Catégories:“2008年”

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南に向けて6時間も飛びっぱなしだったカモメたちの一団は、見張り係がみつけたニシンの群れを目指して急降下。しかし銀色の翼のケンガーが4匹目のニシンをとりに海に潜った時、見張り係の警告の叫び声が。ケンガーが海面に頭を出した時、既に仲間たちの姿はありませんでした。警告は、海に原油が広がっていることを知らせるものだったのです。羽に原油がべっとりとついたカモメは、魚の餌食になるか餓死するさだめ。ケンガーはなんとか飛び立つことに成功するものの、やがて力尽きてハンブルクの一軒の家のバルコニーに墜落。そこにはゾルバという黒い猫がいました。自分の命が長くはないことを悟ったケンガーは、自分の産む卵をゾルバに託すことに。そして卵を食べないこと、ひなが生まれるまで卵の面倒をみること、そしてひなに飛び方を教えることをゾルバに約束させます。

ゾルバ、大佐、秘書、博士、向かい風といった猫たちと、フォルトゥナータと名づけられたカモメとの友情物語。「港では、一匹の猫の問題は、すべての猫の問題だ」「港では、一匹の猫が名誉にかけて誓った約束は、港じゅうのすべての猫の約束じゃ」という言葉のもとに、死んでいったカモメのケンガーとの約束は厳重に守られることになります。でも何でも載ってる博士の百科事典にも、カモメの育て方は載ってないんですよね。猫たちのカモメのヒナ育ては、全く手探り状態でスタート。ゾルバは綺麗な石みたいだなと思いつつも卵を温め続け、やがて生まれたヒナにハエを取ってやり、人間たちに見つからないように場所を移し、ヒナを狙わないように野良猫と下水管のネズミに話をつけます。フォルトゥナータをという名前になったヒナは、猫たちの愛情に包まれて育つんです。自分も猫だと思いたくなるほどまでに。
この猫たちがすごくいいんです。なんていうか男気があってカッコいい。私は本当は動物モノってあんまり好きじゃないんですけど、これは良かったなあ。とてもシンプルな物語なんですけど、とても力強くて愛情もたっぷり。ヨーロッパでは「8歳から88歳までの若者のための小説」という副題で刊行されたと聞いて納得です。確かに一見童話のような作品だし、すぐ読めてしまう短さなんですけど、これは単なる子供向けの作品ではないですね。子供も大人もそれぞれに楽しめる作品。なかなかいいものを読みましたー。(白水uブックス)

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ダヴンホール島のチャイナタウンで生まれ育ったマークは、生まれつき真っ白い髪をした少年。そのマークが、母親の足元に見知らぬ男の死体が横たわってるのを見たのは19歳の時。マークはそのまま回れ右をして島を出て行きます。島と本土を行き来する小さい船で働きながら、決して島に降り立とうとはしないマーク。そして15年が経った時。ダヴンホール島にやって来た青いドレスの娘に心を奪われたマークは、娘がなかなか戻って来ないのに苛立ち、15年ぶりに島に降り立ちます。しかし娘は見つからず、マークは母と再会。そして15年前に死んだ男の声、バニング・ジェーンライトの生涯を語る声を聞くことに...。

裏表紙に「仮に第二次大戦でドイツが敗けず、ヒトラーがまだ死んでいなかったら...」と書いてあったので、てっきりヒトラーのif物、第二次世界大戦でナチスが勝ち、その勢力が全世界に及んでいく話なのかと思ったら! いや、確かにヒトラーは生きてるんですけどね。そういう話ではなかったんですね。そして裏表紙に「ヒトラーの私設ポルノグラファーになった男を物語の中心に据え」ともあったので、最初に出てくる少年がそのポルノグラファーになるのかと思ったんですけど、どうやらそれも違うみたいで、そうこうしてるうちにバニング・ジェーンライトの話が始まっちゃうし。しかもそのバニング・ジェーンライトの話の中にも、いくつもの話の流れがあるんです。面白くてどんどん読み進めてしまうんですけど、えっ、これってどういうこと? 話はあとでちゃんと繋がるの? このまま読み進めちゃって本当に大丈夫...? なんて不安になってしまいました。
それでもとりあえず読み続けてたら。「あっ」と思った瞬間全てが繋がってました。そうか、よく分からなかったあの場面はこういうことだったのか! あれもこれも、そういうことだったのか! いきなり目の前がクリアになりました。オセロゲームで、いきなりパタパタと駒がひっくり返って、黒一色に見えた盤上が白一色になってしまった時みたいな感覚。
そうか、これはパラレルワールドじゃないんですね。パラレルワールドと言えるほど平行してないもの。捩れて絡まりあって侵食しあってます。そうか、クリストファー・プリーストの「双生児」か。あと、先日読んだばかりのガルシア=マルケス「百年の孤独」も? いや、凄かったな。これはもう一同最初に戻って読み返してみなくっちゃ。そうすれば、もう少し全体像を掴みながら読めるよね。ああ、作者の理解力を持ってこの作品を読みたい。って、理解力のなさを暴露してるようですが、そこはそれ、隅々まで理解したいということで♪

...で、結局カーラって誰だったんでしょうか?(す、すみません、よく分からなくて...)(白水uブックス)

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5年ぶりに姿を見せた師匠の僕僕とともに、桃花の花びらが舞う街道をゆく王弁。光州を出た2人は釣りをし、花を愛で、酒を飲みつつのんびりと南西へと向かい、僕僕が長江で呼び出した巨大な亀の珠鼈(しゅべつ)と共に荊州江陵府の春の祭りへ。そこで王弁が見つけたのは荊州一の料理人を決めるという料理大会の高札でした...という「羊羹比賽」他、全6編の連作短編集。

可愛らしい女の子の姿をした仙人「僕僕先生」の続編です。連作短編集と書きましたが、長編と言ってもいいような感じですね。前回のラストで僕僕が去ってから5年の月日が流れ、王弁は仙道に通じたものとして皇帝に「通真先生」という名前をもらい、立派な道観を建ててもらって薬師としてひとり立ちしています。
僕僕が空白の5年間に何をしていたのか、なぜ今帰って来たのか、どんどん南下して王弁をどこに連れて行こうとしているのかなど、その辺りははっきりと語られてないんですが、どうやらまだしばらく物語は続きそうだし、じきに明らかにされるのかな? 王弁は少しずつ一人前になってきたものの、まだまだ僕僕にいいようにからかわれてるんで、そんな2人のやり取りが相変わらずほのぼのとして楽しいです~。その2人と一緒に旅することになる亀の珠鼈や薄妃もいい味を出してましたしね。いい感じで安定してました。今回は爺さんの姿にはならないんですけどね。ほっとしたような、ちょっぴり残念なような。(笑)
でもほんとになんでどんどん南に行っちゃうのかしら。南に何かあるのかな?(新潮社)


+シリーズ既刊の感想+
「僕僕先生」仁木英之
「薄妃の恋 僕僕先生」仁木英之

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19世紀末。葉巻店主の息子として生まれたマーティン・ドレスラーは、9歳の時に既に葉巻やパイプ、煙草に関する知識を十分持ち、客の気質を素早く見抜いてはぴったり合った品を勧めるのを得意としていました。人々はマーティンを気に入り、その判断を信頼していたのです。やがてヴァンダリン・ホテルの早番フロント係のチャーリー・ストラトマイヤーに、ホテルのロビーの葉巻スタンドでは売っていない高級パナテラ葉巻を毎日届けることによって、ビジネス上の初の成功を収め、14歳の時にマーティンはヴァンダリン・ホテルのベルボーイとして働くことになります。

今回主人公として描かれているマーティン・ドレスラーという人物像自体は、ミルハウザーが描いているほかの人物たちと基本的に同じ。自分の興味の対象に打ち込んで、素晴らしい作品を作り上げるというのも同じ。でもマーティン・ドレスラーは芸術家じゃないんですよね。アウグスト・エッシェンブルクやJ・フランクリン・ペインと同じように確かに職人気質なんだけど、マーティン・ドレスラーが作り出すのは時代を先取りするようなカフェレストランでありホテルであり、決して自動人形や絵画やアニメーションではないんですよねえ。そしてもう1つ違うのは、彼には全面的にお膳立てを整えて後押ししてくれる人間がいないということ。そういう人間の存在によって、アウグスト・エッシェンブルクやJ・フランクリン・ペインは自分の作り出す芸術品に没頭していればそれで良かったんだけど、マーティン・ドレスラーは自分が作り出す立場でもあり、全面的にお膳立てを整える立場でもあり、なんですよね。その都度パートナーはいるんだけど、気がついたら去っていってしまっていて。
いつものようにミルハウザーらしさを堪能できたし、今回は長編のせいかマーティン・ドレスラーの感情の移り変わりもいつも以上に濃やかに描かれていたんですけど、やっぱりどこか違うなあって気も...。いつもと同じような人物造形だけに、生み出すものに期待してしまうのかな。レストランやホテルというのがリアルすぎるんですよね、多分。あまり夢みる対象にはならないからかも。(白水uブックス)


+既読のスティーヴン・ミルハウザー作品の感想+
「イン・ザ・ペニー・アーケード」スティーヴン・ミルハウザー
「バーナム博物館」スティーヴン・ミルハウザー
「三つの小さな王国」スティーヴン・ミルハウザー
「マーティン・ドレスラーの夢」スティーヴン・ミルハウザー

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カモの英語の成績は20点満点の3点。ロシア移民の祖母を持ち、自分でも10ヶ国語ぐら話せるお母さんは通信簿を見て怒りだし、カモに3ヶ月で英語を完璧にマスターしろと言いつけます。3ヶ月で外国語を1つ丸々覚えるなんて絶対無理、と抗議するカモにお母さんが渡したのは、英語っぽい響きの名前がずらりと並んだメモ用紙。それはペンフレンドの名前のリスト。カモがフランス語で手紙を書くと英語で返事が来るという仕組みで、3ヶ月も経てばバイリンガルになるというのです。そしてカモが15の名前の中から選ぶことになったのは「キャサリン・アーンショー」でした。

カモ少年のシリーズは、日本ではまだこの1作しか訳されていないんですが、4部作。フランスの小中学生に人気のシリーズなんだそうです。
いやね、カモ少年の文通相手の名前が「キャサリン・アーンショー」だという時点でオカシイとは思ったんですよ。「まさかね」とも思ったんだけど。でもそのキャサリン・アーンショーからの返事の内容が、まさにそのキャサリン・アーンショーならではの手紙で! うひゃーっ。(嬉)
こうなるとある程度展開が予想できたりもするんですけど、いやあ、楽しかったです。伏線がちゃんと生かされてて、それもなんだか粋な感じ。いいなあ。
後の方で「テッラルバ子爵」の甥、なんて人の話も出てきたりして、それもまたニマニマでした。でも「メイジー・ファランジュ」と「ゲイロード・ペンティコスト」は分からなかったな。これは何だったんだろう。気になるー。(白水uブックス)


+既読のダニエル・ぺナック作品の感想+
「人喰い鬼のお愉しみ」D.ぺナック
「人喰い鬼のお愉しみ」「カービン銃の妖精」ダニエル・ぺナック
「散文売りの少女」ダニエル・ぺナック
「ムッシュ・マロセーヌ」ダニエル・ペナック
「片目のオオカミ」ダニエル・ペナック
「カモ少年と謎のペンフレンド」ダニエル・ペナック
「奔放な読書」ダニエル・ぺナック

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檻の前にいたのは、2時間以上も身動きせずにじっと立ち続け、青い毛並みのオオカミが行ったり来たりするのを眺め続けている少年。オオカミは、少年が一体自分に何をして欲しいのかと不思議に思います。そのうち飽きるだろうと考えるオオカミでしたが、少年は翌日もそのまた翌日も、そしてその翌日も、月に一度の休園日も、オオカミの檻の前に1日中立っていたのです。10年前に人間に生け捕りにされた日に片目を失って以来、人間に二度と興味を持つまいと誓っていたオオカミですが、やがて根負けして檻の中を歩き回るのをやめ、少年に真正面から向き合うことに。

今まで読んだダニエル・ペナックの作品って、マロセーヌシリーズの4冊だけなんですけど、そちらとはもう全然雰囲気が違っててびっくり。マロセーヌシリーズはもう本当に饒舌な作品でしたが、こちらはとっても静かなんです。外界から心を閉ざして檻の中を歩き続けるオオカミと、そのオオカミを見つめる少年が正面から向き合うことによって徐々に理解や信頼が生まれて、オオカミは再び生きる力を得るという物語。
読み始めた時は、児童文学?と思ったんですが、実際にはすごく深くて大人向きの作品ですね。子供のうちに読んでも楽しめるとは思うんですけど、本当に理解できるのは大人になってからでしょう。「先進国に対するアフリカ」とか「自然破壊」みたいに、表にはっきりと出てきてるテーマもあるんですが、一番大切なことはむしろ隠れてるし。読みながら、これはどういうことを意味してるんだろう?って1つずつ考えちゃう。
この作品に出てくる少年は、アフリカ生まれの黒人の少年なんですよね。フランス人作家のダニエル・ペナックがこんな作品を書いてるとはびっくりでしたが、モロッコのカサブランカで生まれ、両親とともにアジアやアフリカの各国で暮らした経験を持つのだそう。そうだったのか。納得です。 (白水uブックス)


+既読のダニエル・ぺナック作品の感想+
「人喰い鬼のお愉しみ」D.ぺナック
「人喰い鬼のお愉しみ」「カービン銃の妖精」ダニエル・ぺナック
「散文売りの少女」ダニエル・ぺナック
「ムッシュ・マロセーヌ」ダニエル・ペナック
「片目のオオカミ」ダニエル・ペナック
「カモ少年と謎のペンフレンド」ダニエル・ペナック
「奔放な読書」ダニエル・ぺナック

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トランペット吹きのティム・トゥーニーが汽船ヴァージニアン号に乗り込んだのは、1927年1月のこと。一等の金持ち連中のために、二等船客のために、そして時々貧しい移民連中のためにと1日に3~4回ずつ演奏する日々が始まります。その船のジャズ・バンドの中にいたのが、ピアニストのダニー・ブードマン・T・D・レモン・ノヴェチェント。ノヴェチェントは、このヴァージニアン号で生まれた人間。ニューヨークに到着した時に、一等船客用のダンス室のグランドピアノの上に、段ボール箱に入れられて置き去りにされていたのです。1900年生まれのその赤ん坊はノヴェチェント(900)と呼ばれるようになり、やがて世界一のピアニストになることに...。

私は観てないんですが、映画「海の上のピアニスト」の原作ですね。中心となるのはトランペッターのモノローグ。彼が船の上で出会って親しくなったピアニストのノヴェチェントについて語っていきます。かっちりしたシナリオではないんだけど、モノローグの合間にト書きが書かれているので、本当に芝居の脚本を読んでいるような雰囲気。
船で生まれた赤ん坊はそのまま船に置き去りにされ、船の上で成長し、船で出会う人々の目を通して世界中を知ることになります。生まれてこの方一度も陸の土を踏んだことのないノヴェチェントは船を下りようなんて考えもしないんですけど、ある日突然言うんです。「ニューヨークで、あと三日したら、この船から降りるよ」
その時ノヴェチェントは32歳。でも、陸地から海が見たいと言ったノヴェチェントの足が3段目で止まってしまうんですね。この時のノヴェチェントの思いが終盤に明らかにされるのですが、これがすごく分かる...。この場面を読んだ時、ノヴェチェントの出すピアノの音がどんな音だったのか、なんだかとても分かるような気がしました。
本を読んだ限りのイメージでは、フルカラーの綺麗な映像の映画よりも、もっとシンプルな舞台で観たいなーという感じ。美しい映像で美しいピアノの音色を聴くのももちろんいいんですけど、もっとシンプルな方がノヴェチェントの生涯が際立ちそうな気がする... 実際にはどうだったのかしら?(白水uブックス)


+既読のアレッサンドロ・バリッコ作品の感想+
「海の上のピアニスト」アレッサンドロ・バリッコ
「絹」アレッサンドロ・バリッコ

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Note


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