Catégories:“ファンタジー”

Catégories: / /

 [amazon]
2月ももうすぐ終わりだというのに、真冬のように寒い日。勤めていた旅行会社をやめてきたばかりの「わたし」が見たのは、1枚のちらし。それは骨董通りにあるシャーリマールという古い絨毯の専門店が、春にインドへの買い付けに行く人材を募集しているという知らせでした。数週間前にも、ショーウインドーに飾られた高価な絨毯に引き寄せられるような思いをしたばかりの「わたし」は、早速店を訪ねることに。店の中は壁にかけられた絨毯でまるで庭園のよう。出てきた白いターバンを巻いた老人は、これらの絨毯は全てインドのカシミールで織られたものだと言い、インドで若草の中にひなげしを織り込んだ春の絨毯を探してきて欲しいのだと説明します。

こみねゆらさんの絵に惹かれて、何の気なしに借りてきた本なんですけど、なんと絨毯の話だったとは! 最近続けざまに読んでるトルコ絨毯ではなくて、こちらの絨毯はインドのものなんですけどね。それでもちょっと運命を感じてみたりして。(笑)
「わたし」が老人に頼まれてインドに探しに行ったのは3つ。若草の中にひなげしを織り込んだ絨毯と、ジャイプールの壷と、アグラの宝石箱。たった1週間の旅行で全てを探さなくちゃいけないので、全てが順調で、あんまり都合が良すぎるともいえるんですけど... それに若干あっさりしすぎているような気もするんですけど... でもそれがまた運命的でもあり、夢物語のようでもあり、この作品のいいところなのかも。3つの品物を見つけた時に、それぞれを持っていた人が語る物語もいいんですよねえ。とても美しいし幻想的。YA寄りの児童書として書かれているようなんですが、とても素敵な話なので、もっと大人向けにしっかりと書かれていても良かったのではないかと思ってしまうほどです。(講談社)


+既読の茂市久美子作品の感想+
「つるばら村のパン屋さん」「つるばら村の三日月屋さん」「つるばら村のくるみさん」茂市久美子
「つるばら村の家具屋さん」「つるばら村のはちみつ屋さん」「つるばら村の理容師さん」茂市久美子
「こもれび村のあんぺい先生」「にこりん村のふしぎな郵便」「トチノキ村の雑貨屋さん」「ゆうすげ村の小さな旅館」茂市久美子
「風の誘い」茂市久美子

+既読のこみねゆら関連作品の感想+
「妖精王の月」「歌う石」「ドルイドの歌」O.R.メリング
「夏の王」「光をはこぶ娘」O.R.メリング
「夢の書」上下 O.R.メリング
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「こもれび村のあんぺい先生」「にこりん村のふしぎな郵便 」「トチノキ村の雑貨屋さん」「ゆうすげ村の小さな旅館」茂市久美子
「風の誘い」茂市久美子
「仏蘭西おもちゃ箱」こみねゆら

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / /

   [amazon] [amazon] [amazon]
三日月屋は、つるばら村でただ1つのパン屋さん。宅配専門で、まだお店はないのですが、注文を受けるとパン職人のくるみさんがパンを焼いて、どこへでも届けます。元々町のパン屋さんで働いていたくるみさんは、2月もそろそろ終わる頃におばあさんの家だった古い農家に引っ越して来て、中古のオーブンと調理用の大きなテーブルを入れて試作を繰り返し、春になった頃にようやく「三日月屋」を開いたのです。しかし沢山の注文があったのは、最初の1週間だけ。しばらく経つと、お店の存在はまるで忘れられてしまったかのようになり... という「つるばら村のパン屋さん」とその続編2作。

つるばら村のシリーズの最初の3冊。どれもパン屋の三日月屋のくるみさんが主人公です。以前にも何冊か読んだことがあるんですけど、どれを読んだのか分からなくなってしまって(汗)、結局全部読み返すことに...。
「つるばら村のパン屋さん」ではまだお店を持ってないくるみさんですが、「つるばら村の三日月屋さん」では駅前に赤い屋根の小さなお店をオープン。そして「つるばら村のくるみさん」では、なんとライバルと恋のお相手が登場?という展開。くるみさんの恋には、正直あまり興味がないのだけど(あれれ)、このシリーズ、とにかく美味しそうなんです。読んでいるだけで、おなかがすいてしまうし、無性にパンが食べたくなってしまう~。お客さんも人間だけじゃないんですよね。たとえばクマの注文は、生地にタンポポのはちみつを入れることと、生地をこねたり寝かせたりする時に蓄音機でレコードをかけておくこと。そのほかにも、十五夜の月の光を入れて欲しいとかいうのもあったし...。材料を持参して、これを入れたパンを焼いて欲しいという注文も多いですね。時には、パンの香りに誘われて遥か彼方の空の上からのお客さまもあったりして。でも焼きたてのパンのあの香りを思うと、そういうこともあるかもしれないなあ、なんて思っちゃう。中村悦子さんの挿絵もとっても柔らかい優しい雰囲気で素敵です。(講談社)


+シリーズ既刊の感想+
「つるばら村のパン屋さん」「つるばら村の三日月屋さん」「つるばら村のくるみさん」茂市久美子
「つるばら村の家具屋さん」「つるばら村のはちみつ屋さん」「つるばら村の理容師さん」茂市久美子

+既読の茂市久美子作品の感想+
「こもれび村のあんぺい先生」「にこりん村のふしぎな郵便」「トチノキ村の雑貨屋さん」「ゆうすげ村の小さな旅館」茂市久美子
「風の誘い」茂市久美子

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / /

 [amazon] [amazon]
「窓のそばで」は、ルイコという小学生の女の子が主人公の連作短編集。「星占師のいた街」は、12の月それぞれのスケッチ「12のオルゴール」と、ごみごみした街中の古いレンガ造りのビルのてっぺんにあるみすぼらしい箱舟に、猫と一緒に住んでいた年寄りのノアの物語「ノアの箱舟」、古いアパートの前のぽっかりとした空き地が気に入っていたのに、そこに突然建ったのはお洒落な豪華マンションで... という「ポリーさんのおうむ」の3編。

どちらもほんのりと不思議な雰囲気が漂うファンタジーの物語集。「窓のそばで」も可愛らしくて良かったんだけど、こちらはちょっと対象年齢が低かったかな... 「星占師のいた街」の方が断然楽しめました。目の前に鮮やかな情景が広がるのは、竹下文子さんの他の作品と同様で、今回もとても綺麗です。「12のオルゴール」では、季節折々の情景が広がるし、「ノアの箱舟」では、ビルの上に箱舟があって老人と猫が住んでいるというのもさることながら、最後にそれが深い水の底に沈んだ街から船出する場面が、とても素敵。このノアのおじいさんが占い師をして暮らしてるので、これが表題作ということですねー。そしてこの本の書影が出ないのがとても残念なんですが、表紙も挿絵も牧野鈴子さんが描いてらして、これがまたとても雰囲気に合っていて素敵なんです。(偕成社)


+既読の竹下文子作品の感想+
「風町通信」竹下文子
「木苺通信」竹下文子
「星とトランペット」竹下文子
「窓のそばで」「星占師のいた街」竹下文子
「むぎわらぼうし」竹下文子・いせひでこ

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: /

 [amazon]
いつものように朝起きて大学に行き、午前中の講義を受けたあとは学生食堂で親友の由利江と昼食をとった11月7日の水曜日。しかしその次の日も、11月7日だったのです... という「秋の牢獄」他、全3編の短編集。

3つの物語が収められた短編集。表題作にしか「牢獄」という言葉はついてないのだけど、3つの作品はそれぞれに違う「牢獄」を描いたもの。「秋の牢獄」は同じ日に閉じ込められちゃう話で、次の「神家没落」は、見知らぬ藁葺き屋根の家から出られなくなる話。そして3作目の「幻は夜に成長する」も、座敷牢みたいなところに幽閉されている話。でも「秋の牢獄」みたいに、同じ日を何度も繰り返す話は他にも2つ読んでるし...。そちらの2つがそれぞれに名作なだけに、どうしてもそちらと比べてしまうなあ。
今回、図書館の予約が回ってきた時にどうもソソられなくて、読もうかどうしようかかなり迷ったんですけど、やっぱり読まなくても良かったかも。どうしても、最初の「夜市」「風の古道」の感動を期待してしまうんですけど、2作目の「嵐の季節の終わりに」も、どこかその期待とは違う場所に置き去りにされてしまったような感じだったし、今回もそうでした。今回の3作のうちでは「神家没落」が一番、期待していた恒川ワールドに近かったんですけどね。この藁葺き屋根の家は「風の古道」の世界にあっても全然おかしくない雰囲気だし。でも前2作には感じられた叙情的な美しさが今回あまり感じられなくて、どうも物足りなかったなあ... 求めるものが間違ってるのかもしれないけど。(角川書店)


+既読の恒川光太郎作品の感想+
「夜市」恒川光太郎
「雷の季節の終わりに」恒川光太郎
「秋の牢獄」恒川光太郎

| | commentaire(4) | trackback(0)
Catégories: / /

  [amazon] [amazon]
じゅうたんを織るのが大好きな4人姉妹。おばあさんの焼いた熱々のチーズパイと、一番上のお姉さんの入れたチャイを飲みながらの休憩時間に話をねだられたおばあさんは、じゅうたんを織るのがとても上手だったイップという美しい娘と羊飼いのハッサンの話を物語ります...という「糸は翼になって」他、全5編。

旅の伴侶であり、話をつむぎ出す「糸口」そのものだったという絨毯。元々は遊牧民が生み出して、天幕の中に敷くのはもちろん、天幕の扉にしたり、塩や小麦粉を入れる袋にしたり、赤ちゃんをくるんだりと、日常の様々な用途に使っていたもの。その後、トルコやペルシャに広まると、テーブル掛けとして使ったり、絵のように壁にかけられるようにもなります。簡単に持ち運べる大切な財産でもあり、旅の途中で休憩する時にはさっと敷ける便利な敷物。小さいサイズの絨毯は、日に5回のイスラムの礼拝には欠かせないもの。そんな風に日常の生活に欠かせない絨毯にまつわる言い伝えを、新藤悦子さんが物語として織り上げ、こみねゆらさんの絵を添えた絵物語集です。
それぞれにアラビアンナイトの話の1つと言われたらそう思い込んでしまいそうな、雰囲気たっぷりの物語。これはトルコやイランを旅したり滞在したりして、実際にトルコで現地のおばあさんと絨毯を織ったこともあるという新藤悦子さんだからこそ書ける物語かもしれないですね。絵本なので、どうしてもそれぞれの話が短いのが難点なんだけど... もっとじっくり読みたかった。私が物語として一番惹かれたのは、2の方に収められている「ざくろの恋」で、これはアフガニスタンの内戦から逃げようと西の国境に向かって歩いていたハーシムが、いつの間にか砂漠に迷い込んでしまい、人気のない廃墟で白いターバンを巻いた少年に出会う話。時空を越えた素敵な物語です。でも、歌を歌うと恋心が糸となって出てくる「糸は翼になって」や、知らない男に嫁がされる哀しみを描いた「消えたシャフメーラン」なんかも素敵。そしてこみねゆらさんによる絵が素晴らしい! エキゾティックな雰囲気がたっぷりだし、それぞれの物語にはトルコのヤージュベディル絨毯、クルド絨毯、イランのムード絨毯、トルクメン絨毯、イスファハン絨毯といった、地方や部族ごとに代々伝わる美しい手織りの絨毯の細密な絵が紹介されいて、それがまた素敵なのです。殊にそれまで赤系がメインだった絨毯の中、最後に登場した青いイスファハン絨毯の美しいことといったら。このイスファハン絨毯は、イランの絨毯の中でも最も美しい絹製の絨毯なのだそう。実物を見てみたいし、触ってみたいなあ。本そのものもとても素敵で、ぜひ手元に置いておきたくなっちゃいます。(ブッキング)


+既読の新藤悦子作品の感想+
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「青いチューリップ」「青いチューリップ、永遠に」新藤悦子
「エツコとハリメ」新藤悦子
「トルコ 風の旅」「イスタンブールの目」新藤悦子
「時をわたるキャラバン」新藤悦子
「羊飼いの口笛が聴こえる」新藤悦子
「チャドルの下から見たホメイニの国」新藤悦子

+既読のこみねゆら関連作品の感想+
「妖精王の月」「歌う石」「ドルイドの歌」O.R.メリング
「夏の王」「光をはこぶ娘」O.R.メリング
「夢の書」上下 O.R.メリング
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「こもれび村のあんぺい先生」「にこりん村のふしぎな郵便 」「トチノキ村の雑貨屋さん」「ゆうすげ村の小さな旅館」茂市久美子
「風の誘い」茂市久美子
「仏蘭西おもちゃ箱」こみねゆら

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: /

 [amazon]
2年前、1匹の家ねずみ起こした事故のせいで耳がほとんど聞こえなくなり、恋人も失ってしまった絵描きの植田さんは3ヵ月後、画材一式とわずかな着替えを携えて、都会から遠く離れた高原の一軒家に引っ越すことに。

雪景色に包まれた、とても静かな物語。植田さんと高原の町の人たち、そしてイルマとメリ親娘の交流が、静かに描かれていきます。植田さんの日々は、鳥のさえずりも聞こえないとても静かなもの。私には、植田さんがそれほど心を閉ざしているようには思えなかったのだけど... それでも高原の小屋での孤独な生活を居心地良く感じているのは確か。「自分はずいぶん長く、この世の物音をきこうとしてこなかったのかもしれない。耳が悪くなっただけじゃない、みずから耳をふさぎ、かたく身をちぢめ、音を遠ざけていたんだ。それはまた、自分で音を出さずにいる、ということでもある。ちょうど冬の山奥でかたく凍りついた岩のように」という言葉がとても印象に残りました。
メリとオシダさんが一緒に植田さんの作品ファイルを見ている場面、窪地の「ばけもの」を見に行く場面、凍結した湖でのスケートの場面、火祭りの場面、それぞれの場面がとても印象的。火祭りの時に人々が山の神に向けて書いている祈りの言葉が、素朴で暖かくて素敵~。横領事件やイジメ問題が絶えない「向こう側」とは、まるで別天地みたい。
後半、植田さんの描いた絵が挿入されます。これは植田真さんが描いた絵。この植田真さんは、この物語の植田さんとはまた違いますよね...?(笑) 絵の雰囲気がとても物語の雰囲気に合っていて、絵を見ながらメリと同じ気持ちになれたような気がしたほど。植田さんの感情が久しぶりにほとばしり出たような絵の数々でした。(新潮文庫)


+既読のいしいしんじ作品の感想+
「トリツカレ男」いしいしんじ
「絵描きの植田さん」いしいしんじ・植田真
Livreに 「ぶらんこ乗り」「麦ふみクーツェ」「プラネタリウムのふたご」の感想があります)

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: / / /

 [amazon]
天平18年秋8月。備前国から平城京に庸調を納めに行く一行の中にいたのは、采女として後宮で仕えることになっている広虫と吉備真備の娘の由利。男ばかりの一行の中で2人はすぐに意気投合します。そして、京まであと3日というところで拾ったのは、行き倒れていた百世という少年。百世は母を亡くし、丹波笹山から大仏鋳造のタタラで働いている父を探しに来たのです。京に着いた2人は早速吉備真備に葛木連戸主を紹介され、百世の父親探しに乗り出すのですが... という「三笠山」他、全4編の連作短編集。

奈良時代、聖武天皇から称徳天皇までの時代を舞台に、4編でそれぞれ東大寺の大仏建立、正倉院への宝物奉納、藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱、そして道鏡の野心と宇佐八幡の神託が取り上げられていて、この時代の主な出来事を網羅してる連作。風待屋の sa-ki さんに教えて頂いた本です。sa-ki さんから芝田勝茂さんの「サラシナ」(感想)と時代的に結構重なってるとは聞いてたし、確かにそちらとも重なってたんですが、それ以上に高橋克彦さんの「風の陣」(感想)と重なっていてびっくり。「風の陣」は、「立志篇」「大望篇」「天命篇」の3巻を読んだんですが、それぞれ橘奈良麻呂、藤原仲麻呂(恵美押勝)、弓削道鏡を取り上げてるんです。スタートが微妙にズレてはいるけど、もうまるっきり同じ時代の話。でも雰囲気がまるっきり違っていて、それもびっくり~。「風の陣」は、陸奥出身の丸子嶋足という青年を主人公にした正統派の歴史小説なんですが、こちらは広虫と戸主という内裏で共働きをしてる夫婦を中心に据えていて、もっと明るいユーモアたっぷりの作品なんです。味付け程度とは言え、ファンタジーがかった柔らかさもありますし。どちらもそれぞれにそれぞれの作家さんらしさが出てて面白いんですが、同じ歴史的事実を描きながらも書き手によってこれほど違ってしまうとは、両極端~。(笑)
4編の中で一番面白かったのは、2編目の「正倉院」。こんな裏話があったなんて、正倉院の宝物を見る目が変わっちゃうな。あと面白かったのは、吉備真備の長女の設定。これにはびっくり! 言われてみれば、確かに同じ時代ですものねえ。でも、一体どこからこんなアイディアが浮かんだのやら。(笑)(文芸春秋)


+既読の山之口洋作品の感想+
「オルガニスト」山之口洋
「0番目の男」山之口洋
「天平冥所図会」山之口洋

| | commentaire(6) | trackback(1)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.