Catégories:“小説以外”
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マキちゃんはおとうさんとおかあさん、1つ年上のおねえちゃんのマエちゃんと4人家族。横浜にはやさしいおじいちゃんとおばあちゃんがいて、保育園にはおともだちがいっぱい。でもマキちゃんは、おなかのいちばんでっぱったところよりすこし上のあたりに、ときどき、そうっと風がふいているような気がすることがあるのです... という「マキちゃんの絵にっき」と、伊勢英子さんの家にいるのは、シベリアンハスキーのグレイと、プレイリードッグのぶう。ぶうの可笑しくも可愛らしいしぐさや行動を見ているだけで幸せになれそうな、観察日記「ぶう」。
どちらも、伊勢英子さん自身による挿絵がたっぷり詰まったエッセイ集。あ、でも「マキちゃんの絵にっき」は挿絵なんですけど、「ぶう」は絵の方が多くて、エッセイマンガといった方が近いかも。どちらもとても暖かい本です。
「マキちゃんの絵にっき」は、お仕事が忙しいお父さんとお母さん、おねえちゃんのマエちゃん、やさしい保育園の先生たちといった周囲の人々が保育園に通うマキちゃんの視点から描かれています。マキちゃんは、本当はもっとお母さんと一緒にいたいんですけど、お母さんは絵の仕事で忙しいんですよね。もっと絵本を読んで欲しいし、もっと遊んで欲しい... でもそういうのをちょっとずつ出しながらも、それでも引き際を心得ているところが不憫ながらも可愛い~。そしてマキちゃんの寂しさをしっかり感じていて、マキちゃんに悪いなと思いつつも、忙しい時にマキちゃんがぐずぐずしてると不機嫌になるし、おねしょをしていると怒ってしまうし、忙しくなると寝る前の絵本の読み聞かせを省略して、ついつい仕事に没頭してしまう伊勢英子さんの姿も透けて見えてきます。結局、自分のペースでしかいられないんですよね。なんか分かる気がするなあ。
そして「ぶう」の方は、プレイリードッグのぶうの話。リスの仲間のプレイリードッグは、ペストや野兎病などの感染症を媒介するとして現在は輸入禁止となっているそうですが、体長30cmぐらいの薄茶色をした可愛い動物。そのぶうのイラストがこれでもかというほど収められていて、それがまたぶうの一瞬一瞬の表情を見事にとらえていて、むちゃくちゃ可愛い! いかにぶうが伊勢家で可愛がられていたか、毎日の様子を見守られていたか、手に取るように分かります。でも単に「可愛い可愛い」だけでなくて、生き物につきものである「死」をも直視させるところが、伊勢英子さんの本の特徴なのかもしれないな。(中公文庫)
+既読の伊勢英子作品の感想+
「ルリユールおじさん」「絵描き」いせひでこ
「旅する絵描き パリからの手紙」伊勢英子
「グレイがまってるから」「気分はおすわりの日」伊勢英子
「マキちゃんの絵にっき」「ぶう」伊勢英子
「カザルスへの旅」伊勢英子
「はじまりの記憶」柳田邦男・伊勢英子
「1000の風 1000のチェロ」「雲のてんらん会」いせひでこ
「空のひきだし」いせひでこ
「むぎわらぼうし」竹下文子・いせひでこ
「大きな木のような人」「ルリユールおじさん」いせひでこ
「にいさん」いせひでこ
「ざしき童子のはなし」「よだかの星」「風の又三郎」「水仙月の四日」宮沢賢治・伊勢英子
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英仏百年戦争とは、中世末の14世紀からイギリスとフランスの間で行われた戦争のこと。教科書的には、序盤は、黒太子エドワードの活躍でイギリスが圧倒的に優勢だったものの、ジャンヌ・ダルクが登場してからはフランスが勢いを盛り返して、最終的にはフランスの勝利に終わる戦争。でも平均的なイギリス人の認識では、英仏百年戦争はフランスの勝利ではなく、イギリスの勝利に終わっているのだそうです! その原因となっているのは、シェイクスピアの史劇。「ジョン王」「リチャード2世」「ヘンリー4世」「「ヘンリー5世」「ヘンリー6世」「エドワード3世」といった作品群はそのまま英仏百年戦争の時代に重なるものなんですが、イギリスでは小難しい歴史書なんかよりもシェイクスピアの方が余程読まれているだけあって、史劇としての演出が誤解を招いたようですね。でも「英仏百年戦争」と言う概念自体、シェイクスピアよりも遥か後世に生まれたもの。本当にこの戦争は英仏戦争だったのか、そして本当に百年戦争だったのか、根本から見直す本です。
先日、ポール・ドハティの「赤き死の訪れ」を読んだ時に、森山さんに教えて頂いた本です。イギリスの歴史小説が好きな割に全然知識が足りない私にとっては、ものすごーく勉強になる本でした! 佐藤賢一さんの小説もそのうち読んでみようかしら... いかにも私好みな題材を取り上げてる割に、どうも今ひとつソソられなくて読んでなかったんですが。(^^ゞ
一般的には1337年から1453年までとされている百年戦争なんですが、その前史として、古来ケルト民族の土地だったグレイト・ブリテン島に4世紀にはアングロ・サクソン人が移住した辺りから、1066年のウィリアム1世によるノルマン朝の成立までの経緯も説明してくれているので、ものすごく分かりやすいです。英国がなぜそれほどフランスにこだわったのかも、この本を読めばよーく分かります。そうそう、イギリス王家やイギリス貴族とはいえ、元々はフランス人なんですものね。イギリスなんて、海外植民地にすぎなかったんですものねー。そしてこの本を通して読んでみると、英仏百年戦争によって「イギリス」「フランス」という国ができたのだという作者の解釈もとても納得できるものでした。
作中に随時挿入されている地図もありがたいし、巻末の年表や家系図もとても便利。複雑怪奇な人物相関図もこれで一目瞭然。やっぱり長い目で見て書いてる本っていいですね。点と点が繋がって線になってきたものが、それぞれ繋がって面になっていく感覚。シェイクスピアの史劇も「ジョン王」(感想)ぐらいしか読んでないし、いずれちゃんと読まなくちゃいけないなあ。(集英社新書)
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なんで「食物漫遊記」だけ画像がないんだろう...。去年ちくま文庫で復刊になっているのを知って、買っておいた3冊です。内容の説明をするまでもなく、もう題名通りのエッセイ。
うーん、面白かったことは面白かったんですけど、一番楽しみにしてた「書物漫遊記」よりも「贋物漫遊記」の方が楽しめたというのはどういうことなんだろう。「食物漫遊記」を読んで「あー、美味しそう!」と涎をたらすこともなく、「書物漫遊記」を読んで「この本、読みたいっっ」となることもなく... 「書物漫遊記」で紹介されていた、久生十蘭の「新西遊記」はちょっと読んでみたくなったんですけどね。
とは言っても、決して詰まらなかったわけでもなく。
博学ぶりは堪能させてもらったし、面白いエピソードはいっぱいあったし。でもそういった本や食べ物を元ネタにしていても、種村季弘さんご自身のエピソードが展開されていくので、元ネタという意味で期待して読むのは間違っていたのかもかもしれないなあ...。で、なんで「贋物漫遊記」が一番面白かったかといえば、きっとどんなところからでもエピソードを捻り出して来れる方なので、逆に「食物」「書物」といったシバリのない、もう少し漠然とした「贋物」の方が本領発揮だったのかも、なんて思ったりもします。こちらにも自然に本の話題は登場しますしね。実はシバリをつける必要なんて、全然なかったのではないでしょうかー。しかもどこからどこまでが本当なのか分からないエピソード群。「この話は作ってるでしょ!」と言いたくなることも何度かあったので、結局のところ全てが「贋物漫遊記」だったのかもしれません。(笑)
...それにしても、高橋勝彦さんの作品の中に出てくる人形師の泉目吉って、実在の人物だったんですね! 恥ずかしながら全然知らなかった(なぜか考えてもみなかった)ので、こちらの本に名前が登場していてびっくりでした。(ちくま文庫)