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だいだいいろの童話集

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書評/SF&ファンタジー
東京創元社で刊行中のラング童話集の10冊目。今回は献本で頂きました。感謝。

さて、最初はドイツやフランス、北欧といった一般的な童話から始まったラング色の童話集のシリーズなんですけど、刊行が進むに連れて世界中にその範囲を広げてきています。前回の「ちゃいろの童話集」では、ネイティヴ・アメリカンやアフリカ、ラップランドのお話が面白かったですしね。今回は、センナの口承伝承やパターン族に伝わる話、ショナ族の昔話、ベルベル人の昔話というクレジットが並んでました。センナはアフリカ南部のザンベジ川沿い。パターン族はどうやらアフガニスタンやパキスタンのパシュトゥーン族のことみたい。ショナ族は、アフリカ南部のジンバブエの辺り。ベルベル人は北アフリカ。
とっても興味深かったのは、全ての望みを叶えてくれるシパオという魔法の鏡が白人の手に渡ってしまったから、この世のあらゆる力を白人が握ることになった、とか、魔女をやっつけた姉妹は「宣教師に会ったことがなかったので、残酷な行いができたのだ」とか、黒人の話に白人が入り込んできてる部分。こういうのはこれまでのラング童話集にはなかった部分じゃないかしら...。ラングは自分の童話集に採取した童話を入れる際に、結構手を入れてるようなんですが、そういうのは残ってるんですね。いえ、宣教師云々の部分は何も問題ないんですが、不思議なのは「魔法の鏡」。白人の行いはどう考えてもずるいし残虐すぎるんですけど! ラングのことはあまりよく知りませんが、「ありのままを伝えなければ」なんて考えの持ち主だったとも思えないし... 19世紀の人だし、逆にそういう行為を当然として受け止めていたのでしょうか。でももし黒人を同じ人間として考えていなかったとしたら、そんな風に昔話を採用するのも妙な気がする...。

あ、でもそういったアフリカ系の話だけでなく、ヨーロッパ系のお話も入ってます。フランスのオーノワ夫人の話も久しぶりにいくつか入ってましたしね。今回私が一番嬉しかったのは、西ハイランドの話が入っていたこと。アイルランドやスコットランドのお話だって2つかそこらしかなかったのに、ハイランドとはー。アンドリュー・ラングはスコットランド生まれのはずなのに、ほんと全然と言っていいほどなかったんですよね。

全12冊のはずなので、これで10冊読了。残り2冊になっちゃったんですねー。最初は先が長くて気が遠くなりそうって思ったけど、案外すんなり読破できそう。この東京創元社版の刊行が始まってから復刊され始めた偕成社文庫版も、既に全12巻揃ってるみたいです。本当は、私自身も子供の頃に読んでいた川端康成・野上彰訳の偕成社文庫版を読みたかったはずなんですけど、いつの間にかすっかり東京創元社版ばかりになっちゃいました。でも大人になってから読むなら、こちらの方が読みやすいかも。字の大きさも程よいですし、挿絵も美麗ですしね。(東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+(東京創元社版)
「あおいろの童話集」「あかいろの童話集」アンドルー・ラング編
「みどりいろの童話集」アンドルー・ラング編
「きいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ももいろの童話集」アンドルー・ラング編
「はいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「むらさきいろの童話集」アンドルー・ラング編
「べにいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ちゃいろの童話集」アンドルー・ラング編
「だいだいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「くさいろの童話集」アンドルー・ラング編

+シリーズ既刊の感想+(偕成社文庫版)
「みどりいろの童話集」「ばらいろの童話集」アンドルー・ラング

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ムーミンパパが川に橋を渡し終え、スニフとムーミントロルが森の中に入り込む新しい道を探検して海岸と洞窟を発見した日の晩、ムーミン屋敷にやって来たのはじゃこうねずみでした。ムーミンパパが橋をかけた時に家の半分がつぶされて、あとの半分は雨に流されたというのです。そして翌日、雨が上がった庭では、全てのものがどす黒くなっていました。それを見たじゃこうねずみは、じきに彗星が地球にぶつかって、地球は滅びるのだと言い始めます。

ムーミンシリーズの1作目。ムーミンシリーズを読むのは、実はこれが初めてなんです。テレビアニメもほとんど見てなかったんですよねえ。確かにもともと無邪気に明るく楽しいイメージではなかったんですが、いきなり彗星が地球に衝突?地球滅亡?! 実はとても深い話だったんですね? びっくりしました。
とは言っても。確かに刻々と近づく地球滅亡の日を待つ物語ではあるんですが、ムーミン一家やスニフ、スナフキンやノンノンはあまりにマイペースだし~。終末物はこれまでいくつか読んだり観たりしたし、アメリカのラジオドラマでH.G.ウェルズの「宇宙戦争」が放送された時の騒ぎなんかもすごかったようですけど、ここはやっぱり別世界ですね。決して明るくないし、そこはかとなく寂寥感が漂ってるんですけど、暖かくて優しくて、何とも言えないほのぼのとした味わいがありました。
とても印象に残ったのは、新しいズボンを買おうとしたスナフキンの「もちものをふやすというのは、ほんとにおそろしいことですね」という言葉。終盤、ありったけの持ち物を持って逃げようとする登場人物たちを尻目に、「ぼくのリストは、いつでもできるよ。ハーモニカが、星三つだ」という言葉もスナフキンらしくて、すごくかっこいいです。まあ、スナフキンのレベルに到達できる人はなかなかいないでしょうけど(笑)、たとえ物を所有しても、所有した物に縛られるようになっちゃだめですよね。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ムーミン谷の彗星」トーベ・ヤンソン
「たのしいムーミン一家」トーベ・ヤンソン
「ムーミンパパの思い出」トーベ・ヤンソン
「ムーミン谷の夏まつり」「ムーミン谷の冬」トーベ・ヤンソン

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働き者の父さんと花を育てるのが好きな母さん、そして父さんと畑で働くのが大好きな9歳のジャック。隣の家には大好きなフローラとその両親、もうじき生まれてくる赤ちゃん。しかしそんな幸せな日々も終わりを告げることになります。雨が全く降らず、せっかく蒔いた小麦はいくら川から水を運んでも芽を出してすぐに萎れてしまい、父さんは2度目の種蒔きをするための種を買うために賭けに出るものの、あえなく惨敗。結局畑は他人の物となり、フローラのお母さんは生まれてきた赤ちゃんと共に亡くなり、父さんは虹のふもとにあるという金のつぼを手に入れるために岩壁の向こうへ。父さんを失ったのは自分のせいだと思い込んだジャックの精神は徐々に狂い始めます。

ドナ・ジョー・ナポリ版の「ジャックと豆の木」。「逃れの森の魔女」では魔女視点で描くことによって、本当は哀しい魔女の人生をあぶり出すって感じだったんですが、こちらは巨人視点ではないんですねー。物語は、ジャック視点のまま。巨人は相変わらずの悪役で、こちらはあまり変化ありません。むしろ、なぜジャックが豆の木を登らなければならなかったのか、というその行動に焦点が当てられていました。豆の木も巨人も、金の卵を産む鶏も、金の入った壷も、歌う竪琴も全て揃っているのに、「ジャックと豆の木」とはまたまるで違う物語になってるのにびっくり。子供向けの明るい勧善懲悪な童話が変わる変わる~。
ジャックには双方の両親も認める仲のフローラという少女がいるんですが、そのフローラのスペイン系の血筋を引いているということが、一般的にどのように捉えられているのかといった辺りがリアル。ジャックの幸せな日々が終わることになったのは、元はと言えば旱魃のせいなんですが、そこにジャックの父親の賭け事好きが絡むのがリアル。いろいろなことが丹念に描かれることによって、ジャックが精神に変調をきたしていく過程がリアル。で、そんなリアルな物語に、いきなり魔法の品物が絡んでも浮いてしまいそうですよね。でもその品物の扱いの部分が面白い~。なるほど!

でもこの本を読んでいて、やっぱり私、金原訳ってちょっとテンション下がるかも... なんて思ったり。金原さんといえば今や大人気の訳者さんだし、この方の訳した本を読めばハズレがないとまで言われてたりするんですけど...! 前々から、どうもあまり自分から手に取りたい気がしなくて、むしろ無意識のうちに避けてる気がしてたんですよね。作品を色々読みたいと思う作家さんがいても、どうも進みが悪いなと自分でも思ってたんですが... どうやら気のせいじゃなかったみたいです。はあー。(ジュリアン出版)


+既読のドナ・ジョー・ナポリ作品の感想+
「逃れの森の魔女」ドナ・ジョー・ナポリ
「クレイジー・ジャック」ドナ・ジョー・ナポリ
「バウンド 纏足」ドナ・ジョー・ナポリ

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寝る前にお話を聞かないと寝ようとしない、大のお話好きのナフタリ。両親からも沢山のお話を聞くのですが、字が読めるようになると、お話の本も手当たり次第読むようになります。そんなナフタリは大きくなると本の行商人となり、愛馬・スウスの引く馬車に沢山本を積んで色々なところをまわって本を売り、本を買えない貧しい子には本をプレゼントし、人々の語る様々なお話を聞き、そして自分も沢山お話を語ることに... という「お話の名手ナフタリと愛馬スウスの物語」他、それぞれ8編が収められた短編集。

アイザック・バシェヴィス・シンガーは、ポーランド生まれの作家。ナチスの迫害から逃れてアメリカに渡ったんだそうです。その執筆は英語ではなく、子供の頃から使っていたイディッシュ語。元はユダヤ人やポーランドに伝わる民話なんだろうなってお話も多いし、ユダヤ教徒の家庭に育ったシンガーらしく、ユダヤ教のラビも頻繁に登場。ハリー・ケメルマンやフェイ・ケラーマンの作品でも読んでるんですけど、ユダヤ教の風習ってやっぱり面白いなあ。
とんまな人々が住むヘルムという町を舞台にした寓話的物語もいくつかあって、繋がっていくのが楽しかったんですが、やっぱり一番印象に残ったのは、上にあらすじを書いた「お話の名手ナフタリと愛馬スウスの物語」。この中に登場するナフタリは、作者シンガーの理想の自画像なのだそう。お話の楽しさ面白さを人々に伝えることを生きがい旅から旅への暮らしだったナフタリは、レブ・ファリクという人物との出会いがきっかけで1箇所に根を下ろした暮らしをしたいと初めて思うようになるんですけど、この2人の会話がとても深いんです。

いちにちが終わると、もう、それはそこにない。いったい、なにが残る。話のほかには残らんのだ。もしも話が語られたり、本が書かれたりしなければ、人間は動物のように生きることになる、その日その日のためだけにな。(P.21)

きょう、わしたちは生きている、しかしあしたになったら、きょうという日は物語に変わる。世界ぜんたいが、人間の生活のすべてが、ひとつの長い物語なのさ。(P.21~22)
生きるってことは、結局のところ、なんだろうか。未来は、まだここにはない、そして、それが何をもたらすか、見とおしは立たない。現在は、ほんの一瞬ずつだが、過去はひとつの長い長い物語だ。物語を話すこともせず、聞くこともせぬ人たちは、その瞬間ずつしか生きぬことになる、それではじゅうぶんとは言えない。(P.37)

他のも一見子供向けのただ面白い話に見えて、実はとても深くじっくり味わえる作品ばかり。そしてお話の楽しさや面白さを人々に伝えたいというシンガーの思いがとても伝わってくる、暖かい作品集です。(岩波少年文庫)


+既読のアイザック・B・シンガー作品の感想+
「お話を運んだ馬」「まぬけなワルシャワ旅行」I.B.シンガー
「やぎと少年」アイザック・B・シンガー
「ショーシャ」アイザック・B・シンガー

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山田が脳卒中で亡くなり、初七日がすぎると、桂子さんは研究室を片付けるために大学へ。山田が使っていたBRAINと呼ばれているコンピューターを自宅に持ち帰ります。書斎でマニュアルをめくっていると、そこから出てきたのはBRAINを試作した会社の会長・入江晃という人物の名刺。桂子さんは、山田が入江のことを大学の教養課程の時の級友だと話していたことを思い出します。告別式にも入江からの生花が届いていました。そして林龍太から無名庵を買い取った人物も、おそらくその入江なのです。

桂子さんシリーズ。先日読んだ「城の中の城」から、ほぼ10年後のお話。桂子さんは40歳、智子さんは16歳、貴くんは15歳、山田氏はいくつぐらいなんだろう。60代になる一歩手前ぐらいでしょうか。優子さんというお嬢さんも生まれていたようですね。宮沢耕一にも色々と変化があったようで、現在はパリ在住。
この作品で一番大きいのは、とうとう入江氏が登場したこと! もっと年配の人なのかと思ってたんですけど、山田氏と級友だったのかあ。あ、でももうじき60代(推定)となると、やっぱり年配とも言えるのでしょうか。既にかなりの人脈と金を持ってるようですが、まだ政界入りを果たす前。「ポポイ」を読んだ時、なんで愛人なんだろう...?って思ってたんですが、これを読むとなんとなく理解できるような気がしました。
途中でギリシャ神話の話も登場していましたが、まさに神々の交歓といった印象。でもたとえ入江氏がゼウスだとしても... いえ、入江氏はゼウスみたいな好色な人物ではないんですが、存在感的にゼウスはぴったり。でも、桂子さんに当てはまる女神が案外といないものですねえ。ヘラは似合わないし、知的なところからアテナ... というには桂子さんは色っぽすぎるし。逆にアプロディーテーというには知的すぎますしね。時にアテナのように、時にはアプロディーテーのように。時と場合によっては大胆に振舞うこともできるのが、桂子さんの一番の魅力。こういう人物を、女性作家が描いたというのがいいんでしょうね。男性作家が書いたら、印象がまるで変わってしまいそうです。でも、倉橋由美子さんという方の思考回路には、男性的な部分も多く入っていたに違いない...。ま、こんな人、本当にいるのかしらー?!とは思うんですけどね。そこはそれ、やっぱり「神々の交歓」だから。ということで。(笑)(新潮文庫)


+桂子さんシリーズの感想+
「ポポイ」倉橋由美子
「夢の浮橋」倉橋由美子
「城の中の城」倉橋由美子
「交歓」倉橋由美子
「夢の通い路」倉橋由美子
「よもつひらさか往還」倉橋由美子

+既読の倉橋由美子作品の感想+
「偏愛文学館」倉橋由美子

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岩波少年文庫50周年の特別企画本。中川李枝子・山脇百合子姉妹、池内紀・池内了兄弟、岸田衿子・岸田今日子姉妹の対談のほか、斎藤惇夫の講演、目黒考二、猪熊葉子、内藤濯、瀬田貞二、林容吉、河盛好蔵、松方三郎、石井桃子各氏のエッセイが収められた本。

子供の頃の私にとって、児童書といえばまず岩波書店の本でした。ほとんど処分してないので、まだ家に沢山残ってます。函入りのハードカバーの本も多いんですけど、少年文庫もずらーっと。私が子供の頃の少年文庫は、今みたいなカバーがかかってないソフトカバーだったんですけどね。そのも一つ前のハードカバーのものも何冊かあります。その全てが私の宝物。もうほんと大好きだった本ばかりですし~。何度読んだか分からないほど、繰り返し読んでます。そういった岩波書店の本は、私の「本を読む」ということの基礎になってるはず。
で、今回読んだのは、その大好きな岩波少年文庫の特別企画本。ここに登場してるのはものすごいメンバーばかり。中川李枝子・山脇百合子姉妹の絵本は、もう本当に幼稚園の頃大好きだったし! 内藤濯さんといえば「星の王子さま」、林容吉さんは「メアリー・ポピンズ」や「床下の小人たち」のシリーズ。猪熊葉子さんには、訳書だけでなく、児童文学の方でもお世話になったし...。そして瀬田貞二さんと石井桃子さんは、子供の頃の私にとって児童書訳者トップ5のうちの2人だし。(他3人は神宮輝夫さんと井伏鱒二さん、そして高橋健二さん)ということで、読まないでいられるはずがないんですけど... 実は今回初めて読みました。(爆)

いやあ、面白かった。それぞれの方に対する思い入れもあるので、ほんと楽しめました。特に3人のきょうだい対談が面白かったです。きょうだいの対談っていいですねえ! 遠慮もないし、話してるうちにどんどん色んなエピソードが出てくるし、時には話がかみ合ってなかったり、大きく脱線したりしても、そういうのもすごく楽しくて。中でも中川李枝子・山脇百合子姉妹の話には、もう本当に沢山の少年文庫の本が登場! 読んでいて嬉しくなってしまうほど。いや、私も少年文庫は相当好きだし懐かしいんですけど、この方たちの思い入れには負けます。(笑)
そして読み終えてみて特に印象に残ったのは、子供の頃はもちろん、大人になってから少年文庫を楽しむ人が多いという言葉。これは何人かの方が書いてらっしゃいましたね。「少年文庫」ならぬ「老年文庫」なんて書いてたのは誰だったかな? 猪熊葉子さんかな? うんうん、やっぱり今読んでもいいですもん。というか、今読んでも楽しめる、という感性をなくしたくないです。
池内兄弟の、完訳だからいいとは限らない、という部分もすごく印象に残りました。「ダイジェストしたり、抄訳したりする人の力量が問われますが、ダイジェスト版は値打ちが落ちるように思うのは間違いです」「なんか完訳だけがいいかのごとき信仰がある。もうそろそろ気がつけばいいのにね」という言葉。...そっか、そうだよね! もちろん完訳には完訳の良さがあると思うんですが、いくら名作でも冗長な部分というのはあるもの。特に「1行につきいくら」で書いていたような作家さんの場合は。やっぱり抄訳でもいいんだー! と、読んでて嬉しくなっちゃいました。もっと小さな子供用のはともかく、少年文庫のはしっかりしてますもん。

数年前から少し再読したりもしてたんですけど、ああ、やっぱり改めて全部読みたくなっちゃいました。そして家にずらーっと揃えたい... って小学校の頃の私もそう思ってたし、今の私もそう思ってるわけで... なんだか人間として全然進歩してないような気がしてきましたよ。(爆)(岩波少年文庫)

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11月の晩。家に戻ったマーガレット・リーは、手紙が届いていることに気づきます。宛名の文字は筆圧にむらがあり、唐突に途切れていると思えば、深々と紙に食い込んでいる箇所もある、子供が書いたようなもの。しかしそれは作家のヴァイダ・ウィンターからの手紙でした。英国で最も敬愛されている人気作家であるヴァイダ・ウィンターは、20人以上の伝記作家に自分が作り上げた身の上話をして煙に巻いてきたことで有名な人物。その人物が、趣味の範囲で過去の作家についての伝記を書いているに過ぎないマーガレットに、自分の伝記を書くためにハロゲートまで来て欲しいと言ってきたのです。

私の場合、まずハロゲートという土地が懐かしすぎて、胸がきゅんきゅんしちゃったんですけど...(笑)
謎が謎を呼ぶ物語。まず一番大きな謎は、ヴァイダ・ウィンターの生涯の謎。「本当の話をするから」とマーガレットを呼んだヴァイダなんですけど、彼女の語る物語は全て真実とは限りません。何ていっても、これまで散々伝記作家たちを翻弄してきたヴァイダだし、物語を作る才能は万人が認めるものですしね。そしてその大きな物語の影に隠れてはいるけど、小さな謎もあります。それはヴァイダの伝記を書こうとしているマーガレットの謎。

荒れ果てた屋敷、精神に異常をきたした兄妹、双子、家政婦、庭師、彼らを救おうとする家庭教師、幽霊... ヴァイダの語る自身の物語は、ヨークシャー地方の大きな屋敷に住む異様な家族の物語。常に陰鬱な空気が漂っていて、それはまるで作中に何度も登場する「ジェイン・エア」みたい。この作品は「ジェイン・エア」へのオマージュなのかな?と思ったんですが、でもそれだけじゃないですね。話の中には他にも色んなゴシック小説が登場するし、そういった作品それぞれの雰囲気も少しずつ見えてくるんです。家庭教師と幽霊の辺りは「ねじと回転」でもありますし。このヴァイダの語る物語が面白くて、そこに潜む謎が気になって、どんどん読み進めてしまいました。時にはちょっぴり無理矢理のように感じられてしまった部分もあったんですが、終盤次々と明かされる真相にびっくり! それに「本」や「物語」への愛に満ち満ちてるところも良かったなあ。作中でのこんな言葉に思わず深く頷いたり。(笑)

わたしたちは、ある一点について同じ意見をもっていた。つまり、世の中には膨大な数の本があって、生きているあいだに読むことがでいる数はかぎられているということだ。どこかで線を引いておかなくてはならない。(P.55)

訳者あとがきに、作中に登場する作品の一覧が載ってるんです。「水の子どもたち」「白衣の女」「嵐が丘」「ジェイン・エア」「オトラントの城」「オードレー夫人の秘密」「幽霊の花嫁」「ジキル博士とハイド氏」「ヴィレット」「ミドルマーチ」「シャーリー」「分別と多感」「エマ」「ユースタスのダイヤモンド」「ハード・タイムズ」「ねじの回転」...私が読んでるのは半分ぐらいなんですけど、その半分の作品のそれぞれの作品が、この「13番目の物語」の中で生きてる気がしました。全部知ってたら、もっと楽しめたんでしょうね! 久々にゴシックロマンが読みたくなってきちゃいましたよ。(NHK出版)

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