Catégories:“ファンタジー(翻訳)”

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海の都・ヴェヌスで始まった秋の謝肉祭。その日、フリアンは舟を雇って、夜中の3時から運河や淵を巡って、シャーキン医師のために死体を捜していました。謝肉祭には死人がつきもの。しかし1年前は一晩で5つも遺体を見つけたフリアンも、その日は1つも死体を見つけられなかったのです。ようやく見つけたのは、謝肉祭の間、全ての人々がつけることを義務付けられている仮面を1つだけ。それは半顔で、古代ギリシャやローマの神々の彫像や彫刻を思わせる端整な目鼻立ちをした上等なもの。しかしその仮面には、剥ぎ取ろうともがいたような傷や、仮面が血を流したような鈍い錆色の切り傷が走っていたのです... という「水底の仮面」と、炎を作り出す力を持つ奴隷の少女ヴォルパの物語「炎の聖少女」。

今年はなぜかタニス・リーの未訳作品がどんどん訳されてるんですが、これもその一つ。「ヴェヌスの秘録」という4部作の最初の2巻です。私はてっきり話が続いてるのかと思って、4冊全部出揃うまで読むのを待っていたんですが、どうやら同じ主人公の話が続いていくというより、ヴェネチアのパラレルワールド、ヴェヌスの都という場所そのものが主役の話だったみたい。
これまで産業編集センターから出版されたタニス・リー作品はことごとくイマイチで(失礼)、それに比べると、このシリーズはタニス・リーらしさが出てるとも言えるのだけど... そうなったらそうなったで、やっぱり浅羽莢子さんの訳で読みたかったなーとか今更のことを思ってしまうんですよねえ。この作品の訳は柿沼瑛子さんという方で、この方の訳も悪くないんですけど、タニス・リーですし! なんせ私が最初に読んだリー作品が「闇の公子」ですから!
...というのはともかく、ヴェヌスを舞台を舞台に繰り広げられる1作目は、やや浅く感じられる部分はあるものの、妖しい雰囲気はいい感じ。2作目は、聖少女という設定がなんだかジャンヌ・ダルクっぽくて、ヴェヌスの必然性はあるのかしら?って感じもあったんですが、まあまあ。3・4作目に期待しようと思います。(産業編集センター)


+シリーズ既刊の感想+
「水底の仮面」「炎の聖少女」タニス・リー
「土の褥に眠る者」「復活のヴェヌス」タニス・リー

+既読のタニス・リー作品の感想+
「闇の公子」タニス・リー
「死の王」タニス・リー
「タマスターラー」タニス・リー
「ドラゴン探索号の冒険」タニス・リー
「白馬の王子」タニス・リー
「惑乱の公子」タニス・リー
「熱夢の女王」上下 タニス・リー
「ゴルゴン 幻獣夜話」タニス・リー
「血のごとく赤く」タニス・リー
「バイティング・ザ・サン」タニス・リー
「鏡の森」タニス・リー
「黄金の魔獣」タニス・リー
「幻魔の虜囚」タニス・リー
「幻獣の書」「堕ちたる者の書」タニス・リー
「月と太陽の魔道師」タニス・リー
「冬物語」「闇の城」タニス・リー
「銀色の恋人」タニス・リー
「妖魔の戯れ」タニス・リー
留守中に読んだ本(18冊)(「ウルフタワー」の感想)
「影に歌えば」「死霊の都」タニス・リー
「パイレーティカ 女海賊アートの冒険」タニス・リー
「銀色の愛ふたたび」タニス・リー
「悪魔の薔薇」タニス・リー

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アントーニーヌス・リーベラーリスは、「リーベラーリス」という名前から解放奴隷だったのではないかとも言われている、紀元2~3世紀頃のローマ時代の物語作家。そのリーベラーリスが古典ギリシャ語で書いたという、41のごく短い変身物語。

オウィディウスの「変身物語」(感想)みたいなものなんですが、こっちは1編ずつがとても短いです。大抵2~3ページ程度で、短いものでは10数行というものも。オウィディウスが色んな変身物語を繋ぎ合わせて、人々の心の動きなども交えて15巻の一大叙事詩としているのに比べて、アントーニーヌス・リーベラーリスは繋ぎ合わせることにも人間の感情にも無関心だったようですね。どの物語もとても簡潔に描かれてました。
でもいくら淡々と書かれてるからといって、これって相当の教養がないと書けないのでは... 元奴隷がこんな作品を書くって一体!? と思ったら、解説によると、ローマ時代の奴隷は大抵戦争捕虜で、教養溢れる知識人も結構含まれていたんだそうです。そういった人たちは、奴隷とは言っても貴族の秘書となったり、そういった貴族の子弟のギリシャ古典教育のために家庭教師になったのだそう... なるほど。

変身にはいくつかパターンがあって、罪を犯して神々の怒りを買うか、逆に神々の憐れみを受けて変身させられるというのが中心なんですが、やっぱり罰としての変身が多いですね。そして読んでいて驚いたのは、鳥に変身する物語の多さ。少なくとも半分、多分半分以上は鳥に変身する話なんです。初期ギリシャ宗教では、死者の魂は鳥の形を取って天に飛翔するとされていて、全ての人間はかつて鳥であったという主張もあったのだそうですが... 鳥のように自由に空を飛びたいという思いも、そこには反映されていたのかなあ。(講談社学芸文庫)

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北東部でもとりわけ裕福な都・バクシャーンで、商人たちに雇われたエルリックとムーングラム。依頼は、商人たちの中でも特に羽振りが良いニコーンという男を除きたいというもの。ニコーンの後ろにセレブ・カーナがいると聞いたエルリックは、その仕事を請けることに... という「魂の盗人」、他3編。

エルリック・サーガ4冊目。
エルリック・サーガの最初の作品「夢みる都」が1961年の作品。ここに収められた4編の中で一番遅く書かれたのは表題作の「ストームブリンガー」で、これは1964年の作品。この表題作で一旦エルリック・サーガが終わってます。「メルニボネのエルリックのサーガ、ここに終わる」 ...エルリックサーガって、わずか3年で終わってたんですねー、びっくり。で、5巻からが今世紀に入ってから書かれたという作品なんですね。
この世界は「法」と「混沌」によって支配される世界。「法」は正義や秩序をもたらすけれど、同時に停滞をもたらすものであり、「混沌」は可能性を秘めてはいるけれど、同時に世界を恐怖と破壊の地獄にしてしまうもの。この2つの勢力のバランスが釣り合っていてこそ上手くいく、というのが面白いです。天使と悪魔みたいな関係じゃなかったのか! 「混沌」も、必ずしも悪いばかりじゃないんですね。エルリックは、この「法」と「混沌」の争いにまともに巻き込まれてしまいます。今回、エルリックもようやく人並みの幸せを手にいれることになるんですが、それがあるだけにラストが一層悲劇的でした。最後は北欧神話のラグナロクを思わせるような終末戦争。まさかここでローランだのオリファンだのデュランダーナの名前をここで見ることになろうとは。(笑)
とりあえず区切りがいいので、エルリック・サーガは一休みして、ムアコックのほかのシリーズにも手を伸ばしてみようかと思います。本当は紅衣の公子コルムに興味があるんだけど、復刊にはまだもう少し待たないみたい。となると、「ルーンの杖秘録」の4冊か、エレコーゼ・サーガの2冊。どっちにしようかな、やっぱり発表順で「ルーンの杖秘録」の方が順当かな...?(ハヤカワ文庫SF)


+シリーズ既刊の感想+
「メルニボネの皇子 永遠の戦士エルリック1」マイクル・ムアコック
「この世の彼方の海 永遠の戦士エルリック2」マイクル・ムアコック
「暁の女王マイシェラ 永遠の戦士エルリック3」マイクル・ムアコック
「ストームブリンガー 永遠の戦士エルリック4」マイクル・ムアコック

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カナダのグウェンに、アイルランドのハートおばばからのメールが届きます。妖精国を大きな災いが襲おうとしており、その鍵となるのが妖精と人間の血を引くダーナ・フウェイラン。しかし彼女は準備が全くできていないため、命がけで守ってやらなければならないというのです。ダーナを守るのは、決戦の地であるカナダの人間の役割だと聞いたグウェンは、同じくカナダにいるローレル・ブラックバーンを訪ねて、一緒に戦って欲しいと訴えます。しかしローレルは、もう妖精国とは係わり合いになりたくないと考えていたのです。

O.R.メリングのケルトファンタジー第6弾。
前巻の予告通り、今回の舞台はカナダ。そして「妖精王の月」「夏の王」「光をはこぶ娘」の3冊の物語がここに1つにまとまります。カナダの歴史を辿るダーナの旅は楽しかったし、特にケルトの伝説「聖ブランダンの航海」が登場するとは思っていなかったので、嬉しいびっくり。今回新しく登場する人々もなかなか良かったし、妖精が存在するのはアイルランドだけでなくて... という概念も面白かったんだけど。
でも上下巻と長い分、どうしても冗長に感じられてしまう部分があったのと、「7者」が結局ほとんど登場しなかったのが、すっごく残念。ちゃんと出てきたのはグウェンぐらいなんですよね。カナダの人間がやらねばならなかったという前提は分かるんだけど、3つの物語の完結編となるんなら、もう少しそれらの物語の積み重ねを感じたかったなあ...。これまで登場してきた人たち同士の繋がりができて、3冊分(うまくすればもっと)の世界が繋がるんじゃないかと思ってただけに、かなり残念でした。結局、グウェンとローレルの繋がりが出来る程度。結局これまでとパターン的には一緒なのね。うーむ。(講談社)


+シリーズ既刊の感想+
「妖精王の月」「歌う石」「ドルイドの歌」O.R.メリング
「夏の王」「光をはこぶ娘」O.R.メリング
「夢の書」上下 O.R.メリング

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宿敵・セレブ・カーナを追ってロルミール入りするものの、キマイラたちに襲われるエルリックとムーングラム。そして辿り着いた無人の城の中には、かつてエルリックが殺した許婚のサイモリルと似た女性が眠り続けていたのです... という「暁の女王」と、ムーングラムと別れてタネローンを出たエルリックは、竜に連れていかれた都市の廃墟で父の亡霊と出会い、父が最愛の妻の元へと行けるようにするために異次元でローズウッドの箱を探すことに... という「薔薇の復讐」の、エルリック・サーガ第3巻。

前巻でコルムが語っていた、エルリックとエレコーゼと共に、ヴァアロディオン・ガニャディアックの塔で闘ったという話が、こんなに早く読めるとは! エルリックにとっては、「暁の女王マイシェラ」でのエピソードの1つだったんですね~。これは、早くコルムとエレコーゼ側の話も読んでみたいなあ。ええと、ホークムーンは登場してませんでしたが、ルーンの杖は登場してました。(笑)
エルリックの世界は、<法>と<混沌>が治める世界。でもエルリックは<混沌>側、エルリックに助けを求めるマイシェラは<法>側、そのマイシェルを脅かすセレブ・カーナとウムブダ王子は<混沌>側。エルリックとセレブ・カーナは共に<混沌>側だというのに敵対してるし、かなり入り組んでます。ナドソコルという町でエルリックを襲ってくるのは<混沌側>の神で、絶体絶命のエルリックを助けるのは<法>の神だし... 最後には自分のお気に入りのシモベを助けるべく、<混沌>のアリオッホが登場するんですけどね。しかも次元が違うと神々のパワーバランスもまた違ってくるようで... そういった部分が、だんだん見えてきました。「薔薇の復讐」でも多元宇宙に関する哲学的な議論が繰り広げられて、その辺りはちょっと難しいです... でも全部読み終わった時にまたここに戻ってくれば、きっとここに書かれていることがものすごく分かるのではないかと思うんですよね。なので、今は書いてあるまま受けとめておくだけで良しとしましょう。(ハヤカワ文庫SF)


+シリーズ既刊の感想+
「メルニボネの皇子 永遠の戦士エルリック1」マイクル・ムアコック
「この世の彼方の海 永遠の戦士エルリック2」マイクル・ムアコック
「暁の女王マイシェラ 永遠の戦士エルリック3」マイクル・ムアコック
「ストームブリンガー 永遠の戦士エルリック4」マイクル・ムアコック

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エルリック・サーガの第2巻。エルリックが3人の永遠の戦士たちに出会う「この世の彼方の海」、エルリックサーガはここから始まった!「<夢見る都>」、そして初期の「神々の笑うとき」「歌う城砦」を収録。旧版では「この世の彼方の海」と「白き狼の宿命」の2冊だったものが、1冊になったもののようですね。

2巻を読み始めてすぐに、エレコーゼ、コルム公子、ホークムーンという名前が登場してびっくり。これってマイクル・ムアコックの他のシリーズの主人公たちじゃないですか! エルリックを含めたこの4人は「四戦士」、<一なる四者>であり、以前にも邂逅があった模様。コルムがエルリックに、「ヴァアロディオン・ガニャディアックの塔」でエレコーゼと一緒に闘ったという話をするんです。エルリックもエレコーゼも「そんなことを言われても」って感じで、コルム公子は未来の世界から来たんだろうという話に落ち着くんですが...。その話はきっと別の作品で読めるんでしょうね。このシリーズの日本語訳は時系列順に作品が並べられているそうなんですけど、「この世の彼方の海」という作品は、実際にはかなり後になってから書かれたようですし。マイクル・ムアコックの世界の奥行きの深さを予感させる作品で、これはぜひとも他のシリーズも読まなくちゃ!って気になってしまいます。
ということで、以下覚書。

エルリック・サーガ...「メルニボネの皇子」「この世の彼方の海」「暁の女王マイシェラ」「ストームブリンガー」「夢盗人の娘」「スクレイリングの樹」「白き狼の息子」
ルーンの杖秘録...「額の宝石」「赤い護符」「夜明けの剣」「杖の秘密」(ホークムーン)
ブラス城年代記...「ブラス伯爵」「ギャラソームの戦士」「タネローンを求めて」
エレコーゼ・サーガ...「黒曜石の中の不死鳥」「剣のなかの竜」
紅衣の公子コルム...「剣の騎士」「剣の女王」「剣の王」「雄牛と槍」「雄羊と樫」「雄馬と剣」

これで合ってるのかしら...
エルリックとルーンの杖秘録は復刊済み、ブラス城年代記とエレコーゼは復刊途中、コルムはこれから? 全部読むとなったら相当な冊数になりそうですが。
この2巻で、エルリックの世界観に引き込まれる人が沢山いる、その魅力がよく分かったような気がします!(ハヤカワ文庫SF)


+シリーズ既刊の感想+
「メルニボネの皇子 永遠の戦士エルリック1」マイクル・ムアコック
「この世の彼方の海 永遠の戦士エルリック2」マイクル・ムアコック
「暁の女王マイシェラ 永遠の戦士エルリック3」マイクル・ムアコック
「ストームブリンガー 永遠の戦士エルリック4」マイクル・ムアコック

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ある日怪物のように大きな海豹に出くわした漁師は、重い銛を首のすぐ下に打ち込みます。しかし海豹は血走った目で漁師を禍々しく睨んだかと思うと、海に飛び込んで姿を消してしまったのです... という「漁師とドラウグ」他、全11編が収められた短編集。

先日ノルウェー民話の「太陽の東 月の西」を読んだ時に、日常&読んだ本logのつなさんに教えて頂いた本。(私の感想と、つなさんのこの本の記事はコチラ) ノルウェーといえば、それこそ「太陽の東 月の西」の編者アスビョルンセンぐらいしか知らなかったんですけど、ヨナス・リーはノルウェーの国民的作家なのだそう。海と漁師の現実の生活を描いたものや、民間伝承を元にした作品を多く書いているそうで、この本は後者の方ですね。ただ、民間伝承を元にしているとは言っても、ヨナス・リー自身の筆がかなり入っているようです。まさに民話といった素朴さが魅力の「太陽の東 月の西」に比べると、つなさんも書いてらっしゃいましたけど、こちらは物語としてかなり洗練されてる感じがしました。
ノルウェーの民話といえばトロルがいるんですけど、この作品に登場するのはドラウグという海の魔物。私は初耳だったんですが、これもノルウェーならではの存在なんだとか。姿は様々で、ある時は「漁師とドラウグ」で登場したように海豹そっくりの顔で、口が耳まで裂けていたり、別の時は船乗りの服を着ているのに頭がなくて、その代わりに海草の塊を載せていたり。頭がないせいか、帽子を深く被っていることも多いみたいです。なんとも気持ちの悪い存在のようですね... そして、姿は変わっても、「海でドラウグに出会った者は近いうちに溺れて死ぬ」というのが共通点。こういうのは、やっぱり北の海にこそ相応しい気がします。南の海にいたとしても怖いと思いますけどねー。雰囲気がまた全然違ってきちゃう。

幻想的だったり怪奇的だったりと、どの物語も北欧の雰囲気がたっぷりでそれぞれに面白かったですが、11編の中で特に気に入ったのは、ラップ人の少女といつも一緒にいた少年の物語、「ラップ人の血」。ラップ人の少女の家族は不思議な物語を沢山知っていて、少年は両親に禁じられてたにも関わらず、そこの家にいつも遊びに行くんですね。そうか、ラップ人って差別されていたのか... なんてところに無知な私なんですが、確かにラップ人といえば精霊信仰だし、キリスト教とは相容れないでしょうね。遊牧民族だから、尚更なかなか布教されないでしょうし。でも、キリスト教と異教が緩やかに混ざり合っている感覚もとても面白かったし、海の中の情景がとても美しかったです。(国書刊行会)

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