Catégories:“2009年”

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1978年。ケンブリッジ大学での勉学を終え、今やロンドンのシティの金融界の心臓部に財政コンサルタントのオフィスを構えているサリー。その日、そのオフィスを訪ねてきたのは、引退した教師のミス・ウォルシュ。彼女はその前の年にサリーのアドバイスで海運会社への投資を行い、老後の蓄えの3000ポンドでアングロ-バルト海運会社の株を買っていました。その後アングロ-バルト海運会社は順調に業績を伸ばしていたのですが、わずか1年後、突然倒産してしまったのです。ミス・ウォルシュはこれは実は詐欺なのではないかという疑問を抱いていました。

サリー・ロックハートの冒険シリーズの第2弾。「マハラジャのルビー」から6年後。サリーは22歳になっています。写真家のフレデリックやジム・テイラーたちが周囲にいるのは相変わらずなんですが、状況的にはかなり様変わり... まあ、サリーに関しては予想通りなんですけどね。フレデリックは写真だけでなく探偵業にも手を出しているようだし、ジムは劇場の裏方として働きながら脚本家になろうとしてました!
前回よりもサリーが魅力的に感じられて、それが今回一番良かったかな。上巻では、サリーのところに持ち込まれた話と、フレデリックたちに持ち込まれた話が、当時大人気だったという降霊術も絡みながら、徐々に繋がりを見せていきます。そのほかにも、議会を通過したばかりの「妻財産法」なんていうのも絡んでくるし、労働者階級が中心となっていた前作とは違って今回は上流階級が絡んでくるのも面白いところ。ブラム・ストーカーの名前まで! そして下巻に入るとさらに物語の展開は速くなって、中盤から終盤にかけてば、まるで次々に引火して爆発していく爆弾のような感じでした...。私としては正直あまり嬉しくない展開だったりするんですけど、ま、面白かったです。
次の作品は3年後とのこと。25歳のサリーはどうなっているのかしら~。(創元ブックランド)


+シリーズ既刊の感想+
「マハラジャのルビー サリー・ロックハートの冒険」フィリップ・プルマン
「仮面の大富豪 サリー・ロックハートの冒険2」フィリップ・プルマン

+既読のフィリップ・プルマン作品の感想+
「黄金の羅針盤」上下「神秘の剣」上下 フィリップ・プルマン
「琥珀の望遠鏡」上下 フィリップ・プルマン
「かかしと召し使い」フィリップ・プルマン

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サクセス塾の事件から4ヶ月ほど経ち、受験勉強に本腰が入る3学期のある日のこと。謝恩会の実行委員長に任命されたレーチは謝恩会の会場探し中。無料で使えて多少の騒いでも大丈夫だという場所がなかなか見つからないのです。そんな時、2年の片桐弟が提案したのは、3学期が終われば取り壊される予定の旧校舎。取り壊されるのが決まっているだけにドンチャン騒ぎには最適なのではないかという話に、レーチはすっかりその気になり、亜衣・真衣・美衣と共に旧校舎へ。しかしその旧校舎には、40年前に「夢見」によって「夢喰い」が封印された開かずの教室があるのです...。

夢水清志郎シリーズ最終巻。15年書き続けたというこのシリーズも亜衣たちの中学卒業と同時にシリーズからも卒業となります。
卒業というのは、それぞれがそれぞれの選択をしなければならない時期。その選択が正しかったかどうかはすぐには分からないし、長い人生の中で、あの時選択を間違た、と思うこともあるのかも。でもその時その時で自分のできる精一杯の選択をしていれば、後悔することはないですよね。亜衣も真衣も美衣もレーチも、自分自身で決めた道を進んでいくからこそ、これから先、後悔なんかしないで真っ直ぐ進んでいけるのではないかと思います。そして今回、印象に残る言葉が色々とあったんですけど、一番印象に残ったのは亜衣と出版社の人の会話の場面。なんだかぐっときちゃいました。ほんとその通りだわ~。
謎解き部分は正直物足りなかったんですけど、シリーズ最終巻に相応しい素敵な物語。楽しいシリーズ物はいつまでも続いて欲しいと思ったりもするものですが、こういう風にきちんと区切りがついてみると、卒業するというのもいいものだなと思いますね。(実は「ハワイ幽霊城の謎」だけ未読なんだけど... 読まなくちゃ!)(講談社青い鳥文庫)


+シリーズ既刊の感想+
ブログにはこれ以前のシリーズ作品の感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「都会のトム&ソーヤ2 乱!RUN!ラン!」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦(ミッション)終了?」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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デビーは2年前に両親を亡くし、祖父に引き取られた少女。おじいさんのルーベン・ワインストックは世界一のピアノの調律師で、デビーもピアノの調律師になりたいと思っていました。しかしデビーのおじいさんは、デビーに世界一のピアニストになって欲しいと考えていたのです...

なぜおじいさんはそこまでピアニストに拘ってたのかな? 調律の仕事をしてるからピアノはとても身近な存在だし、地味な調律の仕事に比べて、ピアニストは華やかなイメージがあるんでしょうけど... おじいさんには調律の仕事の大変さがよく分かってるからこそだとしても、ピアニストには調律師以上に浮き沈みが激しくて大変な苦労が待ってると思うんですが。もしかしたらおじいさん自身が昔ピアニストに憧れてたのかな? 調律師になりたがるデビーにおじいさんは苦い顔。
でもデビーにとっては、ピアノを弾くことよりも、おじいさんのやってる調律の仕事の方がずっと魅力的。そりゃそうですよねえ。世界一の調律師のそばで、ずっとその仕事ぶりを見てるんですもん。私もピアノを調律してるのを見るのは大好き。子供の頃から、家のピアノの調律を飽きずに眺めてましたよ。なかなか時間が合わなくて見る機会はないのだけど、1年に1度は調律しなきゃいけないですしね。普段は隠されてるピアノの中を見られるというのもわくわくしたし、どんどん音が整っていくのもまるで魔法の技みたい。
もしかしたら、デビーにはまだ花開いてないピアノの才能があるのかもしれません。でもどんな才能があるとしても、「好きなこと」には負けますよね。「好きなこと=才能=仕事」なんて幸運な人は滅多にいないんだから、結局どれかを選ばなくちゃいけないわけで... そこで「好きなこと」を選べるというのは、ものすごく幸せなこと。

シンプルな絵もとても素敵。朝起きた2人が「フフフフーン」と今日の調子を確かめるのもいいな~。でも序盤で「今日は半音高いようだよ」なんて、既に調律師としての訓練が始まってるようにも見えるんですけど~。(笑)(すえもりブックス)

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1975年1月1日の朝6時。アルフレッド・アーチボルド・ジョーンズは、クリックルウッド・ブロードウェイに停めた自分の車の中に掃除機のホースで排気ガスを呼び込み、自殺を図っていました。それは覚悟の自殺。30年連れ添ったイタリア人の妻・オフィーリアに離婚されたのが原因。しかしそれは妻を愛していたからではなく、むしろ愛情がないのにこれほどにも長く妻と暮らしてきたからでした。アーチーは合わないのが分かりつつも対面を気にして我慢して暮らしていたのに、ある日妻は出ていったのです。しかしアーチーの意識が朦朧としていた時にその自殺に邪魔が入ります。フセイン=イスマイルの店のオーナー・モウ・フセイン=イスマイルが自分の店の前の配達のトラックが停まる場所に違法駐車している車を見つけたのです。

大学時代に書いた短編が話題となって、この作品の版権を巡ってロンドンの出版社が争奪戦を繰り広げたというゼイディー・スミスのデビュー作。ものすごく沢山の賞を受賞してるようですね... これは確かにちょっと新人離れした作品かも。
イギリス人アーチーの妻はジャマイカ人のクララ。2人の娘はアイリー。アーチーの第二次世界大戦来の友人・サマード・ミアー・イクバルとその妻・アルサナはベンガル人のムスリムで、マジドとミラトという双子の息子がいます。移民した2組の夫婦(アーチーは純粋なイギリス人だけど)とその子供たち、2世代のアイデンティティの物語という意味ではジュンパ・ラヒリの作品群を思い出すんですが... 雰囲気は全然違いますね。キラン・デサイの作品を読んでも、ジュンパ・ラヒリの描くインド系の人たちはごくごく少数の成功者だったんだなあとしみじみ思ったんですが、この作品を読んでも、あれはほんと綺麗すぎるほど綺麗な世界だったなと思ってしまいます。読んでいる時はむしろスタインベックの「エデンの東」を思い出してました。実際にはもっともっと饒舌でパワフル、そしてコミカルなんですけどね。20世紀末に生きる彼らの物語は、第二次世界大戦中の思い出から1907年のジャマイカ大地震、一時は1857年のセポイの乱で活躍したというサマードの曽祖父・マンガル・パンデーのエピソードにまで遡ります。150年ほどの長い期間を描き上げた大河ドラマ。舞台もロンドンの下町からロシア、インド、ジャマイカまで。人種や宗教、家族、歴史、恋愛、性など様々な事柄を1つの鍋に突っ込んでごった煮にしたという印象の作品。下巻に入ってユダヤ系のインテリ家庭・チャルフェン一家が登場すると、さらにパワーアップ。
途中やや中だるみしたんですけど、パワフルな登場人物たちが常に楽しげに忙しなく動き回っていて、全体的には楽しかったです。とてもじゃないけど若い作家のデビュー作品とは思えないスケールの大きさですね。このゼイディー・スミスの父はイギリス人、母はジャマイカ人。実際にこの物語の舞台となったロンドン北西部のウィルズデンに住んでいたのだそう。ということは、ゼイディー・スミスはアイリーなのかな? だからアイリーの心理描写が特に詳しいのかな。でも著者近影を見るとスリムな美人のゼイディー・スミスは、胸もお尻も腿も大きいジャマイカ系のアイリーとはちょっとイメージが違いますね。むしろその美しさでアーチーを圧倒したクララかも。(新潮クレストブックス)

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3つの時代に分けられるアイルランドの神話から、代表的な物語を8編を収めた本。神話時代からは「モイテューラの戦い」「リールの子どもたち」、アルスター伝説からは「クーフリンの誕生」「ブリックルーの宴会」「悲しみのディアドラ」、フィアナ伝説からは「フィンと知恵の鮭」「魔法にかけられた鹿」「オシーンと不老不死の楽園」。

純粋なケルト神話の本は久しぶり。元々子供向けに書かれたものだそうなので、全体的にとても読みやすい分かりやすい物語となってます。私自身はケルト神話に関してはある程度読んでるので、既に知ってる物語ばかりでちょっと物足りなかったですけどね... でもまだあまりケルト神話に触れたことのない人には、入門編としてとてもいいかも。
それにしてもこの表紙、以前読んだ「魔術師のたいこ」(感想)と雰囲気が似てる! もしかしてシリーズ?と思ったんですが、特にそういうのはないみたいですね。同じ春風社の本ではあるんだけど。「魔術師のたいこ」はラップランドの先住民族に伝わる民話で、ものすごく素敵なんです。大好き♪ 春風社のサイトを調べてみたんですけど、あとそれっぽいのは「古英語詩を読む ルーン詩からベーオウルフへ」しかありませんでした。これも読んでみたいなあ。「ベーオウルフ」は知ってるけど、「ルーン詩」「マルドンの戦い」「デオール」が収められてるなんて! それ以外に以前読んだ「カレワラ物語 フィンランドの国民叙事詩」(感想)も春風社だったんですけど、こちらは表紙の雰囲気がまた違います。神話関連のシリーズ、作ってくれれば全部読むのになあ。(春風社)

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駅に行って駅員に家具の発送について尋ねたジョアンナ。次のの金曜日に寝室1つ分の家具をサスカチェワンに送りたいのです。切符を買うと、今度は高級婦人服店へと向かいます...という「恋占い」他、全9編の短編集。

カナダの田舎町を舞台にした短編集。同じカナダで、同じスコットランド系、同じ世代のアリステア・マクラウドの作品とはまた全然違うカナダの姿が見えてきます。でもアリステア・マクラウドの作品みたいな自然の厳しさみたいなのはなくて、作品の雰囲気としてはかなり違うと思うんですけど、骨太なところ、人間の営みとしての生と死が描かれているところは共通していると言えるかも。
一読しただけでは意味が取れなくて読みにくい文章が結構あったんですが、これは原文のせいなのでしょうかー。でも読み終わってみれば、どれも読後に余韻が残る物語ばかり。70年生きてきた人間の重みなのかな。まず登場人物の造形がいいんですよね。ふと通りがかっていく人物にも思わぬリアリティがあって、はっとさせられることもしばしば。そして、ふとした出来事がその後の展開をまるで変えてしまうというのもいいんですよね。あざとさみたいなのはなくて、ものすごく自然なんです。ああ、そういうことも本当にあるのかも、なんて思えることばかり。たとえば上にあらすじを紹介した「恋占い」なんて、本当はものすごく残酷な話のはずだったのに...! 何がどうなるのかは、それなりの時間が経たないと見えてこないんですけどね。そこには単純に「幸せ」「不幸せ」と判断されることを拒むような深みがあります。
印象に残った作品は、最初の「恋占い」と表題作「イラクサ」、そして最後の「クマが山を越えてきた」。特にこの「クマが山を越えてきた」が良かったな。何度も読めば、それだけ味わいも増していきそうな短編集です。(新潮クレストブックス)

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兄に冴えない容姿をからかわれて育ったソーネチカは、幼い頃から本の虫。7歳の時から27歳になるまでの丸 20年間というもの、のべつまくなしに本を読み続け、やがて図書館専門学校を卒業すると、古い図書館の地下にある書庫で働き始めることに。そんなソーネチカがロベルトに出会ったのは、第二次世界大戦勃発後に疎開したウラル地方のスヴェルドロフスクの図書館でのことでした。それまでは一生結婚する気などなかった47歳のロベルトは、ソーネチカに運命を感じて結婚を申し込むことに。

主人公は、幼い頃から本が大好きで読んでばかりいたというソーネチカ。彼女がここまで自分のことを客観的に受け止められるようになったのは、本を沢山読んで育ったことに関係あったんでしょうか。13歳の頃の失恋も関係していたんでしょうか。もちろん元々の性格というのも大きいんでしょうね。でもここまで幸せな人生を送れたのはソーネチカだからこそ、というのだけは間違いないです。ロベルトとの結婚後に何度も「なんてこと、なんてこと、こんなに幸せでいいのかしら...」とつぶやくことになるソーネチカ。経済的には貧しくとも、どれほどの困難が先行きに待ち受けていようとも、今の状態に感謝して、周囲の人々にも愛を惜しまない女性。これほど精神的に豊かな女性って、なかなかいないでしょうね。修道院のシスターにだって、ここまでの女性はなかなかいないんじゃ...。そしてそれこそが、彼女の幸せの源。
そんなソーネチカに晩年降りかかった出来事は、他の人間には災難としか言いようのないものなんですが、ソーネチカにとってはそれもまた神に感謝すべきもの。こんな風に物事を受け止めることができれば、どれほど幸せか...。実際、ソーネチカの幸せな一生はソーネチカ自身が獲得したもの、と言い切ることができます。彼女には本当の強さがあるし、大きな愛情の持ち主には、おのずと大きな愛情が返ってくるものなのでしょう。幸せとは人にしてもらうものでも、人に頼ってなるものではなくて、自分自身でなるものだ、ということを改めて認識させられます。静かな余韻が残る幸せな作品です。(新潮クレストブックス)

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