Catégories:“小説以外”

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南仏ピレネー山中、カタロニアの小さな村プラドに住んでいたチェロ奏者のパブロ・カザルス。スペインの内戦が激しくなり、一層強くなるフランコの独裁から逃げるように亡命したカザルスは、パリに住むこともできなくなった晩年を、このプラドの村で過ごすことになります。あらゆる権力に背を向け、平和と愛のためだけに弓を手にしたというカザルス。そんなカザルスを追う旅の記録が表題作「カザルスへの旅」。あと、芸大の大学院時代に自分探しのためパリへと飛び出した「パリひとり時代」、絵本を勉強している画学生たちと東北・遠野へと旅立った「もうひとつの旅」、そして幼い子供の頃と再会する幻想的な掌編「はこだて幻想」の全4編が収められた本。

去年の暮れに「ルリユールおじさん」「絵描き」を読んで以来、すっかりハマってしまった伊勢英子さん。続けて「旅する絵描き パリからの手紙」「グレイがまってるから」「気分はおすわりの日」を読んで、昨日も「マキちゃんの絵にっき」「ぶう」と読んだわけなんですが、今日読んだのは、今年の始めに掲示板でぽぷらさんに教えて頂いた「カザルスへの旅」。これは、少女時代の伊勢さんのチェロの師であった佐藤良雄氏の、そのまた師であったカザルスに自分も魅せられてしまった伊勢さんが、カザルスに出会うために出た旅の記録。これだけで1冊の本になっているのかと思ったら、他の旅の記録も一緒に入っていて驚きましたが... でも全ての共通項は「チェロ」。そして一番強く印象に残ったのは、やっぱり表題作「カザルスへの旅」でした。

でもこれを読んでいて一番残念だったのが、私がパブロ・カザルスの演奏を聴いたことがないこと! 名前は知ってるし、もしかしたら耳にしたことはあるのかもしれませんが... ちゃんと意識して聞いたことがないんですよね。チェロという楽器もとても好きなのに。演奏を知ってるのと知らないのとでは、きっと感じられる深みも全然違ってくるんだろうなあ... と思いつつ、それでも伊勢英子さんの筆を通して出会ったカザルスに魅了されました。彼の弾いたチェロの音が想像できるような気がしてくるほど。この情景は、伊勢英子さんの絵本「1000の風・1000のチェロ」でも出会うことができるんでしょうね。この絵本は、阪神淡路大震災復興支援チャリティー「1000人のチェロ・コンサート」を描いたものだそうなのだけど。
先に「グレイ」の2冊や「マキちゃんの絵にっき」で、伊勢さんのおうちのことを読んでいたこともあって、この2週間の旅が伊勢さんにとってどれだけ大きなものだったか、痛いほど分かる気がします。結婚しても、2人の子の母親になっても、伊勢英子さんはあくまでも伊勢英子さんでしかいられなかったんですね。夫と2人の子供を置いていくことで実家のお母様にも相当非難されたようですが、それでも行かずにはいられなかった、そんな誤魔化しようもない思いがこの本を通じて溢れ出してくるようです。手作りの旅なので、途中で思わぬ回り道をすることもありますし、時には失敗することもあるんですが、その一歩一歩が大きく光ってるし、旅先で出会う人1人1人がとても印象的。特にクレモナでのマエストロとの出会いには驚かされますが... それ以外の人々もそれぞれにくっきりと鮮やかでした。
やっぱりカザルスの曲を聞いてみなくちゃいけないですねえ。聴くなら、バッハの無伴奏チェロ組曲がいいかな?(中公文庫)


+既読の伊勢英子作品の感想+
「ルリユールおじさん」「絵描き」いせひでこ
「旅する絵描き パリからの手紙」伊勢英子
「グレイがまってるから」「気分はおすわりの日」伊勢英子
「マキちゃんの絵にっき」「ぶう」伊勢英子
「カザルスへの旅」伊勢英子
「はじまりの記憶」柳田邦男・伊勢英子
「1000の風 1000のチェロ」「雲のてんらん会」いせひでこ
「空のひきだし」いせひでこ
「むぎわらぼうし」竹下文子・いせひでこ
「大きな木のような人」「ルリユールおじさん」いせひでこ
「にいさん」いせひでこ
「ざしき童子のはなし」「よだかの星」「風の又三郎」「水仙月の四日」宮沢賢治・伊勢英子

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マキちゃんはおとうさんとおかあさん、1つ年上のおねえちゃんのマエちゃんと4人家族。横浜にはやさしいおじいちゃんとおばあちゃんがいて、保育園にはおともだちがいっぱい。でもマキちゃんは、おなかのいちばんでっぱったところよりすこし上のあたりに、ときどき、そうっと風がふいているような気がすることがあるのです... という「マキちゃんの絵にっき」と、伊勢英子さんの家にいるのは、シベリアンハスキーのグレイと、プレイリードッグのぶう。ぶうの可笑しくも可愛らしいしぐさや行動を見ているだけで幸せになれそうな、観察日記「ぶう」。

どちらも、伊勢英子さん自身による挿絵がたっぷり詰まったエッセイ集。あ、でも「マキちゃんの絵にっき」は挿絵なんですけど、「ぶう」は絵の方が多くて、エッセイマンガといった方が近いかも。どちらもとても暖かい本です。
「マキちゃんの絵にっき」は、お仕事が忙しいお父さんとお母さん、おねえちゃんのマエちゃん、やさしい保育園の先生たちといった周囲の人々が保育園に通うマキちゃんの視点から描かれています。マキちゃんは、本当はもっとお母さんと一緒にいたいんですけど、お母さんは絵の仕事で忙しいんですよね。もっと絵本を読んで欲しいし、もっと遊んで欲しい... でもそういうのをちょっとずつ出しながらも、それでも引き際を心得ているところが不憫ながらも可愛い~。そしてマキちゃんの寂しさをしっかり感じていて、マキちゃんに悪いなと思いつつも、忙しい時にマキちゃんがぐずぐずしてると不機嫌になるし、おねしょをしていると怒ってしまうし、忙しくなると寝る前の絵本の読み聞かせを省略して、ついつい仕事に没頭してしまう伊勢英子さんの姿も透けて見えてきます。結局、自分のペースでしかいられないんですよね。なんか分かる気がするなあ。
そして「ぶう」の方は、プレイリードッグのぶうの話。リスの仲間のプレイリードッグは、ペストや野兎病などの感染症を媒介するとして現在は輸入禁止となっているそうですが、体長30cmぐらいの薄茶色をした可愛い動物。そのぶうのイラストがこれでもかというほど収められていて、それがまたぶうの一瞬一瞬の表情を見事にとらえていて、むちゃくちゃ可愛い! いかにぶうが伊勢家で可愛がられていたか、毎日の様子を見守られていたか、手に取るように分かります。でも単に「可愛い可愛い」だけでなくて、生き物につきものである「死」をも直視させるところが、伊勢英子さんの本の特徴なのかもしれないな。(中公文庫)


+既読の伊勢英子作品の感想+
「ルリユールおじさん」「絵描き」いせひでこ
「旅する絵描き パリからの手紙」伊勢英子
「グレイがまってるから」「気分はおすわりの日」伊勢英子
「マキちゃんの絵にっき」「ぶう」伊勢英子
「カザルスへの旅」伊勢英子
「はじまりの記憶」柳田邦男・伊勢英子
「1000の風 1000のチェロ」「雲のてんらん会」いせひでこ
「空のひきだし」いせひでこ
「むぎわらぼうし」竹下文子・いせひでこ
「大きな木のような人」「ルリユールおじさん」いせひでこ
「にいさん」いせひでこ
「ざしき童子のはなし」「よだかの星」「風の又三郎」「水仙月の四日」宮沢賢治・伊勢英子

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英仏百年戦争とは、中世末の14世紀からイギリスとフランスの間で行われた戦争のこと。教科書的には、序盤は、黒太子エドワードの活躍でイギリスが圧倒的に優勢だったものの、ジャンヌ・ダルクが登場してからはフランスが勢いを盛り返して、最終的にはフランスの勝利に終わる戦争。でも平均的なイギリス人の認識では、英仏百年戦争はフランスの勝利ではなく、イギリスの勝利に終わっているのだそうです! その原因となっているのは、シェイクスピアの史劇。「ジョン王」「リチャード2世」「ヘンリー4世」「「ヘンリー5世」「ヘンリー6世」「エドワード3世」といった作品群はそのまま英仏百年戦争の時代に重なるものなんですが、イギリスでは小難しい歴史書なんかよりもシェイクスピアの方が余程読まれているだけあって、史劇としての演出が誤解を招いたようですね。でも「英仏百年戦争」と言う概念自体、シェイクスピアよりも遥か後世に生まれたもの。本当にこの戦争は英仏戦争だったのか、そして本当に百年戦争だったのか、根本から見直す本です。

先日、ポール・ドハティの「赤き死の訪れ」を読んだ時に、森山さんに教えて頂いた本です。イギリスの歴史小説が好きな割に全然知識が足りない私にとっては、ものすごーく勉強になる本でした! 佐藤賢一さんの小説もそのうち読んでみようかしら... いかにも私好みな題材を取り上げてる割に、どうも今ひとつソソられなくて読んでなかったんですが。(^^ゞ

一般的には1337年から1453年までとされている百年戦争なんですが、その前史として、古来ケルト民族の土地だったグレイト・ブリテン島に4世紀にはアングロ・サクソン人が移住した辺りから、1066年のウィリアム1世によるノルマン朝の成立までの経緯も説明してくれているので、ものすごく分かりやすいです。英国がなぜそれほどフランスにこだわったのかも、この本を読めばよーく分かります。そうそう、イギリス王家やイギリス貴族とはいえ、元々はフランス人なんですものね。イギリスなんて、海外植民地にすぎなかったんですものねー。そしてこの本を通して読んでみると、英仏百年戦争によって「イギリス」「フランス」という国ができたのだという作者の解釈もとても納得できるものでした。
作中に随時挿入されている地図もありがたいし、巻末の年表や家系図もとても便利。複雑怪奇な人物相関図もこれで一目瞭然。やっぱり長い目で見て書いてる本っていいですね。点と点が繋がって線になってきたものが、それぞれ繋がって面になっていく感覚。シェイクスピアの史劇も「ジョン王」(感想)ぐらいしか読んでないし、いずれちゃんと読まなくちゃいけないなあ。(集英社新書)

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なんで「食物漫遊記」だけ画像がないんだろう...。去年ちくま文庫で復刊になっているのを知って、買っておいた3冊です。内容の説明をするまでもなく、もう題名通りのエッセイ。

うーん、面白かったことは面白かったんですけど、一番楽しみにしてた「書物漫遊記」よりも「贋物漫遊記」の方が楽しめたというのはどういうことなんだろう。「食物漫遊記」を読んで「あー、美味しそう!」と涎をたらすこともなく、「書物漫遊記」を読んで「この本、読みたいっっ」となることもなく... 「書物漫遊記」で紹介されていた、久生十蘭の「新西遊記」はちょっと読んでみたくなったんですけどね。
とは言っても、決して詰まらなかったわけでもなく。
博学ぶりは堪能させてもらったし、面白いエピソードはいっぱいあったし。でもそういった本や食べ物を元ネタにしていても、種村季弘さんご自身のエピソードが展開されていくので、元ネタという意味で期待して読むのは間違っていたのかもかもしれないなあ...。で、なんで「贋物漫遊記」が一番面白かったかといえば、きっとどんなところからでもエピソードを捻り出して来れる方なので、逆に「食物」「書物」といったシバリのない、もう少し漠然とした「贋物」の方が本領発揮だったのかも、なんて思ったりもします。こちらにも自然に本の話題は登場しますしね。実はシバリをつける必要なんて、全然なかったのではないでしょうかー。しかもどこからどこまでが本当なのか分からないエピソード群。「この話は作ってるでしょ!」と言いたくなることも何度かあったので、結局のところ全てが「贋物漫遊記」だったのかもしれません。(笑)
...それにしても、高橋勝彦さんの作品の中に出てくる人形師の泉目吉って、実在の人物だったんですね! 恥ずかしながら全然知らなかった(なぜか考えてもみなかった)ので、こちらの本に名前が登場していてびっくりでした。(ちくま文庫)

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引越しと旅が趣味の「絵描き」は、建築家の夫と子供2人の4人暮らし。家を変えるたびに家の中を自分の好みの色で塗り替える一家の今度の家は、床のじゅうたんも壁も家具もカーテンもクッションも全てブルーグレー。友人の家にハスキーの子犬が生まれたと聞いた絵描き一家は、ブルーグレーの部屋や庭にハスキー犬がいる様子を想像してうっとりし、離乳がすむ頃にひきとりに行く約束をします。そしてやって来たのは、体全体が銀白色で鼻も瞳も真っ黒な「グレイ」でした... という「グレイがまってるから」と、その続きの「気分はおすわりの日」。

伊勢英子さんの家にやってきた、ハスキー犬のグレイにまつわるエッセイ。基本的に伊勢さんの視点なんですが、時々グレイの視点になったりして、それがまた可愛いのです~。そして合間には、伊勢さんによるスケッチがふんだんに!
うちにも以前犬がいたし、しかもまるでしつけがなっていない犬だったので(笑)、グレイのエピソードがどれもものすごーく身近に感じられました。伊勢一家のように「夜犬ヲ鳴カサナイデクダサイ。メイワクシマス」などという手紙を受け取ったことこそないんですけど、きっと文句を言いたかった人もいたんだろうな...。やっぱり毎日の散歩がある分、犬を飼うのって結構大変ですよね。うちの犬も散歩に行きたくて鳴き始めるのが毎朝4時とかそんな時間で、しかも一度鳴き始めたら連れて行ってもらえるまで鳴き続けるので、体力的にも結構キツかったです...。でも実際には「大変」以上に楽しいこともいっぱい。この本でも淡々と綴っているようでいて、グレイと一緒にいられた幸せが一杯詰まっていて、それがとてもかけがえのないものだったというのがしみじみと伝わってきました。
ただ、「グレイがまってるから」の文庫化に際して「そして四年...」が書き下ろされたんだそうですが... ここにこの書き下ろしはちょっと雰囲気的にどうなんでしょう。「気分はおすわりの日」では、それほど違和感を感じないのだけど。(こちらには「そして三年...」が入ってます) あと、この続編で「グレイのしっぽ」というのもあるようですね。それも読んでみたいなあ。ちょっとツラい話になるのかもしれませんが...。(中公文庫)


+既読の伊勢英子作品の感想+
「ルリユールおじさん」「絵描き」いせひでこ
「旅する絵描き パリからの手紙」伊勢英子
「グレイがまってるから」「気分はおすわりの日」伊勢英子
「マキちゃんの絵にっき」「ぶう」伊勢英子
「カザルスへの旅」伊勢英子
「はじまりの記憶」柳田邦男・伊勢英子
「1000の風 1000のチェロ」「雲のてんらん会」いせひでこ
「空のひきだし」いせひでこ
「むぎわらぼうし」竹下文子・いせひでこ
「大きな木のような人」「ルリユールおじさん」いせひでこ
「にいさん」いせひでこ
「ざしき童子のはなし」「よだかの星」「風の又三郎」「水仙月の四日」宮沢賢治・伊勢英子

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新聞や雑誌に連載されていた文章や、日記。染色家で人間国宝の志村ふくみさんの、「一生一色」に続く2番目のエッセイ集。

以前読んだ「一生一色」「色を奏でる」と重なる部分も多い分、それほど新鮮味はなかったんですが、やっぱりしみじみとした美しさを感じさせられる本でした~。前に読んだ2冊は梅や桜といった木から染める話が多かったように思うし、今回も群馬県水上の藤原中学校で桜を染めるエピソードがとても良かったんですが、こちらの本は野の花を摘んで染めるというエピソードも多かったのが印象的でした。それまでは邪魔もの扱いだった「からすのえんどう」が少し黄味がかった薄緑に染まり、すっかり見る目が変わってしまった話、げんのしょうこやれんげ草、よもぎなど様々な野草で染めた糸の群れは、野原そのもののの色合いになっている話、散歩の時に道端に咲いている花に呼ばれてみれば、それは曙草。日々小さな花の声にも気づき、その美しさを愛で、「色をいただく」気持ちがあればこそ、積み重ねられていくものもあるんでしょうね。
藤田千恵子さんによる解説の「本を読むのに資格は要らない。年齢、経験、能力も不問。...と思っていたけれど、そうだろうか。この『語りかける花』を読み進むうち、はたと思った。読む側にも力量がいるのではなかろうか、と」という言葉も印象に残ります。志村ふくみさんの文章は難解どころか、むしろとても読みやすいものなんですが、「読みやすい文章というのは、むしろ、危険なのだ。どんな宝がどこに潜んでいるのかわからないのに、速度が増してしまうからである」とのこと。私にとっては、読みやすければ読む速度が増すというものではないんですが... それでも言いたいことはすごくよく分かります。志村ふくみさんの文章は、しっかりと受け止めながら感じながら読みたいなあって思いますもん。(ちくま文庫)


+既読の志村ふくみ作品の感想+
「語りかける花」志村ふくみ
「ちよう、はたり」志村ふくみ
Livreに「一色一生」「色を奏でる」の感想があります)

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前身である探偵作家クラブの時代を含めて、60周年を迎えた日本推理作家協会の機関誌に残っている、かつて大作家たちが集まって行っていた様々な試みの記録。例えば江戸川乱歩と大下宇陀児の将棋対決や、甲賀流忍者を招いての忍術の講演並びに実演。北村薫氏がテーマを選んでそれらの試みを振り返りつつ、その件について詳しいゲストを呼んで鼎談を行うという企画の本です。

企画そのものも面白いし、その都度呼ばれるミステリ作家たちも豪華な顔ぶれ。しかも各界のプロと呼ばれる人間も招いての対談なので、素人だけでは分からない部分に触れられていたのが面白かったです~。例えば、将棋のプロが江戸川乱歩の棋譜を見れば、その性格がある程度想像できるといったような部分ですね。今の時代にも本物の忍者っているんだ!って、そんな初心者レベルでもびっくりさせられたし。(笑)
個人的にとても共感したのは、活字や朗読の「そのもののイメージを目の前に出されるのと違う」、受け取り手の想像力がつくり上げる部分が大きいという面こそが物語を豊かにしているという話。これは「声」の章での宮部さんとの対談の中で出てきた話なんですが、「落語」の章の、池波正太郎作品は一見するとスカスカなのに、会話と会話の間の情報を自分で補って刺激されるから、短編を読んでも長編を読んだような充実感がある、という話に繋がってきました。ほんと、そうなんですよね。
それから面白かったのは、落語とミステリは本来相反するものだという話。落語は観客が先に知っているからこそ笑えるものだから、観客が犯人を知らないと真剣に聞いてしまって笑える状態にはないわけで... だからミステリ的な新作は難しいのだそうです。全然考えたことなかったけど、そう言われてみると確かにそうだなあ。なるほどぉ。
作る側も楽しかっただろうな、なんて思っちゃう色々と凝った作りの本なんですけど、さらに付録としてCDが1枚ついてます。収められているのは、横溝正史原作の文士劇「びっくり箱殺人事件」のラジオ放送と、江戸川乱歩インタビュー、江戸川乱歩の歌う「城ヶ島の雨」、甲賀三郎自作朗読「荒野」の4つ。こんな貴重な音源が江戸川乱歩邸に残っていたとは! そして、こうしてCDで聞けるのがすごいです。(角川書店)


+既読の北村薫作品の感想+
「北村薫のミステリびっくり箱」北村薫
Livreに、これ以前のいくつかの作品の感想があります)

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