Catégories:“2008年”

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アウレリャーノ・ブエンディーア大佐が子供の頃のマコンドは、澄んだ川が勢い良く落ちていく川のほとりに、葦と泥づくりの家が20軒ほど建っているだけの小さな村。毎年3月になるとぼろをぶら下げたジプシーの一家がやってきて、アウレリャーノの父のホセ・アルカディオ・ブエンディーアが母・ウルスラの反対を押し切って、なけなしの金で不思議な道具を買い込むのが常。当初は若き族長として村の発展のために尽くしたホセ・アルカディオ・ブエンディーアは、いつしか家の仕事も子供の世話もせず、ジプシーのメルキアデスに贈られた錬金術の工房に篭りきりの生活を送るようになっていたのです...

読もう読もうと思いつつ、ラテンアメリカ文学にはちょっと苦手意識があってなかなか手に取るところまではいかなかったんですが、ようやく読めました。いや、これを読んでもやっぱりラテンアメリカにはまだまだ慣れないなあという感じなのだけど... でも今なら寝かせ中のボルヘスの「伝奇集」が、もう少し読めるようになってるかな? 少しずつ読んでは寝かせてるので、一体いつになったら読み終わるの?状態なんですけど。(笑)

この「百年の孤独」を読み始めて最初に戸惑ったのは、同じ名前の人間が沢山登場すること。ホセ・アルカディオとアウレリャーノがいっぱい! もう半端じゃないです。そしてその2つの名前ほどじゃないけど、ウルスラとアマランタもいっぱい。これは混乱せずにはいられないでしょう。でも、これはわざとだったんですね。親の名前を子供につけるというのは普通にあることでしょうけど、なんでこんなことするんだろう... と、ずっと思いながら読んでたんです。最後まで読んですとんと腑に落ちました。
この作品、途中も十分面白く読んでたんですけど、同時にどこか収まりが悪くて落ち着かない気分もあったんですよね。ちょっと読んでは、また前に戻ってもう一度読み返したくなって仕方がなくて。しかも、先週の後半から週末にかけて全然まとまった読書の時間が取れなかったので、もう全然進まなくてー。でもそうやって「三歩進んで二歩下がる」読書を続けてた甲斐があったのか(笑)、最後の最後でドカンと来ました。いや、すごいな、これは。全てがこの最後のための積み重ねと反復だったのね。なるほど! この100年というスパンがまた素敵。いやあ、面白かったです。濃い話だったわー。

という私が読んだのは旧版。上の書影とリンクは最新版です。1999年度に出た版はレメディオス・バロの表紙が素敵だし作品にも合ってると思うのに、なんで変えちゃったのかな?(新潮社)

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月光の照る夜、ベッドの中で仏陀の本を読みながらなかば夢見心地になっていた「ぼく」が石と脂肪について考えていると、場面は突然プラハのゲットー(ユダヤ人街)にあるアパートの中庭に転換。赤毛のロジーナを避けて自室に戻った「ぼく」は、古道具屋のアーロン・ヴァッサートゥルムが店先に立っているのを眺め、ロジーナを探す双生児の兄弟の気配を感じ、隣の建物の同じ階から聞こえてくる男女の話し声に、数日前に人形遣いのツヴァック爺さんがアトリエを青年紳士に又貸ししたという話をしていたのを思い出します。その時、突然1人の貴婦人が部屋に飛び込んできたのです。「ペルナートさま、お助けくださいましーー後生ですから!ーーなにも言わないで隠れさせてくださいまし!」...「ぼく」は、宝石職人のアタナージウス・ペルナートになっていました。

ゴーレム伝説を下敷きにした幻想小説。マイリンクはユダヤ教、キリスト教、東洋の神秘思想を学び、しかもプロテスタントから大乗仏教徒に改宗という経歴の持ち主なんだそうです。マイリンクの作品には、新プラトン派やグノーシス派の哲学、錬金術やカバラの思想、バラモン教や道教などの東洋思想の影響が指摘されるそうで... 確かにそういう雰囲気がたっぷり。
ゴーレムというのはユダヤ教の伝承に登場する土人形のことなんですが、プラハのラビ(ユダヤ教の律法学者)・レーフが作ったゴーレムの伝説が一番有名なようですね。レーフは土を捏ねて人形を作り、護符を貼り付けて動けるようにするんですが、ある晩その護符を取り外すのを忘れるとゴーレムが凶暴化。護符を剥ぎ取ってようやく土くれに戻ったという話。でもこの作品は「ゴーレム」という題名ほどにはゴーレム伝説中心ではないんですね。本当はもっとそのゴーレム伝説そのものを読みたかったんだけど、ちょっと違ってて残念。

でもこれはこれで... なんて言い方をするのはこの作品に失礼なんだけど、すごく迫力のある作品でした。陰鬱な雰囲気のプラハのゲットーを舞台に、いくつもの断片的なエピソードが積み重ねられていて、まさに夢の中にいるような不思議な雰囲気。いくつかの場面が、ものすごくくっきりと鮮やかに脳裏に焼きついてしまったのだけど、その中でも謎の男が修理に持参した「イッブール(霊魂の受胎)」という羊皮紙の本を開く場面が、とても幻想的で美しい~。奇妙な通路を抜け出た先の部屋に落ちていたタロットカードを拾った場面も印象的だったし... あとはやっぱりラストの場面かな。きっと主人公がより深く自分自身を探っていく物語だったんだろうと思うんですけど、きちんと理解できたとは到底言いがたいです。でもものすごく存在感のある作品。これは落ち着いた頃にまた読み返してみたいな。(河出書房新社)

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幼い頃から絵を描くのが好きだったフランクリンは、高校を卒業すると似顔絵描き、広告ポスター仕事を経て、新聞の漫画を描くようになり、じきに自宅でアニメーションを作り始めることに... という「J・フランクリン・ペインの王国」。昔々、川向こうの険しい崖の上に建っている城に住んでいたのは美しい王と王妃。2人は心から愛し合っていたにも関わらず、1年と経たないうちに幸福は絶望へと変わり果てることになるのです... という「王妃、小人、土牢」。そしてエドマンド・ムーラッシュという画家の遺した絵画の解説から、エドマンドとその妹・エリザベス、エドマンドの友人・ウィリアムとその妹・ソフィアの4人の関係が見えてくる「展覧会のカタログ」の3編。

「J・フランクリン・ペインの小さな王国」のJ・フランクリン・ペインは、ミルハウザーがよく描く職人タイプの人間。1920年、まだディズニーのミッキーマウスも出てきていない、アニメーションのごくごく初期の時代。セル画を使えば相当楽になると分かってはいても、細部にまで拘って自分で描かずにはいられないフランクリンの姿は、まさしく「アウグスト・エッシェンブルク」タイプ。
そしてあとの2作は、小さなエピソードを積み重ねていくタイプの作品。「王妃、小人、土牢」は、それぞれ表題がついたエピソードがいくつも積み重なることによって、王と王妃、辺境伯、小人の4人の物語が展開していきます。「展覧会のカタログ」も、画家の遺した絵1枚1枚に書かれた解説を読んでいくに従って、4人の人間の変化し緊迫してゆく関係が見えてくる作品。

でも最初はそんな外見的な形式の違いに目が行ってしまってたんですけど、考えてみたら「J・フランクリン・ペインの小さな王国」は、フランクリンが自ら小さなエピソード積み重ねてるようなものだし... それにアニメーションというのは、観客がそこで繰り広げられる物語を眺めるというもの。「王妃、小人、土牢」で、川向こうのお城のお話がどんなに酷い展開をみせたとしても、川のこちら側の町の住人にとっては「昔々」のお話に過ぎないというのと同じなんですよね。展覧会のカタログだってそう。3つの作品はそれぞれに共通するものを持ってたのね。「探偵ゲーム」の現実の世界とゲームの中の世界のように、外の世界と中の世界と。

3編とも本当にミルハウザーらしい作品でした。幻想的という意味では今まで読んだ2冊の方が好きだったけど、この本もなかなか良かったです。この3作の中では「王妃、小人、土牢」が一番好きだな。これが一番境界線があやふやだからかな。(白水uブックス)


+既読のスティーヴン・ミルハウザー作品の感想+
「イン・ザ・ペニー・アーケード」スティーヴン・ミルハウザー
「バーナム博物館」スティーヴン・ミルハウザー
「三つの小さな王国」スティーヴン・ミルハウザー

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夏休み。サークルの会合まで時間があいていた結城理久彦は、コンビニでアルバイト情報誌を見ることに。女にもてるためには車が欲しいと考えていたのです。そこで出会ったのは、結城とは明らかに違う世界に住んでいると思われる上品な女性・須和名翔子。須和名もまたアルバイトを探していました。2人で短期アルバイトのページを繰るうちに、どう考えても誤植としか思えないような条件を提示しているアルバイトを見つけることになります。ある人文科学的な実験の被験者として7日間隔離され拘束されるだけで、時給11万2000円をもらえるというのです。

いやあ、久しぶりにベタなほどミステリらしいミステリを読みました。舞台は「暗鬼館」だなんていかにもなネーミングのクローズドサークル。その見取り図もいかにもな作りだし! そこここに思わせぶりな趣向が凝らされてるし、ネイティブアメリカンの人形が12体用意されてるこのが「そして誰もいなくなった」的展開を予想させます。副題が「THE INCITE MILL」なんてなってるところは森博嗣作品みたいだけど、登場人物が妙な実験に「INしてみる」とも読めるし、古今東西のミステリに淫してきたミステリ好きが、思いっきり自分好みのミステリ的舞台と自分好みのミステリを作り上げることに淫してみたって感じにも取れますね。そして、せっかくだからそういうお遊びに読者も「淫してみる」?といったところでしょうか。(笑)
時給11万2000円って、なんて半端な... と思いましたが、そういうことだったのね。その辺りまでわざとらしくて、それが逆に可笑しい。しかも終盤のあの役割反転。これは予想してなかったのでびっくりです。ミステリ好きさんなら、色んなところでニンマリできそうですよー。(文芸春秋)


+既読の米澤穂信作品の感想+
「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信
「犬はどこだ」米澤穂信
「クドリャフカの順番 『十文字』事件」米澤穂信
「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信
「ボトルネック」米澤穂信
「遠まわりする雛」米澤穂信
「インシテミル」米澤穂信
Livreに「氷菓」「愚者のエンドロール」「さよなら妖精」の感想があります)

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パリ左岸の静かな地区に住む著者は、自分の住むアパルトマンの近所に「デフォルジュ・ピアノー工具と部品」という小さな店があるのに気付きます。毎朝子供を幼稚園に送り迎えする度に店の前を通り、ピアノの修理に使う工具や部品を眺め、時には店の正面にあるカフェから店を眺める著者。そのうち、もう一度自分のピアノが欲しいという思いがふくれあがります。そしてとうとう店の扉を叩くことに。店の主人に、中古ピアノはなかなか手に入らないと言われながらも、店に通う著者。そんなある日偶然目にしたのは、店の奥の光溢れる空間。そこは、ありとあらゆるピアノとその部品で埋め尽くされているアトリエでした。

この作品は再読。以前読んだのは丁度5年前、ブログを始める直前です。その後また読みたいなと思いつつ、なかなか通して読むところまではいかなかったんですが、ようやくじっくり読み返せました。
何度読んでも本当に素敵な作品。楽器を弾かない人にももちろん楽しめると思うんですけど、特に子供の頃にピアノが大好きだった人、大人になってからも弾きたいと思ったことがある人は、そのまま楽器屋さんに直行したくなっちゃうかもしれませんー。そしてまた先生について習いたくなっちゃうかも。という私は大学生になって上京する時にピアノをやめてしまったんですが、あそこでやめてなければ... って思っちゃう。ああ、細々とでも続けていれば...! そしてそして、ベビーグランドピアノが欲しいですーっ。そうでなくても、今通ってるサックス教室にグランドピアノがあって、触りたくて仕方ないのを毎週我慢してるというのに、ほんと酷な作品だわ。(笑)
リュックのアトリエにものすごーく行ってみたくなるけど、これは絶対無理。著者もそんなこと望んでないでしょうし。でもせめて、今からでもアンナみたいな先生にめぐり合えたらいいのにな。そしたら家の真ん中に可愛いベビー・グランドピアノを置いて、いつでも熱心に練習するのに。ああ、やっぱり無理かしら。(新潮クレストブックス)

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宝塚、宝塚南口、逆瀬川(さかせがわ)、小林(おばやし)、仁川(にがわ)、甲東園(こうとうえん)、門戸厄神(もんどやくじん)、西宮北口。片道15分ほどの短い阪急今津線を舞台にした人間模様。

阪急電車の今津線が舞台の作品。以前からともっぺさんにオススメされてたものの、図書館で借りようと思ったら大人気。ようやく読めましたよ。いや、本当は書店に本が並んだ時から気にはなってたんですよね。だって、関西に引っ越して以来、ずっと阪急沿線に住んでる私。途中で何度か引越ししたとはいえ、相も変わらず阪急沿線。そして阪急の今津線といえば、私が中学高校の間毎日のように乗っていた路線なんですもん。今ではほとんど乗ることもないんですけどね。これで気にならない方が嘘でしょう~。でもよく知ってるだけに、本筋とは関係ない妙なとこで突っ込んでしまいそうという不安もあって。オススメされるまでは読むつもりはなかったんです。

で、実際に読んでみて。
いや、もう、懐かしい! 初っ端から清荒神ですか。しかも宝塚中央図書館って! ここが建てられた時のことだって覚えてますよぅ。他にも懐かしくなってしまう風景ばかり。燕が巣を作った駅の「今年もやって参りました。お騒がせしますが、巣立ちまでどうぞ温かく見守ってください」という貼り紙にも見覚えがあるし...。登場する人たちの学校もすぐ分かりますね。あれ、ここが出てるのにあそこは出さないの? とか思ったりもしましたが。
でも、案の定突っ込みたい部分も色々と... まず言葉。大阪と神戸の丁度中間というあの土地の言葉は、大阪とも神戸とも違うものだと私は認識してるんですが...? 西宮北口を「西北」なんて言うのも初耳。私は「北口」としか言わないけど、今はそういう言い方するのかしらん。それに、あのほのぼの和やかな今津線に、あんな下品なオバサンも逆ギレ男もいませんよー、とかね。(競馬のある日だけは、電車の中の雰囲気が変わるんですけどね) でも、あそこの小学校(知る人ぞ知る私立の名門お嬢さん学校)があんな扱いされてるのにはびっくりしたけど(だから外見的な描写が変えられてるのね)、うん、こういうこともあるでしょう、と思うし。それに「えっちゃん」の話も、いかにもありそう! 実話と知って思いっきり納得。(笑)

ま、気になる部分もあったんですが、結局あれですね。そんなの全部を乗り越えて、もう可愛すぎ! 身悶えしてしまうぐらい。(笑) そうでなくても、こんな風に色んな人の人生が交錯していくタイプの話って大好きなんです。普通に見える電車の中に潜む様々なドラマ。おばあちゃんも彼も彼女もいい味出してたし、うふふ、楽しかったです。(幻冬舎)


+既読の有川浩作品の感想+
「海の底」有川浩
「図書館戦争」「図書館内乱」有川浩
「阪急電車」有川浩

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お目当ては、光原百合さんの「旅の編み人」。これはオール讀物に不定期連載中の潮ノ道幻想譚のシリーズ最新作です。今回の主人公は、せっかく編んだマフラーをなかなか渡せないでいる友香。電車の中で編み物をしていた女性に出会います。

「編み物をしているとどんな人でも優しく見えると思うのは、友香だけだろうか」
...あ、なんだか素敵。そう言われてみると、確かにそうかもしれないですね。実際にそう思って見たことはなかったけど...。私が電車の中で編み物をしてるのを見かけるのって、上手すぎて手の動きが既に人間に見えないようなオバサマばかりだからかしら。(笑)
いや、今回はいつも以上に切なかったです。痛いぐらい。でも最後は優しく暖かく包み込んでもらえます。ぽかぽか。丁度2~3日前から急に冷え込んでるんですけど、その今の時期に読むのにぴったりくる作品でした。

この作品は今回でシリーズの6作目。光原百合さんによると、あと1作で本にまとまるだろうとのことなんですよね。新作はもちろんなんですけど、早く全部通して読みたい! 本になる日が待ち遠しいな~。


+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「ピアニシモより小さな祈り」「花散る夜に」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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Note


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