように渡して去っていきます。それは「夜のガスパール。レンブラント、カロー風の幻想曲」という本でした。

夭折した詩人・ベルトランの散文詩集。没後忘れられていたこの作品集はボードレールによって見出され、マラルメをはじめ多くの詩人に影響を与えることになったのだそう。ラヴェルのピアノ曲「夜のガスパール」も、ここからなんですよね。ラベルのこの「夜のガスパール」は「オンディーヌ」「絞首台(ジベ)」「スカルボ」の3曲。それぞれ同名の詩があるんです。このラヴェルの曲、弾くのがものすごーーく難しそう... 美しいけどちょっと薄気味悪いところもある曲です。

この本は、「神と愛とが芸術の第一の条件、芸術の中にある《感情》であるならば、--悪魔こそその第二の条件、芸術の中にある《思想》ではないでしょうか」と言う男が持っていた本「夜のガスパール」を、ベルトランが出版したという体裁。ガスパールとは、この本の中では悪魔の名とされていますが、元々はベツレヘムへ向かった東方の三博士の1人の名前から。(ちなみに3人の博士の名前はメルヒオール、ガスパール、バルタザール)
「フランドル派」「古きパリ」「夜とその魅惑」「年代記」「スペインとイタリア」「雑詠」という「夜のガスパールの幻想曲第一の書」から「第六の書」までと、「作者の草稿より抜粋したる断章」があって、1つの章につき収められている詩は10編前後。散文詩という物自体、私にはよく分からないままだったし、一読しただけではその魅力が十分分かったとも言えないんですけど、でも1つ1つじっくり読んでると、なかなかいいんです、これが。特に「夜とその魅惑」には、稲垣足穂の「一千一秒物語」を思い起こさせる雰囲気がありましたしね。ちょっと薄気味悪くて、でもちょっと楽しい感じ。

月が黒檀の櫛で髪を梳いていた。丘を、野原を、木々を、蛍の雨で銀色にしていた。(狂人)

しかし小人は、いななき逃げる私の魂にぶらさがり、白いたてがみから糸を紡ぐ、紡錘のように廻っていた。(小人)
そして私、--熱に錯乱し!--顔に皺寄せた月が、私に向かって舌をつき出している首吊り人のように見えた!(月の光)

これだけ抜き出してもワケ分かりませんが...。こういうの、結構好きだな。(岩波文庫)

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両親を亡くしたデイヴィッドは、今はバーナード大おじさんの家に引き取られていました。普段は寄宿舎学校に入っており、休暇の時はサマースクールやホリディ・キャンプに行くため、あまり家に帰ることもないのですが、今回は参加するサマースクールを知らせるハガキが来なかったため、仕方なく家に戻ることになるデイヴィッド。しかし誰もデイヴィッドがその日帰るとは思っていなかったため、大騒ぎになります。家に戻った途端揉め事続きで、しかも自分が親戚たちにとって迷惑でしかないと思い知らされたデイヴィッドは、彼らに呪いをかけるつもりで、呪いに聞こえそうな言葉の響きをぶつぶつとつぶやきながら空き地を歩き回ります。そんなことをしても、親戚に何の影響も及ぼさないことは分かっていたのですが、時々それっぽい組み合わせを見つけると大声で唱えてみるデイヴィッド。しかしついに最高の組み合わせを見つけたのです。デイヴィッドは、堆肥の山の上で重々しくその言葉を唱え、ついでに堆肥を一握り塀に投げつけます。するとその途端、塀が崩れ落ちはじめて...。

1975年に発表したという、ダイアナ・ウィン・ジョーンズ初期の作品。いつものように手元に回って来ちゃいました。でもDWJ作品は、最近のより初期の方が好きなのでオッケー。
「呪い」が偶然成功してしまい、デイヴィッドが助けることになったのはルークという名の不思議な少年。会いたい時はマッチをするだけでいいんです。デイヴィッドはルークとすぐに意気投合するものの、実はルークのことを何も知りません。でも付き合い始めてすぐに、普通のルールに従って生きているのではないということだけは気付きます。

最初はハリー・ポッターみたいだなーと思いながら読んでたんですが(DWJの作品にはこういう設定が多いので、別に珍しくもないんですが)、最後まで読んでみたら、これが結構面白くて! デイヴィッドも案外しっかり育ってたのねーとか、これまで1人で頑張っていたデイヴィッドが思わぬ味方を得て、いつの間にか立場が逆転してたところも良かったんですけど、そういう細かい部分よりも、中盤から思いがけないところに繋がっていって! これがすごく楽しかったんです。ネタバレになるので詳しくは書きたくないんですけど、思いっきり私の趣味の方面に繋がっちゃうんですもん! びっくりしました。途中まで全然気付いてなかったので、いきなり気が付いてビックリ。でも日本人にはそれほど馴染み深いというわけではないんですよね。そちら方面をあまり知らない状態で読んだら、「で、結局何だったの?」となる可能性も...?(創元ブックランド)


+既読のダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品の感想+
「魔法使いハウルと火の悪魔」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「アブダラの空飛ぶ絨毯」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「デイルマーク王国史」1~4 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「わたしが幽霊だった時」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法使いはだれだ」「クリストファーの魔法の旅」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔女と暮らせば」「トニーノの歌う魔法」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法がいっぱい」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
留守中に読んだ本(18冊)(「マライアおばさん」「七人の魔法使い」「時の町の伝説」の感想)
「呪われた首環の物語」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「花の魔法、白のドラゴン」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「いたずらロバート」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジーランド観光ガイド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バウンダーズ」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「星空から来た犬」「魔空の森ヘックスウッド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バビロンまでは何マイル」上下 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ウィルキンズの歯と呪いの魔法」「海駆ける騎士の伝説」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「うちの一階には鬼がいる!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法!魔法!魔法!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ぼくとルークの一週間と一日」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「牢の中の貴婦人」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法の館にやとわれて」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「キャットと魔法の卵」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
Livreに「ダークホルムの闇の君」「グリフィンの年」「九年目の魔法」の感想があります)

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13巻は「寄生」「東屋」「浮舟1」、12巻は「浮舟2」「蜻蛉」「手習」「夢浮橋」。

とうとう最後の2冊を読んでしまいました。全14巻読了ー!!
12巻を読んでからちょっと合間があいてしまったんですけど、それが逆に良かったかも。10巻で源氏の君が亡くなってから11巻を読んだ時は、まだちょっと違和感があったんですけど、今回は純粋に楽しめました。いやあ、面白かった! どちらかといえば、やっぱり源氏の君が生きてた時の、思考のぶっ飛びっぷりが好きだったんですけどね。それでも薫と匂宮の話になってからこんなに楽しめたのは初めてかも。薫と匂宮も、この2人を巡る女性たちもどうしても好きになれないので、いつも「雲隠」以降は単なるオマケ状態になってたので...。今回別に好きになれたというわけではないんですが(笑)、いつもよりはもうちょっと近い位置で読めたような気がします。
今回ちょっと面白かったのは、浮舟のお母さんが身分とか幸せとかについて考えていたところ。でも読み終わった後で探しても出てこない... おっと思ったところが2箇所あったんだけどなあ。やっぱり読んでる途中で付箋をつけて置かなくちゃダメですね。って毎回思うんだけど、忘れてしまうのでした。ダメだなあ。>私

オススメして下さった、ちょろいもさん、ありがとう! いや、もうほんと楽しかったです。読んで良かった♪(中公文庫)


+既読の「源氏物語」の感想+
「源氏物語」+「まろ、ん?」小泉吉宏(与謝野晶子訳)
「源氏物語」1・2 円地文子訳
「窯変 源氏物語」1~3 橋本治
「窯変 源氏物語」4~6 橋本治
「窯変 源氏物語」7・8 橋本治
「窯変 源氏物語」9・10 橋本治
「窯変 源氏物語」11・12 橋本治
「窯変 源氏物語」13・14 橋本治

+既読の「源氏物語」関連作品の感想+
「東方綺譚」マルグリット・ユルスナール(雲隠)
「源氏供養」上下 橋本治
「輝く日の宮」丸谷才一
「千年の黙(しじま) 異本源氏物語」森谷明子
「紫式部日記 ビギナーズ・クラシックス日本の古典」紫式部・山本淳子編

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近未来のイギリス。15歳の少年・アレックスは、3人の仲間ジョージー、ピート、ディムとともに「何か新しいものを」入れたミルクでハイになっては、夜の街でしたい放題の毎日。図書館から借りた学術書を大事そうに持って歩いている教授タイプの男性を襲って殴る蹴るの暴行を加え、本を破壊。続けて商店に強盗に入り、木の下にいたカップルを殴り、さらに「ホーム」と書かれた家に押し入って、夫の目の前で妻を強姦。押し入った時、その夫は「時計じかけのオレンジ」という題名の原稿を執筆しているところでした。しかしその後入ったバーで、女性客がオペラの一節を歌い始めたことが原因で、アレックスとディムの仲は険悪になるのです。次に盗みに入った家でアレックスは仲間たちに裏切られて警察につかまり、アレックスは14年の実刑判決を受けることに。

スタンリー・キューブリック監督が映画化したことでも有名な作品。中学の時に本を読んだつもりになってたんですけど... 今回読んでも内容を全然覚えてなかったので、読んでなかったのかも。(汗)
とにかくパワーのある作品。極悪非道なことを繰り返すアレックスもすごいんですが、文章に造語が沢山入っていて、それがまた一種独特な雰囲気なんですよね。仲間は「ドルーグ」、男の子は「マルチック」、男性は「チェロベック」、女の子は「シャープ」、若い女性は「デボーチカ」、おばあさんは「バブーチカ」。他にも「デング」「ハラショー」「スコリー」「モロコ」「ベスチ」... こういった言葉はロシア語にヒントを得ているのだそうです。そういった言葉が饒舌なアレックスの一人語りにふんだんに散りばめられているので、読み始めた時は鬱陶しくて! でも一旦慣れてしまったら、この一種独特な雰囲気にするりと入り込めちゃう。
まあ、色々とあるんですが、やっぱりポイントは、アレックスが実はクラシック好きだったというところですね。外でどれだけ暴力を振るっても、自室に戻ると自慢のステレオでモーツァルトのジュピター交響曲やバッハのブランデンブルク協奏曲を聴いてるんです。(そういう場面に、架空の音楽家や演奏者の名前がそ知らぬ顔で混ざってるのが可笑しい) その音楽好きが、アレックスと仲間の反目の原因になるわけで、後のルドビコ療法でも利いてくるわけで。そしてそのまた後には音楽の好みの変化もあったりして。

アメリカ版では出版社の意向で最終章が削られていて、キューブリックはそのアメリカ版を元に映画化したので、この本と映画とでは結末が違うのだそうです。本国イギリス及びヨーロッパでは、最終章もきちんと付いているそうですが。
そして日本語版では、「デボーチカ」や「デング」といった言葉には「おんな」とか「かね」とかルビが振られてますが、原書にはそういう配慮はないようですね。新井潤美さんの「不機嫌なメアリー・ポピンズ」に原文が紹介されてましたが、文章にいきなり見知らぬ単語が登場してました。だから読者は文脈から意味を汲み取るしかなくて、その解読で気を取られてしまい、暴力描写をあまり生々しく感じなくなるんだとか。まあ、日本語版でもいちいちルビを見るわけだから、読みやすくなってるとはいえ、その効果は多少あるのかも。でも映画ではそのものの場面が映されるわけで...。映画は観てませんが、序盤は相当衝撃的な場面になってるようですね。「不機嫌なメアリー・ポピンズ」を読むと、本と映画の違いが色々面白そうなんだけど... でもやっぱりちょっと観るのを躊躇っちゃうなあ。(ハヤカワepi文庫)

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爆弾テロで夫と一人息子を亡くした女性が書く、オサマ・ビン=ラディンへの手紙。夫は警察の、夜昼構わず出動要請がかかる爆発物処理班の配属。いつ爆死してもおかしくない状況に夫婦どちらもひどいストレスが溜まっており、その夫がようやく警察を辞めると言い出してくれた矢先の出来事。夫は息子を連れてサッカーを観戦に行っており、爆弾テロはまさにそのサッカー場で起きたのです。

ニューヨーク・タイムズやニューズウィークで絶賛され、アメリカでは優れたフィクション第一作に贈られるファースト・フィクション賞を受賞、本国イギリスでも35歳以下の有望なイギリス人作家に贈られるサマセット・モーム賞を受賞、フランスではフランス読者賞特別審査員賞を受賞... と、なんだか賞をいっぱい取ってる作品。確かにそれに相応しく、良かったんだけど... 読む前に薄々予想していた通り、ものすごく読むのがツラかったです。夫と息子を失った女性が時間とともに癒されるという話ではありません。もうやるせなくて堪らない...(ハヤカワepi文庫)

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1836年。ある夏の日にペルニッツ川沿いのフィヒタウのロマンティックな森の渓谷を歩いていたハインリヒは、城の廃墟を発見します。それはローテンシュタイン城。かつて当主が、その城と財産を受け継ぐ者全員に、その生涯の事細かな自叙伝を書き保管室にきちんと整理し、それまでに書かれた自叙伝を全て読むことを義務付けたことで近隣に知られていました。しかし最後の当主がアフリカで射殺されてからというもの城を受け継ぐ者もなく、城は廃墟と化していたのです。ハインリヒはフィヒタウの旅館に逗留し、やがて旅館の娘・アンナと恋仲になります。そしてアンナと結婚するためには、まず地位と公職を手に入れなければと考えていました。

自然描写の美しさが魅力のシュティフターの作品。この作品も楽しみにしてたんですが...! これはちょっと訳がひどすぎました。多少自分とは合わない文章でも「ひどい」なんてまず言わない私ですが、これはひどいです。ちょっと前の「中国黄金殺人事件」(ロバート・ファン・フーリック)の「いまの彼女にはちょいと人好きする美しさが欠けてはいなかった。」系の訳。しかも誤植が多すぎ! この本は校正されてないんですかね?
もう、読んでても全然集中できませんでしたよー。自然描写の美しさどころか、ハインリヒとアンナのことも、ローテンシュタイン城のことも、かつて城にいた人々の物語もまるで楽しめず仕舞い。この本の解説は、原書にあったものをそのまま訳してるんだと思うんですが、ここに「「ナレンブルク」がシュティフターの創作力のもっともよく発揮されている作品の中に数えられているのは当然である」とあってびっくり。そんなにいい作品だったのか。でもこの日本語版では到底その良さは味わえないと思います。もっときちんとした日本語を書ける方が改めて訳して下さることを切望。(林道舎)


+既読のシュティフター作品の感想+
「水晶 他三篇 石さまざま」シュティフター
「森の小道・二人の姉妹」シュティフター
「晩夏」上下 シュティフター
「ナレンブルク 運命に弄ばれた人々の城」A.シュティフター
「石さまざま」上下 アーダルベルト・シュティフター
「森ゆく人」アーダルベルト・シュティフター
「書き込みのある樅の木」アーダルベルト・シュティフター

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フランスに留学中、クラスレッスンで弾いたラヴェルの「オンディーヌ」に「もっと濃艶に歌って弾くように」と注意されたという青柳いづみこさん。実際、その後老若男女様々な国籍のピアニストの「オンディーヌ」に出会うことになるのですが、そのイメージは一貫して「男を誘う女」。しかし青柳いづみこさん持つオンディーヌのイメージは、ドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」のメリザンドのように、人に媚びず、その美しさだけで人を惹きつける女なのです。このことから、青柳さんはオンディーヌとメリザンドについて、そして水の精について考え始めます。

神話や伝承の中の水の精の姿、文学作品の中に見られる水の精、そして「オンディーヌ」と「ペレアスとメリザンド」の物語、それらの音楽が考察されていきます。序盤はこれまで私も好きで読んできた神話や伝承の本の総まとめといった感じ。でも水の精の文学作品の方は、あんまり読んでない... フーケーの「ウンディーネ」(感想)と、ジロドゥの「オンディーヌ」(感想)ぐらいですね。この本を読んでいて読んでみたくなったのは、メーテルリンクの「ペレアスとメリザンド」、キーツの「エンディミオン」、ハウプトマン「沈んだ鐘」、ベルトラン「夜のガスパール」。でも市内の図書館にはどれもないし! ネット書店を調べても絶版本ばかりー。ただ、この本にも「ペレアスとメリザンド」のあらすじは載っていました。そしてどこにも「水の精」だなんて書かれていないメリザンドなのに、なぜ「水」を連想させるのかにもすごく納得。彼女は水そのものだったのか!

この本は同じタイトルのCD「水の音楽 オンディーヌとメリザンド」と同時発売だったそうです。CDに収められているのは、以下の11曲。同時に記念リサイタルも開かれたのだそう。
 「エステ荘の噴水」リスト
 「水の戯れ」ラヴェル
 「水の反映(映像第1集)」ドビュッシー
 「オンディーヌ(夜のガスパール)」ラヴェル
 「オンディーヌ(プレリュード第2集)」ドビュッシー
 「バラード第2番op.38」ショパン
 「バラード第3番op.47」ショパン
 「ローレライ(歌の本)」リスト
 「波を渡るパオラの聖フランチェスコ(伝説)」リスト
 「バルカロール(サロン小品集)」ラフマニノフ
 「シチリアーナ(ペレアスとメリザンド)」フォーレ

本の最終章には、このCDに収録した曲にまつわるエピソードも多数紹介されていて、そちらも興味深かったです。たとえば「水の戯れ」のラヴェルと「水の反映」のドビュッシーの「水」の表現の違い。

ラヴェルがほんの一瞬かすめるようにしか使わなかった全音音階(すべての音が全音関係にある)を、ドビュッシーはよどんだ水を表現するために頻繁に使う。同じように左右の手のすばやい交替でかきならされるアルペジオのパッセージを、ラヴェルは透明感のある長七で、ドビュッシーは不気味な全音音階のひびきで書いているのは象徴的だ。もし、彼らの水を飲めといわれたら、ラヴェルの水は飲めるけれども、ドビュッシーの水は、あおみどろが浮かんでいたりして、あまり飲みたくない、そんな気がしないだろうか?

ドビュッシーの水は、あおみどろ入りですか?!(笑)
こちらのCDも合わせて聞きましたが、本当に水・水・水ばかり。水の揺らめきや煌きがたっぷりで美しかったです。(いや、時にはあおみどろも入ってるんですけど・笑) 青柳いづみこさんのピアノ、好きだわ~。(みすず書房)


+既読の青柳いづみこ作品の感想+
「モノ書きピアニストはお尻が痛い」「ショパンに飽きたら、ミステリー」青柳いづみこ
「水の音楽 オンディーヌとメリザンド」青柳いづみこ
「ボクたちクラシックつながり」青柳いづみこ
「ピアニストは指先で考える」青柳いづみこ
「指先から感じるドビュッシー」青柳いづみこ
「ピアニストが見たピアニスト」青柳いづみこ
「六本指のゴルトベルク」青柳いづみこ

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