Catégories:“2009年”

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東京創元社で刊行中のラング童話集の8冊目。今回多いのはハンガリーの昔話。でも以前読んだ「ハンガリー民話集」(感想)とはまた違う物語が多かったですね。ハンガリーの民話特有の締めくくりの言葉「死んでいなければ今も生きているはずだ」は多かったけど、日本の「むかしむかし、あるところに」にあたる「あったことかなかったことか」というのもなかったし、「ヤーノシュ」もハンガリー王の「マーチャーシュ」もなく... この辺りはラングが物語を英訳する時になくなってしまったのかな? でも話そのものもあまり似てなかったように思うし、何より鳥の足の上で回転するお城が登場しなかったのが残念。イタリアやスペイン、ロシアの昔話が登場する時は聞き覚えのある物語が多いのに、なぜなのかしら~。
とはいえ、今回も挿絵の美しさを堪能したし~。相変わらず楽しかったです。(東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+(東京創元社版)
「あおいろの童話集」「あかいろの童話集」アンドルー・ラング編
「みどりいろの童話集」アンドルー・ラング編
「きいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ももいろの童話集」アンドルー・ラング編
「はいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「むらさきいろの童話集」アンドルー・ラング編
「べにいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ちゃいろの童話集」アンドルー・ラング編
「だいだいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「くさいろの童話集」アンドルー・ラング編

+シリーズ既刊の感想+(偕成社文庫版)
「みどりいろの童話集」「ばらいろの童話集」アンドルー・ラング

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キャサリンとの結婚1週間前に、工場での仕事中、機械に巻き込まれて死んだサイモン。弟のルーカスは13歳ながらも学校をやめ、同じ仕事につくことに... という「機械の中」。警察で電話を受ける仕事をしているキャットは、相手の本気を感じ取れる貴重な1人でありながら、「そいつ」を見過ごしてしまったのです... という「少年十字軍」。そして、毎晩のように子供を公園で散歩させるナディア人の彼女を見て、少しずつ距離を縮めるサイモン。彼女はカタリーン。エメラルド色の肌をしていました... という「美しさのような」。全部で3編。

過去から現在へ、そして未来へ。その世界に常に流れているのは、ウォルト・ホイットマンの「草の葉」。ある時は声高に、そしてある時は囁くようにホイットマンの詩を読む声が聞こえてきます。この本と併せて「草の葉」も読んだのですが、いいですねえ。そのおかげでとてもこの世界が掴みやすくなったし、入り込みやすくなったような気がします。
「草の葉」というのは、右の画像の帯にもあるように「アメリカをしてアメリカたらしめている根源的作品」と言われている作品。とても情景を立ち上げる力が強くて、文字を追うごとに情景が立ち上がり、世界が構築されていくような詩なんですよね。そしてその「草の葉」を読んだ後にこの作品を読んでみると、その詩で既に作り上げられていた世界と地続きで、さらに世界が広がったような印象。しかも作中にウォルト・ホイットマン自身も登場するんですが、それがまた驚くほどの違和感のなさで...。「草の葉」で思い描いていた人物そのまま。詩は基本的に苦手なはずなのに、きちんと受け止められていたんだなと思わず嬉しくなってしまったほど。
この「星々の生まれるところ」の3つの短編同士は、はっきりと繋がってはいないんですが、一番主要な登場人物はルークとサイモンとキャサリンの3人。この3人が名前や年齢といった設定を少しずつ変えながら入れ替わり、物語が流れていきます。変わらないのは「草の葉」と白い鉢だけ。この鉢がまるで次世代に希望を託しているようで、それもまた素敵なのです。そしてもしかしたらこの3編のどれが一番好きかというので、その人の本の好みが分かるかもしれません。という私が一番好きなのは最初の「機械の中」です。過去の世界。(集英社)

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中国の難関中の難関である選抜試験を優秀な成績で合格し、フランス政府国費留学生として80年代末からパリに留学していた莫(モー)。彼はフロイト派の精神分析学を学び、中国初の精神分析医として、11年ぶりに中国に帰国。そして中国での大学時代からずっと恋焦がれているフーツァンを刑務所から救い出すために、法曹界の実力者・狄(ディー)判事のもとを訪れます。フーツァンは、中国警察による拷問の場面を隠し撮りして、ヨーロッパのマスコミに売った罪で捕らえられていました。1万ドルを差し出した莫に狄(ディー)判事に要求された賄賂は、「まだ赤いメロンを割っていない」女性、すなわち処女。莫は条件に叶う女性を探し求めて、中国を旅して回ることに。

「バルザックと小さな中国のお針子」が面白かったダイ・シージエの長編第2作。
でも今回も面白かったんですけど... きちんと小説らしい構成と展開をしていた「バルザック~」に比べて、かなり読みにくかったです。物語が時系列順で展開していくわけじゃないし、筆の赴くまま、話が奔放に飛んでいってしまうんですもん。つきつめてしまえば、かつて好きだった女性を救うために莫が奔走する、というだけなんですけどね。その理由が分かるのも、ちょっと後になってから。
物語が始まった時、莫は既に処女探しを始めています。でも莫が真剣に処女探しをすればするほど、物語はどんどん喜劇的になっていくんです。訳者あとがきで「ドン・キホーテ」が引き合いに出されてるのを見て納得。ラストも可笑しい~。そもそも40歳にもなるいい大人の男性が、一体何やってるんだか。ほんと懲りないんだから。でも「懲りない」といえば、ここに登場する面々が1人残らず「懲りない面々」かも。何があっても何が起きても、したたかにやり過ごしていくんですね。こういうの、大陸的な底力なんでしょうか。
原題は「Le complexe de Di」。「Le complexe d'Œdipe」(エディプス・コンプレックス)のもじりなんだそうです。「Di」は狄判事のこと。丁度「Œdipe」の中に「di」がありますよね。でもロバート・ファン・ヒューリックの狄判事シリーズの主人公と同じ名前なんですが、そっちのシリーズの狄判事はとても好人物なので、名前が丁度良かったとはいえ、少々気の毒な気も...。ちなみに「長椅子」は、精神分析の時の必須アイテムの長椅子のことです。この題名センス(訳者さんがつけたのかな?)、好きだわー。(ハヤカワepiブック・プラネット)


+既読のダイ・シージエ作品の感想+
「バルザックと小さな中国のお針子」ダイ・シージエ
「フロイトの弟子と旅する長椅子」ダイ・シージエ

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ニータの家族がハンプトンズの海岸沿いの貸し別荘で夏を過ごすことになり、友人のキットとジャーマン・シェパードのポンチも一緒に行くことになります。夜の海で泳ぐ2人。しかしその時、キットは岩がざわざわして何かに怯えているのを感じていました。海で何か起きているらしいのです。そしてイルカにクジラが「狩人」たちに追われて怪我を負っているのを聞いた2人は、クジラを助けに向かうことに。スリィという名前のそのクジラは海の魔法使いでした。スリィに海で起きている危機を聞いた2人は、「孤高なる者」を再び海底に封印し、海に平和を取り戻すための「十二の君の歌」という儀式に参加することを承諾します。

駆け出し魔法使いシリーズの第2弾。
前作から2ヵ月後、海の呪文という題名通り海の物語となっています。今回、海の中での情景や海の魔法の描写が素敵だし、敵なのか味方なのか微妙な存在の全身白いサメの長の造形もとても良かったんですが、それでも前作のホワイトホールの突飛さに比べてしまうと、やや凡庸かも...? でも今回はむしろ、葛藤する人間ドラマというか、2人の成長物語としての面が大きいんですね。ニータとキットが内容をきちんと理解しないまま安請け合いしてしまった役割は、非常に重大なもの。一度誓ってしまった言葉はもう元には戻せないし、誰も2人を助けることはできないのです。

でも、話は面白かったんですけど... 1つ引っかかってしまったのが捕鯨に関する記述。

これまでにも、なんでも胃袋に収めてしまう日本人のことは何度も耳にしていたが、他に食べるものはいくらでもあるだろうに、と思わずにいられなかった。(P.51)

私だって何が何でも絶対に捕鯨が必要だなんて思ってませんけど、こういうところに、他文化を認められないアメリカ人の度量の狭さを感じてしまって、なんだかヤな感じ~。近くのページでニューヨーク付近の海の汚染のことも書いているんですが、アメリカ人の愚かさも書いたら、それで公平な視点になったとでも? やっぱりどうもすっきりしないです。というか不愉快だわー。

それと疑問が1つ。あの本は相変わらず図書館から借り出してるってことなんでしょうか?(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「駆け出し魔法使いとはじまりの本」ダイアン・デュエイン
「駆け出し魔法使いと海の呪文」ダイアン・デュエイン

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レオンがお母さんの机の中から見つけたのは自分の名前が太い活字体で書かれ、学校の印章と「親展」のスタンプが押されている封筒。気になって仕方ないレオンは、4年生になる新学期の前の夜、とうとう開いて読んでしまいます。そこにあったのは、自分に対する担任や他の教師たちの厳しい評価。レオンは人並みはずれて手先が不器用で、それなのにレオンの通うクラシック学院のモットーは「敏捷な精神は敏捷な指に宿る」なのです。

ニューヨークのマンハッタンが舞台のファンタジーと思いきや、一般的なファンタジー作品とはまた全然違っていてびっくり。そもそも、主人公が通う学校からして、ものすごく個性的なんです。手先の器用さを重視するあまり、お裁縫に取り付かれている教師もいるぐらいですから! 実際、学校での授業風景は、裁縫と体育だけなんですよね。話の端々から他の授業もあるのは分かるんだけど、そっちはこれっぽっちも出てきません。そしてレオンの担任となった先生こそが、その裁縫が大好きな教師・ハグマイヤー先生。ヘルメットのような黒い髪に黒いマント、マントの留め金は2つの目玉、黒いドレスに黒いブーツ、煮込んだ肝臓色のストッキングといういかにも魔女のような外見。教室でのどんな小さな囁きも聞き逃さない地獄耳で、生徒に次々にアニマイルと呼ぶぬいぐるみを作らせては売りさばいているという噂...。
怪しげな学校に怪しげな先生。常識人に見えるレオンのお母さんが、なんでレオンをこの学校に通わせることになったのか、ものすごーく不思議。父親を早くに事故で失ってて、それほど裕福とは思えないのに、レオンは毎日タクシーで通学してるんですもん。それなりの理由があったんだろうと思うんですけどね。この作品は3部作の1作目だし、じきにその理由も分かってくるんでしょうか。

レオンの手先が不器用な本当の理由が思わぬところにあったのも楽しかったし、風変わりな客が入れ替わり立ち代り滞在するホテルでの場面も面白いです。個性豊かなホテルの面々も、親しくなるタクシー運転手のナポレオン・ドゥランジュもいい味を出してますしね。そんな大人たちの存在が、子供たちよりも余程魅力的だったかも... というのもYA向けファンタジー作品としてはちょっと異質な気がするんですが、学校の授業の場面で裁縫と体育の時間しか書かれていないことが象徴してるように、読んでいるとどこか歪みを感じるんですよね。でもそんな歪んだ不思議空間が、この物語の魅力なのかもしれません。(創元ブックランド)


+既読のアレン・カーズワイル作品の感想+
「レオンと魔法の人形遣い」上下 アレン・カーズワイル
「レオンとポテトチップ選手権」上下 アレン・カーズワイル

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カフェで見かけた男に運命を感じて、思わずその男の後をつける「わたし」。男はある建物のポーチをくぐって姿を消し、「わたし」が重々しいドアを押した時は、もうアパルトマンの1つに入った後でした。それは4階建ての瀟洒な建物。弁護士が1人いるほかは医療関係者ばかり。その後、男は4階に住む精神科医と判明し、男に言い寄るために「わたし」がしたのは、人生で出会ったありとあらゆる男性のことを語ることでした。

103の断章で語られるのは、「わたし」の夫のことや父親のこと、母の愛人、歌手、祖父や大叔父、そしてこれまで出会った恋人たちのこと。今まで出会った男性のことをひたすら語り、そして小説に書き綴っていくうちに、語り手である「わたし」の姿が浮き彫りになっていくという仕掛けのようです。この「わたし」はカミーユ・ロランスその人ではないと書かれてるんですけど、やっぱりカミーユという名前の作家なんですね。フランスではオートフィクション(自伝風創作)が文芸の一ジャンルとして注目を集めているようで、これもそんな作品の1つらしいです。同種の作品の中でも、この作品は別格の高い評価を得ているそうなのですが... でも男性のことだけでこれほどまでに語り続けられるのはすごいのかもしれないし(このバリエーションったら)、部分的に面白く感じられた部分はあったものの、103の断章がまるで金太郎飴みたい。「あーもーフランス人って一体」なんて思ってしまって。あまり面白く感じられなかったのが残念でした。(新潮クレストブックス)

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「志は高く心は狭い」小娘のための読書スタイル、文藝ガーリッシュ。今度は「毒と蜜」の世界文学編です。感想はのちほど。(河出書房新社)


+既読の千野帽子作品の感想+
「文藝ガーリッシュ」千野帽子
「世界小娘文學全集 文藝ガーリッシュ舶来編」千野帽子

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